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ベトナム Bien Hoaにおける初産婦の 母乳中ダイオキシンレベル

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ベトナム Bien Hoaにおける初産婦の 母乳中ダイオキシンレベル
ベトナム Bien Hoaにおける初産婦の
母乳中ダイオキシンレベル、
ステロイドホルモンレベル、
乳児身体計測値との
関連について
金沢大学大学院医学系研究科
保健学専攻 看護科学領域健康発達看護学講座
地域・環境保健看護学分野 博士前期課程
小池 郁美
【ダイオキシン類】
• 通常は無色固体、脂溶性の性質をもつ。
• 農薬などの塩素を含む化学物質の製造の際に副産物として生
産され、田畑へ散布され環境を汚染する。
• 土壌や水中へ長期間残留し、微量でも環境や人体に強い影響
をもたらす可能性が大きい。
2,3,7,8-TCDD
【ダイオキシン類が生体に及ぼす影響】
• 妊娠中のマウスに高用量2,3,7,8‐TCDDを連続投与すると、口蓋
裂、水腎症の先天異常が出現する
(Couture et al., 1990)
• TCDD曝露は、唾液中のテストステロン値の減少、エストラジ
オール、プロゲステロン値の減少を引き起こす。
(Weisglas et al., 2000, Moran et al.,2003, Barsotti et al,1979 )
• 動物実験において、妊娠中および授乳中の2,3,7,8‐TCDDの曝
露による仔への生殖毒性、甲状腺機能、免疫機能への影響が
認められている。
(Faqi et al., 1998;Mably et al., 1992,Nishimura et al.,2005,Narasimhan et al.,1994;Gehrs et al.,1997)
【ダイオキシンと母乳、乳児との先行研究より】
• ヒトにおいて、ダイオキシン類は母乳中に高率に排出され、女
性においては最も効率的な排出経路。
(Landrigan et al., 2002,Abraham et al.,1996)
• 母乳中ダイオキシンレベルは初産婦と経産婦で比較すると、
初産婦の方が有意にダイオキシンレベルが高い
(Uehara R et al.,2005)
• 母親の母乳中ダイオキシンレベルが、新生児の大きさに負の
相関を示した
(Tawara et al.,2003)
【ベトナム戦争と枯葉剤】
・Da Nang
・Phu Cat
・Bien Hoa
【ベトナム枯葉剤の汚染レベルに関する先行研究より】
• Hot Spotの土壌の沈殿物のダイオキシン濃度は西欧諸国と
比較し、高濃度であった。
(Schecter et al., 2006)
• ベトナムにおいて、枯葉剤非散布地区よりも、散布地区の方
(Nhu et al.,2009,Saito et al.,2010)
が高い。
ベトナム戦争中の枯葉剤散布作戦による健康影響を
調査する研究はいくつかみられるが、ほとんどがアメリカ
人帰還兵等を対象にしたものであり、枯葉剤散布後も
その土地に住み続けている人を対象にした調査は少な
い。
【枯葉剤とステロイドホルモンとの先行研究より】
• ベトナム Phu Cat 8名、非散布地区8名の初産婦を対象にし
た調査で、散布地区のステロイドホルモン値が有意に高かっ
た。
ダイオキシンとコルチゾールとの相関はベル型、エストラジ
オールとの相関はU字型相関がみられた。 (Nhu et al.,2011)
ダイオキシン類とステロイドホルモンの関連について、毒
性等量のみの報告であり、ダイオキシン異性体がどのス
テロイドホルモンに作用するかが明らかでない。また、対
象者が8名と少なく、分析に必要な対象者を確保する
必要がある。
研究目的
調査地区としてベトナムにおけるダイオキシン汚染のあった
Hot Spotの1つであるBien Hoaを初めて選定し、17種類の母
乳中ダイオキシン異性体レベルとステロイドホルモン値、そ
の母親の母乳で育児されている子どもの身体計測値、母親
のステロイドホルモン値と乳児身体計測値との3つの関連性
について、分析に必要な初産婦の対象数を増やして明らか
にすることを目的とした。
研究方法
研究方法
対象地区
ベトナム戦争中に高濃度汚染の
あったBien Hoaを対象地区とした。
調査期間
2010年8月
調査対象者 2010年8月時点で授乳中の
初産婦55名、その第1子を
対象とした。
研究方法
母乳採取
授乳中の母親本人、現地女性スタッフ、調査員の
いずれかが母乳を手で20ml搾乳した。
採取後は-70度で冷凍保存し、日本に移送した。
唾液採取
母親の唾液を母親本人が2ml採取し,
‐70℃で冷凍保存 し日本に移送した。
血液採取
母親に対し調査員が5ml採血を行い、その場で
血清分離した後、冷凍保存し日本に移送した。
身体計測
対象となった母親の母乳を哺乳している児に対し、調
査員が身長、体重、頭囲、胸囲を計測した。
研究方法
質問紙調査
た。
調査員が対象者に対し聞き取り、記録し
(年齢、居住年数、世帯収入、児の性別・月齢等)
サンプル測定方法
・母乳中ダイオキシンレベル:質量分析法
・ステロイドホルモンレベル:液体クロマトグラフィー
-タンデム質量分析法
母乳中ダイオキシン類の分析方法
母乳脂質
内 部 標 準 液 1 3 C ラ ベ ル 化 D io x in 類 2 0 µ l添 加
脂質抽出
抽出
ア ル カ リ 分 解 ・ヘ キ サ ン 抽 出
母 乳 約 10g
KO H35m l
N‐ヘ キ サ ン 30m l
振 と う ・抽 出 を 3回
シ ュ ウ 酸 カ リ ウ ム 0 .2 5 g
エ タ ノ ー ル 25m l
精製
多 層 シ リカゲ ル カラム クロ マ トグ ラフィ
ジ エ チ ル エ ー テ ル 50m l
石 油 エ ー テ ル 50m l
N ‐ ヘ キ サ ン 抽 出 溶 液 1 0 m l添 加
N ‐ ヘ キ サ ン 3 0 0 m lを 2 .5 m l/m in で 流 下
振 と う ・抽 出
活 性 炭 分 散 シ リカゲ ル カラム クロマ トグ ラフィ
分画
活 性 炭 分 散 シ リ カ ゲ ル 1g
ダ イ オ キ シ ン 類 分 解 溶 液 添 加 後 30分 放 置
水層
ジ エ チ ル エ ー テ ル 25m l
石 油 エ ー テ ル 25m l
振 と う ・抽 出
回収
25% ジ ク ロ ロ メ
タ ン /N ‐ ヘ キ サ ン
溶 液 を 6 0 m lを
2 .5 m l/m in で 流
エーテル層
ト ル エ ン 3 0 0 m lを 2 .5 m l/m in で 流 下
P C D D s /F s 分 画
2% NaCl 250m l
水 1 0 0 m lを 2 回
洗 浄
PCB分 画
無 水 硫 酸 ナ トリウ ム
濃縮
K .D .濃 縮
N 2ガ ス
乾固
脱 水
濃 縮
定量
乾 固
重量測定
濃度
高 分 解 能 ガ ス ク ロ マ ト グ ラ フ ィ /質 量 分
析 計 ( G C /H R M S )
測定
濃度算出
ステロイドホルモンの生合成
コレステロール
プレグネノロン
17‐OHプレグネノロン
デヒドロエピアンドロステロン
(DHEA)
プロゲステロン(P4)
17‐OHプロゲステロン
アンドロステンジオン
デオキシコルチゾール
テストステロン
コルチゾール(F)
エストラジオール
コルチゾン(E)
病態生理で切った内科学 4内分泌疾患;医学教育出版社
統計解析の手法
• 母乳中ダイオキシンレベルとステロイドホルモンレベルの相関
• 母親のステロイドホルモンレベルと乳児身体計測値の相関
⇒スピアマンの順位相関係数
• 母乳中ダイオキシンレベルと児計測値との相関
⇒ピアソンの相関係数
倫理的配慮
本研究は金沢大学医学倫理委員会の承認を得て行った
(承認番号89)。
本調査にあたり、参加者にはBien Hoaの人民委員会を通
じて対象者に研究主旨を説明し、参加の同意を得た。
当日調査会場である診療所に来場したすべての人に対
し、ベトナム語で書かれた文書にて研究参加の同意を得
た。
結 果
初産婦の属性
n=55
平均値
S.D
年齢(才)
25.4
2.73
身長(cm)
150.7
5.04
体重(kg)
49.2
6.29
BMI
21.8
3.00
世帯収入(×104 VND/月)
542
383
居住年数(年)
13.9
10.43
乳児の属性
男児 (S.D) n=34
女児(S.D) n=21
月齢(ヶ月)
3.3 (1.1)
2.9 (1.1)
身長(cm)
62.9(4.0)
60.5 (4.5)
体重(g)
6506.5 (1274.8)
5527.1 (848.6)
頭囲 (cm)
40.0 (1.9)
38.7 (1.5)
胸囲(cm)
41.8 (3.0)
39.3 (2.2)
母乳中ダイオキシンレベル
PCDD congeners
2,3,7,8‐TCDD
1,2,3,7,8‐PeCDD
1,2,3,4,7,8‐HxCDD
1,2,3,6,7,8‐HxCDD
1,2,3,7,8,9‐HxCDD
1,2,3,4,6,7,8‐HpCDD
OCDD
PCDF congeners
2,3,7,8‐TCDF
1,2,3,7,8‐PeCDF
2,3,4,7,8‐PeCDF
1,2,3,4,7,8‐HxCDF
1,2,3,6,7,8‐HxCDF
1,2,3,7,8,9‐HxCDF
2,3,4,6,7,8‐HxCDF
1,2,3,4,6,7,8‐HpCDF
1,2,3,4,7,8,9‐HpCDF
OCDF
Total PCDDs
Total PCDFs
Total PCDD+PCDFs
median
(inter‐quartile)
2.035
2.819
1.511
5.061
1.5033
9.166
54.31
(1.184‐4.332)
(1.965‐4.325)
(1.0599‐2.0619)
(2.809‐7.41)
(1.1365‐2.5133)
(5.489‐14.817)
(39.7‐78.81)
0.4608
0.548
4.206
6.364
4.042
0.3628
0.7298
4.14
0.7315
0.6407
80.28
23.66
108.48
(0.2342‐0.6593)
(0.616825‐0.658443)
(3.439‐5.392)
(5.135‐10.183)
(2.907‐5.859)
(0.2439‐0.5916)
(0.4591‐0.971)
(3.24‐5.766)
(0.3218‐1.1196)
(0.4751‐0.8711)
(56.08‐123.77)
(17.79‐30.59)
(56.08‐123.77)
• 母乳中ダイオキシンレベルとステロイ
ドホルモンレベルとの関連
• 母乳中ダイオキシンレベルと乳児身
体計測値との関連
• 母親のステロイドホルモンレベルと乳
児身体計測値との関連
• 母乳中ダイオキシンレベルとステロ
イドホルモンレベルとの関連
• 母乳中ステロイドホルモンレベルと乳
児身体計測値との関連
• 母親のステロイドホルモンレベルと乳
児身体計測値との関連
母乳中ダイオキシンレベルと血清・唾液中ホルモン値 との相関表 (r2値)
r2値>0.1
r2値>0.2
r2値>0.3
PCDD
2,3,7,8TCDD
(n=46)
PCDF
1,2,3,7,8- 1,2,3,4,7,8- 1,2,3,6,7,8- 1,2,3,7,8,9- 1,2,3,4,6,7,
PeCDD
HxCDD
HxCDD
HxCDD 8-HpCDD
(n=46)
(n=46)
(n=45)
(n=46)
(n=47)
OCDD
(n=44)
2,3,7,8TCDF
(n=46)
血清中
コルチゾール
0.02784
0.16079
0.048958
0.023911
0.077616
0.016447
0.068706
0.011676
コルチゾン
0.045295
0.16221
0.071097
0.10809
0.089922
0.042422
0.080592
テストステロン
0.055542
0.029729
0.004552
0.033017
0.008357
0.004367
デヒドロエピアンドロステロン
0.010867
0.15852
0.12679
0.042391
0.0363
アンドロステンジオン
0.043196
0.001165
0.036841
0.010598
0.055052
プロゲステロン
1,2,3,7,8PeCDF
(n=47)
Total
2,3,4,7,8- 1,2,3,4,7,8- 1,2,3,6,7,8- 1,2,3,7,8,9- 2,3,4,6,7,8- 1,2,3,4,6,7, 1,2,3,4,7,8,
PeCDF
HxCDF
HxCDF
HxCDF
HxCDF 8-HpCDF 9-HpCDF
(n=45)
(n=46)
(n=45)
(n=45)
(n=46)
(n=43)
(n=47)
OCDF
(n=46)
Total
PCDD
(n=47)
Total
PCDF
(n=43)
Total
PCDD+PCD
F
(n=47)
0.013985
0.049407
0.01762
0.030262
0.023846
0.013764
0.049774
0.001944
0.012464
0.019285
0.028041
0.033858
0.033884
0.010372
0.044609
0.050327
0.030416
0.056332
0.002794
0.017549
0.015987
0.10526
0.039121
0.006846
0.060952
0.022226
0.032054
0.06191
0.003817
0.004909
0.004257
0.004636
0.14298
0.01705
0.03571
0.004926
0.01834
0.017055
0.066533
0.11925
0.004507
0.13455
0.013985
0.034457
0.016898
0.010327
0.020023
0.024961
0.11572
0.1473
0.012153
0.003174
0.004739
0.00305
0.001212
0.028847
0.05554
0.018679
0.012857
0.004166
0.003593
0.12632
0.11881
0.026992
0.039847
0.01832
0.015208
0.011934
0.174132
デヒドロエピアンドロステロン
(DHEA)
1,2,3,4,6,7,8‐HpCDF
唾液
中
0.003456
0.014854
0.004646
0.025351
0.024868
0.012819
0.054618
0.034387
0.038987
0.009373
0.14893
0.10833
0.039018
0.042129
0.027073
0.072424
0.039397
0.0685
0.1039
0.100052
エストラジオール
0.002398
0.047856
0.060211
0.013856
0.006149
0.085319
0.013977
0.004288
0.008535
0.017294
0.024596
0.007018
0.003765
0.043415
0.1046
0.10386
0.044016
0.013624
0.044594
0.007419
コルチゾール
0.022457
0.048233
0.065054
0.042363
0.057983
0.042079
0.049407
0.001415
0.025812
0.072928
0.047632
0.033133
0.041035
0.011767
0.16554
0.025228
0.007106
0.031163
0.035933
0.034695
コルチゾン
0.011012
0.13459
0.074437
0.011517
0.032379
0.069371
0.052801
0.10162
0.002147
0.050843
0.0434
0.040211
0.037645
0.042976
0.14452
0.009339
0.018294
0.022475
0.012693
0.00241
テストステロン
0.00898
0.043896
0.037804
0.002411
0.029178
0.049067
0.002505
0.072288
0.034824
0.001129
0.007694
0.004196
0.019731
0.044712
0.061708
0.10231
0.097274
0.017714
0.017055
0.025686
デヒドロエピアンドロステロン
0.00111
0.02005
0.060893
0.00347
0.003948
0.035666
0.029398
0.025438
0.016717
0.036836
0.000885
0.003033
0.09911
0.00268
0.11738
0.044268
0.004226
0.038048
0.017045
0.032889
アンドロステンジオン
0.050274
0.068465
0.01649
0.03838
0.070114
0.073374
0.076073
0.056657
0.062881
0.019492
0.034402
0.019746
0.089728
0.03184
0.11895
0.067346
0.016934
0.084104
0.035474
0.202429
プロゲステロン
0.037502
0.046508
0.016793
0.000776
0.02351
0.019188
0.097532
0.01233
0.034423
0.024922
0.025578
0.019154
0.052183
0.030826
0.045794
0.094899
0.023808
0.028777
0.028344
0.029751
エストラジオール
0.013092
0.028725
0.033508
0.012572
0.058266
0.024748
0.037964
0.065204
0.02622
0.017279
0.010957
0.00406
0.03772
0.033519
0.031562
0.018813
0.000773
0.044265
0.012697
0.035817
母乳中ダイオキシンレベルと血清中DHEAの相関
8.0
DHEA(pg/mL)
DHEA(pg/mL)
8.0
6.0
4.0
2.0
0.0
y = 0.560x2 ‐ 1.426x + 4.095
R² = 0.126 n=46
10.0
y = 0.246x2 ‐ 1.875x + 6.427
R² = 0.158 n=46
10.0
6.0
4.0
2.0
0.0
2.0
4.0
6.0
1,2,3,7,8‐PeCDD(pg/lipid)
8.0
0.0
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
1,2,3,4,7,8‐HxCDD(pg/lipid)
3.5
4.0
母乳中ダイオキシンレベルと血清中DHEAの相関
y = 0.014x2 ‐ 0.362x + 5.176
R² = 0.119 n=47
10.0
7.0
y = 2.405x2 ‐ 4.264x + 4.525
R² = 0.134 n=46
6.0
8.0
6.0
DHEA(pg/mL)
DHEA(pg/mL)
5.0
4.0
4.0
3.0
2.0
2.0
1.0
0.0
0.0
5.0
10.0
15.0
20.0
25.0
1,2,3,4,6,7,8‐HpCDD(pg/lipid)
30.0
0.0
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
2,3,7,8‐TeCDF(pg/lipid)
1.0
1.2
母乳中ダイオキシンレベルと血清中DHEAの相関
10.0
y = 0.186x2 ‐ 1.548x + 6.356
R² = 0.115 n=43
10.0
8.0
DHEA(pg/mL)
DHEA(pg/mL)
8.0
y = 1.623x2 ‐ 3.516x + 4.699
R² = 0.147 n=47
6.0
4.0
6.0
4.0
2.0
2.0
0.0
0.0
1.0
2.0
3.0
4.0
5.0
6.0
7.0
1,2,3,4,6,7,8‐HpCDF(pg/lipid)
8.0
0.0
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
1,2,3,4,7,8,9‐HpCDF(pg/lipid)
2.5
• 母乳中ダイオキシンレベルとステロイ
ドホルモンレベルとの関連
• 母乳中ダイオキシンレベルと乳児身
体計測値との関連
• 母親のステロイドホルモンレベルと乳
児身体計測値との関連
母乳中ダイオキシンレベルと性別ごとの児の計測値との相関表 (r2値)
r2値>0.1
r2値>0.2
r2値>0.3
r2値>0.4
PCDD
2,3,7,8TCDD
(n=29)
1,2,3,7,8PeCDD
(n=31)
1,2,3,4,7,8HxCDD
(n=31)
1,2,3,6,7,8HxCDD
(n=30)
PCDF
1,2,3,7,8,9- 1,2,3,4,6,7,8HxCDD
HpCDD
(n=31)
(n=31)
OCDD
(n=30)
2,3,7,8TCDF
(n=30)
1,2,3,7,8PeCDF
(n=31)
2,3,4,7,8PeCDF
(n=29)
1,2,3,4,7,8HxCDF
(n=30)
1,2,3,6,7,8HxCDF
(n=29)
1,2,3,7,8,9HxCDF
(n=29)
男児
身長
0.13378 0.050646 0.009837
0.004563
0.009296 0.040441
0.013647 0.010114 0.063072 0.063247 0.050297 0.066337 0.004482
体重
0.11469 0.003641 0.003856
8.38E-05
0.011718
0.000211 0.001627 0.047719 0.078473
男児
0.00093
Total
2,3,4,6,7,8HxCDF
(n=29)
0.002295
3.13E-05 0.006391
0.022179
0.12158 0.005642
0.0016
胸囲
0.072485 1.59E-05 0.028442 0.006194 0.012368
0.03687 0.005585
0.000244
胸囲
0.12398 0.027259
0.020027
0.046462 0.017801
0.016657 0.001501 0.047891
0.18859
6.42E-05
0.02324
1,2,3,4,7,8HxCDD
(n=15)
0.34325 0.012577
女児
女児
体重
0.053039
Total
PCDD+PCDF
(n=31)
0.014752 0.008662 0.018184 2.71E-07 0.044911
0.08355
1.33E-05 0.016571
0.006294
Total
PCDF
(n=28)
0.002154
7.41E-06
身長
Total
PCDD
(n=31)
0.00689 0.008686 0.041924 5.34E-05 0.019669
頭囲
1,2,3,7,8PeCDD
(n=15)
OCDF
(n=30)
0.015039
0.14852 0.002664 0.000263
2,3,7,8TCDD
(n=17)
1,2,3,4,6,7,8- 1,2,3,4,7,8,9HpCDF
HpCDF
(n=26)
(n=30)
0.27764 0.004433
女児
1,2,3,6,7,8HxCDD
(n=15)
0.020373
1,2,3,7,8,9- 1,2,3,4,6,7,8HxCDD
HpCDD
(n=15)
(n=16)
0.163723
OCDD
(n=14)
2,3,7,8TCDF
(n=16)
1,2,3,7,8PeCDF
(n=16)
0.14421
2,3,4,7,8PeCDF
(n=16)
0.14543
1,2,3,4,7,8HxCDF
(n=16)
1,2,3,6,7,8HxCDF
(n=16)
0.00011
1,2,3,7,8,9HxCDF
(n=16)
2,3,4,6,7,8HxCDF
(n=17)
0.16123 0.072391 0.013839
0.06358 0.009569 0.026405 0.019658
1,2,3,4,6,7,8- 1,2,3,4,7,8,9HpCDF
HpCDF
(n=17)
(n=17)
OCDF
(n=16)
Total
PCDD
(n=16)
0.10825
Total
PCDF
(n=15)
0.026243
Total
PCDD+PCDF
(n=16)
0.00417
0.005893 0.096288 0.088333
0.2209 0.013982 0.013318 0.004998
0.007035
0.000942 0.000828 0.003473 0.006003 0.003745
0.00606
0.092099 0.011614
0.062755 0.331582 0.063631
0.38749 0.022084 0.000707 0.001524
0.023033
1.47E-06 0.000832 0.014745 0.024254 0.005794
0.022846
0.008418
0.00301 0.041456 0.045653 0.009679
0.042717
0.002345 0.016553 0.017182 0.008319 0.009211
0.00526
頭囲
0.078818
胸囲
頭囲
0.012614
0.41081 0.005507
0.100288
0.196553 0.009994
0.028734 0.163461 0.004891
0.3966 0.004375 0.006044 0.006738
0.00901
胸囲
0.000741
0.14184 0.082235
0.045562
0.104567 0.000952
0.01666 0.380777 0.002987
0.19716 0.063662 0.026448 0.011933
0.006636
母乳中ダイオキシンレベルと女児 頭囲との相関
42.0
y = ‐0.644x + 40.75
R² = 0.410 42.0
40.0
頭囲(cm)
頭囲(cm)
40.0
38.0
38.0
36.0
36.0
34.0
34.0
0.0
1.0
2.0
3.0
4.0
5.0
6.0
7.0
y = ‐0.1456x + 39.668
R² = 0.100
8.0
0.0
2.0
4.0
10.0
12.0
14.0
16.0
42.0
y = ‐0.8566x + 40.389
R² = 0.197
y = ‐2.6042x + 39.96
R² = 0.164
40.0
頭囲(cm)
40.0
頭囲(cm)
8.0
1,2,3,6,7,8,‐HxCDD
1,2,3,7,8‐PeCDD(pg/lipid)
42.0
6.0
38.0
36.0
38.0
36.0
34.0
0.0
0.5
1.0 1.5 2.0 2.5 3.0
1,2,3,7,8,9‐HxCDD(pg/lipid)
3.5
4.0
34.0
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
2,3,7,8TCDF(pg/lipid)
1.0
1.2
母乳中ダイオキシンレベルと女児 頭囲との相関
y = ‐0.649x + 41.32
R² = 0.396 n=16
42.0
頭囲(cm)
40.0
38.0
36.0
34.0
0.0
1.0
2.0
3.0
4.0
5.0
6.0
2,3,4,7,8‐PeCDF(pg/mL)
7.0
8.0
• 母乳中ダイオキシンレベルとステロイ
ドホルモンレベルとの関連
• 母乳中ダイオキシンレベルと乳児身
体計測値との関連
• 母親のステロイドホルモンレベルと
乳児身体計測値との関連
母親のステロイドホルモンレベルと性別ごとの児の計測値との相関表 (r2値)
r2値>0.1
r2値>0.3
r2値>0.2
r2値>0.4
血清中
コルチゾール
コルチゾン
テストステロン
唾液中
デヒドロエピア アンドロステン
エストラジオー
プロゲステロン
コルチゾール
ンドロステロン
ジオン
ル
コルチゾン
テストステロン
デヒドロエピア アンドロステン
エストラジオー
プロゲステロン
ンドロステロン
ジオン
ル
男児
身長
0.082104
0.071169
0.01393
0.22475
0.048267
0.307999
0.015869
0.015551
0.048182
0.044755
0.003673
0.003163
0.085531
0.044045
体重
0.049314
0.021954
0.01393
0.12151
0.084101
0.227949
0.02977
0.031242
0.010126
0.02407
0.000447
0.032965
0.093204
0.031706
頭囲
0.028824
0.016747
0.067181
0.062221
0.112133
0.084088
0.00752
0.036847
0.020961
0.028978
0.085174
0.028362
0.072168
0.030513
胸囲
0.030462
唾液中 アンドロステンジオン
コルチゾール
身長
0.079451
0.007485
コルチゾン
0.04704
0.00779
テストステロン
0.25419
0.10479
0.097529
0.255606
0.015869
0.030925
デヒドロエピア アンドロステン
エストラジオー
プロゲステロン
コルチゾール
ンドロステロン
ジオン
ル
0.031977
0.212862
0.321111
0.209665
0.160291
0.014969
コルチゾン
0.052561
テストステロン
0.442589
0.029738
0.029398
0.071083
0.030845
デヒドロエピア アンドロステン
エストラジオー
プロゲステロン
ンドロステロン
ジオン
ル
0.410589
0.047789
0.48082
0.02887
0.368722
r2=0.506
女児
体重
0.098546
0.105564
0.18891
0.043281
0.088042
0.125686
0.095704
0.058639
0.504881
0.300265
0.093857
0.50671
0.00867
0.118939
頭囲
0.034686
0.039577
0.30601
0.020024
0.030046
0.152428
0.121834
0.042398
0.371227
0.366225
0.105064
0.400967
0.085515
0.275376
胸囲
0.021825
0.155643
0.13964
0.093498
0.075758
0.096245
0.054745
0.14207
0.529906
0.17607
0.219393
0.37108
0.115065
0.124382
結果のまとめ
母乳中ダイオキシンレベルとステロイドホルモン値との関連について
血清中DHEAとダイオキシン異性体で多く関連がみられ、U字型相関が得
られた。
1,2,3,4,6,7,8‐HpCDFと、ステロイドホルモンと多くの関連がみられた。
母乳中ダイオキシンレベルと乳児身体計測値との関連について
男児よりも女児の方が有意な負の相関が多く見られた。
男児:胸囲と有意な負の関連が最も多くみられた。
女児:頭囲と有意な負の関連が多く、また頭囲に次いで胸囲も相関が多く
見られた
母親のステロイドホルモンレベルと乳児身体計測値との関連について
女児に多く関連がみられ、U字型相関が多かった。
考 察
母乳中ダイオキシンレベルとステロイドホルモンレベル
について
血清中DHEAとダイオキシンレベルでは、U字型の相関だった。
同様に、ダイオキシンレベルとアンドロステンジオンやエストラジオールとの相
関もU字型相関であった。
ダイオキシンレベルとDHEAレベルとの相関はU字型相関、反対にエストロゲン
との関連は山型の相関であった。ダイオキシンレベルがDHEAに影響し、その
後の合成されるホルモンに影響している。
(Manh et al.,2012)
ダイオキシン異性体が直接体内のDHEAレベルに影響し、他の
ステロイドホルモンについても直接ダイオキシンが影響している
ことが考えられる。
母乳中ダイオキシンレベルと乳児身体計測値について
ダイオキシンレベルと計測値との関連は男児よりも女児の方が強い結果で
あった。
母乳中、胎盤中、臍帯血中のダイオキシン濃度と、出生児の体重低下、頭
囲と負の関連がある 。(Koopman et al.,1996, Vreugdenhil et al.,2004, Tawara et al.,2009)
イタリア セベソで起こったダイオキシン類高曝露での研究では、出生児の性別は女児
に偏っていた。ダイオキシン高曝露下においては男児が女児よりも高頻度に流産・死産
し、出生児が女児に偏る結果となった可能性が示唆されている。
(Mocarelli et al.,1996)
出生にあたって女児の方が男児よりも影響をうけづらく、出生
後の女児の方が負の相関を強く示した結果となったのではな
いかと考えられる。
ステロイドホルモンレベルと乳児身体計測値について
妊娠中のダイオキシン曝露が、児童期の子どものDHEA‐Sレベル
に影響し、児の二次性徴にも影響すると示唆されている。
(Rennert et al.,2012)
これまでの論文において母親のホルモン値と乳児の計測値の関
連についての報告はされていない。
ダイオキシン曝露によって母体ホルモン値を変化させ、結果と
してその子どもの成長に影響を及ぼしていることも考えられる
が、今後、成長に影響を及ぼす児のホルモンレベル等の測定
等、さらなる詳細な調査が必要と考えられる。
本研究の意義と研究の限界
本研究の意義
ダイオキシン等の環境中に存在する有害な化学物質が人体に及ぼ
す影響を明らかにすることで、各個人の自主的取り組み・化学物質
規制の審査基準への反映、適切なリスク管理体制への構築、母子
の健全な成長、発達に貢献することが出来ると考えられる。
研究の限界
本研究の調査対象はベトナムダイオキシン高濃度汚染地区に住む
母親55名と少なく、非汚染地区との比較をしていないため、本結果
の一般化には限界がある。
今後の展望
今後対象者数を増やし、対照地区での調査を行うとと
もに、詳細な測定を行っていく。また、疫学研究だけで
なく、基礎・臨床医学研究をはじめ幅広い知見を求め
、各専門分野の研究者との共同研究をさらに発展させ
ていく必要がある。
結 論
1.母乳中ダイオキシンレベルとステロイドホルモンとの関連で
は、血清中DHEAとダイオキシン異性体で最も多くの関連がみら
れ、U字型相関が得られた。
2.母乳中ダイオキシンレベルと乳児身体計測値との関連では、
男児では胸囲、女児では、頭囲、胸囲で多く関連がみられた。
性別でみると、男児よりも女児の方が多くの関連がみられた。
3.ステロイドホルモン値と乳児身体計測値との関連では、関連
がみられたのは女児で顕著に多かった。しかし、母親のステロ
イドホルモン値と乳児身体計測値の関係はさらなる詳細な調査
が必要である。
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