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池本委員配付資料(PDF形式:101KB)

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池本委員配付資料(PDF形式:101KB)
第4回認定こども園制度の在り方に関する検討会
諸外国における保育政策(Early Childhood Education and Care=ECEC)に関するメモ
2009 年 2 月 18 日
池本美香(日本総合研究所)
1.諸外国における保育政策に関する議論・改革の動向
日本では保育政策が少子化対策の一環として注目される傾向が強いのに対して、諸外国
では以下のような幅広い観点から、近年保育政策が活発に議論され、改革も進んでいる。
① 女性の就業増加への対応の必要性
・ 女性の就業増加の背景としては、1)少子高齢化による労働力不足、2)男女差別
解消の要請、3)離婚による母子家庭の増加などがある。
・ 保育所の量的拡大の要請に対して、保育の民営化も進んでいるが、補助金の公平性
(施設間の公平性、地域間の公平性など)、保育の質をチェックする仕組み(登録
制、外部監査、情報公開など)についても配慮されている。
・ 保育政策だけでなく、労働政策・経済的支援策もあわせて議論されている。たとえ
ば、低年齢児保育より育児休業制度や在宅育児手当、延長保育より労働時間短縮、
病児保育より看護休暇、保育所より母子家庭への手当に力を入れる国があるほか、
企業に保育所の設置等の負担を求める国もある。
・ 日本は6歳未満の子を持つ女性の就業率が低く(図表1)、男女賃金格差が大きく
(図表2)、女性の政界や経済界への社会進出度を示すジェンダー・エンパワーメ
ント指数(GEM)も 93 か国中 54 位(07 年)である。男性の家事・育児時間は非
常に短い(図表3)。
② 生涯学習社会における幼児教育の重要性
・ 産業・就業構造の変化、情報化に伴う知識社会への移行などに伴い、生涯学習の土
台となる小学校就学前の教育に注目が集まっている。脳科学の発達も幼児教育の充
実に向けた政策を後押ししている。
・ 教育格差是正に対する関心が高く、すでに小学校入学時点で格差が生じているとい
う認識から、保育を受ける権利の拡大に力を入れている。具体的には、幼児教育の
無償化(イギリス、スウェーデン、ニュージーランド)、保育料の上限設定、親が
育児休業・失業中に保育を受ける権利、就学年齢の引き下げ、保育所整備を自治体
に義務付けるなどがある。
・ 教育の観点から、幼小接続に向けた改革も活発化している。具体的には、教育担当
官庁で保育施設も所管する動き(図表4)、小学校との接続を意識したカリキュラ
ムの導入、教員養成制度の統合、就学準備クラスの設置など。たとえば、イギリス
では学校等の質をチェックする Ofsted がすべての保育施設をチェックし、監査結
果を公開する仕組みが導入され、スウェーデンでは保育士、小学校教員、学童保育
1
指導員の養成制度を一元化した。
③ 子どもの権利に対する注目
・ 1989 年に採択された児童の権利条約を受け、子どもの権利擁護のための独立機関
を設置する国が増えている(ノルウェー、ニュージーランド、スウェーデン、デン
マーク、フランス、イギリスなど)
。
・ 国連の児童の権利委員会が保育所への投資の充実、親支援の充実などを提言してい
る(2005 年「乳幼児期における子どもの権利の実施」)。
・ 子どもの貧困、虐待などの問題が深刻化するなか、保育政策を通じてそれらを予防
していこうという動きがある。
④ 家族や社会の変化への対応
・ 母親の就労増、離婚による一人親家庭の増加、情報化・商業化による子育てに関す
る選択肢の増加、治安の悪化、グローバル化による外国人・移民の増加など、保育
施設は家族や社会の変化への対応を迫られている。
・ 保育施設における親支援機能の質的充実が図られている。たとえば、コミュニティ
の再生、社会関係資本(Social Capital)の蓄積を意識した保育施設や、親の様々
な問題に対応する保育施設(就労支援、悩み相談、医療ケア、レクリエーション、
学習など)などが見られる(図表5)。
⑤ 保育政策の位置づけに関する議論
・ 保育政策の位置づけとしては、イギリス、フランス、アメリカなどの pre-primary
<就学前教育>アプローチと、ドイツ・北欧などの social pedagogy<社会教育>
アプローチの二つが対立していたが、ドイツ・北欧などでも学力向上や生涯学習の
基礎という観点から、就学前教育アプローチを取り入れる動きも見られるなど、二
つのアプローチのどちらが大切かという不毛な議論ではなく、いずれも大事である
という考えで統合する議論が出てきている(Education + Care = Educare)。
⑥ 予算の効果的な配分
・ 保育への投資効果が高いことが、様々な研究で明らかになっており、それが政府の
投資を引き出している。高等教育より幼児教育の方が投資効果が高いこと(図表6)
や、保育への投資には長期的に様々な波及効果があること(図表7)などが指摘さ
れており、保育への公的投資に積極的な国が増えている(図表8)。
・ たとえばニュージーランドでは、緊縮財政の時期に、高等教育の予算を削って保育
への投資を大幅に増やした。また、保育所を幼稚園と同じ教育省の所管に移して幼
保を一元化した背景には、緊縮財政の下、行政事務を合理化する狙いがあった。
・ イギリスの子どもセンターのモデル事業(Early Excellence Centre)では、総合施
設への1ポンドの投資は、別々のサービスへの8ポンドの投資に匹敵するとのデー
タもあり(Schools: Building on Success(2001))、予算の有効活用という視点か
らも、子どもセンターが支持されている。
2
2.日本の認定こども園制度への示唆
以上の諸外国の議論や事例などをふまえ、認定こども園制度の見直しにあたって検討す
べき論点は以下の通りである。
①
保育に対する投資効果に注目する
投資しないことで将来より多くのコストが発生する(虐待、学力格差、女性の就労率、
少子化、子どもの貧困など)。どのように投資するのがより効果的か、長期的なメリッ
トにも配慮すべき。財政難であっても、事務コストなどの無駄を省きつつ、保育への
積極的な投資が必要ではないか。
②
保育に関する二つのアプローチをどう整理・具体化するか
どちらを重視するかではなく、どちらも重要と考え、コアタイム(教育)と家庭・地
域社会(生活)を明確に分け、両方を大事にするという方向がよいのかもしれない。
③
職員の体制・養成・処遇のあり方を見直す
新しいニーズに対応して抜本的な見直しが必要ではないか。それに対応した給与水準
も必要。また、失業が問題となるなか、良質な雇用を創出することの意義を強調すべ
きではないか。
④
子どものために親・地域住民の生活のレベルアップを目指す
子どもが園にいる時間だけの対応ではなく、親同士・地域社会のつながりづくり(社
会関係資本の蓄積)、親のリフレッシュ・意識改革・情報提供・健康づくり・就労促進
などにも力を入れるべきではないか。
⑤
園と親の関係の見直し
親がすべきことができないことを園がやる、という前提を見直すべきではないか。「保
育に欠ける」→「園と親で一緒に子育てをする」、「サービス提供」「支援してあげる」
ではなく「親と共に育てる」「共同責任」という考え方で、親の意向を反映した保育が
できないか。
「私たちの園」という意識が大切ではないか。父親の参加を意識し、親の
ワーク・ライフ・バランスへの働きかけも重要ではないか。
⑥
幼小接続に向けた議論
担当省庁の一元化(文部科学省、子ども・家庭・学校省など)も検討すべきではない
か。保育の幼小接続の観点から、認定こども園は学童保育ニーズにも積極的に対応す
べきではないか。卒園生とのつながりも大切にすべきではないか。
⑦
格差是正に向けた配慮
日本でも子どもの貧困・教育格差の問題がでてきている。幼児教育無償化などの議論
とともに、認定こども園は格差是正にどういう貢献ができるのか、子育て支援の充実
に力を入れる必要があるのではないか。
⑧
総合施設のメリットに注目する
一箇所に集めることははコストも節約できるが、それだけでなく、同質集団より多様
性のある組織の方が生産性が高いという企業のダイバーシティの考え方に注目すべき
3
ではないか。親も子も職員も多様であることを、マイナスではなくプラスととらえる
べきではないか。「認定こども園は子どものためのビオトープではないか」(認定こど
も園あかみ幼稚園中山園長)との発言もあり、子どもにも多様性のある環境を保障す
る視点が必要ではないか。
⑨
新しい園機能に対応した園舎の建築のあり方
保護者のためのスペース、家庭・地域社会に近い環境、文化・芸術・自然など、既存
の幼稚園、保育所にとらわれない新しい空間作りの議論も必要ではないか。海外で見
学した施設との比較で、日本では保育空間に対する配慮が不足している印象。
<参考文献>
OECD, Starting Strong Ⅱ: Early Childhood Education and Care, 2006
池本美香「乳幼児期の子どもにかかわる制度を再構築する」日本総研 Business & Economic
Review 2007 年 12 月
泉千勢・一見真理子・汐見稔幸編著「世界の幼児教育・保育改革と学力」明石書店、2008
年
図表1
6歳未満の子を持つ母親の就業率
図表2
男女賃金格差の状況
5
15
(%)
0
10
20
30
40
(
%)
50
60
70
80
ポルトガル
90
0
10
20
25
30
35
40
韓国
スウェーデン
日本
オーストリア
37
31
ドイツ
デンマーク
オランダ
スイス
ベルギー
オーストリア
ルクセンブルク
カナダ
フランス
1995年
2005年
イギリス
カナダ
フィンランド
スイス
オランダ
アメリカ
O EC D 平均
48.5
アメリカ
59.2
ドイツ
O EC D 平均
イギリス
チェコ
イタリア
アイルランド
アイルランド
スペイン
スペイン
オーストラリア
ギリシャ
19
23
スウェーデン
フィンランド
ハンガリー
ニュージーランド
デンマーク
オーストラリア
日本
ハンガリー
スロバキア
45
35.
22
37.
フランス
2002年
1990年
ポーランド
ニュージーランド
チェコ
(注)デンマーク、ハンガリー、スロバキア、チェコの1990年は不明。
(資料)O EC D ,Society at a G lance 2005
(注)
女性の賃金が男性の賃金を何パーセント下回るかで表示。賃金は正規雇用者。
(
資料)
O EC D ,Em ploym ent O utlook 2007 P .268
4
50
図表3
6 歳未満児のいる男女の家事、育児時間(週全体)
(出所:平成 19 年版少子化社会白書)
図表4
諸外国における幼児教育・保育の所管官庁
0
1
2
3
4
5
6
7(歳)
イギリス
ニュージーランド
ノルウェー
スウェーデン
フランス
ベルギー
アイルランド
ハンガリー
イタリア
チェコ
ポルトガル
オランダ
カナダ
オーストラリア
デンマーク
フィンランド
オーストリア
ドイツ
アメリカ
韓国
日本
(注)
教育所管の幼稚園等のサービス
社会福祉、健康、家族サービスとしての保育所、家庭保育等のサービス
福祉と教育のサービスが混在(※ドイツは州ごとに違う)
義務教育
(
資料)
O EC D ,S trating S trong Ⅱ p.76 をもとに日本総研作成
5
図表6
年齢別にみた人的資本投資の収益率
1
人的資本
投資の
収益率
就学前教育 学校 学校後教育
0
年齢
(資料)O EC D , Starting Strong Ⅱ p.38
図表8
幼児教育・保育への公的投資の対 GDP 比
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
(%)
2.5
2.0
デンマーク
1.7
ノルウェー
1.7
スウェーデン
1.3
フィンランド
1.0
フランス
0.80
ハンガリー
0.55
オーストリア
0.50
イギリス
0.48
アメリカ
0.45
ドイツ
0.45
オランダ
0.43
イタリア
0.40
オーストラリア
カナダ
0.25
日本
0.26
(注)
O EC D ,Starting Strong Ⅱ(2006) p.105 0∼6歳の2004年の数値。
日本の数値は、認可保育所および幼稚園への公的補助(
保育所の地方追加額は含まない)
をもとに計算。
6
図表5
幼児教育・保育への投資効果に関する諸外国の主な研究成果
調査名
The P erry P re-school
study(ongoing)
The Zurich study by M uller and
Kucera-B auer(2001)
社 The N orth C arolina A becedarian
会 Early C hildhood Intervention(2003)
・
経
済
・
労 The C alifornian studies(2001)
働
市
場
に
対
す
る
効
果
調査結果のポイント
質の高い幼児教育プログラムは、学校のよい成績、労働市場への参加率の向上、より高い収
入につながっている。幼児教育プログラムへの投資とその利益の比率は1:7と推計されてい
る。
保育サービスへの1800万スイスフランの公的投資は、少なくとも2900万スイスフランの税収増
によって相殺され、社会援助への公的支出も減らす。保育が整備されれば、母親の働く時間
は倍近くになる。公的な保育は、1)より高い生産性と賃金の上昇につながる、2)社会保障制
度や貯蓄にプラスになる、3)現役時代・高齢期ともに社会援助への依存が減る(保育サービ
スがなければ多くの家族が貧困ラインを下回る)。
質の高い、全日の年間を通じた幼児教育への1ドルの投資は、子ども、家族や税負担者に4
ドルのメリットをもたらす。この幼児教育プログラムへの参加者は、非参加者よりも生涯にわ
たって143,000米ドル収入が多かった。また、子どもがプログラムに参加した母親は、およそ
133,000米ドル収入が多かった。学校区は特別な矯正教育の必要が減ることで、子ども一人
当たり11,000米ドルの予算節約が期待できる。次の世代(プログラムに参加した子どもの子ど
も)は48,000米ドル近い収入の増加が期待できる。
保育サービスは親の雇用や収入を増やすだけでなく、保育産業がカリフォルニアの総生産の
650億ドルを占める。これは映画産業の約4倍以上の規模になる。123,000人を雇用している
ほか、さらに交通、出版、製造業、建設業、金融サービス、不動産、保険分野で86,000人の雇
用につながる。カリフォルニアの貧しい家庭25%に対して保育を提供することにより、1ドルの
投資から2ドルの収益が期待できる。幼児教育を受けた子どもは、学校の成績がよく、高校卒
業率が高く、犯罪率が低く、大人になったときの収入が多い。このことは政府の支出を減らし、
税収を増やす方向に働く。学校の落第者や高校の中退者の半分は、収入の中間層60%に属
しているため、貧困層だけでなく中流家庭にまで保育サービスを広げることにより、投資効果
は2.62∼4ドルに高まる。また、保育の効果はそのほか、福祉の受給率を低下させ、健康を改
善する効果もある。
The C anadian cost-benefit
analysis(1998)
保育に十分な公的投資を行うことは、カナダの社会に利益をもたらし、その利益はコストの約
二倍である。
Labour m arket/taxation
studies:exam ples from N orw ay,the
U nited Kingdom and C anada
ノルウェーでは保育の充実により、女性の労働市場への参加率が1972年の50%から1997年
の80%に上昇、特に25∼40歳の参加率を高めた。イギリスでは、保育サービスの整備により
女性の就業率が高まることで、今後G D P が1から2%上昇するとの予測がある。カナダのケ
ベックでは、補助のある保育枠を77,000から163,000に増やしたことで、労働力率、労働時間、
収入、フルタイムの割合が上昇した。
S w eden:A ndersson study(1992)
スウェーデンの2つの大都市の中・低所得層128家庭の8歳児をサンプルとして、家庭環境、
子どもの性別、生まれつきの能力、8歳児点の成績の影響を取り除いて13歳時点の成績を見
たところ、2歳になるまでに保育所に入った子どもは、完全に家庭で育った子どもより、成績が
10∼20%よかった。保育所に早い時期から入ることは、創造的で、社会生活に自信を持った、
人に好かれる、寛大な独立心のある青年期につながると結論づけている。
幼稚園に就学前1年、2年、3年通った子どもの国の比較調査によれば、小学校の成績は、
子どもの育つ環境の影響を考慮しても、就学前教育を受けた時間の長さと関係していること
がわかった。幼稚園に通う年数が長いほど、小学校1年生での落第率が低くなり、その影響
は最も恵まれていない家庭の子どもほど大きい。
「すべての子どものための成功」プログラムは、リスクの高い子どもに対して、学校の早い時
期での成功を目的に、アメリカで広く実践されたもの。およそ2000の学校で100万人が参加し
た。集中的な乳幼児教育に加え、学校と親の連携強化、社会的な問題や健康の問題などへ
の働きかけを含む内容。このプログラムに参加した子どもは、小学校卒業が早く、成績がよ
く、落第が少なく、特別教育のニーズが少なかった。この効果を持続するには、小学校や中学
校でも同様のプログラムの必要性が指摘されている。
1967年にオープンした、公立学校内にあるセンターが、3歳から9歳の低所得層の子どもに教
育と家族向けのサポートを提供している。このセンターへの参加は、成績の上昇、卒業率の
上昇に加え、補習教育、未成年者犯罪、児童虐待の率を低下させた。コスト・ベネフィット分析
でも、経済活動にプラスになり、税収が増えるほか、犯罪に関わる裁判や処遇、被害のコスト
を減らすという効果も指摘されている。
The French N ationalS urvey(1992)
The U nited S tates "S uccess For
A ll" study(2002)
幼
児
期
へ The C hicago C hild-P arent C entres
の study(2002)
投
資
に
よ
る The longitudinalN ew Zealand survey 1992年から長期にわたって行われている調査で、幼児教育の質が高い子どもは、質の低い
幼児教育を受けた子どもと比べて、12歳時点での国語や数学の成績が良いことがわかった。
教 "Tw elve Years O ld and
重要なこととして、家庭の所得や親の教育水準の影響を除いても、子どもの成長とともに、そ
育 C om petent"(1992 ongoing)
の格差が拡大しているということが指摘されている。
的
ヘッドスタートプログラムは、学校での成績、家族の自立、子どもの発達に関する親への支援
な The U nited S tates N ational
効 Evaluation of Early H ead S tart(2003) について、効果をもたらしている。子どもの認知的・言語的な発達に効果があり、プログラムに
参加した子どもは親との交流に積極的である。また親が教育や職業訓練に参加することを増
果
やし、親の自立の助けにもなっている。
The longitudinalB ritish EP P E
study(1997-2007)
3歳から7歳の子どもを対象に、幼児教育の効果について調査されたもの。主な結果は、1)
幼児教育の経験は子どもの発達を促す。幼児教育への参加の期間が長いほど、知的・社会
的な発達に効果があるが、フルタイムのほうがパートタイムの利用より効果があるという関係
は見られない。社会的に恵まれない子どもは、いろいろな社会階層の子どもが混ざった環境
で保育を受けることの効果が大きい。2)プログラムの質が、子どもの知的・社会的発達に大
きな影響を及ぼす。訓練を受けたスタッフが多くいることは子どもの発達に効果がある。社会
的な発達に着目することや、教育的な環境設定やともに考えるやり方といった教育的手法に
幼児教育の種類も重要であり、より知的発達に効果があるのは、統合され
も効果がある。3)
た施設と自治体が運営する保育園である。4)
家庭での学びも重要である。親の社会階層や
教育水準は子どもの知的・社会的発達に影響を及ぼすが、それ以上に家庭の学習環境の違
いが重要である。親が誰であるかより、親が何をするかがより重要である。
(注)O EC D ,S tarting S trong ⅡP .249∼258 を日本総研が要約。
7
図表7
諸外国における親支援を重視した幼児教育・保育施設の事例
①イギリス
子どもの幼児教育・保育施設で、医療・保健サービス、就労支援、レクリエーション、講
座など親・地域住民へのサービスを提供する。子どもの利用を目的に立ち寄った親に
子 ど も セ ン ター 対して、様々な機会を提供することで、親の生活全体を向上させる効果がある。
children’s centre
※ 政府の保護者向けパンフレットSure Start Children’s Centres: good for your
child and good for you より
・利用した親の感想として、ちょっと話を聞いてほしいときや、お茶でも飲みたいときな
ども含めて、近くにサポートやアドバイスが得られる場所があることのよさ、きょうだ
いを一緒に連れて行けることのよさなどが挙げられている。
・親自身の子育てのやり方を変えるきっかけになるなど、親自身の生活に影響を与え
ていることが示されている。
・母親だけでなく、これから親になる人、父親、祖父母、保育者など、だれでも歓迎す
るというメッセージがある。
※ 利用者調査 Sure Start Children’s Centres Parental Satisfaction Survey
Report and Annexes 2007 より
・保育以外では、本の貸し出し、おもちゃの貸し出し、カフェなどが意外によく利用され
ており、そのほか食事・しつけ・発達に関するアドバイス、医療・保健サービスなども
よく利用されている。
・子どもセンターの利用頻度は、平日毎日利用している人が3分の1で、週3、4回の
人が2割、週1、2回が3分の1となっている。
・親が評価している点は、他の親に会えること、行きやすい楽しい雰囲気、家から出る
よい機会となっていることなどである。
・今後の要望としては、家族全員で行けるように、小学生の放課後の対応、小学生の
子どもと親の料理教室、小学生と未就学のきょうだいが一緒に参加できる機会など
が挙がっているほか、子どもと親双方にとってより活動的なメニューへの要望もあ
る。具体的には、外出の機会(水泳など)
、ダンス、歌、体操など。
②ニュージーランド 親の協働で運営される幼児教育・保育施設。親対象の学習コースが設置され、子ども
のとの接し方などについて親全員が学ぶ仕組み。生涯の友人を得たなど、協働運営、
プ レ イ セ ン ター 学習コース必修というシステムが社会関係資本の蓄積につながっている。また、親が
playcentre
プレイセンターをきっかけに学習を継続し、キャリア形成にも役立っている。(プレイセ
ンターを利用した母親たちは、大学研究者やボランティア団体リーダーになる人も多
く、国の首相にもなっている。)施設の運営方法などすべて自分たちで決めるため、私
たちのセンターという思いが強く、小学校に上がった子どもが遊びに来ることも多い。
③スウェーデン
親組合保育所
④フランス
親保育園
親が組合を作って、その組合が保育士を雇って運営する方式。待機児童解消の際、公
務員を増やさないために導入された仕組みだが、親の意向が公立園に比べて保育に
反映しやすいことから、公立園から希望して移る人もいる。
親も当番として週に半日などの決まりで保育に参加する方式の施設。子どものいる学
生が、家で交替で子どもの面倒をみることから始まったとされるが、今でも親が保育士
のやり方から学んだり、園での子どもの様子を日常的に見たりすることができる点が支
持され、一つの保育園の種類として親保育園が確立している。
(資料)各種資料をもとに作成
8
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