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日機連20先端-15
平成20年度
石油化学コンビナートのメンテナンス作業への
RT 適用に関するニーズ調査研究報告書
平成21年3月
社団法人
日本機械工業連合会
社団法人
日本ロボット工業会
この事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。
http://ringring-keirin.jp/
序
我 が 国 機 械 工 業 に お け る 技 術 開 発 は 、戦 後 、既 存 技 術 の 改 良 改 善 に 注 力 す る
こ と か ら 始 ま り 、や が て 独 自 の 技 術・製 品 開 発 へ と 進 化 し 、近 年 で は 、科 学 分
野にも多大な実績をあげるまでになってきております。
し か し な が ら 世 界 的 な メ ガ コ ン ペ テ ィ シ ョ ン の 進 展 に 伴 い 、中 国 を 始 め と す
る ア ジ ア 近 隣 諸 国 の 工 業 化 の 進 展 と 技 術 レ ベ ル の 向 上 、さ ら に は ロ シ ア 、イ ン
ド な ど B R I C s 諸 国 の 追 い 上 げ が め ざ ま し い 中 で 、我 が 国 機 械 工 業 は 生 産 拠
点 の 海 外 移 転 に よ る 空 洞 化 問 題 が 進 み 、技 術・も の づ く り 立 国 を 標 榜 す る 我 が
国の産業技術力の弱体化など将来に対する懸念が台頭してきております。
こ れ ら の 国 内 外 の 動 向 に 起 因 す る 諸 課 題 に 加 え 、環 境 問 題 、少 子 高 齢 化 社 会
対策等、今後解決を迫られる課題も山積しており、この課題の解決に向けて、
従 来 に も 増 し て ま す ま す 技 術 開 発 に 対 す る 期 待 は 高 ま っ て お り 、機 械 業 界 を あ
げて取り組む必要に迫られております。
こ れ か ら の グ ロ ー バ ル な 技 術 開 発 競 争 の 中 で 、我 が 国 が 勝 ち 残 っ て ゆ く た め
に は こ の 力 を さ ら に 発 展 さ せ て 、新 し い コ ン セ プ ト の 提 唱 や ブ レ ー ク ス ル ー に
つ な が る 独 創 的 な 成 果 を 挙 げ 、世 界 を リ ー ド す る 技 術 大 国 を 目 指 し て ゆ く 必 要
が あ り ま す 。幸 い 機 械 工 業 の 各 企 業 に お け る 研 究 開 発 、技 術 開 発 に か け る 意 気
込 み に か げ り は な く 、方 向 を 見 極 め 、ね ら い を 定 め た 開 発 に よ り 、今 後 大 き な
成果につながるものと確信いたしております。
こ う し た 背 景 に 鑑 み 、弊 会 で は 機 械 工 業 に 係 わ る 技 術 開 発 動 向 調 査 等 の テ ー
マ の 一 つ と し て 社 団 法 人 日 本 ロ ボ ッ ト 工 業 会 に「 石 油 化 学 コ ン ビ ナ ー ト の メ ン
テ ナ ン ス 作 業 へ の RT 適 用 に 関 す る ニ ー ズ 調 査 研 究 」を 調 査 委 託 い た し ま し た 。
本報告書は、この研究成果であり、関係各位のご参考に寄与すれば幸甚です。
平成21年3月
社団法人
会
日本機械工業連合会
長
金
井
務
はしがき
我が国の製造業を高度に成長させ、発展させて世界の一流先進国としての地位を築けた
のは、化石燃料資源を有効に活用することを可能とした、いわゆる石油コンビナート事業
であります。特に1955年から1973年までの高度成長期時代には、全国で幾多の石
油コンビナートが設置され、日本の産業基盤育成や国力増強の基礎となったとことは、誰
もが認める事実であります。
しかし、その後四~五十年が経ち、コンビナートを構成する多くのプラント設備は長い
年月経過による劣化などが顕在化してきていることも事実であります。当然メンテナンス
作業や設備改善などによって、プラント機能・性能は維持されてきていますが、近年の少
子化や熟練技術者の高齢化・環境資源問題などにより、特にメンテナンス作業を従来どお
りに実施することに支障が生じることが予想されています。
一方、近年の技術進歩の成果として、ロボット技術の進展は著しく、特に人と共存出来
る「次世代ロボット(サービスロボット)」が話題となり、新技術開発も盛んに行われて
おります。このロボットテクノロジ(RT=Robot Technology)を活用し、人手作業とR
Tによる作業を有効に組合せてプラント設備をメンテナンスすることの可能性を調査す
ることは、今後、海外メーカとの競争に勝ち残り、日本の国力を維持、発展させると言う
観点からも重要な視点であると考えます。
本調査事業では、国内の石油コンビナートを中心に顕在化しつつあるプラント設備の高
経年化問題を解決し、人員不足や技能伝承などの人材問題を解消して、更には、安心・安
全、生産性向上に資する合理化・高度化を維持することを目的として、我が国が強みを有
するRTの適用可能性を調査、検討し、我が国の根幹をなすコンビナート産業の維持強化
と次世代ロボット産業の育成、発展を目指したいと考えます。
最後に、本事業の遂行にあたり、経済産業省及び関係機関のご指導と本事業を当会へ委
託された社団法人日本機械工業連合会のご高配に深謝するとともに、本事業にご協力頂い
た「石油化学コンビナートのメンテナンスRT化調査研究専門委員会」(委員長:大道武
生
名城大学
教授)の委員各位のご尽力に対し、衷心より厚く御礼申し上げる次第であ
ります。
平成21年3月
社団法人
会
日本ロボット工業会
長
利
島
康
司
石油化学コンビナートのメンテナンスRT化調査研究専門委員会名簿
委員名
機関名・所属・役職
委員長
委 員
委 員
大道
朝倉
足立
武生
紘治
尚樹
委
委
委
委
委
委
紺野
岩間
長井
中村
油田
濱田
臣郞
啓一
和美
昌允
信一
彰一
員
員
員
員
員
員
オブザーバ
藤沼 良夫
原田 憲治
今井 靖典
横森
万
小笠原 伸
細見 成人
伊藤 嘉浩
中平
大
森安 輝
田中 幸仁
名城大学 理工学部 機械システム工学科 教授
(財)エンジニアリング振興協会 研究理事
ロボットビジネス推進協議会 ビジネスマッチング部会
(コンビナートRT・WG 幹事)
石油連盟 技術環境安全部 参与
石油化学工業協会 技術部長
日本メンテナンス工業会 事務局長
東京農工大学大学院 教授
筑波大学 教授
(社)日本ロボット工業会 技術部長
茨城県工業試験センター
浜松市商工部産業政策課
岡山県産業振興財団開発支援G
三重県四日市センター
早稲田大学 Wabot House
次世代ロボット開発ネットワーク RooBO(運営委員長)
中部経済産業局企業育成総合支援室
中部経済産業局企業育成総合支援室
中国経済産業局次世代産業課
資源エネルギー庁 石油・天然ガス課
<コンビナートのメンテナンスRT化課題調査WG(鹿島コンビナート)>
委 員 朝倉 紘治
(財)エンジニアリング振興協会 研究理事
委 員 足立 尚樹
ロボットビジネス推進協議会 ビジネスマッチング部会
(コンビナートRT・WG 幹事)
委 員 紺野 臣郞
石油連盟 技術環境安全部 参与
委 員 長井 和美
日本メンテナンス工業会 事務局長
委 員 中村 昌允
東京農工大学大学院 教授
委 員 油田 信一
筑波大学 教授
<コンビナートのメンテナンスRT化課題調査WG(水島コンビナート)>
委 員 足立 尚樹
ロボットビジネス推進協議会 ビジネスマッチング部会
(コンビナートRT・WG 幹事)
委 員 紺野 臣郞
石油連盟 技術環境安全部 参与
委 員 長井 和美
日本メンテナンス工業会 事務局長
委 員 岩間 啓一
石油化学工業協会 技術部長
委 員 中村 昌允
東京農工大学大学院 教授
委 員 油田 信一
筑波大学 教授
<参考>
ロボットビジネス推進協議会「コンビナートのRT活用検討WG」のメンバー(敬称略)
篠崎(北九州市)、橋本(MSTC)、大築(NIRO)、佐野(㈱東芝テック)、中井(㈱
三井リース)、吉村(㈱日立プラント)、田中(川崎重工業㈱)、横山(㈱安川電機)平野(㈱
ライトウェア)、味岡(㈱エッチャンデス)、榊原(神鋼電機㈱)
目
次
・序
・はしがき
・石油化学コンビナートのメンテナンスRT化調査研究専門委員会名簿
第1章
調査研究の概要
1.1
調査研究の目的
・・・・
1
1.2
調査研究の概要
・・・・
1
1.3
調査研究の体制
・・・・
1
第2章
コンビナート経営環境変化と迫られる対応
2.1
造る時代からメンテナンス(維持・管理・保全)の時代へ
・・・・
2
2.2
基幹産業の維持・強化と次世代産業の育成
・・・・
7
2.3
イノベーションを促す異業種連携・広域連携
・・・・
7
第3章
コンビナートの現状
3.1
コンビナートの概要
・・・・
9
3.2
石油精製業の現状
・・・・
10
3.3
石油化学業の現状
・・・・
18
3.4
プラントエンジニアリング業の現状
・・・・
22
第4章
プラントメンテナンスの現状
4.1
プラント高経年化
・・・・
25
4.2
コンビナートにおけるプラントメンテナンス
・・・・
25
4.3
労働安全
・・・・
28
4.4
政府の取組
・・・・
28
・・・・
30
~考え方(文化)の変換~ ・
30
第5章
プラントメンテナンスの新しい視点
5.1
なぜRT×メンテナンスなのか
5.2
プラントメンテナンスのパラダイム転換
5.3
生産性向上に向けた人と技術の役割分担の再定義
・・・・
32
5.4
異業種・他分野の技術導入の必要性
・・・・
32
5.5
タスクオリエンテッドとは
・・・・
33
第6章
安全管理について
6.1
リスク管理の重要性について
・・・・
35
6.2
人と技術の役割
・・・・
37
6.3
リスク管理手法を用いたプラントメンテナンス
・・・・
43
第7章
ロボット業界の最新動向
7.1
産業用ロボットの現状
・・・・
46
7.2
次世代ロボット(サービスロボット)の開発状況
・・・・
48
7.3
ロボットビジネス化の取組状況
・・・・
52
7.4
コンビナートのRT化の取組について
・・・・
54
第8章
コンビナートの共通課題
8.1
現地調査ヒアリング及びアンケート結果集計
・・・・
55
8.2
モデルプロジェクト
・・・・
61
8.3
各地域の取組紹介
・・・・
63
第9章
提
言
~今後の取り組みへの期待~
9.1
異業種・他分野との交流促進、技術導入
・・・・
68
9.2
オールジャパンでの広域連携、地域間のアライアンス構築
・・・・
68
9.3
プロジェクト化に向けたアクションプラン
・・・・
68
9.4
枠組みの維持、機関連携のために
・・・・
69
9.5
メンテナンスビジネス・技術の他分野への展開
・・・・
69
・・・・
70
<添付資料>
(1)石油化学コンビナートのメンテナンスRT化調査研究専門委員会
議事録(第1回~第3回)
(2)【RooBO 広域連携マッチング会】コンビナートにおけるRT活用の
可能性
東京セミナー講演資料
・・・・
78
①
安全管理の重要性について
東京農工大学
・・・・
79
②
ニーズからみた石油化学コンビナートの
・・・・
95
中村
教授
メンテナンスにおけるRT活用
・名城大学
大道
教授
(石油化学コンビナートのメンテナンス
RT化調査研究専門委員会委員長)
③
石油コンビナートのメンテナンスにおけるRT活用に関する
RooBOからのシーズ紹介
・次世代ロボット開発ネットワーク RooBO 運営委員長
④
・・・・ 117
細見成人氏
パネルディスカッション資料
・筑波大学
油田
教授
・日本メンテナンス工業会
長井事務局長
・・・・
126
・・・・
129
第1章
調査研究の概要
1.1
調査研究の目的
本調査研究では、国内石油コンビナートを中心に顕在しつつある「プラント設備の高経
年化問題」或いは「人員不足や技能伝承などの人材問題」、「安心・安全、生産性向上に資
する合理化・高度化の課題」や「環境資源問題」などの諸問題に対し、我が国が強みを有
するロボットテクノロジ(以下本報告書ではRT * 1(或いはロボ・テク)と記す)の適用
可能性を検討し、我が国基幹産業の維持強化と次世代産業の育成を目指すことを目的とす
る。
*1
:ロボットは(センサ系・駆動系・知能系)の三つの要素を持ったシステム製品である。
ここで記すRT(=ロボットテクノロジ)は、一体のロボットを指すだけではなく、ロボ
ットを構成する要素技術全てを含んで称している。
1.2
①
調査研究の概要
メンテナンス作業等へのRT利用のニーズ調査
石油精製・化学企業が抱えているメンテナンス作業等の課題に対し、コンビナート現地
の調査を実施(鹿島・水島など)し、具体的なRTニーズを聴取した。なお、調査実施に
あたっては、各コンビナートでのお互いのニーズの技術的な横通しを図ることを目的に地
域関係者なども参加した。これらの調査は「調査研究専門委員会」の下に「課題検討WG」
を設置し、調査結果の整理・まとめを行った。
②
各地域間連携を踏まえたコンビナートメンテナンス作業等へのRT適用のあり方
(まとめ)
掘り起こしたニーズについて調査研究専門委員会で討議し、今後のRT適用推進方策の
検討や評価・まとめを行った。
<注記>
メンテナンス作業等へ適用するRTシーズについては、RTニーズを具体的にどう展開、
解決するか、などの詳細検討が必要である。具体的にはロボットビジネス推進協議会の会
員で構成する「RT活用検討WG」を設置し、各課題ニーズに対応するRTによる解決策
策定方針等の検討を行った。
(なお、このWGは本調査研究の事業予算外にて活動を行った)
1.3
調査研究の体制
コンビナートの業界団体職員や有識者、RT専門家などで構成する「石油化学コンビナ
ートのメンテナンスRT化調査研究専門委員会」を当工業会内に設置し、現場ニーズ調査
とその整理を行った。
なお、コンビナート企業が解決を望んでいるメンテナンス作業の問題点などのニーズは、
「課題検討WG」で検討を行うとともに「コンビナートRT適用のアンケート調査」を実
施し、実情を把握した。
(また、各ニーズを解決するRTシーズに関しては、ロボットビジネス推進協議会ビジネ
スマッチング部会の「RT活用検討WG」[=別事業]で検討を行った)
-1-
第2章コンビナート経営環境変化と迫られる対応
2.1
(1)
造る時代からメンテナンス(維持・管理・保全)の時代へ
経済構造の変化
我が国の人口構造は急速に変化している。総人口は2005年をピークに減少に転じ、
特に生産や消費を支える生産年齢人口(15 歳~64 歳)は2005年の8442万人から2
030年の最も楽観的な予測でも6875万人に減少すると見られている。
( 厚生労働省平
成 19 年社会保障審議会資料による)
また低成長経済、収縮経済の中で輸出減少などの影響が顕著に出始めており、構造変換
が待ったなしで求められている。そのような背景の中、設備投資の伸び率は平成18年度
をピークに暫減傾向にあり、平成20年度後半からの急激な経済状況の変化を考えれば、
さらに下降線をたどることは容易に想像できる。
一方、基礎素材産業の設備投資の中身を見ると、平成19年度に比べ、平成20年度の
設備投資計画では生産増強に向けられた費用は大きく減り、更新維持補修の費用が伸びて
いる。つまり、設備を新設、更新するのではなく、長く丁寧にメンテナンスする時代に入
ったことが見て取れる。
図2-1
(2)
生産年齢人口(15~64 歳)の推移と将来見通し
経営環境変化への対応
経済構造の変化に伴って経営環境も変化している。設備投資予算が限られる中、基礎素
材産業の設備投資の中身を見ると技術革新につながる研究開発に大きな伸びが見られるが、
これは、経営者が技術革新による競争力の増強が重要であると意識していると考えられる。
しかしながら一方で研究開発投資が必ずしも成長要因に結びついておらず、研究開発の
-2-
質が問われる時代に入ったと言える。
このような認識に立った時、今回テーマとする石油精製、石油化学を中心とした石油コ
ンビナート分野においても課題は共通しており、技術革新(イノベーション)を伴って足
腰の強い産業として成長することが求められている。
図2-2
機種別設備投資計画の伸び率推移(各年度3月調査時点での翌年度計画)
平成 20 年 3 月 31 日現在における経済産業省設備投資調査
-3-
図2-3
製造業における目的別設備投資の伸び率、構成比
-4-
(3)
プラントオーナー企業の環境変化への対応
高度な石油精製技術にて得られるサルファーフリーのガソリン、軽油、各種の重油等は
社会を支える重要なエネルギー源であり、また石油化学工業からの各種製品は現代社会に
おける基礎素材としてなくてはならないものとなっている。しかしながらその基礎分野に
おける技術・マーケットの成熟化も進行しており、国内において設備のスクラップ&ビル
ドを期待することはできない。このような状況下において、我が国の高度な操業技術とメ
ンテナンス技術で既存設備の劣化を防止し、かつ高効率で長期に稼動させることが重要と
なってくる。つまり「造る時代からメンテナンス(維持・管理・保守)の時代へ」という
大きな時代の変化の中でメンテナンスを長期的な視点で捉える経営が求められている。
図2-4
研究開発投資の効率<質>の伸び悩み
出所:産業構造審議会産業技術分科会資料
(4)
今求められている国際競争力とは何か・・・攻めのサービス産業としてのメンテ
ナンス業
一方、メンテナンスに対するニーズが大きくなるにつれて、メンテナンス業が国際競争
力を伴った成長を実現する方策も求められてくる。技術開発投資の効率が上がらないとい
う認識についてはすでに述べた。それでは、企業の研究、開発部門の現場はこのような状
況をどう捉えているのであろうか。平成15年度経済産業省「我が国の産業技術開発力に
関する実態調査」を見ると、外部の多様な知との融合の重要性が増大した結果、従来の1
社での基礎研究→応用研究→開発・事業化というモデルが崩れ、そこに対応しきれない状
況が見て取れる。
-5-
図2-5
リニア型の限界(1社で賄うことの限界)
(5)本調査事業の目指すもの
こういった状況を踏まえながら、本調査事業では、次世代産業とって有望な技術シーズ
として、日本の強みでもあるRTが、メンテナンス業に積極的に導入されることによって、
技術に立脚したイノベーションが起こりえるのかどうかを俯瞰しながら、同時に課題(ニ
ーズ)を抽出し、課題解決のプロセスを提示したいと考えている。
-6-
2.2
(1)
基幹産業の維持・強化と次世代産業の育成
グローバル競争~外的要因~
石油コンビナートは我が国の基幹となる製造拠点である。石油関係では近年、アジア、
ロシア、南米、中東においても製造拠点が展開され、生産が増大している。これら、新興
国、地域との競争下におかれる一方、日本企業はエンジニアリングも含めて海外展開を強
化しており、それら外的要因への即応性のある対応が求められている。
(2)
人材確保・育成の課題~内的要因~
人口の減少、特に若年層の減少は顕著である。その中で様々な課題が人材確保、育成に
おいて顕在化してきている。例えば、学校をはじめとした教育現場と生産現場との乖離、
つまり、生産現場で求める人材が教育現場で育っていないという現実や生産現場でOJT
などを通じて行われてきた企業内教育が以前に比べて成果があがりにくくなっている現状
などがある。このような人的環境のなかで、ベテラン技術者が持っていた経験からもたら
される職人技が充分伝承されず、一方でデータ化やマニュアル化への過度な依存から、既
存データ以外の事柄、マニュアルが想定していない事柄への応用力が低下している。
(3)RTからのアプローチ
上記(1)(2)のような外的要因、内的要因に対応する手立てとして情報通信技術、
ナノ技術などの次世代技術の活用、或いは今回は特にRTを活用した新しい発想と工学的
アプローチを明らかにすることが課題解決の戦略の一つであると考える。
2.3
(1)
イノベーションを促す異業種連携・広域連携
異業種連携の意義―――真の競争相手はどこにいるのか。
大容量無線通信技術の実用化など、いよいよ情報化社会を支える基盤が整ってきた。ま
た、前述したように我が国の産業はグローバルな展開の中で存在意義を問われている。さ
らに、国内では、
「日本は今後も技術立国あり得るのか」という危機意識が真剣に議論され
ている。このような認識に立てば、今までの縦割りの業種内の議論だけではなく、横断的
で戦略的な異業種連携が今こそ、求められていると言える。
(2)
広域連携の意義-選択と集中
前述したように研究開発投資の効率化を図るために、またリニア型の 1 社で全てを賄う
時代から、今後は事業のコアコンピタンスへの集中的な人、金、モノの投入が企業生き残
りの鍵となる時代へと移行している。そうであるならば、コアでない部分については、企
業の垣根を越えて、例え競合会社であっても情報共有、共同開発などが今以上に求められ
てくるであろう。これを可能にするのが地域を越えた広域連携である。情報化社会の現代
において、全国の同じニーズ、課題を共有して、解決策を見出す方策は充分考えられる。
これら、地域を越えた横断的な取組み、戦略的な広域連携が求められていると言える。
(3)
次世代産業としてのロボット分野とRTからのアプローチ
平成16年に経済産業省において策定され新産業創造戦略では、以下の視点から国家戦
略分野としてロボットが掲げられており、我が国が強みを有する高度部品・材料産業集積
と、ものづくりに不可欠な要素技術のネットワーク化を通じた迅速且つ高度なすり合わせ
を活かせる次世代の成長産業として期待されている。(図2-6参照)
・新産業創造戦略と次世代の成長産業としてのロボット分野の視点は以下が挙げられる。
-7-
○日本経済の将来の発展を支える戦略分野であること
○国民ニーズが強いもの、社会ニーズが強いもので、今後潜在需要を掘り起こせる分野
であること
○単に最終財・サービスとしての市場だけでなく、素材・材料加工・部品など川下から
川上まで、大企業から中堅・中小企業まで、大都市から地方まで、広範な広がりがあ
って、我が国が持つ産業集積の強みを活かせる分野であること
○市場メカニズムによる競争のダイナミズムだけでは発展しにくい障壁や制約も抱え
ており、成長の加速化と障害の除去のために、官民の一体的な取組を通じた政策の総
合展開が求められている分野であること
図2-6
先端的新産業分野
出展:経済産業省
新産業創造戦略概要より一部抜粋
しかし、現在RTは、研究者を中心としたシーズ先行の取組や、二足歩行ロボットなど
が話題となるなど、新たなユーザ産業への導入が進んでおらず、次世代ロボット産業の市
場が開拓されているとは言い難い状況にある。
今回は、そのような状況を踏まえると共に、上記2.2のような外的要因、内的要因に
対応するため、ロボットを構成する要素技術(ロボットテクノロジ=RT)に焦点を当て、
プラントメンテナンスにおける新しい発想と工学的アプローチなどの可能性を探るもので
ある。
-8-
第3章
コンビナートの現状
3.1
コンビナートの概要
コンビナートとは、一定の地域に企業、工場が相互に密接な関連をもって原料、燃料、
電力、道路・港湾設備等を共有しながら立地する形態を言う。種々な業種のコンビナート
があり、例えば製鉄を中心とした鉄鋼コンビナート、食品関連の工場・流通関連を中心とし
た食品コンビナート、石油関連を中心とした石油精製・石油化学コンビナート等がある。最
近は液晶パネル製造、家電製品組み立てを中心とした液晶コンビナートが有名である。
本報告書が対象とするのは、上記のうち石油精製・石油化学企業のコンビナートであり、
現代日本のエネルギー供給を支える一方、自動車や家電製品の部材としてなくてはならな
い様々なプラスチックなどを供給する分野である。我が国の石油コンビナートの全体体系
ブロックを図3-1に示す。
日本は、石油精製・石油化学工業の原料となる原油の99.7%、年間2.4億 KL の原
油を大型タンカーにて中東等から輸入している。輸入された原油は、臨海工業地帯にある
製油所にて常圧蒸留塔と呼ばれる設備によって各成分に分離され、更に硫黄等の不純物が
除去されてガソリン、灯油、軽油、重油等として、自動車、暖房、発電所の燃料として使
われている。また原油を精製する際に副生するナフサは、製油所に隣接して立地する石油
化学工場に供給され、熱分解によりエチレン、プロピレン等の基礎化学製品となり、更に
様々な化学反応をへて各種の化学品、プラスチックの原料となる。
輸入ナフサ
石油精製
石油化学
ナフサ
(10%)
原油
(100%)
蒸留
精製
分解
ガソリン
(25%)
合成
化学品
合成樹脂
樹脂加工業
合成繊維工業
等
灯軽油、
重油等
(65%)
図3-1
我が国の石油コンビナート体系ブロック図
海外では石油精製企業が石油化学分野まで、または石油化学企業が石油精製部門までを
一貫して行う場合が多いが、日本では一部を除いて石油精製部門と石油化学部門は別な企
業体が運営している。しかしながらこのような形態では、エネルギー・留分の利用が最適
化されず、無駄が目立つ状況となってきた。このため最近は、石油精製企業と石油化学企
-9-
業にてそれぞれの熱源や留分を相互に活用してより付加価値の高い製品を製造する動きが
広がっている。更に、業種の違いを超えて電力などのエネルギー産業、鉄鋼業等と副産物
の相互利用、各種熱源、電力供給設備、道路・港湾等の物流設備の共有・連携による強化が
議論されている。
石油精製・石油化学工業は、主原料の原油が輸入に頼らざるを得ないことから主として
臨海工業地帯に立地している。しかし石油化学産業の下流部門にあたる樹脂加工業等の製
品は、大きく嵩張る事から消費者への物流が容易な消費地近く立地する場合が多い。大阪、
東京近郊にはこのような工場が数多く立地している。
3.2
(1)
石油精製業の現状
我が国の石油製品供給体制
石油は我が国の経済にとって必要不可欠なものであるが、我が国の99%以上は輸入に
依存しており、米国に次ぐ世界第2位の原油輸入大国である。
このように海外に原油を依存し、国内の石油製品需要への供給を安定的に行うためには
我が国の石油製品供給体制は、これまで国内生産を基本として、製品輸入は不足分を補完
する消費地精製方式を採用していた。
図3-2
我が国の製油所の蒸圧蒸留装置能力
- 10 -
石油業法廃止後も、供給安定性、供給効率性、品質確保の面から、原油を輸入し、精製
処理して石油製品を供給する消費地精製は現実的な方式として定着している。
我が国の石油製品需要は、高度経済成長と共に堅調に推移してきたが、2度にわたる石
油危機を境に、重厚長大産業傾斜の需要構造は大きく変化し、電力向け需要の大幅な減少
と LNG 化が進み、運輸部門、民生部門の需要が堅調に伸び、石油製品の需要構造は重油
から中間留分であるガソリン軽油、ガス等へ白油化が進んだ。
この間、日本の石油産業は国内の需要構造の変化に弾力的に対応するため重質油分解装
置等の2次装置を導入し、設備の高度化を図り石油製品の安定供給に対応できたのも消費
地精製方式によるものが大きい。
- 11 -
図3-3
(2)
原油処理能力と稼働率の推移
国際石油情勢
主要原油スポット価格、OPEC バスケット価格は2007年1月に1バレル55ドル前
後をつけた後、2007年は右上がりに上昇を続け、遂に年明けの2008年1月には一
時100.09ドルと初めて100ドルを超える値をつけ、1年間で実に40ドル以上の
値上がりとなった。更に2008年7月3日には米国原油 WTI は145.29ドルを記
録し、7月11日には時間外で147.27ドルを記録した。
この原油価格高騰は、中国、インド等の新興国の経済発展による石油需要増加傾向等の
ファンダメンタル面に加えて、イラク国内の混乱等産油国における地政学的リスクの高ま
り、米国メキシコ湾岸の原油生産施設を直撃したハリケーン、米国精製設備の老朽化によ
るトラブルが価格高騰の上昇要因となった。この原油価格上昇とサブプライムローン(米
国の低所得者向け住宅融資)問題に起因するドル安が、年金ファンド等の投機資金を株式
市場から金、原油等の現物市場に流入させる結果となった。このため、世界の原油取引の
指標となるニューヨークマーカンタイル取引所でのWTI原油取引は、これらの資金投入
によって記録的に大きく影響されることになった。
しかし、サブプライムローンの焦げ付き問題は、2007年に米国地方銀行の破産等に
よって顕在化したが、やがて、2008年夏ごろから世界の金融機関を連鎖的に波及して
きた。特に2008年9月の米大手証券リーマン・ブラザーズの経営破綻をきっかけに金
融市場が機能不全に陥り、世界の株安や金融機関の経営悪化などの混乱を招き、貸し渋り
や消費者心理の悪化を通じて、世界の経済活動に影響を及ぼして実体経済の悪化が始まっ
た。
この金融の信用収縮を受けた世界の急激な景気後退で、状況は一変、需要が急減したた
め、素材、最終製品を問わず広範囲にわたる製造業の生産設備に過剰感が強まった。石油
製品需要は2008年9月以降、急激に落ち込み、中東産油国の原産効果を上回る速さで
燃料需要、ナフサ等の原料需要が減退した。この石油製品需要の減退を受けて原油先物市
場は7月の最高値をつけた後、10月には100ドル台を割り、12月には40ドル台を
割り込む動きを見せ、リーマンショックから6割強も下がった。現在、2008年1月時
点では40ドル後半で推移している。
- 12 -
(3)
①
地球温暖化対策
製油所の地球温暖化対策
京都議定書は、大気中の温室効果ガスの安定化を目的とする「気候変動枠組条約」の内
容を具体化するため、97年12月の COP3京都会議で採択された国際条約で、先進国に
法的拘束力を持つ温室効果ガスの削減目標(2008年~2012年で90年比 EU8%、
米国
7%、日本
6%の削減)を定めた。
これを受けて、日本では地球温暖化対策推進法に基づく「京都議定書目標達成」(20
05年4月閣議決定)に従って、わが国の6%削減約束の確実な達成を目指している。石
油産業関連の対策としては、①コンビナート等における複数主体の連携②バイオ燃料の利
用促進③サルファーフリー燃料の導入④クリーンディーゼル車の普及⑤石油の効率的利用
の促進などを要請されている。
石油産業としては、地球温暖化対策は経済と環境の両立を基本原則として、経団連自主
行動計画の確実な達成に向けて、1997年2月に「石油業界の地球環境保全自主行動計
画』を策定した。
2010年度を目標年次に「製油所エネルギー消費原単位」の改善の
数値目標達成に取り組んでいる。特に製油所の省エネルギーについては、熱回収の高度化、
設備の効率化、最適化等の推進により、2006年度の「製油所エネルギー消費原単位」
で1990年度比15%改善した。
2007年10月、今後の石油需要の減少を踏まえ、2010年度までに製油所から排
出される CO2 を90年度比10%削減する目標を13%に引き上げた。
図3-4
②
地球環境保全自主行動計画
ガソリン・軽油のサルファーフリー化
ディーゼル車から排出される窒素酸化物(NOx)やすす・粉塵などの粒子状物質(PM)
による大気汚染の悪化が大きな社会問題となったため、1989年にディーゼルトラック
やバスから排出される NOx、PM を段階的に削減していく排ガス規制の強化が打ち出さ
れた。
石油業界は、それまで0,5%(5000ppm)以下であった硫黄分を92年から0.2%
- 13 -
(2000ppm)、97年10月から0.05%(500ppm)までに低減してきた。
2006年11月、DPF(ディーゼル微粒子除去装置)が前倒して実施されたことに伴
い、硫黄分を2004年末までに0.005%(50ppm)以下とする規制が設けられた。
石油業界は、軽油深度脱硫装置等の新設、脱硫設備の改造等、設備投資の前倒しによる
努力の結果、国の規制(2004年)より1年9ヶ月早い2003年4月から50ppm の
軽油の全国供給を自主的に開始した。
更なる低硫黄化に向けて、2002年1月の東京都の環境基本計画、2003年6月、
国の石油製品品質小委員会のガソリン、軽油のサルファーフリーの答申があり、石業界界
は世界に先駆けて2005年1月より硫黄分10ppm 以下のサルファーフリーガソリン、
軽油の全国供給を開始した。
ガソリン、軽油の硫黄分のサルファーフリー化は、自動車排ガス中の NOx、PM 排出
量の削減に貢献するだけでなく、排ガス処理装置の装備によって、エンジンの燃費性能が
最大限に引き出されて燃費の向上に役立ため、地球温暖化対策としての CO2 の削減に寄
与することになる。
③
バイオマス燃料の取り組み
農作物や木材等を原料とするバイオマス燃料は、燃焼時に発生する CO2 の排出量が計
上されないカーボンニュートラル効果の点から、地球温暖化対策には有効なエネルギーで
ある。
石油業界は、資源エネルギー庁の要請に基づき、2006年1月、この計画の実現に向
けて、バイオエタノール36万 KL(原油換算21万 KL)のバイオエタノールをバイオ
ETBE としてガソリンに配合することを決定した。
バイオ ETBE 方式は、エタノール直接混入方式と異なり、ガソリンのエタノールの相分
離によるオクタン価の低下や蒸気圧の上昇といった問題が発生することはないとされてい
る。
2007年1月、石油業界はバイオ ETBE 等の共同調査を行うための組合(LP)を設
立し、2007年4月からは、関東50箇所の SS でバイオ ETBE の試験販売を開始し、
2010年度の本格導入に向けて準備している。
④
新エネルギーへの取り組み
燃料電池は、効率が高く、環境への負荷が少ないため、家庭や自動車等への新しいエネ
ルギーの供給形態として期待されている。今後の普及に向けて、技術開発や実証試験など
国を挙げた取り組みが進められており、石油業界として、CO2 削減に貢献し、かつ石油系
燃料を有効に活用できるシステムとして、石油系燃料電池の開発、普及への取り組みを始
めている。
石油業界は、水素と空気中の酸素を反応させて作った電気でモータを回して走る、地球
に優しい燃料電池の普及に向けて、燃料電池車向けの水素製造技術を開発するとともに、
燃料の水素供給インフラである水素ステーションの実証を進めている。
(4)
①
規制緩和と石油産業
規制改革の進展
わが国の経済社会の国際化にあわせて規制緩和が進み、内外価格差の解消が課題となる
中で、石油産業に対する規制のあり方についても見直しが求められるようになった。その
- 14 -
結果、87年から92年にかけて、石油業法、揮発油販売業法に基づく行政指導・運用に
ついての一連の規制緩和が実施され、1996年4月、特石法の廃止によって石油製品の
輸入が自由化された。
特石法の廃止によって、わが国の石油政策は、従来からの安定供給の確保とともに、新
たに市場原理に基づく効率的供給の実現が目標となった。
更に規制緩和が進展し、2001年12月をもって石油業法が廃止され、わが国の石油
産業は名実共に自由化された。
②
自由化後の環境変化
規制改革、特に特石法廃止を契機として、わが国の石油産業は、流通市場において価格
競争が激化し、市況が低迷し、企業収益が悪化するなど、厳しい経営を余儀なくされてき
ました。このため、石油各社は、精製、物流部門の合理化・効率化や販売・管理部門を中
心とする大幅な人員削減、組織の見直しなど、経営全般にわたるコスト削減に取り組んで
きた。
③
石油産業再編、合理化・効率化の推進
わが国の石油産業は構造的に精製能力の過剰問題を抱えたままになっている。今後、少
子化問題等にも対応し、更なる合理化・効率化を図るため、石油精製・元売会社は再編に
向けた動きが継続進行している。1994年4月の日本石油と三菱石油の合併を契機に、
石油精製・元売会社は設備過剰問題を解消するため、業務務提携、物流提携、精製提携、
精製・物流提携、石油会社間の合併、製油所の統廃合の企業努力が引き続き行われている。
④
世界の動向を見据えた競争力・効率性の確保
2007年から原油価格の高騰によって石油製品価額が上昇しため、産業用燃料が重油
から LNG への転換や、若者の車離れを惹起した。このような原油価格の高騰は石油製品
需要を急激に減退させた。このような石油需要の中で、サブプライムローン問題に端を発
した信用収縮は全世界の実体景気を急激に悪化させ、世界の製造業の生産設備に対して過
剰感を日増しに強めている。
我が国においても世界の景気後退によって鉄鋼は設備の3割が、石油製品と石油化学は
2割が、乗用車についても設備能力の3割以上が過剰に陥った。石油製品の需要減が続け
ば、国内製油所の存立が危うくなるため、エネルギーの安定供給確保の視点から、経営資
源の効率化を目指した持ち株会社の設立、或いは石油精製と石油化学の設備との連携等こ
れまでの業界の垣根を越えた水平・垂直統合によるコスト低減、効率化を目指す動き加速
されると思われる。
(5)
石油備蓄
石油は、わが国の1次エネルギーの供給の約50%を占めており、その99%以上を輸
入に頼っているが、特に中東依存度は2006年度実績で約89%と、第1次石油危機直
前の1972年の81%を大幅に上回っている。
第1次石油危機後、IEA が発足し、加盟国に90日分の石油備蓄が義務付けられた。こ
れを受けて、わが国では1975年に石油備蓄法が制定され、民間備蓄と国家備蓄がスタ
ートした。
現在、国家備蓄は原油で5100万 KL あり、民間備蓄は70日分が義務付けられてい
るが、民間備蓄は、現状では備蓄日数を10日分以上上回って保有されており、石油備蓄
- 15 -
方式で計算すると182日分ある。
2004年8月末に米国南部を襲ったハリケーン(カトリーナ)被害への対応の際には、
IEA 全体の共同歩調を踏まえ民間備蓄から3日分の石油(ガソリン)を市場に提供した。
(6)
流出事故対策
石油連盟は、油濁防除用の資機材を備蓄し、災害関係者に貸し出すための基地を国内6
箇所、海外5箇所に設置している。
国内については、石油の海上輸送量が多い海域に位置している製油所に備蓄基地を設置
し、万一の油流出事故に備え、24時間出動体制を構築している。
海外については、中東産油国からわが国に到るオイルロードに沿って、マラッカ海峡の
シンガポールとマレーシヤ、インドネシア、サウジアラビア、アラブ首長国連邦にそれぞ
れ基地を置いている。
- 16 -
図3-5
(7)
①
内外備蓄基地
製油所、油槽所、石油基地の耐震対策
短周期地震動対策
石油業界の多くのタンクは、昭和52年の消防法の技術上の基準が強化される以前に設
置されている。近時、大規模地震の危険性が指摘される中で、大量の危険物を貯蔵するタ
ンクについて、地震対策の一環としてこれらのタンクに対して地震時安全対策確保の要請
が社会的に強まっている。
石油業界は、消防法令に基づき、「タンク本体」とその「基礎・地盤」について耐震性
の安全性評価を行い、評価基準に適合しないタンクについては開放検査の時期を捉え、貯
蔵量の大きい容量 10,000KL 以上のタンクから優先順位をつけて耐震改修を実施してきて
いる。
容量 10,000KL 以上のタンクについては、平成21年12月31日までに、容量 1,000KL
以上のタンクについては平成25年12月31日までに実施することになった。また、
500KL 以上の比較的小さなタンクについても、平成29年3月31日までに実施すること
- 17 -
になっている。
しかし、地震対策の一環として短周期地震動対策の改修時期についても前倒して実施す
るよう消防法令が改正され、石油業界のタンクは、比較的余裕を持って改修を進めてきた
ため平成21年1月時点では既に100%に近いタンクが耐震改修を完了している。
②
長周期地震動対策
平成15年9月に発生した十勝沖地震で励起された長周期地震動による浮き屋根タン
クの火災事故等の発生を受け、長周期地震動に対しても耐震対策を講ずることになった。
消防法令が改正され、長周期地震動が励起するとされる区域に設置されたシングルデッ
キの浮き屋根タンクで、容量 20,000KL 以上のタンク、及び液面揺動高さが2m以上の容
量 20,000KL 未満で容量 1000KL 以上のタンクについては長周期地震動による液面揺動が
発生しても損傷を生じない屋根に耐震改修することになった。
また、容量 1000KL 以上の浮き屋根に対しては浮き屋根が沈下しないように浮力向上対
策を講じることになった。以上のタンクについては平成29年3月31日までに耐震補強
工事を完了することになっている。
また、長周期地震動によってタンクから油が逸流しないように、長周期地震動が励起す
るとされる区域に設置された容量 1000KL 以上の浮き屋根タンクも含めたすべてのタンク
について、平成19年4月より、液面低下措置を強化している。
石油コンビナート等災害防止法令が改正され、浮き屋根タンクの全面火災発生時の防災
体制を強化するため、電力業界、石油化学業界、国家備蓄基地と協力しながら全国12ブ
ロックの広域共同防災組織等に大容量泡放射砲のシステムの配備を進めている。
引用文献
3.3
石油化学工業の現状
(1)
石油化学工業の概要
「今日の石油産業2008」石油連盟
石油化学工業は石油、または天然ガスなどを出発原料とする化学工業の一分野であり、
合成繊維、合成樹脂、合成ゴム工業等の最上流部に位置している。
日本やヨーロッパにおける石油化学は、原油からガソリンを製造する際に副生するナフ
サを主原料にしている。ナフサを高温で熱分解するとエチレン、プロピレン、ブタジエン、
ベンゼン等の様々な留分が一定の比率で連産品として得られ、さらにそれらに様々な化学
反応、分離、精製を行うことによって各種の化学製品、合成樹脂の原料を製造している。
これに対して、中東、アメリカ等の産油国では、原油採掘の際に得られるエタンを主成
分とする随伴ガス等の天然ガスを主原料にしている。随伴ガスの場合もナフサと同様に高
温で熱分解を行うが主にエチレンのみが得られる事が異なる。一般的に天然ガス原料の場
合は、付加価値の高い連産品が得られないが、単純なプロセスとする事ができる。
- 18 -
石油化学工業
石油化学誘導品
合成樹脂
石油化学基礎製品
エチレン
石油精製
ナフサ
エチレングリコール
テレフタール酸
アクリロニトリルなど
プロピレン
ブタジエン
ベンゼン類
(20)
注;( )内の数字は原
料ナフサを100とし
たときの得率を表す
繊維工業
合成ゴム
(10)
(100)
樹脂加工業
合成繊維原料
(30)
(20)
原油
ポリエチレン
ポリプロピレン
ポリスチレンなど
水素・重質油他
(20)
スチレンブタジエンゴム
ブタジエンゴムなど
塗料原料・溶剤
酢酸エチル
ポリウレタンなど
ゴム工業
塗料工業
合成洗剤原料
アルキルベンゼン
高級アルコールなど
図3-6
洗剤工業
石油化学工業の製品
石油化学から得られる化学製品、合成樹脂の原料は様々な産業の基礎素材であり、液晶
テレビやパソコンに使われる各種の特殊フィルムや部材、自動車の内装材、リチウム電池
の部材、各種の家庭用品、衣料品等となって現代の私たちの生活になくてはならないもの
となっている。
また、生活の利便性を高めるだけでなく、その優れた性質を生かして炭酸ガスの削減に
よる地球環境を守ることにも大きな貢献を果たしている。車のバンパー、内装、ガソリン
タンクには多くの合成樹脂が用いられ車の軽量化を通じて燃費の向上に効果を発揮してい
る。また最近着目されている樹脂サッシは、合成樹脂の熱を伝えにくい性質を利用したも
ので、窓枠から冷暖房の熱が外気に逃げることを防止する働きがある。この結果、建物の
冷暖房効率が上がり冷暖房による炭酸ガスの発生を抑制することが可能となる。
日本の石油化学は様々な産業分野に広く基礎素材を提供しているが、石油化学からの高
機能材料が日本の優れた工業製品の国際的な競争力の源泉となっている
(2)
石油化学コンビナート
石油化学のプラントは、ナフサを熱分解するエチレンプラント、エチレンプラントから
のエチレン、プロピレン、ブタジエン等を原料として誘導品である各種の化学品、合成樹
脂を製造するプラントがある。これらのプラントが集まっているコンビナートには、エチ
レンプラントと各種化学品、合成樹脂のプラントが同じ地域で互いにパイプで結ばれて、
相互に関連しながら操業を行っているタイプとエチレンプラントからの基礎化学品や誘導
品をパイプや船で供給を受けて更に各種の反応を行わせて化学製品を製造するタイプがあ
- 19 -
る。
国内にはエチレンプラントを有する石油化学コンビナートが13箇所にあるが、隣接す
る石油精製企業の製油所からパイプ等でナフサの供給を受けるとともに不足分は輸入ナフ
サを用いている。国産ナフサと輸入ナフサの割合は各社によって異なるが、平均すると約
50%が輸入ナフサである。石油化学コンビナートではナフサ分解の各留分を原料として
各社の技術に基づいた合成樹脂、各種誘導品を製造しているが、各コンビナートによって
それぞれ特徴ある組み合わせとなっている。また各種誘導品は、独自の技術に基づいた個
別の企業が製造している場合が多く、日本の石油化学コンビナートは各種企業体の集合体
であることも特色のひとつである。
出典;石油化学工業協会編
図3-7
石油化学工業の現状
コンビナート所在地及びエチレンプラント生産能力
日本の石油化学プラントは、すでに40年近く運転しているところが多いが、個々の機
器や配管類は部分的に更新が行われ安定安全操業の確保を図っている。プラント内の各機
器の劣化状況はそれぞれ異なっており、今後とも様々な検査によって適切に設備保全が行
われ、安定安全操業を維持することがきわめて重要である。
(3)石油化学プラントの操業の特徴
石油化学プラントは2年または4年毎の定期修理で停止する以外は24時間連続の運
転を行っている。プラント内の各所に設けてある温度計、圧力計、流量計によって運転状
況を制御室のコンピュータで常時監視するとともに自動調節弁等によって流量や圧力や温
度の調節を行っている。また反応状況や製品品質を管理するために自動分析計を設置して
ある場合も多い。
石油化学プラントは多量の高圧ガス等を扱っており、立地、運転、保全・施工に際して、
高圧ガス保安法、消防法、石油コンビナート等災害防止法、労働安全衛生法の規制を受け
- 20 -
ている。これらを遵守しながら適切な設備管理を行い、安定安全運転を実現する事が最重
要である。また排ガス中の煤塵、硫黄酸化物や排水中の有害物等を取り除き環境を守るた
めの設備も数多く使用しており、これらの適切な操業、設備の維持管理も極めて重要であ
る。
(4)最近の生産状況
石油化学ではナフサや天然ガスを原料に様々な基礎化学品や各種の誘導品を製造して
いるが、石油化学全体を表す場合は、基礎化学品の代表であるエチレンの生産量で表現す
る場合が多い。世界全体では、年間約1.3億トンのエチレン生産能力があるが、アメリ
カが世界最大の生産国であり約30百万トンの能力を持っている。日本は中国、サウジア
ラビアに次いで世界第4位の約770万トンの生産能力を有している。
国内の石油化学各社は、自動車や電気製品の旺盛な需要に支えられてフル操業を続けて
きたが2008年秋からの景気後退で大きな影響を受けており低稼働を余儀なくされてい
る。
9,000
700
8,000
600
エ
チ
レ
ン
生
産
量
4,000
千
T
/ 3,000
年
千
T
/
月
500
400
(
7,000
エ
チ
レ 6,000
ン
生
産 5,000
量
300
200
(
)
)
2,000
100
1,000
0
08
年
1
08 月
年
20 2
08 月
年
20 3 月
08
年
20 4 月
08
20 年5
08 月
年
20 6 月
08
年
20 7 月
08
20 年8
08 月
20 年9
08 月
年
20 1
08 0 月
20 年1
08 1 月
年
20 12 月
09
年
1月
20
20
20
08
年
20
07
年
20
06
年
20
05
年
20
04
年
20
03
年
0
出典;経済産業省生産動態統計よりグラフ作成
図3-8
最近の国内エチレン生産量
- 21 -
3.4
プラントエンジニアリング業の現状
(財)エンジニアリング振興協会が平成20年度に67社のエンジニアリング関連企業
へのアンケートを基に調査研究を行った「エンジニアリング産業の実態と動向」を中心と
してエンジニアリング業の現状をまとめた。
3.4.1
エンジニアリング産業の概況
平成19年度のエンジニアリング産業の環境はそれまでの世界同時好況の様相から大
きく変化し、インド、中国等の経済成長に伴う天然資源の需要の高まりと米国のサブプラ
イムローン対策とがからんで実態経済とはかけ離れた価格暴騰を引き起こして原油価格
は100ドルを超えた。
平成20年の後半になり金融危機により大きく経済情勢は落ち込んだが、エンジニアリ
ング産業の今年度の業績には当面、大きな影響はなさそうであるが、各種プラントの建設
の延期や中止がでてきており新規受注の先行きは不透明である。
この状況の中、今後手すきになることが予想され、各社ともFPSO(浮体式石油生産・
貯蔵・積出設備)、炭酸ガス回収・貯留+EOR(石油増進回収法)、資源開発、造水・電力
事業、O&M(オペレーションとメンテナンス)事業、水処理、交通インフラ、新エネル
ギー分野、等の新規事業の検討を行っている。
3.4.2
(1)
エンジニアリング産業(専業大手・専業中堅)の動向
専業大手エンジニアリング企業
平成19年度は産油国等での高いエネルギー価格に支えられて、多くの設備投資が計画
される一方、資機材の高騰や熟練労働者の逼迫等のリスクを見極めながらも堅調に推移し
ている。
受注の見通しとしては、消費の冷え込みなどが懸念されるがエネルギー需要は引き続き
高いと予測している。海外の売り上げ比率が80%を超えて高いところから、産油国を中
心として子会社設立等の海外拠点の整備が進んできている。
将来への課題としては、①新規事業の展開、②既存事業の深耕、③コーポレートガバナ
ンスの重視、④リスクマネージメントの強化、⑤環境問題への貢献、などを上げており事
業分野拡大とCSRを中心とした社会貢献の視点の重要性が高まっている。メンテナンス
の目指す、安心・安全の確保と立場は異なるが、方向は一致している。
今後の展望としては、世界のプラント市場は石油・ガス・資源開発・LNG・石油精製、
等で旺盛な設備投資が続くと予測しており、各社はその前提で経営戦略をたてている。 共
通していえることは①人材確保のためのマンパワーリソーシズ拡大、②新規分野の開発と
展開、③エネルギー関連でGTL、DME、重質油改質への展開、④O&Mサービス、I
Tサービスへの展開、⑤国内対応としての「顧客支援型サービスの推進」等である。また
特筆されるのは千代田化工建設が三菱商事(株)との資本業務提携を行いプラントエンジ
ニアリング分野において機能統合と両社の成長戦略を追求、他社との差別化をはかってい
ることである。
(2)
専業中堅エンジニアリング企業
専業中堅エンジニアリング企業とは①化学、繊維、石油、ガス、窯業、非鉄金属のユー
ザ関連エンジニアリング企業、②重電、鉄鋼等の大手製造会社やエンジニアリング会社の
関連エンジニアリング企業、③山九(株)や新興プランテック(株)等の独立系企業を含
- 22 -
んでいる。
中堅エンジニアリング専業企業は専業大手エンジニアリング企業と比較して国内比率が
90%近くと高く、今後もこの傾向は続くものと思われる。また、専業エンジニアリング
企業が海外工事の60%以上を中近東対象としているのに比べ、専業中堅エンジニアリン
グ企業は東アジア対象が40%を超えるという違いがある。
平成19年度は堅調に推移しているが、サブプライム問題による経済環境の落ち込みに
より先行き不透明である。
将来への課題としては、①人材と技術でもっている企業であるために現在の問題でもある
労働力・人材の確保と技術の伝承が最優先課題である。②将来への架台として「環境問題
への貢献」が言われている。企業のCSR(Corporate Social Responsibility)が高まる
中で自社の問題であると同時に大きなビジネスチャンスとみている。そして、③新規事業
の展開、④研究・技術開発の強化、⑤リスクマネージメントの強化が言われている。
3.4.3
石油コンビナートの市場動向
原油の高騰に伴う世界的な金余り状況を背景にしてプラント業界は空前のブームを謳
歌してきたが、米国のサブプライム問題が予想以上に深刻であることが明らかになり、エ
ンジニアリング産業のブームも終焉に向かっている。
石油コンビナート(石油化学・石油精製)は米国のサブプライム問題で市場が不透明で
信用不安が広がってはいるが、中国をはじめとするBRICs諸国では堅調に推移するも
のと予想されている。また各社ともエネルギー需要は引き続き堅調との認識はあるが、当
面の受注動向は不透明である。手すきがでてきた場合はメンテナンスを含めた新規市場を
求めることが予想される。一方環境への影響が叫ばれ、環境保護への取り組みが迫られて
いる。
高度成長以来40年を超えた高経年化プラントが国内には多くあり、新規設備への更新
計画はあまりなく、長寿命化の方向にありメンテナンスはより重要になってくると思われ
る。
3.4.4
(1)
エンジニアリング産業の課題とこれからの方向
エンジニアリング産業の課題
(財)エンジニアリング振興協会では平成10年頃からエンジニアリング産業の課題に
ついてのアンケート調査を継続的に行っている。表3-1に平成18年度、19年度にお
ける「現在の課題」と「将来への課題」を示す。人材、技術、新規事業、マネージメント
が上位を占めている。特徴的なものは将来課題としての環境関連への貢献が上位を占めて
いるのが注目される。
また、表3-2に平成10年度よりの「現在の課題」の変遷を示す。この中で第1位の
課題は10年前の平成10年度は「国内営業力の強化」でここから6年間ぐらいは上位を
占めるが、平成13年度から3年間は「新規事業の展開」第1位を占めている。しかし、
平成17年度からは「人材・労働力の確保」が10年前の10位以下から第1位になって
きている。これらは企業の課題は企業環境に大きく左右されることを示している。
- 23 -
表3-1
現在の課題と将来の課題
現在の課題
項
目
平成19年度
順位
将来の課題
平成18年度
平成19年度
平成18年度
構成比
順位
構成比
順位
順位
13.5%
3
9.9%
3
10.8%
構成比
構成比
労働力・人事の確保
1
14.0%
1
研究・技術開発の強化
2
11.7
4
9.7
1
13.9
2
11.6
リスクマネジメントの強化
2
11.7
2
12.3
5
8.5
4
8.7
国内営業力の強化
4
10.3
3
10.8
9
5.7
6
5.4
既存事業(製品)の深耕
5
7.5
6
7.2
10
3.5
13
3.2
人事・組織の活性化
6
6.8
6
7.2
6
6.7
6
5.4
新規事業の展開
7
6.4
8
6.1
2
13.5
1
13.0
海外営業力の強化
8
6.0
5
7.9
7
6.0
5
7.2
グループ力の強化
9
5.3
9
5.1
7
6.0
6
5.4
財務体質の強化
10
3.9
16
1.8
14
2.5
17
2.2
コーポレートガバナンスの重視
11
3.6
10
4.0
16
1.8
12
3.6
事業再編
12
2.8
13
2.5
12
2.8
13
3.2
アウトソーシングの重視
13
2.5
11
2.9
16
1.8
15
2.9
アライアンスの重視
13
2.5
11
2.9
11
3.2
10
5.1
環境問題への貢献
13
2.5
13
2.5
4
8.9
6
5.4
高度情報システムの構築
16
1.4
15
2.2
14
2.5
11
4.0
その他
17
0.7
17
0.7
18
0.0
18
0.0
企業の社会的貢献
18
0.4
17
0.7
12
2.8
15
2.9
出展:(財)エンジニアリング振興協会平成20年度報告書
表3-2
エンジニアリング産業の課題の推移
国内営業力
新規事業
リスクマネージメント
労働力・人材
の強化
の展開
の強化
の確保
平成10年度
17.9%(1)
11.0%(3)
4.6%(8)
4.0%(10)
平成11年度
14.0%(1)
12.0%(2)
6.1%(7)
3.1%(14)
平成12年度
9.2%(4)
12.1%(1)
6.9%(7)
4.0%(12)
平成13年度
10.6%(2)
11.9%(1)
7.9%(5)
3.6%(12)
平成14年度
11.9%(1)
11.9%(1)
7.5%(6)
7.2%(7)
平成15年度
12.2%(1)
10.2%(2)
8.8%(5)
6.8%(8)
平成16年度
13.2%(1)
9.7%(3)
10.4%(2)
9.7%(3)
平成17年度
11.5%(3)
5.6%(8)
12.2%(2)
13.1%(1)
平成18年度
10.8%(3)
6.1%(8)
12.3%(2)
13.5%(1)
平成19年度
10.3%(4)
6.4%(7)
11.7%(2)
14.0%(1)
項
目
出展:(財)エンジニアリング振興協会平成20年度報告書
- 24 -
第4章
プラントメンテナンスの現状
4.1
プラント高経年化
製造業の設備の老朽化を示す指標には、ビンテージ(設備の平均年齢)の推移と、業種
別実質ビンテージの推移などがある。ここでは業種別比較や同一業種の異時点比較の際な
ど、業種や時点によって設備の構成が違い、平均耐用年数が異なることや、同一設備でも時
点によって耐用年数が変化するため、ビンテージの高低のみから設備の老朽化の度合いを
測ることはできない。例えば、建物と機械設備であれば耐用年数は一般的に建物の方が長い
ため、機械設備に比べ建物比率が高い業種では必然的にビンテージが高くなるが、その業種
の平均耐用年数から考えれば、老朽化が進んでいるとは必ずしも言えない。そこで、ビンテ
ージをそれぞれの業種の平均耐用年数で除すことで業種同士におけるビンテージの比較を
可能にした。
図4-1
業種別実質ビンテージ
業種別実質ビンテージが、製造業平均(黒線)より高い業種と低い業種に分けてみる。
高い業種:グラフの上から石油・石炭製品、繊維、窯業・土石製品、鉄鋼、化学
低い業種:グラフの下から電気機械、非鉄金属、輸送機械、一般機械
実質ビンテージの高い業種は、素材型業種が多く、低い業種は加工型業種が多い。設備
投資は、耐用年数を迎えることによる更新投資に加え、物理的に耐用年数に至らなくても、
新製品・製品高度化によって技術的な耐用年数を迎えることにより更新投資が考えられる。
新製品、製品高度化の余地が相対的に少ない素材型業種では、物理的耐用年数まで設備を
使用できるため実質ビンテージが高くなり、新製品・製品高度化の激しい加工型業種では技
術的な耐用年数で設備を更新するケースが多く実質ビンテージが低くなると考えられる。
我が国の素材型業種の実質ビンテージは図4-1に示すように高くなっているが、この
物理的耐用年数は適切なメンテナンス実施で延長できることは明らかであることより関係
者の更なる取組向上が期待される。
4.2
(1)
コンビナートにおけるプラントメンテナンス
プラントメンテナンスの状況
- 25 -
ここでは、プラントメンテナンス業の立場から記述する。
プラントメンテナンス業は、主として、石油精製、化学、製鉄、発電等の装置、工作物
その他機械類の複合体(以下「プラント」という。)の性能を維持・改善することを目的に、
設備管理、保全、整備、改善などの技術サービスの提供を行っている。プラントメンテナ
ンス業はこれらのサービスを提供することで、製造業をはじめとした我が国産業全体の生
産性の維持向上に重要な役割を担っている。
その市場環境は、日本メンテナンス工業会の調査によると、2006年度の売上高は約
8600億円(業種別売上高、図4-2)で、2003年度の6200億円から増加傾向
にある。
この背景としては、国内プラントの老朽化が進行する中、ここ数年間の堅調な景気動向
が下支えとなり、製造業を中心としてプラントの修繕や更新が積極的に行われていること
にある。そうした中、プラントメンテナンスの需要は、足下においては増加傾向にあるも
のの、中長期的に見れば、他産業の需要動向やプラントの定期点検の周期などに影響され
る面も多く、現在のような増加傾向が当然のように継続するわけではないと見込まれる。
なお、下図の化学、石油・石炭の売上がコンビナート売上に相当。
化 学
2,309
鉄 鋼
2,004
石油 ・石炭
1,019
公共施設
902
電力 ・ガス
メンテナンス
829
電気機器
売上高 8,574 億円
244
機 械
177
紙 ・パルプ
108
薬 品
106
非鉄金属
103
n 数 68 社
その他
683
0
500
1000
1500
2000
2500
出所:日本メンテナンス工業会 2007 年度版メンテナンス・サービス企業の実態調査報告書
図4-2
(2)
業種別売上高(単位:億円)
メンテナンス形態
コンビナートにおけるメンテナンスは、大きく次の二つに分類できる
・日常保全
-主にプラント稼動中に実施する
・定期点検修理
-装置を停止して実施する
日常保全は定期点検修理と比較すると日常的に安定的な需要があることで雇用が安定
している。一方定期点検修理は、エネルギー需要に連動する形で電力、石油精製や化学プ
ラント(コンビナート)が稼動するため、プラントの定期点検修理の時期が閑散期で
あ
る春と秋に集中(図4-3)する。さらに定期点検修理周期が規制緩和により毎年実施か
ら2年周期さらに4年周期化することに伴い、プラントメンテナンスの需要も大きく変動
- 26 -
するため、当該プラントが立地する周辺地域の中小の事業者に外注が集中し、外注先の確
保が困難となる。また、外注先では技術や技能の蓄積されず、専門人材の育成の観点から
も障害となっている。
100
75
50
25
0
2004
2005
2006
2007
2008
大手プラントメンテナンス企業2社の要員山積み最大値を 100 として表す
図4-3
(3)
石油コンビナートメンテナンス従業者季節変動イメージ
人材の現状
我が国の労働力人口は2006年段階で6657万人である。今後団塊世代(1947 年~
1949 年生まれ)約646万人のリタイヤ(図4-4参照)及び少子高齢化で労働力人口が
減少傾向で推移する。
推計では労働市場への参加が進まないケースでは2015年には
2006年と比較して約420万人減少、長期では2030年までには約1000万人減
少すると見込まれている。
出所:厚生労働省・雇用政策研究会報告「人口減少下における雇用・労働政策の課題」
図4-4
団塊世代のリタイヤ
プラントメンテナンスは人の技術・技能に依るところが多く、日本メンテナンス工業会
の2006年度版調査では68社で直接雇用約2万人、安定的に起用している外注の要員
は約1.5万人となっている。このような中、メンテナンス現場の環境は社会環境変化、
- 27 -
労働安全衛生意識の高まりなどで改善は進んでいるものの多くは3K(きつい、汚い、危
険)で若年者雇用が難しい状況に変わりはない。
前項で述べたコンビナートの定期点検修理においては需要の季節変動により安定雇用
が難しいことなどより高齢化が著しく(図4-5参照)労働人口減少を見通した取組み着
手が急務である。
n数 13,043 人
出所:日本メンテナンス工業会、(社)日本プラントメンテナンス協会連名
『メンテナンス外注業務』監督者・作業員の職種年齢構成調査、調査報告書
図4-5
4.3
コンビナートの定期点検修理従業者年齢構成
労働安全
平成18年4月1日に施行された改正労働安全衛生法「第 28 条2」で、事業者が「危
険性・有害性等の調査及び必要な措置を実施する」ように努めなければならないようになっ
た。
改正の背景としては、近年重大災害の発生件数が増加傾向にあり、また大規模製造業に
おいて爆発・火災等の重大災害が頻発した要因の一つとして、事業場内における設備や作業
の危険性・有害性の調査(リスクアセスメント)とそれに基づく対策の不十分さがあげら
れているところ。また生産工程の多様化・複雑化が進展するなど、事業場内の危険・有害要
因が多様化し、その把握が困難になっている現状においては、
「労働安全衛生法令の危害防
止基準を遵守するだけでなく、企業が自主的に安全衛生水準を向上させるため、危険・有害
要因を特定し、それぞれのリスクを評価し、これに基づきリスクの提言措置を実施する手
法を導入することが必要である」との認識に基づくものである。
従来、我が国においては、優秀な労働者をベースにした「現場の感性」「注意力を高め
る精神的教育訓練」「自主管理重視」等による「災害ゼロの絶対安全」が志向されてきた。
しかし「雇用の流動化、就業形態の多様化」
「団塊世代の大量退職、若手人材不足」等の背
景から、労働災害の更なる減少を図るためには「計画-実施-評価-改善」という一連の
過程を定めた「労働安全衛生マネジメントシステム」の運用と「リスクアセスメント」の
実施が重要である。
4.4
政府の取組
我が国のサービス業は雇用やGDPの約7割を占めているが、その生産性は製造業と比
べて低く、また米国の 6 割程度の水準にとどまっている。我が国経済の成長にサービス業
- 28 -
の生産性向上は重要な課題であるとの認識の下、産業活力再生特別措置法が一部改正(平
成 19 年)されサービス業も適用されることとした。
これを受け、経済産業省において日本標準産業分類改定(平成 20 年 4 月適用)でサー
ビス業の中に例示されたプラントメンテナンス業について更なる生産性向上が必要である
として、経済産業省告示第231号(平成 20 年 10 月)「プラントメンテナンス業の活力
の再生に向けた基本指針(事業分野別指針)」を示し、その生産性向上に向けた支援に取組
んでいる。
事例:
・経済産業省/産学官連携
コンビナートにおけるメンテナンスなどへの RT の利活用
・経済産業省/平成 20 年度中小企業支援調査
プラントメンテナンス業における業務の平準化に関する調査
・経済産業省/独立行政法人産業技術総合研究所
サービス工学研究センター設立
-サービス生産性向上に科学的・工学的手法の導入へ-
参考文献:・経済産業省告示第 231 号(平成 20 年 10 月)
プラントメンテナンス業の活力の再生に向けた基本指針(事業分野別指針)
・独立行政法人産業技術総合研究所ホームページ
・経済産業省ホームページ/業種別実質ビンテージ
・日本メンテナンス工業会(2008 年 9 月発行)
メンテナンスにおけるリスクアセスメントの指針
- 29 -
第5章
5.1
(1)
プラントメンテナンスへの新しい視点
なぜRT×プラントメンテンナスなのか
役に立つRTとは
第2章で述べたように、今回の調査ではイノベーションを起こす方法論としてRTを位
置づけることが新しい視点である。産業用ロボットは自動車産業をはじめとして成長して
きた。今回の調査では、その次に繋がる、様々な分野で活用されるRTの議論である。こ
のロボット分野では現状において、未だ実用化で、ブレークスルーが起きているとは言い
がたい。今回、プラントメンテナンスという社会的ニーズも高く、また屋外という過酷な
現場をフィールドに設定することで、具体的なニーズに対する課題解決手段としてのRT
の活用プロセスを提示したい。
一方、プラントメンテナンスに携わる方々にその活用の方策をイメージしていただき、
他方、RT分野の方々には、フィールドを設定した課題解決へのソリューションとして提
案していくプロセスをイメージしていただいて、両者の交流から今後、様々な具体的なア
プローチやプロジェクトが生まれることを期待するものである。
(2)RTの魅力
RTとは、ロボット開発に必要な技術の総称であって、何か特別の新しい技術群が存在
するわけではない。むしろ、現在、様々な分野で安定的に使われている技術が基礎となる。
(Mechanics 系技術
Electronics 系技術
Information Technology 系)
そしてなにより、ロボットの大きな魅力はロボットアーキテクト・ロボットインテグレ
ーションにあるという考え方を提示したい。ロボットアーキテクトは未だ確立した考え方
があるわけではないが、社会動向を把握した設計思想であると捉えることができる。そこ
には、単なる仕様作成ではない、社会への提言力が含まれている。言わば今までのアプロ
ーチとは違う解決策を工学的なアプローチで示すものである。このような提言的なアプロ
ーチが発想の転換を促しイノベーションを起こす源泉となる。また、ロボットアーキテク
トを実現可能な仕様に落とし込むプロセスがロボットインテグレーションである。
RTには様々な要素技術が含められており、技術動向に対応した上で要素技術を把握し
て仕様として明示される。さらに試作機の開発、実証実験を通じた実用化を可能とする実
践力が求められる。これらロボットが今まで培ってきた魅力をプラントメンテナンスに注
入することで何ができるか、どうゆう方法が有効か、今後具体的な課題解決へのプロジェ
クト組成として明らかになることを期待するものである。
5.2
(1)
プラントメンテナンスのパラダイム変換
~考え方(文化)の変換~
RTをプラントメンテナンスに導入する意義
第4章プラントメンテナンスの現状にもあるように、様々な課題が存在する。現状のプ
ラントメンテナンスは稼動後30年以上経過という誰も経験したことのない未知の領域で
あり、定期修理に関しても多くの課題が指摘されている。
しかしながら、現在、メンテナンスは充分成果をあげており、機能している。大事な視
点は今後、我が国が直面する課題に対して果敢に今から挑戦して準備を行うことにある。
人とシステムや機械との役割分担をどう捉えるのか、また、労働環境を改善し、これから
- 30 -
のメンテナンスを支える若者の価値観にもフィットする新しい手法を開発することである。
これらは、これからのメンテナンスをどう捉えるかというパラダイム変換であり、経営者、
現場の技術者がどう考えるかという考え方(文化)の変換でもある。
経済産業省においても平成20年度産業構造審議会「新成長政策部会・サービス政策部
会
サービス合同小委員会」においてプラントメンテンナス業は11の分野のひとつとし
て分析され、生産性向上に向けた検討がなされている。
従来の発想の延長上や手直しでは競争力の維持は難しく、RTがプラントメンテナンス
に導入されることで新しい工学的なアプローチとして機能できればと成功と言えよう。
(2)
①
イノベーションを促す8つのキーワード
メンテナンスフリー
メンテナンスフリーは究極の目標である。大前提としてメンテナンスフリーを意識しな
がら課題を捉えることが重要である。
②
リアルタイム・24時間
定期修理が法改正で間隔が延びるに伴って、操業中のリアルタイム、24時間のセンシ
ングの重要度が相対的に高まっている。また、操業中のメンテナンスのニーズも顕在化し
てきている。こういった中で、どのようなデータをどのタイミングでどの間隔でとること
が現実的なのかを定量的に明らかにして、基準化、標準化することが重要である。
③
メンテナンスしやすい機器設計
現状のメンテナンス工程においては、使用する機器は人がメンテナンスで行うことを前
提に設計されてきた。今後は、機械化、自動化と人が担う役割との分担を充分反映した機
器設計が求められる。
④メンテナンスの手法やプロセスの再構築(安心・安全とのバランス)
メンテナンスにRTを導入することで、プロセス自体を再点検して、コスト削減や工期
短縮といった今後の強いニーズへの対応と安全・安心とのバランスのとれた手法構築が求
められている。
⑤製品を生産する手法や過程の見直し・再構築
メンテナンスのプロセスを見直すことで、製造プロセスへこれをフィードバックして、
予防保全の考え方やファシリティマネージメントの視点を経営、現場双方が共有して一体
となって競争力強化へ向かうことが求められている。
⑥汎用性か、一品ものか
ロボットは汎用性のあるシステムであると捉えられている。もちろんその側面もあるが、
実際の課題に対応して解決することも重要である。一品ものを追求することで、まず、実
績をあげることが現状は優先されるべきである。
⑦次代を担う若い世代に共感される価値の提供
実際の次代のメンテナンスを担う若年層がモチベーション高く取り組める運用手法の開
発も重要である。例えば、工程をインクリメンタルに進め、具体的な中間成果を可視化す
ることで意欲を維持し、新しい技術を現場が使いこなすような仕掛けである。
⑧安全・安心・健康・環境
人とシステム、機械、ロボットとの役割分担でどう安全・安心を確保するのか、また働
く人々や周辺住民、製品を活用する様々な企業、消費者の健康と環境に対する視点も重要
- 31 -
である。
(3)具体的な課題からプロジェクト化への2つの方向性
①
以前から課題として認識されていて、また、開発に取り組まれたがハードルの高い
課題
保温上からの配管腐食・劣化・亀裂検査や足場を組まない高所での検査などは全国のコ
ンビナートで共通の課題となっており、解決策についても議論がなされてきた。またこの
調査でも報告されている鹿島コンビナートでの取り組みなど、これまでも様々な技術を応
用した事例が報告されている。一方、技術的な課題、コストの課題、運用手法(抜き取り
検査、スクリーニングから全面検査へ)の課題などが充分解決されたとは言えず、ニーズ
も大変高い。こういった課題には果敢に取組むべきであり、トータルなアプローチを検討
しながら実用可能な機械化、自動化が期待されている。
②
検査やメンテナンスの前工程や後工程(比較的技術的なハードルが低い課題も含
む)などで、充分対応できていない課題
清掃作業や補助的作業(作業員の負担軽減)などのニーズにも積極的に取組むことで、
総合的な競争力強化が実現するものと考えられる。
5.3
生産性向上へ向けた人と技術の役割分担の再定義
(1)
少子高齢化や過酷な作業環境
今までも述べてきたように少子高齢化といった要因に加えて、作業環境を改善すること
は急務である。
人と技術のどちらかに期待するのではなく、技術革新に伴って、人と技
術の役割分担についても更新されていくことが必要である。ロボットにおいても「完璧な
自動機械」としてではなく、安定的にサービスを提供する機械として、人との関係性が常
に問われてくる。また、人も機械に任せっきりになると、責任感を持たなくなり、トラブ
ルの際に迅速、的確な判断ができなくなることは明らかであろう。
(2)
安全管理
技術やシステムが更新された際には、その運用方法も更新されなくては生産性の向上は
実現されない。また、人材についても職務遂行能力やモチベーションが一定でない現状を
踏まえて、現実に即した「現場の力」と「技術やシステム」の共生によって実現する安全
管理についての視点が重要である。
5.4
異業種・他分野の技術交流の必要性
(1)
異業種・他分野との交流
誰も踏み込んだことのない未知の領域は他にも存在する。その具体的なフィールドとし
て、高速道路の路面、のり面、盛り土の経年変化、トンネルの壁面の管理、橋梁の検査・
維持、港湾施設での大型重量物の取扱いなどそれぞれのフィールドで様々な課題に対する
アプローチが行われている。
また、ロボット産業、自動車産業、情報通信産業などで先端的に取り組まれている事例
もある。
(2)
交流から生まれる可能性
これら異業種、他分野との交流の意味は大きく分けて2つある。一つはプラントメンテ
- 32 -
ナンスで培われた技術やシステムを他分野に応用できないか。またその逆で他分野の技術
を活用して、プラントメンテナンスの課題解決は可能ではないかという視点である。それ
によって、生産性を高めるだけでなく、新領域ビジネスの拡大、収益性の拡大の可能性が
見えてくる。
5.5
タスクオリエンテッドとは
(1)
ニーズとシーズのマッチングの難しさ
ビジネス創出の手法として、
「ニーズとシーズのマッチング」と言われているが、成果が
充分に出てきているのだろうか。中々成果がでないとするならば、何がそれを阻害してい
るのか。
「ニーズ」と「シーズ」を結ぶアプローチの手法の議論が今まで手薄であったから
ではないかと考えられる。
(2)ニーズとシーズを結ぶ手法~タスクオリエンテッドアプローチ~
ニーズ
タスクの設定
タスクの分析
試作
実証
仕 様
実用化
運用手法
技術シーズ
(人と技術の役割分担)
今回の調査では、解決のアプローチとして、「タクスオリエンテッドなアプローチ」を
その手法として提言したい。タスクオリエンテッドなアプローチとは、ロボットに実行さ
せるべきタスク(作業)を定めてそこにフォーカスして技術開発を行うアプローチであり、
汎用システム開発に対照するアプローチである。
まず、ニーズとシーズをマッチングして可視化されるのは「仕様」であるが、その前段
として「タスクの設定と分析」を置く。これは、ニーズをタスク(作業)に落とし込むこ
とで、何が求められているかを工学的なアプローチで理解するために必要なプロセスであ
る。さらに応用される(または開発される)要素技術を明らかにするために「タスクを分
析」することとなる。このようなプロセスを設けることで、シーズ側技術者とニーズ側開
発者とのより深い議論が可能となり、結果、仕様の精度があがることでシーズ側、ニーズ
側双方で「必要予算」「納期」も含めて具体的なすり合わせが可能となる。
①
タスクの設定
タスクの設定を考える時、実現が容易な単純なタスクならば、そのまま開発に進むこと
になる。一方実現に程遠いタスクに関しては、これを可能とするキラーテクノロジーの研
究が必要となるので、この開発自体は開始するのを待たねばならない。複雑な複数のタス
ク(作業)の実現を要求されるニーズに関してタスクオリエンテッドアプローチは有効で
ある。解決する課題が多ければ、個別の要素技術を云々しても統合された成果を実現する
のは難しい。センシングされたデータの処理や融合、様々な制御、動作計画など多くの要
素が組み合わさってはじめて求められるタスクが実現可能となるからである。
②
タスクの分析
- 33 -
求められるタスクに対して、それを実現する要素を分析する。ロボットやシステムが実
現するための一連の動きやセンシングなどの働きを分析して、明示する。明示することで
全体像がより鮮明に理解できると同時、ニーズを出す側と開発者側が同じテーブルに付い
て、俯瞰しながら個別具体的な動作や働きについて認識を共有することができる。また、
個別の要素技術を全体像を俯瞰しながらインテグレートすることが可能となる。
<参考>
タスクオリエンテッドアプローチによる自律移動マニピュレータの研究「ドアの通り抜けを含む屋内
の自律走行の実現:油田信一(本調査委員)永谷圭司 技術論文 日本ロボット学会誌発表
タスク指向アプローチ(システム指向)
基礎研究(シーズ)
ニーズ指向開発
要素(汎用)指向アプローチ・技術
- 34 -
第6章
6.1
安全管理について
リスク管理の重要性について
「安全」に対する言葉として「リスク」がある。
日本の安全に関する認識は「リスクゼロ」を求めているが、グローバルスタンダードの
認識は「リスクはゼロにできない」ということで、少しずれている。
「リスクをゼロにできない」ということは、「リスクがどこまで許容されるか」が課題に
なる。費用をかければリスクは低減できるが、要した費用は最終的には利用者が負担する
ことになり、「どこまでリスクを低減するか(どこまで安全を求めるか)」についての社会
全体の合意形成が必要になる。
リスク管理のポイント
①
「リスクとベネフィット」のバランスを考慮し、「どれだけリスクを低減するか」
についてコンセンサスを得る。
②
(1)
リスク評価に基づいて優先順序をつけて低減対策を実行する。
「安全」とはどんな状態か?
安全は人の健康,身体,命を守ることで、機械や設備を使って、ものを製造,運搬など
の作業をしている時に、作業者や周囲にいる人が危害を受けないことで、人間に対する危
害が及ばないことが最優先される。
明治大学の向殿政男教授は、『機械システムの安全性とは,人に身体的傷害や健康障害を
与えないように機械類が安全に機能することをいう。機械を使ってものを作ったり運んだ
り等の作業をしている作業者やその周りの人が,機械の故障や人間のミス,その他が原因で
怪我をしたり健康を害したりしないようにすることである』と定義している。
「リスク」は望ましくないことが発生する確率と定義されるが、どの程度にまで危険性
を小さくすれば安全と感じるかは、それぞれの人がおかれた状態や心理的な状態によって
異なってくる。
例えば、新たな技術が提案される場合は、既に多くの便益を得て生活している者にとっ
ては、新たな危険を冒してまで便益を得る必要がないと考えるので、危険がかなり小さく
ないと安全とは感じない。しかし、現状の便益水準に満足していない者は、新たな便益を
得るために、多少危険があっても、そのリスクは安全の範囲内と考えることになる。
安全において、「人が過ちを犯し、機械は壊れる」が安全対策を考える前提である。す
なわち人間が過ちを犯すことなく機械が全く壊れるということがないならば、リスクゼロ
ということはあり得るかもしれないが、現実にはそのようなことはあり得ない。日本人は、
リスクがゼロでないと安全とは考えない傾向があるが、常に何らかのリスクが存在してお
り、リスクと向き合っていく生活しているのが実態である。
一つの業務にはいくつものリスクが存在しており、どのようにリスク低減対策を実行す
るかの判断を常に求められる。投下できる資源(人・物・金)には限りがあるので、全て
のリスクに対応することはできない。そこで、リスクを評価し、その評価に基づいて優先
順序をつけて対策を実行していく必要がある。すなわち、それぞれのリスクから生じる危
害がどの程度の大きさで、どんな頻度で起きるものかを評価し、全体でマトリックスを作
って、全体の合意を図りながら対策を実行することが求められる。
(2)
「絶対安全」から「リスクベースの安全管理」へ
- 35 -
日本では「ゼロ災」すなわち建前上は「絶対安全」が求められてきた。これは危険が全
くない状態でなければ安全とは考えないという心理に基づくものであるが、グローバルな
考え方とは乖離している。
ISO/IECガイド51では、安全を「受け入れ不可能なリスクがないこと」と定義
している。リスクを可能な限り低減しても、それでもいくばくかのリスクが残っており、
リスクをゼロにすることはできないと考え、リスクが許容値を超えれば危険であるが、許
容値より小さければ安全と捉える。すなわち、リスクが残っている以上、どこまでを許容
し、広く受け入れ可能とするかが問題になり、そこでの社会的な合意形成が必要と考える。
図6-1は、ISO/IECガイド51に示されている許容可能なリスクと安全との関
係である。受け入れ不可能なリスクは実施を取りやめるか、または安全対策を講じてリス
クを低減する。リスクが低減されれば許容可能なレベルになる。
許容可能なレベルとは、リスクとベネフィットのバランスを考慮して社会が許容してい
るレベルである。例えば、日本では交通事故で年間5000人以上の人が死亡するけれど
も、自動車の持つ便益を考えて、自動車の持つリスクを社会は許容している。図に示すよ
うに許容可能といっても残留リスクが残っている。
さらに安全対策を講じることによって、リスクは広く受け入れ可能なレベルにまで低減
される。この状態は誰が考えても、これくらいのリスクならば問題にしないというレベル
で、その時の社会的な価値観によって広く受け入れ可能かどうかが判断される。一つの基
準としては自然災害の発生確率である年間100万分の1が目安となっている。このレベ
ルよりリスクを低下することは、リスク低減に要する費用が、得られる改善効果に比べて、
一般に著しく大きなものになる。
日本では「事故発生件数ゼロ」を目標とし「災害度数率」を指標にしてきたが、欧米で
は「重大災害ゼロ」を目標に「災害強度率」を指標としている。欧米ではリスクを許容可
能なレベルに低減するために、リスク評価を行い、評価に基づいて優先順序を付けてリス
ク低減対策を実行している。これが「リスクベースの安全管理」で「絶対安全」とは異な
っている。この安全管理の考え方は、設備管理においても「リスクベースメンテナンス」
の考え方につながっている。
日本でもJISZ8115において、安全は「人間への危害または資材の破損の危険性
が許容可能な水準に抑えられている状態」と定義されている。このように、近年、安全に
対する考え方は「絶対安全」から「リスクベースの安全」へと移行してきている。
- 36 -
図―1 許容可能なリスクと安全
ISO/IECガイド51
受け入れ
不可能なリスク
許容可能なリスク
広く受け入れ
可能なリスク
安全
残留リスク
安全対策
リスク(小)
図6-1
リスク(大)
許容可能なリスクと安全
6.2
人と技術の役割
(1)
人と技術に関する日本と欧米との認識の違い
日本では「人間が努力すれば災害を防止することが可能である」という考えの下に、作
業者を教育することによって安全が確保できると考えられてきた。すなわち事故が起きれ
ば、規制を強化し教育訓練を強化してきた。例えばJR福知山線の脱線事故はこのような
日本的安全認識のもとに生じた事故ともいえる。
一方、欧米では「人は間違いを犯すものであり、機械はいつかは壊れる」を前提として、
安全対策が考えられてきた。すなわち、
「いかに人間が注意力を集中させ、技能を身に付け
ようとも、常にいくばくかのリスクが残っており、事故は完全にはなくすことができない」
「事故は技術レベルに応じて起きるもので、技術の進歩がなければ事故を防ぐことはでき
ない」ということが基本的な認識となっている。
表6-1は日本と欧米との考え方の違いを比較したものである。
- 37 -
表6―1
安全に関する日本と国際安全規格
日本
安全目標
国際規格
ゼロ災をめざす。
「許容されるリスク」をもって安全
(建前上は絶対安全を標榜)
受け入れ不可能なリスクがないこと
freedom from unacceptable risk
安全に対する
現場の作業者の注意や訓練に
人間の注意だけでは安全は確保でき
考え方
よって安全を確保する。
ないという基本的な認識がある。
(製造メーカが安全な機械を作るこ
とを義務付ける)
機械の安全規格
(2)
個別の機械毎に、構造規格とし
全ての機械に適用できるような一般
ての安全規格
的な安全要求基準を決めている。
日本の現状の問題点
日本の安全水準は国際的に見ても優れた水準にあった。これは労働安全衛生法をはじめ
とする法令が整備されていたことと、一人ひとりの作業者の能力が優れていたためである。
近年、2007年問題など熟練技能者の退職に伴う技術伝承、国際競争力確保のための
設備安全管理部門の人員減少や保全部門の縮小など、この環境に変化が生じてきた。
2003年に一連の産業事故が起きた。経済産業省はこの対策実施のために、製造業各
社を対象にアンケートを実施している。そこで判明したことは「現場力の低下」である。
この現状は図6-2のように整理できる。
図―2 現場力低下の構図
<人事>
1.熟練技能者の不足
(定年退職、異動、出向)
2.設備・安全管理部門の
人員減少
<教育>
1.若手・中堅技術者の育成ができていない。
2.技術ノウハウの継承ができていない。
3.ノウハウのDB化・マニュアル化の遅れ
<技術>
1.自動化の進展
2.自分の手でプラントを触らない。
スキル人材、設備を知る人が不足
1.どこに危険があるか
分からない
2.設備不具合リスク
の増大
3.対応能力の低下
<設備>
1.設備の高齢化
2.保全部門の縮小
3.設備の新設・更新機会の減少
11
図6-2
現場力低下の構図
ISOでは、「会社がやり方や基準を決める。作業者は決められたやり方や基準通りに
運転することを義務つける。その結果、仮に不良品が出てもそれは基準を決めた会社の責
任である」が基本精神となっている。
これに対し、日本ではQCサークル活動に代表されるように、開発・技術サイドで作っ
- 38 -
た基準を、現場作業者が少しずつ改善を重ねて製造条件を最適化することによって、技術
を確立し良い製品を作ってきた。これが日本の生産技術力が強いといわれた理由である。
しかし、上述のようにこの考え方が通用しなくなってきた。
厚生労働省の産業労働研究所がまとめている化学プラント災害の内容分析では、作業基
準の不備が圧倒的に多く、誤操作・認知確認ミスなどの作業者に起因する原因の2倍以上
を占めている。
作業基準はある程度の作業者の能力を基準に作られるが、スキル人材や設備を知る人が
不足してきた現状においては、従来の作業基準ではカバーしきれなくなってきた。鹿島コ
ンビナードで起きた事故でも、基準が安全にかかわる操作が基準化されていない、個人の
安全に頼りすぎたことが指摘されている。
高圧ガス保安協会がコンビナード事故原因を調査した結果を、表6-2に示す。
このように、従来ヒューマンエラーとして分類されていることも、さらに検討すると設
備や作業の基準不備の結果生じたことも含まれている。
表6-2
コンビナードにおける事故の要因
システム的エラー
高圧ガス保安協会
人的エラー
作業基準の不備
81
認知・確認のミス
21
点検不良
62
誤判断
28
指揮命令の不良
44
誤操作
55
作業情報の提供ミス
25
技能未熟
19
補修不良
小計
6
218
比率(%)
64
小計
比率(%)
123
36
一方、法令に関しても、日本では政府が定めたルールに従っておれば安全は確保できる
と考えられてきた。しかし、労働安全衛生法や消防法などの法規は、対象となる全ての企
業が守るべき基準として制定されているために、企業規模や業種等の事情を配慮した結果、
必要最低限の基準にならざるを得ない。すなわち、法令遵守は安全確保の必要条件ではあ
るが十分条件ではないといえる。
各企業は法令遵守が最低限必要なことで、「何がそれぞれの企業の安全確保に必要であ
るか」を自ら決め守っていくこと、すなわち自主管理体制を強化し、自己責任が求められ
ている。
現場の作業者の力が低下してきている現状において、技能伝承が叫ばれているけれども、
各企業は作業者の技術力に応じた基準の整備が急がれている。
熟練技能者の知識や経験はその企業の共有すべき財産と考え、現状の作業員でも理解で
きるレベルの内容にまとめ上げる必要がある。
コンビナードにおけるロボット技術のニーズは、大きく分けると、配管の減肉などの点
検作業、高所作業などの危険作業、反応機やタンクなどの清掃作業に区分されるが、熟練
技能者の知識経験を基準として整備することは、点検作業などをロボットに行わせるため
- 39 -
にも必要な課題である。
(3)
日本と欧米の安全に関する認識
日本は「災害の主原因は人と考え、技術よりも、管理体制を強化し人の教育訓練によっ
て安全を確保できる」と考えてきた。これに対し、欧米は「災害は努力しても技術水準に
応じて必ず起きる。災害防止は技術的対策を優先する」、
「人は必ず間違いを犯し、機械は、
いつかは壊れる」を前提に安全対策を考えている。
表6-3は、向殿政男氏がまとめている日本と欧米の安全に関する考え方の違いである。
表―2
表6-3
日本と欧米の安全に関する考え方の違い
向殿政男 「国際化時代の機械システム安全技術p79 (日刊工業新聞社)
日本の考え方
・災害は努力すれば、
二度と起こらないようにできる。
・災害の主原因は人
・技術対策よりも人の対策を優先
・管理体制を作り、人の教育訓練
規制を強化し、安全を確保
・災害が発生するたびに規制強化
・安全は基本的にタダ
・安全コストを認めにくい。
・目に見える具体的危険に対し、
最低限のコストで対応、
災害対策に技術的深耕をしない
・見つけた危険をなくす技術
(危険検出型)
・度数率(発生件数)の重視
欧米の考え方
・災害は努力しても、
技術レベルに応じて必ず起きる。
・災害防止は、技術的問題
・人の対策よりも、技術的対策を優先
・人は必ず間違いを犯すものであるから
技術力向上がないと安全を確保できない
・事故が起こっても、重大災害に至らない
技術対策
・安全は基本的にコストが掛かる
・安全にはコストをかける。
・危険源を洗出し、そのリスクを評価し、
評価に応じてコストをかける
起こるはずの災害の低減化努力
・論理的に安全を立証する技術
(安全確認型)
・強度率(重大災害)の重視
このような違いの背景には、日本が欧米からの技術導入によって製造業を発展させてき
た経緯があると感じる。欧米では、新たな技術を開発し生産技術を確立するために、多く
のトラブルに遭遇し、それを技術力で解決してきた歴史がある。一方、導入技術は、他で
確立された技術を受け入れて生産するので、技術確立過程で遭遇するリスクを経験するこ
とが少ない。その結果、基準を整備し、それを人の注意力で維持することが重要になって
きたものと考えられる。
しかし、このような安全認識は、世界のトップランナーの地位に立った現状においては
通用しない。日本も技術の萌芽期から開発に取り組むことになり、それだけ多くのリスク
と遭遇することにならざるを得ない。人の注意力が必要なことはもとよりのことであるが、
技術力、すなわち設備やシステムを安全にする対策をまず優先しなければならなくなる。
①
技術と安全
日本では、機械はそのものを安全に作るというよりは,機能とコストを重視し設計され
- 40 -
てきた。すなわち、現場の安全確保は,現場の作業者・技術者が優秀であったため主として
作業者の注意力で実現されてきた。たとえ、事故が発生しても責任は現場作業者に帰され,
機械設計にまでフィードバックすることが少なく、設計者は安全よりは機能と低コスト化
を重視してきた。
ISOでは「安全対策の3ステップ法」がルール化されている。安全対策は以下の順番
で行うのが基本である。
(a)本質安全設計によるリスクの低減
(b)安全防護対策によるリスクの低減
(c)使用上の情報によるリスクの低減
機械の危険性を本当に知っているのは機械の製造者であり、安全確保のためには製造者
が設計段階で対策を打つのが最も効果的である。一見、作業者のミスで起こった事故でも、
実際には設備改善やシステム改善によって、根本的な対策が可能であることが多い。
安全管理とは「機械は故障し、人は過ちを犯す」を前提に、安全対策を実施し、たとえ
人間によるミスや機械設備のトラブルが起きても、人間に危害が及ばないようにすること
である。
②
コンビナードメンテナンスとロボットの役割
コンビナードにおけるメンテナンスにおける課題は、膨大な長さを有する配管の余寿命
検査、狭隘な場所に設置された機器の清掃・点検作業、高所での危険作業などを、一定期
間内にやり遂げねばならないことである。
これらの作業は、従来ならば人手を確保できたが、最近は2007年問題に象徴される
ように、熟練技能者が退職し、若年層の育成が思うようには進展していないために効率よ
く進めることが難しくなってきた。
現場での作業員が少なくなった現状においては、従来は人間がやっていたことを、ロボ
ットで代替できないかを真剣に検討する必要がある。
人間にとって危険な高所での作業や長い配管の減肉状態を繰り返し測定していく作業、
狭い反応機の中に残った堆積物・付着物の清掃作業
等などをロボットに置き換えて生産
体制を確立する必要がある。
ここで、ロボット化に要する費用が、メンテナンス効率の向上に見合うかが問われる。
ロボット技術の提供側とコンビナード側とが連携を密にし、ロボット側はさらに安価に
ロボット技術を提供できるための技術開発、受け入れ側は安ければよいという感覚ではな
く、必要な技術はreasonableなコストで購入するという協働作業が求められて
いる。
③
コスト意識から投資意識へ
日本では安全はタダと考え、安全な状態が続くとメンテナンスコストを少しずつ削減し
ようとするのが一般的である。
しかし、最近、メンテナンスの不備が事故となった事例が増えている。
例えば、埼玉県ふじみ野市のプールで起きた死亡事故は、保守管理費用を安易な競争入
札が行われたことから生じた。シンドラー社のエレベータ事故も、原因調査は保守管理が
きちんと行われていたかに焦点が絞られてきた。これも保守管理費用を削減するために、
安易な競争入札によって独立系の保守会社を採用したことが関与している。また、ジェッ
- 41 -
トコースターなどメンテナンスを実施していなかったために事故が起きている。
スペースシャトルコロンビア号の事故調査委員会は、「設備が古くなっているのに同じ
点検内容で済む」と考えていたことが問題であると指摘している。
これらの事例に共通することは、プラント・設備オーナーがメンテナンスの重要性を認
識していなかったことで、設備を維持管理していくためのメンテナンス費用をコストと考
え、できる限り削減しようと目論んだことである。
設備は着実に老齢化していく。
図6-3は設備の経年数と故障率の関係を示している。設備故障は全ライフサイクルを
通して発生する。初期は施設・設備の不具合による故障が多いが、ある程度の期間で収ま
り、通常のメンテナンスが行われる。さらに経年が進むと故障率が増加し、これに適応し
たメンテナンスが必要になる。期間Ⅱから期間Ⅲに移行するポイントは、石油精製・石油
化学プラントでは建設後 30 年くらいといわれている。日本のコンビナードはこの時期にか
かっているところが多く、メンテナンス費用を「設備維持管理に必要な投資」と認識せね
ばならない。
図―3 設備の経年数と故障発生率との関係
故障率
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
通常のメンテナンス
適切な維持補修
が必要
時間
Ⅰ初期故障期間:施設・設備の不具合による故障
Ⅱ偶発故障期間:初期故障がおさまり、故障率がほぼ一定
Ⅲ磨耗故障期間(劣化故障期間):故障率が漸次高くなる。
図6-3
設備の経年数と故障発生率との関係
これらの投資に対する費用対効果を検討した事例が公表されることは少ないが、中央労
働災害防止協会は、安全投資の費用対効果に関する調査を行っている。
表6-4はその結果であるが、回答した事業所の平均従業員数は732人である。1事
業所あたりの安全に関する費用は、2億5654万円で、効果は6億9340万円で、1
事業所当たりの安全に対する費用の2.7倍の効果が出ていることを示している。
安全やメンテナンスに要した費用が、実際にどれだけの効果につながっているかは評価
が難しいところであるが、2.7倍の効果の意味するところは、安全やメンテナンスをコ
ストではなく、投資と考えて取り組むべきことを示している。
- 42 -
表6-4
表―3 安全対策費の費用対効果
中央労働災害防止協会
6.3
「安全衛生対策費の費用対効果に関する調査報告書」
リスク管理手法を用いたプラントメンテナンス
設備メンテナンスの方法には、図6-4に示すように大きく分けて予防保全と事後保全、
予防保全には時間基準保全と状態監視保全とがある。
メンテナンスの動向は、事後保全→予防保全(時間基準)→予防保全(状態監視)へと
動いており、今後は「RBM:Risk Based Maintenance」が重要になる。
図―4 保全方式の分類
時間基準保全
Scheduled
定期保全 経時保全
予防保全
Preventive
保全
事後保全
Breakdown
Corrective
図6-4
保全方式の分類
- 43 -
状態監視保全
Condition
Reliability
Risk based
(1)RBMの考え方
RBMは、限られた予算の中でプラントの信頼性・安全性を確保する方法として提唱さ
れた。RBI(Risk Based Inspection)も同様の考え方である。
<RBMの狙い>
経営資源が無限にあれば、すべてのリスクに対して対応策を打てるが、現実にはそんな
ことはない。そこで、各部位のリスクを評価し、実施基準について合意を得て、優先順序
をつけて実行する。
リスクが許容範囲を超えている場合は削減対策を実施し、許容レベルより低い場合は、
検査及びメンテナンスの費用の削減を行い、プラントのリスクを許容レベル以下に抑えて
効率よく運転することである。
<RBMの手順>
① プラントの各部位のリスク評価
② 各部位に対する検査及びメンテナンスの重要度、緊急度を評価
③ リスクマトリックスを作り、優先順序をつけて対策を実施
リスクマトリックスは「故障・破損の起こりやすさ」「被害の大きさ」により作成
<RBMを支える考え方>
化学プラントの事故は、図6-5に見るように40%強が機械的損傷に起因している。
また故障部位は、静止機器である配管29%、タンク16%、反応機13%となっている。
図―5 米国(1962~1991)に発生した
重大事故170件の原因分類および発生箇所
機械的損
傷
運転ミス
17%
3%
41%
4%
6%
9%
プロセス
異常
自然災害
設計ミス
20%
18%
29%
3%
4%
4%
6%
運転妨害
その他
7%
13%
16%
配管
タンク
反応器
ドラム
回転機器
熱交換器
塔
加熱炉
その他
柴崎敏和 「リスクベースメンテナンスの基礎と応用」講習会テキスト(2004)
図6-5
米国(1962~1991)に発生した重大事故170件の原因分類及び発生箇所
とくに重要なことは、摩耗や腐食による減肉である。構造材料に関する破損現象につ
いてはすでにかなりの経験を有しており、経時的劣化・経時的損傷現象を定量的に評価で
きるようになっている。すなわち、材質、使用環境、負荷条件、温度が判れば、いつどの
- 44 -
ような形で損傷が起きるかを予測できるようになってきた。
この結果、無駄な検査が削減され、検査コストの低減が図れる。
図6-6は、米国の火力発電所にリスクベースのメンテナンスを採用した効果を示して
いる。
図―6 適用の効果
USA火力発電所
リスク管理を導入
16
14
プラント機器 12
損傷による
10
計画外停止
8
の発生率
6
再熱器
加熱器
給水ポンプ
タービン
石炭ミル
(%)
4
2
0
1986
1987
1988
1989
1990
米国火力発電所におけるRBI/RBM適用の効果
図6-6
適用の効果
(USA火力発電所)
- 45 -
第7章
ロボット業界の最新動向
7.1
産業用ロボットの現況
我が国は、戦後の高度成長期時代に社会的な要請を背景に、製造業分野、特に自動
車、電気製品などの製造設備に産業用ロボットをうまく活用し、省力化生産システム
を構築した。現在では、製造業分野での産業用ロボットについては、日本は世界一導
入台数が多いことからロボット王国と認識されており、日本が世界の先頭を走ってい
る状況である。そのロボットを活用する技術は、日本がきっかけとなり始まったメカ
トロ技術の発展に繋がり、日本の技術力の高度化・高機能化をもたらしている。
2008年7月に発表された(社)日本ロボット工業会発行の企業実態調査報告書
によると産業用ロボットの生産高(国内+輸出)は7300億円越え、また、生産台
数も11万台を越えており、好調さを維持している。このロボット生産高のうち約6
0%は輸出が占めている。IMF(国際ロボット連盟)の統計では、2007年末の
時点で世界の約40%(36万台)の産業用ロボットが日本で稼働している。米国が
第2位で16万台、ドイツが3位で14万台であるから、日本がロボット王国である
ことを裏付けしていると考えられる。(なお、日本のロボットの集計には、「電子部品
実装装置」がロボットの範疇として集計される)
8,000
億円
輸出
その他
プラスチック
自動車
電子・電気機械
一般機械
金属製品
7,000
6,000
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
91
95
20
01
02
03
04
05
06
年
2006年の需要部門出荷額割合
金属製品
一般機械
電子・電気機械
自動車
プラスチック
その他
輸出
1%
2%
20%
12%
59%
4%
図7-1
ロボットの需要産業別出荷額推移
- 46 -
2%
最新経済状況として、2008年後半からの金融市場破綻による実経済への影響は
予想以上に大きいため、今後の市場動向は予断を許さぬ状況となっており、産業用ロ
ボットのビックユーザである自動車製造や家電製造業界の生産落ち込みで、市場動向
展開の先行きは不透明である。
一方、産業用ロボット技術については、経済産業省が発表している「今年のロボッ
ト大賞」の選考実績を俯瞰してみる。2006年には産業用ロボット部門優秀賞とし
て「人共生型上半身ロボット・腕ロボット(㈱安川電機)」と「人の能力を超えた高速
高信頼性検査ロボット(㈱デンソー)」(写真7-1参照)の二つが受賞している。こ
れらは少子高齢化や作業の信頼性向上などを狙っており、最新ロボット技術が結集さ
れている。産業用ロボット技術にも双腕やセンサーなど、先端技術活用の流れを見る
ことができる。
写真7-1
2006年ロボット大賞優秀賞の双腕ロボットと検査ロボット
また、
「2007年ロボット大賞」では、最優秀大臣賞として「ビジュアルトラッキ
ングによる高速ハンドリングロボット(ファナック㈱)」(写真7-2参照)が受賞し
た。このロボットはビジョンセンサの画像認識技術を活用し、毎分120個以上の高
速でライン上のワークをピッキングする2本の垂直多関節ロボットで構成されており、
実際の生産現場ラインで使用されて人の能力を大幅に上回る性能で実績を上げている。
写真7-3
写真7-2
2007年ロボット大賞「高速ピッキングロボット」
- 47 -
優秀賞「薬品運搬ロボット」
更に、産業用ロボット部門で「連結式薬品容器交換ロボット(ツムラ・富士重工業)」
(写真7-3)が優秀賞となった。このロボットは生産条件の変更などに対して柔軟
に対応が可能な能力があり、状況に応じた運転が可能になっている。
このように産業用ロボットの分野でも、高性能化や高機能化開発の動きは加速され
ている。更に、現在は「柔軟物」のハンドリングや人と共存するセル生産用ロボット
システムなどの技術開発が進められており、新たな製造技術のニーズに対して技を磨
いている状況である。
7.2
次世代ロボット(サービスロボット)の開発状況
最近話題となっている次世代ロボット(サービスロボット)に関しては、全世界レ
ベルで凌ぎを削っている状況である。例えば、米国では人体の手術を行う「Da・Vi
nci」
(ダ・ビィンチ)が実用化され多くの患者の役に立っている。その他、ISロ
ボッティクス社の掃除ロボットなどが販売されているが、マーケット規模はまだまだ
小さい。
欧州ドイツでは、産業用ロボットであるマニピュレータアームがハンドリングする
ものを「人体」と捉え新しいエンタテーメントとして、アトラクション用ロボットを
生み出している。このように一部では展開しているが、まだ、市場として確立されて
いる状況ではない。欧州EUでは数百億円を投じて、研究開発のサービスロボットプ
ログラムをスタートさせるという情報がある。このプロジェクトによってサービスロ
ボットの開発力を急速に付けてくると思われる
一方日本では、確かに産業用ロボットから派生したサービスロボット技術に関して
の進展は、2歩行技術など一部では優位に展開しているが、実用という観点からはま
だまだユーザが満足できるレベルには到達していない。また、例えば前述の「Da・V
inci」に使われている部品や要素技術などは日本で開発されているものも含まれ
ているが、システム化の観点では立ち後れている。これは国内法や規制などの制約も
影響も大きいと考えら、この辺の整備を早急に行う必要があると指摘されている。
日本で は、 AIBO(S ONY )が 発表さ れた 以降、 写真 7-4 ~7 に示す とお り 、
ASIMO・歩行支援ロボ(ホンダ)、HAL(サイバーダイン)、PaPePo(NEC)、移動
支援ロボット・モビリティロボット(トヨタ)・SmartPal(安川電機)・EMIEW(日
立)・wakamaru(三菱重工業)等々多方面で多数のサービスロボットが開発・発表さ
れている。市場環境の整備推進と相まって、これらの技術が花開くことを期待してい
る。
- 48 -
写真7-4
アシモ
歩行支援ロボット
写真7-5PaPeRo
(NEC)
写真7-6
HAL(サイバーダイン)
写真7-7
移動支援ロボット
モビリティロボット(トヨタ)
写真7-7
SmartPal
(安川電機)
EMIEW
写真7-8
(日立)
写真7-9wakamaru
(三菱重工業)
これらの人間支援用の小さなロボット達が、コンビナートメンテナンスのような高
度な実環境作業用として活躍することは出来ない。しかし、これらロボットが使って
いる要素技術(=RT或いはロボ・テク)は非常に高機能化されてきており、そのよ
うなRTを既存製品や既存技術の高性能化に活用していこうという状況が進展してき
ている。
例えば、最新の自動車を例に取ると、自動車が走行中に前を走っている車を検知す
ると、衝突防止のために速度を落としたり、警告を発したりと言う機能は、実は当た
り前として製品化されている。この技術を見てみると、前車の存在を検出してその状
- 49 -
況を把握し、駆動部分を制御するというプロセスを踏んで達成している。この技術は
それこそ、ロボット技術である。即ち、センシングして(状況を認識し)、その結果を
コンピュータで処理して(=知能化:状況を判断し)アクションをする(動作する)
ことであり、この3要素で構成されるものこそが、ロボット技術であり、RTと称す
るものである。また、RTとして情報技術を含んで考えることもある。これは最近、
インタネット情報などをRTに取り込み、便利な機能を持たせて高度化するような取
組が盛んに行われるようになっていることからも推察できる。
これらRT力の向上、高度化は目覚ましいものであり、特に、コンピュータの進歩
は尽きることを知らないようである。
(30年前はロッカーほどの大きさのものが、ワ
ンチップでしかもその機能・性能は上を行く)そこにセンサーと駆動機構を加えれば、
従来では出来なかったようなことがRTを使って可能となる世の中がきている。
RTは幅が広く、奥行きが深い。稼働する機械製品のほぼ全ての要素を網羅すると
言っても過言ではなく、ここに我が国の優位性があると考えられる。我が国は戦後物
作り技術を磨いて、世界でも希有の発展を遂げ、不動の地位を築いてきた。日本全国
を見ると、各地に優秀な物作り集団が存在しており多くの製品を作り出し世界にその
存在を知らしめている。第5章でも述べたが、RTの更なる発展のためには、異業種・
他分野や広域の連携が必要不可欠であり、コンビナートのRT適用を例としてその取
組を推進させたいと考える。
更には、ニーズ側とシーズ側の情報交換・交流も重要あり、ニーズ側の課題を見つ
け出し、人とRTが協調して、どのように解決していくかなどの議論を深めて行く必
要がある。ここでは、そのような「場」を提供することが何より増して重要であるこ
とを指摘しておきたい。
ここでRTの一例として、センサーと駆動系の例を記載する。先ずセンサーである
が、写真7-10は、人間の能力を遙かに超える高速性と空間解像度を備えた高速ビ
ジョンシステムである。人間を凌ぐ高性能なシステムが開発されている。(広島大学:
HPを参照))
写真7-10
ネットワーク型高速ビジョンシステム
また、運動制御に関しては、産業技術総合研究所の運動制御モジュールが開発され
ている。このモジュールは制御カードとモータ制御モジュールを重ねたモータを回転
させるモジュールです。DCモータでもACサーボモジュールでも速度制御・位置制
御・電流制御ができる。RTミドルウェア技術(ソフトウェア)を採用しており、他
のRTモジュールと簡単に接続することができロボットを構成することができる。
(N
- 50 -
EDOのHPを参照)
これらのRTを効果的にシステムアップし、ユーザが望むようなサービスロボット
として製品化出来ている例はあまり多くない。例えば富士重工業㈱の清掃ロボット、
薬品運搬ロボットや㈱ナショナルの血液運搬ロボットなどがあるが、未だ、市場とし
て未成熟である。このような状況が打破出来ないのは、ユーザニーズを捉え、それを
分析し、RTで解決するシステムをインテグレートする人材の不足が原因の一つとし
て上げられる。
特にサービスロボットが成功するか、否かは「システム化」が重要となる。目標と
する機能(目的)に対して、どのように要素技術を組み合わせてそれを達成するかを
考えることが勝負である。必要に応じて要素技術を磨かなければならない場合もある。
これらロボットシステム化を主導するのが、システムインテグレータであり、システ
ムクリエータやコーディネータの力である。その意味でその人の「センス」と「知識」
が重要なファクターとなるが、このような能力を備えた人の育成にも力を入れてゆく
必要があると考える
以下、現在、国が中心に行われているRT技術開発プロジェクトを紹介するが、日々
RTは進歩を続けていることを強調しておく。
(1)人間支援型ロボット実用化基盤技術開発(2006年度~2007年度)
人間の活動等を支援するロボットのモデル開発と実証試験。
(介護補助、リハビリ支
援、自律動作支援)開発されるロボットは7テーマ8種類であり、福祉介護分野で
人と直接接触するロボットとして、安全性や倫理性について十分に配慮され、開発
されている。
(2)戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト(2006年度~2010年度)
技術戦略マップに沿ったミッション型「本格実用ロボット」実現に向けた先端技術
開発。
(産業用、サービス、特殊環境用)当初は3分野の18テーマで開発が推進さ
れたが、2008年にステージゲート評価を経て、2009年度からは以下の4テ
ーマが開発される。
①
次世代産業用分野:
「FA機器用組立ロボットシステム」
「先進工業国対応セル生産組立システム」
②
サービスロボット分野:
「乱雑に積層された洗濯物ハンドリングシステム」
「全方向移動自律搬送ロボット」
③
特殊環境用ロボット分野:
「閉鎖空間内高速走行探査ロボット」
「次世代マニピュレータによる廃棄物分離・選別システム」
(3)世代ロボット知能化技術開発プロジェクト(2007年度~2011年度)
生活環境など状況変化の激しい環境下で、確実に作業するための知能化技術を開発
する。これらは再利用可能なモジュールソフトウェアとして利用できる。移動・作
業・コミニュケーションの3つの分野で15テーマの開発を進めている。
(4)基盤ロボット技術活用型オープンイノベーション促進プロジェクト(2008年度
- 51 -
~2010年度)
ロボットの基盤技術の普及と標準化・活用事例の創出を目標とする。
特殊環境に属する「原子力発電施設」などでもロボット化技術は早くから開発さ
れている。一例として参考に紹介する。これらは、1990年~2000年頃に開
発され、実使用されている。
<加圧水型原子力発電所の事例>
①
原子炉容器超音波探傷装置
加圧水型(PWR)原子力発電施設の重要機器の一つである原子炉容器の溶接
部を内面から超音波探傷検査する。容器内は水張りされており、水中での作業
となる。これを行うのが自動潜水式移動ロボットである。従来のマスト方式の
ロボットに比べて大幅な検査期間の短縮が可能となった。これらの古い技術を
最新の先端技術で見直し高機能化するのも一つの方法である。
②
熱交換器細管検査装置
縦型の大型熱交換機のU字細管内面の渦流探傷検査を行うロボットである。
一次側水室内にロボットを設置し、同時に4本の細管の検査を効率的に行うこ
とができる。
③
弁ボルト締緩装置
一次冷却ライン(高放射線水)などに設置された大型弁のフランジボルトを自
動締緩する装置である。一度フランジ部にセットすれば全ボルトの締結或いは
緩めることが出来る。締結するトルク管理を行うことができる。
更に、防災分野・宇宙分野など特殊環境分野でのRT活用はコンビナートRT化検
討に於いても参考にするべき領域と考える。
今、この調査研究で取り上げようとしているコンビナートのRT適用検討に関して
は、これらのRT開発要素技術の活用も重要であるが、全国各地のクラスター事業が
培ってきた他事業や異分野の要素技術の応用も可能であり、是非この調査への積極的
な参加を期待するものである。
7.3
ロボットビジネス化の取組状況
次世代ロボット(=サービスロボット)の市場育成については、国でも幾多の施策
を実施している。その中の一つとして大きなウエイトを占めるのが安全に対する規
制・基準の確立、安全認証機関の整備、事故事例を収集し分析する仕組みの整備など
である。この観点から国では新しいプロジェクトを立ち上げようと計画している。
また、既に団体活動を行っている「ロボットビジネス推進協議会」
(=民間団体。以下
「ビジ協」と称す)もサービスロボット市場育成を目的として活動し成果を得ている。
ビジ協の活動は、5つの部会を設置し活動を行っている。各部会名と平成20年の活
動内容を併せて下記に記載する。
(a)
安全対策検討部会
本部会は、人と共存するサービスロボットの最大の懸案である“安全の確保”
について、安全知識や安全技術の向上に関する事項について活動を行っている。
- 52 -
<平成20年活動内容>
a)万博で実証実験をしたロボット(清掃ロボット、警備ロボット)についてリ
スクアセスメントの事例紹介を行った。
b)
リスクアセスメントの基礎について講義を行った(2回実施)
c)
「カート運搬ロボット」を事例としてリスクアセスメントの手法、検討内
容など詳細内容について講義を行った。
(b)
共通規格検討部会
サービスロボット普及の障害となる設計や運用の共通規格などについて課題を
検討している。
(19年度には、エレベータへのロボット搭乗についての検査指
針を策定した)
<平成20年活動内容>
a)
通信に関し、利用環境調査や周波数利用状況などについて勉強会にて検討
を進めており、電波担当(総務省)との協議を開始する予定である。
(c)
保険部会
サービスロボット普及に向けて保険の安定的な引き受けが可能となる団体保険
の実現に向け検討を行っている。
<平成20年活動内容>
a)
(d)
事業者へのアンケート調査などを実施した。
ビジネスマッチング部会
<平成20年活動内容>
サ ー ビ ス ロ ボ ッ ト 事 業 の 創 出 を 図 る た め 関 係 者 を 巻 き 込 ん だ ビ ジ ネ ス マ ッチ
ン活動を行うとともにRT事業の普及、広報、国関連事業との連携など情報の
共有化に関する活動を行っている。
a)
コンビナートRT適用検討に関し、RT技術活用検討WGを設置した。
(本調査事業と関連して活動を行っている)
b) 大阪ICRT次世代ロボットフェアでビジネスマッチングイベントを開催
した。
c)
(e)
広報事業として大阪ICRTで次世代ロボットフォーラムを開催した。
RTミドルウェア部会
<平成20年活動内容>
共通基盤ソフトウェアとしてRTミドルウェアの実用化・普及にむけた活動を
推進している。
a)産総研のオープンラボでRTミドルウェアの技術紹介を行った。
b)SICE(SI2008:システムインテグレーション部門)にてRTミド
ルウェアコンテストを開催した。優秀なソフトウェアを開発した企業には、
SICE賞やロボットビジネス推進協議会賞などの賞が授与された。
このようにサービスロボット事業の創出に向けて色々な取組がなされているが、コ
ンビナートRT適用の取組についても、ロボットビジネス推進協議会のビジネスマッ
チング部会で全面的に協力し、次年度以降も継続して推進すべく方針を打ち出してい
る。
- 53 -
7.4
コンビナートのRT化の取組について
急速に少子高齢化時代を迎え、また環境資源問題の顕在化などがあり、日本はこのまま
では労働人口が減少し、国内総生産(GDP)も縮小していくことが予想されている。我
が国が国力を維持し、かつ、継続的に発展するには、あらゆる分野で必要な施策を打ち出
していく必要がある。このような中で、RTは、人手作業を代替する手段として、一つの
有効な改善策であると位置づけられる。こうした背景を踏まえ、コンビナートプラントの
メンテナンス作業についても、少し先を見すえたRTの活用方法や課題解決方法などを検
討し、時代の要請に応えることは大いに価値のあることである。
前述の原子力発電施設の例を見ても、メンテナンス作業の遠隔操作化・ロボット化は比
較的早い時点から取組がなされ、数多くのロボットたちが開発され、試されてきた。しか
し、既存のプラント設備は、周辺の環境や作業自体が「人間」を想定して考えられ、設計・
製作されており、そう言う環境こそがロボット導入を阻害する大きな要因の一つとなって
おり、ロボット化が進まない状況にある。
一方、ロボット技術に関して概観してみる。50年前は夢のような技術が現代では現実
の形として目の前に実在している。例えば、メカトロ技術・コンピュータ技術・情報技術
等々例示すればきりがない。これはロボット技術についても例外ではなく、20年前とは
違った技術が生まれてきている。7.2章に記載したように、新しい種類のサービスロボ
ットとその要素技術が開発されている。
コンビナートのプラントメンテナンス作業に人型のロボットシステムを直接使うこと
は出来ないが、これらを構成するロボットRTの中にはメンテナンス作業の改善に活用で
きるものもある。社会価値が変革しようとしているこの時期に、新しい技術も含めてロボ
ット化を検討することは意味のあることであると考える。
RTを人手作業に適用する場合、どのような範囲でどんなことを代替するか、どんな方
法を使うか等々全体システム化を考え、または、大胆なコンセプトを立案し、作業改善に
結びつけることも重要である。或いは、第5章で述べたようにタスクオリエンテッドな思
考で分析、解析し、計画を考えることもロボット化の近道である。また、環境条件を少し
変えるだけでRTをうまく活用できる場合もある。特に、新設プラントなどでは、初期段
階からRTを活用することを前提にプラント設計をすることによりRTの導入は格段にや
りやすくなる。
今回の調査でコンビナート企業のメンテナンスに関する効率化・高機能化・省力化など
のニーズを把握することが出来た。今後はこのニーズを如何にRT(シーズ)に結びつけ
ていくかが課題となる。このマッチングに関しては、ロボットビジネス推進協議会などと
連携しながら活動を推進する予定である。何れにしても関係者が一体となり、連携を密に
して取組を進めていきたいと考える。
- 54 -
第8章
コンビナートの共通課題
8.1
現地調査ヒアリング及びアンケート結果集計
8.1.1
現地調査ヒアリング
本調査事業では、総論賛成的な机上の理想論に終始することを避け、産業界における具
体的な動きを喚起するため、関係企業及び関係機関の協力を得ながら、現地調査WGを開
催し、ヒアリング調査を実施した。
(1)
鹿島コンビナート現地調査ヒアリング
①
実施日時:平成20年12月11日(木)13:00~17:00
②
調査場所:鹿島臨海工業地帯
鹿島東部コンビナート
(訪問先)鹿島共同施設㈱、JSR㈱
③
WG参加者(敬称略):
中村委員、油田委員、小柳委員、足立幹事、紺野委員、長井委員、
濱田委員
オブザーバ:資源エネ庁
田中殿
鹿島コンビナート側
茨城県工業技術センター
藤沼殿、鴨志田殿、㈱日立エンジニアリ
ング・アンド・サービス
飯田殿、服部殿、三菱化学㈱
JSR㈱山形殿、鹿島共同施設㈱白石殿鹿島共同施設㈱
④
三浦殿、
菅原殿
主要行動:
(a)鹿島コンビナートの概要説明(鹿島共同施設㈱)
(b)鹿島コンビナートにおけるRT技術適用の事例紹介
(c)コンビナート企業(JSR)の現場調査
(d)意見交換
⑤
行動概要:
(a)本事業の主旨、概要等の説明
本調査事業の主旨、概要、調査スケジュール等及び調査のポイントなどについて説
明を行った。(内容は資料1&2を参照)
また、浜松地区の要素技術シーズについて説明を行った。(内容は資料3を参照)
(b)鹿島コンビナートの概要説明
資料4に基づき、鹿島東部コンビナートの概要について説明があった。鹿島コンビ
ナートは1960年に構想が作成されて以来13年かけ港湾設備などの整備からスタ
ートし、1973年に完成した。今年で開設以来35年が経過しメンテナンス作業の
高度化、効率化のニーズは高いと想定される。
鹿島は、計画先行型コンビナートであり電気、蒸気等のインフラや排水・廃液処理
或いは緑地施設、防災などは共同管理で運営されている。原油は鹿島石油㈱で重油・
軽油・ガソリン等に精製されるほか、ナフサは三菱化学㈱に供給されてメタン、エチレ
ン、プロピレン等に処理され旭硝子、鹿島ケミカル、JSR等に回される。各企業で
は最終製品の原料として処理され樹脂・油脂・モノマー・硝子など多くの材料製品と
して出荷される。
東部コンビナートの総面積は2400ha、立地企業は75社、人口15万人の規模
- 55 -
であり、原油処理は21万バレル/1日に達する。
鹿島共同施設㈱は、鹿島の共同施設の管理機能の事務局であり、協議会や連絡会等
を運営し、行政、防災、施設維持・管理などのミッションを行っている。
(c)鹿島コンビナートにおけるRT技術適用の事例紹介
巻末添付資料5に基づきRT化構想の説明があった。構想の全体計画としては、全
長で数キロとなる配管の、保温を外さずに漏洩箇所を検知する技術(特に狙いを一次
スクリーニング技術開発に絞っている)の開発を目指している。水分検出は、中性子
水分計を保温の目的領域に絞って水平に照射する新方式を採用し検出精度を上げてい
る。
この検出器を、保温を外さずに走行できる自走ロボットに搭載し、また、このロボ
ットの取り付けも足場が不要であるロボットアームで行うようなシステム構成として
いる。
更に、反応塔などの縦型構造物の劣化を診断する大型のパラレルリンクマニピュレ
ータの開発も計画している。また、プラント建設へのRTの活用についても提案があ
り、この観点からの取り組みも今後検討する必要があると考える。
(d)コンビナート企業(JSR㈱)の現場調査
JSR㈱は、国策会社として設立された旧日本合成ゴム㈱が前身で、売上額 4000
億レベル、合成ゴム・エマルジョン・合成樹脂などを製造している。RT技術活用の
ニーズとしては、蒸留塔のメンテナンス作業を挙げ、現場状況を視察した。蒸留塔は
高さが60mほど有り、足場設置だけで数千万のコストがかかっている、とのこと。
鹿島では潮風による塩害が顕著であり、メンテナンスに苦慮している模様である。
(e)意見交換等
①
メンテナンス作業のRT活用に関しては、コンビナート全体として積極的に取り
組む姿勢は感じられ、特に、配管検査(1次スクリーニング技術)の他コンビナート
への普及展開には前向きに対応したいと表明された。
②
他コンビナート(四日市、水島等)の調査については、鹿島地区として(特にロボ
ット化を担当している企業)同行したいとの意向を示された。
(2)
水島コンビナート現地調査ヒアリング
平成21年2月9日(月)に水島コンビナートにてメンテナンスRT化の課題調査WG
を開催した。
①実施場所:新日本石油精製(株)水島製油所内会議室
②WG参加者(敬称略)
:
足立幹事、岩間委員、紺野委員、長井委員、中村委員、油田委員、小柳委
員、濱田委員
オブザーバ:
藤沼茨城県工業技術センター長、原田浜松市商工部主任、今井岡山県産業
振興財団コーディネータ、伊藤中部経済局係長、森安中国経済局、調査官、
田中資エネ庁係長
参加企業等:
- 56 -
吉村日立プラントテクノロジー主管研究員、大津知能機械社長等20社
程度(名称略)
③
報告概要
新日石より水島製油所概要と課題(触媒抜き出し課題)について説明があった。
<水島製油所概要>
(a)新日石は1951年設立され、131.7万バレル/dayの原油処理能力があり、
その中で「水島製油所」は25万バレル/dayでグループ内2位の能力である。従
業員は約540人で水島コンビナートの中心部に位置している。
(b)この製油所では原油タンカーで運び込まれた原油を蒸留し、ガソリン、灯油、軽
油、重油、残油など沸点の違いを利用して7つの成分別に取り出し、脱硫、分解、
改質等により多彩な製品を生産している。
<触媒抜き出し課題の説明>
(a)水島製油所がメンテナンスの課題としているのは、反応器(リアクター)の触媒
抜き出し作業である。
(b)製油所では製品収率のアップや原料代の低減などの目的で触媒反応を利用してい
る。
<例>水素化脱硫装置・接触分解装置などの反応塔
(a)触媒は直径1.5~3mm・長さ2~4mm
(b)製油所内には数十の反応塔が設置されているが、塔の内径Dと高さLはまちまち。
(D=2~5m・L=数~数十m・触媒は数Ton~数百Ton)
(c)D/Lは1~6まであり、2以上3までの塔が約40%を占める。
(d)触媒の抜き出しは、上部ノズルからの吸引法と下部ノズルからの落下回収法があ
る。
(e)落下回収の場合:80~90%は回収できるが安息角の部分が残留する。
これを回収するのに現状は人がエアラインマスクを装着し安全帯や防具を付けて
塔に立ち入り掻き出している。発熱の危険もある。これをロボットで遠隔化した
い。
<主要討議>
(ⅰ)触媒は固着するものもある。
(ⅱ)Q:設備側を改良してもよいか?
A:考えられないことはない。
(ⅲ)塔内で触媒と油はメッシュなどで区分されている。
(ⅳ)人数は20名程度で1週間ほどかかる。
(ⅴ)Q:粉体取り出しは、バイブレータや混送流利用などの考えはないか?
A:考えられる。(水はNG)
<参考>
新日本石油株式会社より、「脱硫装置等における触媒交換作業の自動化」に関する貴重
な提案を頂いた。これについて詳細は、8.3項で述べる。
- 57 -
8.1.2
アンケート調査結果
本委員会では、コンビナートに関連する関係企業の皆様に、メンテナンス作業の改善ニ
ーズについて、アンケートを実施した。
<アンケート期間>
①
平成21年1月中~2月始めの間にメンテナンス作業に関するアンケートを行っ
た。
②
アンケート用紙の設問を以下に示す。
「石油コンビナートのメンテナンス作業等への RT 適用に関する調査」アンケート項目
■ 御社の生産工程で、特にメンテナンス作業などRT技術を活用し、省人化・効率化し
たい課題はありますか?
① 課題名
(1)その内・(2)必要な機能
② 現状の手法
③ 設備分類
設備名
機器名など
④ 作業条件
稼動中
停止中
⑤
問題点(ボトルネックになっている部分)
1.技術的な問題・2.作業者に関する問題
⑥
課題をオープンにできる
⑦
同業他社との連携
⑧
必要度合い
⑨
導入希望金額
3.その他
できない
できる
できない
■コンビナート全般で省力化・省人化・効率化などについてご意見・ご要望がありますか?
(あれば記入下さい)
■プラント、コンビナートが次世代へ向けて解決すべき事項はなにですか(複数回答可)
1.
プラント設備の経年化対策
2.
人材の確保
3.
職場環境の改善
4.
定修工事の効率化
5.
Co2 削減など省エネ、エコ対応
6.
その他(自由にお書きください
)
プラント、コンビナートの次世代へ向けて課題解決するため、異業種・他分野(情
報・ロボット分野など)との交流や、新しい技術の活用が必要だと思いますか。
(○を
付けてください)
大いに必要
必要
やや必要
必要性はない
<アンケート集計結果>
アンケートの集計結果を次ページ表8-1
ズアンケート結果集約表
コンビナートメンテナンス作業の省力化ニー
に示す。
- 58 -
このアンケートの結果を見ると、技術的にもかなり広い範囲で作業の自動化やロボット
化が期待されていることがわかる。おそらく実際、既に多くの目的でそれなりのロボット
的な機械により自動化、遠隔制御化された作業が具体的に検討され、一部、実行されてい
るとも考えられる。
さて、この表に掲げられた作業の種類は多岐にわたっており、それに対応するロボット
技術は、各々、個別の作業目的や環境条件に適して働くものでなければならない。一般に
は、汎用のロボット的な機器を開発して、それに多くの種類の作業を負わせることが期待
されること多い。しかしとくに、ここに挙げられた作業の各々に必要とされる環境や作業
の内容条件は個別にかなり異なっており、むしろ、個別の作業を完遂するロボット、ある
いは、自動化された機器を丁寧に作ることの必要性が明らかとなっている。さらに、これ
らの作業のロボット化が具体的に何に貢献するかについても、品質の確保から安全性まで
拡がっている。作業については、その目的によって求められる具体的な内容や仕様が異な
ることから、自動化・ロボット化に当たっては、その目的が何なのかをハッキリと意識し
て、更に分析しつつ開発を進めることが不可欠であることがわかる。
一方、これらの作業を実現する上で必要に応じて開発されるであろう要素技術は、かな
りの共通性が見受けられる。従って、開発された技術自体は他の作業目的にも使える可能
性が大きいと思われる。ただし、個々の要素技術についてそれがどこまで使えるかは、実
際に働かせてみないと解らないことが多いので、要素技術についても汎用化の視点より、
個々の作業をしっかりと達成することを重視するという視点ははずすことができないと考
えられる。
- 59 -
- 60 -
操業
ハンドリング
項 目
貯糟 (含 煙突 )の 板厚計 測
貯槽 スラッ ジ測定
マイ クロ目視 検査ロボット (遠 隔) 埋設 配管 の内外 面目視 検査 海底 配管 のコーティング目視、減肉 検査 と補 修
断熱 機器 などの腐 食、減肉検 査
高所 配管 フランジ部の 気密 テスト 熱交 換器 チューブの検 査作業 広域 設備 異常点 検、診断
巡回 パトロールの 高度 化
ヘリコプターによる目視 検査
有毒 ガス 検知
窒素 雰囲 気での 固着触 媒抜 取り作 業
バル ブ弁座 補修
回転 機芯 だし
大型 サイ ズ、フ ランジ締付 けボル ト・ナット 締緩 作業
ハンマー作 業
フランジ開 放
高圧 水洗 浄の遠 隔化
熱交 換器 チューブの高 圧水洗 浄
貯糟 の内 部清掃
減肉 部の オーバレイ 溶接
現場 溶接 自動化 (配 管) 高所 の肉 盛り溶 接
塗装 作業
高所 塗装
低圧 モータの絶縁 診断
計器 の校 正
電磁 流量 計の校 正
水管 壁の 肉厚測 定
水管 壁ダ スト除 去、清掃を遠 隔自動 施工
高所 、狭 隘部 などの足 場組立 ロボッ ト
仮設 昇降 設備
中重 量品 (80Kgのイメ ージ )の 取扱
消火 作業
1 ペレット、フィル ムの取 扱自動 化
2 フレコンバック 充填作 業の 自動化
3 ホ ッパーへ の樹脂 投入 自動化
No.
検査
1
測定
2
診断
3
4
5
6
7
8
広域
9
10
11
安全
12
作 業 触媒抜 取り
13
バルブ
14
回転機
15
ボル トナット
16
締 め・緩め
17
フランジ
18
洗浄・清 掃
19
20
21
溶接
22
23
24
塗装
25
26
電気
27
計装
28
29
ボイ ラ 検査
30
清掃
31
全 般 作業足 場
32
33
中重量 品取 扱 34
防 災 火災対 応
35
区 分
コンビナートメンテナンス作業の省力化ニーズアンケート結果集約表
○
から くり 的発 想で作 業負担 を軽減
ホ ッパーよりフ レコンバッ ク
25KG程度 の紙 袋より
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
作業区 分
操業中 休止 中
○
○
○
機械 化に よる作業時 間短縮
広域 自動 点検(画像 処理 )
○
広範 囲監 視エリ ア。エキスパート 認識、判断 機能
○
操縦 安定 性・接触回 避・故障 時着陸 など
フィ ルター代 えるだけで 有毒ガス検 知
○
セラミック ボール と触 媒の 分離な どの作 業有り
オ ーバ ホール 時の弁 座自 動補修
修正 値の 自動割 り出し、記録 、保管 機能 。簡 易に
軸力 検出 、小 型軽量 、電 動式、高温 対応
○
安価 、簡 易、可搬、安全 打撃 機能
○
コンパクト ・ハンディタイプ、流化 水素噴 出可 能性場 所
自動 運転 、監 視
機械 化による作業時 間短縮
油分 処理 。保 護具な しで 入糟で きる
連続 溶接 と内 面形状 への ポジ ショニング (公 開否 )
高精 度、高品 質自動 溶接
下地 処理 、溶 接、仕 上げ作 業。高信 頼性
ケ レン、塗装の 自動 施工
○
下地 処理 、塗 装作業
○
活線 下で単 線毎 に連 続絶 縁測定 、傾 向管 理、メンテ予 測 ○
試験 器に自動 データ収 集し、出 力する
簡易 型(現場 式)で自動 計測
ダ スト除 去後自 動肉厚 計測 。自 動位置 設定 。粉 塵環境
強固 な付着 ダスト除 去。自動位 置設 定。粉塵環 境
自動 足場 組立
○
簡易 、簡 単に設置
○
簡易 、可 搬
○
耐熱 性能 あり 、自 走して映 像、放 水機 能など
※火 災時
補 足
スティ フナやガ ーダ回避 。落 下防 止
油中 、防 爆。自律遠 隔
遠隔 内部 検査。位置 検出機 能。防塵 ・防 水
掘削 せずに検査 できる技 術
ガ スフリー状 態で遠 隔操 作
断熱 材を取り 除かな いで高精 度検査
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
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防爆
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品質
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○
○
○
○
○
○
貢献
効率
安全
○
○
○
○
○
コンビナートRT適用に関するアンケート結果集計表(専門委員会資料)(長井案)
(これらのアンケートは、調査専門委員会の委員の方の団体関連企業様にご協力を頂いた)
表8-1
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
省力
必 要度
○
◎
◎
◎
◎
◎
○
○
◎
○
◎
○
◎
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○
◎
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○
◎
◎
◎
○
○
○
○
◎
◎
○
○
○
○
◎
○
○
◎
8.2
モデルプロジェクト
本調査事業では、総論賛成的な机上の理想論に終始することを避け、産業界における具
体的な動きを喚起するため、関係企業及び関係機関の協力を得ながら、同テーマにおける
モデルプロジェクトの組成を目指してきた。その中で、今回は新日本石油株式会社より、
具体的な検討に向け貴重なご提案いただいたので、以下紹介する。
同社における提案とは、具体的には「脱硫装置等における触媒交換作業の自動化」であ
る。
現在、石油精製工程においては、製品の高付加価値化、環境規制の強化、原料費低減な
どの観点から、触媒を用いた装置の導入が進んでいる。(水素化脱硫装置、接触分解装置、
接触改質装置など)
写真8-1脱硫装置反応器
(新日石㈱ご提供)
それらの装置の一つ、脱硫装置の反応器には、アルミナ、シリカなどの構造体に数種類
の貴金属を含ませた、約1.5~4㎜程度の高価な触媒を大量に使用している。触媒は、
一般に充填から数年間使用し、その後抜き出される。抜き出された触媒は、産業廃棄物と
して処分する場合と、再生処理を施し再利用する場合がある。
写真
8-2
触媒例
(新日石㈱ご提供)
- 61 -
触媒抜き出し作業は、大きく分けて反応器の上部から抜き出す工法と、反応器下部から
抜き出す方法がある。現状、いずれの方法も作業員が反応器内に直接入っての作業を行っ
ている。作業環境は、発熱を防ぐため窒素雰囲気で、閉所、暗所という危険なものである。
更に、反応器下部から抜き出す場合、抜けきらずに残った 10~20%の触媒を掻き出す必
要があり、触媒の山が崩れる危険性もある。
具体的には、直径数メートル、高さ数十メートルに及ぶ円筒形の設備の中に、数トン~
数百トンの触媒が使用されている。反応器の構造は、設備により多少異なるが、抜き出し
ノズルは設備の下方に存在し、油が通る出口とは異なっている。
図8-1
安息角
(新日石㈱ご提供)
作業は、1名程度が数十分交代で反応器内に入り、人力により抜き出しノズルから触媒
を掻き出すことになる。本作業は、通常、窒素雰囲気にて行われるため、作業員は空気を
供給する機器を装着しての作業となり、過酷な環境故、作業効率も作業時間も大きな制約
を受ける状態となっている。
最近は、窒素雰囲気での作業を避けるため、残存触媒を水漬けする方法に移行している。
但し、水漬けした場合は再生再利用できなくなる。
これら危険作業の回避、再生再利用の促進、作業効率の改善をRTの活用により達成し
たいというニーズを持っている。
今後、本ニーズをより詳細なタスクに分析し、どのようなシーズが最適なのかを検討す
る必要があるが、現状以下の機能が求められるものと考えている。
(例)
・防爆構造
・転倒回避、又は起き上がり
・触媒破壊を防ぐ柔軟作業機構
・50cm×80cm 程度の小型化、軽量化
・遠隔操作
- 62 -
・当該機器の簡易メンテナンス
等
本提案に対して、委員会、中国経済産業局及び岡山県産業振興財団が連携し、取組を進
めるべく、産業クラスター計画に参画する全国の支援機関等に協力を呼びかけ製油所見学、
技術交流会、ニーズ発表セミナーを平成21年2月に実施した。
見学会及び技術交流会には、全国から支援機関、メンテナンス企業、RT企業など30
名程度が参加し、具体的な現場の状況を見学しながら、従来とは異なる様々な視点から有
意義な意見交換を行った。
※他社プラントオーナー企業のニーズ発表も行われたセミナーには約120名が参加
し、セミナー後に本テーマへの参加者を募った結果、各社提供ニーズに対し十社程度
がプロジェクト参加を希望している。
本件のような異業種も交えた川上川下でのニーズとシーズのすり合わせは、世間一般で
言われてるシーズとニーズのマッチングの一言で済まされるほど単純なものではなく、そ
の運用に関し想像以上のコーディネート能力が求められ、且つ事務負担も膨大なものとな
る。
そのため、今現在もオーナー、メンテナンス、RTシーズのそれぞれの立場から、実用
化、事業化を目指した検討が進められている状態ではあるが、実際に日本を代表するプラ
ントオーナー企業から本テーマに基づく提案をいただけた事は、極めて意義深いことであ
る。
8.3
各地域の取組紹介
全国には、本委員会と方針を同じくする取組、これまで直接的にプラント分野に関わり
が無いが、多様な要素技術の集積を有する取組が存在している。
今回、経済産業省が推進している産業クラスター計画における政策ミッション「①イノ
ベーションを促進する事業環境の整備」、「②国家戦略に沿った新産業の創出」、「③地
域振興との相乗効果の現出」を踏まえ、広域的な連携の下、協力機関が主体的なオブザー
バとして参加されているので、以下取組を紹介する。
(1) 茨城県鹿島地区
同地区では、国内有数の鹿島コンビナートを強みとしており、そのコンビナート中心に
リーク事故未然防止等の安全性向上及びメンテナンスコストの削減・設備稼働率向上によ
る石油化学産業の国際競争力の強化、更に産業インフラの劣化診断技術として新産業創出
を目指すと共に日本発国際標準技術の確立を目的とした取組が進められている。
具体的には、茨城県工業技術センター、国立大学校法人筑波大学、三菱化学株式会社
鹿島事業所、株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス等が中心となり、関東経
済産業局との連携の下、保温材を剥がさず且つ仮設足場を不要とする化学プラント配管外
面腐食診断システムの開発が行われている。
- 63 -
図8-2:表面錆検査装置
図8-3
中性子線水分検出の概要
(出所:茨城県工業技術センター)
(2)静岡県浜松地区
同地区では、国内有数の輸送用機器・光電子産業の集積を強みとしており、アジアで一
番輝くものづくり都市の実現、安全・安心・快適で持続可能なイノベーション社会の実現
を目指した取組が進められている。
具体的には、文部科学省知的クラスター創成事業(第Ⅱ期)および関東経済産業局産業
クラスター計画との連携の下、浜松市、浜松商工会議所などの関係機関により光技術並び
に光技術と地域独自技術の融合による革新的技術・製品の連鎖的創出を目指した「浜松地
域オプトロニクスクラスター構想」を展開しており、イメージング/センシングを中心とし
たオプトロニクス(光電子工学)技術によるイノベーション創出を進めている。
イメージング/センシング/
情報通信/ナノテク/レーザ等
既存産業の高付加価値
化と、新たな柱・次世代
産業として、オプトロニクス
産業の拡大、発展を目指す
図8-4
浜松地域オプトロニクスクラスター構想概念図
(出所:浜松市)
- 64 -
図8-5
フォトカウンティングX線イメージャー
(3)中部地域
同地域では、中部経済産業局産業クラスター計画東海ものづくり創世プロジェク
トの一環として、早稲田大学WABOT-HOUSE研究所、三重大学四日市フロントなど
が、社会インフラや四日市コンビナートを対象としたメンテナンスに関する研究会活動に
取り組んでいる。
特に、岐阜県に拠点を構える早稲田大学WABOT-HOUSE研究所においては、ロ
ボット技術研究機関としての位置づけだけでなく、全国でも数少ない産業振興とRT研究
開発を効果的につなぎ合わせ地域の活性化に繋げる研究拠点・活動機能を有している。今
般、早稲田大学が同研究所を内包した形で「中部地域連携センター」として発展的な組織
改編を行い、その連携活動領域を中部地区全域に拡大することとなっている。
(4)近畿地域
大阪地区
同地域では、大手家電・電子メーカー、大学研究機関の集積を強みとしており、世界的
なロボットクラスターの形成によるRT創造都市を目指した取組が進められている。
具体的には、近畿経済産業局産業クラスター計画との連携の下、大阪市が中心となり次
世代ロボット産業クラスターの形成に向け、ロボット産業施策の戦略的な推進拠点として
ロボットラボラトリーを設置し、拠点クラスターとして300社を超える企業が参加する
「次世代ロボット開発ネットワーク RooBO」が形成され、共同受注から事業化まで取り組
んでいる。本ネットワークには、研究機関・小売・商社・企画・サービス・要素技術など
多岐にわたる業種が参加しており、高速道路保全作業環境改善プロジェクト、屋上緑化の
知能制御事業、ロボット教材を用いた人材育成事業など様々な事業に取り組んでいる。
- 65 -
シーズ
ニーズ
ビジネスサポート・開 発 サポート
ロボットメーカー
(インテグレーター)
ロボットテクノロジー
(要素技術メーカー)
・生 産 現 場
・都 市 開 発 事 業 者
RooBO事務局
・病 院 など医 療 ・福 祉 関 係 事 業 者
研究会・勉強会
・住 宅 事 業 者 ・ハウスメーカー
・マンションデベロッパー
プロジェクト化
・オフィス機 器 メーカー
・セキュリティ、娯 楽 など
ロボット・ロボットテクノロジーが様々な分野へ応用される
図8-6
【写真8-1
RooBO概要図
RooBO 会員企業が開発する生産現場向けロボット例】
環境計測ロボット
自走式高圧盤検査ロボット
(5)岡山県水島地区
同地区では、国内有数の水島コンビナートや輸送機械関連産業の集積を強みとしてお
り、
「ミクロものづくり」を掲げ、県内の技術力のある企業と、大学や高専、岡山県工業技
術センターといった技術シーズを持った研究機関、産業支援機関、金融機関などが一緒に
なって取り組んでいくことで、競争力のある産業クラスターの形成を目指した取組が進め
られている。
具体的には、中国経済産業局産業クラスター計画、その推進機関である社団法人中国地
域ニュービジネス協議会、拠点機関である財団法人岡山県産業振興財団が連携し、水島を
中心とする大手企業に対し、RT導入が期待される分野のニーズ把握を行い、県内企業と
のマッチングを行うなどの最適なコンソーシアムを組み、水島企業のニーズを踏まえたR
- 66 -
Tの研究開発・製品化を目指す取組が進められている。
本調査事業においては、関係機関協力の下、水島コンビナート企業と、全国の中堅中小
企業等との技術交流を行うべく、平成21年2月10日(火)に共同セミナーを開催した。
同地区では、関係機関が日々実践している「顔の見えるネットワーク活動」により、水島
コンビナート企業との信頼関係が構築されており、本セミナーにおいても、その信頼関係
に支えられる形で、新日本石油精製株式会社、旭化成ケミカルズ株式会社などのプラント
オーナー企業が、参加者に対し製造現場で抱えている課題や求められている技術について
発表いただいた。
現在、発表いただいたテーマについては、全国から参加者を募りプロジェクト化を目指
した取組が進められている。
図8-7
水島コンビナートRTに関する取組概念図
(出所:中国経済産業局)
- 67 -
第9章
提
9.1
言~今後の取り組みへの期待~
異業種・他分野との交流促進、技術導入
今回の調査の枠組み自体が
幅の広い異業種、他分野(川下企業:プラントオーナー、
川中企業:プラントエンジニアリング、プラントメンテナンス、川上企業:ロボット・RT
そして学術分野、各地の支援組織)の連携から生まれた。今までも川上・川下の交流から
の産業創出は期待されてきたが、実際に川下、川中、川上企業に加えて産学官の枠組みも
包含して約半年に渡って活動を行ったことに大きな意義がある。この取組みから本調査で
もプラントオーナー企業やメンテナンス企業からニーズが提示され、それに対するソリュ
ーション提案の動きが具体的に起こりはじめていることがさらに意義深い。今後もこの枠
組みが継続して機能し、具体的な成果が結実することを期待するものである。
9.2
オールジャパンでの広域連携、地域間のアライアンス構築
今回の調査の枠組みのもう一つの大きな特徴は、東京でのみ委員会が開催されたのでは
なく、実際のプラント現場に出かけてプラントオーナー企業の技術担当者やその地域での
取組み状況のヒアリングを行い、オープンな現場見学、セミナーなどを委員会とともに開
催して、地元の中小企業(要素技術メーカー)や非破壊検査企業など幅広く情報提供を行
い、また意見交換を行ったことにある。顔の見える広域連携、地域間連携の端緒についた
この取り組みが継続する方策が図られることを期待する。
9.3
プロジェクト化に向けたアクションプラン
端緒についた今回の取り組みから今後、具体的な成果を得るためのアクションとして様々
な方策が考えられる。
(1)
今回形成された下記の各分野が同じテーブルにつく枠組みの機能的な維持
①
川下分野(プラントオーナー企業)
②
川中分野(エンジニアリング・メンテナンス・非破壊検査各企業)
③
川上分野(ロボット・RT、光学など技術企業《インテグレート企業
④
学術分野
⑤
支援分野(経済産業省、各地域支援機関、クラスター拠点機関)
(2)
要素技術企業》)
具体的なアクションプランⅠ(具体的な課題解決プロジェクト組成)
①
本調査で抽出されたニーズの絞込み作業
・
具体的な課題解決に結び付けられる課題の絞込み
②
タスクの分析(要求される作業の整理)
必要に応じてプラントオーナー企業及び実際に現在メンテナンス作業を行っているメ
ンテンナンス企業へのヒアリングを実施
③
タスクの分析に立って川下・川中・川上各分野のすり合わせ
・
支援機関、学術分野がサポートを行う。
・
仕様の作成、安全に配慮した運用手順の作成
(3)
①
具体的なアクションプランⅡ(さらなる広がりを目指して)
ニーズの抽出
川下・川中分野からさらにモチベーション高い参画を促し、具体的なニーズを抽出する。
(経営者、技術者、各地のコンビナート)
- 68 -
②
シーズの参画
川上分野からのモチベーションの高い参画を促し、課題解決のプロジェクト組成をさら
に進める。
③
上記アクションプランを実現するために
各分野が参画しながら課題解決に向けて成果をあげていく手法として提示したタスク
オリエンテッドなアプローチを具体的な課題にあてはめて機能させることも重要である。
また、地道な活動(製油所現場の見学、技術交流会・セミナーの開催など)も進めていく
必要がある。
また、継続した調査も必要となってくる。内容としては今回調査からさらに進めて、よ
り具体的な課題抽出と課題解決策の方向性の提示(個別具体的な内容は秘密事項と重なる
場合もあるので、解決策の方向性、つまりこの分野へ参画する企業担当者が必要なアクシ
ョンをイメージできるようなもの:タスクの分析など)を提示したり、国際競争の観点か
ら海外動向などが調査対象となる。
9.4
枠組みの維持、機関連携のために
今後、成果を実現するためには、川下、川中、川上企業が参画する枠組みの維持、活性
化が不可欠である。また具体的なアクションを起こす基礎にあるのは各地域での地道な取
り組みである。地域の支援機関やクラスター政策とも連動した実態のある活動が望まれる。
そのためには、川下、川中、川上各分野のキーマンやそれをつなぐコーディネーターの役
割は大きい。さらに産官学連携や広域連携を機能的に動かす意味でもコーディネーターの
役割が大きい。コーディネーター役は単独で一人で担うだけでなく、キーマンやコーディ
ネーターがチームで機能するような新しい産業創出の方策も必要となってくる。
9.5
メンテナンスビジネス・技術の他分野への展開
今回の川下、川中、川上、産学官の枠組みから将来、結実する成果を異分野で共有して、
我が国の国力の底上げに寄与できれば、望外の喜びとなる。その方向性として2つ考えら
れる。
ひとつは、異分野として例えば、道路、トンネル、橋梁などの社会インフラのメンテナ
ンスでの活用などが考えられる。
また、もうひとつの方向性として今回、形成された枠組みから成果が具体的におこれば、
成功事例として、他の分野でも川下、川中、川上の枠組みが形成され、成果が生まれるこ
とを期待する。
- 69 -
<添付資料>
(1)
石油化学コンビナートのメンテナンス RT 化調査研究専門委員会議事録
(第1回~第3回)
- 70 -
第1回石油化学コンビナートのメンテナンスRT化調査研究専門委員会議事録
1.日時:平成20年12月24日(水)14:00~16:00
2.場所:東京都港区芝公園3-5-8
機械振興会館
5S-7会議室
3.議題:
(1)委員紹介
(2)調査事業の目的等について(事務局)
(3)本委員会の進め方について
・主旨、調査研究のポイントについて(幹事)
①
現地調査について
②
アンケートについて
③
成果報告書について
(4)その他
4.配布資料:
①
委員名簿(添付-1)
②
事業実施計画書
③
コンビナート等におけるRT活用検討委員会(仮称)
④
「石油コンビナートのメンテナンス作業等へのRT適用に関する調査」のポイント
⑤
「鹿島コンビナートのメンテナンス RT 化課題調査WG」出張報告
⑥ 「石油コンビナートのメンテナンス作業等への RT 適用に関する調査」アンケート
項目(案)
⑦ 「石油コンビナートのメンテナンス作業等への RT 適用に関する調査」報告書
目
次及び骨子(案)
5.議事概要:
(1)資料①に基づき各委員の紹介があった。
(2)資料②に基づき日機連「石油化学コンビナートのメンテナンス作業へのRT適用に
関するニーズ調査研究」の業務概要について事務局から説明があった。
(3)資料③、④に基づき本事業(コンビナートRT化)の主旨等について説明があった。
(4)資料⑤に基づき鹿島コンビナート現地調査WGの概要について事務局から報告があ
った。
(5)大道委員長からコンビナートのRT化にあたって、以下のコメントがあった。
①
残されている課題はハードルが高いものばかりであり、既存の考え方の積みあげで
は解決は困難。コスト半減、労働力半減など大きな目標を示し、従来の手法を根幹
から見直すパラダイム展開が必要。
②
未来予測はよく外れるが、我が国の人口減少は確実に到来する。それに耐えうるよ
うなメンテナンスにおける技術導入のあり方についての議論が必要。
③
全てがロボットや技術で解決できるわけでは無いが、対応できる課題についてはロ
ボット業界も本腰を入れて頑張らなければならない時期に来ている。
(6)主要討議内容
◆コスト、労働力の話は関係業界に対し誤ったイメージを伝える可能性がある。経年化の
- 71 -
進行に伴いメンテナンス費用は増加するため、当然必要となる費用である事を伝えるべき。
むしろ人間と技術の役割分担について整理が必要。
◆論点メモには、油田委員の言葉を借りて、タスクオリエンテッドという表現を入れた。
シーズとニーズをマッチングしただけでは課題は解決されない。課題をタスクに分解し、
そのタスク毎に必要なシーズを考える必要がある。
◆ロボット屋に話しを持ち込まれると、何でも解決してもらえるという印象が強いが、決
してそんなことはない。鹿島の取組も同様だが、兎に角一つ一つの課題を着実にクリアす
る事が大切。何でもできるロボットは、結局コストばかりかさみ、何もできないロボット
になる。
◆化学系では、技術革新に伴いプラント設備の更新・新設がなされる。近年大きな技術革
新が少ないため、現在のプラントを基本に考える必要があり、引き続きメンテナンスが必
要とされる状態は続く。
◆プラントオーナー側の認識としては、設備更新のタイミングは技術革新であり、経年化
を理由とした設備の更新は珍しい。
◆業界では既に50歳を超える層が4割に達しているため、労働力の減少を真摯に受け止
めている。外国人労働者の議論は別途あるが、今回のような技術導入によるメンテナンス
の生産性向上は必要な取組。
◆結果としてコストや労働力半減になるかもしれないが、人件費や労働者数だけでなく、
技術導入により人間を超える成果が出るという打ち出し方も大切。RTだから、ロボット
だから出来る課題、人間を超えるアウトプットが出させる課題を探す必要がある。
◆石油連盟で取り組んだタンク外板検査ロボットが良い事例となる。人海戦術の定点観測
から、ロボットを活用した面検査が実現した事から、検査精度が大幅に向上した。
◆それは大切な視点。例えば「リアルタイム」や「精度」については人間では担えない作
業が可能となる。(※他には「スピード」、「パワー」なども)
◆爆発事故は突然起こるが、原因となる腐食劣化などは徐々に進行するもの。リアルタイ
ムといっても瞬時ではなく、毎年、毎月などのペースでも良い。
大切なのは診断や予測に資する技術データーの蓄積であり、そのために技術を導入する
事は大切。海外ではリスクマネージメントの議論が進んでおり、そのようなデーターに基
づくメンテナンスや管理がなされている。
◆既に社会は創る時代から維持管理が必要な時代に来ている。コンビナートに限らず本委
員会を通じて得られた知見は、次年度以降の活動として社会インフラも視野に入れる事も
考えて議論を進めたい。
<以上の議論からの視点>
メンテナンスが必要であり、その手法を根本から見直など、人と技術の役割分担が必要
との方向性が重要。
この成果が広く世の中で活用されることに期待する。
(課題の抽出について)
議論の参考として、個別企業の課題項目の参考資料提示があった。各項目は取り組みた
い意向もあり、合意あればモデルプロジェクトの可能性もある。
◆プロセスエンジニアは、先ずメンテナンスフリーを目指して設備を考えるが、どうして
- 72 -
も①詰まり、②劣化、③腐食漏洩などが生じてしまう。タンクや槽類など比較的検査し易
い機器もあるが、やはり大小口径、様々な形状の配管に一番課題が残されている。
◆全体的に特に新しいテーマでは無く、これまで挑戦して解決できなかった課題も多いが、
先ずは議論のたたき台となる具体的な課題が大切。このように具体的な課題を集めるとこ
ろから始めなければならない。
◆確かにこれまで解決できなかった事も多いが、今回のような異業種や関係業種が集まっ
て議論する場はこれまで無かったので、新たな解決策が見いだせる可能性はある。企業側
もその可能性を感じ提示しているのではないかと思う。
◆技術は着実に進んでいるため、10年前に出来なかった事が出来ることは沢山ある。今
の技術進歩も踏まえ課題の整理を行えば、解決に結びつく可能性は十分にあると思う。
◆具体的な課題を集めた上で、重筋作業のような改善ニーズと、メンテナンス手法を劇的
に変える必要があるようなニーズの整理が必要。
◆具体的な課題を集めた上で、多少抽象化した形で課題をまとめると委員会として議論し
易い。個別企業の個別課題だけを議論しても切りが無い。
◆次回に向けて各委員に各業界における課題の事例収集作業に御協力いただきたい。
(アンケートについて)
◆誤解が非常に強いため、今回のアンケートは敢えて「ロボット」という表現を使用して
いない。この場を借りてアンケートの配布先等について委員に相談したい。
◆各団体における委員会等においてアンケート協力依頼を行ってもらう事で概ね合意。詳
細については改めて事務局より連絡。
◆業界的な視点で議論するのであれば、調査項目はコンビナートに共通する課題を中心に
聞いた方が良い。
◆その方向で調整する。ただし、個別企業の課題も集めたいので、その他事項等で課題を
拾えるような項目としたい。
(次回委員会について)
◆委員長の都合を踏まえ、各業界の課題を持ち寄るため第2回委員会は2月10日に開催
する。その際、水島訪問と調整が可能であれば水島開催の可能性も含めて検討する。取り
まとめを行う第3回は3月上旬で改めて調整する。
以上
- 73 -
第2回石油化学コンビナートのメンテナンス RT 化調査研究専委員会議事録
1.日時:平成21年2月10日(水)10:00~12:00
2.場所:岡山全日空ホテル (曲水<西>会議室:岡山県岡山市駅元町 15-1)
3.議題:(1)前回議事録確認
(2)水島コンビナート(新日石㈱)視察についての意見交換
(3)アンケート調査結果について
(4)成果報告書の取り纏めについて
(5)今後の進め方について
4.出席者:(敬称略・順不同)
(委員)
大道委員長(名城大)足立幹事(ビジ協)岩間委員(石化協)紺野委員(石油連盟)長
井委員(メンテ工業会)中村委員(東京農工大)油田委員(筑波大)濱田委員(ロボッ
ト工業会:事務局)
(同委員会オブザーバー)
河端(新日石)藤沼(茨城県工業技術センター)原田(浜松市商工部)今井(岡山県産
業振興財団)小笠原(早稲田大)伊藤(中部経済産業局)森安(中国経済産業局)田中
(資エネ庁)
5.配布資料:資料-1
前回議事録
資料-2
水島コンビナート製油所見学及び技術交流会関連資料
資料-3
コンビナートプラントにおけるRT活用セミナー
資料-4
アンケート調査結果集約表
資料-5
成果報告書目次及び骨子(報告書の概要は当日資料配付)
資料-6
報告書作成作業工程
6,議事要旨
(1)前回議事録確認:コメントある方は事務局に連絡して下さい。
(2)触媒抜き取りのRT化ニーズについて(新日石殿ご説明)
①
反応器の下部ノズルから排出するが、安息角部分が在留する。エアラインマス
クなど装着して高温下作業でかきだしている。(3K作業だが事故発生事例はなし)
②
重油系は固着(堅くなる)する。軽油、ガソリンは固着なし。アスファルト成
分や残留物が触媒(1.5~2mm 径・2~4mm 長さ)に付着する。触媒量は数トン~数百
トン。
(3)触媒抜き取り作業に関する質疑
(Q)プロセス屋との協調などにより改善は図れないか?
例えば、気相比変えるとか・・・
(Q)RT化対策は、固着するものからやるか、固まらないものからやるか検討要す。
(Q)人とRTとが協調して代替えできるものは代えて行くと言う考え方が良い。
(Q)RTを考える場合は、作業分析が必要。作業を数値と数式で書き表すことがで
きるか。詳細な手順書などが必要である。
(Q)振動や高圧などを利用することも考えられる。
(Q)この案件は、報告書への記載は可能か→可能と考えるが詳細は追って相談する。
本件は、中国径産局管轄の事案であり、セミナー出席者やオーナー、RTメンバーな
- 74 -
ど参画される方と検討をどう進めるかについて別途調整を行う。
(4)プラントメンテナンス作業について
①
コンビナートのシャットダウンは4年に一回の頻度で行う。現状は、一プラン
トで2~3千人の人が必要なので全国のプラントを対象に年間山積みを計画して
いる。
②
将来の少子高齢化や熟練技術者不足を考えると、これらの人員を確保すること
は無理なので何らかの対応が必要で、RT適用はその対策として期待が大きい。
③
若い人は現場作業を、機械(=RT)を使ってやることにしないと集まらない。
④
汎用機と専用機を使い分けてメンテナンス作業を行う。
⑤
ロボットによる作業自動化を考える。
⑥
プロセス側は、プラント機器・性能・構造など細かな違いが多い。
⑦
海外プラントでは、オーナーが遠隔自動機器を持っている。
⑧
20年前にプラントメンテナンスのロボット化にトライしたが、あまり使われ
ていない。その時の経験は役立つし、データもある。今、RT技術も高度化してお
り、メンテナンスニーズを再調査することは有意義である。
⑨
安全に関しては、考え方が欧米と日本とでは違う。(文化の差=欧米は安全思
想が根本にあり、設計をする)これは報告書に記載すべきである。
(5)アンケート結果のまとめ
①
横軸はメンテ作業内容、縦軸は設備種類で纏める
(6)報告書内容について
①
現状の金融危機状況もふれる。
②
設備の耐用年数上、メンテは不可欠であることは強調する。
③
RTは、人が分かり易い内容とする。
④
現場を見て、報告内容を読んで理解できることが必要である。
⑤
パラダイム転換を強調する。
(7)その他
地域や業界を集め、今後の進め方などを協議する懇談会を企画する(詳細別途)
以上
- 75 -
第3回
石油化学コンビナートのメンテナンス RT 化調査研究専門委員会議事録
1.日時:平成21年3月13日(金)10:00~12:00
2.場所:機械振興会館
B2-1会議室
(東京都港区芝公園3-5-8)
3.議題:
(1)前回議事録確認
(2)アンケート調査結果の集計について
(3)成果報告書(最終版)の編集について
(4)次年度以降の進め方について
(5)その他
4.出席者:(敬称略・順不同)
(委員)
大道委員長(名城大)足立幹事(ビジ協)朝倉委員(エン振協)岩間委員(石化協)紺
野委員(石油連盟)長井委員(メンテ工業会)中村委員(東京農工大)油田委員(筑波
大)濱田委員(ロボット工業会:事務局)
(同委員会オブザーバー)
小笠原(早稲田大)細見(RooBO)伊藤、中平(中部経済産業局)森安(中国経済産業局)
田中(資エネ庁)岩田(産機課)
5.配布資料:
資料-1
前回議事録
資料-2
アンケート結果集計表
資料-3
調査報告書(案)最終版
資料-4
調査研究報告書の要旨
資料-5
RooBO 広域連携マッチング会(13日セミナー)
(コンビナートにおけるRT活用の可能性)プログラムとアンケート用紙
6,議事要旨
(1)前回議事録確認:コメントある方は事務局に連絡して下さい。
(2)アンケート調査結果の集計について
メンテ工業会長井委員が取り纏めた資料-2(アンケート結果集計表)について審
議を行った。この結果については、別途ニーズ内容調査等を行う必要があるが、次
何度以降、検討方針などを関係者にて協議することとなった。
(3)調査報告書(最終版)の編集について
各委員などから寄せられたコメントについて、審議を行った。
①
用語の統一については、事務局にて再度調整する。但し、「RT」に関しては、
説明文を報告書の冒頭に記載すること(事務局担当)
②
自動化や機械化などの用語は全書中で統一する(事務局担当)
③
第2章=次世代産業育成等の記載については、産業環境状況を述べること。
④
第7章=産業間の交流や人材不足などの必要性を記載(事務局担当)
⑤
アンケート表は、メンテ工業会作成のものを添付する(事務局担当)
- 76 -
⑥
石油コンビナートは、石油精製と石油化学と二種類のコンビナートに分類でき
るので、記載は分けること(事務局にて修正)
⑦
P.10~11。P.34~35。P.56,57,58は参考資料2の通り
修正のこと。(事務局担当)
⑧
3.1章は全面改定のこと。
⑨
第9章のポイント
Ⅰ.異業種・他分野との交流促進・技術導入
Ⅱ.メンテナンスビジネス・技術の他分野への展開
Ⅲ.オールジャパンで広域連会・地域間のアライアンス構築
Ⅳ.プロジェクト化に向けたアクションプラン
Ⅴ.プラットフォーム・機関連携
等について記載する(幹事担当)
⑩
全体について誤字・脱字等が目立つ。修正要(内容略。事務局修正)
(4)コンビナートRT適用の調査、検討はロボットビジネス推進協議会でも次年度活動
を行うことを決定している。次年度以降の進め方については、別途関係者で協議し、
継続して推進していくことを確認した。
以上
- 77 -
(2)【RooBO 広域連携マッチング会】コンビナートにおけるRT活用の可能性
東京セミナー講演資料
①
安全管理の重要性について・
②
ニーズからみた石油化学コンビナートのメンテナンスにおけるRT活用
・
名城大学
大道
東京農工大学
教授
中村
教授
(石油化学コンビナートのメンテナンスRT化
調査研究専門委員会委員長)
③
石油コンビナートのメンテナンスにおけるRT活用に関するRooBOからのシー
ズ紹介
・
④
次世代ロボット開発ネットワーク RooBO 運営委員長
細見成人氏
パネルディスカッション資料
・ 筑波大学
油田
教授
・ 日本メンテナンス工業会
- 78 -
長井事務局長
①
安全管理の重要性について
・
東京農工大学
中村
教授
安全管理の重要性について
東京農工大学 大学院技術経営研究科
技術リスクマネジメント専攻 教授
中村 昌允
1.産業事故 アンケート調査結果
経済産業省製造産業局 平成16年8月
1.調査対象
産業事故連絡会(12業種17団体)の企業
2.調査内容
①事故発生に繋がる要因として懸念される事項
②産業事故防止に向けた取組み
③国や業界団体に望まれる安全確保対策の支援
3.調査期間
2004年2月23日~2004年3月31日
4.アンケート回収数
184通(回答率75%)
2009年3月13日
安全管理の重要性
- 79 -
2
調査の概要
1.製造現場で懸念されている事態
① 現場での保安技術力の低下
② 保安スキルを有する人材の減少
③ 設備の高齢化
④ 設備管理コストの削減に伴う事故発生リスクの顕在化
2.要因
① 技術者の定年退職、スキルや設備を知る人がいない。
② 設備更新が十分に行われていない。
③ 設備がブラックボックス化し、
危険性がどこに潜んでいるか分からない。
④ 熟練技術者不足への対応策が進んでいない。
2009年3月13日
3
安全管理の重要性
(1)事故発生に繋がる要因として
懸念される事項
1.保安スキル
人材の減少
2.現場の
保安技術力低下
3.使用設備の
高齢化
4.設備の
ブラックボックス化
出展:『産業事故 に関するアンケート調査について』経済産業省 平成16年8月
2009年3月13日
安全管理の重要性
- 80 -
4
(2)保安スキルを有する人材の減少
出展:『産業事故に関するア ンケート調査 について』経済産業省 平成16年8月
2009年3月13日
安全管理の重要性
5
何が問題か?
<人>
1.熟練技能者の不足
(定年退職、異動、出向)
2.設備・安全管理部門の
人員減少
<教育>
1.若手・中堅技術者の育成ができていない。
2.技術ノウハウの継承ができていない。
3.ノウハウのDB化・マニュアル化の遅れ
<技術>
1.自動化の進展
2.自分の手でプラントを触らない。
スキル人材、設備を知る人が不足
1.どこに危険があるか
分からない
2.設備不具合リスク
の増大
3.対応能力の低下
<設備>
1.設備の高齢化
2.保全部門の縮小
3.設備の新設・更新機会の減少
2009年3月13日
安全管理の重要性
- 81 -
7
2.化学プラントの事故
爆発火災の事故件数
化学プロセスは20~30%
2009年3月13日
安全管理の重要性
8
化学プラント災害の内容(1)
ガス爆発が多い→可燃性液体・ガス の漏洩
2009年3月13日
安全管理の重要性
- 82 -
9
化学プラント災害の内容(2)
2009年3月13日
安全管理の重要性
10
3.最近の事故
事故
課題
1 コスモ石油 1.高経年化設備の更新時の技術継承
火災事故 2.腐食劣化 (エ ロージョン・コロージ ョンによる減肉)
2 三菱化学
3 美浜原発
4 ダイキン
工業
2009年3月13日
1.メンテナンス工事中の事故
2.必要とされている安全に関わる操作の基準化
3.不安全を不安全と認識していない。
1.定期点検直前の事故
2.当該箇所が28年間未点検だったことに、
気づいたが運転を継続
1.停電で緊急停止した蒸留塔の運転立ち上げ
2.プラント建設時の技術者の異動
安全管理の重要性
- 83 -
11
事例1 コスモ石油火災事故
<2006年4月18日 日経新聞記事>
1.事故を起こした装置は、設置から30年以上を経た。
コスモ37年 東燃ゼネラル 41年
2.事故の背景
① 30年を超えて配管がもろくなった
② 設備投資水準が低く抑えられる。
③ 自動運転が進み、 装置に詳しいベテランが減った。
④ メンテナンス能力の低下
設備更新時に、設計時の考えが継承されていなかった。
2009年3月13日
12
安全管理の重要性
事故の原因
<発災機器の胴板の減肉を早めた主な原因>
1996年に更新した際に、内部構造を建設時のバッフルタイプから、
インナーノズルタイプに変更したことで、流体の流れに変化が生じ、
減肉が局所的となったためと考えられます。
コスモ 石油株式会社HP
2006年6月20日
「千葉製油 所において発生した
火災の原因と対応策について」
2009年3月13日
安全管理の重要性
- 84 -
13
事例2 三菱化学㈱
鹿島事業所第2エチレンプラント事故
平成19年12月21日
エチレン分解炉で
火災事故
4名死亡
原因 クエ ンチオイルが
配管のフランジ部
より流出し着火
三菱化学
事故報告書
2007年12月27日
2009年3月13日
14
安全管理の重要性
事故原因
三菱化学㈱鹿島事業所火災事故調査等委員会報告書 平成20年3月
クエンチオイル
漏洩原因
AOVバルブが
仕切り板交換中に
開いた。
<事故調査委員会の指摘>
① 不安全を不安全と認識していなかった。
② 安全に係る操作を基準化していなかった。
③ 個人の安全に頼りすぎた。
2009年3月13日
安全管理の重要性
- 85 -
15
事例3 美浜原発配管破裂事故
2004年8月9日 関電美浜原発3号で2次系配管が破裂し、
5名死亡、6名重軽傷
2次系配管が破断し、
140℃の熱水が噴出
原因 当該箇所が
設備点検リス ト
から漏れ、
28年間未点検
配管肉厚:
10mm→0.4mm
2009年3月13日
安全管理の重要性
1
美浜原発3号機の配管破裂事故
<敦賀簡易裁判所 2007年 3月23日>
機械保修課長ら関電社員4人は、2004年7月末~8月初に、
また、グループ会社の日本アーム社員は、03年11月頃、
破損した配管が、美浜3号機の運転開始以来、
28年間未点検であったのに気付き、
事故の可能性を予見できたのに、適切な処置をとらなかった。
関電
機械保修課長 50万円
機械保修係長 50万円
社員
30万円
社員
30万円
日本アーム
社員
30万円
<略式起訴にした理由> 関電の長年の杜撰な管理体制が過失を招いた。
個人の責任のみを問うのは、公平を欠く。
2009年3月13日
安全管理の重要性
- 86 -
17
問われたこと 「注意義務違反」
技術者の注意義務がどこまで及ぶか?
① 「目前にあることが、他人に損害を与える結果になる
かもしれないことが予見できる」
→ 技術者として行動すべき
② 「そのことが、他人に損害を与える結果になるか
どうかが判断できない」
→ 誰かに相談するようにするように、
組織運営上の仕組みを作る。
2009年3月13日
安全管理の重要性
18
4.事故原因はヒューマンエラーか?
1.コンビナードにおける事故原因
① 基準の不備に起因する事故が多い。
② 機械的損傷 44% 運転ミス 23%
③ 静止機器(配管・タンク)のトラブルが多い。
2.従来の安全管理に限界
設備・システム整備を優先
それでも、残るリスクを、人間の注意力で対処
2009年3月13日
安全管理の重要性
- 87 -
19
コンビナード事故における要因
高圧ガス保安協会
システム的エラー
人的エラー
作業基準の不良
81
認知・確認のミス
21
点検不良
62
誤判断
28
指揮命令の不良
作業情報の提供ミス
44
25
誤操作
技能未熟
55
19
補修不良
小計
比率
6
218
0.64
小計
比率
123
0.36
人的エラーが原因とされる事故の内容を、さらに検討すると、
純粋に人の誤操作や誤判断によるものと、
設備や作業基準の不備のために事故となったも のが含まれている。
大関 親 [新しい時代の安全管理のすべて」p361 中央労働災害防止協会
2009年3月13日
20
安全管理の重要性
最近20年間の 日本で 発生した事故の原因
1% 5%
1%2%
24%
44 %
機械的損傷
運転ミス
管理操作基準不備
自然災害
設計ミス
運転妨害
その他
23 %
高圧ガス保安協会統計資料「高圧ガス関連の事故原因」
2009年3月13日
安全管理の重要性
- 88 -
21
米国(1962~1991)に発生した重大事故
170件の原因分類および発生箇所
機械的損
傷
運転ミス
17%
3%
41%
4%
6%
9%
プロセス
異常
自然災害
設計ミス
20%
運転妨害
18%
3%
4%
29%
4%
6% 13%
7%
16%
配管
タンク
反応器
ドラム
回転機器
熱交換器
塔
加熱炉
その他
その他
柴崎敏和 「リスク ベースメンテナンスの基礎と応用」講習会テキスト(2004)
2009年3月13日
22
安全管理の重要性
5.メンテナンス環境の変化
背景
メンテナンスの動き
1.設備の高経年化・老齢化 1.技術的・経済的設備寿命の算定
劣化程度評価:検査、診断、データ管理
(設備の腐食劣化)
2.予知・予防保全
2.メンテナンス費用削減
3.規制緩和
法規制→自己責任
3.リスクベースのメンテナンス
(RBI,RBM)
1.技術の成熟化
1.熟練技能の共有財産化
2.ITの進展
2.損傷データーベースの活用
3.RTの発展
2009年3月13日
安全管理の重要性
- 89 -
23
(1)RBI (Risk Based Inspection )
RBM(Risk Base Maintenance )
1.リスク見積り
2.各部位に対する
検査およびメンテナンスの重要度,緊急度を評価
3.優先順位をつけて実施
リスク=故障・破損の起こりやすさ×起きた場合の被害の大きさ
1.RBIガイドライン: 米国機械学会、米国石油学会
2.RBI/RBMにより、保険料が低減
3.オランダ:定期検査期間延長に、RBI/RBMを義務付け
4.原子力発電所の検査の効率化に取り入れ
2009年3月13日
安全管理の重要性
24
(2)RBI/RBMの基本的考え方
1.RBIによる検査計画
リスクが許容範囲を超えている機器、部位に対して、
リスクが許容範囲に入るための検査
リスクの高い部分
より密度の高い検査
リスクの少ない部分
検査頻度を減ら し簡略化
2.RBMによるメンテナンス計画
補修、改造、更新を含めて、
リスク評価を行い、リスクマトリックスを作り、
リスクの高いところから、優先順序を付けてメンテナンス
3.狙い
プラントリスクを一定値以下にし、効率的な管理
2009年3月13日
安全管理の重要性
- 90 -
25
損害の80%は、上位20%
(1)対象:耐圧部の機器、
配管からの流体流出
(2)定義:
リスク =発生確率×影響度
(3)検査の優先順位
80/20の経験則
損害の80%が、
リスク の上位20%で占められる。
柴 崎敏和 「リスクベース メンテナンスの基礎と応用」講習会テキスト(2004)
2009年3月13日
安全管理の重要性
26
リスク状態の明確化
RBIによるリスク低減と
その基本因子
・損傷メカニズムと
その結果生じる損傷形態
・損傷の進行速度
・損傷を探知する確率
・損傷に対する設備健全性
2009年3月13日
安全管理の重要性
- 91 -
27
損傷メカニズムと寿命予測
木 原重光・富士彰夫
RBI/RBM入門
2009年3月13日
材質、使用環境、負荷条件、温度が分かれば、
それらの損傷が、
何時、どのように起こるかが予測できる。
安全管理の重要性
28
6.従来の安全・設備管理に限界
1.日本の技術者・現場は優秀であった。
その認識は、今も通用するか?
2.従来の安全管理の見直しが必要
3.安全に対する日本の認識は大丈夫か?
国際的には、
危ない箇所があったら、
注意を喚起するのではなく、まず、施設設備を安全側
最初から危険な箇所がないように設計
2009年3月13日
安全管理の重要性
- 92 -
29
住友化学㈱「災害ゼロワーキンググループ」
1.「安全をすべてに優先させる」という安全基本理念が、
すべての社員に浸透して いないので は?
→ 安全基本理念のポケットカード を常時携帯
2.災害が、「危険だと思っ ていな いところからで起こっている」ことが少な くない。
社員の危険に対する感受性が低くなっているのでは?
→ KY形骸化防止のため の再教育
体験的・ 視覚的安全教育
3.ヒヤリハット等の内容を解析してみると、ルール・基準に対して、近道行為、
省略行為などの違反が見られる。ルール・基準を知らない人がいるのでは?
→ ルール・基準に対し、定期的にその背景・必要性を皆で協議
4.発生した災害を調査すると、他の事業所で起こった災害や
過去に起こっ た災害と非常によく似た災害であることが少なくない。
→ 過去の災害内容の電子情報としてのデータベース 化
5.一人作業が多い中で、作業の把握が不十分で は?
→ 管理監督者、あるいは他の作業者による作業観察を行い、
本人が気付かない危険の抽出
Sumitomo Chemical CSR Report 2007
2009年3月13日
安全管理の重要性
30
日本と欧米の安全に関する考え方の違い
向殿政男 「国際化時代の機械システム安 全技術p79 (日刊工業新聞社)
日本の考え方
・災害は努力すれば、
二度と起こらないようにで きる。
・災害の主原因は人
・技術対策よりも人の対策を優先
・管理体制を作り、人の教育訓練
規制を強化し、安全を確保
・災害が発生するたびに規制強化
欧米の考え方
・災害は努力しても、
技術レベルに応じて必ず起きる。
・災害防止は、技術的問題
・人の対策よりも、技術的対策を優先
・人は必ず間違いを犯すも のであるから
技術力向上がないと安全を確保できな い
・事故が起こっても、重大災害に至らない
技術対策
・安全は基本的にタダ
・安全コストを認めにくい。
・目に見える具体的危険に対し、
最低限のコス トで対応、
災害対策に技術的深耕をしない
・安全は基本的にコストが掛かる
・安全にはコストをかける。
・危険源を洗出し、そのリスクを評価し、
評価に応じてコストをかける
起こるはずの災害の低減化努力
・見つけた危険をなくす技術
(危険検出型)
・度数率(発生件数)の重視
・論理的に安全を立証する技術
(安全確認型)
・強度率(重大災害)の重視
2009年3月13日
安全管理の重要性
- 93 -
31
7.これからの安全管理
1.「絶対安全」から「リスクベースの安全管理」
① 安全:受け入れ不可能なリスクのないこと
② 優先順序を付けて対応
前提 「人間はミスを犯し、設備は壊れる」
→ 「3-ステップ法」の採用
(1)本質的安全設計によるリスク低減
(2)安全防護対策によるリスクの低減
(3)使用上の情報によるリスク低減
2.リスクベースの設備管理
2009年3月13日
安全管理の重要性
- 94 -
32
②
ニーズからみた石油化学コンビナートのメンテナンスにおけるRT活用
・
名城大学
大道
教授
(石油化学コンビナートのメンテナンスRT化調査
研究専門委員会委員長)
石油コンビナートの
メンテナンス作業へのRT適用に関する
ニーズ調査研究報告
2009.03.13
石油化学コンビナートのRT化調査研究専門委員会
名城大学 理工学部教授 大道武生
はじめに
• 目的
プラント設備の高経年化問題
人員不足・技能伝承等の人材問題
安心・安全と生産性向上に向けた高度化
環境問題
• メンテナンス等へのRT利用ニーズ調査
• メンテナンス作業等へのRT適用のあり方
- 95 -
体制
• 石油化学コンビナートのメンテナンスRT化
調査研究専門委員会
• <コンビナートのメンテナンスRT化課題
調査WG(鹿島コンビナート)>
• <コンビナートのメンテナンスRT化課題
調査WG(水島コンビナート)>
- 96 -
背景:少子高齢化
人口構成推定
1950
2000
- 97 -
2050
人口構成推定
1990
2000
2050
背景:技術革新寄与の停滞
- 98 -
背景:リニア型の限界
国内コンビナートの現状:生産地
- 99 -
国内コンビナートの現状:生産
国内コンビナートの現状:環境対策
- 100 -
その他の環境対策
• ガソリン・軽油のサルファーフリー
10ppm(50ppm)/2005年
• バイオマス燃料
バイオエタノール
• 新エネルギー
燃料電池
石油化学工業の現状
石油化学工業
石油化学誘導品
合成樹脂
ポリエチレン
ポリプロピレン
ポリスチレンなど
石油化学基礎製品
エチレン
石油精製
合 成繊維原料
(3 0)
エ チレングリコール
テレフタール 酸
アクリロニトリルなど
プロピレン
(2 0)
原油
ナフサ
ブタジエン
スチレンブタジエンゴム
ブタジエンゴム など
ベンゼン類
(2 0)
注;( )内の数字は原
料ナフサを1 00とし
たときの得率を表す
繊維工業
合成ゴム
(1 0)
(1 00)
樹脂加工業
水素・重質 油他
塗料原料・溶剤
酢酸エチル
ポリウレタンなど
(2 0)
ゴム工業
塗料工業
合成洗剤原料
アルキルベンゼン
高級アルコールなど
- 101 -
洗剤工業
プラントエンジニアリング業:共通課題
• 人材確保のためのマンパワー源拡大
•
•
•
•
新規分野の開発と展開
GTL・DME・重質油改質
O&M・ITサービス
顧客支援型サービスの推進
エンジニアリング産業の課題と方向
項
目
国 内営業力
の強化
新規事業
の展開
リ スクマネージメント
の 強化
労 働力・人材
の確保
平 成10年度
17.9%(1)
11.0%(3)
4.6%(8)
4.0%( 10)
平 成11年度
14.0%(1)
12.0%(2)
6.1%(7)
3.1%( 14)
平 成12年度
9.2%(4)
12.1%(1)
6.9%(7)
4.0%( 12)
平 成13年度
10.6%(2)
11.9%(1)
7.9%(5)
3.6%( 12)
平 成14年度
11.9%(1)
11.9%(1)
7.5%(6)
7.2%(7)
平 成15年度
12.2%(1)
10.2%(2)
8.8%(5)
6.8%(8)
平 成16年度
13.2%(1)
9.7%(3)
10.4%(2)
9.7%(3)
平 成17年度
11.5%(3)
5.6%(8)
12.2%(2)
13.1%(1)
平 成18年度
10.8%(3)
6.1%(8)
12.3%(2)
13.5%(1)
平 成19年度
10.3%(4)
6.4%(7)
11.7%(2)
14.0%(1)
- 102 -
プラントメンテナンスの現状
プラントの実質ビンテージ
プラントメンテナンスの規模
業種別売上高(単位:億円)
日本メンテナンス工業会2007年度版メンテナンス・サービス企業の 実態調査報告書
- 103 -
コンビナートの定期点検修理
従業者年齢構成
n数13,043人
日 本メンテナンス工業会、(社)日本 プラントメンテナンス協会連名
『メンテナンス外 注業務』監督者 ・作業員 の職種年齢構成 調査、調査報告 書
従事者季節変動イメージ
大 手プラントメンテナンス企業2社の要 員山積み最大 値を100として表す
- 104 -
安全:許容可能なリスクと安全
図? 1 許容可能なリスクと安全
ISO/IECガイド51
受け入れ
不可能なリスク
許容可能なリスク
広く受け入れ
可能なリスク
安全
残留リスク
リスク(小)
安全対策
リスク(大)
現場力低下の構図
図? 2 現場力低下の構図
< 人事 >
1.熟練 技能 者の 不足
(定年 退職 、異動 、出 向)
2.設備 ・安全 管理 部門 の
人 員減 少
<教 育>
1. 若手 ・中堅 技術 者の 育成 ができていない。
2. 技術 ノウハ ウの継 承が できていない。
3. ノウハ ウのD B化 ・マニュア ル化 の遅 れ
< 技術 >
1.自動 化の 進展
2.自分 の手 でプ ラン トを触らない。
< 設備 >
1.設備 の高 齢化
2.保全 部門 の縮 小
3.設備 の新 設・更 新機 会の 減少
スキル人 材、設 備を 知る人 が不 足
1.どこに危険があるか
分からない
2.設備不具合リスク
の増大
3.対応能力の低下
11
- 105 -
コストから投資へ
コストから投資へ
表? 3 安全対策費の費用対効果
中央労働災害防止協会
「安全衛生対策費の費用対効果に関する調査報告書」
予防保全
予防保全
図? 4 保全方式の分類
時間基準保全
Scheduled
定期保全 経時保全
予防保全
Preventive
保全
事後保全
Breakdown
Corrective
- 106 -
状態監視保全
Condition
Relia bility
Risk based
リスクベースの安全管理適用効果
リスクベースの安全管理適用効果
図? 6 適用の効果 USA火力発電所
リス ク管理を導入
16
14
プラント機器 12
損 傷による
10
計 画外停止
8
の 発生 率
6
再熱器
加熱器
給水ポンプ
タービン
石炭ミル
(%)
4
2
0
1986
1987
1988
1989
1990
米国火力発電所におけるRBI/RBM適用の効果
米国火力発 電所
実用ロボット技術の動向
- 107 -
ロボット技術の動向
コミニュケーションロボット技術の動向
- 108 -
もうひとつのロボットシーズ
原子力
蒸気発生器細管検査・補修ロボット
フランジボルト諦緩ロボット
原子炉圧力容器検査ロボット
復水器細管検査ロボット
格納容器点検ロボット
原子力災害防止ロボット
・・・・・・・・・・・・
公共施設
下水処理場清掃ロボット
下水道点検,保守ロボット
送電線点検ロボット
地下街火災時点検ロボット
災害復旧ロボット
・・・・・・・・・・・・
ビル建設ロボット
天井解体ロボット
火力・水力
蒸発器ワーク ステーシ ョン
過熱器検査ロボット
導水管除貝ロボット
タービンロータ検査ロボット
石油タンク底板清掃・検査ロボット
・・・・・・・・・・・・
水車ランナー検査ロボット
ダム湖水質検査ロボット
・・・・・・・・・
プラント施設
塔槽類点検ロボット
成功・失敗情報!!
ロボットからRTへ!
• Robot & Robotics
• Serves
with real motion
• RT : Robotics Technology
for the New Concept Machine
& the Machine System
- 109 -
RT活用例
スーパーボール
Eye Vision 映像作成
- 110 -
Eye Vision の原理
スーパーボールへの導入
スタジアム全景
2001.1.29
フロリダ タンパ
- 111 -
石油コンビナートのニーズ調査
鹿島・水島コンビナート
コンビナート調査からの事例
(個別テーマ)
モデルプロジェクト
脱硫反応容器の例
脱硫反応触媒の例
(河端様講演資料から)
(新日石 HP)
- 112 -
コンビナート調査からの事例
タスクオリエントアプローチ
- 113 -
階層的仕様設定
Service specification: すべての仕様の基本
Operating specification:どのように操作する?
Function specification:機能を定義
Physical specification:ロボットのサイズ,質量,速度等
Maintenance specification:各仕様に対応する保守思想
Reliability specification:各仕様に対応する安全性・信頼性
タスクオリエント研究の目標設定
Out of RT
- 114 -
タスクオリエントの階層試行
• タスクオリエントP:個別
RT機械の変革
要素技術(RT要素)の高度化
• タスクオリエントF:機械システム概念
作業システム変革
プロセス(ロボットシステム)の革新
• タスクオリエントO:作業システム概念
社会構造変革
工法(作業システム)の革新
実用化推進のための提言
• 異業種・他分野との交流促進、技術導入
• メンテナンスビジネス・技術の他分野への展開
• オールジャパンでの広域連携、地域間のアライアン
ス構築
• プロジェクト化に向けたアクションプラン
• プラットフォーム(RTコンビナート)開発、機関連携
- 115 -
プラントメンテナンスRT化まとめ
• プラントの高齢化
• 少子高齢化
• 作業人員・質の確保
• RTの活用
• タスクオリエントによるRT化の推進
• 個別から企業群,社会レベルでの
解決シナリオつくりの具現化
- 116 -
③
石油コンビナートのメンテナンスにおけるRT活用に関するRooBOからのシー
ズ紹介
・
次世代ロボット開発ネットワーク RooBO 運営委員長
細見成人氏
石油コンビナートのメンテナンスにおける
RT活用に関するRooBOからのシーズ紹介
【RooBO広域マッチング】
次世代ロボット開発ネットワーク RooBO 運営委員長
東洋理機工業株式会社 代表取締役
細見 成人
2009.3.13.
@機械振興会館
次世代ロボット開発ネットワーク RooBO
1.次世代ロボット開発ネットワーク“RooBO(ローボ)”
・2004.6. 23社で「次世代ロボットの受託開発」を目的としてスタート
・大阪市を中心に’09.3.現在380名を越す全国的ネットワーク
・登録は個人単位であり、所属企業、地域、業種、規模等一切限定しない
・会員は中小企業から大手企業、大学、研究機関と多岐にわたる
・業種・事業分野は技術・開発系企業を中心に様々な 分野の製造業、商業、
サービス業、企画・調査・研究、教育、ク リエーター、デザイナー、セキュリティー、
金融・保険、法曹関係など
2.RooBOの拠点:ロボットラボラトリー
・ロボットテクノ ロジー(RT)を活用したビジネスやサービス創出による、
大阪を中心とする次世代ロボット産業クラスターの形成を目的として 設立
・RT研究会、ビジネスセミナー、テクニカルセミナー、実証実験、等のサポート
次世代ロボット開発ネットワーク RooBO
- 117 -
RT (ロボットテクノロジ) とは
• ロボット (ロボットは広範な要素技術の集合体)
・ 「人に代わって、あるいは人と協働しながら、人に便益(benefit) を
提供するシステム」
ロボットラボラトリ リーダ 石黒 周
・ 「センサ、知能・制御系、駆動系の3つの要素技術を有する、知能化
した機械システム」
ロボット政策研究会 報告書 2006年5月
• RT (ロボットテクノロジ)
・ ロボットを構成する要素技術の集合
・ 目的に対し、最適な要素技術を総合し、人・社会・環境を考慮した
ソリューション(新しい価値)を与えるインテグレーション技術を含む
次世代ロボット開発ネットワーク RooBO
RooBOの持つシーズ
• 要素技術 (応用技術・開発技術)
機械設計、電気・電子・制御設計、センサ技術、アクチュエータ技術、
画像処理・音声認識技術、環境情報構造化技術、情報処理技術、
組込技術、バッテリ、技術遠隔監視・遠隔制御技術、
金属加工、樹脂成形・加工、化学処理、表面処理
• インテグレーション技術
ニーズ(タスク)調査・分析、技術調査・分析・評価、技術マネージメント、
システム統合化技術、ロボット統合制御技術、
産業用汎用ロボットインテグレーション技術、
カスタム(専用)ロボット開発技術(マニプレータ、コントローラ)
• その他
金融、保険、法務、催事
次世代ロボット開発ネットワーク RooBO
- 118 -
ネットワークの有効性 ・ RooBOの活動
• ネットワーク
・多様性ゆえにマーケットが小さいニーズに対応可能なのは、大企業
ではなく中小企業である。様々な専門の要素技術を持った中小企業
のネットワークこそがこれからの新しい価値を生み出す(Wikinomics)。
small x N = la rger than small
small x many = huge
• RooBOの活動
・様々な分野の専門技術・知識を有するメンバーが必要に応じ
コラボレーション
・要素技術の開発、新しいロボットの開発・提案、RTを活用した
ソリューションの提供
・RTは他分野を支援するツール ⇒ RTの活用を通じ他分野とのコラボ
レーションにより、新しい価値の創造をめざします
次世代ロボット開発ネットワーク RooBO
東洋理機工業株式会社
~ ロボット システム インテグレータ ~
•
•
•
•
•
•
所在地 :大阪市西淀川区御幣島6-13-60
代表者 :細見 成人
資本金 :3,000万円
創 業 :昭和23年(1948年)
電 話 :06-6473-6667
担 当 :細見 成人
•
URL:http://www.toyoriki.co.jp
•
所 属
次世代ロボット開発ネットワーク(RooBO)
大阪商工会議所
西 淀川工業会
日本ロボット工業会
日 本ロボット学会
日本機械学会
神 戸RT研 究会
次世代ロボット開発ネットワーク RooBO
- 119 -
営業案内
「きつい (Kitui)」、「汚い(Kitanai)」、「危険(Kiken ) 」
3K職場の非人間的な作業はロボットに!
人はより創造的な仕事に!
• 産業用ロボットのアプリケーションシステムの開発
熱間鍛造ロボットシステム(熱処理炉ハンドリングロボッ トシステム)
化学分析・計測ロボットシステム、サンプリングロボットシステム
ガス溶断ロボット・プラズマ加工ロボッ トシステム
液晶研磨ロボットシステム
• 計測・制御・検査システムの設計・製作
• 新製造プロセス用設備開発
• 産業機械、自動化・省力化装置の開発
次世代ロボット開発ネットワーク RooBO
熱間鍛造ロボット
次世代ロボット開発ネットワーク RooBO ⇒ 動画..¥動画¥熱間鍛造ロボット総集編.mpg
- 120 -
化学薬品分析検査ロボットシステム
次世代ロボット開発ネットワーク RooBO
検査・サンプリングロボット、加工セル
⇒動画..¥動画¥Sampling.mpg
次世代ロボット開発ネットワーク RooBO
- 121 -
ロボットアプリケーション
次世代ロボット開発ネットワーク RooBO
(1/2)
今後の産業用ロボット
・ 産業用ロボット
1970年代よりスタート、市場が確立し、産業として自立
(6軸アーム形としては基本的な技術は確立)
・ 新世代産業用ロボット=多軸化ロボット ・双腕ロボット・パラレルロボット
6軸ロボット
⇒ 7軸ロボット
単腕ロボット
⇒ 双腕ロボット
シリアルロボット ⇒ パラレルロボット
⇒ 動画..¥動画¥7軸ロボットIA20 .avi
⇒ 動画..¥動画¥双腕ロボット組立作業.mpg
⇒ 動画 ..¥動画¥ Quattro.wmv
・ 知能化ロボット
画像処理技術を利用したフレキシブルなロボット
力覚センサを使用した手先の器用なロボット
・ 次世代産業用ロボット
少子高齢化・労働人口減少社会において熟練作業者・職人のスキルの
データベース化 ⇒ 匠の技をロボット が継承
製造業に限定せず多産業分野で次世代産業用ロボットの用途 開発
次世代ロボット開発ネットワーク RooBO
- 122 -
(2/2)
今後の産業用ロボット
・ 知能機械化
RT技術を活用し 人と親和性のある知的な機械へ
例)① 探傷ロボット
②アシスト装置(6軸力覚センサ+サーボ機構)
③ 環境計測ロボット、自走式自動計測ロボット
・ カスタムロボットの復権 (汎用ロボットと併用)
実績のある産業用ロボッ トのRTを活用
汎用ロボットの適用が困難なシーンに対し ニーズにベストフィットする
《カスタムロボット》を供給
例) ① 60kg可搬7軸双腕ロボット(3軸+4軸)
② 60kg可搬6軸多関節ロボット(水平2軸+垂直4軸)
・ システムインテグレーションの重要性の増大
ニーズ(課題)の深耕・分析とシーズ(要素技術)の用途開発を高次に
結び付け実体のあるシステムを構築する(新しい価値を創造する)
次世代ロボット開発ネットワーク RooBO
計測・検査ロボット
環境計測ロボット
自走式高圧盤検査ロボット
次世代ロボット開発ネットワーク RooBO
- 123 -
カスタムロボットのご提案
汎用ロボット
最大公約数的仕様
カスタムロボット
ニーズにベストフィット
次世代ロボット開発ネットワーク RooBO
RT活用による多分野の支援・課題解決
・ 重要課題
省資源・省エルギー、CO 2 ・温室効果ガス削減、環境負荷の低減
・ 製造業でのRT適用分野の拡大
専用機、汎用ロボット(新世代産業用ロボット)、カスタム ロボット
・ 非製造業でのRTによる分析・検査サービスの品質向上
悪環境下での高度ではあるが単調な作業の自動化・知能化
・ 第一次産業分野(農業・林業・水産業等)のRTによる復活
労働力の減少・従事者の高齢化⇒高度化・省力化
・ サービス産業のRTによる生産性向上
生産性の低い作業のRTによ省力化・省人化
・ 流通業・外食産業のRTによるロスプリベンション(無駄の低減)
労働人口の減少・人件費の増大⇒ 自動化・省人化
・ 先進的な Bio / Medical 分野におけるハザードプリベンション
ロボットによる人手作業の低減 ⇒ 食の安全 ・ 医の安心
次世代ロボット開発ネットワーク RooBO
- 124 -
【付録】産業用ロボットによるサービス業トライアル
たこ焼き
お好み焼き
合計15軸(片腕7軸x2+旋回1軸)の新世代産業用
ロボットがお好み 焼きを焼きます。音声 認識・
音声合成機能を搭載し、お客様と会話を進 め
ながらメューの注文や、お好みの味付けを聞
き取り、調理 を実行します。
汎用のアーム形産 業用ロボットが家庭用の
調理器具を使い、人と同じ様に竹串でたこ焼
きを焼きます。 コンセプトは「自動たこ焼き機」
ではなく、「産業用ロボットが人と同じ道具を
使用してたこ焼きを焼く」こと。
道具を持ち替え
ることにより様々
な作業をこなす
ことが出来る
ロボットの
「汎用性」 と
「巧みな動き」を
実証しています
⇒ 動画..¥動画¥動画(たこ焼きロボット)
¥ 動画(たこ焼きロボット追補版)085.mpg
次世代ロボット開発ネットワーク RooBO
- 125 -
⇒動画..¥動画¥お好み焼きロボットオフィ
シャル映像 ICRT2 008.flv
③
パネルディスカッション資料
<筑波大学
油田
教授パネルディスカッション資料>
th
25
YM BC PROJECT
Annive rsary of
TSUKUBA SINC E 1977
ロボット技術が向かうべき方向
について
2009.03.13
【RooBO広域連携マッチング会】
コンビナートにおけるRT活用の可能性
(筑波大学)
油田信一
th
25
YM BC PROJECT
Annive rsary of
ロボット技術(RT)
TSUKUBA SINC E 1977
• 現在(一般的に)人(あるいは動物)がやっている(意
味ある)作業を機械に代替させるための技術
知能ロボット技術
• 複雑な環境内で、複雑な仕事を実現
- 実世界対応技術
- (決められた)作業の達成能力
• 簡単な指示でキチンと働く
- 使い易いヒューマンインタフェース
- 126 -
th
25
YM BC PROJECT
Annive rsary of
仮設足場を不要とする配管検査RTシステム
TSUKUBA SINC E 1977
大型移動式ロボットアーム
保温材付配管
検出器搭載
配管自走ロボット
対象の配管
配管自走ロボット
高所作業車
従来の検査方式
保温材剥離
遠隔操作ステーション
・ 日本メンテナンス工業会
長井事務局長
プラント設備停止
仮設足場
高所作業
th
25
YM BC PROJECT
Annive rsary of
ロボット技術(RT)
TSUKUBA SINC E 1977
• (メインテナンス等の)社会が求めている
技術的問題にソリューションを与えるのがRT
問題解決型のアプローチによる技術開発と適用
対象の問題について、
必要なタスク(ロボットの働き)をしっかり定めて分析する
ことから始まる
(タスクオリエンッテドアプロ-チ)
- 127 -
th
25
YM BC PROJECT
Annive rsary of
ロボット開発のタスクオリエンテッドアプローチ:
TSUKUBA SINC E 1977
• ロボットに実行させるべきタスク(作業)を定めて
そこにフォーカスして技術開発を行うアプローチ
• 汎用システム開発に対照
タスク指向アプローチ(システム指向)
基礎研究(シーズ)
ニーズ指向開発
要素(汎用)指向アプローチ・技術
th
25
YM BC PROJECT
Annive rsary of
RT技術開発の取るべき方向:
TSUKUBA SINC E 1977
一般論より具体性を
• 人間は汎用の機能を持つ
• しかし、従来のロボット工学は汎用の名の下に何にも使えないも
のを作ってきたのではないか(反省)
• ニーズオリエンテッド (vs.シーズオリエンテッド)
• 問題解決(ソリューション提供)型技術
• 具体的な問題に対するアプローチこそが
ロボット技術そのものの進歩の原動力
- 128 -
<日本メンテナンス工業会
長井事務局長パネルディスカッション資料>
石油・化学コンビナートにおけるプラントメ
ンテナンスの課題
◆プラントの高経年化
◆定期修理における業務の季節変動
◆少子高齢化(労働人口減少)
労働力人口減少<環境変化>
2015年には2006年と比較して約420万人の労働力人口が減少するという推計
(注1)「労働市場への参加が進まないケース」とは、性・年齢別の労働力率が2004年の実績
と同じ水準で推移すると仮定したケース。
(注2)「労働市場への参加が進むケース」とは、各種施策を講じることにより、より多くの
者が働くことが可能になると仮定したケース。
(資料)2006年は総務省「国勢調査」、2010年以降は雇用政策研究会推計(平成17年)、
内閣府「高齢社会白書平成19年度版」より
- 129 -
1 20
1 0
コンビナート/定 期
2 0
メンテナンス従 事 者 年 齢
3 0
1 00
4 0
5 0
6 0
80
人 数 (人 )
60
40
20
0
監督
仕 上
(回 転 機 器)
仕 上
(静 止 機 器)
溶 接
- 130 -
配 管
電 気
計 装
非
売
品
禁無断転載
平
成
2
0
年
度
石油化学コンビナートのメンテナンス作業への
RT 適用に関するニーズ調査研究報告書
発
行
発行者
平成21年3月
社団法人
日本機械工業連合会
〒105-0011
東京都港区芝公園三丁目5番8号
電
話
03-3434-5384
社団法人 日本ロボット工業会
〒105-0011
東京都港区芝公園三丁目5番8号
電
話
03-3434-2919
Fly UP