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M&Aから流動化までこなす精鋭3PL企業

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M&Aから流動化までこなす精鋭3PL企業
Sep
Feb20,
3, 2012
2011
SBSHD(2384)
ジャスダック
M&Aから流動化までこなす精鋭3PL企業
IR STREET
アナリスト 岡村 友哉
Yuya Okamura
■ 3PLのオールラウンダー
食品、アパレルから電車までオールラウンドに対応する
3PL企業。売上全体の9割強を物流事業が占めるが、
そのほか不動産や人材事業なども手掛けている。伝統的
な物流事業に加え、不動産ノウハウに基づいた物流セン
ターの開発が強み。3PLに適した物流センターを開発
し、荷主企業の合理化ニーズに応えている。また、自前
のM&Aチームを設置。中小の同業他社や大企業の物流
子会社などを幅広く買収ターゲットに見据え、M&Aの
シナジー効果によるグループ力増強を図っている。
会社概要
所在地
東京都墨田区
代表者
鎌田 正彦
設立年月
1987年12月
■ 今期は営業利益33%増予想、上期は順調
資本金
38億3300万円
今期(2012年12月期)は、売上高1270億円(前期比
4.8%増)、営業利益29億円(同33.2%増)、当期純利
益18億円(同28.6%減)が見込まれている。主力の食品
物流などの堅調推移を想定。前期は震災による被害影響
で物流全般が縮小したが、こちらは反動増の形で示現し
ている。上期段階での進捗率は売上高で約50%、営業利
益で約46%と順調。ただし、燃料価格動向など不透明な
部分もあるため通期計画は保守的に見積もっているよう
だ。
上場日
2003年12月
URL
http://www.sbs-group.co.jp/
業種
陸運業
■ 年初来の高値圏でも割安感は極めて強い
株
内需“景気敏感株”の位置付けから、内需株の中での物
流株のアンダーパフォームは鮮明。類似大手のバリュエ
ーション平均も、予想PERで約10倍、PBRで0.6
倍台と低評価だ。そのなかでも、業界上位で唯一ジャス
ダックに上場する同社は、流動性プレミアムの低さなど
から最低評価に置かれている。ただ、株価は上昇トレン
ドを描く13週線や26週線をサポートに上昇基調。年初来
高値圏にあるため需給環境は良く、割安放置分のキャッ
チアップは着実に進んでいる。積極的なIRに向けた取
り組みの開始、資本政策、流動性改善を狙った市場替え
の検討など株主を向いた株価政策にも期待され、上昇余
地は大きいと考えられる。
発行済株式数
1
株価DATA(9月19日終値)
価
867円
1306万8400株
売買単位
100株
時価総額
113.3億円
予想配当
30円
予想EPS
137.74円
実績PBR
0.43倍
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Sep
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企業紹介
○SBSグループの国内物流会社
ティーエルロジコム㈱
●佐川急便出身の現社長鎌田正彦氏が1987年に
日本貨物急送㈱
日本レコードセンター㈱
独立。首都圏での即日配送業務を目的として、
ティーエルトランスポート㈱
(株)関東即配を設立した。物流現場出身の創
㈱エイシーシステムコーポレイション
業者が率いる業界でも珍しい物流グループだが、 SBSロジテム㈱
㈱総合物流システム
創業からわずか10年で売上高100億円企業に成長。
その6年後の2003年には売上高200億円企業とな
り、同年の12月にジャスダックへの上場を果た
した。社名のSBSは「総合(S)・物流
(B)・システム(S)」を由来としている。
●売上高200億円企業として2003年に上場、その
3年後の2006年には売上高1000億円企業に躍進
した。急成長の原動力となったのが、規模のメ
リットが働きやすい物流ビジネスの特性を重視
した積極的なM&A戦略にある。上場の翌年
2004年に雪印物流(現フーズレック)を買収し
て食品物流に進出。これを皮切りに、2005年に
は東証2部に上場していた東急ロジステック
(現ティーエルロジコム)を買収。その後も事
業シナジーと割安投資の両側面で吟味しながら、
M&Aでグループ力を強化している。
●グループの主要企業は、物流事業で総合物流
のティーエルロジコム、食品物流のフーズレッ
ク、全通、企業間即配便のSBSロジテムの4
社。国内・外に20社を超えるグループ企業を有
している物流事業の売上高は約1100億円で、3
PLサービスに強みを持っている。全売上高の
93%を物流事業が占めるが、そのほかでは同
2%の不動産事業、同5%のその他事業(人材、
環境、マーケティングなど)も手掛けている。
売上に占める割合は小さいが、利益貢献度が大
きいのが不動産事業(営業利益の約50%を稼
ぐ)。物流センターを自社開発し賃貸するほか、
これを流動化してファンドに売却するケースも
ある。
2
フーズレック㈱
北海道レック㈱、東北ウイング㈱
㈱ウイングトランスポート
中部レック㈱
関西流通システム㈱
九州レック㈱
㈱全通、㈱茨城全通
SBSグループ
の物流事業領域
○SBSグループの海外物流会社
・SBS Logistics RHQ Pte. Ltd. (Singapore) ⇒アジア地域統括会社
・SBS Atlas Logistics Holdings Pte. Ltd. (Singapore)
・SBS Atlas Logistics (Thailand) Co., Ltd.
・SBS Atlas Logistics (Malaysia) Sdn Bhd
・SBS Atlas Logistics (Vietnam) Co.. Ltd.
・Atlas Logistics Pvt. Ltd (India)
・天愛陸物流(上海)有限公司 (China)
3PLの基幹センターのひとつである川越物流
センター(埼玉、1.2万坪)とグループ車両
2012年9月末竣工予定の野田吉春物流セン
ター(千葉、1万坪、3PL拠点)
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ビジネスモデル考察
●独自開発力を武器にした3PLに強み
3PL(サード・パーティ・ロジスティクス)とは、荷主企業の物流業務を一括受託するこ
とで荷主企業のコスト削減に寄与するもの。企業の合理化ニーズに応えるサービスで、好不
況に関係なく幅広い業種の企業群から求められる。同社グループでは、ティーエルロジコム
を3PLの中核企業として、食品、雑貨、アパレルから生産財までオールラウンドな業種に
対応(売上規模は約400億円)。物量分析に基づく提案力、物流センターの独自開発、情報
システムの自社開発などを強みとし、荷役、輸送、梱包、保管などをトータルでカバーして
いる。代表的な受託案件には「フランフラン」を運営するバルス(2009年6月~、年間売上
高約18億円)などがある。同社が3PLに本格参入してからまだ6年程度だが、50名を超え
る専門営業部隊を有し、最近のコンペでは先行する大手競合に競り勝つなど急速に力を付け
ている。今後も高成長が期待できる。
●海外展開の鍵を握る「食品物流」
物流事業の売上構成でみると、全体の約6割を食品物流が占めている。食品物流の中核はフ
ーズレック(旧雪印物流)で、売上は400億円規模(国内10位級)。全国6地域に子会社が
あり、全国配送ネットワークを完備している。ほか、グループには生協に特化した組合員宅
配送サービスを手掛ける全通(売上は約140億円)がある。これら食品物流で培ったノウハ
ウは、今後の海外戦略のうえで強力な武器となりそうだ。例えば、中間層の所得上昇を背景
にした物流ニーズ急増が見込まれるアジア市場。なかでも最大のターゲットとなる中国では、
未だチルド輸送のノウハウすら確立されていない。冷蔵、冷凍、常温の全部に対応できる食
品物流は、今後の成長エンジンとしてのポテンシャルが大きい。
●打率高いM&A、社内に独自チームも
日本の物流会社、とりわけ6万社存在するとされるトラック運送業者は事業基盤の弱い小規
模事業者が過半数を占めている。これら事業者は、足元の燃料高などで経営環境が厳しく
(運賃相場は約2割ダウン) 、淘汰も加速している。同社では、こういった中小の同業他
社のほか、後継者問題を抱える企業、大企業の物流子会社など幅広くM&Aのターゲットに
見据える。同社は経営資源をM&Aに集中投下し、成功事例を多く出してきた企業。M&A
を他力本願としない点が珍しく、自社内に独自のM&Aチーム(金融出身者数名)も設置す
る力の入れ様だ。シナジー効果、収益性への貢献度を見極めるのは当然のこと、「ROI
20%~25%以上」などを基準にした純資産での企業価値判断も徹底。M&A後も、「リスト
ラしない」「社員のやる気向上」「志の共有」といったポリシーを貫き、混血・多国籍軍と
してのグループ力の増強を図っている。
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業 績
●2012年6月中間期は、売上高628.46億円(前期比8.3%増)、営業利益13.32億円(同
156.4%増)、当期純利益8.29億円(前年同期は4.76億円の赤字)と増収・大幅増益、最
終損益は黒字転換となった。主力の物流事業では、前期からグループ入りした日本レコー
ドセンターやインドAtlasの寄与があったほか、昨年起きた東日本大震災の反動も大きい。
震災に伴う直接・間接被害が、物流全般の縮小(とくに関東圏のティーエルロジコム)に
つながっていた。営業利益水準が急回復したのは、これら増収効果に加え、前期に発生し
た3PLの新規センター立ち上げに伴うコスト負担が無くなったことなども要因。災害損
失など特別損失も無くなり、最終損益は黒字転換している。
●今期(2012年12月期)は、売上高1270億円(前期比4.8%増)、営業利益29億円(同
33.2%増)、当期純利益18億円(同28.6%減)が見込まれている。食品物流などの堅調推
移を想定。上期段階での進捗率は売上高で約50%、営業利益で約46%と順調にきているが、
燃料価格の上昇傾向など不透明な部分もあることから通期計画は保守的に見積もっている
ようだ。不動産事業における物流センター施設の販売は、今期もゼロが前提となっている。
業績推移(百万円・%)
決算期
売上高
前期比
営業利益
前期比
純利益
前期比 1株利益(円)
2009年12月
115,710
-17.0%
2,888
-13.1%
1,988
107.0%
2010年12月
119,824
3.6%
4,262
47.6%
2,140
7.7%
162.73
175.15
2011年12月
121,148
1.1%
2,177
-48.9%
2,522
17.8%
205.10
2012年12月(予想)
127,000
4.8%
2,900
33.2%
1,800
-28.6%
145.65
62,846
8.3%
1,332
156.4%
829 黒字転換
66.92
2012年6月中間
即日配送
6%
一般物流
34%
2011年度
物流種別
売上構成
その他
11%
SBSロジテム
6%
全通
13%
食品物流
60%
2011年度
会社別
売上構成
フーズレック
35%
ティーエルロ
ジコム
35%
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株価評価(バリュエーション)
●「物流」は内需系業種で、東証業種でもJR各社など鉄道会社と同じ「陸運業」にカテ
ゴリーされている。今年の上半期、円高や景気減速に対する警戒から、“リスクオフ”と
称して鉄道株など内需ディフェンシブ株が軒並み上昇。一方、同じ「陸運業」の物流大手
は蚊帳の外で、日通や日立物流は年初来の安値圏で推移している。この違いは、何を運ぶ
かにあり、人を乗せる鉄道株が内需ディフェンシブなら、貨物を乗せる貨物運送は内需景
気敏感株にカテゴリーされる性格を示している。結果的に、類似大手の予想PERは平均
で10倍、PBRは0.6倍台と低評価セクターの烙印を押される格好。原油価格の上昇
(燃料価格の値上がり)がコストアップ要因として意識されやすいうえ、物流コストの抑
制圧力が強い点も懸念されているようだ。
●そうした環境下、同社のバリュエーションは予想PER、PBR、配当利回りのいずれ
で見ても業界内の最低評価に置かれている。相対的な割安放置の一因には、ジャスダック
上場による流動性プレミアムの低さ(同社は業界12位、業界の上位10社は全社が東証1部
に上場)が考えられる。とはいえ、東証1部昇格の素地も十分あり、流動性面のハンディ
キャップは今後の上昇余地とも捉えられよう。評価すべきは、年初来の安値圏にある同業
大手が存在するなか、同社株は年初来高値圏にある点。割安妙味が強いなか短期で売却す
る投資家が少ないことを意味しており、バリュエーション格差のキャッチアップは着実に
進んでいる。時価総額は115億円だが、同社の保有する優良賃貸不動産(渋谷、南新宿、
飯田橋と都内一等地)の含み益だけで200億円程度あるとも試算される。この辺りからも
現状の株価が過小評価されている感は強いといえよう。
類似会社比較
銘柄名
コード
市場
SBSHD
2384
JQ
日通
9062
日立物流
予想PER
PBR
配当利回り
6.2倍
0.43倍
3.46%
東証1部
10.6倍
0.66倍
3.32%
9086
東証1部
9.9倍
0.90倍
2.04%
センコー
9069
東証1部
8.5倍
0.69倍
3.63%
福山通運
9075
東証1部
14.8倍
0.65倍
2.35%
日新
9066
東証1部
6.5倍
0.57倍
3.30%
キューソー流通
9369
東証1部
9.2倍
0.43倍
1.93%
9.9倍
0.65倍
2.76%
類似会社(6社平均)
※9月19日終値ベース
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株価評価(需給、株価材料など)
[需給]
●日銀が金融緩和に踏み切った2月中旬以降、株価は上昇トレンドを形成している。中期
のトレンドを示す13週線(788円)、26週線(769円)は一貫して上向き。とくに26週線は、
これまでの調整場面でもサポートラインとして機能してきた。下値不安は小さいなか、両
ラインをサポートにした上昇基調が続きそうだ。今年に入って最も出来高が多い価格帯は
株価730円近辺で、この水準で合計15万株近い出来高をこなしている。これに続くのが、
株価775円前後、株価750円前後でともに10万株強。いずれの価格帯も上回っており、需給
は良好と判断できる。800円以上の出来高は極めて少なく、現状の株価水準での売り圧力
は小さい。上値目標については、震災直後に空けた窓上限(1002円)を目安に、心理的な
節目ともなる株価1000円が意識されそうだ。
[株価材料]
●物流会社のカテゴリーでは地味な業種で成長妙味も乏しくみえるが、同社の内実は「マ
ーケットのプロフェッショナル集団」である。M&Aで成長してきたが、その過程では自
前のM&Aチームがデューディリジェンスを毎日繰り返しているような企業。そんな当の
同社株がPBR0.4倍台で放置されている状況は大いに不本意とみられるが、同社自身
でも「M&A目線で一番魅力的な買収案件は自社の株式」と言って憚らないほどである。
現状の株価水準には強い不満感がうかがえ、手をこまねいて見守る性格の会社でもない。
自社株買いを含めた資本政策、流動性改善を狙った市場替えなど、株主に向いた経営戦略
を打ち出すことは十分考えられよう。中小型株運用に定評があるスパークス・アセット・
マネジメントが保有比率5%超で長期運用している点にも着目したいところだ。
株価(ヒストリカル)
6
年初来高値
879円
年初来安値
637円
上場来高値
5,266円
上場来安値
637円
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ディスクレーマー
本レポートは、株式会社フィナンテックが委託したアナリストと対象となる企業との面会等
を通じて、当該企業より情報提供を受けておりますが、本レポートに含まれる仮説や結論は
当該企業によるものではなく、レポートを委託したアナリストの分析及び評価によるもので
す。
本レポートは、投資判断の参考となる情報の提供を唯一の目的として作成されたもので、有
価証券の取引及びその他の勧誘または誘引を目的とするものではありません。
いかなる場合におきましても、投資の最終決定は投資者の判断と責任において使用されるべ
きものであり、株式会社フィナンテックおよび受託者である作成アナリストは一切の責任を
負わないものとします。また、本レポートの内容はすべて作成時点のものであり、今後予告
なく変更されることがあります。
なお、本レポートの著作権は株式会社フィナンテックに帰属します。本レポートの無断複製、
販売、使用、公表及び配布を行うことは法律で禁じられています。
本レポートに関するお問合せ:
株式会社フィナンテック IR STREET
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