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卒業論文
2000 年度
卒業論文
異種情報の統合と場の操作に基づく
空間型情報探査機構に関する研究
神戸大学工学部情報知能工学科
上田 正明
指導教官
田中 克己
2001 年 2 月 20 日
2000 年度
卒業論文
題目
異種情報の統合と場の操作に基づく
空間型情報探査機構に関する研究
神戸大学工学部情報知能工学科
上田 正明
提出
2001 年 2 月 20 日
異種情報の統合と場の操作に基づく
空間型情報探査機構に関する研究
上田 正明
要旨
本研究では,検索エンジンなどによる情報の収集結果 (一般に大量かつ異種) を,
情報源が異なることによる情報の異種性と,情報を多様な視点から見ることで現れ
る情報の多面性に注目することによって整理する方法を提案する.また,情報の異種
性及び多面性に注目して分類された収集情報を仮想3次元空間のオブジェクトとして
統合・視覚化することによってユーザに必要な情報を提示する方法を提案し,仮想空
間に配置されたオブジェクトを操作することによってユーザがより効率的に収集情報
を探査できるような機構を提案する.これにより,利用者は,必要な情報を試行錯誤
的・段階的に探査できると共に,自身の検索意図の明確化を図ることが可能となる.
目次
1 はじめに
1
2 関連研究および基本的事項
2
2.1 情報の視覚化 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
2
2.1.1
Cat-a-Cone . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
2
2.1.2
仮想空間メディアによる情報検索支援機構 . . . . . . . . . . .
3
2.1.3
仮想空間における「場」の変形に基づく情報検索インタフェース
3
2.2 OpenGL . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
3
2.2.1
OpenGL の機能 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
4
2.2.2
OpenGL の構成 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
5
2.2.3
OpenGL の関連ツール . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
5
2.2.4
OpenGL ステートマシン . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
6
3 情報の異種性・多面性とその統合
7
3.1 情報の分類 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
7
3.1.1
情報の異種性 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
7
3.1.2
情報の多面性 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
8
3.2 情報の統合 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
10
4 空間型情報探査機構
11
4.1 情報の3次元表示 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
11
4.1.1
主オブジェクト . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
11
4.1.2
場オブジェクト . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
11
4.1.3
3次元表示の例 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
12
4.2 システムへの操作 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
13
i
4.2.1
場への操作 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
13
4.2.2
閲覧補助操作 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
14
16
5 システムの実装
5.1 システムの概要 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
16
5.1.1
システム構成 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
16
5.1.2
システムの流れ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
16
5.1.3
試作システムの実行例 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .
17
6 終わりに
19
謝辞
20
参考文献
21
ii
第 1 章 はじめに
Web 上に存在する異種情報を検索エンジンなどで取得する場合,検索結果自体が
大量,異種であるため,その中から必要な情報を獲得するためには,効果的な情報探
査を行う機構が必要である.このために,収集した情報をもとにして,これらを空間
的に視覚化し,利用者の試行錯誤的な探査を許容するようなインタフェースの構築が
重要であると考えられる.
上記の目的を達成する上で重要な課題は,収集情報をいかにして分類し効果的に
提示するか,利用者の検索意図を利用者自身が段階的に明確化できることを支援する
ための機能をいかにして実現するかであると考えられる.
そこで, 本研究では,検索エンジンなどによる情報の収集結果を,情報源が異な
ることによる情報の異種性と,情報を多様な視点から見ることによって現れる情報の
多面性に注目することによって整理する方法を提案する.また,情報の異種性及び多
面性に注目して分類された収集情報を仮想3次元空間のオブジェクトとして統合・視
覚化することによってユーザに必要な情報を提示する方法を提案し,仮想空間に配置
されたオブジェクトを操作することによってユーザがより効率的に収集情報を探査で
きるような機構を提案する.これにより,利用者は,必要な情報を試行錯誤的・段階
的に探査できると共に,自身の検索意図の明確化を図ることが可能となる.
以下第 2 章では本研究における試作システムの基礎となる関連事項について述べ
る.第 3 章では情報を視覚化するにあたって,本研究における情報を分類・整理する
ためのアプローチと,それらの情報を統合する必要性について述べる.第 4 章では空
間型情報探査機構について述べる.第 5 章では試作システムの実装について述べる.
最後に第 6 章で本研究のまとめについて述べる.
1
第 2 章 関連研究および基本的事項
本章では,関連研究として情報の可視化について,基本的事項として OpenGL に
ついてそれぞれ述べる.
2.1
情報の視覚化
情報を視覚化する目的は,情報を単なる文字の羅列でなく図として表示すること
により,情報全体をより早く,より深く理解させることである.
しかし,情報は形も色も持たないため,その表示形態には高い柔軟性があり,表
示の仕方によっては逆効果なこともある.ビットマップディスプレイとマウスを装備
したワークステーションの開発に端を発する情報の視覚化は,これまでに開発された
様々なシステムでの経験を元に,より効果的な視覚化を目指して新しい視覚化技術が
模索されているというのが現状である.
実際に行われている研究には
Cat-a-Cone [1]
仮想空間メディアによる情報検索支援機構 [2]
仮想空間における「場」の変形に基づく情報検索インタフェース [3]
などがあり,ユーザがシステムにマウスを利用してインタラクションを行うことに
よって,そのインタラクション自身が新たな検索質問として稼動するようなシステム
を中心に研究が進められている.
2.1.1
Cat-a-Cone
「Cat-a-Cone」とは,カリフォルニア大学バークレイ校の助教授 Marti A. Hearst
氏によって 1997 年に提案された,大規模なカテゴリ階層を持つ文書の検索インタ
フェースである.
2
階層的な分類構造を3次元仮想空間内で「動く3次元の木」として表現したイン
タフェース Cone Tree を元に,大量の文書群がどのようなカテゴリで分類されてい
るかを,あるカテゴリを中心にその下位置するサブカテゴリが回転し,興味のあるサ
ブカテゴリが目の前に来た時にそれをさらに展開すると,このサブカテゴリの下のド
キュメントやカテゴリが現れ再び回転することによって見ることができるというもの
である.
2.1.2
仮想空間メディアによる情報検索支援機構
小磯健吾氏らが提案する,情報を分類し仮想3次元空間に空間配置し,ユーザが
行うウォークスルーとサンプル選択という操作からシステムが自動的に問い合わせを
生成し,問い合わせの結果を新たに生成される仮想空間内に提示するという機構に関
する研究である.ユーザが再びブラウジングとサンプル選択という行為を繰り返し,
試行錯誤しつつ問い合わせを洗練させていくことによって,煩雑で膨大な情報を提示
していた仮想空間はユーザ利用者の基準で検索されたものが並び,パーソナライズさ
れたものになるというものである.
2.1.3
仮想空間における「場」の変形に基づく情報検索インタフェース
田近航氏が提案する,情報を表わすオブジェクトを含む領域である「場」への変
形操作に基づく情報検索インタフェースに関する研究である.
収集情報を3次元空間のオブジェクトとして視覚化し,オブジェクトを配置する
「場」自身や「場の拡大・縮小・分解」などの操作自身が新たな検索質問として稼動
することによって,ユーザは必要な情報を試行錯誤的・段階的に探査することができ
るというものである.
2.2
OpenGL
OpenGL [4] [5] は OS ,Window システムの壁を越えた唯一の標準 3 次元グラ
フィックス・ライブラリで,名前の由来は Open な Graphics Library である.
UNIX(X Window System) ,Windows NT/95 ,OS/2 ,Mac OS ,BeOS で動作
し,イベント処理,ウィンドウ処理はないため,OS ,ウィンドウシステムから独立
している.前身である IRIS GL の技術を継承しているが上位互換性はない.開発は
SGI が担当し,ARB(Architecture Review Board) が仕様管理をし,適合試験を実施
しているため,高い移植性を備えている.
3
2.2.1
OpenGL
の機能
基本機能として,
2 次元,3 次元のジオメトリプリミティブ ( 点,線,ポリゴン)
ラスタプリミティブ ( ビットマップ,ピクセルマップ) の操作
各種座標変換と変換マトリックスの操作
デプスバッファ・アルゴリズムによる隠面消去
Phong ライティングによる光源モデル
アルファ合成
RGB モードとカラー・インデックス・モード
イミディエート・モードとディスプレイ・リスト・モード
フィードバック,セレクション,ピッキング
という各機能を備えている.そしてより高度なレンダリング機能として,
テクスチャ・マッピング
大気効果(霧,霞,スモッグ)
モーション・ブラー,焦点深度効果
シーン・アンチエリアシング
NURBS 曲面
凹状ポリゴン,穴空きポリゴンの 3 角形分解
という機能も備える大変強力な 3 次元グラフィックス・ライブラリである.
4
2.2.2
OpenGL
の構成
OpenGL は中心となるライブラリ (API) の GL ,GL 上のユーティリティ・ライ
ブラリの GLU ,ウィンドウ・システムとのインタフェース・ライブラリの 3 つの主
要ライブラリから構成され,それぞれ以下の通りである.
GL
OpenGL のコアライブラリである.これは OS ,Window システムに依存し
ない.
GLU
OpenGL のユーティリティ・ライブラリで,NURBS 曲面,複雑なポリゴンの
三角形分解などの機能を提供するものである.これは OS ,Window システム
に依存しない.
インタフェース・ライブラリ
OpenGL とウィンドウ・システムのインタフェース・ライブラリで,X Window
System では GLX ,Windows NT では WGL ,OS/2 では PGL ,Power Mac
では AGL になる.これは OS ,Window システムに依存する.
OpenGL の各ライブラリの階層構造は,おおよそ Figure 2.1 の通りである.
2.2.3
OpenGL
の関連ツール
OpenGL を初期化したりウィンドウ操作やイベント処理など,OS, Window シス
テムに依存する部分を扱うライブラリ群がある.
GLUT
OpenGL Utility Toolkit のことで,OpenGL 初期化,ウィンドウ操作,イベン
ト処理を行うライブラリである.次の AUX に対し機能的に上位互換のライブ
ラリであるが,本格的な GUI を使ったアプリケーションには向かない.
AUX
すべての OpenGL に含まれる (X ,Windows NT ,OS/2...) もので,OpenGL
初期化,ウィンドウ操作,イベント処理を行う教育用のライブラリである.最
近は GLUT に置き換わられている.AUX ライブラリには Toolkit(TK) ライブ
ラリというよりプリミティブなライブラリが含まれる.
5
Figure 2.1: Structure of OpenGL
MESA
OpenGL 互換を目指すフリーのライブラリであるが,100% 互換ではない.Linux
,FreeBSD といった PC 上の UNIX から,IRIX ,Solaris ,AIX ,HP/UX な
どほとんどの UNIX 上で動作する.
2.2.4
OpenGL
ステートマシン
OpenGL は仮想的なステート・マシンとして実装されている.状態設定関数の呼
び出しと描画関数の呼び出しを繰り返すことによって,OpenGL ステート・マシンが
状態を遷移しながら描画を進めていく.このことによって関数の引数を少なくし効率
的なプログラミングができる.状態設定が違うと同じ描画関数でも異なる結果になる
ことから OpenGL は簡潔に表現できるがコンテキスト (文脈) に依存するといえる.
6
第 3 章 情報の異種性・多面性とその統合
本章では,検索エンジンなどによって収集された情報を分類し,整理統合する必
要性について考察する.
3.1
情報の分類
Yahoo! や goo,Google に代表される検索エンジンによる検索結果の提示方法は,
一定の基準でランキングした後,数十件単位のページに分けてテキストの羅列で表示
されるというのが一般的である.しかしこのままでは,検索結果全体が大量かつ異種
であるため,どのような情報の集合であって,ユーザがより詳しく知りたい情報 (す
なわち検索キーとなる情報) とその関連した情報 (検索結果) の各々は他の関連した情
報とどのように関連し,あるいは異なっているのかということまでユーザが把握する
ことは非常に困難である.
そこでまず,ユーザが検索結果の全体像を容易に把握することができるように,
1. 情報源が異なることによる情報の異種性
2. 情報を多様な視点から見ることによって現れる情報の多面性
という2つの観点から分類することについて考察する.
3.1.1
情報の異種性
一つの情報に対する関連情報とよばれるもののひとつに,その情報がどのような
ものであるかの評価・判断がある.同じ情報に対してでも,関連情報の情報源 (すな
わち評価および判断するところ) が異なれば,異なった関連情報を得ることになる.
Figure 3.1 は,その概念図である.異種の情報源 (information source)
A; B
に対
して,ユーザ (user) は同じ質問 (Query) Q を与えると,それぞれの情報源は違った検
索結果 (Result)
R; S
をユーザに返してくる.すなわち同じ情報 Q に対して,異なっ
た関連情報 R; S を異なった情報源 A; B からユーザは得るのである.
7
Figure 3.1: Heterogeneousness of information source
具体例としては,
「パソコン」という情報に対して,
「パソコンを使いこなしている
人々」という情報源から得た情報というのは「便利な道具である」という情報であっ
たりするが,
「パソコンをまったく使いこなせない人々」という情報源から得た情報
であると,
「場所をとるただの箱である」という情報であったりするといったような
ものがある.
上述のことから情報には異種性があり,これについて検索結果を分類・整理する
必要があると考えられる.
3.1.2
情報の多面性
一つの情報に対する関連情報は他に,その情報がどのような役割を果たすもので
あるかという情報もある.同じ情報に対する関連情報の情報源も同じであっても,情
報を評価・判断される場面が異なると関連情報は違ってくる.
Figure 3.2 は,その概念図である.ある情報源に対してユーザが質問 Q を与える
と,種類の異なる情報 R; S; ::: をユーザに返してくる.すなわち,同じ情報 Q に対し
て,異なった関連情報 R; S; ::: を同じひとつの情報源からユーザは得るのである.
具体例としては,
「パソコン」という情報に対して,
「仕事道具である」や「ゲーム
機である」や「コミュニケーション手段である」という情報をユーザが得るといった
ようなものがある.
また他にも,一つの情報に対する関連情報は時間の流れによって常に変化するも
8
Figure 3.2: Multiple aspects of answers 1
のであるため,同じ情報に対する関連情報の情報源も同じで,さらに情報を評価・判
断される場面が同じであっても,情報源から複数のバージョン (版) の関連情報をユー
ザは得ることになる.
Figure 3.3: Multiple aspects of answers 2
Figure 3.3 はその概念図である.ある情報源に対してユーザが質問 Q を与えると,
同種であるがバージョンの異なる情報 R1 ; R2 ; ::: をユーザに返してくる.すなわち,
同じ情報 Q に対して,同種のバージョンの異なる関連情報 R1 ; R2 ; ::: を同じひとつの
情報源からユーザは得るのである.
具体例としては,
「パソコン」という情報に対して,10年前と5年前と現在のそ
れぞれの位置付けについての情報をユーザが得るといったようなものがある.
上述のことから情報には多面性もあり,これについても検索結果を分類・整理す
る必要があると考えられる.
9
3.2
情報の統合
前節では情報の異種性および多面性について述べたが,これ以降はそれぞれの性
質ごとに分類・整理された個々のものを総称してアスペクト (aspect) と呼ぶこととす
る.そして全てのアスペクトはまた情報を持ち,これをステータス (status) と呼ぶこ
ととする.さらに,ユーザがより詳しく知りたい情報 (すなわち検索キーとなる情報)
を主情報と呼ぶこととする.アスペクトとステータスの概念図を Figure 3.4 を示す.
Figure 3.4: Idea of aspect and status
大量であり異種である検索結果はアスペクトごとにまとめ,整理することがこと
が重要であるが,それらを再び一つに統合して表示することによって,得られた検索
結果を最大限に利用できる情報の集合にすることが可能であると考える.また,一つ
の情報に関する検索結果だけでなく複数の情報のそれぞれに関する検索結果が得られ
ている場合には,それらも統合して表示することによって各々のアスペクトを容易に
比較し,新たな情報を得ることが可能であると考える.
10
第 4 章 空間型情報探査機構
本章では前章の考察に基づき,アスペクトごとに分類された情報をユーザがさら
に容易に理解できるように3次元オブジェクトとして統合し,仮想空間に配置するこ
とによって可視化する方法と,その仮想空間にユーザが操作を行うことによってより
ユーザにとって有用な情報を提供することができるシステムを提案する.
4.1
情報の3次元表示
主情報と関連情報・アスペクトを仮想3次元空間を利用して効率よくユーザに提
示するために,主情報をオブジェクトとして可視化した「主オブジェクト」と関連情
報・アスペクトをオブジェクトとして可視化した「場オブジェクト」を定義する.以
下にこれらのオブジェクトの詳細と,表示方法について述べる.
4.1.1
主オブジェクト
主オブジェクトとは,主情報を可視化したオブジェクトで,次に述べる場オブジェ
クトがどの主情報に対する関連情報・アスペクトであるかをユーザに示すものである.
4.1.2
場オブジェクト
場オブジェクトは,関連情報・アスペクトを可視化したオブジェクトで柱状をし
ており,アスペクトを多角柱の側面に当てはめたものである.アスペクトの数と同じ
だけの側面の数を持つ多角柱 (ただし,アスペクトが1つまたは2つの場合は円柱形)
であり,各側面に意味が関連付けられた台であると考えてよい.この上に主オブジェ
クトを載せることで,どの主情報に属する関連情報・アスペクトであるかを視覚的に
ユーザは理解することが可能である.
また場オブジェクトは,複数の場オブジェクトも上に載せることもできる.その
場合の場オブジェクトの側面は,上に載る全ての主オブジェクトに共通するアスペク
11
トだけで構成されるため,複数の主オブジェクトとの関連もユーザは視覚的に容易に
理解することが可能となる.
4.1.3
3次元表示の例
上記の2種類のオブジェクトを用いて,情報を3次元表示する例を以下に示す.
主オブジェクト
T1 ; T2 ; T3
がアスペクト
A;
…; R を Table 4.1 のように持つに場合
を考える.ただし,ここではステータスについては省略することとする.
Table 4.1: Aspects of T1 ; T2; T3
T1
A; B ; C; G; I ; K; L; M; N; O; Q; R
T2
B ; C; E ; F; G; H; K; N; O; Q; R
T3
B ; D; G; J; N; P; Q
従来の検索エンジンなどの検索結果の表示方式では Table 4.1 のようなテキスト
だけで表示されていたが,Figure 4.1 のような3次元表示をすることによってそれぞ
れの主情報に共通するアスペクトと異なるアスペクトが一目瞭然となり,ユーザは
Table 4.1 よりも容易に検索結果全体の内容を把握することができるのである.
Figure 4.1: An example of displaying objects
12
システムへの操作
4.2
上記の情報の視覚化方法だけでは,主情報にはどのような関連情報があるかとい
う概観はユーザに示すことができるがユーザが求めている情報を的確に提示している
わけではない.そこで,ユーザがシステムに対して,
1. 表示オブジェクトを再構成する場への操作
2. ユーザが仮想空間を探索し,表示オブジェクトを見るために必要な閲覧補助操作
の2種類に分類される操作を与えることによってより的確な情報をユーザに提供する
機能を設ける.
4.2.1
場への操作
以下の操作は,ユーザがシステムに対し場オブジェクトを操作内容に応じて再構
成させるものである.したがって,これらの操作を行うことによって,よりユーザが
望む形で情報を提供することが可能となる.
側面の削除 (delete)
ひとつもしくは複数の選択された側面を削除する.この操作によって,ユーザ
にとって不要であるアスペクトを除外することができ,提示情報をよりユーザ
に必要なものだけにすることが可能となる.
側面の再構成 (reconstruct)
ひとつの選択した側面がひとつ上または下の階層に属するように場オブジェク
トを再構成する.例えば,主情報 T1 ; T2; T3 が Table 4.2 というようなアスペク
トをもっている場合を考える.
Table 4.2: Aspects of T1 ; T2; T3
T1
A; B ; C
T2
B; C
T3
A; C
このシステムには Table 4.2 のようなものを表示するとき,Figure 4.2 にあるよ
うに,
と の2通りの階層構造が存在する.したがって,これらを切り替え
るために必要な操作なのである.
13
Figure 4.2: Patterns of displaying objects
同じ側面を持つ主情報の検索 (pick up)
ひとつもしくは複数の選択された側面を持つ主情報だけを集める.選択された
側面だけでなく他の側面についても集まった主情報間での相違をユーザは知る
ことが出来る。
主情報に関する類似検索 (similarity-retrieve)
ひとつの選択された主オブジェクトを可能な最も高い位置なるように,場オブ
ジェクトを再構成する.より多くの共通した側面を持つ主オブジェクトが高い
階層に現れるので,一目で共通側面の多い主情報をユーザは知ることが出来る.
複数の主情報の整理 (choice)
複数の選択された主情報だけを抜き出してきて,新たに場オブジェクトを構成
する.アスペクトの共通部分と異なる部分に場オブジェクトが分かれるので,
ユーザは選択した主情報間の関係を知ることが出来る.
場のクリア (clear)
全ての主情報に対して,場オブジェクトの階層構造を取り消す.
4.2.2
閲覧補助操作
以下の操作は,システムの表示内容を変更するのではなく,ユーザがシステムか
ら情報を得るための補助をするものである.
視点・視線の移動
オブジェクトが配置された仮想空間内を自由に移動することが出来る.これに
よって,オブジェクトが複雑な構成になってもユーザの見やすい視点から見る
ことができ,効率的に情報を得ることができる.
14
場オブジェクトの回転
場オブジェクトは同時に全ての面を見ることができないため,視点から見て裏
側にある面を移動することなく見ることができるようにする.
側面の別窓表示
ひとつの選択した側面の内容の詳細を別窓に表示する.
15
第 5 章 システムの実装
この章では,前章までに述べた概念を基に作成した,
「場の操作に基づく空間型情
報探査機構」の試作システムについて述べる.
システムの概要
5.1
5.1.1
システム構成
試作システムは OS に Windows2000 を用いた IBM-PC/AT 互換機上で,Visual
C++ 6.0 によって製作した.提示する情報は,あらかじめ用意されたファイルから
読み込むこととし,情報を提示する3次元仮想空間の描画については,OpenGL を
利用する.関連ツールとしては,GLUT を利用している.
5.1.2
システムの流れ
試作システムは以下の流れで動作する.
1. 表示される情報が書かれたファイルを読み込む.
2. 受け取った情報のアスペクトをどの場オブジェクトに割り当てるかを決める.
3. 各場オブジェクトが表示される位置と大きさを,他の場オブジェクトと重なら
ないように決定する.
4. 場オブジェクトを仮想3次元空間に配置し,ユーザのインタラクションを待つ.
5. ユーザからインタラクションがあれば,それに応じてシーンの描画を変更し,
場の操作が行われれば,その指示に基づいてステップ2に戻る.
以下で各ステップの詳細を述べる.
16
Step 1
予め検索結果から主情報とそのアスペクトをまとめたファイルから,システムが
情報を読み込む.
Step 2
受け取った主情報の中で,どのアスペクトが共通しているのかどうかを見つけ出
し,どのような階層構造を構成するべきであるかを決定する.すなわち,どのような
アスペクトを持った場オブジェクトが存在し,他の場オブジェクトとどのような関係
にあるかを決定する.
これを行うために,左の子に子となる場オブジェクト,右の子に兄弟となる場オ
ブジェクトを持つ2分木を構成する.
Step 3
Step 2 で構成された木を後順操作で各場オブジェクトの表示される位置と大きさ
を他の場オブジェクトと重ならないように決定する.
Step 4
Step 3 で決定したオブジェクトを仮想3次元空間に配置し,ユーザによって行わ
れる操作の待ち状態になる.
Step 5
ユーザからのインタラクションを検出すると,その種類を特定しそれに応じた場
オブジェクト決定ルーチンを呼び出す.そして Step 2 の2分木を構成するところに
戻る.
5.1.3
試作システムの実行例
試作システムでは,Table 4.1 で示すデータを入力データとして実装した.以上の
ステップにより生成された3次元表示は図 5.1 である.
17
Figure 5.1: A gure of prototype implementation
18
第 6 章 終わりに
本研究では,収集情報を情報の異種性・多面性に注目して仮想3次元空間のオブ
ジェクトとして視覚化することについて述べ,ユーザがそのオブジェクトを操作する
ことによってより効果的に情報を得ることができるシステムとその実装について述
べた.
本研究の特徴として,
従来の検索エンジンとは異なり,収集情報を異種性・多面性によって分類して
ユーザに情報を提示する.
提示方法として,テキストの羅列ではなく仮想3次元空間内のオブジェクトと
して関連のある異種の収集情報をひとつに統合して提示する.
ユーザは仮想空間内を自由に移動することが可能であるため,収集情報全体を
見ることもでき,興味のあるものを中心に見ることも可能である.
というようなものが挙げられる.
今後はこのシステムにより,ある情報についての大量かつ異種である検索結果が
異種性・多面性に基づき整理され3次元的に表示されることで,ユーザが直観的に検
索結果全体を理解することに有効であることを,試作システムを完成させることで検
証する予定である.
また,このシステムを仮想美術館・博物館の閲覧システムに応用することによっ
て,もともとついている展示品の解説以外にも多種多様で多面的な情報をユーザに提
示することができると考えている.
19
謝辞
最初に,研究全般にわたって御指導を賜りました田中克己教授に厚く御礼申し上
げます.またシステム実装に際し,OpenGL などに関する様々な質問に対してご回
答下さり,また多くのご助言を賜りました田近航氏に深い感謝の意を表します.並び
に本研究に限らずあらゆる分野にご協力頂いた情報知能工学科田中研究室の皆様に深
く感謝の意を表します.
20
参考文献
[1] Marti A. Hearst, \Cat-a-Cone:
An Interactive Interface for Specifying
Searches and Viewing Retrieval Results using a Large Category Hierarchy",
~
http://www.sims.berkeley.edu/hearst/papers/cac-sigir97/sigir97.html
[2] 小磯健吾, 森威久, 田中克己, \仮想空間メディアによる情報検索支援機構", 情報
処理学会論文誌, Vol.41, No.SIG1(TOD5), pp109-126, (2000).
[3] 田近航, 田中克己, \仮想空間における「場」の変形に基づく情報検索インタフ
ェース", 情報処理学会アドバンスト・データベース・シンポジウム 2000 論文集,
DBWeb2000, pp.275-280, (2000)
[4] Mason Woo, Jackie Neider, Tom Davis, \OpenGL プログラミングガイド 第2
版", ピアソン・エデュケーション, (1997)
[5] OpenGL Architecture Review Board, \OpenGL リファレンスマニュアル 第2
版", ピアソン・エデュケーション, (1999)
21
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