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「アセス メ ントの 文化」の構築 を目指 して・
第 2回「図書館評価
」 会議参加報告
酒 井 由紀子
, 市 古 みどり
抄録:第 2回「図書館評価」会議は, 2
0
08年 8月シアトル市のワシン トン大学で 3
8
0名の定員いっぱいの参
加者を迎え開催された 。同会議は経営の根幹にかかわる「アセスメントの文化 Jの構築を目指している 。 3
日間の会期中,経営管理に生かす評価,さまざまな評価手法,情報リテラシー教育など特定サ ー ビスに関す
る発表や活発な議論が行われた 。北米では LibQUAL+⑧が普及 しており,図書館評価の専任者や部署をもっ
大学も増え,養成科目の設置も報告されるなど,図書館評価が進展している 。本会議がさらなる図書館評価
コミュニティの拡大に貢献するだろう 。
ibQUAL+⑧
, ARL
キーワード:図書館評価,アセスメント ,L
1
. はじめに
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no
fResearch
北米研究図書館協会 (As
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. ARL) などの主催に よる第 2回「図書館
評価」会議 (
2
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yAssessmentC
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ment)1) は
, 2
0
0
8年 8月,米国ワシントン 州 シアト
ルのワシントン大学で開催された 。会場は,同大学
のマスコット,ハスキー犬の名を冠したハスキー学
u
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g) である 。歓迎ス
生会館 (HuskyUnionB
ピーチに立った同大学図書館長をつとめるウィルソ
ン氏 (
B
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yWi
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n) は
, 2
0
0
6年に開催された 第 1
回会議の閉会のあいさつでの約束を繰り返した 。
「私は保証します 。すべての街角においしいコー
写真 1 会場前のハスキー犬と筆者ら
評価手法,情報リテラシー教育の 3つに分け,筆者
ヒーを,すべてのお 皿にサーモンを,そして何より
らの私見も交えて報告する 。
重要なの は,図書館評価のコミュニテイを拡大する
。彼女の 言 うとおり,図書館評価
素敵な会議 を!J
への関心の高まりからそのコミュニテイは着実に拡
2
. 会議の概要
本会議は 2006年ヴァージニア州シャーロッツピ
大しており,
ルで開催された会議に続く,第 2回の会議である 。
r
図書館評価」というたったひとつの
課題に特化した会議ながら,参加者は 3
80名と定員
いっぱいであった 。会議の参加登録は 4月に開始さ
れ 6月までの予定であったが
5月にはすでに満杯
で順番待ちリス トができていたほどである O
LibQUAL+@の開発元でもある北米研究図書館協会
(ARL)のほかヴ ァージニア大学図書館 とワ シン ト
ン大学図書館が共催している 。それぞれの組織から,
LibQUAL+③のワークショ ップなどでも おなじみの
筆者ら は慶謄義塾大学メディア センター利用者調
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u
),セルフ氏
キ リ ル ド ゥ 氏 (Martha K
0月
査ワーキンググループのメンバーで, 2008年 1
(
JimS
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f
),ヒラー氏 (
S
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e
r)の 3名が共同
に予定している図書館サービス評価 LibQUAL+③
議長として会議の運営にあたっていた 。参加者は第
(
ラ イブカル)2)実施の担当者である 。今回,夏季休
理への生かし方を理解し 学ぶことが目 的であ った 。
1巨l
の2
20名に対し,前述のように 380名に拡大し
,
ている 。外国からの参加者は参加者中約 15%で
国の数は 7か国から 1
1か国に増えている 。 その半
数は LibQUAL+③にコンソーシアムで参加したカナ
本稿では,日本でも「アセスメントの文化」を共有
ダからの参加者である 。 アジアからは,日本から 4
暇を利用して本会議に参加したのは, LibQUAL+⑧
調査ばかりでなく,広く図書館評価の実際や経営管
するために,会議の概要に続き,重点がおかれてい
名,ほかに中国,香港,シンガポールの各国から参
たトピ ック として,経営管理に生かす評価,様々な
加があった 。参加者の多くは図書館員であるが,図
9
「アセスメントの文化」の構築を目指して:第 2回「図書館評価」会議参加報告
書館情報学の教員も含まれている 。会議の主題の類
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" と“ assessment" の二種類の評価があるこ
似性から, 2007年ノースカロライナで開催された
とは,図書館評価の理論的な権威であるスミス ・カ
EBLIP4 (Evi
dence-BasedLibraryandI
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) で、会った参加者も多かった 3)
。
た。 “Evaluation" はあくまでも図書館が中心と
会期は 8月 4日から 6日の 3日聞が本会議
7日
が追加料金で行われる各種ワークショップである 。
本会議のプログラムは全体会議が 4コマ
レッジのハーノン氏 (
P
e
t
e
rHernon) が強調してい
なって行う危機管理的な性質のもので,“ assessment"が今回の会議の主眼とされている 。 こちら
3セッ
は図書館と政府や認定団体など,より大きな組織と
ションが同時におこなわれるパラレルセッションが
の関係付けや,利害関係者の期待や必要性にいかに
8コマで合計 24セッションあった O ここではペー
図書館が応えているかに焦点があり,経営の根幹に
パ一発表が 62件あった 。 ほかにレセプションが 2
回組み込まれ,初日のレセプション時にあわせたポ
組織の目標との関わりで分析し経営に生かすとい
スター発表が 43件あった 。 この発表件数も前回の
う視点が重要となってくるという主張であろう 。
40ペーパー, 20ポスターから大 1届に増えている 。
関わるものである 。 したがって,評価の結果を母体
評価を経営管理に生かすには,まず組織文化に評
390ドルの参加費には 3日間の昼食と 2日目のレセ
価を定着させること,すなわちセッションの題名に
プションでの夕食が含まれており,丸 3日間,参加
も使われていた「アセスメントの文化」の構築が必
者同士が常に情報交換する機会を得ることができ
要である 。 このセッションでウィルソン氏は評価を
る ペーパー発表のテーマとその数は表 1のとおり
生命椋 (
L
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),つまりこれがなければ生きて
である 。 以下の章からは, 重点がおかれていたト
いけないものとしなければいけないと表現してい
ピックごとに発表内容などを紹介する 。
た。 また,ヒラー氏は,不平の文化 (Culture o
f
O
compl
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) をアセスメントの文化 (Culture o
f
3
.経営管理に生かす評価
まず強調されていたことは,評価を経営管理に生
かすことの重要性である 。評価を行い,その結果を
受けた対応策について必要な意思決定がなされ,改
善に結びっくことで初めて組織の進展が見られる O
経営管理に生かされる評価とはどのようなものか,
そのために何をなすべきか,さらには誰が評価を行
うべきかについてあわせて議論されていた。
経営に生かされる評価としては,特にアセスメン
トの視点が重要で、あるという 主張があった。“
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表 1 ペーパー 6
2件 (
2
4セッション)の内訳
種類
セッション セッションタイトル
(
発表)数 (セッション数)
6
.(
16
)
評価と
マネジメント
評価手法
特定
サービス
8
-(
2
3)
9
-(
21
)
(
2)
図書館員養成 1
AssessmentP
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;Impact
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LibQUAL+③;
LibQUAL+③ Comments
フィードバックを受け止めることで前進できること
を示唆した O ま た , 英 国 ヨ ー ク 大 学 の タ ウ ン 氏
(StephenTown) は「我々図書館の活動が組織全体
にどんな影響を与えるか,このデジタル時代にどの
ような価値があるかを語ることができることが重要
だ」として,評価の結果を 主張に変えて説得
す
る能力が,アセスメントの文化を定着させるために
鍵であると説いた 。図書館評価が盛んになっている
北米の図書館でも,自らの図書館におけるアセスメ
ントの文化の構築に苦心している図書館もあること
は,最後の全体会議でわか った。参加者からの「評
価の結果を 実務に還元したいが順調にいかない。 ど
うすればよいか」というに質問に対して,ウィルソ
ン氏は 「
図書館長をこの会議に連れてくることです」
という回答をしていたからである O
では,いったい誰が図書館の評価をするのか,と
いうことは会議中たびたび話題となった。 ウィルソ
,ロ
ン氏は 「図書館 の 様 々 な 部 署 から来た人々 J
チェスター大学のギボンズ氏 (
SusanGibbons) は
「興味を持つ図書館員 なら誰でも 」 と多くの可能性
を示唆した 。会議 の参加者の 肩書 きには“ Assessment L
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" といった,専任者であることを示
す肩書きも多く見られた 。 しかし,図書館評価を担
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様々な様子である 。北米研究図書'
館協会 (
ARL) の
Assessmenti
nLISEd
2007年 5月の調査によると,図書館評価を実施して
ー
一'
-
10
assessment) に変えることを主張し,前向きに
当するスタッフの組織の中での位置づけは,実際
いる 70の会員図書館のうち,専任者をおくところ
大学図書館研究 LXXXIV (
2
0
0
8
.
1
2)
が2
4(
34%),委員会が 1
6 (23%),独 立 部 署 が 9
を通じて,これからの図書館員に必要とされている,
(13%) で,その他は必要に応じて関連部署で実施
調査,企画,プロジェクト推進,意思決定能力を養
したり,臨時委員会やコーディネータと併用したり
うことができる 。
して対応している
'1
。従来からの統計分析を超える
・
990年 代 以
ような図書館評価の活動は,北米では 1
降さかんになっているが,図書館評価を主な業務と
002年 以 降
して従事するスタッフが出現したのは 2
で,専門の部署ができたのもほとんどが 2
000年 以
降であることから,個々の図書館の実情に合わせて,
新しい体制がつくられてきているようである 。 共同
議長のひとりヒラ一氏も,以前はワシントン大学の
科学図書館長の傍ら評価を実施していたが,図書館
の中で評価の業務が拡大し,現在は図書館長直轄の
評価と企画部門の長として評価事業にあたってい
る。専任スタッフの背景も図書館情報学分野に限ら
ない 。 たとえばデューク大学 (DukeU
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)
写真 2 レセプション風景:ワインの“質の評価"に
関する講演とティステイング
図書館で技術教育サービス評価プログラムを率いる
ベランジャー氏 (YvonneBel
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g
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r
) は,教育デザ
4
. 様々な評価手法
インの修士号を持ち,評価とその応用研究の専門家
北米研究図書館協会 (A
RL)が主催ということで,
LibQUAL+③に関する発表は多くあった 。あわせて,
である 。
図書館評価の重要性が認識されるにつれ,図書館
その結果を生かして問題点を明らかにしたり,必要
員の養成課程でも 必要な教育が実施されるべきであ
な対策をたてたり,また多面的に図書館を評価する
るとして,ひとつのセッションで議論が行われた 。
ためには多様な評価手法が必要であることも 一貫し
ハーノン氏によると,現在の図書館員は 一般的に評
て強調されていた 。会議中に言葉を交わ した参加者
価にあたるために必要な研究能力が不足している 。
のほとんどの図書館が LibQUAL+
③はすでに実施済
それは養成教育,図書館,そして図書館員の共同責
みだ、った 。彼らの多くが, LibQUAL+
⑮実施後に診
任であると苦言を呈した 。 そしてその原因は,教育
断や処方筆づくりのための追加調査も必要で,また
者は教育者としか話さず,図書館員は図書館員とし
③
処方実行後に効果確認のための再度の LibQUAL+
か話さないからだと指摘し,今後は,図書館員養成
を実施するというサイクルを保つことが重要で、ある
コースでも教育効果の確認のためにもっと評価の観
③関
と口々に教えてくれた 。 以下では, LibQUAL+
点を取り入れるべきであると発言 した 。 プログラム
連の発表と,その他の評価や利用者調査の手法の順
委員のひとりシラキュース大学のオークリーフ氏
で報告する 。
(Megan O
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) は,同大学で教えている“ P
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g,Marketing,andA
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"
る。学生は実在の図書館のサービス向上の目標を立
LibQUAL+
⑧実施とその後の対応について,カナ
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g
e,
ダのレスブリッジ大学 (Un
Alberta,Canada) の発表があった 。 同大学では,
2005年の LibQUAL+③実施に始まる評価活動から
1
2の提言が生 まれ,改善を実行して,さらなる評価
や調査活動を実施して 3年ごとに LibQUAL+
③を
て,文献レビューをした上で,アウトカムを意識し
実施するサイクルを確立しつつあるとのことであっ
た評価の計画を立て実行する 。 そして,結果の分析
た。 イースタン・ワシントン大学 (
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nWash-
から提言の作成まで, 一連のプロジェクトを経験す
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)は
, 2
004年の LibQUAL+③で
るというものである 。 これまで対象となったサービ
明らかになった「場としての図書館j の必要性から
スは様々で,インスタントメッセンジャーによるレ
対策を講じて, 2
0
0
7年の再度の調査で効果を確認し
ファレンス,サービスポイントの 一点集中化,イン
た結果を発表していた 。 同大学ではひとりで学習す
フォメーション ・コモンズ,図書館内カフェなどが
るための静かなスペースとグループ学習のためのコ
例として挙げられていた 。実際にこのプ ロジェクト
ラボレーション・スペースの棲み分けのために家具
によって影響を受けた図書館は 2
007年から 30ほど
を購入し,カフェを導入して,飲食ポリシーの変更
を数えるそうだ。学生はこの実践型のコ ースワーク
などを実行した 。 しかし騒音の問題が依然として
という興味深い科目について発表した 。 これは同大
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nの養成コースのコア科目の
学S
ひとつで,蔵書構築の科目に置き換わったものであ
1
1
「アセスメントの文化」の構築を目指して ・第 2回「図書館評価」会議参加報告
残っていることが, 2
0
0
7年の調査で明らかになった。
んでいることなどが,量的にも質的にも明らかに
また,書庫へのナピゲーションの不具合についても,
2
0
0
7年調査のコメントからいまだに満足なレベルに
達していないことがわかった。資料の分断を解消し
床と書架の色分けなどを実施したが,資料移動が完
全に終わっていないためかもしれないと原因を推測
している 。情報技術の不足についてはパソコンの台
数の増加,事務アプリケーションの導入,無線
LAN導入などを実施したので,関連する設問にお
ける評点は同じであったが,コメントから満足度が
あがっていることが確認されている 。
Li
bQUAL+③の実際の手法では,コメントの分析
が多くの人の関心事で,独立したセッションが設け
られていた。 LibQUAL+③は評点が結果として示さ
なった 。テキスト分析のソフ トウェアを用いてコメ
れる量的調査であるが,平均 30~40% の回答者が
最後の自由記入欄に何らかのコメントを記入する 。
このコメントの分析は質的調査に当たり,
LibQUAL+@の評点を理解するためにも,既成の設
問にない問題点を探る上でも重要なのである 。分析
ツールとしては,英語のテキスト分析で一般的に用
いられる ATLASt
i5) などのソフトウェアを使う図
書館も あるが,事務作業で使い慣れているマイクロ
ソフト杜のエクセルで分析をする図書館も多いよう
0
0
4年の調
である 。 ノースイースタン大学からは, 2
, 2
007年の調査では 46%が
査では回答者の 52%が
記入したコメントの分析について発表があった 。同
大学ではテキスト分析のソフトウェアを使うスキル
を持つスタッフが見つからず学習の時間もないた
め,エクセルを用いた 。具体的にはコメントのテキ
ストは考えのまとまりや,フレーズ,テーマごとに
分解してセルに入力し,それぞれに 2段階の索引語
を付与してソートするという操作を繰り返したそう
である 。その結果,学習エリアの騒音に強い不満が
あることがわかり,早急な対策がとられた 。 また,
fS
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eが利用できない
自然科学の教員から Webo
ことについて多くのコメントが寄せられ,さっそく
追加資金の要求の材料として使うことができたと報
告があった。ノートルダム大学 (
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) では, 2
0
0
6年に 1
1,
41
7人の学生と 1
,
5
8
6人
の教員の全員を対象に LibQUAL+③を実施した。回
0
0
2年よりも下がって 2
2
.5% であった
答率は前回の 2
が
, ,
10
00以上のコメントを得た 。 同大学でもエク
セルを用い,各コメントを LibQUAL+
⑧のコア設問
22問とローカルに設定した 5問の合計 27問にマッ
ピングして分析した。 コメントは 3つの局面のすべ
てにわたっていたが,具体的に学部生が学習エリア
の2
4時間公開を求めていること,大学院生や教員
が資料の充実と迅速なドキュメントデリパリーを望
1
2
ントを分析したのは,カナダのブリティシュ ・コロ
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hCol
umb
ia
) であ
ンピア大学 (Uni
る。同大学では ATLASt
iとNESSTAR6) というソ
フトウェアを用いて 3
69のコメントから 1
26のコー
ドを得,“ Findabi
li
t
y
" (見つけられる度合い)に問
題があることがわかった。LibQUAL+@の設問の切
り口で得られた量的な分析結果ではわからなかった
が,資料,サービスポイントや利用方法,必要な援
助をしてくれる人,すべてが 「見つ けにくい」とい
う共通の問題点が明らかになった 。 2種類のソフト
iの 結 果 を
ウ ェ ア を 使 っ た の は , ATLAS t
NESSTARで確認するためだ、ったそうである。
LibQUAL+⑧のコンソーシアムでの実施について
は,大規模なコンソーシアムを実施したカナダの中
S
u
eP
h
e
l
p
s) とラ ンチ
心人物であるフェルプス氏 (
でたまたま同席となり,フランス語と併用の調査の
工夫に苦労した話などを聞いた 。後で北米研究図書
館協会 (AR
L)のキリルドゥ氏から,彼がいたから
こそカナダのコンソーシアムが成功したという話を
聞いた。一方,あるセッションで隣席となった小規
模大学からの参加者からは,カナダのコンソーシア
ムに参加したが,その生かし方がいまだにわからな
いという声も聞かれた 。 なお,北米研究図書館協会
(AR
L)では現在の LibQUAL+@に加え,短時間で
回答可能な LibQUAL+@Liteも開発中であることが
発表されていた。
LibQUAL+⑧とともに様々な調査を併用している
例としては,香港理工大学のポスター発表があった。
同大学はユーザのフィードパック,蔵書評価システ
ム,満足度調査など様々な手法で利用者調査を実施
している 。LibQUAL+@の長所としては, 1)ベン
チマーキングとしての有用性, 2) コンソーシアム
メ ン バ 一 間 の 共 通 環 境 の 理 解 の 促 進 , 3)
LibQUAL+⑧調査を通じて図書館の内外を含むマー
ケテイングの機会を得たことをあげていた 。 同大学
000
は
, LibQUAL+⑧で一大学として史上最大の 6,
を超える回答を集めた大学である 。
ロチ ェスター大学のギボンズ氏は, 利用者を知る
という視点とローカルであることが大切であるとし
て,自分の大学で行われたいくつかの興味深い評価
のための調査手法を紹介した 。 キャンパスマップ調
査は,学生に自分のキャンパス内での居場所と滞在
時間をキャンパスマップに書き込んでもらう調査で
ある 。 この調査の結果,学生が朝の 8時 30分に寮
を出ること,学習のピーク時間は午後 1
1時から午
前 1時で,きちんとした食事はとらないという 1日
大学図書館研究 LXXXIV (
2
0
0
8.
12
)
のスケジュールが明らかになった 。 また,持ち物調
習支援のための情報リテラシー教育と学生の学習成
査は簡易カメラを学生に渡し,持ち物を撮影しても
果に関する評価研究が進むだろう 。
らうという調査で ,彼らは勉強に必要なものをすべ
閉会セッションにおいてハーノン氏は,非常に挑
て持ち歩くことがわかった 。 さらに,図書館の
戦的な表現をあえて使った 。 “
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Webサイ トで使わないものに印をつけてもらう調
i
sd
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d
" というもので ,米国大学 ・研究図書館協会
査もあった。彼女はこれらの調査結果は,この大学
にしか役に立たないものかもしれないが,すべての
CAssoci
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fColege andResearchL
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s,
ACR
L)の基準 8)がすでに時代遅れで,もっと視覚
キャンパスには違いがあり,説明責任はローカルな
的なリテラシーなども取り入れた基準にすべきもの
ものだという主張をしたのである 。
であると強調した 。 この 言葉を鵜呑み にすれば,情
報リテラシー教育に将来性はないということになる
5
. 情報リテラシー教育
情報リテラシ ー教育は図書館評価の対象となる個
別のサ ー ビスの中で,最大の注目領域である O 今回
が,次のステップへの可能性と発展を期待するもの
であると,筆者らを含め参加者全員が受け止めたの
ではないかと思う 。
の会議では 3日間のうちに 4つの分科会が設けら
れ,それぞれ多くの聴衆を集めていた 。
中でも情報リテラシー教育の評価において,現在
最も精力的に実務と研究を行っているシラキュース
大学のオークリーフ氏は,情報リテラシー教育の評
価に関する学位論文を出したばかりで,最も輝いて
いる 1人に見えた 。残念ながら筆者らは参加できな
かったが,最終日には学習成果の評価を有料で学ぶ
ワークショップのインストラクターも務めていた 。
情報リテラシー教育の評価は,米国においてさえ
手探りで行われてきた 。徐々に研究が進み,評価の
目的は,インストラクションする側のプログラムの
作成や教育方法の開発に活かすためというものか
ら,学習の効果はどうか,あるいは学習効果を向上
させるために行うものというところに関心が移って
いる 。 また,情報リテラシー教育がどのように影響
して 学習成果が上が ったかといった評価は, 学生た
ちの感想,自己評価,インストラクターが行うアン
ケートといった間接的な方法に限界にあるため,学
生たちが作成した書誌やレポー トなどを,直接的に
ルブリックを用いて評価を行うといった試みが広
まっている 。
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それぞれの発表に注目すると, E
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s (ETS) が開発した i
S
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l
s7) を用いた
写真 3 会議の功労者への感謝の品の贈呈
上.マーサ ・キリルドゥ氏とスティーブ・ヒラ一氏
下 ・ジム ・セルフ氏とヒラー氏・箱の中味は Amazon
社の電子ブックリーダ K
i
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評価事例,評価データの活用法,道具を使った評価
の事例,ルブリックを使ったレポートの評価の事例
が紹介されていた 。
6. おわ りに
開会のセッションでワシントン大学図書館のヒ
米国における情報リテラシー教育への関心の高ま
ラー氏は,雨が多くて有名なシアトルだが,会議の
りは,大学の認証評価と深く関連していると思われ
開催された 8月に限り他の都市よりもす、っと降雨量
る。地域認証機関の 基準には図書館の教育支援に関
が少ないと,クイズ形式でデータを示し,笑いを
する項目も含まれ,情報リテラシー教育は重要な基
誘っていた 。 これまでは,彼のようにデータの分析
準となっているためだ。 日本においても大学評価 ・
に慣れていて調査研究に興味のある特定の図書館員
学位授与機構や日本高等教育機構が設置された 。大
の存在があって図書館評価が本格的になり,部署や
学教育の質の 保証のための評価が浸透するにつれ,
職位が設けられた例も多いようである 。 しかし,図
大学図書館の評価に対する関心がさらに高まり,学
書館情報学の養成コースでも評価を取り入れたプロ
13
「アセスメントの文化」の構築を目指して:第 2回「図書館評価 J会議参加報告
ジ、エク トの科目が設け られてきたように ,これか ら
は図書館評価がひとつの重要な経営管理に関わる活
動として定着し,そのために必要な能力開発も盛ん
になっていくことが期待されている 。
目
日本において,筆者らは当学の利用者調査ワーキ
ンググル ープの活動として,私立大学図書館協会の
008年
助成金を得て, LibQUAL+⑧の実施を前に 2
2月に「図書館利用者を知る: LibQUAL+
⑧による
9) と題する国際ワークショップを本
サービス評価 J
学で開催し,大阪大学附属図書館での国際シンポジ
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後編 ):医学図書館員による
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にも協力することができた 。 2
008年 1
0月に
は本学で LibQUAL+③調査を実施予定であるが,
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8年同期に同時に大阪大学はじめ複数の日本の大
学も同調査に参加す ることとなったと聞いている 。
国際基準での図書館評価コミュニテイの拡大として
喜 ばしいことである 。本報告が,さらに日本の図書
館におけるアセスメントの文化の普及に少しでも役
立つことができれば幸いである 。
注記・引用文献
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3)会議の様子は以下に含まれる酒井由紀子.EBMか
照)
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慶雁義塾大学 メデ ィアセ ンタ 一 利用者調査ワーキン
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