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熊 本 県 宇 城 市
c a s e . 15 熊 本 県 宇 城 市 R E S A S を 使 った 分 析 例 1 地 場 企 業 に着 目した 産 業 構 造 分 析 P24 8 2 地 域 経 済 循 環 から見た産 業 構 造 分 析 P251 3 稼ぐ 農 業 の 推 進 に 向 けた 分 析 P256 Copyright 2016 経済産業省 地域経済産業グループ 地域経済産業調査室 All Right Reserved. 宇 城市の概要 熊本県のほぼ中央に位置する人口60,862人の市。2005年に5町が合併してできた。 九州の経済大動脈である国道3号と、西は天草、東は宮崎県への結束点という地理的 状況に恵まれ、利便性は比較的高い。温暖な気候に恵まれ、なだらかな丘陵などの 地理条件を活かした農業が盛んである。 ■国内における位置 しもまし きぐ ん 三角町、 不知火町、 下益城郡松橋町、 小川町、 豊野町の5町が合併してできた。 九州の経済大動脈である国道3号と、西は天草、東は宮崎県への交通結束点 という地理的状況に恵まれた田園風景と自然景観、都市的機能を併せ持つ 果樹、施設野菜農業など、一年中様々な農業が営まれている。 また、2015年 宇土市 甲佐町 宇城市 氷川町 には明治日本の産業革命遺産群の1つである三角西港が「世界文化遺産」 に登録され、観光客も増加傾向となっている。 嘉島町 美里町 利便性の高い地域である。主要産業は農業で、なだらかな丘陵を利用した 熊本市 宮崎県 熊本県 大分県 福岡県 宇城市は、熊本県のほぼ中央に位置する市であり、2005年に旧宇土郡 八代市 ■宇城市全景 ■主要データ 面 積 ※1 188.61㎢ 世 帯 数 ※2 23,657世帯 人 口 60,862人 事業所数 2,501 322.69人/㎢ 従 業 者 数 ※5 ※2 人 口 密 度 ※3 ※4 24,251人 出典/※1 平成27年全国都道府県市区町村別面積調 ※2 宇城市ホームページ (平成28年1月末時点) ※3 上記記載の 「人口÷面積」 にて算出 ※4 平成26年経済センサス-基礎調査 (事業内容等不詳を含まず) ※5 平成26年経済センサス-基礎調査(男女別の不詳を含む) RESAS活用の背景/活用状況 客観的なデータに基づく政策立案を実施するという方針の下、 「 宇城市まち・ひと・ しごと創生総 合 戦 略 」の 策 定に必 要となるバックデータや戦 略 内に記 載のある KPI、具体的施策の検討などにRESASを活用している。 宇城市では、 総人口が1950年をピークに減少しており、 2010年の61,878人から2060年には31,892人になると推計される1。 また、 1995年を境に、 老年人口 (65歳以上) が年少人口(0∼14歳)を上回り、 少子高齢化が進展しているとともに、 生産年齢人口 (15∼64歳) は減少が続いている2。 宇城市ではこれらの状況を踏まえて、 若年層の流出を抑制し、 将来にわたって持続的に発展できる地域を創るために、 「宇城市まち・ ひと・しごと創生総合戦略」 において 「良質な雇用をつくる 『稼ぐ力を高める』 」 という観点のもと、 次の4つの基本目標を定めている。 ①地域の稼ぐ力を高め、 良質な雇用を創出する。 ②稼ぐ力の高める人の流れを創るとともに、 人の繋がりを強化する。 ③稼ぐ力を高めるための都市核の競争力を強化するとともに、 人口減少に合わせた地域システムを構築する。 ④稼ぐ力を高めるための 「強力な地方創生推進体制」 の構築。 客観的なデータに基づく政策立案を実施するという市の方針の下、 総合戦略の策定に必要となるバックデータやKPIの設定、 具体的施策の検討を行うためにRESASが活用されている。 具体的には、基本目標①に掲げた 「地域の稼ぐ力を高め、良質な雇用を創出する」 という観点から、宇城市の産業構造及び 強みのある産業を把握し、 その特性に合わせた支援施策を検討している。 1 宇城市の独自集計による推計値。 2 資料:総務省「国勢調査」 246 Copyright 2016 経済産業省 地域経済産業グループ 地域経済産業調査室 All Right Reserved. R E S A S の 分 析 に よって 得 られ た 内 容 RESASを活用することで、客観的な根拠に基づき、将来を見据えた根本的な問題 解決につながる総合戦略の策定を行うことができた。 RESASを活用した分析により、宇城市の産業構造、農業の状況を客観的な根拠に基づいて把握し、宇城市まち・ ひと・しごと創生総合戦略の策定に活かすことができた。 まず、地場企業に着目した産業構造について分析を行うことで、製造業、 とりわけ電子部品・デバイス・電子回路 製造業及び食料品製造業が宇城市の強みとなっていることが確認された。 しかし、 これらの産業では、地域の中核 的な企業が地域内に根付いておらず、域外取引に終始している状況も明らかになった。今後は、地場の中核的な 企業を育成し、 域内取引 (ハブ機能) を活性化していくために、 個別の聞き取り調査等による情報の蓄積を行う事業を 実施しながら、支援策の方向性を検討していく予定である。 次に、地域経済循環に着目した産業構造について分析を行うことで、宇城市では地域外に民間投資が流出して おり、 地域経済循環率が低くなっていることが示唆された。 地域外収支が黒字である産業として、 食料品、 一次金属が 特定されたことから、今後はこれらの産業について産業支援を行うことで、他の地域産業への波及も含めて地域外 収支の赤字を縮小し、地域経済の好循環化を目指す方針である。 最後に、宇城市では農業に優位性があり、各々の経営状況は比較的良好であることが確認できた。 しかし、全国 的に進んでいる農業就業人口の高齢化は、宇城市でも同様に進行している。長期的な視点からの農業の競争力 維持・向上のためには、担い手づくりや事業体としての農業への支援を本格的に着手していくことが急務であると 確認できた。 R ESAS の 活用風 景 ■作成した資料をもとに更なる分析を行う様子 ■RESAS分析を活用し、事業の立案を行う様子 ■画面を確認し、現状把握に努める様子 247 Copyright 2016 経済産業省 地域経済産業グループ 地域経済産業調査室 All Right Reserved. R E S A S を 使 った 分 析 例 1 地 場 企 業に着 目した産 業 構 造 分 析 ●活用の背景 宇城市においては、近年、転出数が転入数を上回る社会減(転出超過) の状況が続いており、特に若年層 (15∼34歳)の流出が顕著になっている。 これを改善するには、地域の稼ぐ力を高め、良質な雇用を創出 することが重要である。そのためには、現時点において域内への波及効果が高く、域外から資金を獲得 できている産業や企業を特定し、その機能を強化していくための支援が必要となる。そこで、地域経済を けん引できる、強みのある産業や企業を把握するために、RESASを活用して分析を行った。 ●分析内容 第15-1-1図は、 宇城市の産業大分類別の取引流入額及び従業者数を示したものである。 これを見ると、 いずれにおいても製造業が大きな割合を占めていることが分かる。 第15-1-2図は、 宇城市の製造業における当期純利益の推移を示したものである。 これを見ると、 製造業は 2009年から2013年にかけて当期純利益が伸長していることが分かり、納税というかたちでも地域経済に 大きく貢献している産業といえる。 第15-1-3図は、 宇城市の製造業における労働生産性を業種別に示したものである。 これを見ると、 電子 部品・デバイス・電子回路製造業及び食料品製造業の従業者数が多く、 電子部品・デバイス・電子回路製造業 は労働生産性も高いことが分かる。 第15-1-4図は、電子部品・デバイス・電子回路製造業及び食料品製造業におけるコネクターハブ(コネ クター度50%、 ハブ度50%)企業を抽出し、抽出された企業の仕入、販売別の域内外企業数を示したもの である。 これを見ると、 仕入、 販売ともに域外取引がほとんどであり、 域内取引はわずかであることが分かる。 ● 得 ら れ た 結 論・今 後 の 展 開 担当者からは、 「 RESASの分析によって、地域経済に貢献している産業を把握することができたが、 中核的な企業が地域内の企業と取引がないことも確認されるなど、課題が明確になった。」 との発言が あった。強みがあり成長している産業における企業の成長を、他産業へ効果的に波及させるには、域内に 新規の仕入先を増やすことが重要となるが、現状では、市内企業や市内の個人事業主の情報が不足して おり、 マッチング等も行えていない。 今後は、 市内企業や個人事業主への個別具体的な聞き取り調査結果を データベース化し、新たな取引先の獲得、販路拡大につなげる 「地場産業情報データベース支援事業」 を 実施する予定である。 248 Copyright 2016 経済産業省 地域経済産業グループ 地域経済産業調査室 All Right Reserved. 1 R E S A S を 使 った 分 析 例 地 場 企 業 に 着 目し た 産 業 構 造 分 析 ■(第15-1-1図)産業マップ 全産業花火図 大分類 産業分類カラー [取引流入額(企業単位) 熊本県宇城市 2013年] [従業者数(事業所単位) 熊本県宇城市 2012年] Poi n t ! 宇城市では、取引流入額、従業員数ともに製造業 の規模が最も大きい。 ■(第15-1-2図)産業マップ 全産業花火図 当期純利益(企業単位) [熊本県宇城市] Poi n t ! 宇 城 市 の 製 造 業 は 2 0 0 9 年 から 2013年にかけて当期純利益が伸長 しており、納税というかたちでも地域 経済に大きく貢献しているといえる。 249 Copyright 2016 経済産業省 地域経済産業グループ 地域経済産業調査室 All Right Reserved. 1 R E S A S を 使 った 分 析 例 地 場 企 業 に 着 目し た 産 業 構 造 分 析 ■(第15-1-3図)労働生産性の比較 RESAS自治体比較マップ及び「平成24年経済センサス-活動調査」 をもとに作成 Poi n t ! 宇城市の製造業においては、電子部品・デバイス・電子回路製造業、及び食料品 製造業の従業者数が多く、 電子部品・デバイス・電子回路製造業は労働生産性も高い。 ■(第15-1-4図)「電子部品・デバイス・電子回路製造業」、 「食料品製造業」 における コネクターハブ企業(コネクター度50%、 ハブ度50%) の仕入・販売の域内外企業数 (RESASより加工) Poi n t ! 電子部品・デバイス・電子回路製造業及び食料品製造業のコネクターハブ企業 (コネクター度50%、 ハブ度50%) における仕入、 販売は、 ともに域外取引がほとんど であり、 域内取引先企業はわずかである。 250 Copyright 2016 経済産業省 地域経済産業グループ 地域経済産業調査室 All Right Reserved. R E S A S を 使 った 分 析 例 2 地域経済循環から見た産業構造分析 ●活用の背景 「宇城市まち・ひと・しごと創生総合戦略」 における基本目標の1つである 「地域の稼ぐ力を高め、良質な 雇用を創出する」 という観点からは、地域産業の付加価値向上を図りながら、域外収支を黒字化して地域 経済の好循環を生み出す産業振興が重要となる。宇城市では、RESASの地域経済循環マップを活用して 市内の地域経済循環構造を把握し、重点的に支援していくべき産業の検討を行った。 ●分析内容 第15-2-1図は、宇城市の地域経済循環図3を示したものである。 これを見ると、宇城市では、 「分配」 で 流入した所得が、 「支出」 で流出していることが分かる。内訳を見ると、民間消費は地域外から流入している のに対し、 民間投資では、 地域外へ流出が起こっており、 地域内産業の移輸出入収支額が赤字となっている ことが示唆される。 第15-2-2図は、 熊本県内の市町における支出分析を示したものである。 これを見ると、 宇城市は支出が 地域外に流出していることが分かる。 熊本県の市町では熊本市を含めていずれも同様の傾向が見られるが、 菊陽町、 益城町、 長州町などは支出が地域外から流入している。 これは各町内に大規模企業の立地、 企業の 集積が形成されているためと考えられる。 第15-2-3図は、宇城市の産業別生産額を示したものである。 これを見ると、生産額が大きい産業は、 サービス業、食料品、運輸・通信業などである。 また、収支が黒字になっているのは、第1次産業では農林水 産業、第2次産業では食料品、電気機械、一次金属及び窯業・土石製品、第3次産業ではサービス業である ことが分かる。 第15-2-4図は、宇城市の産業について、影響力係数・感応度係数を示したものである。 これを見ると、 影響力係数及び感応度係数が高く、地域経済をけん引する力のある産業は、運輸・通信業、農林水産業、 一次金属であることが分かる。食料品については、感応度係数は低いものの、影響力係数は産業別で最も 高い。 第15-2-5図は、宇城市の第2次産業の生産額(総額) を示したものである。 これを見ると、熊本県内と 比較して、食料品や一次金属が占める割合が高いことが分かり、 これらの産業は宇城市での特徴的な産業 であることが分かる。 3 地域経済循環図とは、 地域のお金の流れを生産 (付加価値額) 、 分配 (所得) 、 支出の三段階で 「見える化」 したものである。 251 Copyright 2016 経済産業省 地域経済産業グループ 地域経済産業調査室 All Right Reserved. R E S A S を 使 った 分 析 例 2 地域経済循環から見た産業構造分析 ● 得 ら れ た 結 論・今 後 の 展 開 担当者からは、 「 RESASの分析によって、市の資金循環の状況を客観的に把握することができ、 移輸出入収支額の赤字縮小が必要であることが認識できた。 また、好循環を生み出すために振興して いくべき産業についても示唆を得ることができた。」 との発言があった。具体的には、食料品、一次金属は 生産額も相応にあること、影響力係数が高いこと、移輸出入収支も黒字であることから、重点的に支援 していくべき産業であることが確認された。 今後は、 「ブランド売り込みプロジェクト4 」などをはじめとした両産業を対象とした産業振興施策を 実施することで、当該産業のみならず、他の地域内産業での移輸出入収支額の赤字を縮小させ、地域内に 循環する財産の拡大を目指していく。 また、 「宇城市産業振興諮問会議5」 などで地場産業支援のノウハウの 蓄積や施策効果の検証などを行っていく予定である。 4 内外の専門人材(金融機関やデザイナー、バイヤー等)が連携した支援プロジェクト。商品開発・販路開拓・情報発信・金融 支援等を一体で実施し、 「作る」から 「売る」 までのトータル支援や統一ブランドの検討、担い手育成への支援を実施。 5 産官学金労及び地域内経済循環の専門家等で構成する 「産業振興プラットフォーム」 。 域内取引を直接的に促す企業間マッチ ングや産業連関分析、 市の産業振興施策の立案・KPI設定・検証等を担う官民連携組織。 252 Copyright 2016 経済産業省 地域経済産業グループ 地域経済産業調査室 All Right Reserved. 2 R E S A S を 使 った 分 析 例 地 域 経 済 循 環 から見 た 産 業 構 造 分 析 ■(第15-2-1図)地域経済循環マップ 地域経済循環図 [熊本県宇城市 2010年] Poi n t ! 宇 城 市では 、 「 分 配 」で 流入した所得が、 「支出」 で 流 出して いることが 分かる。内訳を見ると、 民間消費は地域外から 流入しているのに対し、 民間投資では、地域外へ 流出が起こっている。 ■(第15-2-2図)地域経済循環マップ 支出分析 総支出(地域住民・企業ベース順) [熊本県内市町別 2010年] Poi n t ! 宇城市は民間支出が地 域外に流出している。 熊本県の市町では熊本 市を含めていずれも同様 の 傾 向 が 見られるが 、 菊陽町、益城町、長州町 などは民間支出が地域 外から流入している。 253 Copyright 2016 経済産業省 地域経済産業グループ 地域経済産業調査室 All Right Reserved. 2 R E S A S を 使 った 分 析 例 地 域 経 済 循 環 から見 た 産 業 構 造 分 析 ■(第15-2-3図)地域経済循環マップ 生産分析 生産額(総額) 中分類 移輸出入カラー [熊本県宇城市 2010年] Poi n t ! 生産額が大きい産業は、サー ビス業、食料品、運輸・通信業 などである。また、収支が黒字 になっているのは、第1次産業 では農 林 水 産 業 、第 2 次 産 業 では食料品、電気機械、一次金 属及び窯業・土石製品、第3次 産業ではサービス業であること が分かる。 窯業・ 土石製品 宇 城市 の ■特産の干し柿 風景 ■世界文化遺産 明治日本の産業革命遺産「三角西港」 ■オリジナルブランド オレンジハート 254 Copyright 2016 経済産業省 地域経済産業グループ 地域経済産業調査室 All Right Reserved. 2 R E S A S を 使 った 分 析 例 地 域 経 済 循 環 から見 た 産 業 構 造 分 析 ■(第15-2-4図)地域経済循環マップ 生産分析 影響力・感応度分析 (産業別) [熊本県宇城市 2010年] 運輸・通信業 特化係数 (影響力係数) :1.03 特化係数 (感応度係数) :1.83 一次金属 特化係数 (影響力係数) :1.08 特化係数 (感応度係数) :1.15 Poi n t ! 農林水産業 特化係数 (影響力係数) :1.07 特化係数 (感応度係数) :1.26 宇城市の産業で影響力係数、 感応度係数が高い産業は、 運 輸・通 信 業 、農 林 水 産 業 、 食料品 特化係数 (影響力係数) :1.19 特化係数 (感応度係数) :0.92 一次金属であることが分かる。 食料品については、感応度係 数は低いものの、影響力係数は 産業別で最も高い。 ■(第15-2-5図)地域経済循環マップ 生産分析 地域内産業の構成割合(生産額(総額)) [熊本県宇城市 2010年] Poi n t ! 宇城市の第2次産業の生産額 を見ると、食料品や一次金属が 占める割合が高いことが分かる。 熊本県平均との比較から、 これ らは宇城市の特徴的な産業で あるといえる。 255 Copyright 2016 経済産業省 地域経済産業グループ 地域経済産業調査室 All Right Reserved. R E S A S を 使 った 分 析 例 3 稼ぐ農業の推進に向けた分析 ●活用の背景 宇城市は、温暖な気候に恵まれ、発祥の地である 「デコポン(不知火)」などの果樹類や日本有数の産地 である 「洋蘭」などの花き、 「トマト」や「メロン」 といった施設野菜農業が盛んであり、一年中様々な農業が 営まれている。今後、地域経済における一層の好循環を生み出すために、市で強みのある農業を「稼ぐ 農業」 とするべく、RESASを活用して現状把握と今後の施策の検討を行った。 ●分析内容 第15-3-1図は、宇城市の産業別の特化係数(労働生産性×付加価値額)の分布を示したものである。 これを見ると、農業の特化係数(付加価値額) は複合サービス事業(郵便局等) に次いで高く、宇城市を代表 する産業であることが分かる。 第15-3-2図は、宇城市における経営体あたりの農産物販売金額について示したものである。 これを 見ると、宇城市では、熊本県平均、全国平均に比べ、経営体あたりの販売金額が大きいことが分かる。 第15-3-3図は、宇城市の農業について、業種別に販売金額(総額)を示したものである。 これを見ると、 施設野菜(トマト等)、果樹類(メロン、梨、ぶどう、柿など)、花き・花木(洋ラン)が占める割合が大きいことが 分かる。周辺自治体の主要農産物も、施設野菜となっている地域が多く、一体となって施設野菜農業に 取り組んでいることが推察される。 第15-3-4図は、宇城市の農業就業人口の年齢構成を示したものである。 これを見ると、宇城市では 熊本県平均、全国平均に比べ、15歳から54歳までの割合が高いことが分かる。 第15-3-5図は、宇城市の農業就業人口の平均年齢を示したものである。 これを見ると、宇城市では 熊本県平均、全国平均に比べ、若干ではあるが農業就業人口の平均年齢が低い。 第15-3-6図は、宇城市における2005年と2010年の耕作放棄地率及び農地流動化率を示したもの である。 これを見ると、宇城市の耕作放棄地率は全国平均を上回って高いことが分かる。 また、農地流動 化率は全国平均を下回っている。 第15-3-7図は、宇城市の農業生産関連事業の実施状況を示したものである。 これを見ると、 「消費者に 直接販売」 に関する取組が突出して多く、次いで 「農産物の加工6」が多いことが分かる。偏差値においても、 都道府県平均に比べてこの2つの偏りが大きくなっており、宇城市の農業の特徴であると推察される。 一方、 「農家レストラン」、 「海外への輸出」への取組は少ないことが分かる。 6 宇城市豊野地区は、湿気が少なく、昼夜の寒暖差が大きい盆地という地理条件を活かし、昔から干し柿づくりが盛んであり、 それが、 「農産物の加工」の多さに寄与していると考えられる。 256 Copyright 2016 経済産業省 地域経済産業グループ 地域経済産業調査室 All Right Reserved. R E S A S を 使 った 分 析 例 3 稼ぐ農業の推進に向けた分析 ● 得 ら れ た 結 論・今 後 の 展 開 担当者からは、 「 今回の分析により、農業が強みのある産業だということが再認識できたが、農業者の 年齢は高齢化しており、今後10年のスパンで考えると、本格的な担い手づくりを考える必要がある。」 との 発言があった。宇城市の農業生産者の年齢構成や販売金額などの経営状況は、全国や熊本県と比較 すると良好であるが、農業就業人口の平均年齢が高くなっていることから、若年層への就農支援に一層 注力する必要があることが認識された。 また、農業生産者の高齢化から、現在でも高い耕作放棄地率が更に進み、農地流動化率の改善等をしな いと危機的な状況に陥ることが危惧される。今後は、 「『優秀な就農希望者を集めましょう』 プロジェクト7」や 「先進農家の法人化推進8」などの事業による営農条件の整備や事業承継支援を行っていくなど、農地の 有効利用を促進していく予定である。 更に、 「農家レストラン」、 「海外への輸出」 といった、取組が少ないと考えられる事業については、 「金融 機関等と連携した販路拡大・6次産業化支援事業 9 」などによるビジネスマッチングや異業種等の参入 支援などを行い、農業生産関連事業を成長させることによって農家所得(付加価値額) を増加させ、地域 内に循環する財産の拡大を目指す。 7 営業力を持った人材や次世代の担い手の確保のため、雇用者ニーズや就農ターゲットのマーケティングを徹底し、移住定 住策と連携したワンストップの受入を目指す政策間連携プロジェクト。 8 先進農家を重点ターゲットとし、 法人化支援や既存法人の経営分析、 事業出資等を実施。 地域の商工会や金融機関と連携し、 人的・金銭的な地域全体での支援体制を構築する事業。 9 金融機関等と連携し、農家の生産余力や物流課題等を分析。金融機関のノウハウやネットワークを活かし、 ビジネスマッチ ングや海外販路構築、6次産業化に向けた異業種企業参入等を支援する事業。 257 Copyright 2016 経済産業省 地域経済産業グループ 地域経済産業調査室 All Right Reserved. 3 R E S A S を 使 った 分 析 例 稼ぐ 農 業 の 推 進 に 向 けた 分 析 ■(第15-3-1図)産業マップ 稼ぐ力分析 [熊本県宇城市 特化係数(付加価値額)×特化係数(労働生産性) 2012年 大分類 産業の分布を見る] Poi n t ! 宇 城 市 にお ける農 業 の 特 化 係 数( 付 加 価 値 額 )は 、複 合 サービス事 業 に次 いで 高く、 宇城市を代表する産業である ことが分かる。 ■(第15-3-2図)農林水産業マップ 農産物販売金額(経営体あたり) [熊本県宇城市] 〈宇城市〉 〈熊本県平均〉 〈全国平均〉 Poi n t ! 宇城市では、熊本県平均、全国 平 均に比 べ 、経 営 体あたりの 販売金額が大きい。 258 Copyright 2016 経済産業省 地域経済産業グループ 地域経済産業調査室 All Right Reserved. 3 R E S A S を 使 った 分 析 例 稼ぐ 農 業 の 推 進 に 向 けた 分 析 ■(第15-3-3図)農林水産業マップ 農業花火図 農業部門別販売金額(総額) [主要作物をマップで表示する 熊本県宇城市 2010年] [熊本県宇城市 2010年] Poi n t ! 宇 城 市 の 農 業 の 販 売 金 額 ( 総 額 ) は 、施 設 野 菜 、果 樹 類 、花き・ 花木が占める割合が大きい。周辺自治体の主要農産物も、施設 野菜となっている地域が多い。 ■ミニトマト ■デコポン ■ばってんなす ■洋ラン 259 Copyright 2016 経済産業省 地域経済産業グループ 地域経済産業調査室 All Right Reserved. 3 R E S A S を 使 った 分 析 例 稼ぐ 農 業 の 推 進 に 向 けた 分 析 ■(第15-3-4図)農林水産業マップ 農業者分析 農業就業人口の年齢構成 [熊本県宇城市 総数] Poi n t ! 宇城市の農業就業人口は、 15歳 から54歳までの生産年齢人口 が占める割合が大きい。 ■(第15-3-5図)農林水産業マップ 農業者分析 農業就業人口の平均年齢 [熊本県宇城市 総数] 〈宇城市〉 〈熊本県平均〉 〈全国平均〉 Poi n t ! 宇城市の農業就業人口の平均 年齢を示したものである。 これ を見ると、宇 城 市では熊 本 県 平均、全国平均に比べ、若干で はあるが農業就業人口の平均 年齢が低い。 260 Copyright 2016 経済産業省 地域経済産業グループ 地域経済産業調査室 All Right Reserved. 3 R E S A S を 使 った 分 析 例 稼ぐ 農 業 の 推 進 に 向 けた 分 析 ■(第15-3-6図)農林水産業マップ 農地分析 [熊本県宇城市 耕作放棄地率] 〈宇城市〉 〈熊本県平均〉 〈全国平均〉 [熊本県宇城市 農地流動化率] 〈熊本県平均〉 〈全国平均〉 〈宇城市〉 Poi n t ! 宇城市の耕作放棄地率は全国 平 均 を 上 回って いる 。また 、 農 地 流 動 化 率 は 全 国 平 均を 下回っている。 261 Copyright 2016 経済産業省 地域経済産業グループ 地域経済産業調査室 All Right Reserved. 3 R E S A S を 使 った 分 析 例 稼ぐ 農 業 の 推 進 に 向 けた 分 析 ■(第15-3-7図)農林水産業マップ 農業者分析 [熊本県宇城市 農業生産関連事業の実施状況(経営体数)] [熊本県宇城市 農業生産関連事業の実施状況(レーダーチャート)] Poi n t ! 宇城市の農業生産関連事業の 実 施 状 況 は「 消 費 者 に 直 接 販売」に関する取組が突出して 多く、次いで 「農産物の加工」が 多い。偏差値においても、都道 府県平均に比べてこの2つの 偏りが大きくなっており、 宇城市 の特 徴となっていると推 察さ れる。一方、 「 農家レストラン」、 「 海 外 へ の 輸 出 」へ の 取 組 は 少ない。 協 力 宇 城 市 企 画 部 地 域 振 興 課 0964-32-1906 [2016年1月20日 取材] 262 Copyright 2016 経済産業省 地域経済産業グループ 地域経済産業調査室 All Right Reserved.