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平成 28 年 8 月 31 日 公正取引委員会事務総局経済

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平成 28 年 8 月 31 日 公正取引委員会事務総局経済
2016 年 8 月 31 日
競争法フォーラム意見
平成 28 年 8 月 31 日
公正取引委員会事務総局経済取引局企画室
独占禁止法研究会担当 御中
「課徴金制度の在り方に関する論点整理」に対する意見
競争法フォーラム
第1 はじめに
競争法フォーラムでは、公正取引委員会(以下「公取委」という。)におい
て現行の課徴金制度の見直しの検討が開始され、とりわけ裁量型課徴金の導
入を含む課徴金制度の在り方について研究する「独占禁止法研究会」が発足
したことを受け、その内容如何によっては、独占禁止法実務に与える影響が
極めて大きいことが予想されるため、フォーラム内部に「裁量型課徴金研究
会」
(以下「フォーラム研究会」という)を設け、別紙「裁量型課徴金研究会
会員名簿」のとおり、国内外の競争法の実務経験を多数有する実務家の参加
のもと、平成 28 年 5 月 31 日から既に数回にわたり研究会を行い、さらに、
裁量型課徴金を含む課徴金制度について研究会を継続することとしてきてい
るところである。
フォーラム研究会では、本年6月 28 日、公取委から独占禁止法研究会「課
徴金制度の在り方に関する論点整理(案)」が示され、同年7月 13 日に「課
徴金制度の在り方に関する論点整理」(以下「論点整理」という)が示され、
意見等の募集のあったことを受け、これまでの研究会の成果を踏まえ、
「論点
整理」の内容に対する意見を取り纏め、これを公表することとした。
今回の意見書においては、まず、
「論点整理」がその議論の中で、海外の制
度との比較を頻繁にあげていることから、海外の制度のうち、米国、EU、韓
国のそれぞれの制裁における裁量の在り方について、それぞれの法体系全体
がどのようなもので、その法体系の中でどのように位置づけられ、それが実
際にどのように運用されているのか、そしてどのようなメリット、デメリッ
トがあるのかを、数多くの国際競争法案件を手がけた経験を持つ実務家の知
見をもとに検討し、我が国の独占禁止法への準用なり応用に際して、考慮す
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競争法フォーラム意見
べき点を議論した内容を述べている。
次いで、
「論点整理」第 3 に示された論点毎に、分析を行い、フォーラム研
究会としての見解を明らかにしているが、特に、
「論点整理」が第 3 1(1)
から(3)において独占禁止法研究会第1回会合資料4の①から⑪までの事
例を理由に裁量制導入の理由付けとして引用している部分については、フォ
ーラム研究会において、それぞれの事例毎に、その事件の内容、背景、排除措
置命令、課徴金などの制裁の内容を分析し、裁量制導入の理由付けとして合
理性を有するかを検討した結果も踏まえた上での見解を述べるものである。
裁量型課徴金の導入の可否は、課徴金の意義、性格だけにとどまらず、公取
委の独占禁止法執行の目的、プライオリティーなど、独占禁止法執行の根幹
にも関わる問題を含む重大な問題であり、少なくとも拙速に結論を出すべき
ものでないことは明らかである。競争法フォーラムとしても、引き続きフォ
ーラム研究会において検討を続け、時々にその成果を公表していくことを考
えており、合理的かつ妥当な制度となるよう、今後も積極的に協力をしてい
きたいと願っている。
第2 諸外国の制度
諸外国の制度からの示唆
制度からの示唆
1 EU の制度からの示唆
(1)制度の概要
(1)
制度の概要
ア EU 制度の考え方
EU 競争法の違反被疑事件調査に係る制度(以下「EU 制度」という。)
は、事業者が調査に協力せざるを得ない状況に追い込むことで、調査プ
ロセスの効率化を図るメカニズムだと言える。制裁金の算定に際して当
局に大きな裁量を認め、企業を制裁金の額を予測することが困難な状況
においたままで、協力する会社には減額を与え、また調査を顕著に妨害
した会社には増額をする権限を付与し、最後まで企業側を予測不能な地
位に置き、不安感を煽ることで、当局側が無理な調査を押し進めずとも、
事業者側が自ら内部調査を行い、自ら証拠を提出することを促す、当局
にとっては極めて都合の良いメカニズムである。
EU の調査では、調査の対象が広範になることが多く、EU の違法認定
の要件の緩やかさもあり、企業にとっては制裁金が巨額になる可能性を
危惧しなければならない状況になることが一般的で、リニエンシーの申
し立てをした場合(2番目以降)にも、いったいどの範囲でどのような
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協力をしたら有効な協力と認められるのかは、調査の終了時点まで知ら
されない制度であるため、広範な社内調査と関連する可能性があると思
われる資料であれば、とりあえず委員会に提出するという選択肢を取ら
ざるを得なくなる。
企業にとっては、広範な調査を含め、非常に膨大な時間とコストを要
することになる。
反面、EU の場合には、当局の広汎な裁量及び高額の制裁金に鑑み、競
争法違反審査手続は quasi-criminal procedure と位置づけられ、事業者側
への手厚い手続保障が存在している。特に、外部弁護士から十分なアド
バイスを受けるための弁護士・依頼者間秘匿特権、当局の担当官が不当
な自白を求めないよう歯止めをかけるために保障される自己負罪拒否
特権は、EU の成熟した制度を支える死活的な柱である。加えて、もし当
局がこれらの権利を守らなかった際に、それを事後的に監視する役割を
果たす Hearing Officer が、強い権限と確たる独立性を維持していること
も、EU 制度が機能する上で不可欠な要素となっている。さらには、当局
(DG Competition)の決定を積極的に覆す、アクティブな上訴裁判制度
も忘れてはならないだろう。
このような制度的立付けとなっている結果、EU 域内の経済活動に悪
影響が及ぶ限り、域外の外国事業者であっても調査ができる柔軟性を、
EU アプローチが備えていることも付言したい。特に EU は、日本の公取
委のような供述聴取による自白を立証の主軸におく方法を取らず、とに
かく書面による客観的な立証に主眼をおくこともあり、事業者側からの
協力により、必要な証拠を集められるメカニズムになっている。これに
より、言語の壁、地理的な距離にも関わらず、外国事業者も必要があれ
ば調査をする、というのが EU のアプローチである。
イ 当局に一定の裁量を与える制裁金
当局に一定の裁量を与える制裁金算定の
算定のメカニズム
算定のメカニズム
EU 当局が有する、事業者側の協力の度合いにより制裁金を一定の範
囲で増減できる権限は、制裁金算定ガイドライン、リニエンシー告示、
和解ガイドラインの中でそれぞれ定められている。
まず制裁金算定ガイドラインでは、セクション 1 で「{前年対象売上
{前年対象売上
高の 0-30%}×{継続年数}+{エントリーフィー
}×{継続年数}+{エントリーフィー15-25%}
}」という基
}×{継続年数}+{エントリーフィー
本額が定められた上で、セクション 2 で額の調整が定められており、事
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業者による「非協力、妨害」が制裁金の加算事由に、「効果的な協力」
が減算事由になることが規定されている。
次にリニエンシー告示では、リニエンシーを出したとしても、証拠を
見つけ次第迅速に提供する、いかなる当局の要求にも迅速に回答する、
などの協力義務を最後まで遵守しなければ、リニエンシーによる制裁金
の減額は得られないし、さらにその協力の程度次第で減額幅が決まるこ
とになっており、しかも、その結果は、最後の最後まで当事者に明らか
にされないという徹底した秘密主義が貫かれている。実際、リニエンシ
ーを出した場合に事業者側に課される協力の義務として、案件によって
は、夥しい回数の報告命令が出されることや報告命令によらずに情報の
提供を求められることも珍しくなく、事業者側にはかなりの負担になる
ため、特に全額免除の地位が既に埋まっている場合など、敢えてリニエ
ンシーを出さないという判断をする一材料になる場合すらある。
また和解ガイドラインでは、当局と事業者の交渉次第で制裁金が 10%
まで減額され得ることになっており、ここでも事業者側の協力により当
局が制裁金を減額できるメカニズムが導入されている。また実際には、
和解をするかどうかで違反行為の認定の期間や範囲も影響を受けるこ
ともあり得、その場合には事実上 10%の下げ幅よりも結果としてもっと
大きな減額を獲得するような事例もある。
ウ EU 制度のメリットとデメリット
(ア)メリット
(ア)
メリット
EU 制度の大きなメリットとして、まず行政コストの削減が挙げられ
る。また、それほど悪質ではないが調査をして将来の類似の違反行為
を防ぐ必要があるような行為類型について、EU 制度の下では、当局の
裁量で制裁金の額を低く抑える、あるいはコミットメント制度で制裁
金をなくす、というようなフレキシブルな対応が可能である。
また、事業者側にとって、当局が無理に自白を引き出そうとする日
本の供述聴取のような調査手法がないことから、淡々と書面による報
告命令等に対応し、客観的な証拠提出だけに集中すれば良いというメ
リットもある。
(イ)デメリット
(イ)デメリット
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企業にとって見れば、EU 側の広範な裁量権と、知らされないという
状況の中で、事実上、協力を強制されることになる。特にリニエンシー
案件において、「非協力」とされるリスクを人質に取られて、夥しい回
数の報告命令等の要求に応じざるを得ないという状況が生じる。
また、減額幅の判断などにおいて、担当のケースチームによって案
件ごとのぶれが生じやすいことも問題点と言える。もちろん事業者側
としても、過去の案件と比較して減額幅が小さい等の主張をして裁判
所で争えることが、EU 制度がうまく機能するための大前提になってい
る訳だが、和解で終わった案件では、裁判所に訴える途が閉ざされて
しまう。特に、行政効率を考えて当局が熱心に和解を薦めてくること
が珍しくないため、本来最後まで争いたかった事案でも、巨額の制裁
金を恐れて和解せざるを得ない、さらにその和解の妥当性は裁判所で
は争えなくなる、という問題もある。
エ EU 制度の要となっている権利・ルール
既に述べたとおり、EU 制度の前提となっているものとして、手厚い
手続保護を挙げることが出来る。
調査段階での当局と事業者側の対等な知識・経験を確保するための弁
護士・依頼者間秘匿特権の保護、調査の行き過ぎを防ぐための自己負罪
拒否特権の確立、といった根本的な権利に加え、調査プロセスにおいて
十分な防禦の術を事業者が持てるよう、立入検査の当初から被疑事実の
範囲がかなり詳細に説明され、調査の終盤ではリニエンシー申請の際に
提出した corporate statement を含めて全ての証拠が開示される点も重要
だろう。さらに、仮に行き過ぎの調査を行なわれてしまった場合のセー
フティーネットとして、調査を行なう当局とは一線を画し、人事の上で
も独立性の強い Hearing Officer が、実際の運用としても事業者側の意見
をサポートしてくれる場合が少なくない点も、重要な点である。
また裁判所も、当局側のやり過ぎに対して、制裁金決定を減額する決
定を積極的に出す。また制裁金算定に納得がいかない当事者が裁判所に
上訴し、裁判所が制裁金を大きく減額するという事例も日常茶飯事であ
る。
(2)和解の問題点
(2)和解の問題点
和解について問題点があると言えば、やはり和解のやり方だろう。2008
年に導入されて以来、ある意味ブラックボックスの中で、当局側の示す事
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実認定を呑む代わりに制裁金の減額を受け、後日裁判所がその判断の妥
当性を検討する途は一切閉ざされ、判例法が形成される機会も失われて
いる、という問題が指摘されている。
(3)日本へ導入あるいは日本の制度の参考にする
(3)日本へ導入あるいは日本の制度の参考にする場合の
日本へ導入あるいは日本の制度の参考にする場合の問題点
場合の問題点
不透明さ、
不安を背景にして協力を事実上強制することの妥当性
ア 不透明さ
、不安を
背景にして協力を事実上強制することの妥当性
EUの制度は、高額の制裁金と広範な裁量権を背景に、調査の最終段
階まで制裁の内容を明らかにしないことにより、当事者の不安を煽り、
それにより、より多くの協力を引き出すという、調査協力を事実上強制
するシステムという側面を有しており、そのための企業の負担も極めて
大きいものである。
従って、調査の効率性という観点からだけではなく、このようなEU
の制度の問題点を前提に我が国の制度の在り方の参考にする必要があ
る。
イ「つまみ食い」
つまみ食い」方式
食い」方式に伴う危険性
方式に伴う危険性
同時に、「つまみ食い」的に EU の制度を導入することの問題点も指
摘しておきたい。
少なくとも、EUには、既に述べたような弁護士・依頼者間秘匿特権、
自己負罪拒否特権、全面的な証拠開示、活発な上訴裁判所による介入、
などのルールが存在し、これを前提に制度の運用がなされている、もし、
単に、事業者側の協力義務とそれを遵守しない場合の制裁としての課徴
金増額、あるいは協力による減額というプレッシャーのみを導入した場
合には、先に述べたEU制度の問題点が一層顕著になってしまう。
さらに、現状のように、公取委が任意による供述聴取を用いた立証を
偏重する運用を維持したままで、事業者側の協力をレバレッジにした
EU 制度の発想を導入するとしたら、その危険性は非常に大きいと言わ
ざるを得ない。既に聞かれる懸念として、任意の供述聴取中に回答を拒
んだ場合に「非協力」と看做されるようでは、現行制度の改悪であると
いう声が多い。
そもそも EU 制度の発想からすれば、現在行われているような、とに
かく何時間も公取委の審査官から話を聞かれ、それを審査官がカルテル
行為を認定し易いようにストーリーにまとめて供述調書に書き下し、供
述者はそれに丸ごと認印を押さざるを得ない、というやり方自体が、真
っ向から自己負罪拒否特権の保護に反することは疑いない。今のプラク
ティスを維持したままで、単に「非協力の場合には課徴金を増額できる」
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という抽象的なルールを導入するだけだと、国際的に見ても他に例を見
ない、極めて不条理な新しい制度が出来上がることになってしまう。し
たがって、任意の供述聴取には応じた時点で基本的に協力していると看
做されるという仕切りにするか、あるいは任意供述に立証を依存し過ぎ
ている現行のやり方を根本から改めるか、何らかの工夫が不可欠だろう。
ウ 和解について
既に述べたとおり、2008 年に導入された EU の和解制度には、様々な
懸念が提起されている。他の主要国の多くが和解制度を取り入れ始めて
いる中、行政コストの削減とプロセスの効率化というメリットを日本に
も導入する意義はあるとしても、他国での教訓を生かすことは重要であ
る。和解のインセンティブを必要以上に高めすぎない制度にして、事業
者側が、本来違法行為への関与自体を認めていないような場合にまで和
解に追い込まれない、何らかのセーフティーネットが必要と考える。
2 米国の
米国の制度からの示唆
(1)制度の概要
米国の競争当局によるエンフォースメントは、カルテルに対する刑事
罰(事業者に対する罰金と自然人に対する実刑)が中心であり、司法省は、
リニエンシー制度(アムネスティー)による捜査開始前の最初の申告者に
対する刑事訴追の免除に加え、司法省との間で取引契約を締結した者は,
罪状を認めること等により,略式起訴により陪審裁判による事実審理を
経ることなく有罪判決が言い渡される一方,量刑上有利な取扱い(求刑の
引下げ等)が得られる司法取引により事件を処理するのが一般的である。
罰金額の算定方法については、米国連邦量刑ガイドライン(Federal
sentencing guidelines)に定められており、ガイドラインでは、まず、
カルテル等により「影響を受けた取引額」
(原則として、米国国内の直接
の売上高(違反期間中すべての売上が対象))の20%を算定の基礎額と
する。さらにガイドラインに定める要素(繰り返し違反、調査非協力、役
員等の関与、裁判所の命令違反という加算要素や、調査協力、コンプライ
アンスプログラムの作成という減算要素)をベースに計算した有責性ス
コアにより上限額と下限額を定め、違反行為の重大性、事業者の役割、十
分な抑止力の確保、協力の適時性及び価値等を勘案し、上限額・下限額の
範囲内で裁量的に決定する。ただし、この罰金額の範囲の上限額・下限額
は、司法取引の過程での協力、アムネスティプラス、ペナルティプラス等
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の制度(別の関連市場のカルテルに関する申請・不申告による減額・加算)
により、減額・加算される場合もある。たとえば、間接売上がある場合、
協力の時期が遅れた場合(協力の適時性)などに下限額から加算して、罰
金の上限・下限の範囲内の始点を決定し、その始点から、協力の価値等を
考慮して、減額し、結果的に下限額を下回るなど、司法取引において、上
限額・下限額の範囲を超えて罰金額が設定されることがある。量刑ガイド
ライン上の罰金額の上限額・下限額の範囲を外れる場合には、裁判所にそ
の旨申し立てる。最終的には、罰金額は、起訴後、裁判所により決定され
る。
(2)実務から見た実態
上記のとおり、司法省との司法取引においては、量刑ガイドラインに
従ったレベルから交渉が開始されるが、司法取引における交渉により決
着点は様々である。「影響を受けた取引額」の範囲や協力の価値の決定
において、司法省の裁量は大きいため、司法取引による協力の減額につ
いては、予測可能性・透明性に乏しく、それが司法省の交渉の立場を高
め、協力による減額がどれくらいになるのかの確証を得る前に、違法行
為の証拠を司法省にさらけ出す必要があり、対象事業者は、社内調査の
実施や社内調査で判明した事実関係を司法省に順次、口頭にて報告(プ
ロファー)するなど、協力と交渉に伴う費用(弁護士費用を含む)につ
き、多額の出費を強いられることになる。
(3)問題点
米国の司法取引の制度・実務上の運用において、量刑が、違反行為の
悪性あるいは情状の存否ではなく、有罪答弁をするかしないか、捜査に
どの程度協力するか、といった戦術によって大きく左右される点に特徴
がある。有罪を認めた場合と認めない場合において極端な量刑格差があ
るため、共犯者に関する供述に信用性はあるのかが常に問題となり、無
実の者が有罪答弁に引っ張り込まれる可能性とともに、重大事件で有責
性の高い犯人が、免責され、あるいは寛大な処分で許される(違反行為
において重要な役割を果たした主導者ではないという免除の要件は骨抜
きになっている)という不条理を生む可能性をはらむ制度である。
(4)日本へ導入あるいは日本の制度の参考にすることの問題点
4)日本へ導入あるいは日本の制度の参考にすることの問題点
米国においては、司法取引を必要とする背景として、非常に複雑で、
当事者主義的な陪審構造を前提とする刑事司法システムのもと、司法取
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引により効率的に事件を処理する必要性があり、陪審制の下、必ずしも
精密な事実認定を求められないことを前提とし、司法取引においても、
司法省と当事者の1対1の司法取引ごとに事実が認定され、犯罪事実に
ついての精密な認定はされない。日本のように関与した個人の詳細な供
述調書を取るやり方ではなく、司法取引のもとで、(民事訴訟のディス
カバリーの対象となることを避けるべく)口頭でのプロファーでの情報
提供による協力が中心となる。このような捜査のやり方については、有
罪答弁の存在により、裏付け捜査、補充捜査が不十分になるのではない
かという問題があり、そして、司法取引でほんとどの事件が解決してし
まうと、実体的真実の解明が不十分となり、今後の取引における予測可
能性を高める有用な判例が形成されないという批判もある。
この点、日本における精密司法型の取調べに影響を受けた公取委のプ
ラクティス、特に実体的真実を追求し、供述調書を中心とする立証プラク
ティスとの整合性が問題となり、裁量制を導入したうえで、公取委の従前
のプラクティスを維持するのは、公取委及び事業者双方に過大な負担と
なる可能性もあり、取調べの方法も含めた制度の変更を考慮する必要が
ある。また、司法取引は 1 対1の取引であり、協力する事業者を公平に扱
っているかどうか等、裁量権の行使に濫用の対するチェックが不十分と
いう問題があり、公平な取扱い・(協力と減額との)比例原則をどのよう
に徹底するのか、ということが重要となる。
(5)導入あるいは参考にすることを是とした場合の考え方
米国の制度のメリットとして、事業者に対する巨額な罰金と役員・従
業員等の自然人に対する実刑という刑事罰によるエンフォースメントに
より、非常に強力な抑止力として機能していることが挙げられる。司法
取引においても、何人の役員・従業員を刑事の免責から除外するか(カ
ーブアウト)が重要な交渉事項となっており、役員も実刑の対象となる
ということが、事業者がコンプライアンスプログラムを徹底するインセ
ンティブを与えている。また、司法取引を用いることにより、事業者に
協力のための費用を自ら負担するインセンティブを与え、当局側の費用
(税金等)の節約を通じて、社会資源の効率的な分配に資するという側
面もある。
したがって、米国の制度を導入することを是とする考え方もありうる
が、ただし、米国において、司法省の裁量が非常に大きいことを前提と
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競争法フォーラム意見
する交渉にあたって、事業者サイドにも強力な対等な武器(手続保障)
が与えられており、米国では、刑事手続に精通した弁護士による助力、
弁護士・依頼者間秘匿特権、インタビューへの弁護士の立会い等の適正
手続の保障が、当然の前提とされる。また、刑事手続であることから、
当然、自己負罪拒否特権も認められている。この点、日本において裁量
制を導入するにあたり、米国と同様の手続保障を確保すべきである。
また、日本において、課徴金制度の法的性格につき、裁量制を導入
し、制裁の要素を強くして、巨額化した場合、課徴金と罰金を併存させ
る合理性は認めがたく、事業者に対しては課徴金制度に一本化すること
も検討すべきである。ただし、役員・従業員等の自然人に対する刑事罰
は、抑止力という意味では極めて重要であり、運用において、事業者に
ついては、公取委が、刑事告発を行わず課徴金のみに限定し、刑事告発
は自然人のみに限定する、ということも考えられる。この点、米国で
は、事業者と役員・従業員との利益相反が生ずることを前提としてお
り、別々の弁護士が選任される実務が確立されており、日本でも、同様
の実務の導入が望まれる。
なお、米国シャーマン法第2条の単独行為規制については、カルテル
の場合の刑事罰(巨額な罰金)の適用とは異なり、司法省と事業者があ
らかじめ判決の内容について合意し、その合意の内容に沿った判決を得
て民事訴訟手続を終了させる、同意判決(consent decree)での解決を
図ることも多い。日本においても、行為類型による相違を認め、単独行
為規制における義務的課徴金制度は見直しの対象とすべきである。
3 韓国の制度からの示唆
韓国の制度からの示唆
(1)韓国の制度の概要
ア 概要
韓国では裁量型の課徴金制度を採用している。まず、韓国独占禁止法
( The Monopoly Regulation and Fair Trade Law, the “FTL”, the primary
competition law in Korea) で最高率を定めており、カルテルの場合は違反
期間の売上の 10% となっている。この最高率の範囲で調整して最終率
を決めることになる。そのために、韓国公正取引委員会(KFTC)の課徴
金賦課細部基準等に関する告示(Notification on the Detailed Standards for
Imposition of Administrative Fines) (施行 2013 年 6 月 17 日公正取引委員
会告示第 2013-2 号 2013 年 6 月 5 日一部改正)が定められている。
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競争法フォーラム意見
イ 課徴金の算定基礎
韓国では、限度なしで違反期間の当該製品・役務の売上げを基礎とし
ている。ただし、違反期間がいつから開始するかについては、証拠との
関係で裁量的に決めることとなり、売上も基本的には当事者から提出さ
れた資料を基に判断する実務である。すなわち、違反の対象となってい
ないと当事者が主張する場合は、それを疎明して除くことになる。
売上がない場合でも、例えば談合で個別入札に参加せずに落札してい
なくても落札価格の 50%を売上げとみなす。
ウ 課徴金の基礎算定率
前述のように、韓国では日本と同様に上限は 10%である。
基礎算定率については、韓国では、①違反行為の内容(競争制限性、
強制の程度)及び②違反行為の程度(関連市場での占有率、売上高、被
害規模・利得の不当性、地域的範囲)をもとに点数計算をして「非常に
重大な違反行為」「重大な違反行為」「重大性の弱い違反行為」と区分
して、賦課基準率を決める。
他方で、韓国では、業種別算定率や中小企業算定率はないが、上記の
②の参酌事由でその点は配慮されている。韓国では、早期の取りやめや
繰り返し、主導性は、加減算で考慮することになっている。
エ 課徴金の加減算
加減算について、韓国の制度の概要は以下のとおりである。
第一次調整
違反行為の期間及び違反行為の回数
第二次調整
増額調整:主導的役割(30%まで)、他社に対する報復措置を講じ
た場合(20%まで)、公取委の審査拒否や回避(30%ま
で)、高次の従業員などが参加した場合(10%まで)、
その他これらに準じる事項(10%まで)
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競争法フォーラム意見
減額調整:違反合意の不実施(30%まで)、違反行為の是正(10%
まで)、公取委への積極的協力(15%まで)、コンプラ
イアンス・プログラムの実施(内容により 20%まで)等)
オ 最終金額の決定
以上の算定方法で判断した最終金額について、課徴金の減免制度(リ
ーニエンシー)による減額がなされる。
さらに、2 次調整された算定基準が、違反事業者の現実的な負担能力、
当該違反行為が市場に及ぼす効果、その他市場または経済与件及び法第
55 条の 3 第 1 項第 3 号による違反行為により取得した利益の規模など
を十分に反映できておらず過重であると判断される場合、KFTC は 2 次
調整された算定基準を次のとおり調整して賦課課徴金を 50%減額まで
決定することができる。さらに、50%の減額をしても事業者がこれを納
付するのがはなはだ困難であると認められる場合は、50%を超える減額
もあり得る。
(2)実務から見た実態と問題点
韓国の制度は、上記のように算定基礎額、基礎算定率、加減算、最終
金額の決定に至るまで、課徴金賦課細部基準等に関する告示により詳細
に定められていることから透明性、公平性が図られている。他方で、課
徴金の基礎算定率の当てはめや増額調整要素・減額調整要素の採用に当
たっては KFTC の行政裁量で決定されることとなり、裁量制に特有の問
題であるが、事業者からは争う範囲が限定される。例えば、事業者とし
ては、カルテルへの参加は主導的な地位ではなかったという点は事実主
張なので争える可能でもあるが、KFTC に対する積極的な協力(資料の
提出及び証言)があるかどうかは KFTC 次第なので、事業者が鋭意協力
したとしても有益な情報ではなかったということで減額幅(上限は 30%
と大きい。)が低くなるということになると争いにくいことになる。ま
た、KFTC の審査に対する拒否、妨害、回避が 30%までの増額要素とな
るが、こちらも正当な理由で審査に協力しないことが KFTC から拒否や
回避に当たるとみなされるリスクがある。
この点は、裁量制の本質的な問題なので、それらを突き詰めて透明化
することはできないことは理解できることから、裁判所でそうした点を
争う事例の積み重ねで明確化する他はない。
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2016 年 8 月 31 日
競争法フォーラム意見
他方で、違反期間は、違反行為が開始された当初から起算することか
ら、相当長期間を取る事例も生じる。その場合、証拠に基づいて起算時
点を事実認定する必要があるが、例えば 10 年以上前の開始時期など証
拠が十分でない場合もあるところ、事業者からしても争う証拠の収集に
困難を生じることとなる可能性があり、この点は課題である。実際に、
複数の当局が調査をしている案件では、行為は同一でも当局ごとに開始
時期や終了時期の認定を異にする事例があり、あまりに以前まで遡って
課徴金の計算基礎に参入することは問題である。
最後に、韓国では、事業者の手続保障については配慮されている。事
業者の代理人が KFTC に対して事実関係を報告したり、上記の考慮事項
について討議する機会もあり、透明性が高い。また、弁護士依頼者秘匿
特権は韓国ではまだ認められていないが、KFTC による従業員の事情聴
取も会社代理人や個人の代理人も立ち会うことが可能であり、メモも取
れる。このような手続保障があって、裁量制も存立できるのである。
(3)日本への課徴金制度の改正と韓国制度
公取委が比例原則、平等原則、予見可能性、透明性を考慮して判断で
きるかが問題点である。少なくとも、いつも増額調整をする、減額調整
をしないという事業者に不利な運用はすべきではない。公取委の専門性
というよりも、事業者が理解するような説明力が求められる。
結論として、総じて韓国の制度は、裁量に合理的かつ客観的な制約が
課されており、裁量の在り方を考える場合には、韓国の制度を参考にし
て日本の制度構築を図るべきである。以下、参考にすべき点を述べる。
・ 前年度売上げを基準として違反期間を乗じる EU 型もあるが、違反期
間中の売上げ変動を考慮することがないので、韓国型のほうがよい。
・ 韓国では日本と同様に上限は 10%なので、日本も同率を基礎にして算
定率を検討することが適当である。
・ 韓国では、業種別算定率や中小企業算定率はないが、上記の②の参酌
事由でその点は配慮されている。韓国では、早期の取りやめや繰り返
し、主導性は、加減算で考慮することになっている。そのほうが、順番
としては適当ではないかと思われる。
・ 従業員の事情聴取への代理人の立会いやメモ取りを認める制度は少な
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2016 年 8 月 31 日
競争法フォーラム意見
くとも日本でも導入すべきである。
第3 「論点整理」に示された
「論点整理」に示された各論点に対するコメント
各論点に対するコメント
1 「1 不当な取引制限
不当な取引制限に
取引制限に対する課徴金の算定・賦課方式」
対する課徴金の算定・賦課方式」について
課徴金の算定・賦課方式」について
(1)課徴金の算定基礎
課徴金の算定基礎」について
(1)「(1)
課徴金の算定基礎
」について
課徴金の
算定基礎とする売上額の範囲」について
ア 「ア 課徴金
の算定基礎とする売上額の範囲」
について
(ア)はじめに
(ア)はじめに
論点整理は、不当な取引制限に対する課徴金の算定基礎とする売上
額の範囲について、違反行為による相互拘束の対象となった商品又は
役務のみを対象とする現行制度の変更の必要性はあるのか、課徴金の
算定基礎とする売上額の範囲を公取委の専門的知見により事案に応じ
て個別に認定する方式とする必要性及び許容性はあるのか、などとの
論点を提示する。
しかしながら、そもそも課徴金の算定基礎とする売上額について、
現行制度を変更する必要性が明らかではない。独占禁止法研究会は「一
定の取引分野における売上額がない場合」や「違反行為期間中に売上
額が生じない」場合に現行制度は不都合であるとするが、一部の例外
的事象に焦点があたり過ぎている印象が拭えない。また、そのような
裁量を認めることで却って、二重処罰の問題を惹起したり、法的安定
性・予見可能性・公平性・日本の法体系全体との整合性が損なわれると
いったおそれもないではない。
例えば、市場分割型の国際カルテルにおいて、国内売上高が存しな
い外国系事業者に課徴金を賦課することができないという不都合性が
指摘されるが、この点に関する各国競争当局の足並みが揃わない状況
のなかでこのような場合に一定の売上額を仮定して課徴金を賦課する
ことには、国際的な二重処罰の問題が内在している。また、諸外国にお
いて、違反行為に関連する売上額を認定される際によく問題となる、
間接売上高(最終製品に組み込まれる部品に関してカルテルがあった
場合に、当該部品については国内売上高が存しない場合でも当該最終
製品の国内売上高が存するときの当該売上)についても同様の問題が
ある。ただ、国際カルテルの場合には、不当利得の剥奪、抑止力という
課徴金の側面から見れば、我が国での売上がない企業であっても海外
において罰金や制裁金の支払いを命じられているのであれば、日本で
更に課徴金を課す必要性は認められないとも考えられる。
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2016 年 8 月 31 日
競争法フォーラム意見
国内案件においても、市場分割や入札談合等において、調整の結果
受注しなかった事業者に対しても一定の売上高を擬制して課徴金を賦
課するようなことが想定されているとすれば、ある事件の課徴金の裁
量に仮託して、当局が立件に至らなかった別の事件の制裁の目的で課
徴金を課するおそれも生じ得るところで、法的安定性・公平性の観点
から疑問がないではない。
このように課徴金の算定基礎となる売上額の範囲について裁量を認
めるという考え方に対しては、その必要性が明らかでないばかりでな
く、そのような裁量を認めることの問題点についても十分な配慮が必
要と考える。
以下、
「関連する主な問題点」として指摘されている事項(論点整理
6 頁)について、意見を述べる。
(イ)指摘事項第 1 点(相互拘束の対象となった商品役務の売上額のみ
が課徴金の算定基礎となる点)
が課徴金の算定基礎となる点
)及び第 2 点(課徴金の算定基礎とする
売上額を柔軟に認定する場合)
売上額を柔軟に認定する場合)について
そもそも、課徴金の算定基礎となる売上額の決定は、最終的な課徴
金額を算出するための出発点である。そのため、この点で公取委に広
い裁量を認めた場合、最終的な課徴金額が公取委の判断に大きく左右
されることとなり、公取委の裁量の幅が過度に広範なものとなること
が懸念され、また重大な不利益処分であるにもかかわらず予見可能性
が著しく損なわれることになる。したがって、課徴金の算定基礎とな
る売上額を決定するに当たっては、公取委の裁量によることなく従前
どおり法令において明記するか、少なくとも公取委の裁量を極めて限
定的なものとすべきであり、課徴金の算定基礎となる売上額について、
安易に「柔軟」に認定することは避けるべきであり、行為類型ごとに、
課徴金算定の方法を個別に検討すべきである。例えば、入札談合のよ
うな、対応する売上を明確に認定しやすい事例については裁量を認め
る必要がないのではないか。
(ウ)
(ウ)指摘事項第
指摘事項第 3 点(特殊な事案における課徴金の算定方法)
特殊な事案における課徴金の算定方法)につい
て
そもそも、まず、公取委が主張するような特殊な事案における事実
認定が妥当であるのか、そのような事案がどの程度の割合で生じてい
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競争法フォーラム意見
るのか、今後どの程度の割合で生じることが見込まれるかを検討し、
課徴金の算定基礎となる売上額の決定に係る法規定を改正する立法事
実が生じているかどうかを慎重に検討すべきである。
この点、不都合が生ずる場面として独占禁止法研究会第 1 回会合資
料 4 の 3 が挙げる事例①は、公取委が当該事案における一定の取引分
野を「我が国に所在する需要者が発注する商品」と画定したために、外
国事業者に課徴金を課せないという事態が生じたものである。また、
事例②も、公取委がb地区を含めず「法人 A のa地区支社が発注する
土木工事」のみを一定の取引分野と画定したために、b地区企業に課
徴金を課せないという事態が生じたものである。このように、公取委
の事実認定に起因して課徴金が課せないという結果を招いた事案にお
いては、制度設計の変更を論ずる以前に、まずは現行制度を前提に本
当に当該事案に対応しきれないのかが検討されるべきである。
事例③について、同事案のように支配型私的独占として法的措置が
なされた事案は、同事案を含めてこれまで僅か 5 件にすぎない。また、
事例④についても、同事案のように実行行為期間中に商品・役務の引
渡も契約も行われない事案は極めて例外的である。このような例外的
事案の存在をもって、公取委に広く課徴金算定の裁量を与えることの
論拠とすることはできないというべきである。
事例⑤については、裁量型課徴金制度における裁量についても、違
反行為の内容とは無関係の事情が考慮されることとなる可能性はある
し、裁量によって対象とされた課徴金算定の基礎となる売上額等が争
われることも想定される。
以上のとおり、事例①から⑤は、いずれも現行課徴金制度の見直し
及び裁量型課徴金制度の導入の必要性を示すものとは言い難い。
そして、上記の点を措いて、仮に特殊な事案において違法収益を収
奪できない場合が生じ、かつ、そういった事例が今後一定の頻度で生
じる見込みがあって、制裁の必要性からそれを放置することが看過で
きない場合が生じているとしても、法令で、課徴金の算定基礎となる
売上額の決定方法を明確に規定すべきである。
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競争法フォーラム意見
また、具体的な売上を離れて課徴金の算定基礎となる経済的利得等
を認定することは、課徴金制度の不当な利益の剥奪という側面からの
乖離が大きすぎるように思われる上、公取委の恣意を排除して事業者
にとって納得感のある算定方法を定めることは困難であると考えられ
る。このような点についても、慎重な検討がなされる必要がある。
(エ)
(エ)指摘事項第
指摘事項第 4 点(課徴金の算定基礎とする売上額を個別に認定す
る方式とすること)
る方式とすること
)について
前記(イ)記載のとおり、課徴金の算定基礎となる売上額の決定は、
最終的な課徴金額を算出するための出発点である。したがって、課徴
金の算定基礎とする売上額を決定するに当たっては、公取委の裁量に
よることなく従前どおり法令において明記すべきであり、課徴金の算
定基礎となる売上高の認定を、安易に「公正取引委員会の専門的知見」
に委ねることは避けるべきである。
また、少なくとも現時点では、前記(ウ)記載のとおり、論点整理に
記載されているような「課徴金の算定基礎となる売上額の範囲を、公取
委の専門的知見により事案に応じて個別に認定する方式」をとる立法
事実が存するとはいえない。
イ 「イ 課徴金の算定基礎とする売上額の算定期間」について
課徴金の算定基礎とする売上額の算定期間」について
(ア)指摘事項第
(ア)
指摘事項第 1 点(算定期間を
(算定期間を 3 年間に限定する必要性・合理性
等)について
課徴金の対象となる違反期間(算定期間)を 3 年間に限定する必要
性や合理性を検討するのであれば、現行法が規定する 3 年間の限定で
は十分ではないことを示す立法事実があることが前提であり、その上
で 3 年間の限定を見直す必要性や合理性があるかを検討すべきであ
る。
すなわち、平成 3 年改正法において、課徴金算定率が引き上げられ
るのに併せて課徴金の算定期間が 3 年間に限定されたが、その趣旨
は、法律関係の社会的安定性の観点、及び、売上額の報告を求められ
る事業者の負担を限定するという観点から、抑止効果という点から見
て支障のない範囲で、実行期間として遡り得る期間に合理的な限定を
することにあり、その際、他の時効・除斥期間、事業者・官公庁の帳
簿・書類の保存期間の多くが当時 5 年であったこと、また、実際に
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競争法フォーラム意見
も、それまでに課徴金納付の対象となった事件 76 件のうち、実行期
間が 3 年を超えるものは 4 件にすぎなかったこと等が考慮され、平成
3 年改正法によって課徴金の算定期間が 3 年間に限定された。
したがって、もし、現時点において、算定期間を 3 年間に限定する
必要性や合理性を検討するのであれば、まず、公取委が、平成 17 年
改正法及び平成 21 年改正法によって算定率が引き上げられ、また対
象行為が拡大された現行の課徴金制度の下でも、違法行為の抑止の効
果がいまだ不十分であること及びその根拠を、実際に課徴金納付命令
の対象となった事件のうち、実行期間が 3 年を超えるものの数及び割
合、個々の事案の対象期間、対象売上等に照らして、具体的に示すこ
とが前提であり、その上で 3 年間の限定を見直す必要性や合理性があ
るかを検討すべきである。
この点、公取委が現行課徴金制度の問題点として掲げる独占禁止法
研究会第 1 回会合資料 4 の 3 事例⑥は、現行の制度及び公取委の運用
の下では、当該事案において、課徴金の算定基礎となる売上額が小さ
かったというに過ぎず、課徴金の算定期間に帰責すべき問題ではな
い。また、事例⑦における不都合に対処するためには、企業グループ
内で事業譲渡があった場合等には、実行期間の上限との関係では「通
算期間」を見るとする規定を設ければ足り、課徴金の算定基礎とする
売上額の算定期間の見直しの必要性を直接基礎付けるものではない。
(イ)指摘事項第
(イ)指摘事項第 2 点(全期間について実際の売上額を認定する必要が
(全期間について実際の売上額を認定する必要が
あるか)
(違反期間の最終事業
の最終事業年度の売上額に違反期間
あるか
)及び第 3 点(違反期間
の最終事業
年度の売上額に違反期間
を乗じるという方法)
を乗じるという方法) について
上記(ア)記載の検討を経て、仮に、算定期間を 3 年間に限定す
る必要性や合理性等がないことを示す立法事実が示されたとしても、
その場合には、当該立法事実に照らして、必要かつ合理的な算定期間
を検討すべきあり、当該立法事実との関係を抜きにして、「全期間」
を対象とする必要があるかとか、その場合の売上額をどのように認定
するかといった論点を引き出すことは唐突であり、建設的な議論では
ない。
また、そもそも、算定期間の見直しに伴って、EU のように違反期
間の最終事業年度の売上額に違反期間(年数等)を乗じるといった方
法を採用すること、あるいは、当該最終事業年度の数値が標準的とは
いえない場合に、公取委の判断により、事案に応じて他の事業年度等
の数値を用いることができる方式を採用することについては、比例原
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競争法フォーラム意見
則ないし平等原則、及び、予見可能性ないし透明性の確保の観点か
ら、慎重な検討が必要である。
(ウ)3
(ウ)3 年間の限定を見直すとした場合の制度的歯止めについて
上記(ア)及び(イ)記載の検討を経て、課徴金の算定期間につい
て、3 年間の限定を見直し、拡張する場合には、事業者に下記の不利
益が生じる畏れがある。
① 課徴金額の水準が現行の水準よりも著しく引上げられる不利益
② 順位 2 番以降の減免申請者の場合に、違反行為期間を伸張する方
向での違反行為の申告を行なうインセンティブが害される不利益
そのため、これらの不利益に対する制度的歯止めとして、下記の
事項の導入を検討することが必要ないし有益である。
① について
課徴金の額が過大とならないよう、事業者の総売上額等を基準に賦
課する課徴金の上限(総 Cap)を定めること
②について
EU の部分的免除(Partial Immunity)の制度のように、順位 2 番
以降の減免申請者が、新規に違反行為期間を伸張する事実・証拠
を提出した場合には、課徴金の算定において、当該伸張した期間
の売上額を除外する仕組みを導入すること
(2)「(2)課徴金の基本算定率」
(2)課徴金の基本算定率」について
課徴金の基本算定率」について
基本算定率の定め方」について
ア 「ア 基本算定率の定め方」
について
基本算定率は、違反抑止に必要な範囲で、透明性のある明確な基準に
よって決まらなければならない。裁量型課徴金とするにしても、加算・
減算の考慮要素及び要件は、法律で定められることが望ましいが、仮に
法律でないにせよ、必ずどこかで定めておく必要がある。これらがどこ
にもあらかじめ定められない完全な裁量性は到底認められない。
加算・減算の考慮要素として、③早期離脱を除く既存の要素(①業種、
②中小企業か、④繰り返し違反か、⑤主導的役割を果たしたか)を外す
必要性は感じられない。
独占禁止法研究会第 1 回配付資料 3「課徴金制度の概要と見直しの視
点」における上記加算・減算要素に関する指摘は、上記加算・減算要素
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競争法フォーラム意見
そのものが問題であるとの指摘ではなく、後述するように(後記イ、ウ)、
特殊なケースに上記加算・減算要素が適用される場合の不都合性の指摘
に過ぎない。こうした問題は、新たな立法等で手当てすればよいのであ
り、その解決のために、上記加算・減算要素そのものを撤廃するという
のは乱暴な議論である。
上記加算・減算要素の適用の有無により、機械的に異なる算定率が一
つに定まることについては、行政権の恣意を防ぐために好ましい制度で
ある。しかしながら、そのために制度が過度に硬直的になることは望ま
しくない。そこで、加算・減算要素に該当する場合に一定の幅の中で加
算・減算することとするか、加算・減算要素を機械的に適用した後、そ
れにより生じる不相当な結果を多少とも修正するための限定的な裁量
性は存在してもよいと考える。
なお、新たに、公取委への調査協力の度合い等、新たな加算・減算要
素を加えるか否かは別の問題であり、他の箇所で論じているので、ここ
では触れない。
イ 「イ 業種別算定率」
業種別算定率」について
業種別算定率は、流通業の経常利益率や営業利益率が他業種より低い
実態を考慮して昭和52年の課徴金制度導入時から存在する制度であ
る。業種別算定率が設けられた制度趣旨が現代社会の実態に合わなくな
ったということならともかく、そのような事実はないものと思料する。
上記のとおり、裁量型とするにせよそうでないにせよ、課徴金の加算・
減算要素自体は必要であり、その中から業種別算定率を外す理由はない。
前記「課徴金制度の概要と見直しの視点」における指摘は、企業グル
ープ全体で事業を行っている場合の特殊なケースにおける不公平感の
指摘に過ぎない。これについては、例えば、違反行為者がグループ内の
製造会社から対象商品を購入してグループ外に販売しているような場
合には、一律、卸売業として認定しないことにする等、業種該当性の基
準を明確化することにより解決可能と思料する。
ただ、業種別算定率の差が現行のままでよいのかについては、今後検
討の余地がある。
さらに、卸・小売業だけでなく、通常の製造業に比べて著しく利益率
が低い業種については、基本算定率を見直すことが検討されるべきであ
る。
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競争法フォーラム意見
ウ 「ウ 中小企業算定率」
中小企業算定率」について
中小企業算定率は、大企業と比べた交渉力等の差異、規模の大小を区
別せずに算定率を定めると、中小企業にとっては相対的に大きな負担と
なること、中小企業のカルテルは国民経済に与える悪影響の度合いが相
対的に小さいと考えられることを考慮して、平成3年改正時から存在す
る制度である。上記制度趣旨が現代社会の実態に合わなくなったという
ことならともかく、そのような事実はないものと思料する。上記のとお
り、裁量型とするにせよそうでないにせよ、課徴金の加算・減算要素自
体は必要であり、その中から中小企業算定率を外す理由はない。
前記「課徴金制度の概要と見直しの視点」における指摘は、企業グル
ープ全体で事業を行っている場合の特殊なケースにおける不都合の指
摘に過ぎない。これについては、例えば、企業グループ全体で事業を行
っている場合の違反行為者が中小企業にあたる場合には、中小企業算定
率を適用しないこととするか、一旦は中小企業として取り扱った上、下
記に述べる限定的な裁量権を行使することにより、解決可能と思料する。
ただ、中小企業の定義や、中小企業算定率と大企業算定率の差が現行
のままでよいのかについては、今後検討の余地がある。
(3)「(3)課徴金の
(3)課徴金の加減算
課徴金の加減算」
加減算」について
早期離脱については、制裁という観点からは、対象を自主的に違反行為
を取りやめた場合に限定することは考えられる。むしろ、この点について
は、公取委の従前の運用が、平成 17 年改正時の趣旨から離れている点が
問題であり(例えば、公取委の立入検査を理由として違反行為が終了した
場合であっても、公取委は早期離脱による減算を行っている)、公取委に
裁量を認める理由にはならない。
繰り返し違反及び主導的役割については、制裁という観点からは設定
することも考えられる(残すことが考えられる)。
これに対して、課徴金の基本算定率で公取委に裁量が認められる制度
が導入される場合には、制裁の観点も含めて裁量が認められることにな
ると思われるので、課徴金を加減算する必要はない。課徴金の加減算で考
慮する事項(早期離脱、繰り返し違反、主導的役割)については、法律制
定時の議論に変化があったとは思われない。
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競争法フォーラム意見
また、課徴金の加減算で考慮する事項については、公取委の排除措置命
令及び課徴金納付命令において課徴金の加減算を基礎づける理由となる
事実の認定が記載されていないものが多い。例えば、独占禁止法研究会第
1 回会合資料 4 の 3 事例⑪で主導的役割が認められた X 社に関する認定
事実及び合意形成に関する認定事実の記載と、同時に課徴金納付命令が
出された関連案件における合意形成に関する認定事実の記載とを比較す
ると、公取委が特定の事業者が合意形成の主導的役割を果たしたと認定
するか否かの差異しかないように思われる。これは、被疑事業者によって
争われなければ詳細な認定事実が公表されない手続において、主導的役
割に関する公取委の認定次第で課徴金の割増算定率の適用が認められる
ことを意味するともいえる。つまり、課徴金の加減算においては、事実認
定を通じて、既に実質的な裁量による運用が行われているとも考えるこ
とができる。仮に課徴金の加減算について公取委に裁量を認めるのであ
れば、加減算できる割合を上下それぞれ 10%といった形で限定するほか、
当該裁量以外に公取委が裁量権を行使していないことが明らかになるよ
うに、最低でも欧州委員会による決定文と同程度の事実認定を行うこと
が不可欠である。
加減算率について公取委に裁量を認めることは、既に発生した事象の
効果に関して公取委に事実の評価裁量権を与えることになる。この事実
の評価裁量権は、事実認定そのものであるため、公取委の判断について争
えるようにするべきである。
(4)「(4)調査協力インセンティブを高める
(4)調査協力インセンティブを高める制度
インセンティブを高める制度」
制度」について
ア 「ア 調査協力度合いに応じた加減算の必要性」について
(ア)指摘事項第1点
(ア)指摘事項第1点(調査協力
指摘事項第1点(調査協力度合いに応じて課徴金額を
(調査協力度合いに応じて課徴金額を加減
度合いに応じて課徴金額を加減算する
加減算する
必要性・許容性)について
必要性・許容性
)について
a 調査協力度合いに応じた加減算必要性について
「調査協力度合いに応じた加減算の必要性」を議論する場合には、
「調査協力」とは何かという点が最も重要な点であり、公取委として、
現行の法運用において、事業者が調査協力をするインセンティブがな
いという理由として、具体的にどのようなことを念頭に置いているの
かが必ずしも明らかではなく、まず、公取委として、その点を明らか
にした上で議論を進める必要がある。
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2016 年 8 月 31 日
競争法フォーラム意見
b 加算の
加算の危険性
危険性
特に、加減算のうち加算は課徴金制度のそもそもの趣旨に反するし、
調査において一種の脅迫的なものとなる可能性が高く、極めて弊害が
大きく、認めるべきではない。加算を必要とするというのであれば、
単なる協力のインセンティブを超えた合理的な説明が必要である。
(イ)指摘事項第2点(
(イ)指摘事項第2点(調査協力
指摘事項第2点(調査協力度合いを測る方法)
調査協力度合いを測る方法)について
度合いを測る方法)について
調査協力の意味と問題点
a 調査協力の意味と
問題点
もし、何を調査協力とするのかという調査協力の内容を含め、これ
を公取委の裁量に委ねるとすれば、以下のとおり、このことは非常に
大きな問題を生ずる。
(a)供述を調査協力に含めるべきではないこと
調査協力の内容を公取委の裁量に委ね、これに従業員の供述を含
めることは、極めて重大な問題を生ずる。供述を調査協力に含めた
場合には、公取委(審査官)の認定しようとしている事実に沿った
供述をすることが協力であるという運用がなされる可能性が高く
(現状でも、審査官の意図に沿う供述をしないと非協力だと言われ
る)、このような事態は、次のような深刻な問題を生ずる。
①
独占禁止法違反行為が存在するのか、その範囲・内容が何かは
事実に基づいて認定すべきであり、減免申請者の語るストーリーや
公取委の認定に都合の良いストーリーで認定するものではないこ
とは、当然であり、従業員の供述が公取委の認定やストーリーに都
合の良いか否かで、協力したか否かを判断することは、許されない
ことは明らかである。むしろ、減免申請者の主張と異なる事実にも
謙虚に耳を傾け、その内容を検証することこそ、真実の発見には重
要なものと考えられるが、その事実が公取委の行おうとする違反認
定にとってプラスでなければ、協力とはならないというのでは、不
合理である。
②
協力による課徴金の減算を受けるのは事業者であるが、事業者
は従業員に具体的にどのような供述をするかについて指示したり、
ましてや供述内容を強制できる立場にはない。事業者ができるのは、
従業員に対して、記憶に基づいて正確に供述するようにアドバイス
をすることであって、審査官に迎合するよう勧めることも強制する
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2016 年 8 月 31 日
競争法フォーラム意見
ことも必要ではないし、むしろ行ってはならないことである。もち
ろん、事業者が、従業員の記憶や意志に反して、審査官の質問に答
えないよう求めたり、虚偽の事実を述べるように求めたりすること
は、調査妨害であり、許されないのは当然のことである。特に審尋
による場合には、虚偽の供述をした従業員は罰則の対象となるが、
それには、きちんとした立証が必要である。もし、事業者に調査妨
害としての不利益を与えるのであれば、従業員に虚偽の供述を教唆
したことをきちんと立証すべきであり、単に公取委が裁量の問題と
して不利益を課すべきものではないことは明らかである。
ちなみに、米国においても、従業員が供述を拒んだり、司法省の
意に沿わない供述をしたからといって、事業者が非協力だと認定さ
れることはない。もちろん、事業者が従業員に供述拒否をさせたり、
虚偽の供述をさせた場合には、その旨の立証を経て、事業者に制裁
が科せられる。
従って、調査協力を課徴金の減算とする場合でも、供述内容を調
査協力に含めることは許されない。
(b)調査への協力と違法行為への
調査への協力と違法行為への関与度
と違法行為への関与度との
関与度との関係
との関係
供述以外の調査協力を考える場合には、違法行為の中心にいれば
いるほど様々な情報、証拠が存在し、有効な協力が可能であり、周
辺部にいたに過ぎない行為者は、調査にとって有意義ある協力がで
きないという矛盾が存在することを忘れてはならず、違法行為への
関与度の強さと言う違法行為本来への非難の程度の基準が後の協力
という事実で変更されることがないようにする必要がある。
b 「調査協力として自認を考慮する」かについて
調査協力とは事実の発見に有意義な情報、資料を提供することであ
るとすれば、必ずしも自認とは結びつかないが、自認したことを調査
協力として考慮すること自体は、自認した部分について、調査を簡素
化できるという意味で、不合理ではないと考える。
ただし、違反事実の全部について自認しない限り減額の対象としな
いということは、合理性を欠き、許されない。一部についての自認で
あってもその範囲においては減額を認めるべきである。そうでないと、
認める部分の減額を人質にとって、争う余地のある部分についてその
権利を放棄させるような運用になってしまい著しく合理性を欠くこ
とになる。
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2016 年 8 月 31 日
競争法フォーラム意見
(ウ)指摘事項第
(ウ)指摘事項第3
指摘事項第3点(調査協力
点(調査協力該当性や加減算率を
調査協力該当性や加減算率を公取委が
該当性や加減算率を公取委が個別に決
公取委が個別に決
定する方式の必要性・許容性)について
定する方式の必要性・許容性
)について
課徴金減免制度は、発見しにくい違反行為を自主申告によって発見
することができるという端緒としての意味を持つものとして合理性を
説明できるものであり、その要件も法律で明確に定められている。
これに対し、調査協力によって課徴金に差を設けることは、もっぱ
ら公取委の調査の効率化の目的のためのものであり、この調査協力の
内容やそれによる課徴金の増減の判断を公取委に委ねることは、濫用
の危険性が高いと考えざるを得ない。
また、公取委の専門性は、もっぱら経済法という特殊な分野の法律
の解釈や運用についてのものであって、調査や調査協力に関して専門
的知見に委ねるということ自体が理論的ではない。
(エ)指摘事項第
(エ)指摘事項第4
指摘事項第4点(調査協力
点(調査協力度合いに応じた加減算を
調査協力度合いに応じた加減算を行
度合いに応じた加減算を行う場合の問
題点)について
題点)
について
調査協力度合いに応じた加減算を行う場合の問題点については、既
に述べたとおりであるが、論点整理で示された事項に即して改めて述
べると以下のとおりである。
a 「①公正取引委員会又は審査官の審査方針に迎合せざるを得なく
なる」
との弊害
なる
」との
弊害
これは、調査協力に供述を含めた場合に最も顕在化する問題点であ
り、協力の度合いといっても結局は、公取委の認定しようとするスト
ーリーに都合の良い供述をするか否かでしかなく、供述調書偏重の傾
向がいっそう強まり、加えて、真実よりも認定しやすいストーリーを
という傾向に拍車をかけるだけである。この点は、上記のとおり、最
も危惧される点であって、万が一、調査協力に供述を含めるのであれ
ば、可視化、弁護士立会い、弁護士・依頼者間秘匿特権が不可欠であ
る。
b 「②調査協力の一環として事業者から幅広い情報が公正取引委員
会に提出され,公正取引委員会が当該情報に基づき調査範囲を拡大す
ることにより,最終的には違反行為者ではないとの判断がなされるよ
うな事業者までもが公正取引委員会の調査に巻き込まれる事態が生
じる」
じる
」との弊害
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2016 年 8 月 31 日
競争法フォーラム意見
いったい何が有効な協力となるかが不明なまま、その判断が公取委
に委ねられることになれば、EU での実務のように、多量の資料の提
出を余儀なくされる状況になる可能性があるが、最も問題となるのは、
これらの証拠が恣意的に選別されて違反認定に使われる可能性があ
ることである。EU や米国では証拠については全面開示されており、
我が国においても証拠の全面開示が必要であり、これを否定する理由
は存在しない。
事後に作成されたのではない物的証拠については、証拠としての価
値も高く、供述での迎合という問題はない。従って、このような証拠
の積極的提出を促すインセンティブとして不公平感を生じない程度
の減額を与えることには合理性があると考える。
しかし、同時に、裁量に任される個別の資格付与は、不公平な結果
を招く可能性があり、重要な証拠が提出できるかどうかは、その企業
の果たした役割や、違反行為者個人の性格などに影響される。たとえ
ば、違反行為の中心近くにいた行為者が几帳面にノートをつけていれ
ば極めて有力な証拠であり、調査に大きなプラスになるが、手元に何
も残していない行為者は、何ら有効な協力を出来ないことになる。
従って、減額については、不公平感が生じないような範囲に収める
必要と合理性をチェックできるようにする必要がある。その意味で、
必ず、減額の理由となった物的証拠を他の課徴金命令を受けた者に開
示し、合理性を説明することが必要である。
c 課徴金納付命令の対象となる事業者と実際に違反行為に関与して
いた担当者との間の
いた担当者との間
の利益相反
刑事事件では利益相反は当然生ずるし、行政事件であっても、厳密
な意味での利益相反とはならなくとも、企業にとって減額を受けられ
るからといって、担当者の認識と異なることを供述させるような事態
が生ずる可能性がある。
d 検査妨害等の罪(独占禁止法第94条)との関係
独占禁止法に定められた義務に反して調査に協力しなかった場合
には、反証を含む正式な手続によって当該事実を立証した上で、制裁
を科すことができるのであって、きちんとした手続を踏むことなく、
非協力であるとか調査を妨害したという公取委の判断だけで課徴金
の増額ができるということになれば、正式な手続も立証もなく、事実
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2016 年 8 月 31 日
競争法フォーラム意見
上の制裁を科すのと同様になり、許されないと考える。
イ 「イ 課徴金減免制度と調査協力度合いに応じた課徴金の減算との関
係」について
(ア)指摘事項第1点(
(ア)指摘事項第1点(課徴金減免制度
第1点(課徴金減免制度との適用関係)
課徴金減免制度との適用関係)について
との適用関係)について
課徴金減免制度における調査開始後の申請による減額を廃止し、
a 課徴金減免制度における調査開始後の申請による減額を廃止し
、
全て調査協力度合いに応じた減算で対応する方法
全て調査協力度合いに応じた減算で対応する方法
我が国の課徴金減額制度は、要件が明確であることが特徴であるが、
減額申請してもそれが認められるかすら不明、認められてもどの程度
の減額なのか最後まで判らないような状況となれば、調査協力をする
ことのインセンティブを欠くことにならないのか。
特に、課徴金減免申請は、違反行為を認めることが前提であり、現
行法では、減額を受けられるメリットと争えないことのデメリットを
比較することが可能であるが、それが出来なくなる。
また、事後の協力において、減額が裁量に委ねられるシステムは、
透明性、公平性を欠き、先に述べたとおり弊害が大きい。
b 調査協力度合いに応じた減算の適用は、
調査協力度合いに応じた減算の適用は、課徴金減免制度が適用さ
れない事業者に限定する方法
れない事業者に限定する
方法
減算の適用を課徴金減免制度が適用されない事業者に限定する理
由が必ずしも明確ではないが、課徴金減免制度で要求される情報、証
拠の提供を超える協力がある場合に減算を否定する必要はないと考
えられる。
c 調査協力度合いに応じた減算は全て課徴金減免制度の枠組みで行
う(課徴金減免制度の適用枠を無制限とする等)方法
う(課徴金減免制度の適用枠を無制限とする等)
方法
課徴金減免申請については、要件が明確であることが好ましいこと
は前記のとおりである。さらに、課徴金減免制度は違法行為を認める
ことが条件となる。一部の行為の違法性を否認しながら、その余につ
いては重要な証拠を提出するという場合もあり得ると考えられ、両者
は別の制度とする方が良いと考えられる。
(イ)指摘事項第
(イ)指摘事項第2点(調査協力度合いに応じた課徴金の加減算と課徴
金減免制度を併存させる場合に考慮すべき事項)について
a 課徴金減免制度の枠外の調査協力の減算の水準は、
課徴金減免制度の枠外の調査協力の減算の水準は、課徴金減免制
度の実効性を損なわないよう、
度の実効性を損なわないよう
、当該制度による水準を下回るものとす
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2016 年 8 月 31 日
競争法フォーラム意見
る方法
当該方法が合理的ではないかと考えられる。
そうでないと、なるべく最初に提出する証拠は最小限度にして、後
から有力な提出して減額を加算しようとするのではないか。そもそも、
課徴金減免制度は、違反行為の存在を認め、それを基礎づける資料を
提出することが要件となっているので、それにプラスの資料として考
えられるのは、例えば、ほぼ専ら他社の参加を基礎づける資料のよう
なものであろうが、その様な証拠は一般的に進んで提出すると考えら
れる。
b 課徴金減免制度の欠格事由に該当しても、
課徴金減免制度の欠格事由に該当しても、別途有効な調査協力を
した場合は調査協力度合いに応じた減算の対象とする方法
した場合は調査協力度合いに応じた減算の対象とする
方法
かかる方法が検討されてもおかしくはないが、どの程度の減算を認
めるかという点と関連して検討されるべき問題と考える。
ウ 「ウ 課徴金減免制度」
課徴金減免制度」について
(ア)「
(イ)減免要件」
(ア)
「(イ)減免要件
」について
a 指摘事項第1点(証拠の
指摘事項第1点(証拠の付加価値に応じて個別に
証拠の付加価値に応じて個別に減免資格
付加価値に応じて個別に減免資格を付与
減免資格を付与
する方式の
必要性・許容性)について
する方式
の必要性・許容性)
について
必要性も許容性もない。透明性、公平性、予見可能性など全ての点
で問題が大きく、弊害が大きい。ここでも公取委の専門的知見を調査
協力の判断を是認する根拠とすることは出来ないと考える。
b 指摘事項
指摘事項第2点(
第2点(減免資格の欠格事由
第2点(減免資格の欠格事由)
減免資格の欠格事由)について
違反行為において重要な役割を果たしたリーダー的な会社に全面
責任免除を認めるべきではなく、この基準をさらに明確にして、米国
のように実質的に骨抜きになることのないようにすべきである。
(イ)
(イ)「(ウ)減額率」
(ウ)減額率」について
証拠の付加価値に応じて個別に減額率を決定する方式を導入するこ
とについては、調査協力を物の提出に限定してということであれば許
容性があるが、その場合においても不公平感を生じない過大とならな
い一定率を上限とし、証拠の開示と減額の合理性についての説明をす
べきである。
(ウ)
(ウ)「(エ)協力義務」
(エ)協力義務」について
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2016 年 8 月 31 日
競争法フォーラム意見
減免申請をしている以上、一定の調査協力義務を課すことは良い。
ただし、個人の協力を協力義務に含めるべきではない。
また、調査協力義務の内容については、会社に対し、報告命令によ
らず、ある程度特定して資料の提出を求め、それに応ずる義務を負わ
せることなどが考えられる。
(5)「(5)和解制度」について
(5)和解制度」について
(いわゆる和解制度を導入する必要性・許容性
和解制度を導入する必要性・許容性)
ア 指摘事項第1点(いわゆる
和解制度を導入する必要性・許容性
)につ
いて
EU の和解手続において、全面的な証拠の開示とともに委員会側の考
え方が示され、検討する機会と意見を述べる機会が与えられることは、
参考にされるべきものと考える。特に、法執行の本質が競争秩序の回復
という点にあると考えれば、両者の納得する範囲で違反認定をするとい
う手続として有効であり、効率化という意味で減額することにも合理性
が認められる。
米国の制度、現行の運用は、当該違反行為の悪性よりもその後の協力
の方が桁違いと言って良いほど量刑に影響を与えており、極めて不合理、
不公平であり、到底参考にはならない。
イ 指摘事項第2点(
指摘事項第2点(和解制度の要件
和解制度の要件・手続等)
和解制度の要件・手続等)について
・手続等)について
EU の手続のように証拠の開示を伴うものであること、当事者の全員
もしくは大半が参加する制度とすべきであり、いつでも手続から離脱出
来るような手続とすべきであろう。
(6)「(6)課徴金の賦課方式」について
(6)課徴金の賦課方式」について
課徴金の基本的な算定方式」
ア 「ア 課徴金の基本的な算定方式
」について
課徴金は、重大な不利益処分であり、比例原則、透明性、平等原則、
予見可能性に照らして、基本的に全て法定化すべきである。
経済・社会環境の不断の変化を理由として課徴金の算定方式を政令や
規則等に委ねる制度を設ける必要性や許容性は認められない。
イ 「イ 課徴金の賦課要件」
課徴金の賦課要件」について
課徴金を義務的に課す必要はないが、不利益処分を課すか課さないか
の基準は法的に明確にすべきであり、専門的知見といった裁量に委ねる
べきではない。
また、主観的要件を課徴金の賦課要件とする点については、立証によ
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2016 年 8 月 31 日
競争法フォーラム意見
り時間を要するようになり、一部故意、一部過失の場合をどう考えるの
か、理論的に詰めるべき問題が多数生じてくると考えられる。
2 「2 行為類型による相違」について
行為類型による相違」について
指摘事項第1点
(行為類型ごとに
行為類型ごとに課徴金賦課要件等を定める必要性・合
(1)指摘事項
第1点(
行為類型ごとに
課徴金賦課要件等を定める必要性・合
理性)について
理性)
について
課徴金の趣旨(不当利得の剥奪、抑止力など)から考えれば、行為類型
毎に基準を設けることには、必要性も合理性もある。
(2)指摘事項第2点(
(2)指摘事項第2点(対価要件
指摘事項第2点(対価要件を
対価要件を残す必要性・合理性)
残す必要性・合理性)について
必要性・合理性)について
課徴金の趣旨(不当利得の剥奪、抑止力など)から考えれば、対価要件
は必要であるし合理性はあると考える。
(3)指摘事項第3点
(3)指摘事項第3点(
第3点(課徴金の対象となる行為類型)
課徴金の対象となる行為類型)について
現段階では見直しの必要はないと考える。
(4)指摘事項第4点
指摘事項第4点(対価に影響する不当な取引制限以外の行為類型
(対価に影響する不当な取引制限以外の行為類型)
対価に影響する不当な取引制限以外の行為類型)につ
いて
優越的地位の濫用事案における課徴金の算定基礎の範囲については、
現行制度においてどのような問題があるかをまず検討する必要がある。
不当な取引制限を対象とした課徴金減免制度に相応する制度として、
その他の行為類型を対象に、景品表示法や金融商品取引法のような自主
申告による課徴金の減額制度については、検討に値するが、緊急の課題と
は考えられない。
3 「3 課徴金制度の法的位置づけ」について
課徴金制度の法的位置づけ」について
」について
(1)「(1)課徴金制度の基本的性格(法的性格・制度趣旨)」
について
そもそも、課徴金制度の問題は、公取委の役割は何かという根本の問題
に帰着する。
すなわち、競争秩序を維持することを使命とする行政機関として、違反
行為が存在する場合にこれを排除して競争秩序を回復することに主眼を
置くのか、違法行為が既になくなっていようが、過去の違反事実を徹底的
に暴き出してこれに制裁を科す訴追機関としての役割を重視するのかと
いう根本的な問題をどう考えるかである。
米国の司法省は文字どおり訴追機関であり、競争秩序云々をもともと
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2016 年 8 月 31 日
競争法フォーラム意見
考える立場にはなく、違法と認定できる行為があれば、多額の制裁を科す
ことを目的に行動している。
EU も基本的には同様と考えられる。
そして、違反行為の排除を目的する範囲の事実認定と不利益処分であ
る課徴金を科す場合の事実認定とでは認定すべき事実が同じとはならな
い。
たとえば、いつから個々にどの行為が違反行為の実行行為の対象とな
ったかは、違反行為の存否を認定し、競争秩序を回復させるためには詳細
な事実認定をする必要まではないが、不利益処分である課徴金を課すた
めには、算定の基礎となる事実として詳細な事実認定が必要となる。
競争秩序の回復が必要であるという意味での事実認定には納得しても、
課徴金の対象となる事実認定について、納得できないような認定をする
と、事業者としては争わざるを得なくなる。
日本では損害賠償請求もなく、不当利得の剥奪が必要というのが課徴
金導入時の理由付けであった。
現状では、損害賠償も指名停止も存在し、これにより不当利得が剥奪さ
れている例が多くなっているにもかかわらず、課徴金率の引上げが行わ
れており、制裁色が強くなっていることが認められるが、それでも制裁そ
のものではない。現状では、課徴金制度は抑制力を持つという意味が重視
されるものと考えられるが、現状の課徴金制度と違反認定に伴う様々な
制裁を合わせ考えたとしても、現行の制度が抑止力として不十分である
とするなら、その根拠を明らかにすべきである。
他の法域とは市場規模も法体系、違法行為の構成要件、法的な位置づけ
も大きく異なっている中で、単純に罰金や制裁金の大きさを比較するこ
とには何の意味もないし、そのような単純な比較は有害でさえある。
(2)「(2)新制度と刑事罰との関係」について
(2)新制度と刑事罰との関係」について
法人に対し,同一の違反行為について,新制度による課徴金と刑事罰
(罰金)を併科することについて、これ以上課徴金の制裁色が強まれば必
要はない。
法人に対し,同一の違反行為について,新制度による課徴金と刑事罰
(罰金)を併科する制度とする場合,二重処罰等の憲法上の問題は生じる
かについては、これ以上制裁色が強まればあり得ると考える。
事業者の従業員等の自然人に対する刑事罰は必要かという点について
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2016 年 8 月 31 日
競争法フォーラム意見
は、抑止力という意味では極めて重要である
(3)「(3)新制度と民事損害賠償金等との関係」について
(3)新制度と民事損害賠償金等との関係」について
民事の損害賠償は、個々の事案によって大きく異なり、これとの関係を
考えに入れると、非常に複雑となる。
4 「4 調査妨害行為に対するペナルティー」について
調査妨害行為に対するペナルティー」について
調査妨害行為自体に対する課徴金制度の導入については、当然、調査妨害
行為の有無について正式な手続で争えることが前提となる。たとえば、個人
が独自に調査妨害行為を行なった場合に事業者に課徴金をかけることが出
来るのか等解決すべき問題もある。
検査妨害等の罪に証拠隠滅等の行為を追加することについては、きちんと
証拠隠滅の定義をし、構成要件が法定化されるのであれば、検討に値する。
検査妨害等の罪に対して積極的な告発を行う方針・指針等を策定・公表す
ることについて、指針を作ることには賛成である。
5 「5 新制度に見合った手続保障」について
(1)事前手続」について
(1)「(1)
事前手続」について
競争法フォーラムは、従前より、公取委による審査手続に関して整備さ
れるべき事前手続のうち主なものとして、以下の項目についての提言を
行ってきた1。
処分前手続の充実化・透明化の趣旨に則った聴聞手続の整備
競争法フォーラムは、審判制度の廃止を受け、「違反被疑事実の説
明(告知)後、調査対象事業者からの意見(反論)に対する公正取引委
員会としての見解(再反論)が示され、「処分前手続の充実化・透明
化」の趣旨に従って、聴聞手続が行われるようにすべきである。調査
対象事業者からの意見のための期日と公正取引委員会からの見解の
ための期日を、事案によっては、原則各 1 回のみ開催とすることで、
処分前手続を半年程度で終了させることも可能である。」ことを主張
してきた2。
論点整理において示されている「新制度において,どのような事前
手続を整備する必要があるのか。現行の意見聴取手続を変更する必要
はあるのか。」という点について、今回の課徴金制度の見直しにより、
公取委による事実認定とそれに基づく行政処分権限の行使のいずれ
1
2
競争法フォーラム「審判制度に関する意見」
(平成 22 年 1 月 28 日)
。
審判制度に関する意見 1 頁。
32
2016 年 8 月 31 日
競争法フォーラム意見
もが公正適正であることの必要性はより一層高まるのであり、そのた
めにも処分前手続の充実化と透明化が不可欠である。
なお、不利益処分に関する手続保障としての聴聞手続については、
後掲の「手続管理官の設置」に記載のとおり、手続の主宰者に関する
制度が適切に設置・運用されることも極めて重要である。
証拠の積極的な開示と閲覧・謄写
競争法フォーラムは、審判制度の廃止を受け、処分前の関係証拠の
開示・閲覧の範囲について「公正取引委員会が事実を認定するために
関連する証拠」とされるべきであること、その理由として「そもそも
公正取引委員会は、専門的知見を有する機関として、ある事実を認定
する際に、違反事実の存在を直接裏付ける証拠だけでなく、それを否
定する(かの如く見える)証拠についても、十分に参酌し、両者を総
合的に評価することによって事実認定を行う必要がある。そして、事
前手続における関係証拠の開示の範囲についても、それらのいわゆる
消極証拠、反対証拠まで含めて開示の対象とされることにより、初め
て、聴聞手続が充実し、またこれを踏まえて取消訴訟の審理がなされ
ることにより、初めて、裁判所における専門的知見の蓄積が図られう
る(ひいては、公正取引委員会としての専門的知見についても、更な
る向上が図られうる)。行政手続法における閲覧対象文書(同法 18 条)
についてさえ、「当該事案についてした調査の結果に係る調書その他
の当該不利益処分の原因となる事実を証する資料」との文言により、
立法の過程で「当事者等にとって有利となるような資料」も閲覧対象
に含まれる余地が残されたとの説明がなされている。複雑な市場にお
ける経済事象を取り扱う独占禁止法の分野においては特にこの点が
留意されなければならない。」ことを主張してきた3。
この点、論点整理において示されている「事前手続についても,国
内制度との整合性のほか,諸外国の制度との整合性にも留意すべきで
はないか(例えば,証拠への完全アクセスの必要性等)。」というポイ
ントは、課徴金制度の見直しの際に考慮されるべき事項についての指
摘として極めて正当である。
証拠への完全アクセスの必要性は、今回の課徴金制度の見直しによ
り、より一層高まるものとなる。具体的な方策について競争法フォー
ラムは既に、証拠開示の問題(改正法案第 52 条)について(1) 閲覧
謄写の対象範囲を「公正取引委員会の認定した事実を立証する証拠」
3
審判制度に関する意見 2 頁。
33
2016 年 8 月 31 日
競争法フォーラム意見
と規定している点について、「公正取引委員会が事実を認定するため
に関連する証拠」とされるべきであること、また(2) 特に謄写の対象
範囲を「当該証拠のうち、当該当事者若しくはその従業員が提出した
もの又は当該当事者若しくはその従業員の供述を録取したものとし
て公正取引委員会規則で定めるものの謄写に限る」としている点につ
いて、かかる限定は削除されるべきであることを、提言している4。
手続管理官5の設置
競争法フォーラムは、「事前手続を管理する手続管理官の機能とし
て、事前説明手続を監督し経過を公正取引委員会に報告するに留まら
ず、証拠開示の要否や範囲に関する事項等について、中立性・独立性
をもって自ら主体的に同手続を主宰するものとし、手続管理官の中立
性・独立性を保障する規定をおく必要がある。」ことを主張してきた
6。
今回の課徴金制度の見直しにより、この点の重要性がより一層高ま
ることについては、論を俟たない。
なお、不利益処分に関する手続保障に関して、行政手続法における
聴聞手続の主宰者は、不利益処分の原因となる事実に対する当事者等
の主張に理由があるかどうかについての当該主宰者の意見を記載し
た報告書を作成するものとされ、行政庁はこれを十分に参酌して処分
の決定を行うものとされている(同法 24 条、26 条)。これに対して
現行の独占禁止法における意見聴取の手続については、意見聴取官に
より作成される報告書にはその意見が記載されることはないとされ
る(同法 58 条参照)など、行政法分野において一般に議論される聴
聞手続のあり方とは相違する部分がある。課徴金制度の在り方が見直
される際の手続保障の充実化においては、かかる意見聴取官の権限・
職責といった事項を含め、現行制度の見直しを検討する余地がある。
(2)「(2)防御権」について
(2)防御権」について
競争法フォーラムは、従前より、公取委による審査手続に関して確保さ
れるべき防御権のうち主なものとして、以下の項目についての提言を行
ってきた7。
競争法フォーラム「審判制度に関する意見(独占禁止法改正法案について)
」(平成 22 年
5 月 10 日)1 頁。
5
処分前手続の在り方が議論されていた際の仮称。現在の意見聴取官。
6
審判制度に関する意見 2 頁。
7 競争法フォーラム「
『独占禁止法審査手続に関する論点整理』に対する意見書」
(平成 26
4
34
2016 年 8 月 31 日
競争法フォーラム意見
またその際、事件関係人の防御権の確保と公取委による実態解明機能
の確保は、対立ないし矛盾するものではなく、防御権を確保することによ
り調査協力へのインセンティブが生じることや、実態解明に資する点に
も配慮が必要である。事件関係人の防御権確保について検討するに当た
っては、公取委による実態解明と事件関係人による防御が対立構造にあ
り、一方を重視することが他方を軽視することに直結するかのような誤
解を前提とすることのないよう、留意すべきである旨を指摘した8。
今回の課徴金制度の見直しにおいて、調査協力インセンティブの確保
が重要な課題とされていることを踏まえれば、同制度見直しと併せて防
御権の確保が実現されるべきことは、より一層明らかである。
弁護士・依頼者間秘匿特権
競争法フォーラムは、「(1)依頼者と代理人弁護士の間で懸念事項
について自由闊達な相談・交信がなされうるようにすることが、事業
者の自主努力によりコンプライアンスを確立し改善していくことに
とって極めて重要であること、
(2)懸念としてあげられているような
証拠の隠匿等は、本来その保護の対象とされ得るものではなく、それ
自体、検査妨害として、あるいは弁護士法上の懲戒制度により、制裁
処分の対象となり得ること、
(3)本来秘匿が保障されるべき文書を公
取委に提出せざるを得ないこととなることで事業者が負担する不利
益は、公取委の守秘義務の運用によって回避されうるものではないこ
と、
(4)この保障の不存在は、国際社会における日本の法制度の信頼
性を害し、特に国際カルテル事件に関して、公取委への情報提供(そ
れによる法執行)にも、重大な支障となり得ること、などを理由に、
秘匿特権の導入が喫緊の課題である」ことを主張してきた9。
論点整理において示されている「防御権の拡充を検討するに際して
は,新制度下における実態解明機能とのバランスを考慮する必要があ
るのではないか。その場合,どのような点に留意すべきか。」という
点については、既に「独占禁止法審査手続についての懇談会報告書」
(平成 26 年 12 月 24 日)において、「秘匿特権を全面的に否定する
ものではなく、十分検討に値する制度であることから、今後の検討課
題として、調査権限の強化の問題と並行して、本懇談会で示された懸
念や疑問点を解決できるよう、一層議論が深められることが望まれ
年 7 月 11 日付)(「審査手続論点整理意見」)、同「
『独占禁止法審査手続についての懇談会
報告書』についての意見」
(平成 27 年 3 月 24 日)
(
「懇談会報告書意見」
)。
8
審査手続論点整理意見 2 頁。
9 懇談会報告書意見 3 頁。
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2016 年 8 月 31 日
競争法フォーラム意見
る。」との見解が取りまとめられている。また、公取委が平成 27 年 12
月 25 日に公表した「独占禁止法審査手続に関する指針」においても
公表後 2 年を経過した後に、弁護士・依頼者間秘匿特権を含む事項に
ついて指針の見直しを行うとしている。まさに、今回の課徴金制度の
見直しによる調査権限の強化と併せて導入されることにより、かかる
バランスを考慮した制度が実現されることになる。
また、論点整理において併せて示されている「国内制度との整合性
のほか,諸外国の制度との整合性にも留意すべきではないか」という
点については、上記のとおり、まさにこの秘匿特権が確保されること
により、現在生じている不整合が解消されうることになるといえる。
なお、競争法フォーラムは、秘匿特権を行使する手続の整備につい
ても、既に提言を行っている10。すなわち、秘匿特権の対象となる文
書は、事実認定の証拠として用いることができず、また、留置物の還
付義務の対象に含まれるのみならず、そもそも、その提出を命じるこ
とが禁止されるものとする。また秘匿特権は、提出命令に対する異議
申立ての理由となり、当事会社が秘匿特権を主張した場合には、異議
申立てに対する判断がなされるまでの間、審査官は当該文書を封印し
内容を閲読してはならないものとする。そして、秘匿特権の行使を実
効化するため、立入検査への弁護士の立会権が認められるものとする。
供述聴取時の弁護士の立会い
競争法フォーラムは、「供述を録取するための手続が適正に行われ
ることを確保する観点から、供述聴取時の弁護士の立会いが認められ
るべきであり、その前提として、供述聴取開始時に供述人に対して弁
護士の選任権が告知されるべきである。また、仮に、被疑事業者の弁
護士が供述録取に立ち会うことについて被疑事業者と供述人との間
に利益相反等の支障がある場合には、供述人個人の弁護士の立会いが
認められるべきである」ことを主張してきた11。
論点整理において示されている「防御権の拡充を検討するに際して
は,新制度下における実態解明機能とのバランスを考慮する必要があ
るのではないか。その場合,どのような点に留意すべきか。」という
点については、まさにその調査協力の重要な一場面となる供述調書の
内容や供述聴取の在り方が、協力を行う違反被疑事業者の観点から、
代理人弁護士を通じて適切なものとして確認されうる状態にあるこ
10
11
競争法フォーラム「審査手続の在り方に関する提言書」
(平成 21 年 11 月 10 日)
。
懇談会報告書意見 5 頁。
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競争法フォーラム意見
とが、制度の円滑な運用のためにも不可欠であることが留意されるべ
きである。この点については、論点整理においても、「調査協力度合
いに応じた加減算を行う場合,①公正取引委員会又は審査官の審査方
針に迎合せざるを得なくなる,②調査協力の一環として事業者から幅
広い情報が公正取引委員会に提出され,公正取引委員会が当該情報に
基づき調査範囲を拡大することにより,最終的には違反行為者ではな
いとの判断がなされるような事業者までもが公正取引委員会の調査
に巻き込まれる事態が生じる等の弊害が考えられる」との指摘がなさ
れているとおりであり、かかる弊害が未然に適切に回避されるよう、
供述聴取時の弁護士の立会いが認められなければならない。
また、上記の弁護士・依頼者間秘匿特権が不適切な供述聴取により
侵害されることのないようにするためにも、この供述聴取時の弁護士
の立会いが確保されるべきこと、そしてその意味で、供述聴取時の弁
護士の立会いが確保されることも、弁護士・依頼者間秘匿特権と同様
に、実態解明機能とのバランスにおいて不可欠のものと言わざるを得
ないことが、留意されなければならない。
なお、論点整理において併せて示されている「国内制度との整合性
のほか,諸外国の制度との整合性にも留意すべきではないか」という
点については、この供述聴取時の弁護士の立会いが諸外国において広
く認められている制度であることは既に多く指摘されているところ
である。
供述聴取過程の検証可能性の確保(録音・録画等の記録化)
競争法フォーラムは、「供述聴取過程の検証可能性の確保、すなわ
ち、録音・録画等の記録化を通じた審尋・供述聴取の可視性、透明性
の向上、供述の任意性及び審査手続の適正の確保の観点から、供述聴
取過程の録音・録画は有用な手段であり、その積極的導入が検討され
て然るべきである。」ことを主張してきた12。
論点整理において示されている「防御権の拡充を検討するに際して
は,新制度下における実態解明機能とのバランスを考慮する必要があ
るのではないか。その場合,どのような点に留意すべきか。」という
点については、供述聴取時の弁護士の立会いについて指摘されること
と同様の点が妥当する。
なお、論点整理において併せて示されている「国内制度との整合性
のほか,諸外国の制度との整合性にも留意すべきではないか」という
12
懇談会報告書意見 6 頁。
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競争法フォーラム意見
点についても、特にそれ故に導入に消極的であるべき事情は見受けら
れない。
適切な主張反論のための情報の開示(供述調書作成時における供述人
への供述調書の写しの交付、及び供述聴取時における供述人による供
述内容のメモの録取)
競争法フォーラムは、公取委は、①供述調書または審尋調書を作成
したときは、供述人に対しその写しを遅滞なく交付すべきであり、ま
た②供述人が供述内容のメモを録取することを認めるべきであるこ
とを主張してきた13。
論点整理において示されている「防御権の拡充を検討するに際して
は,新制度下における実態解明機能とのバランスを考慮する必要があ
るのではないか。その場合,どのような点に留意すべきか。」という
点については、今回の課徴金制度の見直しにおいて重要なポイントと
されている調査協力インセンティブの確保に関連して、まさにその調
査協力の重要な一場面となる供述調書の内容や供述聴取の在り方が、
協力を行う違反被疑事業者の観点からも適切なものとして確認され
うる状態にあることが、制度の円滑な運用のためにも不可欠であるこ
とが留意されるべきである。すなわち、上記の供述聴取時の弁護士の
立会いと同様に、論点整理において、「調査協力度合いに応じた加減
算を行う場合,①公正取引委員会又は審査官の審査方針に迎合せざる
を得なくなる,②調査協力の一環として事業者から幅広い情報が公正
取引委員会に提出され,公正取引委員会が当該情報に基づき調査範囲
を拡大することにより,最終的には違反行為者ではないとの判断がな
されるような事業者までもが公正取引委員会の調査に巻き込まれる
事態が生じる等の弊害が考えられる」との指摘がなされていることに
ついて、かかる弊害が未然に適切に回避されるよう、これらの適切な
主張反論のための情報の開示が認められなければならない。
なお、論点整理において併せて示されている「国内制度との整合性
のほか,諸外国の制度との整合性にも留意すべきではないか」という
点については、これらを認める例も諸外国において見受けられている
ことは既に多く指摘されているところである。
6 「6 新制度全体の検証」
新制度全体の検証」について
(1)課徴金額の水準」
(1)「(1)課徴金額の水準
」について
13
懇談会報告書意見 7 頁。
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競争法フォーラム意見
現行の課徴金の抑止力などを検証せずに、課徴金額の水準を引き上げ
ることは、あり得ない。
(2)「(2)課徴金の透明性・機動的発動性」
(2)課徴金の透明性・機動的発動性」について
新制度において課徴金の算定・賦課の透明性・予見可能性は確保される
かという点について、そもそも透明性、予見可能性が確保されないような
制度にすべきではない。
また、新制度において課徴金の機動的発動性は確保されるかという点
について、課徴金の機動的発動性なるものを確保する必要があるとは考
えられない。当然妥当性が常に争点となり得、事業者にも公取委にも負担
が増える。
(3)「(3)全体検証」
(3)全体検証」について
制度全体の検証は、どのような仕組みとなるかが判らない限り,議論不
可能である。
以上
提出者:
競争法フォーラム(会長
中藤
力)
http://www.jclf.jp/
事務局:東京都港区愛宕1-3-4
矢吹法律事務所内
電話:03-5425-6761
ファックス:03-3437-3680
e-mail: [email protected]
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競争法フォーラム意見
別紙
裁量型課徴金制度研究会
No.
名前
所属法律事務所/会社
1
秋葉 健志
須藤綜合法律事務所
2
池田 毅
森・濱田松本法律事務所
3
伊従 寛
シティユーワ法律事務所
4
内田 拓志
日比谷総合法律事務所
5
宇都宮 秀樹
森・濱田松本法律事務所
6
江崎 滋恒
アンダーソン・毛利・友常法律事務所
7
大月 雅博
阿部・井窪・片山法律事務所
8
大軒 敬子
ホワイト&ケース法律事務所
9
川合 竜太
日比谷総合法律事務所
10
川浦 史雄
日比谷総合法律事務所
11
加賀美 有人
森・濱田松本法律事務所
12
木村 智彦
矢吹法律事務所
13
坂野 吉弘
シティユーワ法律事務所
14
佐川 聡洋
日比谷総合法律事務所
15
塩田 薫範
田辺総合法律事務所
16
高橋 善樹
太樹法律事務所
17
多田 敏明
日比谷総合法律事務所
18
谷本 誠司
日比谷総合法律事務所
19
大東 泰雄
のぞみ総合法律事務所
20
辻川 昌徳
潮見坂綜合法律事務所
21
中藤 力
日比谷総合法律事務所
22
中野 清登
西村あさひ法律事務所
23
花田 さおり
渥美坂井法律事務所
24
藤井 健一
日比谷総合法律事務所
25
向
桃尾松尾難波法律事務所
26
矢吹 公敏
矢吹法律事務所
27
山島 達夫
渥美坂井法律事務所
28
山田 篤
アンダーソン・毛利・友常法律事務所
29
山田 香織
フレッシュフィールズブルックハウスデリンガー
30
渡邉 和之
西綜合法律事務所
31
渡邉 新矢
ジョーンズ・デイ法律事務所
宣明
40
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