...

1. はじめに 2. 分析のフレームワーク

by user

on
Category: Documents
0

views

Report

Comments

Transcript

1. はじめに 2. 分析のフレームワーク
6.論
2011-July No.10
文
滋賀大学 経済学部 准教授
得田 雅章
1. はじめに
本論の目的は、2008 年 6 月 4 日~2010 年 3 月 24 日に開催された「井伊直弼と開国 150 年祭」(以下、「150 年祭」
と称す)に関する観光消費額および経済波及効果を、2008 年~2010 年の各年(暦年)に実施された彦根市観光に関
する経済効果測定調査 1 (以下、その調査を「○○年観光調査」と称す)」から得られた指標をもとに、算出するもの
である。
観光調査は、2007 年に実施された「彦根城築城 400 年祭 経済効果測定調査」から毎年実施されているものであり、
最新の調査結果は 2010 年のものである。すでに彦根市ホームページ上では報告書が公開されているように、暦年
の調査結果を、波及推計まで行ったうえでその翌年の 3 月に公表する調査報告書は、速報性において全国的に希
尐なものといえる。また、行政サイドにとっては交通・観光関連施設整備等の観光都市整備のための 1 次資料として、
民間事業者にとっては需要予測を行うための有益な資料となることが期待される報告書といえる。
150 年祭は彦根市主導による大型記念行事で、2007 年に開催された「国宝・彦根城築城 400 年祭」に続くものであ
る2。開催期間が年をまたぐうえ、年途中の開始・終了であった。このため、本論では 2008~2010 年の各年観光調査
報告書に基づく経済効果を、開催中期間に応じて加重的に積算することで 150 年祭期間全体の経済効果とする。
分析に入る前に、各年の彦根における観光環境を概観しておこう。2008 年は 400 年祭終了直後の年にあたる。ま
た、数年続いた資源インフレによる物価高がピークに達した年であり、秋以降にはリーマンショック(9 月)や米国サブ
プライム問題の影響による景気後退が徐々に顕在化してきた。2009 年はリーマンショックに続く「100 年に一度の危
機(デフレ再燃)」、「新型インフルエンザ騒動(5 月~)」、「鳥人間コンテスト中止(7 月)」といった極めてネガティブな
経済環境と、それに対処するべく実施された定額給付金や高速道路料金割引(3 月~)といった経済政策の中で展
開された。2010 年は急激な景気の落ち込みから脱しつつあるものの、依然厳しい状況でデフレ傾向は続き、個人消
費動向も明白な回復基調にあるとは言い難かった。一方で高速道路料金割引は継続されていた。以上から、150 年
祭はその開催期間とマクロ経済の景気後退時期がかなりシンクロしていた時期と言える。
次節では 10 年報告書をもとに分析のフレームワークを提示する。3 節で具体的なパラメータに基づき各年の経済効
果を算出し、積算する。4 節はまとめとする。
2. 分析のフレームワーク
各年の経済効果算出には、それぞれの年に用いた乗数理論に基づく観光消費調査推計システムを利用する。各
年の経済波及効果全体像イメージおよび利用する指標の出典を図表 1 に示す。観光客が彦根市で消費した額(観
光消費額)がまず直接的な経済効果となる。ここから事業者の域内調達率を乗ずると市内に残る観光消費額が算出
される。さらにその額が事業者による原材料波及ルート、消費者による所得波及ルート、さらに原材料波及ルートか
ら派生した所得波及ルートを通じて間接的な経済効果が形成される。そうした直接・間接効果の合計が経済波及総
1
最新年の詳細な調査結果については山﨑・得田(2011)を、それ以前の調査についてはそれぞれ山﨑・得田(2008)、山﨑・得田(2009)、山﨑・得
田(2010)を参照のこと。
2
直接の運営は 150 年祭が「井伊直弼と開国 150 年祭実行委員会」であり、400 年祭が「国宝・彦根城築城 400 年祭実行委員会」である。
66
6.論
2011-July No.10
文
額となる。さらに計算過程で算出される人件費総額を一人あたり年収で除することにより、経済効果により何人の雇
用が確保できるかという雇用効果も計算できる。
次節では各年毎の具体的な波及過程を算出する。4 節はそれらを合算しまとめとする。
【 図表 1 各年の経済波及効果全体像イメージ 】
指標
観光消費総額
収支構造
域内調達率
限界消費性向
市内消費率
出典、データソース等
観光客アンケートならびに彦根市観光
入込統計等による推計値
事業所アンケート、事業所・企業統計
調査(滋賀県)、彦根商工会議所なら
びに彦根観光協会担当者からのヒア
リングを参考として設定した。
事業所アンケート、2001年事業所・企
業統計調査(総務省統計局)、2005年
年滋賀県産業連関表からの歩留まり
率計算、2005年国勢調査、彦根商工
会議所ならびに彦根観光協会担当者
からのヒアリングを参考として設定し
た。
国土交通省資料および「FirstStepマク
ロ経済学(賀川昭夫等著)」の数値
(0.86)、滋賀県経済指標(県商工観光
労働部商工政策課)を参考として設定
した。
彦根市人口(11万人)に対応する三大
都市圏目安(75%)とその他地方圏目
安(100%)および、2001年TMO診断評
価調査研究事業現地実態調査「消費
者意識等調査(Ⅰ)」~彦根商工会議
所~H13中小企業総合事業団のデー
タを参考として設定した。
2004年度版 個人所得指標(日本マー
給与地域補正値 ケティング教育センター)より設定し
た。
彦根市内人口
広報ひこねより。
3. 各年の彦根市観光消費額および経済波及効果
■ 2008 年 6 月~12 月の彦根市観光消費額および経済波及効果
彦根市観光関連の観光消費額は、
観光消費額 = 宿泊客観光消費額 + 日帰り客観光消費額
と定義する。ここで、
宿泊客観光消費額
=
日帰り客観光消費額 =
宿泊客一人あたり観光消費額
×
宿泊観光客数(実人数)
日帰り客一人あたり観光消費額
×
日帰り観光客数(実人数)
である。
宿泊観光客数(実人数)は、2008 年報告書の結果から、ほぼ 1 泊であることがわかっているので、滋賀県観光入込
統計の宿泊客数をそのまま用いた。日帰り観光客数(実人数)については、日帰り観光客数(延べ人数)を 1 人当た
り訪問地点数(2.07)で除すことで求めた。2008 年報告書掲載の観光客実人数を推計するモデルから、2008 年 6 月
~12 月までの彦根市への観光客数(実人数)を 118 万人と推計した。宿泊比率は同年報告書に従い 11.7%とした。結
果、宿泊客の観光実人数は 14 万人でその観光消費額が 4,090 百万円、日帰り客実人数は 104 万人でその観光消
費額が 6,965 百万円と推計された。したがって観光客全体の観光消費額は 110 億円と推計される。以下では、この観
光産業にもたらされた金額が、そのように彦根市経済(全産業)に波及していったのかをみていく。
67
6.論
2011-July No.10
文
□ 観光消費がもたらす効果
【原材料等波及効果】
観光消費額(110 億円)が各企業の原材料調達に及ぼした金額を示す。観光消費額から、売上原価・営業経費(この
2 つを原材料等とする)相当分を抽出し、これに彦根市内調達率をかけたものが原材料等直接効果(第 1 次波及効
果)(2,811 百万円)となる3。更に、この 2,811 百万円分の資材を提供した事業所にも、原材料等率および彦根市内調
達率をかけた 1,164 百万円の(第 2 次)原材料調達が発生する。このように、はじめの観光消費額が連続した原材
料調達へとつながっていったものが原材料等波及効果となる。原材料等波及効果は、第 2 次、第 3 次、・・・、第 n 次
とつながり、それら全ての波及効果を総計したものが原材料等波及の全部効果であり、合計 4,799 百万円となった。
【所得波及効果】
(所得増加分から生じる所得波及効果)
観光消費額から原材料等をひいたもの(所得増加分)が、観光消費によって観光関連 5 業種において生じた付加
価値となる。これに彦根市内調達率をかけたものが彦根市の観光消費による第 1 次所得(付加価値)であり、4,923
百万円と算出された。この所得も何割かは新たな消費へと充てられていくため、第 1 次に留まるのではなく、第 2 次、
第 3 次へと波及する。消費は、新たな事業者の所得を発生させ、また新たな消費へとつながっていく。なお、新たな
消費は以下のケインズ型消費関数に基づき導出した。こうして消費→所得→所得増加による消費の増加→増加し
た消費による所得増加→・・・といった連鎖を辿っていくことで、第 2 次、第 3 次といった所得・消費波及が算出できる。
観光消費額によって生じた所得の全部効果は 6,112 百万円であり、観光消費額によって生じた消費の全部効果は
4,492 百万円であった。
(原材料等波及効果から生じる所得波及効果)
所得波及は第 2 次、第 3 次といった各段階の原材料等波及効果からも発生する。というのは、原材料等波及効果
の各段階において、原材料等費と同時に、所得増加分も発生するからである。所得増加分から生じる所得波及効果
と同様、原材料等波及の各段階で生じた所得に付加価値率および彦根市内調達率をかけて所得効果を算出し、そ
の所得に限界消費性向および市内消費率をかけて消費効果を算出する。これらの波及の総計が、全段階の原材料
等波及効果による所得の全部効果(1,576 百万円)であり、全段階の原材料等波及効果による消費の全部効果
(1,159 百万円)である。所得増加分から生じる波及効果(所得・消費)と原材料等波及効果から生じる波及効果(所
得・消費)を合算させた結果、所得の全部効果が 7,688 百万円、消費の全部効果が 5,651 百万円となった。
【雇用効果】
雇用の直接効果は、観光消費によって生じる人件費相当額(4,060 百万円)から、以下の式により雇用可能な人数
を算出し、雇用吸収力として示している。
雇用者数
= 人件費相当額 ÷ 平均所得 ÷ 地域補正
(1)
(1)式より、雇用の直接効果を 916 人と推計できた。さらに、波及効果による雇用者数は、
人件費相当額 = 所得の全部効果 × 所得に占める人件費割合
(2)
という式により人件費相当額を算出した後、前出と同様に算出した結果、354 人となった。これらの効果を総合すると、
観光客の消費総額 110 億円のうち、直接効果として彦根市内に留まる額は 6,870 百万円と推計される(原材料等直
接効果+人件費相当額)。また、観光産業における雇用者数は、916 人、生じた付加価値は 4,923 百万円と推計され
る。さらに、この直接効果をもととして、彦根市内にもたらされる生産波及効果の総額は、10,449 万円と推計される
(原材料等波及の全部効果+消費の全部効果)。また、これによる雇用効果は、354 人と推計される。
3
実際はこの原材料波及効果、次の所得波及効果ともに、観光 5 業種(飲食業、宿泊業、交通・運輸業・土産販売業、観光施設業)に分けて計算
している(2009 年、2010 年も同様)。
68
6.論
2011-July No.10
文
以上より、観光客の消費によって彦根市内にもたらされた経済波及効果の総額は 21,505 百万円となり、その乗数
効果は 1.945 となる。また、それによって生じた雇用者数は 1,270 人と推計される(図表 2)。
【 図表 2 2008 年 6 月~12 月 波及効果推計のための各種入力指数(左)および経済波及効果イメージ(右) 】
□観光消費総額
観光消費の総額
飲食費
宿泊費
交通費
土産品購入
現地ツアー、入場料等
総額
(千円)
2,596,444
1,669,024
2,816,591
2,748,975
1,224,403
11,055,437
□収支構造(対売上高比率)
売上原価率 営業経費率 人件費率 その他率 営業利益率
飲食業
28%
30%
35%
4%
4%
宿泊業
23%
27%
26%
12%
12%
交通・運輸業
6%
13%
70%
9%
1%
土産販売業
50%
12%
22%
6%
10%
観光施設業
29%
34%
28%
6%
3%
全産業
55%
14%
23%
4%
4%
□域内調達率(支払先の域内率)
売上原価
営業経費
飲食業
60%
71%
宿泊業
60%
61%
交通・運輸業
56%
70%
土産販売業
19%
61%
観光施設業
56%
73%
全産業
57%
72%
□その他
限界消費性向
市内消費率
給与地域補正値
調査対象期間
域内人口
人件費
99%
77%
99%
90%
99%
99%
本社比率
47%
65%
47%
73%
47%
47%
0.84
88%
99%
6ヶ月
111,787人
観光客実人数
1,184,160人
宿泊者実人数
138,401人
日帰り客実人数
1,045,759人
宿泊者の消費単価
29,554円
日帰り客の消費単価
6,660円
■ 2009 年 1 月~12 月の彦根市観光消費額および経済波及効果
宿泊観光客数(実人数)は、2009 年報告書の結果より、ほぼ 1 泊であることから、滋賀県観光入込統計の宿泊客数
をそのまま用いた。日帰り観光客数(実人数)については、日帰り観光客数(延べ人数)を 1 人あたり訪問地点数
(1.55)で除すことで求めた。 結果、宿泊客の実人数が 17 万人でその観光消費額が 3,541 百万円、日帰り客の実人
数が 193 万人でその観光消費額が 7,218 百万円と推計された。したがって観光客全体の観光消費額は 108 億円と
推計される。以下では、この観光産業にもたらされた金額が、そのように彦根市経済(全産業)に波及していったの
かをみていく。
□ 観光消費がもたらす効果
【原材料等波及効果】
観光消費額(108 億円)が各企業の原材料調達に及ぼした金額を示す。観光消費額から、売上原価・営業経費(この
2 つを原材料等とする)相当分を抽出し、これに彦根市内調達率をかけたものが原材料等直接効果(第 1 次波及効
果)(2,918 百万円)となる。更に、この 2,918 百万円分の資材を提供した事業所にも、原材料等率および彦根市内調
達率をかけた 1,209 百万円の(第 2 次)原材料調達が発生する。このように、はじめの観光消費額が連続した原材
料調達へとつながっていったものが原材料等波及効果となる。原材料等波及効果は、第 2 次、第 3 次、・・・、第 n 次
とつながり、それら全ての波及効果を総計したものが原材料等波及の全部効果であり、合計 4,982 百万円となった。
69
6.論
2011-July No.10
文
【所得波及効果】
(所得増加分から生じる所得波及効果)
観光消費額から原材料等をひいたもの(所得増加分)が、観光消費によって観光関連 5 業種において生じた付加
価値となる。これに彦根市内調達率をかけたものが彦根市の観光消費による第 1 次所得(付加価値)であり、4,532
百万円と算出された。この所得も何割かは新たな消費へと充てられていくため、第 1 次に留まるのではなく、第 2 次、
第 3 次へと波及する。消費は、新たな事業者の所得を発生させ、また新たな消費へとつながっていく。なお、新たな
消費は以下のケインズ型消費関数に基づき導出した。こうして消費→所得→所得増加による消費の増加→増加し
た消費による所得増加→・・・といった連鎖を辿っていくことで、第 2 次、第 3 次といった所得・消費波及が算出できる。
観光消費額によって生じた所得の全部効果は 5,627 百万円であり、観光消費額によって生じた消費の全部効果は
4,136 百万円であった。
(原材料等波及効果から生じる所得波及効果)
所得波及は第 2 次、第 3 次といった各段階の原材料等波及効果からも発生する。というのは、原材料等波及効果
の各段階において、原材料等費と同時に、所得増加分も発生するからである。所得増加分から生じる所得波及効果
と同様、原材料等波及の各段階で生じた所得に付加価値率および彦根市内調達率をかけて所得効果を算出し、そ
の所得に限界消費性向および市内消費率をかけて消費効果を算出する。これらの波及の総計が、全段階の原材料
等波及効果による所得の全部効果(1,637 百万円)であり、全段階の原材料等波及効果による消費の全部効果
(1,203 百万円)である。所得増加分から生じる波及効果(所得・消費)と原材料等波及効果から生じる波及効果(所
得・消費)を合算させた結果、所得の全部効果が 7,264 百万円、消費の全部効果が 5,339 百万円となった。
【雇用効果】
雇用の直接効果は、観光消費によって生じる人件費相当額(3,912 百万円)から、以下の式により雇用可能な人数
を算出し、雇用吸収力として示している。(1)式より、雇用の直接効果を 883 人と推計できた。さらに、波及効果による
雇用者数は、(2)式により人件費相当額を算出した後、前出と同様に算出した結果、317 人となった。
これらの効果を総合すると、観光客の消費総額 108 億円のうち、直接効果として彦根市内に留まる額は 6,830 百万
円と推計される(原材料等直接効果+人件費相当額)。また、観光産業における雇用者数は、883 人、生じた付加価
値は 4,532 百万円と推計される。さらに、この直接効果をもととして、彦根市内にもたらされる生産波及効果の総額は、
10,321 百万円と推計される(原材料等波及の全部効果+消費の全部効果)。また、これによる雇用効果は 317 人と
推計される。以上より、観光客の消費によって彦根市内にもたらされた経済波及効果の総額は 21,080 百万円となり、
その乗数効果は 1.959 となる。また、それによって生じた雇用者数は 1,200 人と推計される(図表 3)。
■ 2010 年 1 月~3 月の彦根市観光消費額および経済波及効果
宿泊観光客数(実人数)は、2010 年報告書より、ほぼ 1 泊であることから、滋賀県観光入込統計の宿泊客数をその
まま用いた。日帰り観光客数(実人数)については、日帰り観光客数(延べ人数)を 1 人あたり訪問地点数(1.70)で除
すことで求めた。結果、宿泊客の実人数が 4 万人でその観光消費額が 808 百万円、日帰り客の実人数が 28 万人で
その観光消費額が 1,129 百万円と推計された。したがって観光消費額は 19 億円と推計される。以下では、この観光
産業にもたらされた金額が、そのように彦根市経済(全産業)に波及していったのかをみていく。
□ 観光消費がもたらす効果
【原材料等波及効果】
観光消費額(19 億円)が各企業の原材料調達に及ぼした金額を示す。観光消費額から、売上原価・営業経費(この
2 つを原材料等とする)相当分を抽出し、これに彦根市内調達率をかけたものが原材料等直接効果(第 1 次波及効
70
6.論
2011-July No.10
文
果)(534 百万円)となる。更に、この 534 百万円分の資材を提供した事業所にも、原材料等率および彦根市内調達
率をかけた 186 百万円の(第 2 次)原材料調達が発生する。このように、はじめの観光消費額が連続した原材料調達
へとつながっていったものが原材料等波及効果となる。原材料等波及効果は、第 2 次、第 3 次、・・・、第 n 次とつな
がり、それら全ての波及効果を総計したものが原材料等波及の全部効果であり、合計 820 百万円となった。
【 図表 3 2009 年 1 月~12 月 波及効果推計のための各種入力指標(左)および経済波及効果イメージ(右) 】
□観光消費総額
観光消費の総額
飲食費
宿泊費
交通費
土産品購入
現地ツアー、入場料等
総額
(千円)
2,695,728
1,401,018
2,588,988
2,735,258
1,338,444
10,759,435
□収支構造(対売上高比率)
売上原価率 営業経費率 人件費率 その他率 営業利益率
飲食業
28%
30%
35%
4%
4%
宿泊業
23%
33%
26%
12%
6%
交通・運輸業
6%
13%
70%
9%
1%
土産販売業
50%
17%
22%
6%
5%
観光施設業
29%
34%
28%
6%
3%
全産業
55%
14%
23%
4%
4%
□域内調達率(支払先の域内率)
売上原価
営業経費
飲食業
60%
71%
宿泊業
60%
61%
交通・運輸業
56%
70%
土産販売業
19%
61%
観光施設業
56%
73%
全産業
57%
72%
□その他
限界消費性向
市内消費率
給与地域補正値
調査対象期間
域内人口
人件費
99%
77%
99%
90%
99%
99%
本社比率
47%
48%
47%
73%
47%
47%
0.84
88%
99%
12ヶ月
111,728人
観光客実人数
2,101,713人
宿泊者実人数
172,100人
日帰り客実人数
1,929,613人
宿泊者の消費単価
20,576円
日帰り客の消費単価
3,741円
【所得波及効果】
(所得増加分から生じる所得波及効果)
観光消費額から原材料等をひいたもの(所得増加分)が、観光消費によって観光関連 5 業種において生じた付加
価値となる。これに彦根市内調達率をかけたものが彦根市の観光消費による第 1 次所得(付加価値)であり、798 百
万円と算出された。この所得も何割かは新たな消費へと充てられていくため、第 1 次に留まるのではなく、第 2 次、
第 3 次へと波及する。消費は、新たな事業者の所得を発生させ、また新たな消費へとつながっていく。なお、新たな
消費は以下のケインズ型消費関数に基づき導出した。こうして消費→所得→所得増加による消費の増加→増加し
た消費による所得増加→・・・といった連鎖を辿っていくことで、第 2 次、第 3 次といった所得・消費波及が算出できる。
観光消費額によって生じた所得の全部効果は 993 百万円であり、観光消費額によって生じた消費の全部効果は 730
百万円であった。
71
6.論
2011-July No.10
文
(原材料等波及効果から生じる所得波及効果)
所得波及は第 2 次、第 3 次といった各段階の原材料等波及効果からも発生する。というのは、原材料等波及効果
の各段階において、原材料等費と同時に、所得増加分も発生するからである。所得増加分から生じる所得波及効果
と同様、原材料等波及の各段階で生じた所得に付加価値率および彦根市内調達率をかけて所得効果を算出し、そ
の所得に限界消費性向および市内消費率をかけて消費効果を算出する。これらの波及の総計が、全段階の原材料
等波及効果による所得の全部効果(274 百万円)であり、全段階の原材料等波及効果による消費の全部効果(201
百万円)である。所得増加分から生じる波及効果(所得・消費)と原材料等波及効果から生じる波及効果(所得・消
費)を合算させた結果、所得の全部効果が 1,267 百万円、消費の全部効果が 931 百万円となった。
【雇用効果】
雇用の直接効果は、観光消費によって生じる人件費相当額(682 百万円)から、以下の式により雇用可能な人数を
算出し、雇用吸収力として示している。(1)式より、雇用の直接効果を 154 人と推計できた。さらに、波及効果による
雇用者数は、(2)式により人件費相当額を算出した後、前出と同様に算出した結果、28 人となった。
これらの効果を総合すると、観光客の消費総額 120 億円のうち、直接効果として彦根市内に留まる額は 1,215 百万
円と推計される(原材料等直接効果+人件費相当額)。また、観光産業における雇用者数は、154 人、生じた付加価
値は 798 百万円と推計される。さらに、この直接効果をもととして、彦根市内にもたらされる生産波及効果の総額は、
1751 百万円と推計される(原材料等波及の全部効果+消費の全部効果)。また、これによる雇用効果は 28 人と推計
される。以上より、観光客の消費によって彦根市内にもたらされた経済波及効果の総額は 3,688 百万円となり、その
乗数効果は 1.90 となる。また、それによって生じた雇用者数は 182 人と推計される(図表 4)。
【 図表 4 2010 年 1 月~3 月 波及効果推計のための各種入力指標(左)および経済波及効果イメージ(右) 】
□観光消費総額
観光消費の総額
飲食費
宿泊費
交通費
土産品購入
現地ツアー、入場料等
総額
(千円)
487,740
383,654
428,407
458,642
178,848
1,937,290
□収支構造(対売上高比率)
売上原価率 営業経費率 人件費率 その他率 営業利益率
飲食業
28%
30%
35%
4%
4%
宿泊業
23%
33%
26%
12%
6%
交通・運輸業
6%
13%
70%
9%
1%
土産販売業
50%
17%
22%
6%
5%
観光施設業
29%
34%
28%
6%
3%
全産業
50%
16%
21%
5%
5%
□域内調達率(支払先の域内率)
売上原価
営業経費
飲食業
60%
71%
宿泊業
60%
61%
交通・運輸業
56%
70%
土産販売業
19%
61%
観光施設業
56%
73%
全産業
48%
68%
□その他
限界消費性向
市内消費率
給与地域補正値
調査対象期間
域内人口
0.84
88%
99%
3ヶ月
111,856人
観光客実人数
宿泊者実人数
日帰り客実人数
宿泊者の消費単価
日帰り客の消費単価
319,459人
41,400人
278,059人
19,517円
4,061円
人件費
99%
77%
99%
90%
99%
94%
本社比率
47%
48%
47%
73%
47%
47%
72
6.論
2011-July No.10
文
4. おわりに
前節では 150 年祭の各年の観光消費額ならびに経済波及効果を算出してきた。それらの結果をまとめたのが図表
5 である。一見すると分かるように、2008 年は半年程度しか算入していないにも関わらず、まるまる 1 年算入した
2009 年よりも大きな効果を示している。150 年祭のスタートアップが好調であった点もあろうが、やはりマクロ経済的
なインパクトが大きかったと考えられる。
次に 400 年祭との比較を行おう。各祭り全体としてみた場合、開催期間が長かった 150 年祭の効果が大きく、経済
波及総額で約 124 億円上回る。ただし、彦根市内調達率が近年低下していることから、雇用者効果では 220 人ほど
小さいものとなっている。ただし、以上の比較は各祭りの期間が大きく異なっているため、例えば 12 か月ベースで比
較した場合には、150 年祭は 400 年祭のほぼ半分程度の効果しかなかったともいえる。また、そもそも開催期間のマ
クロ経済環境があまりにも異なるため、本論のような単純な比較をすることはいささか乱暴といえるかもしれない。
このような留意せねばならない点は多々あるとしても、一つの試算として祭りの経済的な成果を定量化することは
なお意義があろう。なお、150 年祭に関わる税収面での効果や開催コストを含めたより総合的な経済効果分析につ
いては今後の課題としたい。
【 図表 5 各年の観光消費額ならびに経済波及効果 】
観光消費額(百万円)
波及額(百万円)
経済波及総額(百万円)
雇用者効果(人)
11,055
10,759
1,937
10,450
10,321
1,751
21,505
21,080
3,688
1,270
1,200
182
150 年祭全体
23,751
22,522
46,273
2,652
(参考)400 年祭
(2007 年 3 月~11 月)
17,400
16,428
33,828
2,872
2008 年 6 月~12 月
2009 年 1 月~12 月
2010 年 1 月~3 月
≪参考資料≫
◆ 賀川昭夫・片岡孝夫・坪沼秀昌、『First Step マクロ経済学』、有斐閣、1994 年
◆ 山崎一眞・得田雅章、『H22 年 彦根市観光に関する経済効果測定調査 報告書』、彦根市、2011 年
――――・――――、『H21 年 彦根市観光に関する経済効果測定調査 報告書』、彦根市、2010 年
――――・――――、『H20 年 彦根市観光に関する経済効果測定調査 報告書』、彦根市、2009 年
◆ 『エコメイト年末景気セミナー配付資料』、東洋経済新報社、各年
◆ 『経済活動別市町村内総生産』、「滋賀県市町民経済計算」、滋賀県、各年
◆ 『事業所・企業統計調査』、総務省統計局および滋賀県、各年
◆ 『滋賀県観光入込客統計調査書』、滋賀県、各年
◆ 『滋賀県経済指標』、滋賀県、各号
◆ 『滋賀県産業連関表(平成 17 年)』、滋賀県、2010 年
◆ 『広報ひこね』、彦根市、各号
◆ 『滋賀県観光動態調査報告書(平成 17 年)』、滋賀県、2005 年
◆ 『国勢調査(平成 17 年)』、総務省、2006 年
73
Fly UP