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「アセス メ ントの 文化」の構築 を目指 して・ 第 2回「図書館評価 」 会議参加報告 酒 井 由紀子 , 市 古 みどり 抄録:第 2回「図書館評価」会議は, 2 0 08年 8月シアトル市のワシン トン大学で 3 8 0名の定員いっぱいの参 加者を迎え開催された 。同会議は経営の根幹にかかわる「アセスメントの文化 Jの構築を目指している 。 3 日間の会期中,経営管理に生かす評価,さまざまな評価手法,情報リテラシー教育など特定サ ー ビスに関す る発表や活発な議論が行われた 。北米では LibQUAL+⑧が普及 しており,図書館評価の専任者や部署をもっ 大学も増え,養成科目の設置も報告されるなど,図書館評価が進展している 。本会議がさらなる図書館評価 コミュニティの拡大に貢献するだろう 。 ibQUAL+⑧ , ARL キーワード:図書館評価,アセスメント ,L 1 . はじめに s o c i a t i o no fResearch 北米研究図書館協会 (As L i b r a r i e s . ARL) などの主催に よる第 2回「図書館 評価」会議 ( 2 n dL i b r a r yAssessmentC o n f e r e n c e : Buil di ngE f f e c t i v e .S u s t ai nab l e .P r a c t i c a lA s s e s s ment)1) は , 2 0 0 8年 8月,米国ワシントン 州 シアト ルのワシントン大学で開催された 。会場は,同大学 のマスコット,ハスキー犬の名を冠したハスキー学 u i l d i n g) である 。歓迎ス 生会館 (HuskyUnionB ピーチに立った同大学図書館長をつとめるウィルソ ン氏 ( B e t s yWi l s o n) は , 2 0 0 6年に開催された 第 1 回会議の閉会のあいさつでの約束を繰り返した 。 「私は保証します 。すべての街角においしいコー 写真 1 会場前のハスキー犬と筆者ら 評価手法,情報リテラシー教育の 3つに分け,筆者 ヒーを,すべてのお 皿にサーモンを,そして何より らの私見も交えて報告する 。 重要なの は,図書館評価のコミュニテイを拡大する 。彼女の 言 うとおり,図書館評価 素敵な会議 を!J への関心の高まりからそのコミュニテイは着実に拡 2 . 会議の概要 本会議は 2006年ヴァージニア州シャーロッツピ 大しており, ルで開催された会議に続く,第 2回の会議である 。 r 図書館評価」というたったひとつの 課題に特化した会議ながら,参加者は 3 80名と定員 いっぱいであった 。会議の参加登録は 4月に開始さ れ 6月までの予定であったが 5月にはすでに満杯 で順番待ちリス トができていたほどである O LibQUAL+@の開発元でもある北米研究図書館協会 (ARL)のほかヴ ァージニア大学図書館 とワ シン ト ン大学図書館が共催している 。それぞれの組織から, LibQUAL+③のワークショ ップなどでも おなじみの 筆者ら は慶謄義塾大学メディア センター利用者調 y r i l l i d o u ),セルフ氏 キ リ ル ド ゥ 氏 (Martha K 0月 査ワーキンググループのメンバーで, 2008年 1 ( JimS e l f ),ヒラー氏 ( S t e v eH i l l e r)の 3名が共同 に予定している図書館サービス評価 LibQUAL+③ 議長として会議の運営にあたっていた 。参加者は第 ( ラ イブカル)2)実施の担当者である 。今回,夏季休 理への生かし方を理解し 学ぶことが目 的であ った 。 1巨l の2 20名に対し,前述のように 380名に拡大し , ている 。外国からの参加者は参加者中約 15%で 国の数は 7か国から 1 1か国に増えている 。 その半 数は LibQUAL+③にコンソーシアムで参加したカナ 本稿では,日本でも「アセスメントの文化」を共有 ダからの参加者である 。 アジアからは,日本から 4 暇を利用して本会議に参加したのは, LibQUAL+⑧ 調査ばかりでなく,広く図書館評価の実際や経営管 するために,会議の概要に続き,重点がおかれてい 名,ほかに中国,香港,シンガポールの各国から参 たトピ ック として,経営管理に生かす評価,様々な 加があった 。参加者の多くは図書館員であるが,図 9 「アセスメントの文化」の構築を目指して:第 2回「図書館評価」会議参加報告 書館情報学の教員も含まれている 。会議の主題の類 a t i o n " と“ assessment" の二種類の評価があるこ 似性から, 2007年ノースカロライナで開催された とは,図書館評価の理論的な権威であるスミス ・カ EBLIP4 (Evi dence-BasedLibraryandI n f o r m a t i o n P r a c t i c e ) で、会った参加者も多かった 3) 。 た。 “Evaluation" はあくまでも図書館が中心と 会期は 8月 4日から 6日の 3日聞が本会議 7日 が追加料金で行われる各種ワークショップである 。 本会議のプログラムは全体会議が 4コマ レッジのハーノン氏 ( P e t e rHernon) が強調してい なって行う危機管理的な性質のもので,“ assessment"が今回の会議の主眼とされている 。 こちら 3セッ は図書館と政府や認定団体など,より大きな組織と ションが同時におこなわれるパラレルセッションが の関係付けや,利害関係者の期待や必要性にいかに 8コマで合計 24セッションあった O ここではペー 図書館が応えているかに焦点があり,経営の根幹に パ一発表が 62件あった 。 ほかにレセプションが 2 回組み込まれ,初日のレセプション時にあわせたポ 組織の目標との関わりで分析し経営に生かすとい スター発表が 43件あった 。 この発表件数も前回の う視点が重要となってくるという主張であろう 。 40ペーパー, 20ポスターから大 1届に増えている 。 関わるものである 。 したがって,評価の結果を母体 評価を経営管理に生かすには,まず組織文化に評 390ドルの参加費には 3日間の昼食と 2日目のレセ 価を定着させること,すなわちセッションの題名に プションでの夕食が含まれており,丸 3日間,参加 も使われていた「アセスメントの文化」の構築が必 者同士が常に情報交換する機会を得ることができ 要である 。 このセッションでウィルソン氏は評価を る ペーパー発表のテーマとその数は表 1のとおり 生命椋 ( L i f e b l o o d ),つまりこれがなければ生きて である 。 以下の章からは, 重点がおかれていたト いけないものとしなければいけないと表現してい ピックごとに発表内容などを紹介する 。 た。 また,ヒラー氏は,不平の文化 (Culture o f O compl a i n t ) をアセスメントの文化 (Culture o f 3 .経営管理に生かす評価 まず強調されていたことは,評価を経営管理に生 かすことの重要性である 。評価を行い,その結果を 受けた対応策について必要な意思決定がなされ,改 善に結びっくことで初めて組織の進展が見られる O 経営管理に生かされる評価とはどのようなものか, そのために何をなすべきか,さらには誰が評価を行 うべきかについてあわせて議論されていた。 経営に生かされる評価としては,特にアセスメン トの視点が重要で、あるという 主張があった。“ e v a l u 表 1 ペーパー 6 2件 ( 2 4セッション)の内訳 種類 セッション セッションタイトル ( 発表)数 (セッション数) 6 .( 16 ) 評価と マネジメント 評価手法 特定 サービス 8 -( 2 3) 9 -( 21 ) ( 2) 図書館員養成 1 AssessmentP l a n s ; O r g a n i z a t i o n a lC u l t u r巴 ( 2) ; ManagementI n f o r m a t i o n ; P l a n n i n gt oA c t i o n ; Datai n t oOutcomes M e t h o d s ;S t a t i s t i c a lD a t a ; Q u a l i t a t i v eM e t h o d s ; E M e t r i c s ;E v a l u a t i o n M e t r i c s ;Impact lEva l u a t i o n ; LibQUAL+③; LibQUAL+③ Comments フィードバックを受け止めることで前進できること を示唆した O ま た , 英 国 ヨ ー ク 大 学 の タ ウ ン 氏 (StephenTown) は「我々図書館の活動が組織全体 にどんな影響を与えるか,このデジタル時代にどの ような価値があるかを語ることができることが重要 だ」として,評価の結果を 主張に変えて説得 す る能力が,アセスメントの文化を定着させるために 鍵であると説いた 。図書館評価が盛んになっている 北米の図書館でも,自らの図書館におけるアセスメ ントの文化の構築に苦心している図書館もあること は,最後の全体会議でわか った。参加者からの「評 価の結果を 実務に還元したいが順調にいかない。 ど うすればよいか」というに質問に対して,ウィルソ ン氏は 「 図書館長をこの会議に連れてくることです」 という回答をしていたからである O では,いったい誰が図書館の評価をするのか,と いうことは会議中たびたび話題となった。 ウィルソ ,ロ ン氏は 「図書館 の 様 々 な 部 署 から来た人々 J チェスター大学のギボンズ氏 ( SusanGibbons) は 「興味を持つ図書館員 なら誰でも 」 と多くの可能性 を示唆した 。会議 の参加者の 肩書 きには“ Assessment L i b r a r i a n " といった,専任者であることを示 す肩書きも多く見られた 。 しかし,図書館評価を担 I n f o r m a t i o nL i t e r a c y( 4) , C o l l e c t i o n s .P l a c e .R e f e r e n c e U s a b i l i t y D i g i t a lL i b r a r y, 様々な様子である 。北米研究図書' 館協会 ( ARL) の Assessmenti nLISEd 2007年 5月の調査によると,図書館評価を実施して ー 一' - 10 assessment) に変えることを主張し,前向きに 当するスタッフの組織の中での位置づけは,実際 いる 70の会員図書館のうち,専任者をおくところ 大学図書館研究 LXXXIV ( 2 0 0 8 . 1 2) が2 4( 34%),委員会が 1 6 (23%),独 立 部 署 が 9 を通じて,これからの図書館員に必要とされている, (13%) で,その他は必要に応じて関連部署で実施 調査,企画,プロジェクト推進,意思決定能力を養 したり,臨時委員会やコーディネータと併用したり うことができる 。 して対応している '1 。従来からの統計分析を超える ・ 990年 代 以 ような図書館評価の活動は,北米では 1 降さかんになっているが,図書館評価を主な業務と 002年 以 降 して従事するスタッフが出現したのは 2 で,専門の部署ができたのもほとんどが 2 000年 以 降であることから,個々の図書館の実情に合わせて, 新しい体制がつくられてきているようである 。 共同 議長のひとりヒラ一氏も,以前はワシントン大学の 科学図書館長の傍ら評価を実施していたが,図書館 の中で評価の業務が拡大し,現在は図書館長直轄の 評価と企画部門の長として評価事業にあたってい る。専任スタッフの背景も図書館情報学分野に限ら ない 。 たとえばデューク大学 (DukeU n i v e r s i t y ) 写真 2 レセプション風景:ワインの“質の評価"に 関する講演とティステイング 図書館で技術教育サービス評価プログラムを率いる ベランジャー氏 (YvonneBel a n g e r ) は,教育デザ 4 . 様々な評価手法 インの修士号を持ち,評価とその応用研究の専門家 北米研究図書館協会 (A RL)が主催ということで, LibQUAL+③に関する発表は多くあった 。あわせて, である 。 図書館評価の重要性が認識されるにつれ,図書館 その結果を生かして問題点を明らかにしたり,必要 員の養成課程でも 必要な教育が実施されるべきであ な対策をたてたり,また多面的に図書館を評価する るとして,ひとつのセッションで議論が行われた 。 ためには多様な評価手法が必要であることも 一貫し ハーノン氏によると,現在の図書館員は 一般的に評 て強調されていた 。会議中に言葉を交わ した参加者 価にあたるために必要な研究能力が不足している 。 のほとんどの図書館が LibQUAL+ ③はすでに実施済 それは養成教育,図書館,そして図書館員の共同責 みだ、った 。彼らの多くが, LibQUAL+ ⑮実施後に診 任であると苦言を呈した 。 そしてその原因は,教育 断や処方筆づくりのための追加調査も必要で,また 者は教育者としか話さず,図書館員は図書館員とし ③ 処方実行後に効果確認のための再度の LibQUAL+ か話さないからだと指摘し,今後は,図書館員養成 を実施するというサイクルを保つことが重要で、ある コースでも教育効果の確認のためにもっと評価の観 ③関 と口々に教えてくれた 。 以下では, LibQUAL+ 点を取り入れるべきであると発言 した 。 プログラム 連の発表と,その他の評価や利用者調査の手法の順 委員のひとりシラキュース大学のオークリーフ氏 で報告する 。 (Megan O a k l e a f ) は,同大学で教えている“ P l a n n i n g,Marketing,andA s s e s s i n gL i b r a r yS e r v i c e s " る。学生は実在の図書館のサービス向上の目標を立 LibQUAL+ ⑧実施とその後の対応について,カナ i ve r si t yo fL e t h b r i d g e, ダのレスブリッジ大学 (Un Alberta,Canada) の発表があった 。 同大学では, 2005年の LibQUAL+③実施に始まる評価活動から 1 2の提言が生 まれ,改善を実行して,さらなる評価 や調査活動を実施して 3年ごとに LibQUAL+ ③を て,文献レビューをした上で,アウトカムを意識し 実施するサイクルを確立しつつあるとのことであっ た評価の計画を立て実行する 。 そして,結果の分析 た。 イースタン・ワシントン大学 ( E a s t e r nWash- から提言の作成まで, 一連のプロジェクトを経験す i n g t o nU n i v e r s i t y )は , 2 004年の LibQUAL+③で るというものである 。 これまで対象となったサービ 明らかになった「場としての図書館j の必要性から スは様々で,インスタントメッセンジャーによるレ 対策を講じて, 2 0 0 7年の再度の調査で効果を確認し ファレンス,サービスポイントの 一点集中化,イン た結果を発表していた 。 同大学ではひとりで学習す フォメーション ・コモンズ,図書館内カフェなどが るための静かなスペースとグループ学習のためのコ 例として挙げられていた 。実際にこのプ ロジェクト ラボレーション・スペースの棲み分けのために家具 によって影響を受けた図書館は 2 007年から 30ほど を購入し,カフェを導入して,飲食ポリシーの変更 を数えるそうだ。学生はこの実践型のコ ースワーク などを実行した 。 しかし騒音の問題が依然として という興味深い科目について発表した 。 これは同大 c h o o lo fI n f o r m a t i o nの養成コースのコア科目の 学S ひとつで,蔵書構築の科目に置き換わったものであ 1 1 「アセスメントの文化」の構築を目指して ・第 2回「図書館評価」会議参加報告 残っていることが, 2 0 0 7年の調査で明らかになった。 んでいることなどが,量的にも質的にも明らかに また,書庫へのナピゲーションの不具合についても, 2 0 0 7年調査のコメントからいまだに満足なレベルに 達していないことがわかった。資料の分断を解消し 床と書架の色分けなどを実施したが,資料移動が完 全に終わっていないためかもしれないと原因を推測 している 。情報技術の不足についてはパソコンの台 数の増加,事務アプリケーションの導入,無線 LAN導入などを実施したので,関連する設問にお ける評点は同じであったが,コメントから満足度が あがっていることが確認されている 。 Li bQUAL+③の実際の手法では,コメントの分析 が多くの人の関心事で,独立したセッションが設け られていた。 LibQUAL+③は評点が結果として示さ なった 。テキスト分析のソフ トウェアを用いてコメ れる量的調査であるが,平均 30~40% の回答者が 最後の自由記入欄に何らかのコメントを記入する 。 このコメントの分析は質的調査に当たり, LibQUAL+@の評点を理解するためにも,既成の設 問にない問題点を探る上でも重要なのである 。分析 ツールとしては,英語のテキスト分析で一般的に用 いられる ATLASt i5) などのソフトウェアを使う図 書館も あるが,事務作業で使い慣れているマイクロ ソフト杜のエクセルで分析をする図書館も多いよう 0 0 4年の調 である 。 ノースイースタン大学からは, 2 , 2 007年の調査では 46%が 査では回答者の 52%が 記入したコメントの分析について発表があった 。同 大学ではテキスト分析のソフトウェアを使うスキル を持つスタッフが見つからず学習の時間もないた め,エクセルを用いた 。具体的にはコメントのテキ ストは考えのまとまりや,フレーズ,テーマごとに 分解してセルに入力し,それぞれに 2段階の索引語 を付与してソートするという操作を繰り返したそう である 。その結果,学習エリアの騒音に強い不満が あることがわかり,早急な対策がとられた 。 また, fS c i e n c eが利用できない 自然科学の教員から Webo ことについて多くのコメントが寄せられ,さっそく 追加資金の要求の材料として使うことができたと報 告があった。ノートルダム大学 ( N o t r eDameU n i v e r s i t y ) では, 2 0 0 6年に 1 1, 41 7人の学生と 1 , 5 8 6人 の教員の全員を対象に LibQUAL+③を実施した。回 0 0 2年よりも下がって 2 2 .5% であった 答率は前回の 2 が , , 10 00以上のコメントを得た 。 同大学でもエク セルを用い,各コメントを LibQUAL+ ⑧のコア設問 22問とローカルに設定した 5問の合計 27問にマッ ピングして分析した。 コメントは 3つの局面のすべ てにわたっていたが,具体的に学部生が学習エリア の2 4時間公開を求めていること,大学院生や教員 が資料の充実と迅速なドキュメントデリパリーを望 1 2 ントを分析したのは,カナダのブリティシュ ・コロ v e r s i t yo fB r i t i s hCol umb ia ) であ ンピア大学 (Uni る。同大学では ATLASt iとNESSTAR6) というソ フトウェアを用いて 3 69のコメントから 1 26のコー ドを得,“ Findabi li t y " (見つけられる度合い)に問 題があることがわかった。LibQUAL+@の設問の切 り口で得られた量的な分析結果ではわからなかった が,資料,サービスポイントや利用方法,必要な援 助をしてくれる人,すべてが 「見つ けにくい」とい う共通の問題点が明らかになった 。 2種類のソフト iの 結 果 を ウ ェ ア を 使 っ た の は , ATLAS t NESSTARで確認するためだ、ったそうである。 LibQUAL+⑧のコンソーシアムでの実施について は,大規模なコンソーシアムを実施したカナダの中 S u eP h e l p s) とラ ンチ 心人物であるフェルプス氏 ( でたまたま同席となり,フランス語と併用の調査の 工夫に苦労した話などを聞いた 。後で北米研究図書 館協会 (AR L)のキリルドゥ氏から,彼がいたから こそカナダのコンソーシアムが成功したという話を 聞いた。一方,あるセッションで隣席となった小規 模大学からの参加者からは,カナダのコンソーシア ムに参加したが,その生かし方がいまだにわからな いという声も聞かれた 。 なお,北米研究図書館協会 (AR L)では現在の LibQUAL+@に加え,短時間で 回答可能な LibQUAL+@Liteも開発中であることが 発表されていた。 LibQUAL+⑧とともに様々な調査を併用している 例としては,香港理工大学のポスター発表があった。 同大学はユーザのフィードパック,蔵書評価システ ム,満足度調査など様々な手法で利用者調査を実施 している 。LibQUAL+@の長所としては, 1)ベン チマーキングとしての有用性, 2) コンソーシアム メ ン バ 一 間 の 共 通 環 境 の 理 解 の 促 進 , 3) LibQUAL+⑧調査を通じて図書館の内外を含むマー ケテイングの機会を得たことをあげていた 。 同大学 000 は , LibQUAL+⑧で一大学として史上最大の 6, を超える回答を集めた大学である 。 ロチ ェスター大学のギボンズ氏は, 利用者を知る という視点とローカルであることが大切であるとし て,自分の大学で行われたいくつかの興味深い評価 のための調査手法を紹介した 。 キャンパスマップ調 査は,学生に自分のキャンパス内での居場所と滞在 時間をキャンパスマップに書き込んでもらう調査で ある 。 この調査の結果,学生が朝の 8時 30分に寮 を出ること,学習のピーク時間は午後 1 1時から午 前 1時で,きちんとした食事はとらないという 1日 大学図書館研究 LXXXIV ( 2 0 0 8. 12 ) のスケジュールが明らかになった 。 また,持ち物調 習支援のための情報リテラシー教育と学生の学習成 査は簡易カメラを学生に渡し,持ち物を撮影しても 果に関する評価研究が進むだろう 。 らうという調査で ,彼らは勉強に必要なものをすべ 閉会セッションにおいてハーノン氏は,非常に挑 て持ち歩くことがわかった 。 さらに,図書館の 戦的な表現をあえて使った 。 “ I n f o r m a t i o nl i t e r a c y Webサイ トで使わないものに印をつけてもらう調 i sd e a d " というもので ,米国大学 ・研究図書館協会 査もあった。彼女はこれらの調査結果は,この大学 にしか役に立たないものかもしれないが,すべての CAssoci a t i on o fColege andResearchL i b r a r i e s, ACR L)の基準 8)がすでに時代遅れで,もっと視覚 キャンパスには違いがあり,説明責任はローカルな 的なリテラシーなども取り入れた基準にすべきもの ものだという主張をしたのである 。 であると強調した 。 この 言葉を鵜呑み にすれば,情 報リテラシー教育に将来性はないということになる 5 . 情報リテラシー教育 情報リテラシ ー教育は図書館評価の対象となる個 別のサ ー ビスの中で,最大の注目領域である O 今回 が,次のステップへの可能性と発展を期待するもの であると,筆者らを含め参加者全員が受け止めたの ではないかと思う 。 の会議では 3日間のうちに 4つの分科会が設けら れ,それぞれ多くの聴衆を集めていた 。 中でも情報リテラシー教育の評価において,現在 最も精力的に実務と研究を行っているシラキュース 大学のオークリーフ氏は,情報リテラシー教育の評 価に関する学位論文を出したばかりで,最も輝いて いる 1人に見えた 。残念ながら筆者らは参加できな かったが,最終日には学習成果の評価を有料で学ぶ ワークショップのインストラクターも務めていた 。 情報リテラシー教育の評価は,米国においてさえ 手探りで行われてきた 。徐々に研究が進み,評価の 目的は,インストラクションする側のプログラムの 作成や教育方法の開発に活かすためというものか ら,学習の効果はどうか,あるいは学習効果を向上 させるために行うものというところに関心が移って いる 。 また,情報リテラシー教育がどのように影響 して 学習成果が上が ったかといった評価は, 学生た ちの感想,自己評価,インストラクターが行うアン ケートといった間接的な方法に限界にあるため,学 生たちが作成した書誌やレポー トなどを,直接的に ルブリックを用いて評価を行うといった試みが広 まっている 。 d u c a t i o n a lT e s t それぞれの発表に注目すると, E i n gS e r v i c e s (ETS) が開発した i S k i l l s7) を用いた 写真 3 会議の功労者への感謝の品の贈呈 上.マーサ ・キリルドゥ氏とスティーブ・ヒラ一氏 下 ・ジム ・セルフ氏とヒラー氏・箱の中味は Amazon 社の電子ブックリーダ K i n d l e ! 評価事例,評価データの活用法,道具を使った評価 の事例,ルブリックを使ったレポートの評価の事例 が紹介されていた 。 6. おわ りに 開会のセッションでワシントン大学図書館のヒ 米国における情報リテラシー教育への関心の高ま ラー氏は,雨が多くて有名なシアトルだが,会議の りは,大学の認証評価と深く関連していると思われ 開催された 8月に限り他の都市よりもす、っと降雨量 る。地域認証機関の 基準には図書館の教育支援に関 が少ないと,クイズ形式でデータを示し,笑いを する項目も含まれ,情報リテラシー教育は重要な基 誘っていた 。 これまでは,彼のようにデータの分析 準となっているためだ。 日本においても大学評価 ・ に慣れていて調査研究に興味のある特定の図書館員 学位授与機構や日本高等教育機構が設置された 。大 の存在があって図書館評価が本格的になり,部署や 学教育の質の 保証のための評価が浸透するにつれ, 職位が設けられた例も多いようである 。 しかし,図 大学図書館の評価に対する関心がさらに高まり,学 書館情報学の養成コースでも評価を取り入れたプロ 13 「アセスメントの文化」の構築を目指して:第 2回「図書館評価 J会議参加報告 ジ、エク トの科目が設け られてきたように ,これか ら は図書館評価がひとつの重要な経営管理に関わる活 動として定着し,そのために必要な能力開発も盛ん になっていくことが期待されている 。 目 日本において,筆者らは当学の利用者調査ワーキ ンググル ープの活動として,私立大学図書館協会の 008年 助成金を得て, LibQUAL+⑧の実施を前に 2 2月に「図書館利用者を知る: LibQUAL+ ⑧による 9) と題する国際ワークショップを本 サービス評価 J 学で開催し,大阪大学附属図書館での国際シンポジ ウム 1 0) らEBLlEBLIPへ ( 後編 ):医学図書館員による E v ide n c e B a s edP r a c t i c eの実践 情 報 管 理.2 0 0 8, v o . l5 1,n o .2 ,p .2 1 2 . . tS .;W h i t e,LS,e dL i b r a r yAssessmen. t 4)Wrigh Associ a t i o no fResearchL i b r a r i e s,2 0 0 7,1 9 2 p . ( SPECK i t3 0 3 ). // w w w . a t l a s t i . c o m/(2 0 0 8 1 1 2 3参 5)ATLASt ih t t p目 にも協力することができた 。 2 008年 1 0月に は本学で LibQUAL+③調査を実施予定であるが, 2 0 0 8年同期に同時に大阪大学はじめ複数の日本の大 学も同調査に参加す ることとなったと聞いている 。 国際基準での図書館評価コミュニテイの拡大として 喜 ばしいことである 。本報告が,さらに日本の図書 館におけるアセスメントの文化の普及に少しでも役 立つことができれば幸いである 。 注記・引用文献 1)L ib r a r yA s s e s s m e n tC o n f e r e n c e:B u i l d i n gE妊e c u s t a i n a b l e,P r a c t i c a lA s s e s sme ntS e a t t l e, t i v e,S Washington,Aug u s t4 7,2 0 0 8( o nl i ne ) .h t t p: / / l . i b r a r y a s s e s s m e n. torg, ( a c c e s s e d2 0 0 8 1 0 www 0 5) . t t p: / / www l . i b q u a . l o r g( 2 0 0 8 1 0 5参 2)LibQUAL+⑧ h 照) 3)会議の様子は以下に含まれる酒井由紀子.EBMか 照) 6)NESSTARh t t p: / /www.nesstar .com/( 2 0 0 8 1 1 2 3 参照) 7)i S k i l l sh t t p: / / www.ets. o r g / i s k i l l s /( 2 0 0 8 1 1 2 3参照) 8)I n f o r m a t i o nL i t e r a c yCompetencyS t a n d a r d sf o r H i g h e rE d u c a t i o n( o n l i n e) .A s s o c i a t i o no fC o l l e g e 0 0 0,1 6 p .h t t p: // www. andR e s e a r c hL i b ra ri e s,2 a l a . o r g/ a l a / mgrps/d i v s/ a c r l/ s t a nda r d s/ i n f o r m a t i o nl i t e r a c y c o m p e t e n c y . c f m( a c c e s s ed2 0 0 8 1 0 0 5) 図書館利用者を知る:LibQUAL+ ⑧によるサーピ 9)I 0 0 8年 2月 2 7日慶腰 ス評価 J国際ワークショ ップ 2 t t p・/ / p r o義塾大学三田キャンパス ( オンライン ) .h j e ct . li b . k e i o . a c j .p/ a s s e s s w g/ LQ_workshop.html ( 2 0 0 8 1 0 5参照) 1 0)I 図書館利用者を知る:LibQUAL+ ③によるサービ ス評価」国際シンポジウム 2 0 0 8年 2月 2 9日大阪大 学附属図 書館 ( オンライン ).h t t p: / /www l . i b ra r y. .ht m l o s a k a u . a c . jp/s ympo/s ympo_LibQUAL ( 2 0 0 8 1 05参照) ・ <2008.10.10 受理 さか い ゆ き こ , い ち こ み ど り 慶雁義塾大学 メデ ィアセ ンタ 一 利用者調査ワーキン ググループ> SAKAIYukiko,ICHII(uMidori B u i l d i n gac u l t u r eo fa s s e s s m e n t :ar e p o r tfromt h es e c o n dL i braryAssessmentConference, i nS e a t t l e, Aug u s t2 0 0 8 . t : ThesecondLibraryAssessmentConference,h e l di nAugust2 0 0 8a tt h eU n i v e r s i t yo fWashAbstrac i n g t o ni nS e a t t l e,wasf i ledt oc a p a c i t yw i t h3 8 0p a r c i p a n t s .Theg o a lo ft h i sc o n f e r e n c ei st ob u i l da“c u l t u r eo fa s s e s s m e n t "w i t h i nl i b r a r ymanagemen. tDuringt h et h r e e d a yc o n f e r e n c e,p r e s e n t a t i o n sandl iv e l yp a n e l sc o v e r e dt o p i c ssucha su s i n ga s s e s s m e n tt od r i v ed e c i s i o n m a k i n g,d i 旺e r e n tm e t h o d o l o g i e sf o r assessment,ands p e c i f i cs e r v i c e sl i k ei n f o rmationl i t e r a c yprograms.I nNorthAmericap r o g r e s son l i b r a r yassessmentc a nb es e e nt hroughi nc r e a s e dp a r t i c i p a t i o ni nLibQUAL+ ③,more u n i v e r s i t i e swi t h a s s e s s m e n ts p e ci a l i st s,andr e p o r t sone s t a bl ishmento ft h e i rt r a i n i n gp r o g r a m s .T h i sc o n f e r e n c ew i l ll i ke l y c o n t r i b u t et ot h ef u r t h e rexpansi ono ft h el i b r a r ya s s e s s m e n tcommunity. Keywords:l i b r a r ya s s e s s m e n t/LibQUAL+⑧ 14 / ARL