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コンクリート工学年次論文集 Vol.24
コンクリート工学年次論文集,Vol.24,No.2,2002 論文 鉛直荷重による軸力が耐震壁側柱のせん断強度に及ぼす影響 徳田俊宏 *1・江崎文也 *2・小野正行 *3・本多貴士 *4 要旨:耐震壁付帯ラーメン側柱の応力状態を再現できる側柱要素試験体のせん断実験法 を用いて,鉛直荷重による一定軸方向力を変動因子としたせん断力載荷実験を実施した。 実験結果によれば,要素試験体の破壊機構は,耐震壁側柱のせん断破壊機構に極めて近 似していることがわかった。また,鉛直荷重による一定軸方向力を増大すると側柱のせ ん断強度が上昇し,強度上昇分は,鉛直荷重による一定軸方向応力度に比例しているこ とがわかった。 キーワード:耐震壁,側柱,せん断破壊,せん断強度,軸方向応力度 1. 序 響を明らかにする必要がある。そこで,側柱の RC 耐震壁の水平せん断強度は,付帯ラーメ 補強筋量を一定とし,鉛直荷重による軸方向応 ン部材強度に依存している。付帯ラーメン部材 力度を変動因子とした付帯柱のせん断実験を計 が強剛であれば,壁板のスリップ状せん断破壊 画するとともに,側柱のせん断強度に及ぼす帯 により耐震壁の水平せん断強度が支配される。 筋の補強効果を検討するため,帯筋補強のない 一方,ひび割れが生じた壁板の膨張を付帯ラー 試験体の実験も計画した。本論は,これらの実 メン部材が十分に拘束することができなけれ 験結果により,側柱のせん断強度に及ぼす鉛直 ば,壁板がその強度を十分に発揮する以前に付 荷重による軸方向応力度および帯筋強度の影響 帯ラーメン部材がせん断破壊を起こし,耐震壁 について検討した結果を述べるものである。 が水平せん断耐力に達する。このことは,耐震 壁の水平せん断強度が,壁板のせん断強度と付 2. 実験概要 帯ラーメンのせん断強度の累加にならないこと 2.1 試験体形状および加力方法 を意味している。つまり,耐震壁の水平せん断 図−1に示す耐震壁付帯ラーメン側柱のせん 強度は,付帯ラーメンのせん断強度に依存して 断破壊の恐れが大きい部分に着目して,図−2 いることになる。したがって,耐震壁の水平せ に示すような要素試験体によるせん断実験によ ん断強度を的確に評価するためには,付帯ラー り検討することにした。図−3に試験体形状お メン部材のせん断強度を適切に評価する必要が よび配筋を,表−1に試験体一覧を示す。表− あるものと考えられる。文献 1)では,鉛直荷 2には,使用した材料の力学的性質を示す。コ 重による一定軸力が作用しない場合について, ンクリート強度が低いのは,既存不適格 RC 建 主筋比および帯筋比を変動因子とした側柱要素 築物を想定して,低強度コンクリート配合とし 試験体のせん断実験を行った。しかし,通常, たためである。試験体形状は,せん断破壊の恐 耐震壁の付帯柱には鉛直荷重による一定軸方向 れが大きい耐震壁側柱脚部を想定し,実物の約 応力度が作用していることから,側柱のせん断 1/3 縮尺モデル側柱要素試験体とした。壁板の 強度に及ぼす鉛直荷重による軸方向応力度の影 厚さは,最大耐力時に壁板のスリップ破壊が先 *1 名工建設株式会社 修士(工学)(正会員) *2 九州共立大学教授 工学部建築学科 工博(正会員) *3 近畿大学教授 九州工学部建築学科 博士(工学) (正会員) *4 九州共立大学大学院 都市システム工学専攻(正会員) -535- 行しないように決めた。鉛直荷重による側柱軸 した。荷重,変位および鉄筋のひずみの測定 方向力は,一般的な中低層 RC 建築物の下層部 は,連続的に荷重を載荷しながら 0.1sec のサン 分を想定して決めた。また,側柱のせん断強度 プリング間隔でハードディスクに記録した。試 に及ぼす帯筋の補強効果について検討するた 験体に生じたひび割れの記録は,目視およびビ め,鉛直荷重による側柱軸方向力を作用させて デオ撮影によった。載荷速度はおよそ 1.6kN/ いない試験体のうち帯筋がない主筋補強試験体 sec である。 実験シリーズを計画した。図−2に示す自己バ せん断ひび割れ ランス型の鉛直荷重載荷装置を用いて,側柱の 軸芯上に所定の鉛直荷重に相当する軸方向力を 載荷後,試験機により手動で一方向単調増加荷 せん断破壊 の恐れがあ る部分 重を載荷した。軸方向力は,試験機での載荷開 始から実験終了まで一定値となるように制御し た。なお,試験体下部は試験体ベッドに直接 タッチさせた。 2.2 測定方法 図−1 せん断破壊の恐れがある側柱部分 文献 1)に示す測定装置を用いて,柱の水平 変形および鉛直変形を測定した。また,図−3 Hydraulic jack (Vertical Load) (500kN) P (Load) に示す位置の柱主筋および帯筋,壁板の補強筋 Load Cell (1000kN) の各ひずみをワイヤーストレンゲージにて測定 表−2 使用材料の力学的性質 Wall コンクリ−ト Specimen E18-1(2,3)-0-0 E18-3-0.3-0(2,4) σB EC 17.9 17.5 14.5 14.2 Rigid Edge Beam Pin PC bar Rigid Edge Beam σ B :シリンダー圧縮強度 (MPa), E C :ヤング係数 (GPa) 鉄筋 Bar a σy σu Es ε D6 0.32 371 504 197 11.5 D10 D13 0.71 1.27 362 354 504 486 189 185 22.5 21.5 水平方向変位計 鉛直方向変位計 Edge Column Pin a:断面積 (cm2), σy :降伏点 (MPa), σu:引張強度 (MPa) E S :ヤング係数 (GPa),ε:伸び (%) 図−2 加力方法 表−1 試験体一覧 Specimen E18-1-0-0 E18-2-0-0 E18-3-0-0 E18-3-0.3-0 E18-3-0.3-2 E18-3-0.3-4 Section b×D(mm×mm) 200×200 Axial Load Wall Transversal Thickness Reinforcement N/bD Reinforcement (mm) (MPa) Edge column Longitudinal Reinforcement 6-D10 (pg=1.09%) 6-D13 (pg=1.91%) 10-D13 (pg=3.18%) D6@100mm 10-D13 (pg=3.18%) (pw=0.32%) pg:主筋比,p w:帯筋比,ps:壁筋比,N:軸力,b:側柱幅,D: 側柱せい -536- 100 D6@100mm (Single Layer) (ps=0.32%) 0 2 4 800 588 212 と破壊状況を,それぞれ示す。P は水平断面に D10@100 D6@100 対して 45 度方向に載荷しているので,Q=P/ 2 とした 。いずれの実験シリーズとも,載荷荷重 400 1,000 300 100 300 300 4-D16 各関係および実験終了時の各試験体のひび割れ を徐々に増加させていくと,想定した破壊線に 300 212 88 300 4-D16 200 200 200 200 900 沿ったひび割れが,側柱横の壁板に発生した。 100 このひび割れは,側柱との境界部分へ進展し, 400 ゲ - ジ貼付位置 200 100 400 400 D10@100 100 4-D16 ひび割れの発生と同時に荷重が一旦低下する。 軸力載荷シリーズ試験体の場合は,荷重の低下 ○:柱主筋 ■:帯筋 ◎:壁筋 300 寸法単位:mm は少なかった。これは,補強筋量が多いためと 考えられる。ひび割れ発生後は徐々に荷重が増 図−3 軸力載荷シリーズ試験体形状・配筋 加し,側柱にも斜めせん断ひび割れが発生し およびゲージ貼付位置 た。いずれの試験体とも,R がおよそ 0.5% 程 3. 実験結果 度になると最大荷重に達し,最大荷重時には, 3.1 破壊性状と履歴性状 壁板に生じたひび割れと柱に生じたひび割れが 図−4および図−5に,主筋のみで補強した 連続して,想定した破壊線が形成された。主筋 主筋補強シリーズ試験体および鉛直荷重による 補強シリーズでは,ひび割れの形状および本数 軸方向力を変化させた軸力載荷シリーズ試験体 は,主筋量に関係なく,ほぼ同じひび割れ性状 の水平荷重 Q と側柱部材角 R(=柱水平変位/ を示した。軸力載荷シリーズでも,軸力の大き 柱内法高さ)との各関係,Q と側柱の軸方向平 さにかかわらずほぼ同じひび割れ性状を示し 均ひずみ ε ν(=軸方向変位/柱内法高さ)との た。ひび割れ状況によれば,既往の耐震壁側柱 Q(kN) 300 E18-1-0-0 250 200 ▼Qmax=162.6kN 150 100 50 R(%) 0 0 0.5 ▼Qmax=162.6kN 150 100 ▼Qcr=88.0kN 1 1.5 Q(kN) 300 2 50 E18-2-0-0 εν(%) 0 2.5 250 0 0.1 0.2 0.3 Q(kN) 300 0.4 0.5 E18-2-0-0 250 200 200 ▼Qmax=138.6kN 150 100 50 R(%) 0 0 0.5 ▼Qmax=138.6kN 150 100 ▼Qcr=82.5kN 1 1.5 Q(kN) 300 2 50 E18-3-0-0 εν(%) 0 2.5 250 0 0.1 0.2 0.3 Q(kN) 300 0.4 0.5 E18-3-0-0 250 200 100 E18-1-0-0 250 200 150 Q(kN) 300 200 ▼Qmax=172.6kN ▼Q =106.0kN cr 100 50 R(%) 0 0 0.5 ▼Qmax=172.5kN 150 1 1.5 2 2.5 50 εν(%) 0 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 図−4 主筋補強シリーズ試験体の水平荷重 Q と側柱部材角 R との関係,Q と側柱軸方向平均 ひずみ ε v との関係および実験終了時のひび割れと破壊状況 -537- のせん断破壊状況にきわめて類似していること 重以後は側柱がせん断破壊しているものと考え がわかる。最大荷重以後は,想定した破壊線に てよい。図−6に,主筋補強シリーズ試験体の 沿ったひび割れ幅が拡大するとともに,壁板隅 側柱主筋および壁横筋の各ひずみの例を示す。 角部に圧壊現象が観察され,徐々に荷重が低下 データが得られた壁横筋のひずみは,壁板のせ した。図−4によれば,ひび割れ後は急激な伸 ん断ひび割れ発生直後から急激に増加し,最大 びひずみが生じている。しかし,最大荷重以後 荷重時には,壁横筋のひずみが降伏ひずみより は伸びひずみの増加が停止または鈍化し,その 大きくなっている。したがって,最大荷重後 後縮む方向に変化している。軸力載荷シリーズ は,壁横筋は降伏しているものと考えてよい。 では,図−5によれば,所定の鉛直荷重を載荷 一方,側柱主筋のひずみは,壁板のせん断ひび した試験体では,軸方向力載荷後に軸方向圧縮 割れ発生直後から徐々に増加するが,最大荷重 ひずみが生じている。その後の試験機の荷重 P 時には降伏ひずみにまでは達していないようで により側柱に変動軸力が作用するため,徐々に ある。最大荷重後は,荷重の低下とともに徐々 圧縮ひずみが増加するが,側柱にせん断ひび割 にひずみが小さくなっていることがわかる。こ れが生じると,主筋補強シリーズと同様に,急 れは,側柱がせん断破壊を起こし,柱が徐々に 激な伸びひずみが生じている。しかし,最大荷 縮む方向に変形していることによるものと考え 重後は,伸びひずみの増加が停止または鈍化 られる。図−7に,軸力載荷シリーズ試験体の し,その後縮む方向に変化している現象は,主 側柱主筋,壁横筋および帯筋の各ひずみの例を 筋補強シリーズの場合と同様である。一般に, 示す。主筋補強シリーズ試験体の場合と同様 部材がせん断破壊を起こすと部材が縮む現象が に,データが得られた壁横筋のひずみは,壁板 起こる。軸方向ひずみ履歴曲線から判断する のせん断ひび割れ発生直後から急激に増加し, と,いずれの実験シリーズ試験体とも,最大荷 最大荷重時には,壁横筋は降伏している。主筋 Q(kN) 300 Q(kN) 300 E18-3-0.3-0 250 250 ▼Qmax=184.3kN 200 150 100 150 100 50 1 1.5 Q(kN) 300 250 100 2 2.5 -0.2 -0.1 0 250 100 50 R(%) 1 1.5 Q(kN) 300 2 2.5 -0.2 -0.1 0 Q(kN) 300 E18-3-0.3-4 0.1 0.2 E18-3-0.3-4 250▼Q =210.6kN max 200 ▼Qmax=210.6kN 150 ▼Q =110.9kN cr 100 150 100 50 50 R(%) 0 0.5 εν(%) 0 200 0 E18-3-0.3-2 150 0 250 0.2 ▼Qmax=197.5kN 200 50 0.5 0.1 Q(kN) 300 E18-3-0.3-2 ▼Qcr=103.3kN 0 εν(%) 0 ▼Qmax=197.5kN 200 150 50 R(%) 0 0.5 ▼Qmax=184.3kN 200 ▼Qcr=98.4kN 0 E18-3-0.3-0 1 1.5 2 2.5 εν(%) 0 -0.2 -0.1 0 0.1 0.2 図−5 軸力載荷シリーズ試験体の水平荷重 Q と側柱部材角 R との関係,Q と側柱軸方向平均 ひずみ ε v との関係および実験終了時のひび割れと破壊状況 -538- E18-1-0-0 ε(μ) Q(kN) Q(kN) 300 3000 300 2500 250 2000 200 1500 150 100 1000 100 50 500 50 250 ▼ 200 εsy ▼ Q εgy εs εg 150 R(%) 0 0 0.5 1 1.5 0 3000 300 Q ▼ εsy ▼ εgy 2500 250 εs R(%) 0 0.5 1 ▼ 2000 200 εg 0 2 E18-3-0-0 ε(μ) E18-2-0-0 ε(μ) Q(kN) 1.5 3000 Q εgy 2500 εg 2000 1500 150 1500 1000 100 1000 50 500 R(%) 0 0 0 2 0.5 1 1.5 500 0 2 図−6 主筋補強シリーズ試験体の側柱部材角 R と側柱主筋ひずみ ε g および側柱部材角 R と壁 横筋のひずみ ε s との関係 ε(μ) Q(kN) E18-3-0.3-0 3000 300 Q(kN) 300 ▼ εgy 200 Q εg 100 0 2000 200 1000 100 0 -100 0 0.5 1 1.5 R(%) -200 -300 ▼ εgy Q εg 0 2 -1000 -100 0 -2000 -200 -3000 -300 ε(μ) E18-3-0.3-4 3000 ε(μ) Q(kN) E18-3-0.3-2 3000 300 2000 200 1000 100 0 0.5 1 1.5 R(%) ▼ εgy Q 2000 εg 0 2 -1000 -100 0 0.5 1 1.5 R(%) -2000 -200 1000 0 2 -1000 -2000 -3000 -3000 -300 (a)主筋ひずみ Q(kN) E18-3-0.3-0 ε(μ) 3000 300 Q(kN) 300 250 ▼ 200 Q εy εw Q(kN) E18-3-0.3-2 ε(μ) 3000 300 Q 2500 250 ▼ 2000 200 εy εs εw 2500 250 2000 200 1500 150 150 1500 150 100 1000 100 1000 100 500 500 50 50 R(%) 0 0 0.5 1 1.5 2 0 50 R(%) 0 0 0.5 1 1.5 0 2 E18-3-0.3-4 ε(μ) 3000 Q ▼ εy 2500 εs εw 2000 1500 1000 R(%) 0 0 0.5 1 1.5 500 0 2 (b)壁横筋および帯筋の各ひずみ 図−7 軸力載荷シリーズ試験体の側柱部材角 R と側柱主筋ひずみ ε g および側柱部材角 R と壁 横筋のひずみ ε s ,帯筋のひずみ ε w との関係 については,軸方向力載荷後圧縮ひずみが生じ 程度である。図−8に側柱せん断強度 Q cu と帯 ているが,ひび割れ後には徐々に引張ひずみが 筋強度 p wσ yw( σ yw:帯筋降伏強度)との関係を 増加している。特に,軸力が大きい試験体では 示す。各試験体のコンクリート強度が異なるこ 引張ひずみの増加は小さく,いずれの試験体と とから,コンクリートのせん断破壊で決まる強 も,主筋は降伏していない。最大荷重以後は, 度がコンクリート圧縮強度の平方根で表すと適 荷重の低下とともに徐々に引張ひずみが小さく 切に評価できるとの報告 2) なっているのは,主筋補強シリーズ試験体の場 もあることを考慮 p wσ yw を, し,Q cu および実験事実と適合する 合と同様である。帯筋のひずみについては,最 σB それぞれ で除した値で比較した。 壁筋のひ 大荷重時に降伏ひずみに達していないが,荷重 ずみ測定結果によると,横筋はせん断強度以前 低下後にも徐々にひずみが増大し,降伏ひずみ (1)式 に降伏ひずみに達しているので,Q cu は, 近傍まで達している。これは,帯筋が側柱せん より求めた。 断破壊後の荷重低下をある程度押さえている効 Qcu = 果を示しているものと考えてよい。 Pu − Qw 2 (1) ここで, 3.2 強度性状 表−3に実験結果一覧を示す。ひび割れ強度 およびひび割れ時の部材角は,いずれもほぼ同 P u:最大載荷荷重 Q w:壁横筋強度(= p sσ ytl’,p s:壁筋比,σ y:壁 -539- 表−3 実験結果一覧 筋降伏点強度,t:壁厚,l’:壁内法長さ) 図−8には,文献 1)の実験結果も併せて示 Specimen している。これらによれば,側柱が帯筋で補強 E18-1-0-0 E18-2-0-0 E18-3-0-0 E18-3-0.3-0 E18-3-0.3-2 E18-3-0.3-4 されていれば,側柱のせん断強度が増大するこ とがわかる。また,帯筋が側柱のせん断強度に 及ぼす影響は,単独柱のせん断強度に及ぼす影 響の場合と同様に,帯筋強度 p wσ yw の平方根に 比例している。表−3によれば,側柱に作用す First Cracking Load Maximum Load Qcr(kN) Rcr(%) Qu(kN) Ru(%) 88.1 82.5 106 112 106 115 0.04 0.1 0.06 0.09 0.06 0.05 162.6 138.6 172.6 185 200 211 0.47 0.46 0.33 0.47 0.48 0.46 る鉛直荷重による一定荷重 N が大きくなると ると,増大せん断強度 ∆Q cu /bD は,鉛直荷重に 最大荷重が増大している。そこで,側柱のせん よる軸方向応力度 N/bD に比例していることが 断強度に及ぼす鉛直荷重による一定軸方向応力 わかる。この関係を回帰直線として求めると, 度の影響を考察するため,鉛直荷重が作用して (3)式に示す関係が得られた。 いない試験体の側柱せん断強度Q cu0より増大し た強度上昇分 ∆Q cu を(2)式で求め,側柱の断 面積 bD(b:側柱幅,D:側柱せい)で除した 鉛直荷重軸方向応力度による側柱の増大せん断 ∆Qcu = Qcu − Qcu 0 (2) ∆Qcu N = 0.156 ⋅ bD bD (3) 強度 ∆ Q cu /bD と鉛直荷重による軸方向応力度 N/bD との関係を,図−9に示す。これらによ 4. 結論 側柱の応力状態を再現した耐震壁側柱要素試 Qcu/bD√σB 2 pg =1% pg =3% 験体せん断実験を行った結果,以下のことがわ p g =2% かった。 1)側柱要素試験体のせん断破壊は,既往の 1 ス 1.5 パン耐震壁の水平力載荷実験から得られた 1 側柱のせん断破壊とほぼ同じ性状であった。 0.5 2)帯筋強度を増大するとせん断強度が上昇す √pwσyw/σB る傾向があり,上昇率は,帯筋強度の平方根 0 0 0.2 0.4 0.6 0.8 に比例しているようであった。 1 3)鉛直荷重による軸方向力が増大すると側柱 図−8 側柱せん断強度 Q cu と帯筋強度 p wσ yw のせん断強度が増大し,上昇分は,軸方向力 との関係 に比例していた。 今後は,コンクリート強度を変動因子とした ΔQcu/bD(MPa) 1 E18-3-0.3-0 E18-3-0.3-2 E18-3-0.3-4 0.8 0.6 実験を行い,更に検討を行う予定である。 ΔQcu/bD=0.156N/bD 参考文献 1)徳田俊宏 , 江崎文也 , 小野正行:軸力が作 0.4 0.2 用しない耐震壁側柱のせん断強度に関する N/bD(MPa) 0 0 1 2 3 実験的研究,日本コンクリート工学年次論 文報告集,Vo l . 2 3 ,N o . 3 , p p . 4 9 3 - 4 9 8 , 4 2001.7 図−9 鉛直荷重軸方向応力度による側柱の 増大せん断強度 ∆ Q cu /bD と鉛直荷重 2)ACI:Buildg code Reguirement, for Reinforced concrete (ACI 318-89), ACI, 1989, 111P による軸方向応力度 N/bD の関係 -540-