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第7回市民公開講座 - 愛媛県の県立病院
愛媛県立中央病院 がん治療センター 第7回市民公開講座 「知っておきたいがんの情報」 ~子宮がん、乳がんについて~ 平成24年11月18日 公 14:00 開 会 開会挨拶 第1部 14:05 司 会 講 演 演 演 題① 者 14:55 質疑応答 15:05 休 第2部 15:15 開 講 座 次 第 愛媛県立中央病院 事務局 愛媛県立中央病院 がん治療センター長 原 子宮がんについて 愛媛県立中央病院 産婦人科医師 裕司 愛媛県立中央病院 がん治療センター長 近藤 雅道 司 憩 会 講 演 演 演 題② 者 15:45 質疑応答 15:55 講 演 演 演 題③ 者 16:45 質疑応答 16:55 閉 会 閉会挨拶 雅道 中川 三和 乳がんの自己検診について 住友別子病院 乳がん看護認定看護師 原 乳がんについて 愛媛県立中央病院 乳腺甲状腺外科医師 佐川 愛媛県立中央病院 がん治療センター長 原 庸 雅道 医 師 子宮がんについて 2013/1/6 女性生殖器に発生する癌 愛媛県立中央病院 市民公開講座 卵管癌 子宮体癌 子宮がんについて 卵管 卵巣 卵巣癌 体部 愛媛県立中央病院 産婦人科 近藤 裕司 頸部 腟 外陰 子宮頸癌と子宮体癌 子宮頸癌と子宮体癌 卵管 子宮体癌 自覚症状 子宮頸癌 子宮体癌 初期は無症状 不正性器出血 30~40代 閉経後の 50代以降 好発年齢 (20~30代で急増) 卵巣 子宮頸癌 腟 リスク 高リスク型HPV感染 肥満、高血圧、 糖尿病 ファクター 未経産婦 エストロゲン製剤 の長期使用など 組織型 扁平上皮癌: 80% 腺癌: 95% 腺癌: 15% その他: 5% その他: 5% 病気がみえる vol.9 婦人科・第1版:より改変 病気がみえる vol.9 婦人科・乳腺外科 第2版:136-137 より改変 子宮頚癌の検査 細胞診(ベセスダシステム2001) 病気がみえる vol.9 婦人科・第1版:より改変 結果 略語 推定される診断 従来の分 類 運用 陰性 NILM 非腫瘍性所見 Ⅰ、Ⅱ 異常なし 意義不明な異 形上皮細胞 ASC-US 軽度扁平上皮内 病変疑い Ⅱ-Ⅲa HPV検査 HSILを除外でき ASC-H ない異形扁平 上皮細胞 高度扁平上皮内 病変疑い Ⅲa、Ⅲb 要精密検査 軽度扁平上皮 内病変 LSIL HPV感染、軽度 異形成 Ⅲa 要精密検査 高度扁平上皮 内病変 HSIL 中等度~高度異 形成、上皮内癌 Ⅲa、Ⅲb、 Ⅳ 要精密検査 扁平上皮癌 SCC 扁平上皮癌 Ⅴ 要精密検査 子宮頚癌取り扱い規約・第3版より改変 1 2013/1/6 治療 進行期分類 ① ・手術療法 1.子宮頚部円錐切除術 2.単純子宮全摘術 3.準広汎子宮全摘術 4.広汎子宮全摘術および所属リンパ節郭清 5.骨盤除臓術 ・放射線療法 1.外照射 2.腔内照射 3.同時化学放射線療法 ・化学療法 病気がみえる vol.9 婦人科・第1版:より改変 進行期分類 ② 進行期分類 ③ 病気がみえる vol.9 婦人科・第1版:より改変 進行期分類 ④ 病気がみえる vol.9 婦人科・第1版:より改変 円錐切除術 病気がみえる vol.9 婦人科・第1版:より改変 病気がみえる vol.9 婦人科・第1版:より改変 2 2013/1/6 1st Expert Meeting 放射線療法 1. HPVおよび子宮頸癌の疫学 病気がみえる vol.9 婦人科・第1版:より改変 C-4 1st Expert Meeting 子宮頸癌の推定症例数(2002年) 1st Expert Meeting 年齢で標準化した子宮頸癌による死亡率(2002年) 全世界で493,243例 全世界で273,505例 欧州 59,931例 北米 14,670例 アジア 265,884例 中南米 71,862例 < 9.2 * アフリカ 78,897例 < 16.1 < 26.2 < 32.6 <3.9 < 87.3* 100,000人当たり * Parkin DM & Bray F. Vaccine 2006; 24(Suppl 3):S11–S25. <7.9 <14.0 100,000人当たり <23.8 <55.6* Ferlay J, et al. GLOBOCAN 2002 Cancer Incidence, Mortality and Prevalence Worldwide. IARC CancerBase; Lyon. 2004. C-6 C-5 1st Expert Meeting ほぼすべての子宮頸癌がHPV起因性 全世界の女性におけるHPVに起因する癌、2002年 総発症 件数 % 症例数 HPVが関与する 女性の癌の 中での割合 (%) 子宮頸部 492,800 約100 492,800 外陰/腟 40,000 肛門 HPVに起因 部位 中咽頭 口腔 % 症例数 93.5 70+ 344,900 3 80 12,800 16,000 15,900 90 14,300 2.7 92 13,100 9,600 12 1,100 0.2 91 1,000 2,900 0.5 97 98,400 3 527,100 30種類以上のHPV型が生殖器粘膜を標的とする1。 15種類以上のHPV型が発癌性(高リスク型)に分類される1 HPV 16/18型 に起因 40 合計 1st Expert Meeting 発癌性HPVと低リスク型HPV •全世界の子宮頸癌症例においてHPV 16型と18型が占める割合は 70%を超えている1,2。 •次いで多く見られる発癌性HPV型は45型、31型および33型である*1,2。 低リスク型(非発癌性)は良性性器疣贅/病変を引き起こす。 •性器疣贅において最も多く検出されるのはHPV 6型(疣贅全体の約9 0%)で、次いでHPV 11型(疣贅全体の10~30%)である3,4。 2,800 *全世界における子宮頸癌組織の有病率の高い順 374,600 Adapted from Parkin DM & Bray F. Vaccine 2006; 24(Suppl 3):S11–S25; Walboomers JMM, et al. J Pathol 1999; 189:12–19. 1. Munoz N, et al. N Engl J Med 2003; 348:518–527; 2. Bosch FX et al. Vaccine. 2008; 26S:K1–K16; 3. Greer CE, et al. J Clin Microbiol 1995; 33:2058; 4. Brown DR, et al. J Clin Microbiol 1999; 37:3316–3322. C-7 C-8 3 2013/1/6 1st Expert Meeting HPV感染のリスク 1st Expert Meeting 全世界の子宮頸癌および子宮頸部腺癌における HPV型の分布 すべての子宮頸癌において最も多く見られるHPVの遺伝子型は、16型、18型、45型、31型 および33型である1。 HPV 16型および18型が全子宮頸癌症例(扁平上皮癌および腺癌を含む)に占める割合は 70%を超えている1,2。 HPV 16型、18型、45型および31型が全子宮頸部腺癌症例に占める割合は90%を超えている2,3。 HPV感染は非常にありふれたことである。 性交相手が1人のみの女性における子宮頸部HPV感染の 累積リスクは46%である(初交の3年後)1。 •子宮頸癌の約11%が腺癌4、約76%が扁平上皮癌であるが5、地域ごとにその割合は異なる。 発癌性HPV感染のリスクは初交後でも高く、そのリスクは 性活動がある限り女性の生涯を通して持続する2–4。 HPV型の分布2 60 米国におけるHPV感染の総有病率は27%である4。 •最大80%の女性が生涯のうち一度はHPVに感染する5–7。 ほとんどの感染は消失するが、高齢になるほど消失しにくくなる8。 50 扁平上皮癌 40 腺癌 % 30 20 10 0 1. Collins S, et al. Br J Obstet Gynaecol 2002; 109:96–98; 2. Schiffman M, et al. J Natl Cancer Inst 2003; 31:14–19; 3. Sellors JW, et al. CMAJ 2003; 168:421–425; 4. Dunne EF, et al. JAMA 2007; 297:813–819; 5. Brown DR, et al. J Infect Dis 2005; 191:182–192; 6. Koutsky L, et al. Am J Med 1997; 102:3–8; 7. Bosch FX, et al. J Natl Cancer Inst Monogr 2003; 31:3–13; 8. Castle PE, et al. J Infect Dis 2005; 19:1808–1816. アジア (n = 1,130) HPV 45 HPV 31 HPV 33 Other 1. Munoz N, et al. Int J Cancer. 2004; 111:278–285; 2. Bosch FX, et al. Vaccine 2008; 26S:K1–K16; 3. Smith JS, et al. Int J Cancer. 2007; 121:621–632; 4. Vizcainzo AP, et al. Int J Cancer 1998; 75:536–545; 5. Vizcainzo AP, et al. Int J Cancer 2000; 86:429–435. C-10 1st Expert Meeting 1st Expert Meeting 子宮頸癌の発生に関連するHPV型 地域別に見た最も多く見られる5種類の扁平上皮癌関連HPV型 (2007年度ICO調査の予備的結果) アフリカ (n = 616) HPV 18 C-9 子宮頸癌の発生に関連するHPV型 全世界 (n = 7,733) HPV 16 欧州* (n = 2,618) 地域別に見た最も多く見られる5種類の腺癌関連HPV型 (2007年度ICO調査の予備的結果) オセアニア (n = 133) 中南米† (n = 3,236) 全世界 (n = 816) アフリカ (n = 72) アジア (n = 54) 欧州* (n = 315) 中南米† (n = 355) オセアニア (n = 20) HPV HPV HPV HPV HPV % HPV HPV 16 61.6 HPV 16 46.8 HPV 16 66.6 HPV 16 63.9 HPV 16 60.1 HPV 16 64.8 HPV 16 47.8 HPV 18 47.6 HPV 18 46.0 HPV 16 53.2 HPV 16 48.8 HPV 16 37.5 HPV 18 8.2 HPV 18 18.9 HPV 18 7.2 HPV 18 6.7 HPV 18 7.5 HPV 18 14.1 HPV 18 29.0 HPV 16 36.9 HPV 16 32.4 HPV 18 27.4 HPV 18 23.5 HPV 18 34.7 HPV 45 5.5 HPV 45 10.8 HPV 58 4.7 HPV 33 5.7 HPV 45 6.0 HPV 45 5.5 HPV 45 12.3 HPV 45 9.5 HPV 45 10.1 HPV 45 11.8 HPV 45 13.5 HPV 45 16.7 HPV 31 4.5 HPV 35 5.3 HPV 33 4.5 HPV 45 4.7 HPV 31 5.8 HPV 33 3.1 HPV 31 1.2 HPV 35 2.4 HPV 59 5.4 HPV 33 1.2 HPV 31 2.4 HPV 31 4.6 HPV 33 4.3 HPV 52 4.4 HPV 52 3.1 HPV 31 4.0 HPV 33 3.7 HPV 35 2.3 HPV 33 1.1 HPV 51 2.4 HPV 66 3.4 HPV 35 1.2 HPV 39 1.7 HPV 54 3.2 HPV % HPV % HPV % HPV % HPV % HPV *欧州+北米 †中南米:中米および南米 Data updated July 2007. Professor Xavier Bosch. 重複感染は、感染が認められた遺伝子型別に均一に分布している。 % % % % % *欧州+北米 †中南米:中米および南米 Data updated July 2007. Professor Xavier Bosch. 重複感染は、感染が認められた遺伝子型別に均一に分布している。 C-11 C-12 1st Expert Meeting パピローマウイルスの系統樹 40 44 55 PCV1 13 11 6 73 34 7 42 70 18 45 61 29 58 正常 HSIL SCC ADC 16 2.6 45.3 55.2 48.4 3 28 18 0.9 6.9 12.8 36.3 45 0.4 2.3 4.6 5.8 31 0.6 8.6 3.8 0.7 33 0.5 7.3 3.7 2.0 10 51 16 35 31 型 27 2a 57 59 RhPV1 33 52 1st Expert Meeting 扁平上皮癌よりも腺癌に多く見られるHPV 18型 39 32 % 26 56 66 30 53 パピローマウイルス系統樹におけるアルファパピローマウイルス属を示す*。 HPV 16型および18型と密接に関連している発癌性HPV型を強調表示した。 HPV 16型はHPV 31型と最も密接に関連している。 HPV 18型はHPV 45型と最も密接に関連している。 52 0.9 5.1 2.9 0 58 0.9 7.0 2.8 0.7 その他 6.8 23.9 7.6 7.7 重複感染は感染ごとに計上 *一部の種および型のみ示す。 Adapted from de Villiers E, et al. Virology 2004; 324:17–27. Adapted from Bosch FX, et al. Vaccine 2008; 26S:K1–K16. C-13 C-14 4 2013/1/6 1st Expert Meeting 年齢別に見たHPV保有率( %) HPV感染の累積リスク( %) ベースライン時の 年齢(歳) 50 15~19 40 20~24 25~29 30 30~44 20 45+ 10 0 0 1 2 3 4 1st Expert Meeting 年齢別に見た各地域の細胞診正常女性における HPV保有率 年齢集団別に見た新規HPV感染の累積リスク 30 25 アフリカ 中南米 20 15 欧州 北米 10 アジア 5 0 5 <25 年 25~34 35~44 45~54 >54 年齢別群(歳) コホート研究、ボゴタ、コロンビア、N=1,610 Bosch FX, et al. Vaccine 2008; 26S:K1–K16. Bosch FX, et al. Vaccine 2008; 26S:K1–K16. C-18 C-19 1st Expert Meeting 1st Expert Meeting 年齢に伴って増加する持続HPV感染 :グアナカステコホート 追跡期間中の持続感染率( %) 60 HPVおよび子宮頸癌の疫学:まとめ(Ⅰ) 全世界の子宮頸癌症例数は約500,000例で、 年間死亡例数は270,000例を超えている。 発癌性 非発癌性 50 ほぼすべての子宮頸癌がHPV起因性である。 40 30 30種類以上のHPV型が生殖器粘膜を標的とし、 このうち約15種類が癌を引き起こす(すなわち発癌性である)。 20 最大80%の女性が生涯のうちに一度はHPVに感染する。 全世界の子宮頸癌に関連しているHPV型で多く見られるのは、 HPV 16型、18型、45型、31型および33型である。 10 0 <25 25~34 35~44 45~54 55~64 全世界の腺癌に関連しているHPV型で多く見られるのは、 HPV 16型、18型および45型である。 ≧65 年齢別群(歳) 組入れ後から追跡期間(5~7年)中における持続感染率 Castle PE, et al. J Infect Dis 2005; 191:1808–1816. C-20 1st Expert Meeting HPVおよび子宮頸癌の疫学:まとめ(Ⅱ) C-21 HPV = Human Papillomavirus ヒトパピローマウイルス 系統発生学的に、HPV 16型はHPV 31型と密接に 関連しており、HPV 18型はHPV 45型と密接に関連している。 100以上の“型(タイプ)” 皮膚に疣贅を引き起す皮膚型と、性器周辺に感染 する粘膜型(約40種類)に大別 子宮頸癌の約6%が重複HPV感染を伴うものであるが、現在 の子宮頸部病変検出法のほとんどは病変の原因となるHPV 型を正確に特定することが不可能である。 発癌性のある高リスク型と、良性腫瘍を引き起 こす低リスク型 女性におけるHPV感染リスクは性活動がある限り 生涯持続する。 高リスク型 : 16, 18, 31, 33, 35, 39, 45, 51, 52, 56, 58, 59, 68型など 低リスク型 : 6, 11型など 子宮頸癌の約70%は、HPV16型または18型が原因 尖圭コンジローマの90%以上は、HPV6型または11型 が原因 C-22 白澤浩. VIRUS REPORT 2008;5(1):40-48 より改変 5 2013/1/6 1st Expert Meeting ハラルド・ツア・ハウゼン氏(独) 子宮頸癌がHPVに起因することを発見 HPV感染が子宮頸癌に至るまでの経路 2008年にノーベル医学・生理学賞を受賞 HPV感染から子宮頸癌に至るまでの経路には いくつかの段階がある。 •初期感染 — ウイルスが標的基底上皮細胞に侵入する。 •HPV癌遺伝子(E6およびE7)が発現する。 •HPV DNAが宿主ゲノムに取り込まれる。 •細胞遺伝学的に不安定な状態となる。 •遺伝的変化により細胞増殖が制御不能となる(不死化)。 •子宮頸癌への悪性転換が起こる。 約30年間の研究と功績が評価されての受賞 1980年 1982年 1983年 1984年 尖圭コンジローマからHPV6を発見1 再発性呼吸器乳頭腫症からHPV11を発見2 子宮頸癌からHPV16を発見3 子宮頸癌からHPV18を発見4 1. Gissmann l et al. Int J Cancer. 1980;25(5):605-609 2. Gissmann L et al. J Virol. 1982;44:393-400 3. Durst M et al. PNAS. 1983;80:3812-3815 4. Boshart M et al. EMBO J. 1984;3(5):1151–1157 C-28 1st Expert Meeting 子宮頸癌化リスクを増大させる補助因子 1st Expert Meeting 子宮頸癌の発生経緯 発癌性HPV型への持続感染は子宮頸癌の必須要因である1。 軽度の細胞学的異常 および/またはCIN1 •全世界の子宮頸癌の約70%がHPV 16型および18型に よるものである2。 •HPV 16型および18型の感染は低リスク型HPVよりも 長期間持続する3,4。 正常な 子宮頸部 発癌性HPV感染後における子宮頸癌の発症に関連する その他の因子5,6。 •環境(例:喫煙) •性的曝露(例:経産回数、初交年齢が低い) •ホルモン(例:経口避妊薬の長期使用) •免疫抑制(例:HIV、臓器移植者、全身性ステロイド薬の長期使用) 感染 HPV感染 子宮頸部 持続感染 消失:(おおよその確率) 経緯 1. Bosch FX, et al. J Clin Pathol 2002; 55:244–265; 2. Muñoz N, et al. Int J Cancer 2004; 111:278–285; 3. Ho GY, et al. N Engl J Med 1998; 338:423–428; 4. Richardson H. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 2003; 12:485–490; 5. Burd EM. Clin Microbiol Rev 2003; 16:1–17; 6. Baseman JG & Koutsky LA. J Clin Virol 2005; 2S:S16–S24. 前癌病変 子宮頸癌 CIN1:57% CIN2:43% CIN3:32% 数ヵ月 数年 > 20 年 CIN=子宮頸部上皮内腫瘍 前癌病変はCIN2/3に相当する。 Adapted from Schiffman M & Kruger Kjaer S. J Natl Cancer Inst Monogr 2003; 31:14–19. C-29 C-30 1st Expert Meeting オーストラリアにおける 国家予防接種プログラム 海外データ プログラム概要 2006年6月 4価HPVワクチン承認 2006年11月 政府が100%国費負担による 4価HPVワクチン接種プログラムの実施を決定(世界初) 2007年4月 12~13歳女性への定期接種プログラム開始(学校プログラム) 2007年7月 13~26歳女性へのキャッチアップ接種プログラム開始 (2009年12月まで限定) 2.HPVワクチン ※ 現在は2価HPVワクチンも接種プログラムの対象 接種率 (Victoria州) 女子高校生 71~79%(3回接種) (学校プログラム登録システム‘07) 18~28歳女性 (電話調査‘09) C-49 74%(1回接種) 69%(2回接種) 56%(3回接種) Julia M L Brotherton et al. Lancet. 2011;377:2085–2092. 6 2013/1/6 1st Expert Meeting 海外データ オーストラリア予防接種プログラム導入前後の 高度子宮頸部病変(CIN2+, AIS)発生率の推移 2価HPVワクチンおよび4価HPVワクチンの組成 2価HPVワクチン 18歳未満の女性において、4価HPVワクチン接種プログラム実施後に 高度子宮頸部病変(CIN2+, AIS)発生率の低下が認められた 18歳未満 26~30歳 (%) 2.0 21~25歳 18~20歳 31歳以上 抗原 AS04アジュバント 4価HPVワクチン接種 プログラム開始 高度子宮頸部病変発生率 + HPV 16 VLP 1.5 アルミニウム塩 (Al(OH)3) MPL + 免疫賦活剤 HPV 18 VLP AS04アジュバント添加ワクチン 1.0 4価HPVワクチン 0.5 抗原 アジュバント 2003 【対象】 【方法】 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 (年) ビクトリア州(オーストラリア)に居住している女性 2003年~2009年の子宮頸部細胞診登録システムのデータを用いて、 4価HPVワクチン接種プログラム導入前後の高度子宮頸部病変および低度細胞診 異常の発生率を5つの年齢群で比較した。 HPV 16 VLP HPV 18 VLP AAHSアジュバント添加ワクチン C-45 国内臨床試験における副反応 HPVワクチンの副反応 <028試験(9~17歳女性)> 重大な副反応 主な副反応は注射部位疼痛(ワクチン接種群:84%)であった。 死亡例およびワクチン接種に関連する重篤な副反応は発現しなかった。 1. 過敏症反応(アナフィラキシー反応(頻度不明)、アナフィラキシー様反応(頻度不明)、 気管支痙攣(頻度不明)、蕁麻疹(頻度不明)等) 2. ギラン・バレー症候群(頻度不明) 3. 血小板減少性紫斑病(頻度不明) 4. 急性散在性脳脊髄炎(頻度不明) 4価HPVワクチン群 (N=82) n (%) 注射部位の副反応例数* その他の副反応 紅斑 10%以上 1~10%未満 全身症状 局所症状 (注射部位) 頻度不明*1 1%未満 発熱 疼痛、紅斑、腫脹 HPV 11 VLP HPV 6 VLP MPL=モノホスホリルリピッドA Julia M L Brotherton et al. Lancet. 2011;377:2085–2092. より改変 種類/頻度 アルミニウム塩 (非晶質アルミニウム ヒドロキシリン酸 硫酸塩 [AAHS]) + 0.0 そう痒感、出血、不快感 精神神経系 硬結 血腫 失神(強直間代運動を伴う ことがある)、浮動性めまい 頭痛 筋・骨格系 四肢痛、筋・骨格硬直 消化器 下痢、腹痛 35 (42.7) 95% 信頼区間 P値 (-3.6、32.3) 0.149 0.041 19 (76.0) 11.8 5 (20.0) 22.7 (1.0、39.1) 0 (0.0) 1 (4.0) -4.0 (-19.7、0.7) - 疼痛 69 (84.1) 19 (76.0) 8.1 (-7.8、29.0) 0.353 そう痒感 12 (14.6) 1 (4.0) 10.6 (-5.9、21.0) - 腫脹 38 (46.3) 4 (16.0) 30.3 (9.1、45.7) 0.007 1 (1.2) 1 (4.0) -2.8 (-18.5、3.4) - 9 (11.0) (0.0) 11.0 (-2.8、19.6) 0.085 注射部位以外の副反応例数** 嘔吐、悪心 (87.8) 群間差 出血 不快感 関節痛、筋肉痛 72 プラセボ群 (N=25) (%) n 0 腹痛 1 (1.2) 0 (0.0) 1.2 (-12.3、6.6) - 倦怠感 1 (1.2) 0 (0.0) 1.2 (-12.3、6.6) - (-8.7、11.9) 0.263 発熱 4 (4.9) 0 (0.0) 4.9 血液 リンパ節症 腫脹 1 (1.2) 0 (0.0) 1.2 (-12.3、6.6) - 感染症 蜂巣炎 頭痛 2 (2.4) 0 (0.0) 2.4 (-11.1、8.5) 0.433 そう痒症 1 (1.2) 0 (0.0) 1.2 (-12.3、6.6) - 臨床検査 白血球数増加 *1:自発報告及び外国臨床試験でのみ認められた副反応 * 接種後5日間に注射部位にて特定された症状の副反応 申請時評価資料 ** 接種後15日間に報告された全身性の副反応 申請時評価資料 海外データ 注射部位有害事象 海外データ 重篤な全身性有害事象 <海外臨床試験(n=10,224)> <海外臨床試験(n=21,464)> 注射部位の有害事象の発現頻度は、アルミニウム含有プラセボや生理食塩水プラセボ 接種郡に比べHPVワクチン接種群で有意に高かった(いずれもP<0.05)。 HPVワクチン接種群とプラセボ群で、重篤な全身性有害事象の発現頻度に 有意な差は認められなかった (リスク差:0.16, 95% CI:0.44~0.12、P =0.253)。 4価HPVワクチン (n=6,069) 生理食塩水プラセボ (n=584) アルミニウム含有プラセボ (n=3,410) 4価HPVワクチン すべての 重篤な有害事象 n (%) n (%) n (%) 1件以上の 注射部位有害事象 5,030 (82.9) 289 (49.5) 2,638 (77.4) 疼痛 4,935 (81.3) 265 (45.4) 2,572 (75.4) 腫脹 1,469 (24.2) 45 (7.7) 540 (15.8) 紅斑 1,432 (23.6) 77 (13.2) 629 (18.4) そう痒 167 (2.8) 5 (0.9) 97 (2.8) 不快感 156 (2.6) 13 (2.2) 110 (3.2) 呼吸器/胸郭/縦隔 感覚障害 22 (0.4) 10 (1.7) 5 (0.1) 総計 分母は有害事象判定の為にフォローアップされた被験者数。同じ被験者が2回以上の有害事象を発現した場合も数値は1回(1人)として計算。 ワクチン群vs.生理食塩水プラセボ群: P <0.05, 未補正の多重比較 / ワクチン群vs.アルミニウム含有プラセボ群: P<0.05,未補正の多重比較 【対 象】 4価HPVワクチンの第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験(007, 013, 015, 016, 018試験)に参加した9~26歳の男女** (N=21,514) 【方 法】 詳細な安全性解析集団(n=10,224)に対し、ワクチン日誌を用いて接種後1~5日間の注射部位有害事象および発熱、 1~15日間の全身性有害事象を調査。 Block SL et al. Pediatr Infect Dis J. 2010 ;29(2):95-101. *男性への接種は国内適応外 生理食塩水プラセボ +アルミニウム含有プラセボ (n=9,578) (n=11,641) n (%) 接種と関連あり† n (%) すべての 重篤な有害事象 n 接種と関連あり† (%) n (%) 1 (0.01) 2** (0.02) 器官別分類 (ワクチンまたはプラセボ群のいずれかで5例以上報告があった有害事象) 感染症 22 (0.2) 傷害/中毒/処置合併症 26 (0.2) 5 (0.04) 34 (0.3) 5 (0.04) 1 107 (0.9) 5* 神経系 妊娠/産褥期/周産期 1 1 (0.01) 14 (0.1) 32 (0.3) 5 (0.05) 38 (0.4) (0.01) 4 (0.04) (0.04) 103 (1.1) (0.01) 分母は有害事象判定の為にフォローアップされた被験者数。同じ被験者が2回以上の有害事象を発現した場合も、数値は1回(1人)として計算。 †:治験医によってワクチンまたはプラセボと関連が「確実にあり」、「たぶんあり」または「どちらともいえない」と判定された例 * 反復性腟出血、気管支痙攣、胃腸炎、潰瘍性大腸炎、高血圧・頭痛 ** 過敏症、悪寒・頭痛・発熱 【対 象】 4価HPVワクチンの第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験(007, 013, 015, 016, 018試験)に参加した9~26歳の男女** (N=21,514) 【方 法】 すべての被験者からなる安全性解析集団(n=10,224)に対し、全試験期間の重篤な全身性有害事象を調査。 Block SL et al. Pediatr Infect Dis J. 2010 ;29(2):95-101. *男性への接種は国内適応外 7 2013/1/6 1st Expert Meeting 参考データ 予防接種による失神(血管迷走神経反射)は 思春期層に生じやすい 失神は、通常は血圧低下に伴う脳血流低下によって発生する1。 予防接種による失神 • 思春期層(10~19歳)の発生率が高い2、3 • 痛み、恐怖、興奮などに引き続く血管迷走神経反射が原因3 ワクチン接種による失神数の分布 3.子宮頚癌の予防のために 180 160 女性 140 男性 【対象・方法】 米国ワクチン有害事象報告システムが受理した失神 に関するすべての報告(1990~95年10月)を解析。 ワクチン接種から12時間以内の失神は697例報告。 120 報告数 100 80 60 40 20 0 <1.0 1-3 4-6 7-9 10-19 20-29 30-39 40-49 50-59 ≧60 (年齢) 1:ハリソン内科学 第2版; 2007:130-135, 2:Braun M.M. et al. ARCH PEDIATR ADOLESC MED 151(3):255-259,1997 3:日本小児科学会予防接種感染対策委員会「予防接種後の失神に対する注意点ついて」 C-49 日本における子宮頸癌の発症数と死亡数 日本における年代別子宮頸癌罹患率 罹患率( 対人口 1年間に約10,000人の女性が 子宮頸癌を発症している1 万人) 10 1年間に約3,500人の女性が 子宮頸癌で死亡している1 1985 2005 70 25~44歳 60 50 40 30 20 20~30歳代女性で、子宮頸癌は 罹患率・死亡率ともに増加している2,3 10 0 0-4 5-9 10-14 15-19 20-24 25-29 30-34 35-39 40-44 45-49 50-54 55-59 60-64 65-69 70-74 75-79 80-84 85以上 診断年齢(歳) 1. 2. 3. 3学会合同のHPVワクチン接種の普及に関するステートメント(2009年) http://www.jsog.or.jp/statement/pdf/HPV_20091016.pdf 国立がんセンターがん対策情報センター 地域癌登録全国推計によるがん罹患データ(1975年~2005年) 国立がんセンターがん対策情報センター 人口動態統計によるがん死亡データ(1958年~2007年) 国立がんセンターがん対策情報センター 地域癌登録全国推計によるがん罹患データ(1990年~2005年) 日本における20~30歳代の女性特有の癌の 罹患率・死亡率 年次推移 子宮頸癌* 乳癌* 卵巣癌 死亡率( 対人口 10 子宮体癌 初交経験率 羅患率( 対人口 10 40 中学~高校生の初交経験率 (2005年) 3 30 万人) 万人) 2 20 男性 (%) 女性 50 44.3 40 35.7 30 26.4 23.5 20 1 5.1 0 0 1993 1996 1999 2002 2005 0.4 0.9 中1 0 1990 9.8 10 10 1990 1993 1996 1999 2002 14.6 12.3 4.3 1.4 中2 中3 高1 高2 高3 2005 * 上皮内癌を含む 国立がんセンターがん対策情報センター 地域癌登録全国推計によるがん罹患データ(1975年~2005年)より作図 国立がんセンターがん対策情報センター 人口動態統計によるがん死亡データ(1958年~2007年)より作図 都性研 2008年児童・生徒の性意識性行動調査一部改変(東京都幼小中高心性教育研究会(都性研)が、1981年以来、 3年毎に都内各校種、各学年の男女500人以上の児童・生徒を対象に実施してきた性意識・性行動の実態調査 8 2013/1/6 海外データ 高リスク型HPV型に起因する 癌の発生及び分布 (1998~2003年)1 子宮頸癌検診者における高リスク型HPVの陽性率 (2003~2004年) 米国内の概算値 (人) 12,000 (%) 50 年間症例数b 10,000 HPV関連 症例割合(%)a 年間癌発生数 8,000 7,360 96% 6,000 4,000 高リスク型HPV陽性率 10,846 40 30 23.0 20 * 2,547 63% 対象:石川県で子宮頸癌定期検診を行った女性(n=8,156) 45.0 9.0 10 2,266 6.0 5.0 5.0 6.0 2,000 93% 51% 子宮頸癌 中咽頭癌 肛門癌 外陰癌 腟癌 陰茎癌 76% 95% 93% 86% 88% 87% 0 HPV関連症例中 16/18型の割合 828 601 64% 36% Gillison ML et al. Cancer. 2008; 113(10 Suppl):3036-3046.より作図 10-19 20-29 30-39 40-49 50-59 60-69 70-79 n=126 n=1,533 n=2,649 n=1,728 n=1,409 n=536 n=156 80- (歳) n=19 【対象】 石川県で子宮頸癌定期検診を行った女性(n=8,156) 【方法】 HC-II 法によりHPV検査を行い、1.0 pg/ml以上を陽性とした Inoue M et al. Int J Gynecol Cancer. 2006;16(3):1007-1013. より改変. HPV感染から子宮頸がんへの過程1) 正常な子宮頸部 HPV感染/CIN1 新たな感染性ウイルス粒子 感染性ウイルス粒子 5.0 0 エピソーム 子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)分類 症状なし 子宮頸がん/CIN3 核周囲の空胞化 (コイロサイトーシス) CIN1* CIN2 (軽度異形成) (中等度異形成) CIN3** (高度異形成) (上皮内癌) 浸潤癌 組み込まれた ウイルスDNA 上皮 基底膜 消失しやすい 癌化しやすい 組織 範囲 上皮1/3以内 上皮2/3以内 層構造 Copyright © 2003 Massachusetts Medical Society. All rights reserved. 1)Goodman A and Wilbur DC:N Engl J Med. 2003;349(16):1555–1564. 癌化 異形成細胞 上皮2/3以上 癌細胞 癌細胞 上皮全層 基底膜を超える 消失 消失 乱れあり CIN = cervical intraepithelial neoplasia * 細胞異型がなくても、コイロサイトーシスが認められればCIN1とする ** 従来は高度異形成と上皮内癌は別の概念とされていたが、管理・治療が同様であるため、CIN分類ではCIN3としてまとめられている CIN = Cervical intraepithelial neoplasia 病気がみえる vol.9 婦人科・乳腺外科 第2版:141 より改変 子宮頸癌検診者における高リスク型HPVの陽性率 HPV感染から子宮頸癌へと進行する自然史 感染期:CIN1 前癌期:CIN2/CIN3 6,000人 60人 6人 (6割以上の女性) (感染者の1~6%) (感染者の0.1%) 数週間~2年 数年~10数年 自然治癒 自然治癒 不顕性持続感染 90% 5% 数% 発癌期:浸潤癌 数年 (%) 高リスク型HPV陽性率 女性 10,000人 (2003~2004年) 50 対象:石川県で子宮頸癌定期検診を行った女性(n=8,156) 45.0 40 30 23.0 20 * 9.0 10 6.0 5.0 5.0 6.0 5.0 0 10-19 20-29 30-39 40-49 50-59 60-69 70-79 n=126 n=1,533 n=2,649 n=1,728 n=1,409 n=536 n=156 80- (歳) n=19 【対象】 石川県で子宮頸癌定期検診を行った女性(n=8,156) 【方法】 HC-II 法によりHPV検査を行い、1.0 pg/ml以上を陽性とした CIN = cervical intraepithelial neoplasia 笹川 寿之:臨床と微生物 2009; 36(1):55-62.より改変 Inoue M et al. Int J Gynecol Cancer. 2006;16(3):1007-1013. より改変. 9 2013/1/6 日本における細胞診正常例におけるHPV感染率 日本における子宮頸癌のHPV型別分布 (n=131) 対象:検診または治療のため外来を受診した女性 HC-II の型* HPV16/18 (%) 40 40.5 16 全ての型 24.4 18 52 33 HPV型 HPV感染率 30 20 10 64.9%* 8.4 3.1 58 3.1 31 39 1.5 1.5 51 0.8 68 35 45 0.8 56 59 0 0 0 0 0 0 15-19 20-24 25-29 30-34 35-39 40-44 45-49 50-54 55-59 60-64 65以上 (歳) 20 60 80 100 (%) *:HPV16,18型以外の型との混合感染を含めると、67.1% *:HC-II =Hybrid Capture II (16,18,31,33,35,39,45,51,52,56,58,59,68) 【対象】 検診または治療のため外来を受診した女性2,282人のうち、細胞診正常例(n=1,517) 【方法】 PCRによりHPVの検出および型別判定を行った。 【対象】 検診または治療のため外来を受診した女性2,282人のうち、浸潤性子宮頸癌と診断された人(n=140) 【方法】 PCRによりHPVの検出および型別判定を行った。 Onuki M et al. Cancer Sci. 2009;100(7):1312-1316 Onuki M et al. Cancer Sci. 2009;100(7):1312-1316 海外データ 世界各国の子宮頸癌検診受診率 子宮頸癌発生率と検診受診率 (OECD加盟国における20~69歳の女性、2009年) (%) 検診受診率 万人あたりの発生率 100 16 80 14 60 12 40 検診受診率 発生率 18 子宮頸癌検診受診率 浸潤子宮頸癌の年齢調整発生率と 検診の受診率(英国、1980~1995年) 10 40 (%) 100 83.5 80 79.4 78.6 75.6 72.8 72.4 71.0 70.6 70.5 69.6 69.4 65.3 60 62.2 60.6 41.7 40 38.5 24.5 20 日本 イタリア ルクセンブルク オーストラリア ベルギー アイルランド デンマーク 2 1 1 1 1 1 Programme data. 2 Survey data. Health Care Quality Indicators Project, OECD 2009. OECD Health Data 2009 (cervical screening) 日本における年代別子宮癌検診受診率 子宮頸癌予防のためには、定期検診も重要です 子宮癌検診受診率 HPVワクチン接種によって予防できるのは子宮頸癌の中でも16、18型によるもので 全体の約65%です1)。また、HPVワクチンは、接種時すでに自然感染しているHPVや 子宮頸部病変に対しての治療効果はないため、HPVワクチン接種後も定期的に子宮 頸癌検診を受け、早期発見に努めることが重要です。 (%) 40 30.2 2 1 1 1 1 1 * 家庭医の登録リストから受診対象者名簿を作成し、それをもとに個人へ受診勧奨を行う仕組み Quinn M, Babb P, Jones J, Allen E. BMJ. 1999;318:904–908. Adapted with permission from the BMJ Publishing Group. 30 1 オランダ 1995 2 ニュージーランド 1990 2 1 フィンランド 1987 アイスランド 1985 フランス 1980 1 カナダ 1 ノルウェー 0 スウェーデン 0 米国 0 20 英国 National Call/Recall System*の導入 10 32.0 24.4 子宮頸癌予防 21.2 20 16.3 10 7.0 5.6 1.5 HPVワクチン接種 子宮頸癌検診 0 20-24 25-34 35-44 国民生活基礎調査 平成19年 http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa07/toukei.html 45-54 55-64 65-74 75-84 85以上 (歳) 1)Onuki M, et al : Cancer Sci. 2009 ; 100(7) : 1312-1316. 10 看護師 乳がんの 自己検診について 2013/1/6 乳がん 乳がん看護認定看護師 について 乳がん自己検診 について 医療法人住友別子病院 乳がん看護認定看護師 中川 三和 2 フッター 2013/1/6 1 フッター 2013/1/6 女性:部位別がん推定罹患数の推移 年齢別乳がん罹患率 1975~2007年 45歳から65歳がピーク 毎年6万人ほど 女性の16人に1人の割合 4 乳がんと診断された方は、 様々な不安や悩みを抱えています 子どもや仕事 のこと どうしよう… “その不安な気持ちをささえたい“ そんな看護師の願いから、乳がん看護のエキスパート 乳がん看護認定看護師が2006年から誕生しました どんな治療なの? 副作用は…? お金はどれ位 かかるの? 現在全国で188名、うち愛媛県では3名 の乳がん認定看護師がいます 身体 精神的 経済的 の相談 おっぱいが 無くなるな んて… 下着 ウィッグ のアドバイス 治療選択に ついての相談 乳がん検診 自己検診 啓発活動 5 2013/1/6 フッター 6 2013/1/6 フッター 1 2013/1/6 ピンクリボン運動・ピンクリボン活動 自己検診に関するアンケート 「乳がんの早期発見・早期診断・早期治療」の大切さを伝える *自己検診の頻度* 全くしていない 335人 1年に1回 自己検診に関するアンケート その他 113人 乳がんは、 自分で見つけることができるがんです *乳がん発見のきっかけ* 初期には痛みや体調の悪化などの 症状がほとんどありません 519人 376人 偶然(入浴時など) 40人 乳がんJP HPアンケート フッター 健康診断・人間ドッグ 3か月に1回 乳がん.JPインターネット調べ 7 自己検診 35人 毎月 乳がんに対する関心を高め、 検診への一歩を踏み出してもらうこと を目的として活動しています 2013/1/6 118人 6か月に1回 乳がんは、自分で見つけることが できる可能性が高いがんです 361人 58人 早期に発見すれば治る率が高いがんです 乳がん.JPインターネット調べ 9 2013/1/6 フッター 10 2013/1/6 フッター 乳がんの症状・乳房の変化 しこり :乳がんは乳房の中の乳腺(母乳を作る所)に 発生し、がん細胞が増えるとしこりになります 乳がんの症状・乳房の変化について ・乳がんは5mm~1cmくらいの大きさになると、 自分で注意深く触るとわかるしこりになります ・わきの下にしこりがふれることもあります *乳がんのしこりの特徴* ・硬い、弾力がない ・指で押しても動かない ・周辺との境がハッキリしていない 11 2013/1/6 フッター 12 2013/1/6 フッター 2 2013/1/6 乳がんの症状・乳房の変化 しこりがあるかないかは 一番のチェックポイント! 皮膚・乳頭の変化 皮膚が乳がんにひっぱられて 目でみて変化がわかることもあります。 ・くぼみ、ひきつれ ・乳頭のただれ ・オレンジの皮のように赤くなり、 ザラザラしている ただし・・・ 見つかるしこりの90%以上は 乳腺症などの良性のもの すべてが乳がんというわけではありません 13 フッター 2013/1/6 14 フッター 2013/1/6 乳がんの症状・乳房の変化 分泌物 乳頭からの分泌物が血性だったら要注意 自己検診の方法 透明や乳汁様だったりしたときは、 おおよそ問題はないと思われます。 しばらく注意して、経過をみてください 16 フッター 2013/1/6 乳がんのできやすい場所 自己検診にはタイミングがあります 乳房は、女性ホルモンの影響を受けて変化します • 生理の前は乳房が張って固くなり、乳頭の感覚など敏感になる • 月に1度、生理が終わってから4~5日以内に行うのが適切 • 閉経後の方は「毎月1日」など、日を決めるとよいでしょう 最も頻度の 高い部位 ホルモン周期と乳房変化 * がんのできる可能性のあるところはすべて、 ていねいに指で触れましょう 17 2013/1/6 フッター 18 2013/1/6 フッター 3 2013/1/6 鏡の前で乳房の形をチェック 鏡の前で乳房の形をチェック 1. 鏡の前に立ち、 両腕の力をぬいて自然に 下げたまま次のことを 調べます。 2. 両腕を上げた状態で、 a.b.c. と同じことを調べます a左右の乳房の形や大きさの変化 (しこりがあると、 へこみや、ひきつれが できることがあります) b乳房のどこかに皮膚のへこみや ひきつれはないか c乳首がへこんだり、 ただれができていないか 19 フッター 2013/1/6 あおむけになってしこりをチェック あおむけになってしこりをチェック 3. 4. 右手を左乳房の内側 (乳首よりも内側) にの せ、 指の腹を胸の中央部 に向かって、柔らかく、しっ かり滑らせるようにし、 しこりの有無をまんべんなく 調べます。 仰向けに寝て、低い枕や タオルを折り、背中の下 に入れます 左手を上に上げ、頭の下に 入れるようにします 右手の指をそろえて伸ばし、 まず左乳房の内側を調べます 注意: 指先で乳房をつままないようにすることが大切です 22 フッター 2013/1/6 しこりのチェック あおむけになってしこりをチェック 渦巻き式 5. 今度は乳房の外側の部分を外 から内に向かって、柔らか く、しっかりと指を滑らせて 調べます 親指以外の4本の指を軽く そろえ、10円玉大の 「の」の字を描くように 指の腹をすべらせます。 乳頭周辺から乳房の外側に 向って渦巻き状に触れ、 しこりやひっかかりがない かチェックする方法です 6. 右乳房も同様の方法で調べます 23 2013/1/6 フッター 24 2013/1/6 フッター 4 2013/1/6 わきの下のリンパ節と乳頭をチェック わきの下のリンパ節と乳頭をチェック 7. 起き上がり、右手の指をそろえ てのばし、左ワキの下に入れて しこりがあるかどうか指先で確 かめます 8. 左右の乳首を軽くつまんで、 乳を搾るようにし、 血液の混じった分泌物が 出ないかどうかを確かめます 右のワキの下についても同様の 方法で調べます 25 2013/1/6 フッター 26 フッター 2013/1/6 自己検診で異常が見つかったら 自己検診をしましょう 専門医を受診しましょう 受診するのは「婦人科ではなく外科」です •自己診断を続けることで、ふだんとは違う 乳房の変化に気づくことができます 「何かおかしいな」と不安を感じたら、 迷わず専門医を受診しましょう 乳腺専門外科を受診されることをおすすめします •月に1回、自己チェックを行う習慣を 身につけてください ※病院によっては乳腺外科、乳腺科、乳腺内分泌外科 ブレストセンターなどの表記があります 27 2013/1/6 フッター 28 フッター 2013/1/6 乳がん検診を受けましょう 50-69歳 女性のマンモグラフィー検診受診割合 (2006年) 乳がん検診について 29 2013/1/6 フッター 30 2013/1/6 フッター 5 2013/1/6 乳がん検診を受けましょう 医療機関での検診では、自己検診ではわからない 初期の乳がんの発見が可能です 32 2013/1/6 フッター 自分のために、 大切な人のために… 乳がんは自分で発見することが可能で、 早期発見されることにより、治る率が 高いがんです。 自己検診と、定期的な専門家による検診 を受けて早期発見の機会を失わないよう にしましょう。 33 2013/1/6 フッター 6 医 師 乳がんについて 平成24年11月18日 乳がんについて 考えたことがありますか 第7回市民公開講座 知っておきたいがんの情報 ~乳がんについて~ 愛媛県立中央病院 乳腺・甲状腺外科 佐川 庸 がん対策に関する世論調査 がん対策基本法 (2007.09、成人1767人対象) がん対策推進基本計画 がん予防及び早期発見の推進 100% 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% がん医療の均てん化促進 がんによる死亡者の減少 (20%減) がん患者・家族の苦痛軽減と 療養生活の質の向上 受診なし 受診あり 過去2年以内 肺がん 子宮がん 胃がん 乳がん 大腸がん ・がん検診を重要と思う---94.7% ・検診を受けていない理由 ---たまたま受けていない 28.8% ・健康に自信がある 17.3% がんの早期発見;受診率50% がんの予防;未成年者の喫煙率0% 女性乳癌罹患数の推移 各国の検診受診率と死亡率 2007年:60,986人 (人) 70000 60000 50000 罹患数 40000 30000 20000 10000 0 1975 '80 '85 '90 '95 '00 '05 '07 (年) 国立がん研究センターがん対策情報センター (http://ganjoho.ncc.go.jp/professional/statistics/statistics.html) 1 癌の部位別罹患率の推移 女性乳癌の年齢別罹患率 ■1975~2007年 男 性 罹患率(人口 万対) 年齢調整罹患率(人口 万対) 2007 160 140 2000 1995 1990 120 1985 100 1980 80 60 胃 100 100 胃 肺 1975 20 20 25 30 35 40 45 50 55 60 結腸 直腸 肝 前立腺 10 65 70 75 80 85 子宮 直腸 肺 食道 膵 10 肝 膵 卵巣 白血病 白血病 食道 1 1 0.3 年齢(歳) 乳房 結腸 10 40 0 全部位 全部位 180 10 女 性 400 400 200 0.3 1975'80 '85 '90 '91 '92 '93 '94 '95 '96 '97 '98 '99(年) 1975'80 '85 '90 '91 '92 '93 '94 '95 '96 '97 '98 '99(年) 標準人口は1985年の日本のモデル人口 国立がん研究センターがん対策情報センター (http://ganjoho.ncc.go.jp/professional/statistics/statistics.html) 国立がんセンター「がんの統計」編集委員会, 「がんの統計'05」 2009年の死亡数が多い部位は順に 女性乳癌死亡数の推移 2010年:12,455人 (人) 14000 12000 1位 2位 3位 4位 5位 男性 肺 胃 肝臓 結腸 膵臓 結腸と直腸を合わせた大腸は3位 女性 肺 胃 結腸 膵臓 乳房 結腸と直腸を合わせた大腸は1位 男女 肺 胃 肝臓 結腸 膵臓 結腸と直腸を合わせた大腸は3位 10000 死亡数 8000 2005年の罹患数が多い部位は順に 6000 1位 2位 4位 5位 男性 胃 肺 前立腺 結腸 肝臓 女性 乳房 胃 結腸 肺 子宮 結腸と直腸を合わせた大腸は2位 男女 胃 肺 結腸 乳房 肝臓 結腸と直腸を合わせた大腸は2位 4000 2000 0 1950 '55 '60 '65 '70 '75 '80 '85 '90 '95 '00 '05 '10(年) 結腸と直腸を合わせた大腸は2位 (国立がん研究センター:がん情報サービスより) 厚生労働省大臣官房統計情報部編「平成22年人口動態統計」 癌の部位別死亡率の推移 男 性 300 3位 部位別がん死亡数 女 性 300 全部位 全部位 100 胃 肺 肝 大腸 食道 10 胃 子宮 肺 大腸 肝 10 膵 白血病 10 胆嚢・胆管 1 年齢調整死亡率(人口 万対) 年齢調整死亡率(人口 万対) 100 前立腺 乳房 10 白血病 食道 胆嚢・胆管 1 膵 0.3 1950'55 '60 '65 '70 '75 '80 '85 '90 '95 '00 '05 '10(年) 標準人口は1985年の日本のモデル人口 0.3 卵巣 1950'55 '60 '65 '70 '75 '80 '85 '90 '95 '00 '05 '10(年) 子宮は1990年以前は胎盤を含む 厚生労働省大臣官房統計情報部編「平成22年人口動態統計」 がん研究振興財団発行:「がんの統計’11」, p27-28, 2011 2 よくあるご質問(1) 66の Question 1.閉経前後を問わず、乳がんの発症リスクを高める (日本人女性のデータはなし) ---ビール500ml程度ならOK? 2.喫煙は日本人女性の乳がん発症リスクを高める 可能性がある(厚労省研究) 3.大豆食品やイソフラボンを摂取することは乳がんの 予防につながるか? ---大豆食品・イソフラボンの大量摂取が乳がん発症 リスクを低下させるという結論は出ませんでした。 家族性乳がん (1)親、子、兄弟姉妹の中に、乳がんが最初に わかった人(発端者)を含めて3人以上の乳がん 患者さんがいる場合 (2)親、子、兄弟姉妹の中に、乳がんが最初にわかった 人を含めて2人以上の乳がん患者さんがいて、 その2人のうちのどちらかが、次の①~③のどれかに 該当する場合 ①40歳未満で乳がんを発症している場合 ②左右両側に乳がんを持っている場合 ③乳がん以外のがんにもかかっている場合 よくあるご質問(2) 4.乳がんは遺伝しますか? ---乳がんを発症した人の5~10%は、遺伝的に 乳がんを発症しやすい体質を持っていると 考えられています 5.標準治療とは何ですか? ---多くの臨床試験の結果をもとに専門家が集まって 検討を行い、専門家の間で最も効果があると合意の 得られている治療法のことです 乳癌検診のエビデンス あなたは 乳癌検診を 受けたことが ありますか ・50歳以上においてマンモグラフィを用いた乳癌検診は 死亡率を減少させる ・40歳代に対してマンモグラフィによる乳癌検診は 死亡率を減少させるが、50歳以上に比べて効果は低い ・視触診単独による乳がん検診の死亡率減少効果を示す根拠は 不十分であるが、無症状の受診者においては死亡率を減少させる 可能性がある がん予防重点健康教育および検診実施のための指針 対象年齢 方法 間隔 対象年齢別乳がん検診の方法と間隔 40~49歳 50歳以上 マンモ2方向撮影 マンモ1~2方向撮影 視触診 視触診 隔年 隔年 3 •マンモグラフィ(MLO view) マンモグラフィ(C-C view) 乳がん検診受診率 マンモグラフィ検診の印象 (%) 35 30 25 20 2007 2010 15 10 5 0 全国 愛媛 香川 徳島 高知 愛媛県における乳癌検診 (MMGまたはMMG併用検診) 検診対象者 検診受診率 要精検率 精検受診率 がん発見率 ・乳がんの発見に効果的 ・定期的に受けたい ・女性技師がよい ・思ったより簡単だった ・痛みが強く、耐えられなかった ・さほど痛くなかった ・放射線が心配 ・乳房に触られるのがイヤ 385,221人 19.5% 4.7% 90.0% 0.33% (平成22年度) 愛媛県における 乳がん検診無料クーポン券利用実績 松山市 上島町 西予市 県内計 平成21年度 22.5% 42.9% 28.7% 平成22年度 22.3% 49.0% 28.8% 乳がん検診クーポン券配布対象者 :40歳、45歳、50歳、55歳、60歳 4 乳がんのできやすいところ 初発症状(複数該当を含む) (%) 癌研乳腺外科 100 88 87 90 81 80 n=14,691 1970~1979 1980~1989 1990~1999 2000~2002 78.3 70 60 50 40 30 20 10 0 17.8 8 8 11.7 なし 8 乳腺腫瘤 12 7.8 6.5 疼痛 3.6 5 5.1 2.7 乳頭分泌 (主としてMMG発見) - 対 象 - 覚えておきたい乳がんの症状 2010年1月~9月までの9ヶ月間 -初診患者数- 乳房パジェット病 614例 (女性582人、男性32人) 血性乳頭分泌 人 - 乳 - 癌 - 乳房痛 - 人 137人 年齢中央値 39歳 乳癌 1例 (0.7%) 68人 年齢中央値 61歳 腫瘍径:検診発見 平均 1.8cm 検診以外 平均 2.9cm (p<0.001) 病悩期間 乳癌 歳 歳 5 - 検診異常 乳癌診断の基本的な手順 - 視・触診 人 196人 年齢中央値 49.5歳 乳癌 21例(10.7%) 腫瘤(-) 腫瘤(+) マンモグラフィ、超音波 マンモグラフィ、超音波 所見異常なし 所見異常あり 所見異常あり 所見異常なし 穿刺吸引細胞診〔ABC(FNA)〕 乳頭異常 分泌なし 乳頭異常 分泌あり 腫瘍像なし (石灰化) 腫瘍像あり 乳頭異常分泌の診断 • • • • • • 超音波ガイド下 ABC、CNB、 マンモトーム 分泌液細胞診 分泌物内腫瘍マーカー 乳管造影 乳管内視鏡(乳管鏡) 組織診(吸引、擦過液) MRI 良性 マンモトーム 悪性 悪性疑 悪性 良性 太針穿刺組織診 〔CNB〕 悪性 経過観察 良性 定期検診 自己検診 数字は症例数 乳がん 歳 その他:US、CT、触診異常など 良性病変:Fa、嚢胞、Mp、IDP MMG MLO 穿刺吸引細胞診とその特徴 US CC 線維腺腫:2相性のある細胞群が シート状になっている 専用の吸引ピストルを 用いた細胞採取 触診上,右CD領域にΦ2cm大の比較的硬い腫瘤を触知する MMG:微細分葉状,高濃度の円形腫瘤,腫瘤に一致して集簇性に 不明瞭な石灰化を伴う(カテゴリー4~5) USガイド下穿刺吸引細胞診でclassⅤ 細い針(通常21~23ゲージ程度)を腫瘍に穿刺して、 細胞塊を吸引し、これをスライドガラスに吹きつけて 染色し、細胞学的な良性、悪性所見を顕微鏡で検査す る方法 侵襲が少なく、手技が簡単であるが、診断に必要な細 胞量を採取するためには、習熟を要す 硬癌や小葉癌は、診断成績が低下しやすい 非触知例や腫瘍が小さい場合は、超音波ガイド下での 採取が行われる 当科における乳癌手術症例の変遷 80 乳腺甲状腺外科外来新設 100 センチネルリンパ節生検保険適応 120 乳腺甲状腺外科標榜 (例) センチネルリンパ節生検開始 マンモトーム 生検標本 超音波ガイド下での細胞採取 癌:細胞質が明るく、核が濃染した大 型の細胞が集塊状にみられる(左と同 倍率) 60 40 20 0 乳房温存率: 66%(2009) 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 6 乳がん手術の変遷 乳がんの発生と進展 センチネルリンパ節生検(SNB) 乳癌の基本的な治療方針 SNBの結果と治療方針 術式の選択 しこりの大きさ・拡がり・位置・悪性度 SNB:Sentinel lymph node biopsy 手 リンパ節への転移状況 術 SNの同定と摘出 (術前化学療法) 同定不能 手術中の迅速検査 腋窩リンパ節郭清 乳房温存手術 乳房切除術 転移あり (胸筋合併乳房切除術) 胸筋温存乳房切除術 扇状部分切除術 円状部分切除術 転移なし 腫瘤摘出術 腋窩リンパ節郭清 Auchincloss, Kodamaなど 術中・術後の病理診断 取り残しあり 手術法の変更 (追加切除) 取り残しあり (乳房内再発の可能性高い) 再手術 (追加切除) 郭清省略 手術後の検査 術中の病理診断 センチネル リンパ節(SN) 取り残しなし 転移あり 転移なし 術後の病理診断 腫瘍 乳房内再発の 可能性少ない 乳房内再発の 可能性ない 放射線照射 放射線照射 なし 腋窩リンパ節郭清 or 腋窩の放射線照射 or 化学・内分泌療法 SNとは:癌からのリンパ管流が最初に流れ 着くリンパ節。癌が最初に転移するリンパ 節と考えられる。 SNBの方法:色素法、RI法 経過観察 SNB適応の目安: 腫瘍の大きさが3cm以下で、触診や画像診断 でリンパ節転移陰性と考えられる症例 術後の治療方針の決定(化学療法、内分泌療法) 乳房温存(円状切除) 乳房温存療法の適応にならない場合 ---乳房温存療法ガイドラインより ①2つ以上のがんのしこりが、同じ側の乳房の離れた部位にある場合 ②乳がんが広範囲にわたって広がっている場合(マンモグラフィで、 乳房内の広範囲に微細石灰化が認められる場合など) センチネルリンパ節生検 ③以下の理由で、温存乳房への放射線療法が行えない場合 a)温存乳房への放射線療法を行なう体位がとれない b)妊娠中である c)過去に、手術した側の乳房や胸壁へ放射線療法を行なったことがある d)強皮症や全身性エリテマトーデスなどの膠原病を合併している ④しこりの大きさと乳房の大きさのバランスから、美容的な仕上がりが よくないことが予想される場合(術前化学療法で対応可かも) ⑤患者さんが乳房温存療法を希望しない場合 7 ホルモン受容体陽性(HER2陰性) 乳がんに対する化学療法の追加基準 化学療法によって防ぐことのできる再発 抗がん剤による再発予防効果の考え方 St. Gallen の変遷(治療指針) 従来の「リスクカテゴリー分類による治療選択」という考え方から、2009年は「[内分泌療法]、 [抗HER2療法]、[化学療法]のそれぞれについて閾値(Threshold)を考慮した治療選択」という 考え方が提唱され、その後、2011年は「乳癌のサブタイプから治療戦略を展開するアプローチ」 に改訂された。 従来(2007年) 治療ターゲットを評価 内分泌反応性 HER2発現状況 再発リスクを評価 (リスクカテゴリーで分類) 低リスク 中リスク 高リスク 治療ターゲットと再発リスク をもとに治療方針を決定 乳 手術 癌 治 乳癌 療 免疫療法 2009年 個々の患者における病態と 腫瘍の病理学的特性を評価 閾値(Threshold)をもとに 各治療法を行う正当性を評価 1)内分泌療法を行うのが正当か 2)抗HER2療法を行うのが正当か 3)化学療法を行うのが正当か 2011年 臨床病理学的因子を用いて サブタイプを分類 Luminal A Luminal B(HER2陰性) Luminal B(HER2陽性) HER2陽性(non Luminal) Triple negative(乳管型) 1)~3)のどの治療を行うか、 またはどの治療を 組み合わせるかを決定 サブタイプをもとに、 治療戦略の大枠を決定し、 個々の患者情報に 応じて詳細を検討する Non-surgical ablation ---乳癌の低侵襲手術 ・ ラジオ波熱凝固法(RFA) ・ MRガイド下集束超音波手術(MRgFUS) ・ 凍結療法 Non-surgical ablationの適応基準 腫瘍の辺縁が明瞭で、広範な乳管内進展が存在しない早期乳癌 =限局型の2cm以下の乳癌 放射線療法 内分泌療法 化学療法 Non-surgical ablationの問題点 ①長期成績がない ②治療の評価方法が確立していない 1)病理組織学的評価方法 2)画像診断による評価方法 3)適切なフォローアップ方法 ③合併症の問題点 疼痛、小手術を追加した場合の感染・創傷治癒不全など 8 乳がん初期治療に要する治療費(概算) 乳癌診療ガイドライン 癌も集学的(チーム)医療 -患者さんを中⼼とした (1)入院・手術 ---乳房温存+センチネルリンパ節生検の場合 約60万円 (2)放射線治療 総額41~55 万円 EBMに則した診療 患者 (3)内分泌療法(ホルモン療法) ---閉経前注射薬 約58万円/年 内服薬 約16万円 閉経後内服薬 約24万円 クリニカルパス (4)化学療法 3~5か月間 約13~100万円 (5)分子標的治療薬 1年間 約220万円 集学的治療チーム • • • • 腫瘍外科医(乳がん専⾨医) 腫瘍内科医・精神科医 腫瘍放射線医 オンコロジー・ナース ---⽇本の⼟壌・国⺠性や 社会システムにあったチーム医療の確⽴ 愛媛県立中央病院 乳腺甲状腺外科 ⇒乳腺内分泌外科 がん看護専⾨看護師 がん化学療法認定看護師 (乳がん看護認定看護師) • 薬剤師 がん専⾨薬剤師 がん薬物療法認定薬剤師 • 病理医・技師 • 放射線診断医・技師 9