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「AGRITECHNICA2011」報告

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「AGRITECHNICA2011」報告
AGRI TECHNICA 2011 報告書
1.事業目的
本プロジェクトでは,ドイツで開催される農業機械展(AGRI TECHNICA 2011)にJAPANブー
スを設置し,プロジェクト参加企業の畑・野菜用の農業機械等の製品群を出展する。また,EUに
おける販売戦略並びに製品のメンテナンス体制,EU安全規格等の認証取得並びに製品の性能確認
のための試運転及び性能評価の実施などを策定し,EUにおける販路開拓に向けた体制整備を進め
る。この展示会と同時に本格参入に向けEU圏および諸外国を含めた農業団体,バイヤーとの商談
会・マッチングを図るため,EU内のJETROなどの支援を得ながら,ディーラー等の選択や提携を
検討する。
北海道の農機メーカーの畑・野菜用農業機械を,3兆円の市場規模を有するEU最大の農業機械
展AGRI TECHNICA 2011への出展を足掛りに,北海道と同規模の農業経営が展開するEU圏におけ
る市場獲得に向けた販路開拓戦略を展開する。
2.AGRI TECHINICA 展示日程および開催場所
AGRI TECHNICA 農業機械展は 2 年に 1 回開催されており,展示会の主催者は,DLG(Deutsche
Landwirtschafts Gesellschaft e.V.)で,2011 年の開催日程は 11/13~11/19 の 7 日間である。2009 年の
開催時の出展社数は 2,308 社,来訪者数は 355,118 人で世界最大の農業機械展示会である。
展示場所は Hannover 市内の南方にあり,中央駅から市電で約 20 分の Messe 会場である。Messe
会場の敷地は約 50ha,建物の面積 38ha で,今回の展示会場数は 27 であった。詳細な展示会日程
は表 1 に示した。
北農工の展示ブースはホール 4 に設定され,入場者が最も多い北入口に近い会場である。この
ホールの一角に図 1 に示したような JAPAN パビリオンを設け,展示を行った。
表 1 展示会日程
月 日
11 月 10 日
11 月 11 日
11 月 12 日
11 月 13 日
11 月 14 日
11 月 15 日
11 月 16 日
11 月 17 日
11 月 18 日
11 月 19 日
11 月 20 日
11 月 21 日
11 月 22 日
内
木
金
土
日
月
火
水
木
金
土
日
月
火
移動(出国)
会場設営
プレ展示 開催時間:9:00~18:00
農業機械展 開催時間:9:00~18:00
会場片付け
移動(帰国)
1
容
図1 展示会場(ホール 4,JAPAN パビリオン)
3.AGRI TECHINICA 展示会
3.1 展示機種および JAPAN パビリオン
展示機械は 5 社,6 機種である(表 2)
。展示機械は EU で利用が見込まれる,にんじんハーベ
スタ,ポテトハーベスタ,除草機,ばれいしょ皮むき機,トラクタ用リヤバケットなどの畑・野菜
用機械である。これらの機械は小型・コンパクトで取り扱いやすい,損傷が少なく高い品質の農産
物の収穫や調製が可能,環境保全や労働負荷軽減などを目的として開発された機械である。EU で
あまり見かけない機械群であるが,EU で栽培面積が多い畑作物や野菜を対象とし,北海道と同程
度の経営規模の農家や有機栽培農家で利用可能性が高い機械とした。価格は,比較的高価な機械
もあるが,安価でありメンテナンスの少ない機械群である。
展示は JAPAN パビリオンとし,5 社共通のオープンスペースし,来訪者が見やすい展示とした。
表 2 展示機械
会社名
東洋農機
オサダ農機
サンエイ工業
サンエイ工業
エフ・イー
アトム農機
機種名
株間除草機
にんじん収穫機 2 条
ポテトハーベスタ SS-X
ポテトハーベスタ SS-2
ばれいしょ皮むき機
油圧バケット 19F-2SPH
全長 mm
1,430
4,660
4,600
2,500
2,808
1,600
全幅 mm
2,630
2,240
2,250
2,220
1,217
2,370
全高 mm
1,260
2,210
2,300
2,560
1,840
1,065
重量 kg
240
2,886
1,900
960
800
490
3.2 一般社団法人北海道農業機械工業会の展示
ホール 4 の広さは 19,800m2 であり,北農工の展示面積は 108m2 と僅かな面積である。展示に当
たって,フロアには絨毯,衝立のパネル,受付カウンター,水道や電気の配線を設け,パネルに
は北海道の風土や観光宣伝をかねて,北海道や市町村のポスターなどを貼付した。また,会場の
天井には国旗を配置し,展示場所がわかるように配慮した。来訪者には英文と独文のカタログを
用意し,各社の機械の動きがわかるように DVD と説明の通訳を配置した。
2
図 2 北農工の展示ブース(設置状況)
北農工のブースではカタログスタンドでカタログを配付した。多数の来訪者が足を止め DVD を
見ており,強く関心を持った方々が受付カウンターを訪れていた。来訪者にはカタログ配付,機
械の特徴や機能の説明,価格などの問い合わせに対応し,対応記録の記帳を行い,リストを作成
した。来訪者数は農家,ディーラー,公的機関であり,ディーラーの割合が高かった。問い合わ
せ内容は,価格,見積書作成,実演希望など,約 200 件,70 ヶ国であった。
市場開拓に留まらず,ヨーロッパ市場への販売に際して CE マークや REACH などの認証や規制
に対応する能力を付けること,国際企業としての広い視野を身につけること,常に最新情報を得
るアンテナを持つことも重要と考えられた。
アトム農機
エフ・イー
オサダ農機
サンエイ工業
東洋農機
北海道観光ポスター展示
3
北農工ブース
展示会スタッフ
通訳の皆さん
図 3 北農工の展示ブースでの事業参画者
3.3 2011AGRI TECHNICA 展示会の概要と展示機械
アグリテクニカは1985年開催以来,2年毎に開催され,「現状のトレンドと併せて、将来の方向
性を見出す先端技術を発信するプラットホーム」的役割を果たす農業機械展示会である。前回の
2009年には,世界36カ国から2,308社,うち海外から1,074社の出展があった。来場者は37万人以上
で,フランスのSIMA,イタリアのEIMA,スペインのFIMAを超える世界最大の国際展示会である。
2011年の開催で
は2,703社,その内
ドイツが1,360社,
国外が1,343社で
あり,開催ごとに
出展社数が増加
しているが,ほぼ
全ての会場を使
用した今回がほぼ
図 4 出展社数
上限と思われる。
海外からの出展社を多い順に見ると,イタリア311社,オランダ,
表 3 国外からの出展社数
Country
Italy
Netherlands
France
China
Austria
Turkey
Denmark
Canada
United States
United Kingdom
出展社数
311
112
86
82
76
70
59
49
49
42
112社,フランス86社,中国82社,オーストリア76社,次いでトルコ,
デンマークの順となっており,EU諸国の出展が多かった。目立った
のは中国からの出展が前回より増加していたことであった。
来場者の総数は419,212人で,ドイツ国内32.1万人,ドイツ以外か
らは9.8万人の参加であった。
来場者の55%は農家で,うち23%が50ha未満,23%が51~100ha,42%
が101~1000ha,残り12%が1000ha以上の経営規模という。大規模経
営の多いヨーロッパ中東部のロシア,チェコ,ウクライナや南北ア
メリカ,インド,中国,パキスタンなど途上国の参加者が増えてい
る。
4
図 5 入場者数
展示している農業機械は,大型化傾向は前回の展示会より続いており,一方精密農業,IT関連
の機器とそれを組み込んだ作業機が増加していた。大型化傾向はどこまで続くのかということが
話題となっていた。土壌踏圧,作業システム,エネルギーなどの観点から300PS程度が上限となる
のではないかと意見を持っている方が多かったが,結論はまだ先のようであった。
作業機の機能の高度化も進み,スプレーヤでは散布量制御は当り前でノズルや配管の洗浄シス
テム,ブロードキャスタでは風向により吐出量や方向を変え,散布分布の変動を減少される機能
などが展示されていた。普段から農家の利用が多い作業機についても着実に機能向上が図られて
おり,時流に流されない開発に次世代の北海道農業機械の姿を見たように感じた。
会場北入口
会場入口
表彰式会場
展示会場
大型トラクタ
大型コンバイン
5
にんじんハーベスタ Simon 社
にんじんハーベスタ ASA-Lift 社
大型播種l機
大型ビート積み込み機
ピックアップワゴン
かぼちゃ Hokkaido
図 6 展示会の様子
3.3 精密農業(Smart Farming)と技術革新や IT 化
27のホールで,より大きい,より早い,より広
いというコンセプトが見られた。いずれの作業機
もISO-BUSを採用した機種が多く,センサ技術を
応用した高機能化による作業の効率化を目指して
いる。2009年と比べるとISO-BUS対応のトラクタ
や作業機の機種数が増え,異なるメーカーのトラ
クタや作業機での利用が可能となっている。日本
の国産トラクタは今後の課題で,現状では日本国
内でISO-BUS対応の作業機を利用するとすれば,
輸入トラクタを使うしかない。
図 7 スマートファーミングのコンセプト
これまでは,試験研究による技術開発,生産者の経験・勘・努力により,作業の効率化や収量・
品質向上が進んだ。センサやITなど先端技術の急速な発展により,ナビシステム,各種のセンサ
が開発・実用化されており,得たデータをもとに作業計画や問題解決を行うシステムが開発され,
実用化に向かいつつある。
今回のアグリテクニカでは「スマートファーミング」という言葉が使用され,セミナーも開催
された。これは精密農業(Precision Farming)やIT,ロボット化を統合した概念,つまり「知的で持
続的な作物生産」である。初めての言葉で,定着するかは疑問である。
6
AGRI TECHNICAでは出展者が申請した機種の
中から画期的な開発品にはメダルが贈られる。金
メダルはAGCO Fendt社のGuide ConnectとKrone社
のNON-STOP Round Baler-Wrapperであった。Guide
Connectは1人のオペレータが操縦するトラクタに
もう1台のトラクタを自動追従させ,1人で2台のト
ラクタを制御するシステムである。耕起,砕土作
業を行っており,後方のトラクタは前方のトラク
タと無線で連携し,高精度GPSによって正確に自
動操舵されている。
図 8 AGCO Fendt 社の Guide Connect
銀メダルは39機種に与えられた。低損傷な高能率
オリーブ収穫機,ぶどう収穫機,所有するすべての自走機械を1つのキーで操作できるスマートキ
ー,フロントマウント作業機の揚力自動制御システム,トレーラブレーキシステム,テレハンド
ラー垂直リフトシステムなど,センサや電子部品と油圧装置を駆使した高機能機械とともに,ア
マゾネ社のブームスプレーヤのSmart RefillシステムやブロードキャスタのWind Control・Headland
Controlシステム,ラウチ社のブロードキャスタのSPREAD CONTROL,クバナランド社のGEO
spreadシステムなど,資材散布量や散布精度の最適制御技術などであった。
ブロードキャスタの Wind Control と Headland アマゾネ社
ブームスプレーヤの Smart Refill アマゾネ社
7
ブーム・ノズル洗浄
ISO BUS のモニター・コネクタ
IT 化 コンバイン
IT 化 ISU-BUS コネクタ
精密農業 施肥機
薄型の真空播種機
施肥播種機
図 9 ISO-BUS と IT 作業機
4.来訪者および情報収集
4.1 来訪者
北農工ブースのあるホール 4 は北入口に近く,またホール 4 内ではメーン通路沿いにあり,良
好な展示場所であったため,開催期間に多数の来訪者があった。来訪者は,DVD や機械を見て通
りすぎるあるいは立ち止まる人,機械の前や受付カウンターで話をする人,ミーティングテーブ
ルで話をする人などであった。来訪者が多すぎるため,総人数の把握は困難であった。また,ブ
ース内は 5 社の展示であったため,人数把握は困難であった。
名刺やメモなどから連絡先が確認できる各社への訪問者を取りまとめた(表 4)。総数は約 180
名で,内訳は農家,農産加工や各種資材などの農業関係者は 40 名,トラクタ,農業機械や部品な
どのメーカーは約 30 名,ディーラーは約 70 名,公的機関や研究機関は約 20 名,その他が 16 名
であった。
国別に見ると,EU が 90 名,東欧圏が 20 名,アジアが約 60 名,アフリカ 6 名,アメリカやオ
セアニアは僅かであった。国別の内訳では,EU 圏ではドイツが最も多く,オーストリア,フラン
ス,イタリアの順に多かった。東欧圏ではロシア,ルーマニア,アジアでは日本,中国,トルコ
の順であった。日本からは僅か 5 社のみで,クボタ,ヤンマー,イセキなどの大手農機会社は EU
圏内の販売会社からの出展で,日本人のスタッフは殆ど見かけなかった。
4.2 EU 関係者とのミーティング
1) VDMA(Verband Deutscher Maschinen- und Anlagenbau,ドイツ機械工業連盟)
DMA の Alexander Haus 氏より EU における VDMA の位置づけや役割の説明を頂き,2010 年,
2011
年の経済データを入手した。Haus 氏によればドイツ農業は担い手の減少によって規模拡大が進ん
8
でいるとのことで,北海道も同様であることを資料に基づいて説明した。2010 年のドイツの輸出
額は 2009 年よりも伸びている。2011 年も伸びると予想しているが,ギリシャに端を発する EU 経
済危機の影響を懸念している。ロシアが重要な輸出国であり,日本やインドも興味深い対象であ
る。中国は要注意の対象と考えている(Nov. 13 2011)
。
2) DLG(Deutsche Landwirtschafts-Gesellschaft,ドイツ農民連盟)
DLG test center の Thile Keunecke,Winfried Grammate 氏よりテストセンターの業務内容の説明を
受けた。テストを受ければ広報誌にテスト結果が記載され,ドイツ国内での販売には有効とのこ
とであった。精密農業対応機種の DLG テストを実施したことがあるかの質問では,過去に 1 例あ
るが,その後はなく,将来は増加するであろうとのことであった。DLG では ISO-BUS 対応の適
合認証やテストをを行っている。高齢化に対応した安全性やけん引作業機の制動装置に関する基
準について聞いたが,国際基準に準じているとの回答で,個別案件についてはメールで問い合わ
せてくれれば回答するとのことであった。また,CE マーク認証にあたっては個別の質問があれば
対応するとのことであった(Nov. 14 2011)
。
図 10 DLG test center とのミーティング
図 11 VDMA とのミーティング
図 12 ブースでのミーティング
9
表 4 北農工ブースへの来訪者
地域
国
ドイツ
オーストリア
フランス
イタリア
ポーランド
スイス
EU
イギリス
スペイン
アイルランド
オランダ
ポルトガル
スエーデン
デンマーク
ロシア
ルーマニア
ウクライナ
クロアチア
東欧
チェコ
ベラルーシ
グルジア
スロベニア
モルドヴァ
日本
中 国
トルコ
インド
アジア
イラン
イスラエル
韓国
モンゴル
タ イ
アメリカ
チ リ
アメリカ
カナダ
コロンビア
アルジェリア
アフリカ
エジプト
チュニジア
オセアニア オーストラリア
計
農業関係
21
5
2
1
1
3
メーカー
5
1
1
3
2
ディーラー 行政・研究
9
8
1
1
1
2
4
2
2
1
1
2
1
1
1
その他
4
1
1
1
1
6
3
2
1
1
1
1
1
1
1
6
1
1
11
6
4
1
1
1
1
1
10
2
2
2
7
2
4
1
1
1
2
1
1
40
1
1
1
1
1
1
33
74
21
16
計
47
6
5
5
5
5
5
3
2
2
2
2
1
8
3
3
1
1
1
1
1
1
38
10
7
3
2
1
1
1
1
2
2
1
1
1
1
1
1
184
90
20
64
6
3
1
184
5.まとめ
経済産業省の JAPAN ブランド事業で,ドイツで開催された AGRI TECHNICA に一般社団法人
北海道農業機械工業会の会員 5 社が出展した。展示会では JAPAN パビリオンを設け,5 社の共同
展示であった。ブースはオープンスペースとしたため,各社の機械が見やすく,通路に面した DVD
の配置は見学者の関心を引き付けることができたと思われる。
展示会場には多数の来訪者があり,DVD の試聴や展示機械を熱心に見ていた。また,仕様,価
格,実演実施要望などの問い合わせが多数あり,北海道から初めての展示会であったが盛況であ
った。
その後,本会並びに各社に価格などの問い合わせが数件あった。また,韓国,ルーマニアなど
から 2012 年の展示会への出展案内などがあり,現在出展等を検討中である。
AGRI TECHNICA は 2 年毎に開催されており,1 度の参加では製品や会社の認知度,信頼性の
確保は困難と思われ,継続した参加を検討すべきだろう。また,北海道の農業機械の特徴や技術,
考え方などを明確にアピールし,農業事情に応じた提案を行うことが大切と感じられた。今回の
展示会は盛況で円滑に終了し,ご協力やご援助を頂いた関係各位に感謝いたします。
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