...

モッブ・フットボール思想の研究 ~スポーツにおける社会的統合と暴力の

by user

on
Category: Documents
37

views

Report

Comments

Transcript

モッブ・フットボール思想の研究 ~スポーツにおける社会的統合と暴力の
モッブ・フットボール思想の研究
~スポーツにおける社会的統合と暴力の関係を中心に~
A study on Idea of Mob Football:
Focusing on the relation between Social Integration and Violence in Sports
1K04B233
指導教員
主査 志々田文明先生
はじめに
(1) 研究動機及び目的
山田 佳史
副査 石井昌幸先生
の6点の史料を中心に展開する。
Ⅰ章 中 世 イギリスの社 会 と文 化 :①川 北 稔
私 は大 学 の 講 義 で近 代 フットボールの祖 先 と
(1987)、非 労働 時間の生活 史 英 国風ライフスタ
言 われる「モッブ・フットボール」の存 在 を知 った。
イルの誕生、リブロポート ②池上俊一(2003)、遊
これは中 世 イングランドの祭 りであり、ゲーム中 で
びの中世史、ちくま学芸文庫
の暴 力 行 為 が公 認 されている。現 代 フットボール
Ⅱ章 中 世 イングランドの祭 り モッブ・フットボ
におけるフーリガン現 象 の背 景 には、中 世 のモッ
ール:③山 本 浩 (1998)、フットボールの文 化 史 、
ブ・フットボールとの関 係 があるのではないか、と
ちくま新 書 ④中 村 敏 雄(2001)、オフサイドはなぜ
考 えた。こうした問 題 意 識 が本 研 究 の動 機 であ
反則か、平凡社
る。
Ⅲ章 フットボール・フーリガニズム~スポーツと
本研 究は、中世のモッブ・フットボールと現代 フ
暴 力 ~:⑤井 野 瀬 久 美 (1992)、子 どもたちの大
ットボールにおけるフーリガニズムの関 係 、そして
英 帝国 世 紀 末 フーリガン登場 、中 公新 書 ⑥ノ
それらを題材にスポーツにおける社会的統合 と暴
ルベルト・エリアス、エリック・ダニング、大 平 章 訳
力 の関 係 性 について考 察 する。この目 的 を達 成
(1995)、スポーツと文 明 化 興 奮 の探 求、法 政 大
するために以下の課題を設定した。
学出版局
① 中 世 イギリスの社 会 構 造 と遊 びの特 徴 を考 察
する。
Ⅰ章
② 近 代 フットボールの前 身 である中 世 のモッブ・
中 世 イギリス社 会 の特 色 は、「封 建 制 度 による
フットボールの特 徴 と社 会 的 機 能 を解 明 す
身 分 制 社 会 」、「農 村 社 会 」、「キリスト教 社 会 」で
る。
ある。このような社 会 で は日 常 生 活 から労 働 ・ 文
③ フーリガン現 象 の背 景 にある思 想 を、イギリス
化 まで全 てが身 分 によって規 定 されており、社 会
の社 会 構 造 ・ 産 業 構 造 の変 化 と 関 連 付 けて
の大 半 を占 める農 民 ( 民 衆 )にとって遊 びは、日
考察する。
常 の生 活 空 間 の中 で行 われ、労 働 との明 確 な区
④ 以 上 を 踏 ま え、 中 世 の モッブ・ フットボールと
別がなかった。
現代のフットボール・フーリガニズムの関係、そ
してスポーツにおける社 会 的 統 合 と暴 力 の関
係性について考察する。
Ⅱ章
近 代 フットボールの前 身 と言 われる中 世 イギリ
スの祭 りモッブ・フットボールがどのような特 徴 、社
(2) 研究方法及び史料
本 研 究 は、文 献 研 究 である。主 に依 拠 した次
会 的 機 能 があったかを明 らかにした。1番 の特 徴
として、「明 文 化 されたルールがなく、肉 体 的 暴
力 ・粗 暴 性 が認 められていた」ことが挙 げられ、中
る。
世 の人 々、特 に男 性 は、このフットボールでの肉
体 的 接 触 を通 して楽 しみを得 たり、男 性 らしい強
Ⅳ章(結論)
靭 さ・勇 敢 さを示 すとともに、自 分 が属 する集 団 と
Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ章 で明 らかになったことを踏 まえ、中
しての共 同 体 意 識 を高 めていたのである。ここで
世 のモッブ・フットボールの思 想 と現 代 のフットボ
は、勝 敗 という結 果 は現 在 のようには重 要 視 され
ール・フーリガニズムの関 係 、さらにスポーツにお
ていなかった。
ける社 会 的 統 合 と暴 力 の関 係 性 について考 察 し
た。中 世 においても近 代においても、フットボール
Ⅲ章
フーリガン現 象 の背 景 にある思 想 をイギリスの
は男らしさの規範で、そこでの肉体的接触や暴力
によって、地 域 社 会 における自 らの存 在 ・重 要 性
社 会 構 造 、産 業 構 造 の変 化 と関 連 付 けて明 らか
を確認し、それを誇示する遊戯的闘争の場である。
にした。イギリスにおけるフットボール・フーリガニ
よってフーリガン現 象 というのは、暴 力 からの楽 し
ズムは、社 会 経 済 的 に最 も下 位 に属 する下 層 労
みを奪った文明化(近代化)に対する人々の反発
働 者 階 級 の男 性 が中 心 的 役 割 を果 たしており、
であり、中世 の祭りであるモッブ・フットボールの思
フットボールの場で暴徒化することで男性としての
想 や慣 習 の名 残 であり、きわめてイギリス的 な現
攻 撃 的 なアイデンティティを表 明 し ているのであ
象で現代的対応物と考えた。
Fly UP