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ベトナム国研修報告

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ベトナム国研修報告
東海職業能力開発大学校浜松校紀要第21号
ベトナム国研修報告
~サーボモータ及びステッピングモータ技術~
Vietnam Country training report ~Servo Motor and Stepper Motor Technique~
電気エネルギー制御科
小沢 浩二
1.はじめに
2014年9月24日から10月10日までの約3
週間、ベトナム「ハノイ工業大学技術者育成支援プロ
ジェクト」におけるベトナム国別研修「サーボモータ
及びステッピングモータ技術」を実施したので報告す
る。
2.プロジェクトについて
JICAはベトナム政府との合意に基づき、200
0年4月に技術協力プロジェクトがスタートした。第
1期技術協力プロジェクト(2000年4月~2005
図1 ハノイ工業大学
年3月までの5年間)により、教育訓練機材が整えら
識・技術・ノウハウをベトナムの他校へ普及させるた
れ、機械加工・金属加工・電子制御分野の2年制職業
め、指導員研修を開発、実施することになっている。
訓練コースが新設された。これらのコースは「ベトナ
ム日本センター(VJC)
」として確立され、年間35
3.計画
今回のプロジェクトは、受入施設、機構本部、JI
0名の技能者を輩出。日系企業の評価も高い。
第2期技術協力プロジェクト(2010年1月~20
CAとが一体となった取組みである。5月末に機構本
13年1月までの3年間)では、”産業界の人材ニーズ
部と打ち合わせを実施し、国際関係業務、今回実施す
に沿った教育訓練カリキュラムの策定・実施能力の向
るプロジェクトの内容・実施経過、研修受入手続き(提
上”を目的としている。具体的な活動としては、職業訓
出書類、期日等)の確認、研修実施計画、テキスト等
練コースでは、企業ニーズに基づいた訓練カリキュラ
について説明があった。
ムの改善や就職支援、インターンシップを行っている。
使用するテキストをベトナム語(英語)に翻訳する
企業の在職者に対しては、機械保全や電気保全などの
ために、事前に作成しなくてはならないこと、研修後
短期訓練コースの実施や技能者の地位向上のための技
にベトナムで活用するための教材開発を作成する必要
能評価の試行などを実施した。
があることが通常の訓練とは特に異なっていた。また、
第3期技術協力プロジェクト(2013年6月から
訓練技法についても本校にて実施することになり、内
2016年6月までの3年間)
「指導員育成機能強化」
容の検討・テキストを作成することになった。
プロジェクトでは、これまで日本が支援してきたハノ
技能・技術を習得するためのテキストは在職者訓練、
イ工業大学が、日本レベルの職業訓練校の先行モデル
学卒者訓練で使用しているもの基本にした。特に初め
として、ベトナム国内の他に職業訓練校に対して、適
てステッピングモータ・サーボモータの技能技術を習
切に技術移転が実施できることを目的としている。具
得する時に難しいとされる設定・配線について追記し
体的には、研修員が日本での研修等から得た知見・知
た。
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訓練技法について、教材開発の一般的な手法につい
ては、職業能力開発総合大学校 能力開発専門学科
特任准教授 村上智広氏より、
“教材ストーリーの設
計”の英語版の使用許可を得ることができため研修に
て活用することにした。また、コース開発時の経緯や
苦労した点を伝えたいと思う。
教材作成するに当たって、ステッピングモータ・サ
ーボモータに関する機器は精度が求められることより、
高価であり、予算内で今回の実習にて使って機器を購
図2 開講式
入することは出来なかった。そのため、設定・配線を
重視し、ベトナムに戻ってから購入・実施できる実習
トウェア操作に関しての技能・技術は習得しているこ
装置を選定を検討したため、多くの時間を費やした。
とがわかり、サーボモータ及びステッピングモータの
特にコントローラは位置決めユニットを使用して制御
基本技術を理解から実施することとした。
授業は、ベトナム語(英語)のテキスト、機器をプ
する方式とした。
ロジェクターに表示しながら実施した。また。実習機
また、教材作成のねらい、装置概要(選定方法)
、教
器は1人1台を準備した。
材作成手順等をまとめたテキストも作成した。
下記のカリキュラムに沿い実施していった。
日本の技能・技術を確認してもらうために、工場見
学を検討した。一般的な窓越しからの見学ではなく、
・制御方式の種類
実際に稼働している機器に触れることができるような
・位置決め制御の仕組み
工場、浜松を代表する企業を選定した。しかし、住所
・構成要素の概略
が特定できない研修生は、見学の受け入れを断られる
・サーボモータ、ステッピングモータの特徴・原理・
種類
ことあり(外為法等)苦戦したが、最終的に浜松ホト
・位置決めコントローラ概要
ニクス株式会社となった。
・システム構成・仕様
・各部機能と配線
4.研修実施
・パラメータの設定
当初研修員は3人であったが、最終的に2人となっ
た。日本での研修は初めての29歳男性(ハノイ技能
・プログラミング
技術職業訓練短大 電気工学部 講師)
、日本での研修
(JOG運転、原点復帰、位置決め始動、エラー表示
1軸、2軸制御(補間運転)等)
は4回目の42歳男性(ハノイ工業大学 ベトナム・
日本センター 電気制御科長)
、通訳を中心に生活面の
通訳を介しての授業の実施のため、通常の授業より
世話をするJICA登録研修監理員の3人での実施と
も時間がかかった。
なった。
サーボモータの位置決め制御に必要なシステムは、
4-1 開講式
当校にて、開講式を実施し(図2)
、その後オリエン
テーションにて、施設概要、地域産業・生活環境等の
説明、施設見学等を実施した。
4-2 技能・技術の習得
オリエンテーションを実施して、研修生の技能・技
術、個々の研修の目的、今回使用する機器に対する事
前の習得レベル等を確認した。シーケンス制御、ソフ
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図3 実習風景
ベトナムで伝達研修を実施する機器とは異なることを
表1 教材一覧
想定し、各種機器のマニュアル・取扱説明を用いて説
明し、他機種でも対応できるように心がけた。
プログラミング技法を覚えた後で、難しいとされて
PLC
三菱 FX3U-16MR/ES
PLC プログラミングソフト
三菱 GX-Works2
ウェア
いるサーボモータのアンプのパラメータ設定、サーボ
位置決めユニット
三菱
教えた。しかし、幅広い技術要素が必要なため、説明
位置決めプログラミング
三菱 FX-PCS-VPS/WIN(FX2N-10GM 用)
に多くの時間を費やし、総合課題として、プログラミ
ソフトウェア
ング実習を用意していたが多くの時間を割くことがで
ステッピングモータ
オリエンタルモータ ARL46AA-1
きなかった。
1軸ステージ
オリジナルマインド L150
スイッチ・ランプボックス
SUS 入力 5 点、出力 5 点
モータと制御コントローラ(PLC)の配線の詳細を
FX2N-10GM
※PLC とモータ接続ケーブルはコネクタ・端子加工したものを購入
4-3 訓練技法
④教材作成実習
サーボモータ及びステッピングモータ技術について
の訓練技法について質疑応答を実施し、帰国後ベトナ
設計(レイアウト等の確認)
、組立・配線、動作確認、
ムにて実施する伝達研修で不安や問題点等について意
装置説明資料(各装置の役割や動作原理,装置全体の
見交換を行った。また、意見交換時に必要と思われる
回路図)
、テキスト作成の手順で実施した。
資料等を作成し配布した(在職者訓練のカリキュラム
オリエンテーション時に、作成する機器はすべて研
シートにて、当校で実施しているセミナー体系を説明
修員で組立てたいと伝えられため、事前の準備はせず、
した)
。また、実際に在職者訓練コース開発の経緯や苦
機器は箱詰めの状態で渡した。また使用する機器に付
労して点などを指導した。
属していたマニュアルは日本がほとんどだったため、
メーカHPより英語のマニュアルをダウンロードし、
“教材ストーリーの設計”を用いて、教材ストーリ
事前に渡した。
ーの設計法 、教材提示媒体の選定などを説明した。
初めてのステッピングモータと位置決めユニットの
4-4 教材開発
教材開発は下記の手順で実施した。
配線作業となるため、配線図を書くことが難しく苦労
①コンセプト
可能となった。しかし、機器の仕様確認・配線に時間
していたが、アドバイスを与えると動作させることが
目的(設計、配線、プログラミング技術の習得)
、目
がかかり、プログラム開発、テキスト開発までできな
標(ステッピングモータ制御の技能・技術の習得)を
かった(図4)
。
説明した。目的により使用する機器が異なるためであ
機器を設置、組立、配線、動作確認まで一連の流れ、
る。
難しさを理解し、今後普及が予想されるサーボ及びス
②対象者とコースフロー
サーボモータ及びステッピングモータ制技術に関す
るコースは、制御装置(PLC等)
、モータ技術等の基
礎知識がないと実施することができない。そのため、
体系的・段階的に実施することの重要性を伝えた。
③実習機器概要
実際に購入した機器一覧(表1)を用いて機器の確
認しながら、今回作成する実習装置の概要を説明した。
今回使用した主な実習機器を表1に示す。
図4 作成した実習機器
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本の機器の状況等が異なるため、研修員が機器に使い
テッピングモータの教材開発ができたと思う。
慣れるまで時間がかかった。しかし慣れてしまうと技
4-5 工場見学
静岡県磐田市にある、浜松ホトニクス豊岡製作所(電
能・技術の習得する時間が短くなり研修に対しての真
子事業部)の工場見学を実施した。高速・高感度の光
るサーボ及びステッピングモータの普及に少しでも貢
センサとして、医療・学術分野から産業分野まで応用
献できたことをうれしく思う。研修員が帰国後、カリ
範囲を広げる光電子増倍管の製造過程の見学、200
キュラム開発、実習機器の検討、伝達研修が実施され、
2年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊博士のカ
ベトナム人技能者の地位向上につながることを期待す
ミオカンデも浜松ホトニクス製のため展示を見ること
る。
剣さが伝わってきた。今回の研修で、ベトナムにおけ
ができた。研修生は、日本の工場の実作業を間近で見
多くの関係者の皆様のご協力により、初めての国別
ることで工場内の製造工程の理解が深まり、貴重な経
研修を無事に終えることができたこと、また大変貴重
験となったと思われる。
な経験をさせて頂いたことに感謝します。
4-6 成果発表会・評価会・閉講式
最終日に、研修した内容をまとめた成果発表会・評
価会を実施した(図5)
。成果報告は、プレゼンテーシ
ョン用ソフトを使用し報告した。また研修に関するア
ンケートを事前に実施し、研修の評価を行った。サー
ボ及びステッピングモータの技能・技術を身につける
ことでき研修目的を達成することができた。しかし、
プログラミングを実施する時間、教材作成する時間が
不足していたとの指摘があった。
図6 閉講式
図5 成果発表会・評価会
5.おわりに
休日には、浜松への散策(浜名湖、浜松城、浜松市
図7 見学(ETロボコン)
立美術館等)
、当校の学生が出場したETロボコン東海
大会(図7)に見学を行い、日本の文化にも触れあえ
たと思う。
当初は確立されている在職者訓練の内容を実施すれ
ばよいかと思っていたが、ベトナムにおける機器と日
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