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全国大学高専教職員組合
UNIVERSITY JOURNAL 全 大 教 時 報 UNIVERSITY JOURNAL 第二十 三巻第五号 The 11th FUJ’s Annual Meeting for University Reform(Special Issue) Opening Address Kynote Address Smposium : On the improvement of academic education toward the 21st Century Speech1 : Takafumi Hada (Professor of Research Institute for Higher Education,Hiroshima Univ.) Speech2 : Yoshiaki Mitsuhashi ( Professor of Administrative Law,Shizuoka Univ.Faculty of Humanities) Discussion □あいさつ ・和田肇(全大教委員長)、・武田晃二(岩手大学教職員組合副委員長) □メッセージ □・海妻矩彦(岩手大学長)、・日本私立大学教職員組合連合、 ・川上祐司(日本教職員組合委員長)、・山口光昭(全日本教職員組合委員長) □基調報告 □シンポジウム 「2 1世紀に向けた大学・高等教育の充実をめざして ―独立行政法人化問題への対抗軸」 ・報告1 羽田 貴史氏(広島大学大学教育研究センター) ・報告2 三橋良士明氏(静岡大学人文学部) ・質疑・討論 □課題別・職種別分科会報告 「組織運営体制の整備」と「独立行政法化」問題/「研究教育支援体制」の充実/「事務 機構の一元化」問題/教員養成系大学・学部のあり方/「大学共同利用研究所」問題/学 生教育問題/研究体制と「国際化」・大学と社会/図書館職員/事務職員/技術職員/現 業職員 □閉会集会 ・中央執行委員会の報告/第1 1回教職員研究集会のまとめ/閉会あいさつ他 Reports of the Sectional Meetings Discussion and Conclusion at the Closing Session 全国大学高専教職員組合 Edited and Published By Faculty and Staff Union of Japanese Universities(FUJ) Vol.23 No.5 1999.12 全大教第1 1回教職員研究集会報告特集 Dec. 1999 Vol.23 No.5 CONTENTS 全大教時報 ISSN 0 9 1 8―3 9 2 2 編集・発行 全国大学高専教職員組合 特集 全大教第11回 教職員研究集会 1 9 9 9年9月1 7日∼1 9日 岩手大学 はじめに 全大教は9月1 7日から1 9日の3日間、岩手大学を会場に第十一回教職員研究集会を開きました。この集会には 全国5 8大学・大学共同利用機関等から約3 0 0人が参加しました。今回の教職員研究集会は「二十一世紀に向けた 大学・高等教育の充実をめざして―『独立行政法人化』問題への対抗軸」を主要テーマにシンポジウム、分科会 等で活発な討論が行われました。 シンポジウムでは、パネリストの羽田貴史氏(広島大学)、三橋良士明氏(静岡大学)が「独立行政法人と国 立大学」と題して報告をおこないました。 全体集会、シンポジウムの後参加者は、8つの課題別分科会、4つの職種別分科会に分かれ、活発な討論を行 ないました。今集会では、「独立行政法人化」問題の緊迫した状況を踏まえ、教職員研究集会としては異例な「集 会宣言」が出され、「大学の教育研究にたずさわる者としての責務を自覚し、独立行政法人化反対の先頭に立っ て奮闘する」決意が表明されました。 −1− 主催者挨拶 全大教中央執行委員長 和田 肇 お忙しいなか、全大教の教職員研究集会にお集まり 全大教に期待されている役割は非常に大きいものが いただきまして、ありがとうございます。全大教の中 あると思います。いま三宅副委員長からも紹介があり 央執行委員長をこの7月から務めております。よろし ましたけれども、この集会をマスコミ等が取材すると くお願いいたします。主催者を代表しまして簡単にご いうのは珍しいのですが、いろいろな方面から、全大 挨拶をいたしたいと思います。 教は何を考えているのかということについて取材をし 今回は第1 1回目の教職員研究集会となります。この たいという申込みが実際に来ておりますし、今日、明 間、さまざまな大学をめぐる問題について全国各大学 日、いろいろなマスコミから取材が来ると思います。 単組の方々に集まっていただきまして、経験交流や意 そういうことで、主体的にいまの状況を切り開いてい 見交流を積み重ねてまいりました。今年は岩手大学の くための集会になるとわれわれは考えています。3日 ご協力でこの会を催すことができました。自由民権の 間の集会ですけれども、この間の活発な議論のなかで 長い伝統がある、この盛岡の地で行われるということ 全体の意思を集約して、秋以降の各大学での闘い、そ は、いまの状況のなかで非常に意義があると考えてお れから全国的な闘いを切り開いていければと思いま ります。岩手大学教職員組合の皆様にはさまざまな事 す。 務的なこと等でお世話になりまして、この場を借りて お礼を申し上げたいと思います。 簡単ですが、主催者を代表しての挨拶に代えさせて いただきたいと思います。(拍手) 今回の集会は独立行政法人の問題への対応、再構築 をどのように示すかということを主要なテーマとして 掲げております。この間、事態は急速に進展しており まして、この2 0日には文部省が独立行政法人化に向け て結論を出すというふうに言われております。ちょう どこの集会がそれに向けてわれわれの意見を表明する 機会になると考えております。 この間の状況、それから全大教の基本的なスタンス 等につきましては後で基調報告の中で詳しく述べるこ とになりますけれども、いずれにしましても、この間、 各単組で非常に活発に議論が行われております。情報 交換をしながら、国大協の動き、あるいは各大学での 動きに対して非常に積極的に寄与しているとわれわれ も考えております。この意味で、全大教の役割も非常 に大切になっていると思われます。今回の集会では、 さらにそれ以外のさまざまな問題、教育研究支援体制、 グループの一元化、あるいは学生教育のあり方といっ た問題につきましても議論していただくことになりま す。 −2− 地元大学教職組挨拶 岩手大学教職員組合 武田晃二 副委員長 岩手大学教職員組合を代表して歓迎のごあいさつを というのです。ごうをにやしたそのサラリーマンは同 申し上げます。本来であれば委員長がご挨拶を申し上 じ話をされた仲間とともに管理者組合をつくって経営 げるところですが、本日は連合農学科創設1 0周年の記 者とわたりあい、結局、自分たちの待遇を確保し、さ 念式典の関係で、副委員長の武田からひとことごあい らに会社の立て直しに成功したんだとさ、ということ さつを申し上げます。 なったかというと実はそうはいかなかったのです。幹 本日は3 0 0名もの方々が全国各地からご参加になっ 部社員同士が隠れて経営者におべっかを使ったり足を ているとのことでございます。本当にご苦労さまでし ひっぱりあったりしたからなのです。なんともいやな た。大学問題について腹をわって率直な討論ができる 夢でしたが、こんな夢は見たくないものです。 仲間がこんなに大勢お集まりになるということだけで ところで、岩手県ははじめてという方もたくさんい も私どもといたしましては大変光栄に存じておりま らっしゃると思います。わたし自身は岩手に住んで2 0 す。この夏は岩手県も記録的な暑さが続きましたが、 数年になるのですが、とにかく大好きな土地です。水 やはり岩手でございます。このところは急に気温がさ はうまいし、農産物も海産物も豊富だし、酒もうまい がり、朝晩はむしろ寒さを感じるようになって参りま しソバもうまいのです。もちろんかつては日本のチベ した。天気予報によりますと平年並ということですか ットとかいわれてきびしい土地柄でもありますが、東 ら、盛岡というところの9月はだいたいこんなところ 北とか岩手というのは大昔からたいへんな文化的なエ だとご理解いただいて結構だと思います。 ネルギーを蓄えた土地じゃないのかと思うことがしば さて、大学をめぐる今日の大問題はなんと言っても しばあります。 独立行政法人問題でございます。この問題につきまし 自宅の私の部屋に高野長英の額がかかっています。 ては、これから半日かけて真剣な討論が行なわれるわ それには「学術西域に走り双眸5州を呑む」と書いて けでございますから、多くを申し上げることは控えさ あります。高野長英は水沢市の出身ですが、水沢は偉 せていただきますが、とにかく怒りがおさまりません。 人の街としても知られています。石川啄木はこの大学 どうかんがえても滅茶苦茶というほかありません。 から1 5キロほどはなれた渋民の生まれです。盛岡の中 いささか低次元のたとえで恐縮ですが、数日前こん 心部には啄木の新婚時代の家が今でも残っています。 な夢をみました。ある幹部サラリーマンが経営者によ また、新渡部稲造も盛岡の出身です。岩手県からは5 ばれます。どうもわが社経営が思わしくなくなってき 人の首相がでているということもよく知られているこ たから君の給料をこれからはもっと少なくしていかな とです。 ければならないがどうかね、もしそれがイヤだったら 宮沢賢治については申すまでもありませんが、岩手 パートなってもらうしかないんだが、というわけです。 大学農学部の前身である盛岡高等農林専門学校の出身 パートになったらこれまでの給料はしばらくは維持で であり、その建物はこのキャンパスのなかにあります。 きるがその先はあまり確かなことはいえないが、とも 最近改装してりっぱになりましたからぜひおよりいた いうのです。その幹部サラリーマン、それはないじゃ だきたいと思います。日曜日も見ることができます。 ないですか、家族はどうなるんですか、せめて出向社 私どもでも団体入場券を用意しておりますのでどうぞ 員というわけにはいかないのですか、それも考えられ ご利用ください。 なくもないが、経営状態はそんな状況じゃないんだ、 −3− このようなスケールが大きく、またリアリスティッ クでサイエンスティックでファンタジックでロマンテ ただければありがたいと思います。また、二日間、リ ィックな人物がたくさんでているというのはけっして アリスティックでサイエンスティックでファンタジッ 偶然ではなく、岩手という土地の歴史的・文化的位置 クでロマンティックなご討論を期待しています。 と関係しているように思います。どうかせっかくの機 以上で、地元岩手大学教職員組合を代表いたしまし 会ですから熱心なご討論の合間には、あるいはそれが て、心からの歓迎のあいさつとさせていただきます。 終わってから、じっくりと岩手県の空気を味わってい ありがとうございました。(拍手) ようこそ岩手大学へ 岩手大学教職員組合委員長 全大教第1 1回教職員研究集会のために、ここ盛 岡の地、岩手大学に全国各地から多数お集まりい ただきまして大変嬉しく思います。 本年度、1 9 9 9年度は、はからずも2 1世紀へ向け ての橋渡しとなる年であり、教育問題についても、 次の世代のために新たな展望を提示する大事な年 になるはずですが、残念ながら、みなさんご承知 のように、バブル経済の破綻をきっかけに、失業 率の増加、凶悪犯罪の多発、家庭崩壊、少子化、 他方では、「いじめ」、「不登校」、「基礎学力 の低下」など、教育現場での様々な混乱があり、 私達の日常生活は先が見えない状態にあります。 このように、政治、経済、教育などあらゆる分野 での施策の失敗が明らかになっているにも関わら ず、政府はそれらをあたかも自然現象であるかの ように、深く反省することもなく、相変わらず、 大多数の国民の意向とは相容れない方向で金融機 関や大企業の後支えしています。その一方で、教 育、福祉、医療、農業など“効率性の低い”分野 は切り捨てて行く施策を強行し、また現在検討し つつあります。教育分野では、文部省は「ゆとり の教育」、「心の教育」を謳いながら、学校教育 法の改訂、大学設置基準の改訂、事務組織の一元 化、「日の丸、君が代」 の学校現場への持ち込み、 国公立大学の「教員の任期制導入」や「独立行政 法人化」の検討、教育学部教員養成課程の改組と 学生定員の大幅な削減(3年間で5 0 0 0人)、それ に伴う教職員数の削減(小・中・高等学校の統廃 合と教諭数の削減)、小学校英語教育の塾委託、 など、など、日本の将来を担う「人材」を養成す るための教育行政の府としての見識や展望を示す ことなく、傷口をさらに広げるような、場当たり 的な政策を行っているのが現状だと思います。 このような中で、国立大学の基本的な社会的使 命(憲法や教育基本法によって保障されてこれま で培われてきた、学問研究の継承と総合的発展、 将来を担う人材養成、自治、など)を大きく方向 転換させる「独立行政法人化」が、昨年の一橋大 志賀瓏郎 学での第1 0回教研集会の蔵元中央執行委員長の挨 拶の中で「多くの反対により棚上げされた」と喜 んだのも束の間、急浮上しています。その根拠は、 先に述べた経済政策の失敗を取り繕うため、1 0年 間で国家公務員定員の2 5%削減及び教育経費の大 幅削減のためであって、大学改革とか教育改革で はないというところに問題の深刻さがあると思い ます。現在、“効率化”や“民間活力導入”など 大学批判の主要な要因になっている“社会への貢 献”については、全大教でも以前から「国民に開 かれた大学」として位置づけ、特に最近、個人や 大学レベルでは自発的に各種の公開講座、講演会、 研修会、研究会、学会、共同研究、など、が幅広 く行なわれており、自助努力がなされてきている のは周知のことと思います。それにもかかわらず、 本来の大学の使命を投げ捨て、大企業に奉仕し易 い機構改革(独立行政法人化)を容認するとすれ ば、日本の教育現場は一層の混乱を引き起こし、 自滅の道を突き進むのは明かなことです。この問 題は本質的には大学人の意識改革によって自主的 に改善されるべきものと考えます。その意味で、 9月1 3日の国大協臨時総会において、「独立行政 法人化は国立大学においてはなじまない」旨の公 式見解(有馬文部大臣もかつては同じ見解を述べ ており、立場が変われば人も変わるのだのたとえ か?)を確認したことは、大学の見識を示したも のとして高く評価されると思います。 大学の将来を左右するこの緊迫した局面で、高 等教育に係わる全国の国立大学・高専の教職員組 合の皆さんが、学生、さらに父母、一般市民の方 々と連帯する中で、身の周りの教育問題の実態を 話し合い、具体的な解決策を考える場を提供でき ることは、岩手大学教職員組合として大変光栄で す。皆さんの活発な討論によってこの集会が明日 の希望につながる第一歩になることを期待して、 歓迎の挨拶とさせていただきます。 (第1 1回教職員研究集会速報 1より) −4− 第1 1回教職員研究集会によせられた メッセージ ないことは勿論のことであり、全大教が抱えている長 岩手大学長 年の懸案に対しても大きな前進がありますように祈念 海妻 矩彦 致しております。3日間にわたる集会での真剣な論議 今年度の全大教教研集会が岩手県盛岡市にある岩手 らかの確固たる論点が搾り込まれることを強くご期待 大学を会場として開催されることとなり、全国各地か 申し上げ、歓迎のセッセージとさせていただきます。 の中から、2 1世紀の高等教育のあるべき姿について何 ら2 0 0名を超える多数の方々をお迎えすることとなり 日本私立大学教職員組合連合 ました。御参会の皆様に対し、開催を引受けた大学を 代表し、心から歓迎の意を表します。 今年の夏は南米ペルー沖の海水温が低下するラニー ニャ現象のせいか異常な猛暑となりまして、今尚その 途燼が燻っております。各種の全国集会では盛岡がこ 第1 1回教研集会に心よりお祝いと連帯の挨拶を送り ます。 んなに暑いとは思わなかったなどという声をしばしば 政府・文部省は、この6月に大学運営と教職員の管 耳にしたものですが、今もその気配は感じられましょ 理統制を強める「学校教育法等の一部改正法」を強行 う。そのような中で、皆様におかれましては今日から 採決し、いま国立学校の独立行政法人化をいっきにす 3日間にわたり、全大教が抱える懸案事項はもとより すめようとしています。さらに来年1月の国会では第 のこと、最近になって俄かに重大さを増してきた国立 三者評価機関の設置を強行しようとしています。二一 大学独立行政法人化等について熱い熱い論議が展開さ 世紀を前に日本の大学は極めて重大な局面に立たされ れるとお聞きしております。 ています。 さて、わが国の多くの国立大学は昭和2 4年(1 9 4 9年) 今日の「自自公」体制による反国民的な政治や教育 に国民一般に高等教育を広めるという高い理想を掲 に怒りを燃やす多くの国民と力を合わせ、大学予算・ げ、新制大学として一斉に発足致しました。今年平成 私大助成等高等教育関係への財政支出の抜本的増額と 1 1年(1 9 9 9年)は多くの国立大学が創立五十周年の節 政治の革新のための国民的運動をともに前進させまし 目を迎えて、これまでの五十年間の教育や研究の成果 ょう。 を取りまとめ、2 1世紀の国立大学のあり方を検討しよ 貴集会が大きな成功をあげられるよう祈ります。 うとしております。 日本教職員組合中央執行委員長 そのような歴史的な意義ある年、さらに2 1世紀への 突入を迎える目前の年に、われわれは五十年前に直面 川上 祐司 したのと同じような国立大学を大変革することになる 問題に遭遇するに至りました。それは正しく最近俄か 貴労働組合の第1 1回教職員研究集会のご成功を祈念 に持ち上がって来た国立大学の独立行政法人化の問題 しまして心から連帯のメッセージをお送りいたしま であります。このような時機に岩手大学において全大 す。 教教研集会が持たれることになったことは感慨深いも 総務庁が先月に発表した労働力調査でも明らかのよ のがあり、集会の成果に強い関心を抱いているところ うに、失業率が現行調査が始まって以来過去最悪の4. であります。 9%で日本経済の企業情勢やりストラに名を借りた人 今回の集会で検討される問題は、これだけが全てで 員整理、倒産の深刻さをうかがわせています。 −5− 文部省は政府・自民党が行政改革の一環として政府 ています。財界本位の効率優先、学問の自由や教職員 ・自民党が強く求めてきた国立大学の独立行政法人化 の安定した身分保障を掘り崩し、国民本位の教育研究 方針の容認に踏み切ろうとしています。 の発展を阻害する国立学校の「独立行政法人化」に反 このような混迷する社会、経済状況、そして新たな 局面を迎えている大学・高等教育の下で、2 1世紀に向 対する皆様のたたかいを熱烈に支持し、連帯してたた かうものです。 けた高等教育の充実をめざすことをメーインテーマに 「大学生の学力低下」が社会問題となっています。 開催される本研究集会が当初の目的が達成され、社会 貴教職員研究集会が実り多い成果を上げられることを 全般が求めている学術研究、高等教育、教育機関、自 祈念し、お祝いと激励のメッセージとさせていただき 治尊重、労働条件確立等々課題の前進のために大きな ます。 役割をはたされますことを期待しております。 日教組も、平和と民主主義のとりくみをはじめ欧米 諸国ではすでに実施されている3 0人学級の実現やい ま、子どもたちが抱えている課題解決のための教育改 革に全力をあげており皆様のご支援を心からお願い申 し上げます。 全日本教職員組合中央執行委員長 山口 光昭 全大教第1 1回教職員研究集会の開催にあたり、全日 本教職員組合を代表して心からお祝いと連帯の挨拶を 申し上げます。「大学の自治」、「学問の自由」の拡 充、大学教員の任期制導入反対、教職員・研究者の生 活と権利を守るために奮闘しておられる皆様に心から 敬意を表します。 さて、小渕内閣は平和憲法のもとでは存在が絶対に 許されない。「戦争法案」=ガイドライン関連法案を 成立させ、日本を「戦争をしない国」から、「戦争を する国」に踏み出しました。その推進体制として、内 閣機能を強化する中央省庁再編があり、自治体も動員 するため「地方分権一括法」 の成立が強行されました。 突如持ち出された「日の丸、君が代」の法制化は「戦 争する国」にふさしい国旗、国歌として制定され、盗 聴法、憲法調査会設置法など相次ぐ悪法もその一環で あります。 「教え子を再び戦場に送るな」のスローガンを戦後 一貫して掲げてきた私たち教職員は、子どもたちから 平和な未来を奪う、「戦争法」の発動阻止と「日の丸、 君が代」の押し付け反対で、最後までたたかうもので す。力を合わせて頑張りましょう。 いま、「行革」・中央省庁再編の具体化である、国 立学校の「独立行政法人化」問題が重大な段階を迎え −6− 全大教第1 1回教職員研究集会 基 調 報 告 全国大学高専教職員組合 中央執行委員会 (報告 斉藤教文部長) 成り立つことを認識しつつ、職種内・職種相互間 はじめに の交流・議論を深め、その後の取り組みに活かし 今日、大学・高等教育は未曾有ともいうべき激動の 只中にある。 ていくこと を本集会の主眼とするものである。 特に、大学審議会答申「2 1世紀の大学像と今後の改 革方策について」の「組織運営体制の整備」を柱とす る法制化等の具体化及び「国立学校」の「独立行政法 人化」問題の急浮上は、激動の状況を象徴的に示して 1.大学設置基準「大綱化」以降、 とくに最近の大学政策の展開の特徴 世紀の転換点を迎え、来るべき2 1世紀を担うべき世 いる。 私たちは、厳しい状況にある中でも、大学・高等教 代にどのような能力や資質が求められるか、大学の学 育の社会に占める比重が高まっていることを認識し、 術研究はどうあればよいか、いかなる高等教育がなさ 地球環境、教育、地域社会の「地盤沈下」等、人類と れるべきか、それらを支えるべき大学・高等教育機関 社会が抱えるさまざまな問題に対して、その所在を示 はどのように変革されていかねばならないか、といっ すのみならず、解決への道標をも指し示すという役割 たこの国と国民にかかわる問題がある。それへの答え と責務を深く自覚するものである。 として、相次いで出された大学審議会・学術審議会の こうした状況認識に立って、本集会では、「2 1世紀 に向けた大学・高等教育の充実をめざして『独立行政 答申は、これらの課題に十分に答えるものとなっては いない。 法人』問題への対抗軸」を基調のテーマとして、この ここでは、こうした答申が相次いで出されなければ 間の高等教育に関するユネスコ「勧告」「世界宣言」 ならない大学・高等教育、研究体制政策の特徴とその も視野に入れ、 背景・要因について1 0年間の経過を含めて概観してお 第一に、大学・高等教育の充実をはかる立場から、 きたい。 「独立行政法人化」問題に対する深い批判・分析 (1)大学・高等教育を「改革競争」に巻き込んだき と政策的対抗軸について議論を深めること、 っかけは、1 9 9 1年の大学設置基準の「大綱化」であっ 第二に、上記と関連し、大学自治の充実の視点から、 た。「少子化」にともなう1 8歳人口減、学生たちの進 「学校教育法等の一部改正」法案成立後の動向と 学志望の多様化と学力の変化・多様化、経済不況、そ 取りくみについて交流・議論を深めること、 れに対応できない政治への不信など、それまで大学が 第三に、公教育の一環を担うことの意義を再確認し つつ、教育実践・研究に関わる政策的・具体的取 十分には関わってこなかった問題への対応を厳しく迫 るものであった。 1 9 8 7年8月、臨時教育審議会は、高等教育全般にわ り組みについて交流・議論を深めること、 第四に、前述した厳しい状況をふまえつつも、教職 たる改革課題を指摘し、その具体的な改革方策を検討 員の待遇改善・地位確立を積極的に進めるため、 する機関として「大学審議会」の創設を提言し、学校 大学等が多種多様な職種の密接な連携協力の上に 教育法を「改正」して、「大学審議会は、この法律の −7− 規定によりその権限に属させられた事項を調査審議す 学技術基本法制定を提言し、9 6年3月には「創造的人 るほか、文部大臣の諮問に応じ、大学(高等専門学校 材育成」を提言していたことは見逃せない。 を含む。…)に関する基本的事項を調査審議する」 (同 法第6 9条の3)ものとして、9月設立された。1 0月 「大 科学技術庁による「基本計画のポイント」の解説で まとめられているように 学等における教育研究の高度化、個性化及び活性化等 ・新たな研究開発システムの構築のため制度改革等 のための具体的方策について」を諮問し、8 8年「大学 を推進 院制度の弾力化について」の答申に続いて、9 1年3月 ・任期制の導入など、研究者の流動性を高め研究開 の「大学教育の改善について」(答申)は「大学教育 発活動を活性化 改善の方向」の第一に「特色あるカリキュラムの編成 ・ポスドク一万人計画の実現と研究支援者の抜本的 と柔軟かつ充実した教育組織の設計」をあげ、その方 拡充 策として「大学設置基準の大綱化」「大学の自己評価」 ・共同研究推進、研究兼業許可の円滑化により産学 を提起した。これが、それ以後の大学の『改革』方向 官交流を活発化 を規定するものとなっていく。 ・厳正な評価を実施 この「大綱化」によって、「科目区分」がなくなり、 を謳い、 単位数の拘束が少なくなったことが、とくに「大学の ・政府研究開発投資を拡充 一般教育をどう考え、どう変えていくのか」について ・政府研究開発投資について、2 1世紀初頭に対GD の混乱をもたらしている。文字どおりでは「しなくて P比率で欧米主要国並みに引き上げる もよい」科目区分が一般教育を廃止し・教養部を廃止 との考え方の下、計画期間内での倍増の実現が強く求 しなければならなくなったかのような受け止め方をさ められている。この場合、計画期間内における科学技 れ(というより、行政指導されたともいえる)、大学 術関係経費の総額の規模1 7兆円が必要」とするが、 「財 の自己点検・自己評価の必要が記せられたことととも 政を健全化させること緊急課題」であるから「重点的 に、9 0年代中期に、ほとんどの大学で、学則などが省 に拡充」する資金として 令方針のままに改定されていったのである。9 8年7月 ・競争的資金をはじめとする多元的研究資金 の「大学におけるカリキュラム等の改革状況について」 ・研究者等の養成・確保及び研究者交流のための資 の文部省調査によれば、9割以上の大学で科目区分な 金 どの見直しを実施しており、「努力義務」が明示され た自己点検・評価が約9割の大学で実施されているこ ・研究開発基盤整備のための資金 が強調される。 とが、大学審議会答申付属資料にも述べられている。 9 4年までの3年間連続して民間の研究投資が減少し たことや、バイオ、情報、電子機械、生産工学分野な (2)学術研究体制の問題としては、9 5年1 0月、議員 どの先端技術で対米格差が拡大したことなど、「大競 提案で国会に提案され、約1週間で全会一致で成立し 争時代」に耐えていけないとの危機感があり、民間に た科学技術基本法と、それに基づいて9 6年7月に閣議 は金がない、成果や人材供給のためにしっかり金を負 決定された基本計画がそれ以後の体制と方針策定をき 担してもらう仕組みを作ることを企図したものといえ める。これは、その提案趣旨説明で表れた「科学技術 る。 創造立国」が、今回の学術審議会「科学技術創造立国 を目指すわが国の学術研究の推進について」にそのま (3)9 6年1 1月、時の橋本内閣によって表明され、次 ま現われていることに象徴される。 年頭で教育を追加して、「6大改革」は、行政改革、 一方、通産省は「産業構造審議会・産業新開小委員 財政構造改革、経済構造改革、社会保障構造改革、金 会合同会議」で9 5年5月「科学技術創造立国への道を 融システム改革、教育改革からなる。これらが、経済 切り拓く知的資源の創造・活用に向けて」をまとめ、 関係問題をはじめその内部相互と国民との矛盾を露呈 「研究開発の推進」という成果追求型の基本法が成立 し、昨年の参院選での惨敗に見られるように国民の批 した。この背景に、経済団体連合会が、9 5年3月、科 判を受けながらも、それを強圧的に推進しなければ自 −8− らの存在そのものの基盤が崩れるという「危機感」に ・文化の中心」として、問題分析と社会への発信 駆られて、ルールを無視した「法制化」 を進めている。 を行いうる大学の教育と研究の総合的発展。 文部省の「教育改革プログラム」の大学・高等教育 (3)上記を実現するための緊急の課題として、予 に関わる項では、新たなシステムを創る創造性とチャ 算・定員等の裾野の広い教育・研究基盤の充実。 レンジ精神ある人材が必要だとして、「弾力化」「戦 (4)法制度の「改正」による大学の管理運営の画 略性」「国際化」などをキーワードに経済界との協議 一的な規制にかえて、大学人の英知を結集した大 を踏まえて、産学連携強化を旗印に、大学のあり方を 学の創造的改革と充実。 文字どおり「科学創造立国」のために動員しようとす (5)「多元的な評価システムの確立」、とくにそ る意図をあらわにしたものであった。 れと連動した「資源の効果的配分」が大学・学部 9 7年6月6日、「大学の教員の任期に関する法律」 の再編・淘汰への「強制」につながる危険性。 が成立した。国会でのわずかな審議を経て、学問の自 であり、この立場から、「答申」をみると、「……全 由・大学の自治などの問題に多くの疑問点・問題点を 体として、根本的な弱点や矛盾を持っている。一方、 残したまま制定された。この法律制定の段階でつけら 私たちの運動の結果として『意見』が一定程度反映し れた附帯決議なども利用して、多くの大学で、任期制 た部分があ」ると評価した(その論点については「高 導入はあくまで慎重な検討が必要であるとの立場を明 い理念を持った大学・高等教育の創造を目指して―― 確にしており、その導入の状況は、「限定的」分野等 大学審議会「答申」を批判する(1 9 9 9年1 2月1 1日・全 になっている。が、「独立行政法人化」問題や概算要 大教中央執行委員会)」を参照されたい。一部「法制 求の際の「潜在的圧力」により任期制導入の動きが強 化」されたとはいえ、2 1世紀の大学像を考える上での まる傾向を示しており、機構改革等で「教授会の人事 基本的観点は提起したものと自負している)。 権」が十分には及ばない施設・センターなどで先行的 に導入されていることにも警戒する必要がある。 さらに、「組織運営体制の整備」のための「法制化」 については、大学自治の充実・発展を阻害するおそれ 9 7年1 1月、文部大臣は、大学審議会に「2 1世紀の大 が強く、その視点から「拙速かつ大学運営の画一化を 学像と今後の改革方策について」を諮問し、9 8年1月 はかる法制化には反対」の立場から具体的にその問題 には、学術審議会に「科学技術創造立国を目指すわが 点を指摘してきたが、大学内外での十分な検討が行わ 国の学術研究の総合的推進について」諮問した。前者 れないまま、3月9日「学校教育法等の一部を改正す については、9 8年6月「中間まとめ」、1 0月「答申」 る法律案」として、国会上程し、きわめて短時日の審 がなされ、組織運営体制を中心とした「法制化」が5 議で5月成立させた(この間の論点などについては、 月に行われた。 「『学校教育法等の一部を改正する法律』に関する国 「中間まとめ」においては、「全体として、昨今の 会審議での主な答弁と留意点」(全大教資料No. 9 8 日本企業の国際競争力の低下、不況と財政危機をいか −1 8・1 9 9 9年6月2 5日単組執行部討議資料)を参照さ に乗り切るか、そのために大学の知的資源をいかに動 れたい)。今後、文部省令改定とともに、各大学での 員するかという危機感が正面に立ち表れ、結果的に2 1 「規程改正」等が進められるので、上記文書などを参 世紀の大学像を明らかにすると言いながら、実際には 考にした取り組みが期待される。 極度に短期的な視野からの大学像しか描き得ていな 学術審議会への諮問に対しては、「科学技術創造立 い」 ものであった。全大教は、これを厳しく批判して、 国を目指す我が国の学術研究の総合的推進について」 大学審議会に「意見」を提出したが、その要点は、 の答申が、「『知的存在感のある国』を目指して」と (1)人類の福祉への貢献という普遍的見地から、 いう副題を付けて、9 9年5月末に「中間まとめ」がだ 真理と平和を希求する人間の育成と、普遍的で個 され、これもまたきわめて短い期間での意見集約の後、 性豊かな文化の創造をめざす教育の普及徹底、と 6月2 9日に「答申」として発表された。これは、人類 いう憲法・教育基本法の精神の重視。 的基盤の上に学術研究を捉える視点と「科学技術創造 (2)地球環境問題を初めとしたさまざまな人類社 会の「危機」ともいうべき事態のもとで、「学術 立国」路線への執着から抜けきれないこととの矛盾を 含んだものとなっている。 −9− とくに、「競争的研究環境」をより促進することを 謳い、「経常的研究費を始めとする基盤的研究資金の 省庁等改革関連法」の一つとして「独立行政法人通則 法」が成立している。 確保と競争的研究資金の拡充」という戦略的「研究資 6月1 5−1 6日に開かれた、国立大学協会総会では、 金の配分」を駆り立てている。この場合、「科学技術 「法人化が先にありきではなく、大学審答申を承けた 基本法」成立時の頃から強調され、大学審議会「答申」 大学の自己改革がまず行われるべきであり、法人化に に継承されてきた「競争的環境の整備」という方策に は反対」との態度は堅持しつつも、「2 0 0 1年からの1 0 ついての根本的検討もないままに、よりあからさまに 年間で1 0%の定員削減に対応するための具体的対応策 展開されている(「学術審議会『答申』について(見 を検討せざるをえない」として「『独立行政法人』の 解)」(1 9 9 9年7月5日・全大教中央執行委員会))。 問題点を含め、今総会では第一常置委員会で具体的な 今回の学術審議会「答申」は、そのままの形で「法 検討を行うことを確認した」。1 7日の国立大学長会議 制化」することは考えられていないようであるが、来 で、文部大臣は「できる限り速やかに検討を行いたい」 年度で期限切れとなる「科学技術基本計画」の次を考 と述べたとされており、この問題に対する各大学での える「ガイドライン」を示したものといえる。首相を 討議が促進されている。 議長とする科学技術会議は、7月2 2日開催され、2 0 0 1 年1月1日から内閣府に総合科学技術会議が発足する のを機に、新たな科学技術基本計画を検討する作業部 会を設けて、年度内に案をまとめる方針を決めた。4 2.2 1世紀の大学像をめざして―― 独立行政法人問題の政策的対抗軸 (1)「独立行政法人」とは何か つの作業部会で、社会の要請にこたえる大目標、科学 技術教育のあり方、研究の評価方法、産業の育成強化 「独立行政法人化」は、行政組織の「減量化」(ア 策などを論議するとされており、「2 1世紀初頭の科学 ウトソーシング)・「効率化」の文脈で語られること 技術政策」の総合的検討がなされるようである。それ が多い。たとえば、「行政改革会議最終報告」(1 9 9 7 に対して、あるべき科学・技術研究体制づくりを目指 年1 2月3日)は、「国民のニーズに即応した効率的な すためにも、今回の学術審議会答申の批判的検討が急 行政サービス」の提供等を実現するという行政改革の がれる。 基本理念を実現するため、政策の「企画立案機能」と 「実施機能」とを分離し、実施部門の「垂直的減量」 (4)国立大学の「独立行政法人化」問題は、直接に を推進しつつ、効率性の向上、質の向上および透明性 は「行政改革」 の動きの中から出てきたものであるが、 の確保を図るために、独立の法人格を有する「独立行 「大学改革」との絡みで議論されており、行政機関の 政法人」を設立するとしている。 職員数に国立学校関係の占める比率が大きいことか しかし、「独立行政法人化」という行政管理の改革 ら、公務員数削減計画との関連での政治的動向に左右 手法そのものの有効性については、多くの点で疑義が されている。 表明されている。すなわち、そもそも行政組織を政策 「独立行政法人化は、大学改革方策の一つの選択肢と の立案機能と実施機能というように単純に区分できる なり得る可能性を有しているが、これについては、大 ものなのか、政府の一体性が損なわれることで政府の 学の自主性を尊重しつつ、研究・教育の質的向上を図 責任があいまいにならないのか、公的サービスの供給 るという長期的な視野に立った検討を行うべきであ が効率性の原理に委ねられていいのか、むしろサービ る」(1 9 9 7年1 2月3日・行政改革会議最終報告)とさ スの質の低下につながらないか、政策立案機能を担う れていたものが、中央省庁等改革基本法(9 8/6)が 内閣府等の権限が強化される一方で、実施部門の公的 成立し、その改革推進本部でもしばしば論議されたが、 サービスが業績次第では切り捨てられ、国民生活の質 「国立大学の独立行政法人化については、…平成1 5年 の低下につながらないかなどといった問題群が指摘で 度までに結論を得る」(1 9 9 9年1月2 6日・中央省庁等 きる。 改革推進大綱、1 9 9 9年4月2 7日・中央省庁等改革推進 に関する方針)こととされている。7月には、「中央 エージェンシー(executive agency)との相違 −1 0− これらの疑問はイギリスのサッチャー政権によっ るといった方が正確である。したがって、政府が「公 て、1 9 8 8年8月の車検局を皮切りに導入されたエージ 共性」に対する政府責任をどのように考えるのかが、 ェンシーの問題点としても指摘されてきたことであ その決定に色濃く反映することになろう。 る。しかし、ここで確認しておかなければならないの 現に、7月8日に成立した独立行政法人通則法(以 は、「イギリスのエージェンシーの日本版」が「独立 下、通則法と略す)にいう独立行政法人の定義も、 「国 行政法人」である、などといわれることが多いが、両 が自ら主体となって直接に実施する必要のないものの 者はかなり性格を異にすることである。 うち、民間の主体にゆだねた場合には必ずしも実施さ たしかに、両者とも「強い国家」 をその根底に持ち、 れないおそれがあるもの又は一の主体に独占して行わ 内閣機能の強化とセットとなった「減量化」「効率化」 せることが必要であるものを効率的かつ効果的に行わ という制度創設の「理念」 の点で共通である。そして、 せることを目的として、この法律及び個別法の定める 組織の長に比較的大きな裁量権を与える一方で、一定 ところにより設立される法人」(同法第2条)という の期間を区切って業績評価を受ける点などの共通点も ように、きわめてあいまいである。 指摘できる。 第二に、イギリスのエージェンシーが、政府と独立 しかし、基本的な相違点をいくつかあげれば、まず、 の法人格を有しないのに対して、日本のそれは独立の イギリスのエージェンシーの対象となる実施部門の業 法人格を有するという点である。そして、このことと 務範囲が、車検局、社会保障省の給付局等、基本的に も関連するが、イギリスのエージェンシーの職員の身 政策立案機能と分離することで「効率化」が期待でき 分が、独立の機関でないことの論理的帰結として、基 る「執行」部門の定型的業務となっているのに対し、 本的に公務員であるのに対して、日本のそれは、すべ 日本の独立行政法人の対象は、研究機関や国立病院等 ての独立行政法人が政府と独立の法人格を有するにも がそうであるように、必ずしも政策の「執行」部門と かかわらず、「公務員型」と「非公務員型」の両方が はいえず、業務の性質も効率化が期待できる定型的業 並存するという点である。独立行政法人通則法は、こ 務とはなっていないという点である。すなわち、全体 のいわゆる公務員型の「特定独立行政法人」 について、 の制度設計が、「効率化」という制度創設の理念で一 「独立行政法人のうち、その業務の停滞が国民生活又 貫したものになっておらず、政策立案機能と実施機能 は社会経済の安定に直接かつ著しい支障を及ぼすと認 の分離という論理的帰結から対象範囲の線引きが行わ められるものその他当該独立行政法人の目的、業務の れたというよりも、「減量」先にありきの「数合わせ」 性質等を総合的に勘案して、その役員及び職員に国家 の結果として生まれたという性格をもち、そこには政 公務員の身分を与えることが必要と認められるものと 治的取引という恣意が見え隠れしている。もっとも、 して個別法で定めるもの」(同法第2条第2項)と定 イギリスでも、刑務所のエージェンシー化についてい 義している。しかし、一体、これまで国が直接行って えば、その業務の性質からして、効率性にはそぐわな きた業務のなかで、「その業務の停滞が国民生活又は いという疑義があることからして、そもそも、政策立 社会経済の安定に直接かつ著しい支障を及ぼす」と 「認 案機能と実施機能の分離なるものにどれだけの論理性 められるもの」と「認められないもの」という「線引 があるのか、という問題が浮上する。 き」が可能なのであろうか。結局は、「総合的に勘案」 さらにいえば、公共的な領域を、「官」がどうして もやらなければならない領域と「民」がやった方が望 するというあいまいな手法で、線引きが政治的になさ れていくに過ぎないのである ましい領域とに区別すること自体、困難を極める。市 場化万能を極端に貫徹すれば、「官」の領域は極小化 従来の特殊法人とどう違うのか され、政府の存在意義そのものが否定されるという矛 もっとも、国または地方公共団体と密接な連関性を 盾に陥ることになる。しばしば、国防と治安が「官」 もちつつ、相対的に独立した法人格を有する独立行政 でなければできない領域の代表と強調されるが、この 法人のような「公法人」が、市民が共同生活を営むに 主張はむしろ一種のイデオロギーであり、その意味か あたって必要な生活上の資源を調達・確保し、サービ らしても「線引き」なるものは「政治的」に決定され スを提供することは、日本のみならず、世界的にも広 −1 1− く見られる。このような公法人の存在理由については、 「減量化」先にありき 通例、1)行政組織の際限のない膨張を防ぎ、具体的 結局のところ、独立行政法人化は、行政サービスの な行政の責任体制を明らかにする必要性、2)直轄の 質の向上が目的というよりも、「減量化」という名の 国営又は公営の事業であることに基づく法律上又は予 「公共性」に対する政府責任の縮小と内閣機能の強化 算上の諸制約から解放し、独立採算制のもとに、企業 が主目的といわざるをえない。イギリスのエージェン の合理的・能率的な運営を図る必要性、3)独立行政 シーが、とにもかくにも表面上は論理一貫性を保とう 法人の事業とすることによって、その職員について、 としているのに対して、日本の独立行政法人化の場合 公務員法上の制限から解放、の諸点があげられる。ち は、論理的一貫性を欠いたあいまいな「数合わせ」の なみに、通則法は第3条で、「 独立行政法人は、そ 手法で進められようとしているのが最大の問題であ の行う事務及び事業が国民生活及び社会経済の安定等 る。 の公共上の見地から確実に実施されることが必要なも 以上のように、独立行政法人化の問題を行政改革一 のであることにかんがみ、適正かつ効率的にその業務 般の問題として、国際比較も含めて掘り下げること自 を運営するよう努めなければならない。 独立行政法 体も重要であるが、それは基調報告の主題ではない。 人は、この法律の定めるところによりその業務の内容 したがって、ここでは、以下、国立大学の「独立行政 を公表すること等を通じて、その組織及び運営の状況 法人化」問題に限定して検討することにする。 を国民に明らかにするよう努めなければならない。 この法律及び個別法の運用に当たっては、独立行政法 人の業務運営における自主性は、十分配慮されなけれ (2)「学校教育法等の一部改正」法が めざす大学像と国立大学の 「独立行政法人化」 ばならない」と規定しており、この点で通則法は、伝 国立大学の「独立行政法人化」問題と改正法との関連 統的な公法人概念を引き継いだものとなっている。 国立大学の「独立行政法人化」問題は、直接には、 その意味では、通則法にいう「独立行政法人」 とは、 出発点において、効率性を求められる存在であったし、 「行政改革」の文脈のなかから提起された問題である そもそも「民主的で効率的な行政」が、憲法の予想す が、一方で「大学改革」の文脈のなかにも位置付けら る行政の姿であることを考えれば、「効率性」の文言 れている。すなわち、政府は、この問題を「大学改革 があることのゆえをもって、ただちにこれを否定する の一環」として位置づけ、独立行政法人に移行するか のは不適切であろう。実際、行政法学者の間では、す 否かについて長期的な視野に立って検討し、2 0 0 3年ま でに「独立行政法人」の用語が用いられており、その でには結論を得るとしている。たとえば、国立大学の 中には、公社、公団、事業団、公庫、特殊会社といっ 独立行政法人化は「大学改革方策の一つの選択肢とな た多様な形態があるものとされていた。したがって、 りうる可能性を有しているが、これについては、大学 それらを一貫する性格を抽出するのは困難というのが 改革の自主性を尊重しつつ、研究・教育の質的向上を 通説であるが、通則法はこれらの多くを個別法の規定 図るという長期的な視野に立った検討を行うべきであ するところに委ねて、その「多様性」を追認する建前 る」(「行政改革会議最終報告」[9 7年1 2月3日])。 となっている。しかし、すべてではないが、一部の法 「国立大学の独立行政法人化については、大学の自主 人が、天下り先の確保と民間企業との癒着、それら組 性を尊重しつつ、大学改革の一一環として検討し、平 織を維持するための「仕事」作りと、結果としての「赤 成1 5年までに結論を得る」(「中央省庁等改革推進大 字垂れ流し」や環境破壊等の問題性を指摘されている 綱」〔9 9年1月2 6日閣議決定〕/「中央省庁等改革の のも事実である。独立行政法人を「改良型の特殊法人」 推進に関する方針」〔1 9 9 9年4月2 7日〕)などと位置 と呼ぶ向きもあるように、特殊法人と独立行政法人と 付けられている。 の区別そのものがあいまいであり、一面では、一部の しかし、こうした「可能性」の検討以前に、「独立 特殊法人同様、新たな利権の温床となりかねない、と 行政法人化」問題がすでに国立大学に「改革」を強い いう問題も抱えている。 る圧力として機能している現実に留意する必要があ る。「長期的な視野に立った検討を行うべきである」 −1 2− 問題が、特に、「中央省庁等改革推進本部」の「2 0 0 1 会審議が可能であること、2)学長が申し出た運営諮 年より1 0年間で少なくとも1 0%の定員削減、独立行政 問会議の委員については、文部大臣が拒否することは 法人化を含め2 5%の定員削減」方針を直接の契機とし 通常考えられず、当該会議の助言・勧告自体には法的 て、「国家公務員2 5%削減」という近視眼的な政策課 拘束力はなく、評議会と意見が相違したときには、評 題との絡みで論じられるなどして、その傾向に拍車を 議会の意見が優先されること、などといった政府答弁 かけている。とりわけ、全大教をはじめとする大学関 がなされ、全体として改正法が、学問の自由や大学の 係諸団体の反対を押し切って、本年5月に成立した 「学 自治という前提に立っているという趣旨の政府答弁や 校教育法等の一部を改正する法律」(以下、改正法と 参議院の附帯決議を得るに至った。とはいえ、前述の 略す)の一つの背景に、「独立行政法人化」問題があ 懸念は完全に払拭されたわけではなく、改正法が恣意 ることからすれば、また、改正法がめざす大学像が、 的に運用されることで、また「行政指導」や「財政誘 法の運用のされかた次第では独立行政法人化がめざす 導」を通じて、自治の機能の縮小が起こりうることに 大学像に限りなく接近していく可能性があることから 十分留意しなければならない。 すれば、両者を関連づける視点は重要である。 もっとも、今回の法改正によって、大学管理機関の ここで両者を関連づける必要があるというのは、両 文言が消滅し、近代日本の大学の歴史の中においては 者を切り離して論ずること、あるいは、一方が他方の じめて、教授会のみならず、評議会等をも法定の機関 手段に過ぎないと論ずることで、それぞれのもつ問題 として位置づけた、という歴史的意味を有している。 性が、あいまいにされ希薄化されかねないことを懸念 すなわち、これまでの教育公務員特例法は、アメリカ するからである。とりわけ、「独立行政法人化」圧力 型の管理方式(外部理事会方式)の導入を想定して、 によって、改正法それ自体のもつ問題点が、独立行政 大学自治の要素とされる教員人事等について、読み替 法人化問題の後景に退いてしまいかねないという危惧 え規定(第2 5条)に教授会・評議会の権限を暫定的に を抱かざるをえないからである。したがって、ここで 位置付けていたに過ぎなかった。たしかに、教授会は、 はまず、改正法それ自体の問題点について改めて確認 学校教育法上、必置の機関として法定されていたが、 したうえで、両者の関連について論じたい。 占領期以来数回にわたって、いわゆる大学管理法制定 が画策されたことに見られるように、教授会といえど 改正法の論点 も、その権限の基礎は脆弱であった。今回の改正によ 国会審議のなかで、特に大学自治との関連で大きな って、評議会等も、国立学校設置法や教育公務員特例 争点となったのは、1) 国立大学における評議会・ 法上、正式にその設置と権能が法定されたのである。 教授会の審議事項の法定、2)運営諮問会議の設置の その意味では、日本の大学自治の歴史に一つの画期を 法定、3)教授会・評議会・運営諮問会議の議事手続 なすものといえる。 き等の省令への委任、4)教育研究状況等の状況の公 表の義務化の法定等である。特に懸念されたのは、こ 法改正の背景 の改正法が、1) 「組織の一体的運営」の名のもとに、 しかし、法律全体としてみれば、なぜ改革のほとん 教授会の権限を縮小し(評議会が「全学の運営にかか どが国立大学に関するものなのか、なぜこれほどまで わる重要事項」を審議するのに対し、教授会は「学部 に拙速に法改正を急がねばならなかったのか、そもそ の教育研究にかかわる重要事項」を審議)、相対的に も法改正の必要があったのか、という根本的な疑念を 学長・評議会の権限が強化されること、2)外部有識 持たざるをえない。今回の法改正は、直接には戦後日 者で構成され、助言・勧告権を持つ運営諮問会議の介 本の大学改革、特に近年の大学審議会設置(8 7年)、 入によって、学問の自由と大学の自治とがおびやかさ 大学設置基準の大綱化(9 1年)等を契機とする「改革 れる、といった問題である。 熱」とも称すべき大学改革の文脈に位置付けることが この問題については、国会審議において、1)学部 できる。しかし、法改正を急がねばならなかった背景 教授会の審議事項の制限、運営諮問会議の委員の人選 には、高等教育制度そのものが、国家財政の緊縮や産 ・権限についても、従来通り全学的事項を含めた教授 業競争力の強化という政策課題との結びつきをますま −1 3− す強めつつあるという大きな流れがあるといわざるを ていないのである。 えない。 しかし、たとえ国立大学が独立行政法人に移行しな すなわち、特に国家財政の「危機」と結びついた「行 かったとしても、改正法の運用のいかんによって、あ 政機能の減量化・効率化」 (行政改革会議最終報告)、 るいは、第三者評価機関を自治との整合性を考慮しな すなわち独立行政法人化をはじめとする行政改革の流 いまま設置することによって、また、たとえば、学長 れが、法改正を強いる大きな圧力として働いたのであ ・学部長のリーダーシップなるものを一面的・過度に った。このことは、今回の法改正の前提となった大学 強調することで、組織の長に権限を集中することで効 審議会答申(9 8年1 0月2 6日)が、答申によって提言さ 率的な運営をめざす独立行政法人の組織像(「役員に れた改革を速やかに実現することにより、「行政改革 関するもの以外の内部組織は、個別法令の業務の範囲 会議最終報告や中央省庁等改革基本法で求められてい で独立行政法人の長がその裁量により決定,変更、又 る国立大学の改革を実現することになる」と述べてい は改廃」〔「中央省庁等改革の推進に関する方針」9 9 ることや、国立大学の独立行政法人化についても、 「独 年4月2 7日〕)に限りなく接近していくことも懸念さ 立行政法人化をはじめとする国立大学の設置形態の在 れる。 り方については、これらの改革の進捗状況を見極めつ つ、今後さらに長期的な視野に立って検討することが 適当である」とわざわざ言及していることからしても (3)公教育の視点に立った教育基盤の 充実と「独立行政法人化」問題 明らかである。このように、大学審議会答申や改正法 は、行政組織の一端(国家行政組織法上の「施設等機 教育研究の公共性 関」[8条の2])を担うとはいえ、大学の特性から そもそも大学とは、「人類の知識のフロンティアを して、長期的な視野と自律性・独立性が強く求められ 押し広げる知的生活の前哨であるにかかわらず、政治 る国立大学の改革を、行政改革、特に独立行政法人化 産業社会の提供する資金に依存せざるをえず、その結 への対応という近視眼的な視野から推進しようとして 果、大学の機能がその設置者〔資金提供者〕によって いる。ここに改正法の根本的な問題があるといわざる 歪められる恐れがあるので、大学を外的勢力 (公権力、 をえない。 設置者の権能等)の制約・拘束から解放し、大学がそ の本体的機能(研究教育)を自主的自律的に決定遂行 改正法の大学像の「独立行政法人」的組織像への接近 しうるようにしようとするものである」 (有倉ほか (編) しかし、国立大学の独立行政法人化問題は、法改正 『基本法コメンタール・憲法』1 0 1頁以下、高柳信一 の圧力として機能したのにとどまらず、今後、大学に ・大浜啓吉執筆)本質を有し、それゆえに自治が認め 「改革」を迫る圧力として機能することが十分予想さ られる存在である。それは、ユネスコの高等教育教育 れる。現に、改正法にも、独立行政法人の組織像でも 職員の地位に関する勧告では、「高等教育機関の自治 ある、「企業経営」的な組織像が、「国立大学等の運 とは、学問の自由が機関の形態をとったもの」 であり、 営の基準」(国立大学設置法第7条の7)の「組織の 「かかる自治を侵害してはならないこと、いかなる勢 一体的運営」といった訓示規定にみられるように、一 力の侵害からも高等教育機関を保護することは、ユネ 定反映されているとみることができる。たしかに、今 スコ加盟国の義務である」( A. 1 9)と表現されて 回の法改正は、さまざまな問題を含んでいるとはいえ、 いる。一部の論者は、大学に認められるこのような独 大学という組織における意思決定が、学問の自由と大 立性は、高等教育・学術研究にとって、それを認める 学の自治という特性から、人事等、組織運営の基本的 のが合理的な政策判断である、と述べる。しかし、そ 事項について、教授会・評議会といった、かなりの自 のような見解が、およそ大学の本質をわきまえない議 律的な意思決定権限を有する合議制の機関を通じてな 論であることは明らかである。 されることとの整合性を踏まえざるをえなかったとい さらに、改めてここで確認すべきことは、教育研究 える。すなわち、大学自治の根幹である教授会・評議 機関は、国・地方自治体を設置主体とする国公立大学 会等の合議制そのものの破壊までを、この法律は求め であれ、「公益法人(学校法人)」を設置主体とする −1 4− 私立大学であれ、その教育研究活動の本質において、 公共性の果実を享受するのは誰か? 「公」の領域に位置づけられる、ということである。 このような性質をもつ教育研究活動の便益は、その すなわち、現代における大学・高等教育・学術研究機 個人のみが享受するのではなく、社会もその便益を享 関の役割は、自治と自律を基盤として独立性を担保し 受するという意味でいうところの「公共性」にとどま つつ、相互に連携・協力することによって、と「知の るものではない。教育研究活動は、「知」を創造する フロンティア開拓としての学術研究」という公共的な 活動であり、その「知」は決して私的排他的に独占さ 関心に寄与するところにある。ここで特に「公教育と れるべきものではなく、広く社会に共有されることが、 しての高等教育」にふれておくと、それは一方で、 「知 社会の安定と健全な発展にとっても望ましいという、 のフロンティア」を開拓する使命を負った学術研究を より積極的な価値判断からも、教育研究には「公共性」 遂行しつつ、それと不可分の関係で、科学的な教育理 を有すべきものとされる。すなわち、教育研究を通じ 論と方法論に支えられ、個人の精神的能力の全面的発 た「知」の創造と共有は、科学技術の発展、国民の知 達とともに、自ら人生を切りひらくための各種のスキ 的文化的水準の向上をもたらし、社会総体としての経 ルを提供し、もって主権者として社会の発展にも寄与 済発展と文化的発展の基礎を形成し、国民生活の安定 しうる人間像の形成に応える教育としての「公教育」 と向上を約束するものと考えられる。また「大学の自 (これが憲法2 6条にいう「教育」=公教育を形成する 治」と「学問の自由」を基盤とした多様な学問、「知」 ことは、最高裁判所の判例も一部ながら承認してい との出会いは、科学的批判的精神の涵養にもつながり、 る)、の一環を遂行することを意味する。そして、組 社会の民主的発展にも資すると考えられる。さらに、 織体としても、そこに所属する個人においても――教 経済のみならず、あらゆる分野で国際化が進んだ今日 育研究に直接携わる教員はもとより、事務職員、技術 においては、教育研究を通じた一国の経済的社会的発 職員、図書館職員等、その条件整備と連携協力関係に 展は、他国の、ひいては人類の経済的社会的発展にも 携わる教職員すべてが――、そのような公共的関心事 寄与する。したがって、「営利」の論理、「市場」の に専念するところをもって、「公の性質」(教育基本 論理のみで、高等教育のありかたを論じることは、本 法第6条)が承認されるのであって、そのかぎりにお 来不可能である。 いて、設置主体が国・地方公共団体であるか、私人で あるかによって区別されるべき筋合いはない。 さらに別の角度から考察するならば、教育研究活動 は、それ本来の性質上、長期的な視野が求められる。 ここに、国公立のみならず、私立の諸機関に対して 研究については短期的に成果が期待できるものではな も、積極的な公費助成が必要とされる理由が生ずる。 いし、教育についてもその効果が直ちに顕在化するも さらにいえば、教育研究の組織的・財政的基礎が公的 のではない。まして、教育を通じた内面的な成長など に支えられているがゆえに、「公」の領域にあるので を数値化して測定することなど、ナンセンスというほ はなく、教育研究活動そのものが上述の性質をもち、 かはない。 そこに公共性が認められるからこそ、高等教育機関に 対して、公の財政を投入することが正当化されるので 設置形態変更は高等教育全体の質の低下につながる ある。まさに、教育制度が発達した諸外国においても、 教育研究の公共性からしても、特に基礎研究など、 設置形態の如何を問わず、高等教育制度にかかる財源 長期的視野が必要とされることからしても、教育研究 の多くが公的に賄われているのも、この理由による。 活動やそれを支える組織のありかたを、「営利」や「効 したがって、こうした本質を理解することなく、憲法 率性」という「市場」の論理でもって論じることはで 8 9条の文言(「公金その他の公の財産は、……教育… きない。高等教育機関の設置形態についても、それが、 …の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供し 公共性と長期的視野を基礎とした教育研究本来の特性 てはならない」)を表面的に理解して「改憲」の口実 を支えるシステムの重要な構成要素である、と考えら とするがごときは、犯罪的な言説とさえいうべきであ れる以上、「市場」の論理で、安易に設置形態の変更 る。 が論じられるべきではない。まして、国立大学の独立 行政法人化問題のように、行政組織の「減量化」「定 −1 5− 員削減」の文脈から設置形態の変更を検討することは も、3年以上5年未満で、その「業績」を評価すると 論外である。 いう近視眼的な制度の押しつけは、教育研究活動とは 国公立大学は、歴史的に形成された多元的な高等教 まったくあいいれない。さらに、法人化によって、自 育システムの中で、国公立という設置形態によって公 主性、自律性が高まるという一部の「幻想」とはうら 教育を担うひとつの高等教育システムである。今日、 はらに、むしろ「行政の優位」が強まる仕掛けが用意 国立大学の民営化論者は少なくないが、その論旨は、 されていることも大きな問題である。 私立大学が存立しているという事実が、高等教育・学 すなわち、「この法律及び個別法の運用に当たって 術研究は国立でなければならない理由はない、という は、独立行政法人の業務運営における自主性は、十分 にとどまるものであって、誰一人として、国立大学の 配慮されなければならない」(通則法第3条第3項) 設置形態を変更する積極的な必要性を論証した者はい と、一見、法律が法人の自主性の尊重の上に立ってい ない。これについて、全大教は、2回にわたって機関 るようにもとれるが、主務大臣には、独立行政法人評 紙号外を発行して、これら議論の問題性を厳しく批判 価委員会等(同法第1 2条)による評価・勧告、政令で してきた。そして、こうした議論の本質が、「教科書 定める審議会の勧告を踏まえ、3年以上5年以下の期 的な新古典派理論の機械的な適用」にあることを明ら 間における中期目標の設定(同法第2 9条)、中期計画 かにしてきた(「座談会 『行財政構造改革』問題の の認可(同法第3 0条)、独立行政法人の長等役員の人 背景と大学・高等教育のあり方を考える」(1 9 9 8年4 事(同法第2 0条・2 3条)、業務を継続させる必要性の 月)、「座談会 日本的規制緩和と大学・高等教育を 検討を含む「所要の措置」(同法第3 5条)等、法人の 考える」(1 9 9 9年2月))が、このたびの「独立行政 内部運営に影響力を行使する強力な権限が付与されて 法人化」の動きは、まさにその本質を示したものとい いる。このことからみても、「行政の優位」が強まる える。 のは明らかである。 もちろん、国公立大学が、社会との関係において、 そのニーズに積極的に応えていくために、教育研究機 「独立行政法人」における「財務」構造は 能を高めていくためのさまざまな改革に主体的に取り 大学になじまない 組んでいく必要はある。しかし、それは設置形態を変 特に財務の問題を中心にいえば、経済的効率性とい 更せずとも実現可能である。むしろ、設置形態の変更 う「市場」の論理に重きを置く独立行政法人の「企業 によって、長年機能してきたシステムにおおいがたい 経営」的財務構造は、そもそも公共性を基礎とする国 混乱が生じ、教育研究機能の低下等、はかりしれない 立大学の組織になじまないし、そうした財務方式が導 悪影響がもたらされることが予想される。しかも、国 入されることで、組織と組織で活動する職員の行動は、 立大学が高等教育システムの重要な構成要素であるこ 「企業経営」的に変質していく。また、「企業会計原 とからすれば、それは、高等教育全体の質の低下にも 則」の導入は、「経営努力」による財政基盤の大学間 つながりかねず、いうところの「フロントランナー」 格差の容認を意味し、教育研究条件の大学間格差がま 輩出などともかけ離れた事態に陥ることであろう。 すます拡大するおそれがある。 「企業経営」的財務構造の中身を具体的にみていこ 「独立行政法人化」で強まる う。通則法は、「独立行政法人の会計は主務省令で定 「行政の優位」と企業経営的組織像 めるところにより、原則として企業会計原則によるも 国立大学の独立行政法人化は、このように、「減量 のとする」(同法第3 7条)として、貸借対照表、損益 化」先にありきという、政策的アプローチそのものに 決算書等の財務諸表の作成と主務大臣への提出を義務 も大きな問題があるが、独立行政法人がめざす組織の 付けているが(同法第3 8条)、企業会計が導入される 中身そのものが、法人の長に権限を集中させるトップ ことの意味は極めて大きい。たしかに、政府は、独立 ダウン的「企業経営」的組織像にしろ、「企業会計原 行政法人は、独立採算制度を前提とするものではない 則」で運営される「企業経営」的な財務構造にしろ、 として、「運営交付金」の交付等、国の予算において 国立大学という組織にはなじまないものである。しか 所要の財源措置を行うとしているが、これが確実に行 −1 6− われる保障はない。 基礎研究など、「利益」の上がらない学問分野が、ス さらに、まだ不明な点が多いとはいえ、財源の運用 クラップされていくおそれはきわめて大きい。「知」 の仕方や財務にかかわる概念そのものが大きく変わ の自立は損なわれ、自由な「知」の創造の気風は失わ る。たとえば、通則法上の「利益」、「損失」、「欠 れ、教育研究活動が本来有する公共性の基礎が掘り崩 損金」、「残余」、「積立金」、「剰余金」、「短期 される。当然、批判的精神のごときは根底から否定さ 借入金」といった概念に象徴されるように、独立行政 れ、現実主義という名の現状追随・追認だけが「学問」 法人化された機関においては、利益をあげ、赤字を出 の名を僭称することも予想される。 さないような「経営努力」が強く要求されるというこ このような教育研究条件の格差の拡大は、当然、国 とである。中期目標に掲げるべき事項(通則法第2 9条) 民の教育を受ける権利を基礎とした公教育の充実とい のなかには、「業務運営の効率化に関する事項」、「財 う方向に真っ向から反する。授業料等の扱いについて 務内容の改善に関する事項」が含まれており、中期目 はまだ定かではないが、「受益者負担」の名の下に、 標を達成するための計画である「中期計画」(同法第 大幅な引き上げの可能性も小さくはない。 3 0条)が掲げるべき事項のなかには、「剰余金の使途」 なども含まれている。また、具体的な運用がどうなる かは未だ不明であるが、「中央省庁等改革の推進に関 する方針」(9 9年4月2 7日)は、寄付金、外部からの 3.現代における国公立大学の理念―― 「公」領域のスタンダードを国民に提 示する責任 受託収入、手数料、入場料等は、「独立行政法人の収 入に直接計上することとし、国の会計の歳入・歳出外 多元的大学システム 日本の大学システムは、国立・公立・私立といった、 で扱う」となっている。仮にそうなれば、外部からの 資金導入や顧客からの料金徴収が期待できる組織は、 設置主体を異にする多種多様な大学が併存することを ますます財政的に潤うことになろう。当然、役員の報 特徴とする。歴史的にいえば、官立大学中心に学術研 酬と職員の給与にも、こうした業務の実績が反映され 究・高等教育システムを作り上げる指向性が存在した ることになる。 が、現実には、数多くの私立大学が、それぞれ「建学 の精神」 をもって大学システムに参入した結果として、 「独立行政法人化」による組織の変質と きわめて個性と多様性に満ちたシステムとして発展し 教育研究条件の格差の拡大 てきた。それらは、「公教育」の一環としての高等教 このように、独立行政法人においては、「経済的効 育を遂行し、「知のフロンティア」を開拓する役割に 率性」を向上させるための「経営努力」が強く求めら おいては一様であったが、大学の自治から派生する、 れるのである。「利益」のあがる組織はますます潤う 1)人事の自主決定権、2)研究教育の内容・方法・ ことになるが、そうでない組織は、業績悪化による改 対象の自主決定権、3)施設管理の自主決定権、4) 廃等の不安にさらされることになる。自らの身分を保 財政自主権の諸原則を具現化する側面においては、い 持するためにも、必然的に「営利」追求にならざるを わゆる「学風」とでもいうべきものを個々の体内にお えないのである。すなわち、「営利」といった「市場」 いて育むことによって、きわめて多様な形態を作り上 の論理が組織運営やそこで働く職員の心理に浸透して げてきた。それは、学術研究の場と教育の場を欲する いくことになり、公共的な組織そのものの性格も、よ 者に対して、多様な選択の余地を提供するものであっ り営利企業的に変質していくことは容易に予想でき て、その意義は、今日なお高く評価されるべきもので る。 ある。したがって、私立大学が、教育研究内容や教員 もし、国立大学が独立行政法人化すれば、「経営努 人事等に関し、「建学の精神」に基づいて一定の方向 力」と「業績評価」等によって、大学の財務構造は多 づけを行なうことも、「公」の領域に位置する本質に 様化し、財政基盤の格差が拡大していくことになろう。 反しないかぎり、基本的に承認されるべきであると考 このことは、教育研究条件の格差の拡大にもつながる えられる(念のため付記しておくと、昭和女子大事件 し、経済的な効率性が前面に出ることによって、特に、 において争われたように、たとえ学生に対してであっ −1 7− ても、思想信条の自由や政治活動の自由を、「学風」 の大学の中心的な指標を指し示すことであって、単な や「教育方針」によって、一方的に「補導」すること る「セーフティ・ネット」、すなわち、市場経済にお が許されないのはいうまでもない。管理運営上の規則 ける敗者に対し、恩恵的に教育・研究の場を提供する 制定であれ、教育上の指導であれ、あくまでも「公」 ような存在と理解されてはならない。もちろん、教育 の性質を有する大学等の本質にしたがって、それらと ・研究の場に対するアクセスを衡平ならしめるための の「調整」の上にしか成立できない性質のものであ 責任(たとえば、ユネスコ「高等教育世界宣言」第3 る)。 条)が、国公立大学等には、特に強く求められるが、 現状がそれにふさわしいものかどうかは別途検証を必 国公立大学の現代的理念 要とする。 それでは、このような大学システムにおいて、国公 とくに「受益者負担」の名の下に、年々授業料が高 立大学がよって立つべき理念と目標は何か。国公立大 騰し、あるいは、学部別授業料制度が画策される現状 学等は、国民・住民の税金を直接の財政基盤として、 は、国公立大学がもつこのような本質からして重大な その意思によって設置される。従来、このことは、議 問題である。設置形態を異にする多元的な大学システ 会制民主主義に基づく意思形成と財政支出だけを一面 ムは、ともに公教育と学術研究を支え、その場を欲す 的に強調し、国公立学校に対する政治的・官僚的支配 る者に多様な選択の機会を保障するはずであるにもか を正当化する文脈で主張されるのが常であったが、そ かわらず、むしろ「過剰に市場化」されている、との のような見解が、憲法・教育基本法の解釈から見て誤 指摘さえあるだけに、その「スタンダード」を示すべ りであることはいうまでもない。憲法・教育基本法が き国公立大学の責任は重大である。少なくとも、1 9 7 1 謳う「学問の自由」「教育を受ける権利」「公教育に 年国立大学協会見解(真摯に勉学を続ける意思がある 対する不当な支配の排除」 を調和的に解釈するならば、 ことを定期的に確認するための特殊な手数料)の線か 国公立大学等は、「公」教育に対する国民・住民の要 ら出発することが必要であろう。 求を直接に反映し、その付託に応えるとともに、「知」 第二に、「公」的存在としての大学の本質において のフロンティアを、社会との往復と「知」のもつ内的 は一様であるとしても、その具現化において多様性が な論理の両面から開拓する責務を、国民・住民に対し 必要であることは、すでに述べた。多様性を担保する てのみ・直接に負うべき存在であり、それに応えるこ のは、設置主体が多元的であることによっても担われ とを自らの行動規範として成立すべき存在であるとい ているが、一方で、構成員の自発的・創造的な活動を えるのではないだろうか。しかも、大学・高等教育機 追求し、保障する中から自ずと生ずべきものでもある。 関・学術研究機関の行なう活動と、それに対する期待 したがって、国公立大学等は画一的である必要もなけ は、一国の枠内にとどまるものではなく、普遍的なも れば、「個性化」の名の下に「改革」を強要される必 のであることからして、偏狭なナショナリズムにとら 要もない。 われてはならないのはもちろんである。 ここに述べた理念と目標を前提として、「公」的な 何が評価されるべきか? 存在としての大学等の本質を、その諸活動を通じて明 現在、第三者評価機関の設置が計画されているが、 らかにし、そのスタンダードを社会に明らかにする存 その組織・活動については、第三者性が完全に担保さ 在、構成員の自律した意思を通じて、社会との相互連 れるかどうか(社会の多様な構成員を代表するもので 関の中で、絶えずその「公」的な価値のありかを、国 あるかどうか、特定の階層、特に、政・官・財の「鉄 民・住民に対して、直接示し続ける存在、そこにこそ の三角形」を過剰に代表するものでないかどうか)、 国公立大学の独自の存在意義があると考える。 大学・高等教育機関・学術研究機関の本質にふさわし い評価基準を確立できるかどうか(ここでもユネスコ 留意すべき論点 の「高等教育世界宣言」が「高等教育の適切性は、社 もっとも、ここにはいくつかの留保が必要である。 会が機関について期待する期間と、機関が期待する期 第一に「スタンダード」とは、「公」的存在として 間とが一致する期間において評価される」 (第6条)、 −1 8− 「高等教育の質とは、そのすべての機能および活動: ライン体制、国旗・国歌法制化や新たな治安立法の策 すなわち、教授および研究プログラム、研究および奨 動等、戦後民主主義の枠組を大きく変更しようとする 学金、定員配置、学生、教育、建物、設備、地域社会 動きがある今、私たちは、社会から分断されることな への奉仕および学園環境を包摂する、多面的な概念で く自立した「知」のあり方を、大学・高等教育機関の ある」(第1 1条)等と述べていることは、十分に留意 「自治」のあり方、「国家」と社会との関係のあり方 されるべきである)、その手続が透明で民主的である も含めて、真剣に追求していかなければならないので かどうか、大学・高等教育機関・学術研究機関の特質 ある。 と多様性を配慮し、一方的な価値観(とくに、市場経 教職員の地位確立と労働条件・生活条件の向上は労 済万能主義に基づくそれ)に基づいて「スクラップ・ 働組合の任務である。そして、大学・高等教育・学術 アンド・ビルド」を持ち込むものではないかどうか、 研究機関とは、個々の組織としても、システム全体と 厳密な検討を必要とする。 しても、教職員という個人を基礎として成立する。そ さらにいえば、何よりも厳格に評価されるべきは、 の具体的な生存の条件こそが、大学・高等教育・学術 財政を含む現状の教育研究条件が、構成員の自発性と 研究機関のあり方を根底から基礎づけ、経済状況の混 創造性を伸長し、国民の多様な要求に応えうる、豊か 迷や環境問題、社会病理的現象の深刻化等、従来予想 な教育研究環境を生成するものとなっているかどう もできなかった種々の問題に対して、主体的、積極的 か、それにふさわしい管理運営体制であるかどうか、 に応えていく姿勢を基礎づける。私たちの職務が、そ 逆にそれを阻害するものになっていないかどうかであ のような特別の性格をもつことを深く自覚するがゆえ る。これらを構成員が自律的に検証し、国民・住民に に、全大教が、労働組合として、大学・高等教育・学 対して、その果たすべき責任のありかを明らかにして 術研究機関のあり方に対する発言を続ける意味はあ いくこと、これが、国公立大学の本質にふさわしい行 る。 動責任(レスポンシビリティ)ではないだろうか。 3日間にわたる各方面、各職種からの多面的な検討 を通じて、2 1世紀に向かおうとする大学の「今」と「未 おわりに 来」とを徹底的に論じていただきたい。 いかに万全の教育研究システムを構築してみても、 究極においてそれを具現化し、作動させるのは、教育 研究を実際に遂行し、その条件整備を担当する教職員 にある。そして、教職員が他の構成員と密接に協同し つつ、教育研究活動を展開する場が大学・高等教育・ 学術研究機関である。 そこは、ユネスコの「高等教育世界宣言」も指摘す るとおり、単に学校教育の最終段階にとどまることな く、生涯にわたる学習活動の出発点であるとともに、 何度でも出入りして自己の能力を発展・伸長する場で もなければならない。その場が外部の圧力や侵害に侵 されてはならないこと、その「知」のあり方が、特定 の利害に支配されてはならないことは歴史の教訓であ るが、内部において、それが分断された状況もまた克 服されるべきことを自覚する必要がある。すなわち、 戦前の大学に見られた「エリートの知」と「民衆の知」 との「分断」状況は、軍国主義化に進む社会の文化状 況を押しとどめられなかったことを、歴史の教訓とし て、深く胸に刻みつけておかねばならない。新ガイド −1 9− シンポジウム 21世紀に向けた大学・高等教育の 充実をめざして―独立行政法人化 問題への対抗軸 報告1 羽田貴史氏(広島大学大学教育研究センター・大学教育論) 広島大学の羽田でございます。高いところから失礼 ます。 いたします。私が与えられたテーマは「独立行政法人 二つ目にお話ししたいのは、行政改革という大きな と国立大学」ということでございます。全大教の文書 枠の中での独立行政法人を大学に当てはめると、いっ で、「ご専門の立場から、大学等のすそ野の広い総合 たいどういう問題があるのか。独立行政法人構想その 的発展を阻害する問題のことを中心にお話を」という ものについての検討をしてみたい。ただし、この点に ふうにミッションが与えられました。大学教育論とい ついては三橋先生が詳細な報告を準備されていますの う専門になっておりますが、正確に言いますと、戦後 で、ポイントのみにとどめます。 大学改革と近代日本の大学財政制度史を専門にしてお 三つ目には、今週の月曜日に国立大学の臨時総会に りまして、1月には『戦後大学改革』という本を玉川 出ました常置委員会小委員会案がございますが、問題 大学出版部から出しておりますが、さっぱり売れませ になっている通則法の行政法人構想をどう修正してい ん(笑)。本を出しましたけれども、大学生の学力問 るか。これが、今の時点で大きな論点だと思いますの 題や大学評価の話などという注文がございます。広島 で、この点について私なりに今日述べてみたい。ここ 大学の大教センターにおりますと、大学のことは何で は多少三橋先生と重複するかもしれませんが、ある程 も知っているだろうと錯覚されまして、たくさんいろ 度の重複も重要だろうと思っております。 んなお話が来ますので、もっぱらそういうことを中心 最後に、法人化のもっている問題点を見るためには、 にやっております。したがいまして私の専門は、いま もし行政法人になった場合、具体的にどういうことが “解体中”であるというふうに自覚しております (笑) 。 起きていくかという、ある程度のシナリオの想定も重 この1 0カ月間ぐらい自分の論文のための勉強をする時 要だろう。このように思いまして、これはやや問題が 間がなく、広島大学の自己点検評価の委員として評価 多いかもしれませんが、シナリオとしては、法人化に 結果を取りまとめたり、広島大学内部で独立行政法人 よってどういう問題が起きるかということを述べてみ 問題の検討に加わったりしております。 たいということです。 さて、私は四つほどのテーマで独立行政法人の問題 まず国立大学の「独立」問題の歴史ということで、 についてお話ししてみたいと思います。一つは、大学 レジュメの1ページにございますが、少なくとも歴史 の組織形態を変更して法人化するという議論は、今日 的な動きにはこういうことがあります。最初は国立大 に始まったわけではありません。いまの独立行政法人 学、つまり官立学校が明治5年の学制によって発足し はどういう性格をもっているか、歴史的にどういう位 まして、明治1 0年には東京大学という日本で最初の大 置にあるかということを一つ目にお話ししたいと思い 学が生まれてまいります。今日に至るまで大学の本則 −2 0− 的なイメージは国立というのが非常に強いわけです。 使えるという、単年主義を実質的には変更するような 大正7年の大学令で公立大学、私立大学が認められる 財政制度でした。 まで大学は国立に決まっているという厳然たる事実が しかしこの財政制度は大正期には崩壊してまいりま 認められます。しかし、そのときからすでに「国立大 す。どのへんで崩壊するかといいますと、大学がしだ 学であるということが唯一の大学の形態である」とい いに拡張して、いろいろな社会的な必要性に対応して うことについては、強い疑念が存在しておりました。 学生数が増えていく。そうすると特別会計では対応で たとえば明治6年、学校は一種の資本金をもって独 きない。毎年定額金が変更されていく。すなわちどん 立していくべきであると、当時の文部卿木戸孝允が述 どんその支出率が下がっていく現象が起きまして、個 べております。その背景には、明治1 2年、元老院で文 々の学校会計ではもはや自立性は維持できないという 部省の役人である辻新次が説明しておりますけれど ことで、全部の大学を一つの特別会計にして運用する も、「高等教育はもともと人民の自由に任せるべきで、 という形態に、長い時間かけて変更していきます。こ 政府は干渉すべきでない」という理念がありました。 れが戦前の歴史でありまして、端的に申しますと、国 これはきわめて健全な教育の自由論だと私は思います 立大学としての存在形態の中で会計的な独立性を実現 けれども、そのような主張があったということは、ま しようとしても、それはできなかった歴史であるとい ず記憶にとどめるべきでございます。しかしこれも明 うふうに戦前の歴史を総括することができます。 治1 4年の政変を契機にして、国家が教育に関与してい 戦後一般会計に移行したもとで、昭和3 9年に国立大 くという政策転換がございまして、以降、大学は国家 学に対する新しい動きができます。これは理工系ブー のみによって維持されるという原則ができたわけで ムの下で国立大学を拡張する必要があった。そのため す。 の特別な財源を作る必要があった。これはもっぱら大 しかし、その下でも大学の独立論は存在しておりま 蔵省が持ち出したわけですけれども、それを契機にし した。一つは明治2 2年、大蔵省が、現在の国立学校特 て、現行の国立学校特別会計ができました。しかし基 別会計につながる前身の官立学校特別会計というのを 本的にその中の会計ルールは国家の財政運用をそのま 立案するのですけれども、帝国大学をはじめとする官 ま適用するものでした。これは特別会計を前提とする 立学校に特別会計を置こうというものですが、そのい と、借入金等を使ったり、いろんな弾力的な措置がで ちばんのポイントは、当時できつつありました帝国議 きますが、財政運用権は基本的に文部省と大蔵省が把 会から大学を独立して維持していくというところにあ 握しており、硬直的であることは、先生方が実感され りました。その典型的な表現は、初代帝国大学総長加 ているのではないでしょうか。 藤弘之が当時「天則」という自分の個人雑誌の中で私 したがいまして国立学校特別会計ができた後も、国 立大学を批判して、「誰か高等教育を人民に放任すべ 立の制約を離れて研究教育に照応した管理をしたい、 しと云ふ乎」、大学は国によって維持すべきというこ こういう要求は絶えず出てまいります。たとえば1 9 7 0 とを厳しく主張したわけです。その主張を裏付けるた 年、東京大学の改革準備調査会が作った専門委員会の めに、議会に集まってくる政党人の予算審議権から大 報告書の中では、大学法人化をうたっております。し 学を自由にしたい。これが独立論のもう一方の典型と かしこれは、念のために申し上げますと、当時の大学 して登場してくるのです。 をそのまま法人化するのではなく、当時の文部省の下 それを象徴するのが明治4 0年、東京と京都の両帝国 で法人化するのではなく、文部省を改変して大学委員 大学に、特別会計をいっそう強めて定額支出金を支出 会という大きな全国的行政機関を作って、そのうえで する制度にしてしまったことです。両大学に毎年1 3 0 の法人化ということです。こういうプランも存在して 万円、1 0 0万円という金を支出して、大学が自由に運 おりました。 用していく。これがたぶん形態的にはいまのエージェ さらに、いわゆる4 6答申、中教審の中でも「一定額 ンシーに近いですね。金額が法定されるということが の公費の援助を受けて自主的に運営する公的な新しい 今はございませんけれども、きわめて近いかたちです。 形態の法人」という提案もされておりますし、また民 これは毎年度予算が余ればそれを次年度に繰り越して 間人では永井道雄氏の大学公社論も存在しているとい −2 1− うのも記憶にとどめていいことだと思います。 ここには6点ほど特徴を挙げておりますけれども、 そして設置形態の変更がドラスティックに出たのは 行革の中での独立行政法人というのはいったいどうい 例の臨教審ではなかったかと思います。臨教審の「審 う意図をもっているかという前提になる問題です。先 議経過の概要(その4)」(昭和6 2年1月)の中では 刻の基調報告もお聞きしたのですが、私はやはりいく 民営化論が展開されます。そのとき大学にいた方は臨 つかポイントがあるだろうと思います。率直に申して、 教審の民営化論をめぐって丁々発止の議論が進められ 行政法人と大学というテーマだけで議論をするのはや たというのは記憶に新しいのではないかと思います。 や視野が狭いのではないかという気がしております。 6点ほどの主張で大学の活性化を図るということでの 基調報告の中にはそれ以外の観点もありますけれど 法人構想が長らく議論されました。 も、大きな枠の中でいま独立行政法人というものが出 その議論を受けて、当時神戸大学長であった新野幸 ているということを見るべきではないでしょうか。 次郎氏を座長とする研究グループが発足いたします。 その一つは、行革の文書によりますと、「戦後型行 その『大学の組織・運営に関する研究調査報告書』の 政」から「2 1世紀型行政システム」への転換であると 結論に沿って臨教審は、法人化はしない、民営化はし いう枠組みの中に位置づけられる。したがって独立行 ない、そのかわり大学審議会を作って、大学評価シス 政法人のシステムそのものの可否だけではなくて、全 テムを含めた国立大学の活性化を図るということで、 体的な改革構想を視野に入れていく必要がある。何が 民営化構想を将来の課題として繰り延べたわけです。 必要かというと、一つは文部科学省設置法の改正の中 その延長線上に実は今日の議論がある。まずこういう で、いったい従来の文部行政指導がどういうふうに継 ふうに理解すべきでしょう。 続するのか、継続しないのか。この論点を一つ視野に そのときの研究調査報告書の結論は、ゴシックで書 入れておく必要があるだろう。たとえば教員養成の問 いてございますけれども、要するに当時の設置形態、 題について申しますと、教員養成は非常に国家的な関 国立大学であるということを絶対に維持するというこ 与、コントロールの強い分野です。コントロールが強 とではありません。新しい設置形態を探求することを い理由の一つは、従来は高等教育の枠組みであったも 躊躇してはならない,しかし今のところ、すなわち8 7 のが8 4年の文部省設置法改正により、教育助成局の指 年の段階で行政法学や行政学の現状から見る限り、特 導関係に入ったことです。ここに、初等・中等教育と 殊法人や第三セクター論の領域の研究は始まったばか リンクして教員養成カリキュラムの改編が非常に早く りであり、ただちに「大学」の受皿となる理論や概念 進行し、大学がそれに従属するという構造が生まれる は存在していないといわざるをえないというふうに結 理由があります。 論づけています。これは理化学研究所等の特殊法人を ところが今回の文部省設置法改正を見ますと、教育 分析した結果、特殊法人形態でも非常に強い国家関与 助成局は解体されて、教職員課はどこにいったかとい が存在しており、予算会計を独立しても、多少の経営 うと、初中局に入るのですね。初中局に入って、教科 努力の余地はあるけれども、効果が大きいとはいえな 書とか、さまざまな課と連携した中に入っていくわけ い、それから共同研究やプロジェクト研究に傾斜して、 です。そういう枠の中で動いたときに、いったいどう 基礎研究にマイナス要因を与える。 いう現象が大学におきるのか、というのが想像がつく こういうことを主張して、当時はちょうどアメリカ から見て日本は基礎研究が弱いという指摘もございま わけです。いったい文部科学省と大学の関係はどうな るのか。この視点をより重視すべきです。 したので立ち消えになってしまった。したがって今日 の論議は、そういう議論があった上で独立行政法人構 二つ目には、現在出来つつある大学評価機関との関 係がどうなっていくのかという点があります。 想というのが当時の課題をクリアしたものかどうかと いうことがポイントになるだろうと思います。 三つ目には、こんどの改編の中では総務省というお 化け官庁が誕生します。これは各省の情報を全部統合 二つ目は独立行政法人構想の問題ですが、結論だけ して、各省庁が行う政策に対する政策評価を加える機 を言えば、当時の懸念を払拭できるようなシステムが 関です。私は、大学評価機関の評価と総務省の評価が 提起されているとまでは言えないということです。 同じかどうかというのはいちばん気になっているとこ −2 2− ろです。これは後で述べます。 すから、もっぱら大学の立場を反映してといいますか、 四つ目には、現在、科学技術会議がございますが、 大学の側から入っている藤田さんのような方でも、そ これが役に立たないということで、「総合科学技術会 このところの具体的なイメージはないわけでありまし 議」というのを平成1 3年から発足させます。その準備 て、ここではあたかも“靴が先にあって足を入れ込む” として、現在、2 1世紀の社会と科学技術を考える懇談 という状況になっているというのが非常に問題であり 会が開かれていて、来年の秋には答申を出し、その答 ます。 申に沿って新しい総合科学技術会議のスキームを作 それからもともと独立行政法人は効率化や減量を目 る。これは従来の科学技術会議とは違って、いっそう 的とすること、これも非常に重要な問題でございまし 具体的な戦略的な科学技術の内容について提言をする て、たとえば委員の山口顧問は、独立行政法人の目的 内容になっております。これは、いまホームページで は効率化であり、減量が目的であると、はっきり何回 読めますけれども、大変重要なことを言っていますね、 もおっしゃっている。独立行政法人がいいとおっしゃ 2 1世紀においても資源を食いつぶすようなタイプの科 る方の中には、「一生懸命運営して成果をあげれば、 学研究でいいのかどうかとか、それから科学研究には お金が入ってくる」とおっしゃる方もいるんですけれ モラトリアムが必要になってくる。つまり研究しない ども、それは根本的な間違いであって、減らすために ということも重要な政策になってくるわけでありまし やるものですから、一生懸命やったから、1 0%の定員 て、バイオハザードなどを避けるためにも、そういう 減はやめて5%にしてあげるということは言われて トータルな科学技術政策が重要になってくる。 も、増えるということはこれからあまり考えないほう しかし、もしそういう政策的な科学技術振興が進ん がいいと感じます。ただし会計運用には若干の改善が で具体的なお金を伴って入ってくると、大学が相当今 ある。“渡し切りの交付金”としてイメージされてお から変わることを覚悟しなければいけない。ここにい りますので、財政運用は少なくとも若干の弾力性はあ ったいどういうチェックとコントロールをかけていく る。行政改革会議のコメントでも「独立採算性を目的 のか、バランスのとれた学問を発展させるにはどうす としない」 というふうにだいたい述べているのですが、 べきかというのは、エージェンシーの形態だけでは解 法を見る限り、独立採算性をとらないことを規定とし 決されません。これをもっと視野に入れていかなけれ て明文化しているわけではございません。現行の国立 ばいけないということです。 学校特別会計が発足するときも、大蔵省主計局長と文 これもすでに言われていることですけれども、もと 部次官が「国立学校特別会計は独立採算を追求しない」 もと大学を想定していなかったシステムの中に大学を という覚書を交わしましたけれども、その後の運用を 放り込むと大変なことが起きると思います。いちばん 見るとほとんど効果はありませんでした。したがって のポイントは、独立行政法人が想定しているのはたぶ 明確な歯止めがないという点もあり、一般論として独 ん国家機関でありまして、これをエージェンシーにの 立採算にしないといってもあまり意味はない。 っけたら、たしかに現在よりはその機関の自主性が増 6点目に、今日の議論でも気になっているところと すということははっきりしております。しかし、大学 して挙げましたが、法人移行に伴って、身分が非公務 はもともと自主的に政策決定をしてきた機関でありま 員であるか、公務員であるかというのがポイントにな して、これをエージェンシーの枠に放り込めば、現在 るわけですけれども、仮に非公務員であった場合に果 でも事前統制が加わり、かつ事後評価も加わって現状 たして継続雇用が実現されるのか。設置形態の変更と より自主性が後退するのは明らかです。 身分の問題が、起きたのは国鉄のことでございまして、 たとえばいま、行革会議の議事録がホームページで 国鉄が設置形態を変えてJRになった。これはご存じ 読めますけれども、今年の3月の時点で独立行政法人 のとおり大変な雇用不安を引き起こしたわけです。大 通則法の中にある業務の改善命令について委員の藤田 学の場合にはそれほど深刻な労組の対決はございませ 氏が、これは場合によっては大変なことになる、いっ んが、普通に考えますと、やはり理論的にはスリム化 たいどうなっているのかという質問を事務局にしてお ・減量化である以上、労働関係の継続が果たして可能 りますが、事務局には明確な答えはございません。で かどうか。 −2 3− さて、ここで国立大学協会の第一常置委員会小委員 会案を検討してみます。 にするか、費用進行型にするかというような議論をし ておりまして、その中の委員のお一人が北海道大学の 一つ目は、特例法を制定したいと述べています。こ れは重要なポイントです。ただし通則法を前提として 宮脇淳さんなのです。この方が常置委員に入っている ので、会計の部分は非常に具体的です。 いけるのかどうかというと、かなりたくさんの論点が それで最後の点ですが、独立行政法人化によって何 あって合わないというふうに言わざるをえない。たと が起きるかというプロセスが、もし仮になった場合に えば主務大臣の目標設定に対する大学の主体性が、あ は問題があるのですが、ここではおそらく二つほど問 の枠組みでは担保されないのではないかと思います。 題があります。それは、移行のプロセスでどういう再 国立大学等にいくら意見を聞いても、現行の中での大 編が起きるかということと、移行後5年おきに見直し 学は恐らく独自な主張をできないであろう。ましてや をしていくという、この二つの領域で問題が起きると 大学評価機関にリンクしましても、もともと大学評価 思います。 機関は目標設定や大学のあり方に関する政策を提供す いちばんわからないのは評価の問題です。行政法人 る機関ではございません。そのようなところに聞いた かどうかという形態もそうなのですが、文部大臣がガ ところで、目標設定に関して大学が主体性を担保でき ードしてくれるという可能性もあるわけですけれど るとは思えない。 も、文部科学省自身が総務省の政策評価独立行政評価 それから大学の自治の保障がどうも表現上、やや弱 委員会と、それからいまの行政監察局を改組した行政 いと思います。たとえば評議会の設定については明確 評価局による評価を受けて、ここに勧告が来るという、 に「置くとする」というふうに書いてありますが、教 この仕組み全体が、文部省がいま検討している大学の 育公務員特例法による身分保障の内容を引き継ぐとこ 評価機関というところの、いわば教育評価を中心にし ろを見ると、「すべきである」となっています。日本 た評価システムによってガードされていくのかという 語の用法で言えば「しなければならない」が最も強力 問題があるのですね。この、総務省の行う政策評価と で、「すべきである」はその次、「望ましい」が3番 いうのは何であるのか。ここがたぶんいちばんのポイ 目です。どうでもいいような表現でございますが、そ ントだと思うんです。 ういう文例に従えば、「しなければならない」という 程度ではちょっと弱いのではないか。 おそらくやっている人間もわかっていないと思うの ですけれども、通常はそういう政策的評価というのは さらに、よけいなことも書いてある。たとえば「学 国の機関の中では国会がやるわけですね。アカウンタ 部や大学院の研究科を設置する」、こういう話も書い ビリティーを担保する機関ですから、そこがやるのが てありますが、おそらくこれは必要ない。かえって硬 通常である。今回たしかにそこもあるのですが、総務 直的になる。これは意見が分かれるかもしれませんが、 省が個々の省庁の政策もきちんと評価してしまおうと 私はいまの時点ではこういう点は必要ないと思ってお いうわけでございまして、たとえばアメリカなんかで ります。 言うと、予算決定については、事業予算で組む政策が それから最大の問題である公費支出の義務づけ、さ あるときには「その事業をやったらどれぐらいメリッ っき申し上げたところは、まったく明確な論議を欠い トがあって、その結果自然がどう壊れるか」とか、そ ているといいますか、ただの希望にとどまっている。 ういう費用対策効果をやった上で政策決定していくと これをどういうふうに担保させていくか、もっと検討 いうことを考えて、あまりうまくいかなかった。 すべきである。ただし、法人化単位の立て方、つまり 日本の場合でいうと公共事業に投資をするときに、 移行時においてどういう法人がありうるかは具体的な 役に立たなくても決まったからやるということですか 記述になっています。 ら、政策評価をして政策を推進するという仕組みには また、具体的な財政というものは非常に丁寧に書い なりにくい構造をもっているのだと思うんです。だか てある。これも「独立行政法人会計基準研究会」とい らいったいどういうかたちで政策評価をして行政法人 うのができているのですね。それでたとえば独立行政 の行政評価をしてやるのかということがわかりにくい 法人に対する運営交付金の支出について、成果進行型 のですが、仮にこういうシステムが動いたらいったい −2 4− どういう現象が起きるかというのを考えてみると、や ているので、これ以上増やせっこないのですが、だか はり予算の面がいちばん見えてきやすいだろうと思う らといって国の支出は下げるわけにはいかない。つま のです。 り国家的な意義のある重点大学に対しては、これは依 実は現行の国立学校特別会計の中でも、意外と大学 然として継続するという論理になる。 の自己収入率というのは高くなっているのですね。大 (OHP) 学の授業料とか附属病院収入などで半分以上を賄って では帯広畜産とか宮城教はどうなんだとなります いる大学が結構あるのです。たとえば、岡山大学と新 ね。低い。これは上げるわけにいかない。病院をつく 潟大学は、特別会計だけで、一般会計の繰り入れを除 るわけにはいきませんから。そのときに、こういう低 けば、実は半分以上自分の大学の収入で賄えている。 さとリンクしてくるのがたぶん、これは岩手大学の場 予算的には、実はそういう事態にまで進んでしまって 合も多少関係しておりますが、こういう案が7月に報 いるんです。 道されたのはご存じだと思います。つまり、いま大学 (OHP) 教育の国際標準化が非常に進んでおります。典型的な 広大のセンターにある自己点検評価書の中に財政を のは工学教育でございまして、これはアメリカのAB 書いているところもありまして、年度がそろっていな ETにリンクしたJABEEという、エンジニアリン いのですが、その数字でいくと、同じ年度ではないと グの学位の評価システムで、これがいま日本でも本格 いうことを前提にして、傾向として理解していただく 的に来年から入ります。要するにそういう基準をクリ ために見ますと、こんな感じになっている。 アしないと、そこを証明していないと雇ってくれない いちばん上の国立学校特別会計は1 9 9 9年度の予算で のですね。ヨーロッパでもアメリカでも雇ってくれな すが、自己収入は4 2. 8%まで来ているのですね。これ いので、日本の工学部は皆、これに一生懸命乗り始め は附属病院収入とか、外部資金導入とかで国家資金は ております。そういう仕組みで、JABEEと書いて 5 7%しか入っていない。 ジャビーと呼んだり、人によると「ヤベエ」と(笑)、 これには非常にムラがあって、たとえば琉球と旭川 医科大学、あるいは秋田大学を見ますと、もう、この 解釈は両方あるみたいなのですが、いずれにせよ、こ の傾向はいろんな分野で進むだろう。 へんは6 0%近く自分の大学の収入で動いていける。そ ういう大学がすでにある。 ここの新聞で報道されておりますのは、やはり同じ 獣医の国際基準でありまして、これをクリアしないと それから低いところで言うと帯広畜産大学がいちば 仕事ができない。ところが日本の獣医学教育の水準と ん低い。1 8%しか収入がない。これはほとんど授業料 いうのは人数が小さいので現行の中でいくらやっても です。それから宮城教育大学、これも単科教育大学で 膨らまないから、東北と九州あたりに、帯畜とか岩手 授業料収入がほとんどである。これは7 5%を国費でま の獣医学科を統合してしまって、大きな基準にして、 かなうしかない。その次に東京大学が2 6%ぐらいのオ ここで対応しようという話がある。これは反対論もあ ーダーになってきます。総務省的にこういう数字を評 るけれども、賛成論もある。 価してみると、運営の効率化で見たら、やはり秋田、 問題は、こういう問題とさっきのお話をリンクした 琉球あたりはよく頑張っているという評価になると思 ときに、これだけ国が8 0%以上国費を投入するには、 います。もっと頑張ってほしい。これはいい点数なん やはり何かの意味づけが要る。国家的な意味づけがあ です。 るかというふうに必ず出てくるわけです。そうすると、 東京大学が低い。これはどうなるか。これはもっと 議論の中ではおそらく「集中統合して国際基準にも堪 頑張れよといったって、それはたぶんそんなに頑張っ えるような獣医学教育をする」という方向のほうがよ たって、このオーダーが上がるはずがない。現行でも りクリアで、アカウンタビリティーは高いですね。そ 東京大学に入っている外部資金というのは実に3 0 0億 ういう方向に流れやすくなってくるだろう。 近いのですね。たとえば広島、筑波も大きい規模なの それから宮城教育大学……、ここにも教育学部の先 ですけれども、1ケタ違うわけです。いま、外部資金 生方がたくさんおられるので、こういう話をしている でいくと、ほとんど旧帝大の一人勝ち現象になってき と今日、生きて帰れるかどうかちょっと不安なのです −2 5− けれども(笑)、この数字はどこの単科大学を見ても 今のところ、この1 0年間で研究費の側面から見ると、 同じぐらいなのです。教員養成は国家的事業という理 学問分野の構造について大きな変化はない。安定的に 屈もありますし、国立教育大学はそういう点で一応ガ 出ているという簡単なことを今のところは言っておき ードを主張しておりますが、就職率が3 0%、2 0%でい たいと思います。たとえば研究者1人当たりの研究費 いのかという問題がかかっております。5 0 0 0人削減が で見たら、この1 0年間で平均で1. 2倍ほどになってい 終わった段階で、さらに次の追い討ちが来るので、た て、わりと伸びている。なぜか農学系が減少していま いへん申し訳ないのですけれども。そうしますと出て す。ほかはだいたい、人文系も伸びている。 くるのは何かというと、ブロック的な再編だろう。こ しかし外部資金導入型でいったら、文学に金が来な れはもう次の案としてささやかれておりますが、5 0 0 0 いことは、まず間違いないですね。お金の面でもたぶ 人の効果が出るのは4年か5年後なのですけれども、 ん減っていって、研究者の数でも減っているときにど その時点で教員養成大学の就職率が回復していないと ういう問題が起きるか。これは言い古されております 地域的な教育大学に集中統合化して就職率を上げるな けれども、具体的なシナリオでいって、さっきのよう り、国家的な意味づけがございませんと、おそらく教 な事態があったらすぐ見えてくる話です。広島大学の 員養成大学は生き残っていけないのではないか。 中でも、文化系の先生から言われましたけれども、 「休 しかも、私はさっき行政評価なり政策評価はどうな 耕田を作ってはならない」。これはうまい表現だと思 るかわからないと申し上げましたけれども、日本の国 うんです。駅の近くにも休耕田があります。いったん 立大学なり大学行政でわりと政策評価的なところをベ 荒れてしまったら、もう回復するのはなかなか難しい ースにして何らかの減量措置をやった経験があるかと ですね。学問も同じでありまして、ある分野に1 0年間 いえば、おそらくそれは教員養成だけになると思いま 穴があいたら、その回復をするのは生半可なことでは す。ほかは、理工系学科がニーズに対応した増加政策 ない。そういうのを保全して次の世代に引き継ぐのが というのをけっこうやっているんですね。けれども、 大学の学問研究である。 就職率が悪いという数字をテコにして、しかもそれは 日本の学問研究は基礎研究が非常に弱い。基礎研究 一つのきっかけは行政監察局の監察結果なわけですけ は研究費総額の2 5%ぐらいしかありませんけれども、 れども、それをテコにして学科再編、課程再編をした 大学の研究費の5 0%は基礎研究で中心を担っていま ケースというのはおそらく戦後史の中でいうと、その す。大学がそういうかたちで基礎研究から撤退してい ぐらいではないかと思います。しかもきわめて抵抗も ったら、長期的に見て学問全体、あるいは応用系にも なくやったわけですから、お互いに経験済みですね。 大きな穴があいていく。そこのところをどういうふう ですから、そういう点でいうとエージェンシーになっ に議論していくのか。そのためには、やはり評価がポ たときのターゲットとして上がってくるのは、おそら イントになってくるだろう。 くこういう単科大学、あるいは東京商船、神戸商船も もちろん評価については、「できない」「そんなこ 数字をあげていくのは非常に低いわけですから、そう とは難しい」という言い方もありますけれども、差し いうことでおそらく動きやすいのではないかと思って 当たり、今のところ出てきている大学の機能というも おります。 のを、今の評価システムでいったい把握できるのかど こういう枠組みで動くときに懸念されることは、日 うか、具体的に議論する必要があります。特にいまの 本の学術研究の枠組みが長期にわたって変化していく 枠組みでは、評価システムとしてできるのはフローな というところをどういうふうに回避していくのか、回 のですね。お金が入ってきて、どういう研究が出たか 避できる仕組みがあるのかということです。いま、1 9 という流れ、ここのところでたぶん業績評価はできる。 9 5年から科学技術基本法が動きましたので、日本の研 ところが大学というのは、あるだけで大学という面が 究費全体はわりと潤沢になっております。 ある。図書館があって、本がある。1 0 0年にいっぺん、 (OHP) だれかがその本を読む。そういうことで、やはり大学 それで、気になったので、科学技術研究報告でこの の機能が果たされる。ストックとしての大学といいま 1 0年間ほどの研究費の構成比を調べてみたのですが、 しょうか、そういう大学の機能をどういうふうに評価 −2 6− にのせていくのかとか、そのような議論が今後は必要 分子は、授業料収入等の学生納付金。それから附属病 になってくるのではないでしょうか。 院収入。それから外部資金の中でも、科研費は入りま 時間をオーバーして恐縮ですけれども、以上で私の 話を終わります。(拍手) せんけれども、受託研究費とか委任経理金、用途指定 研究、その他。それから学校財産処分収入、これが入 司会 羽田先生、どうもありがとうございました。 っております。帳簿を作って企業会計でやるときも、 意見については後ほど伺いたいと思いますが、すぐに たぶんそういう費目が形式上は入ってくるのではない 確認しておきたい点等ありましたら、ここで羽田先生 かと思います。 に伺いたいと思いますので、もしありましたら手を挙 司会 ありがとうございました。 げていただけますか。 羽田先生のお話は、われわれは国立大学、国大協、 それでは私のほうから、自己支弁率、自己収入率、 文部省といった視野で見がちなのですが、それだけに これについて分子、分母はどんな定義になっているか とどまらず、総務省というお化け官庁ができるという 教えていただけますか。 行革の流れの中で独立行政法人を見ていかなければい 羽田 分母は国立学校特別会計ですから、研究所、 けない。われわれはどうもまだ目をそむけがちなので 附属病院、施設整備費、そこまでが入っております。 すが、今後どうなっていくのかという想定とかシナリ 一般会計は入っておりませんので、実際に大学に投入 オの中での研究を進めていかなければいけないという されているお金は、国費はもう少し高いと思いますが、 ことを指摘してくださったのではないかと思います。 帳簿上はたぶんそうなっているだろうと思います。 では引き続きまして三橋先生のほうからお話をいた 司会 自己収入率というのは? だきたいと思います。よろしくお願いいたします。 羽田 収入率の高さ。こんどは分子のほうですね。 21世紀に向けた大学・高等教育の 充実をめざして ―独立行政法人問題への対抗軸 報告2 三橋良士明氏(静岡大学人文学部・行政法) 静岡大学の三橋でございます。私は行政法という分 野を専門にしております。国の場合では事業団とか公 なかった行政組織と言ってもいいのではないかと思い ます。 団などの特殊法人、あるいは自治体のほうですと地方 今日の私の話は、皆様のほうに配られている資料の 公社、第三セクターというように、いわゆる半分は国 中に載っていると思いますけれども、独立行政法人通 とか自治体の一環で、半分はそうでないというような 則法が制定されておりますので、その通則法がどうい 組織体について研究してきました。しかし、今日テー う意味をもっていて、その通則法を修正ないし特例化 マとします独立行政法人は、そういうようなものとも した特例法の枠の中で国立大学の独立行政法人化とい 違うし、またモデルとされたイギリスのエージェンシ うものをどういうかたちで考えることができるか。こ ーとも、部分的に似ているところはありますけれども、 ういうことをお話ししたいと思います。 基本的なところで異なる、わが国においても今までに −2 7− 先に私の意見から申し上げておきますと、通則法に 基づく国立大学の行政法人化については国大協も反対 戦略国家、いわゆる危機管理国家をつくる。セントラ でして、通則法の下ではたいへん問題が多いというの ル・ガバメントをつくる。これが国家改造の基本にあ はかなり多くの人が言っているところです。したがっ った上で、二つ目には、国家行政と市民社会の相互の てその通則法に対する修正なり、あるいは特例法とい 見直しをする。すなわち行政の守備範囲を見直すこと うことになるのですが、この点について私は、国大協 です。ここでは市場原理と自己責任原則を基本として、 第1常置委員会の中間報告に対してたいへん批判的で また同時にこれまで行政が果たしてきた経済的な規 す。ここにいらっしゃる皆さんも読んでいらっしゃる 制、社会的な規制を含むさまざまな行政規制の緩和を かと思うんですけれども、全国に出回ったところの東 図ることによって、行政責任を大幅に縮小していく。 北大学の藤田先生の論文、あの内容と基本的には同じ そういう、行政の役割そのものを見直すということが ようなスタンスではないかと評価しているのです。そ 二つ目の柱になっているかと思います。 こらあたりについて今日はお話ししたいということで す。 三つ目には、最近言われるところのニュー・パブリ ック・マネジメント(New Public Management)、 限られた時間ですので、ポイントだけお話ししたい すなわち、経営的な手法を中心とした行政運営を進め と思います。皆さんのお手元にいっているレジュメを ていく。そういう観点から行政のシステム、官僚機構 参照してください。 を再編成していく。そのようなことが国家構造全体の 最初に、これも羽田先生のほうからご指摘がありま 中でねらわれているわけでして、国立大学のエージェ したけれども、私どもは、今回の独立行政法人問題は ンシー化を含む独立行政法人の問題は、そういう全体 中央省庁再編の一環として、行政改革の一環として行 の中で出ているということがまず重要ではないかとい われているということですので、国の中央省庁改革が うことを申し上げておきたいと思います。 どういう意味をもっているかということについて押さ 次に、いわゆる独立行政法人とは何かということで えておくことが必要ではないかと思います。そこでこ すが、今日においてはすでに制定された通則法におけ こに4本柱の論理ということで、カギ括弧をしてあり る独立行政法人がどういうものであるかということを ますのは政府の文書はこのような論理で進めていると 押さえることが必要かと思います。わが国における独 いう趣旨です。 立行政法人の導入に際して、しばしばイギリスのエー 「政治主導の確立」「縦割り行政からの脱皮」「透 ジェンシーが例に挙げられますので、そのエージェン 明化・自己責任化」を図る、「行政のスリム化・効率 シーについて若干コメントをしておきたいと思いま 化」を図るという柱の下にさまざまな組織改編が対策 す。 として用意されております。しかし、それらの中央省 このエージェンシーはサッチャー政権のとき、1 9 8 8 庁の改革のみならず、これまたご承知のように地方分 年に政府における管理の改善、「ネクスト:ステップ 権一括法案に示されるところの地方分権改革も同じよ ス」という報告書が出されたわけですけれども、この うなねらいをもっていると思うのですが、私どもは、 報告書に基づいて設置されるようになったわけです。 これらの諸改革は日本全体の統治構造、国家の改造を 政府の垂直的分割、明確な職務の定義、目標の設定と ねらっている。新自由主義的な国家改造をねらった大 達成度の測定、そして達成に対する明確で個人的な責 改革であるというふうに見ております。特にエージェ 任、そして権限や財源を委任することによって自由の ンシーとの関係では、国が果たすべき役割を重点的な 拡大をしていく。それらを通じて行政の「スリム化」 ものとして、行政の簡素化・効率化を基本目的として、 「効率化」「透明性」「質の向上」をめざしていくと 行政事務の大胆な減量・アウトソーシングを図ること いうようなことをねらいとするとともに、市場原理を によって国家行政組織を組み替えていく。このように 基本としたところの「市場化テスト」、あるいは「市 見ることができるかと思います。 民憲章」の仕組みとリンクしているわけです。 最初の「国が果たすべき役割を重点的なものとする」 この「市場化テスト」というのは、できるだけ行政 というのは、セントラル・ガバメントは今日における 責任については見直して、民営化できるものは民営化 国際化の中で国際的な課題に純化して対応できる総合 する。そして民営化できずに残るものについても、そ −2 8− のサービスを提供するに際しては行政組織と民間企業 するわけですし、組織としての評価、あるいは個人の を競争させて、入札によってその質を確保した上で、 仕事の評価と言われるものが、システムとして導入さ できるだけ効率的にやれるところを選んでいく。その れるわけですから、個人的な目標の達成ということに ような市場化テストと、ニュー・パブリック・マネジ 走りがちで、公共的な価値を考慮せず、効率性を重視 メントの理論と結びついているということがイギリス する傾向になっているのではないか。そのような問題 のエージェンシーの特色です。 などが指摘されているところです。 制度的な枠組みとしては「政策形成」と「事業(サ わが国の独立行政法人通則法について、ここでは通 ービス)の実施」を分離する。これらは日本の場合の 則法の順に沿ってその内容を書いておきましたけれど 独立行政法人もそうです。高級官僚においてはもっぱ も、問題点を指摘するということで、いくつか申し上 ら政策形成に専念できるように、実施部門は分離する げておきたいと思います。 ということですけれども、イギリスのエージェンシー 第1には、通則法と個別法の関係であります。国大 は独立行政法人というよりは実施庁ないし事業庁とい 協第1常置委員会の中間報告は、少なくとも独立行政 うふうに言っていいわけです。今回のわが国における 法人通則法を見る限りではそのままでは国立大学に適 改革のところでも法人格をもたない実施庁というのが 用することは困難であるから、特例法でいかなければ あるわけですが、むしろそれに当たるわけです。つま いけない、修正をしなければいけないというようなこ り行政の内部組織の一つであるというのがイギリスの となのです。しかし一般に、通則法と特例法の関係に エージェンシーの特色です。したがって職員は公務員 ついてですが、通則法というのは制度の全体の枠組み、 であるということになります。今日、イギリスにおけ 根幹を定めているわけですけれども、それらすべてに る約4分の3以上がすでにエージェンシーの職員であ わたって特例的な扱いをするということはありえない るというぐらいにエージェンシーが増えているという ことです。公務員法があって、教育公務員特例法とい のが実情です。 うように、ある部分だけの修正、特例的なものはあり その管理運用における特色は、エージェンシーのト 得るわけです。通則法が存在する限りは、個別法であ ップは任期付きで公募して確保する。そしてその人の れ、特例法であれ、やはり通則法の枠組みに基本的に 責任で経営的な才覚を発揮してもらいながら、その事 は縛られる、基本的な枠組みの中で部分特例をすると 業・サービスを運営していくということです。そのエ いうことになるわけで、通則法の基本を逸脱する、通 ージェンシーの長は、担当大臣と枠組み協定書という 則法適用除外型ということにはならない。そういうの ものを作成して、その枠組み協定書に基づいて、いか が個別法ないし特例法の意味ではないかと思います。 にその経営的な手腕を発揮して成果をあげるか。これ そういう観点から、国大協の特例法の修正点を読むべ がエージェンシーの長に課された責任ということにな きということです。 ります。 何といっても独立行政法人のいちばんの特色は法人 イギリスのエージェンシーについてもいろいろ問題 格をもつということですけれども、何で法人格をもつ 点が指摘されています。たしかに公務員は減ったわけ 必要があるかということが定かではない。一応、法人 ですけれども、しかしイギリスの場合はさっきも申し 格をもつということは形式上、国とは別になるという 上げたようにエージェンシーの職員も公務員であるわ ことですから、独立性を高める、自立性を保障すると けです。ですからエージェンシー化したことによって いう意味を形式上はもち得ると思いますけれども、た 減ったということではなくて、エージェンシーを含む だ、国の関与というのは形式だけではなくて実質もか 行政組織全体の中で公務員が減らされて、スリム化、 かわってくるわけで、地方分権改革でもそうですけれ 効率化が、括弧付きですけれども達成されたというふ ども、スマートな国の関与のシステムが別途用意され うに言っていいのではないかということです。 るというようなところがあると思います。 それから、企画と実施を分離することによって、行 レジュメの1ページ、制度の概要の(3)役員・職 政の総合性というものが失われてくるのではないか。 員とか、(4)業務運営のところで、主務大臣が法人 また、そこに働く公務員は競争的な原理の中で仕事を の長、監事を任命するのみならず……、国立大学の場 −2 9− 合には評議会の定める選び方をするということが認め という議論になっています。その上で大学の特殊性、 られるようではありますけれども、業務運営に対する 特色を基本にして特例法に盛り込むべき修正内容とい 権力的・非権力的な関与が関係してくるということで うことでいくつか提言をしているわけですけれども、 す。業務方法書を作成して認可を受けなければならな その修正というのはほぼ通則法の全体にわたりかつ根 いとか、指示をするとか、こういうようなかたちで、 幹にかかわるのではないかと思います。したがって、 形式上法人化しても必要な関与の手段は用意されてい そのような特例法で修正させようとしている内容その るのです。 ものが自己矛盾を起こしている。あくまで通則法的な そうすると、現行国立大学設置法といろんな関係法 独立行政法人化は反対だというところの論議と、修正 律のところでは、学校教育法等の改正があって少し変 するところの部分修正というのが、部分修正にとどま わったところはありますけれども、少なくとも今まで らず、それを乗り越えているところがあるので、それ は文部大臣、主務大臣と国立学校との関係は、そうい 自身が論理的にたいへん矛盾した内容になっているよ う「指示」とかという関係ではなくて、国立大学設置 うに思います。 法においては「文部大臣が国立大学を所轄する」とい 二つ目には、これは独立行政法人だけの問題ではな うことで、非常にゆるやかな法律的な用語を使ってい くて、教育公務員特例法等のことになるわけですけれ たわけです。そういう現行の制度から比べると、この ども、大学の運営組織のところでは経営機能と教学機 通則法は、形式上は法人になったとしても、スマート 能を一体化して、評議会なるものが最高の審議機関で で効果的な関与の方法が、中期目標の設定等を含めて ある。これは言葉だけで言えばそれはそれでよろしい 用意されている。そこに大きな問題があるのではない かと思うのですけれども、私はこれまでの学問の自由 かと思います。 を前提とした大学の自治論を前提とするならば、最高 職員の身分についてですけれども、特定独立行政法 議決機関である評議会に経営と教学機能の一体化が集 人については国家公務員とするということで、国大協 中されるだけではなくて、学部・教授会というものを とか文部省も今のところ国家公務員と考えているよう どう考えるか、ここのところのとらえ方が争点になっ ですけれども、しかし今回の独立行政法人化は特に公 てくるのではないかと思います。全学的な評議会の役 務員の2 5%削減ということとかかわって急速に登場し 割と、教育・研究の特質ということを基本にした場合 てきたのではないかと思うのです。そうすると、こう には、それの運営的な機能と教学的な機能を押さえる いうふうに独立行政法人化した場合の国家公務員は総 基本組織が学部になるのではないか。その点がこの国 定員法の枠から外れるのですけれども、しかしこれも 大協の中間報告では、完全に抜け落ちているというよ 国民の側からすると身分は公務員ということですか うな気がします。 ら、まやかしのような気がするわけであります。 三つ目には、財政等の問題にかかわってくるわけで レジュメの7番目のところでは、独立行政法人の評 すけれども、運営交付金とそれぞれの個別大学におけ 価委員会を主務省に置くと同時に総務省にも置くこと る収入、それをトータルしたかたちでそれぞれの大学 になっています。そして国立大学の場合には別に第三 が財政運用をしていくということになるかと思うんで 者機関を置くということで、この評価の問題がたいへ すが、ここに提案されているような財政制度では、大 ん重要な論点になるのではないかと思います。 学間格差というものが、より一層拡大するのではない 以上のような通則法を前提にして、国立大学におい かという危惧をもっております。 てはどのようなかたちで独立行政法人化が考えられる したがって、全体的にまとめるならば、現行法上認 かということで、国大協第1常置委員会の中間報告に められている学問の自由・大学の自治を前提とし、か ついて私の思うところを二、三申し上げたいと思いま つそれを保障・拡充するということであれば、何も独 す。 立行政法人化通則法、あるいは特例法にしても、独立 一つは、国大協の案は、通則法に基づくエージェン シーには反対だから、通則法を修正ないし特例法化し 行政法人化をする合理的な、積極的な理由は示されて いないのです。 たかたちで考えるとしたらどういう形態があり得るか −3 0− あの藤田論文は、とにもかくにも法人格を与えるこ とが必要最小限度の要請であるというところから始ま 協の中間報告です。いろいろなこれからの政治的な流 っているわけです。ですから教育・研究機関である大 れの中でどう対応していいかということはたいへん難 学の運営という論議から説明されているのではなく しい課題で、その点は私もわからないところがあるの て、先に法人格を与えるというところから出発してい ですが、この中間報告の私なりの評価ということで、 る。そこのところに、いろいろ修正をしたところで、 いくつかの問題を申し上げて私の問題提起を終えさせ 問題がかなり残るのではないか。そういうものが国大 ていただきます。(拍手) 質疑・討論 シンポジウム 司会 三橋先生、どうも ありがとうございました。 この後、ちょっと休憩を挟 みたいと思いますが、その 前に意見ということではな くて、簡単な質問や確認が ありましたらどうぞ挙手を していただきたいと思いま す。どうぞ。 ○ イメージのところで 具体的に思い浮かばないの ですが、独立行政法人にい くのが合わせて2 5%という ことなのですけれども、た とえば1大学が独立行政法人に移行した場合、その職 ことになれば、いまの国立大学に勤める教職員、公務 員は結局総定員法の枠から外れてしまうということに 員はすべて、公務員ではあるけれども、総定員法から なるわけですね。そうなると、たとえば一大学の中で 外れるということだと思います。 ○ 仮にそうなった場合、国立大学だけで全公務員 学部だけ移すということもあり得るわけですか。 三橋 中間報告のところでは、いくつかのタイプが のうちの2 5%を対象にしているということですか。 例示されておりますけれども、この常置委員会の考え 三橋 いや、国立大学だけではなくて、郵政が民営 方は、大学を単位として1法人としていこう。全国の 化するとか2 5%のうちには、国立大学以外も含まれま 大学をひっくるめて、あるいは地理的な単位として1 す。 ○ 国立大学がすべて独立行政法人化した場合、か 法人としていくという、いろいろなものがあり得るし、 また国立大学すべてではなくて特定の大学だけが独立 なりの人数がおりますので、他省庁は、「国立大学が 行政法人になっていて、それ以外はそうでないとか、 やったので2 5%に達してしまった、うちは国家公務員 いろいろあるかと思います。しかし、新聞等の報道に のままでいい」という事態になるのではないかと思っ よれば、いま国大協とか、あるいは文部省の想定して たのですが、そういうことではないのでしょうか。 いるのは、一つの大学が1法人で、その先は、基本的 三橋 2 5%の目標は超過達成することに数字上はな には国立大学すべてがそういうかたちで個別法ないし ると思うのですけれども、だからといって他の省庁は 特例法を作るというようなことですから、一斉という 「それではいいよ」というようなことは必ずしもなら −3 1− ないのではないかというふうには思うのですけれど で展開しているのですが、そのへんが先ほどの通則法 も。 との関係でいうと、通則法を乗り越えるような表現と 司会 ほかに何かありますでしょうか。 も受け取れるんです。ここはどうなのでしょうか。 ○ 特例法の問題なのですけれども、いろんな問題 三橋 ちょっと説明が不十分だったところがあるか 点があるというお話がありました。しかし、果たして と思います。この国大協第1常置の中間報告の4ペー それが本当に可能性がどの程度あるのかということを ジの真ん中辺のところで(3)ですが、「立法の体系 お聞きしたいと思います。仮に今のままの通則法だと 的な形を考えると、通則法に附従するものとして個別 問題なので、特例法でいろいろ解決したいという、そ 法で大学独立行政法人についての個別規定を置くだけ のことについてもまだ問題があるというお話だったの では足りないことが明らかである」と述べています。 ですけれども、果たして特例法そのものを本当に前提 ここで言う個別法というのは、通則法と調和的という にしていいものなのか、どうなのか、どれぐらいの可 のでしょうか、もともとの通則法が想定している個別 能性があってそういうことが考えられるのか。難しい のエージェンシーの設置をというのが個別法というこ 問題だとは思うのですけれども、できたらご意見をお とになるわけです。しかし、国大協は通則法という枠 伺いしたいのですが。 組みの中で大学の独立行政法人を考えるとたいへん問 三橋 可能性というのは、現実的にこれからどうい 題が多いから、それは考えないという考え方をとって うふうに状況が動いていくかというようなことでしょ いるわけです。よって、そういう個別法で個別規定を うか。 置くだけでは足りないことは明らかであるということ ○ 特例法みたいなものを果たして行革会議そのも になるはずなのです。 のが認めて国がそういうところでやるかどうかという したがって、むしろ大学の理念や特質に照らして通 ことです。それがある程度前提みたいな話はされてい 則法の特例を定める「大学独立行政法人特例法」を設 るのですけれども、本当にそうなのでしょうかという 置するとか、あるいはそれとは別に、国立大学法を制 ことです。 定するということを言っています。ですから、たしか 三橋 私はこういうふうに思っています。まずは国 と切り離して、形式にしろ、法人格を別のものとして もたせたかたちで設置するということを、とりあえず 推進しようとする立場からすると、できるだけ文部省 のこれまでの大学における慣習、学長の選び方とか、 そういうものをとりあえず確保していく。そういう趣 旨で、特例法というようなかたちで……。つまり国大 協の常置委員会が言っている修正というのを文部省が 認めるかたちで決着をつけようとしているのではない かなというふうに思っています。この点はむしろ後で、 これからもう少し先の情勢がどういうふうに動くかと いうようなことと併せて、またご発言なりご意見を出 していただければと思います。 ○ 第一常置の中間報告でいきますと、特例法とい うことで、通則法との関係なんですが、通則法とは別 の法律をも考えているというようにも取れます。その あたりの考え方と見通しみたいなものは、どう評価さ れているか。たとえば、4ページ目の通則法に対する 関係で、そこまでの内容が要るのかということで、1 と2と分けて、さらにそれを受けて(3)という感じ −3 2− に特例法だけではなくて、まったく通則法と切り離し 三橋 大きくはいいのですけれども、ただ、特例法 たかたちでの国立大学法人法、国立大学法ですか、そ の特例の内容があまり大きくなると、通則法の範囲を ういうものを制定するということも提案しています。 こえることになるんじゃないかということがありま しかし、中間報告では、通則法の定める中期目標や評 す。 価制度など、いろんなシステムが登場するので、それ 司会 法の論理としてはおかしくなるし、もう一つ は通則法とは別の国立大学法ではなくて、やはり特例 言うと、政治の論理がそこに介入してくる可能性があ 法にすぎないのではないか。私はこのように私は読ん るということですね。ほかにいかがでしょうか。 ○ インターネットとかですでに話題になっている でいるという趣旨なのです。 司会 ちょっとよろしいですか。議論が非常に精密 ことなのですけれども、先週行われました全国の経理 なところに来ています。同じ法律の専門なので、こん 部課長会議の席上ですでに話題になっていることなの なおおざっぱな理解では三橋先生から「誤解を招く」 ですけれども、先週行われました全国の経理部課長会 議の席上で教官当り積算校費についての文書が配布さ れました。 その中で、これまでの当り校費、教官当り積算校費 および学生当り積算校費、これを根本的に変えて、教 官当り積算校費を、これで見ますと最低ランクのとこ ろになりまして、教官当り積算校費が1 1年度予算では 1 5 7 6億円が、教官研究基盤校費というかたちになりま して、その中の教官当積算費ということで3 4 1億、学 生当り積算校費は5 0 3億が3 2 6億ということになってい ます。ですから、おおざっぱに言いますと当り校費と して積算されるのは5分の1近くになる。学生当り積 算校費についても6割ぐらいになる。残りの分につい ては大学構成分等ということで、平成1 2年度の概算要 求によりますと、教官当積算分が3 4 1億、学生当積算 分が3 1 6億、大学構成分等という新たな項を作りまし て、これが1 4 5 6億です。実に、全体の当り校費と言わ れてきたものが、2 1 2 3億中1 4 5 6億、ザッと4分の3が、 ちょっと不明なかたちの大学構成分等というかたちで す。この積算校費もちょっとあいまいなままなのです と叱られそうなのですが、これからの議論を進める上 が、来年度の概算要求はもうすでにこういうかたちに の前提の理解として、おおざっぱに整理して、こうい されて、予算が来年度はこのかたちで執行されるとい う理解で議論を進めて大きくは外れないのかという点 うことです。 だけ確認したいと思います。 こういうふうな動きにつきまして、まだ詳細につい 簡単に言うと「通則法―個別法」という枠組みであ てはほとんど明らかにされていないのですけれども、 れば、これは「通則法―個別法」がセットになって大 これは文部省の事務的経費をなるべく少なくして、自 学のあり方を決めていくという方向性である。ところ 由裁量の分をそれだけ増やしたいのではないか。独立 が「通則法―特例法」であれば、特例法の規定の仕方 行政法人に向かう場合にも、ある意味では「アメとム によって通則法の枠組みというものを破って、別のも チ」に使われるのではないかというふうなことで非常 のを作る可能性もあり得るということに国大協は懸け に危惧しています。先週の金曜日の話で、インターネ ている。そういうふうに理解して議論を進めて大きく ットで出回ったのは今週の火曜日の話ですので、まだ 外れないというふうにまとめてよろしいでしょうか。 時期が早すぎるとは思うのですけれども、このあたり −3 3− についてトータル的に見てどうなのかというお考えを お聞かせいただけたらと思います。 司会 羽田先生、お願いします。 羽田 いまの話については今日はじめて聞かれたで しょうか。出てきている案について一応理解されてい る方はどのぐらいおられて、ほとんど理解していると いうことで意見を申し上げてよろしいですか。それに ついてOHPを一応持って来てはいるのですが、ご覧 になりたいという方にはそれを見ていただきたいと思 います。……もういいですか?(笑) ちょっと前に戻りますが、論点になった国大協案は 通則法をはみ出すのか、はみ出さないのかという点で 私なりの意見を言うと、1点だけはみ出しそうな部分 がある。それは何かというと、部局の重要事項を教授 会が審議するという文章がありますが、私はおそらく これは国立学校設置法の中に定められた、つまり教育 研究など内的事項に対する重要審議機関としての教授 会をはみ出した規定になっておって、通則法との関係 で矛盾はないけれども、そのところは通らないのでは ないのかというふうに思っている。おそらくそれを除 けばほとんど通則法の範囲に収まっていて、法人の長 ったら学科にとか、いろんなふうにやりますけれども、 や主務大臣に対する権限のプロセスにおいて大学が参 学部に行くのはとにかく5分の1になる。残った部分 加するという枠組みなので、これは乗るのではないか。 を大学全体で裁量で配布する校費にする。 はみ出す要素はないのではないか。そのように、いま 私は思っております。 これについて、文部省としてはもちろん特に意見は 言わずに、大学の自律性でやってほしいということで 司会 ありがとうございました。まだまだあると思 す。大学の自律的な知恵で予算を運用する。それから、 いますが、長くなりましたので、ここで休憩を挟みた この配分をめぐって、いろいろと努力する。競争的環 いと思います。1 0分強、休みを入れまして、4時1 5分 境を学内でもつくる。それから計画とかいろんな問題 から再開したいと思いますので、よろしくお願いしま に対して、非実験と実験の公平性を確保する。ですか す。 らこれは大学の中の議論ということですけれども、い 〈休憩〉 ろんなそういうメリットが挙げられているということ 羽田 ……現行の積算校費というのは非実験、実験 です。 と、あと修士、博士、それから学科目、それを含めて 金額については、学生等積算校費はこんど文科単位 総枠なのですが、変えたときに、今後、各大学学部に に移しますので減ります。この分が多少大学分の基盤 行く基本的なものと、それ以外と分けて総枠は変えな に回っているということです。 いでというのが来年度からの仕組みということなので この点で、たぶん二つほどコメントができると思い す。これが教育研究基盤校費ということで現行のもの ます。一つは、2年ほど前に行革会議で大学の法人化 を全部一つにする。修士の非実験というふうに聞いて についてつば競り合いがあったときに、国大協の第6 おります。これですと実験の博士に比べると、およそ 常置委員会ではそれに対して反対論をやる一方、大学 5分の1に減る。だから理系の大学院で博士課程をも 内の積算校費の配分方式を変更するというかたちで活 っているところでは、今までですと校費が来て、大学 性化して、これで頑張るからという対応策を考えてお で何パーセントかプールして学部に分ける。学部に行 りました。しかし、不幸にしてか、幸いにしてか、ま −3 4− とまらなかったということで、いったん消えた案に先 例があるということでございます。 おおむねよろしいかと思いますので、全体的な討論 ということで、現在の大学の現状と、どのようにわれ もう一つは、なぜこういう方式をしなければいけな われの側から対抗軸を作っていくかというお話を、あ いかということです。これは私の推測なのですが、来 と1時間強ですけれども、この時間を使って討論に入 年から第三者評価機関が発足します。これは教育評価 りたいと思います。 を中心とする体制である。ここはよく念頭に置いてい さて、独立行政法人という問題については、よく言 ただきたいと思うんですが、研究評価とそれに伴う資 われる話ですけれども、漠然とした幻想がある。つま 源配分は、いろんなシステムが現に動いているわけで りもっとよくなるかもしれない。よくよく考えてみま す。科学研究費もすでに1 4 0 0億になっているというこ すと、「独立行政法人」というのは三つの言葉から成 とで、これは十分に財源がある。それで、来年発足す り立っておりまして、そのどれがその幻を生むのだろ る大学評価機関ができて、その教育に基づく評価結果 うと考えてみたことがあります。そうしますと、「法 は資源配分に連動させたいというのが大学審議会の答 人」でないことは間違いない。どうも「行政」でもな 申の中身でもありますが、その財源がどこにもないと さそうだ。そうすると結局残るのは「独立」 であって、 いう現実があります。したがって、もしそういう資源 この部分が、どうやらその幻想の源泉ではないかとい 配分をやるとすれば、これはどこかからもって来なけ うふうに思ったことがあります。 ればいけないので、この基盤研究校費は、来年度につ 実際のところ、いまの一つの論点としてお二方から いては現行を変えないと言っていますけれども、おそ 出されたのが主務官庁、主務大臣の関与、あるいは評 らく第三者評価が進んでくれば、絶対評価で教育に一 価というものを通じての、カッコ付きのスマートな関 生懸命にとりくんでいる大学に対しては、手当てが基 与というのが一つの論点になったかと思います。そう 盤研究校費が多く配分されるというふうなプロセスを いったあたりから、結局のところはこの基調報告の中 おそらくたどるだろう。 で公教育、あるいは学術研究というものを基軸として 私も、通則法の運営交付金という制度が出てきたと 大学のあり方を考えていこうという方向性の際にも、 きに、大学の中でいろいろと研究会をしたときに、や その独立性をどのように担保するのかというのが重要 はり大学が安定的に運営するためには交付金の支出を な論点であって、それが対抗軸になるのではないかと 一定安定的にするということが必要であると思いまし いうことで、基調報告で先ほど教文部長から申し上げ た。同時にこれだけではインセンティブが動かないか たという構成になっております。それらについて、先 ら、積み上げ分の交付金が必要である。こういうふう ほどの基調報告を含めて、いまのパネリストのお二方 な2段構えの論理を考えたのですが、形態から言えば の報告に対して、まずは質問からお願いしたい。ある こんなものになる。したがって今後どういうふうにこ いは意見を求めたいということでも結構です。 の運営交付金、校費の上積み分を拡張していくかが大 ○ 法律的なことで一つ質問したいことがありま 切です。それから学内においては裁量といっても自由 す。国家公務員型、非国家公務員型というふうに身分 裁量ではございませんから、どういうポリシーをもっ があるのですが、法律の素人から見て非常にその違い てこの校費を配分するかということの議論が必要にな がわかりにくいのですけれども、現行の国家公務員と ってくる。 いうのは、国家公務員型の法人の職員と、非国家公務 評価はあるのですが、一応、内容から言えばそうい 員型の法人の職員というので法律的に見て身分的に最 うことです。またもし議論が必要であれば質問に関連 も違う点はどういうところにあるのか。このことを教 してお話ししていきたいと思います。 えていただきたいと思います。 司会 いまかなり具体的な問題でご説明をいただい 司会 関連したご質問がもしありましたら……。 たのですが、議論としてはもう一度全体の討論のほう に戻って、その中でまたこういう問題についてもいく これは、いかがでしょうか、三橋先生からお答えい ただいたほうがよろしいかと思いますが。 三橋 こ承知のように現行の国家公務員法におきま つか論点が出てきたところで改めて議論をしたいと考 えますが、いかがでしょうか。 しては、特に労働基本権についての制限、争議行為の −3 5− 禁止規定とかいうのがございます。わが国における公 こういう議論をやっているようでございます。 務員法は公務を担当するというところを強調して、労 それで教員の場合に非公務員か公務員かで、問題は 働者性と市民性に特殊な規律をしている。ただ現業関 さっき三橋先生がおっしゃったとおりでありますが、 係のほうは、民間に近いかたちになっております。で 兼業規定の緩和等で見ると、非公務員のほうがはるか すから公務員型と、公務員でないという場合には、民 に弾力性がある。ただ、これを誤解して兼業は自由だ 間的な労働関係になるというところに大きな違いがあ というふうに考えている方もいるんですが、民間企業 って、独立行政法人のところでは何を公務員型にして、 であってもアルバイト自由ということはありえないん 何をそうでないのにするか、現在の八十いくつの事務 で、何らかの規制はつく。しかしそれでも法人の長の ・事業の独立行政法人化のなかで印をつけているとい 認可によって自由に動けるので、実際に顧問会議の中 うのでしょうか、一応にこれは公務員型で、これは民 でも一橋大学の中谷教授の事例も出ておりますので、 間型だというふうに仕分けはしています。しかし、そ たぶん活性化という点でいえば非公務員型のほうがお の基準がどうしてだということになると、私もちょっ そらくやりやすくなるという力は働くだろう。したが とよくわからないところがあります。 って、そのときに国家公務員型でないのに教育公務員 羽田 端的に言うと、もし公務員型の独立行政法人 特例法のようなかたちでの身分保障が継続するのかと ということになれば、ちょうど国鉄が民営化されてあ いう問題があって、私の理解では、国家公務員だから あいうかたちになったのと、よく似たかたちになる。 大学教員のさまざまな人事自主権が発生するのではな ただ問題は、非公務員型と公務員型の区別というのが くて、教育公務員特例法で保障されているだけの話で 法律の用語の中では、その業務の停滞が特に国民生活 す。 に支障を来すというわけで、「特に」というのがどの これはもともと国家公務員法はGHQによって持ち 程度かよくわからない。こういう部分が理解できませ 込まれた法案で、昭和2 2年の時点ではGHQは、大学 ん。 の教員の教授会人事主権を認めるつもりはありません 三橋 そうですね。それともう一つは、大学の場合 でしたが、日本側の抵抗で教育公務員特例法ができた には、教育公務員の場合には「教育公務員特例法」と のですね。そういう関係から言うと、おそらく国立大 いうのがあるんです。ですから一つは大学の自治的な、 学の教員の人事自主権については教育公務員特例法に あるいは自律的なものを制度的に保障していくという 依らず、独立行政法人特例法によってできるという法 際は、その職員の身分保障というのがかかわってくる 形態もあり得るのではないかと思っております。 と思います。これもご承知かと思いますけれども、司 司会 ありがとうございました。いずれにしても非 法の独立、裁判官の独立と言った場合に職権における 公務員と公務員の区分けがあいまいである、またしっ 独立と身分保障というのがセットになっているという かりした筋がないというあたりが、今日も指摘した、 ところがあって、国立大学が行政法人化した場合は一 まず数合わせ、減量化ということの一つの根拠ではな 応公務員型になり、かつ教育公務員特例法はそのまま いかと思います。ほかにご質問等ありましたら。 ○ 元に戻るかもしれませんけれども、基本的なこ 生かす、残すべきであるというのが国大協の中間報告 の意見ではあるということです。 となので、そこをどういうふうにお考えなのかという 羽田 たぶんまだ国立大学の教職員を含めて非公務 ことをお聞きしたいと思います。要するに今の局面で 員か公務員かという決定はされていないのだと思いま は、特例法の線で、国大協の常置委員会はいっている。 す。それから行革会議の顧問会議の議論を見ていると、 羽田さんの説明でも、いま常置委員会で出ているのは、 財界の委員の方はエージェンシー、独立行政法人は原 特例法の中で教授会の権限を除いて回復できるという 則非公務員型であって、しかし当然労働争議等が発生 こともありましたし、三橋さんの報告でも、はっきり するので、そういうときに問題があるような法人につ は言われませんでしたけれども、基本的には国大協の いては公務員型という。だから、「原則・非公務員、 方向は特例法路線ではないかということだと思いま 例外・公務員」という理解を示し、かつ事務局のほう す。私たちが北海道で議論してきたのは、特例法とい の説明は「そんなことはない」ということで、どうも えども基本的には通則法を前提にしているのではない −3 6− か。もっと言えば通則法の根幹、総務省と文部省によ る大学の自治と大学のもっているミッションとの関係 る評価、それから中期目標・中期計画による統制、そ をどうつかむかだと思うんです。私立大学では目的は れから企業会計原則、こういったものはいくら特例法 法人の中で自由に決められますが、国が設置して、か にどういう内容を盛ろうとも基本的に変わらないんじ つ今回のように大きな枠組みの中で出てきているとき ゃないか。そのように議論してきたのですけれども、 に、国の財政は基本的には国民に対する説明責任を負 果たして特例法でわれわれ大学側が要求しているよう ってるのに、大学の自治の論理だけで特例法をどうし な大学の独立性とか自治とか、そういったことが守れ ようかという議論になると、おそらく説得力のない関 るようになるのかということがいちばん根幹の、基本 係になってくると思うんです。むしろ大学の自治なり 的な問題だと思うんです。 学問の自由というなかで大学のもっている社会的使命 それでは、いったい特例法ということで、どの程度 をいかに達成していくかという議論をくみ出したとき のことまでができるのかというあたりのことは、まだ に、どこまで特例法の中身が変わっていくかという議 明確なことは何もないわけで、無理な質問かもしれま 論ではないでしょうか。どちらにしても、事態がここ せんが、私たちが素人として法律を読んで考える限り まで具体的に進展してくれば、そこらへんのところで は、特例法といえども、通則法との関係が出てくれば、 1 0 0%大学の自治を守れるのかと言われたら、それは その根幹を崩すことはできないのではないか。いま焦 「いや、守れません」と言うほかないですね。大学の 点となっている特例法路線について、われわれがどう 研究者がこういう教育をやりたい、こういうふうにし いう立場をとるかということが基本的な問題になって てやりたい、学部も増やしたいとか、そういうことが いるのではないかと思うので、その点についてお二人 できるかといったら、現行でもできないわけですから、 の意見をお聞きしたいと思います。 それは難しいだろうと思います。実際に目標設定なり 司会 どうもありがとうございました。いまの問題 計画で具体化するし、さっき申し上げたように、行政 に関連すると思われる質問がありましたらまず先に受 効率の観点で今よりはるかにハードなものが来ること けたいと思いますが、どうでしょうか。 は間違いないと思います。それを「大学の自治を守る この点は先ほど、休憩前にお二方の間で少し見解が ために」ということで議論を組んでも難しいのではな 食い違うようなところを印象としてもっております。 いでしょうか。いいかどうかというのは価値観にもか こんどは羽田先生から先にお話しいただけませんか。 かわるのですけれども、今の局面で何とかまったく外 羽田 いまの内容はちょっと微妙な点を含んでいる 部から縛られない法律を作ってというのは、ない話で のです。つまり大学の自治・学問の自由を保全すると はないかと思います。それを「大学の自治を守るため いう前提の下に特例法がどこまで守るのかと言われた に」ということで議論を組んでも難しいのではないで ら、それは目標も主務大臣が決める、それで計画も認 しょうか。まったく外部から縛られない法律を作って 可を受けるという枠組みが新たに登場しますので、こ というのは、ない話ではないかと思います。 れは現行よりは大学の自治や学問の自由が制約される 司会 いまの点は基調報告と関連しますのでちょっ のは、その意味では間違いないところです。国大協の と確認したいのですけれども、基調報告の趣旨という 案は文章はあまり上手ではないと私は思うのですが、 のは学術研究、特に基礎研究に重きを置いているわけ 読んでみればやはり現行の通則法の範囲内で、いかに ですね。その重要性というのは先ほど先生のお話にあ 大学の自主性と調和させるかという観点で貫かれてい りました。それともう一つは公教育、この概念自体が て、もう少し踏み込めるところはあると思いますが、 非常に広いのですけれども、それをわれわれの手でつ やはり大きなスキームとしては避けられないだろう。 くっていくという構造になっているわけです。 そこで問題は避けなければいけないというところで いま先生は、目標と手段ということをおっしゃった。 言ったときに、あくまでも大学の自治・学問の自由と ちょっと不正確かもしれませんが、そうおっしゃった いうところで言っていくと、むしろ逆に大学が自主的 と思いますけれども、そういうかたちでの議論という に目標をもたない、計画をもたないでやりたいという のはどうなのかなと……。 ようにだけ聞こえてきます。本当はそこで言われてい −3 7− 羽田 まさにそのところなのですね。いま補ってい ただいたと思うんですが、大学の自治のなかで国立大 だから立法論として特例法の枠組みの中では、もとも 学なり大学としてのミッションを達成するためにどう と国大協が考えているところの大学教育のありようと いう基礎研究なり活動をしていくか、教育をしていく いうのはうまく守れないのではないか。 か、たぶんそういう命題があって、その中で特例法の 今の局面では、もちろん、さまざまな諸状況の中で 中身、実際の目標の立て方が決まってくるだろうと思 次善の策ということで考えていると思うんです。しか います。そこで大学の自治が役割を果たすという局面 し特例法のような内容では、大学の自治なり、あるい があって、それは今の通則法の中にはまったくないに は教育・研究になじまないということをまずはっきり 等しい。それをどう取り込むかという、たぶん特例法 させておく必要があるのではないか。私はそのことを の枠だけの問題ですけれども、そういうことだと思い 強調したい。また、今だって私どもの大学で、という ます。 か、皆さんのところもそうですけれども、大学教育の ただ、報告の中でも申し上げましたけれども、目標 ありようというのは、国の科学技術政策とか教育政策 の立て方とか計画についてはもう少し踏み込んで提言 に規定されており、私どもが無視できないような財政 をする余地があるだろうと思っております。特に個別 的な誘導・指導もあるわけです。また、今だってもち 大学のプランニングの問題だけで、個別大学と文部省、 ろんそれぞれの大学においてそれぞれの大学の理念に 主務官庁とのやり取りだけで済むのか。もう少し中間 即した自らの長期目標なり中間目標なりをもってやっ 項として大学全体のあり方を押さえるような枠組みは ていかなければいけないし、その点について大学にい ないのか。これも個別大学の自治を越えた大学連合の るわれわれ自身の政策展開能力にいろいろ問題があっ 自治というふうに一般的には言われるのですけれど たとは思います。しかしこういう新しいかたちで、主 も、そういうシステムがこの中に盛り込めないかとか、 務大臣が中期目標を指示するとか設定するとかという まだいろんな論点の余地はあるかと思っております。 システムはたいへん問題です。国家と大学との適切な 司会 どうもありがとうございました。では三橋先 関係についてですが、学問の自由、大学の自治を一方 生お願いします。 においては前提とし、他方においては教育を受ける権 三橋 私は、国大協が通則法に基づく独立行政法人 利の保障という観点からすると、国は教育・研究条件 に反対する趣旨は、国大協なりの大学の自治というも を整備していく責任をもっているわけです。大学と国 のの尊重があって、通則法では大学の自治とか、ある との適切な関係というのは当然必要なのですが、それ いは教育・研究の特質を損なうからだめだということ を通則法が定めるようなかたちで明確にする必要はな で反対の線を出したと思うんです。一方においてそう いのではないか。通則法によれば現行よりも法的には いう主張をしつつ、それではその通則法のある部分を 関与が強まるわけであり、また特例法であれ、関与は 特例的に修正することによって国大協自身が批判して 強まる。そういう法形式は大学になじまなくて、むし いた、あるいは恐れていたものをなくすことができる ろ両者の関係をそれぞれの主体性を基本にしながら適 かというふうに考えると、特例法といえどもやはり通 切な関係として形成していく以外にないのではないか 則法があって、そういう意味では羽田先生と同じです と思います。 けれども、その枠の中で特例法というものを考えてい る。 現局面でどういうふうに対応するかというご質問に なってくると、そこのところは私もいろいろ迷ってい 第1段階で大学の自治のところがあるから、あるい るところです。 は教育・研究の特殊性ということから通則法には反対 司会 先生に予想屋をやれということは言いません だと言いつつ、結局その枠の中での特例法の修正をど ので(笑)ただ、おそらくいま三橋先生がおっしゃっ うするかという議論になっていて、そこが自己矛盾的 たのは、要するに、一方に非常に強度の監督の下に置 ではないかというふうに思っているんです。結局、通 かれて、いわば操り人形のようにされる大学がある。 則法の枠を前提とする限り、特例的なかたちで、通則 もう一方ではいわば打ち捨てられた大学がある。その 法の枠組みをこえるのは無理である。まったく別のか 中間点にいちばん適切なものがあるんじゃないか。そ たちになるならば、あり得ると思うんですけれども。 れからもう一つは、その中でわれわれ自身が目標なり −3 8− を作っていく。この点をさっき羽田先生はミッション 上正治氏の九州大学学長事務取扱事件で判例で確定す という言い方をされましたけれども、これは対象と、 るまでは、非常に不安定なのですね。実態とすれば、 それからその発生する過程ということで競争の意識が 文部大臣は大学管理機関の決めた学長候補者を発令し あると思いますが、結局はそこにわれわれが自主的に、 てきておりますけれども、学生部長の発令とか、いろ 自発的にやっていくことが大事だ。そういう点では共 んなケースではやはり任命権を行使して延ばしたりと 通なのかなと思ったのですが、いかがでしょうか、い いう事例はあるんです。ですから2 4年かかって、ある まの論点にかかわらずどうぞ質問を……。 意味では恒例的に定着するんで、法律の条文の中に書 ○ いまの論点にかかわってですけれども、特例法 くから定着するとかしないとかというのとは別の次元 ができ、自治が守られ、主務大臣の圧力が極小化した で、長い期間かかって特例法と通則法のなじみ方が進 としても、こんなところからいくのではないかという 行するとうふうにむしろ考えるべきだろう。 ふうに、ちょっと危惧しております。というのは、外 ですから三橋先生のおっしゃることもたしかに懸念 部から資金をより受けやすい分野、あるいは教育課程 としてあるのですが、それは簡単に、法律が変わった としての、より社会人の受け入れ体制が大きくなりや から明日から文部大臣が全部裁量権を行使する、こん すい分野というものがあり、どのような分野に重点を なことはありえない。これはまさに大学人の識見と力 置くかということは各大学の自治に任される。しかも 量が問われている事柄でもあるというふうに思ってお そこで得た資金は自由に使用することができる。この ります。 ように自由化されるということそれ自身が、われわれ それからお金の問題なのですが行政法人になったら がよほど禁欲的でなければ、大学が自治の範囲の中で 強いところと弱いところが出てくるのはあたりまえの そのような分野を大きくして、そうでない分野をスク 話です。基礎科学がつぶれる、休耕田ができるという ラップする可能性が非常にあるのではないだろうか。 のはわかっているわけなので、各大学の自治において これは自治の論点とか、あるいは特例法がいかに強 大学の中で学問を保全するシステムを作ることが重要 くなったとしても、自由化されるということによって になってきます。どうしても大学に必要な研究分野は 生じざるをえない問題で、これに関してはいかなる措 ありますから。それで、オーバーヘッドを体系的にど 置も入り切らないと思うんです。 う作るか。それから、お金を取ってきたときに、取っ 司会 このような危惧はかなり関連性があるんじゃ てこれない分野にどう回すか。具体論としてつくらね ないかと思います。たとえば維持経費とか、メンテナ ばなりません。しかしこれもなかなかしんどいわけで ンスの経費とか、そういうものが出てこなくなるんじ すね。「何で自分で稼げないところにカネをやってる ゃないかとか、そういうこともあるかと思いますから。 んだ」(笑)、こういう話が出るでしょう。しかしこ 羽田 二つ問題があって、一つはさっきの特例法の れは学問研究というのはそういうものじゃないという 話なんですが、現行で私が勉強したことがあるのは教 ことで議論せざるをえない。 育公務員特例法だけですけれども、この法律もさっき しかし個々の大学の中でこういう議論をして、それ 申し上げましたように簡単にできたわけではありませ で支持を得られなかったら、世の中に言ったって通用 ん。国家公務員法が4 7年にできて、特例法ができたの するはずがないと思うんですね。だから大学の枠の中 は4 9年ですから、その間、GHQと文部省の間にはか でこれからどういう議論ができるのか。それから社会 なりコンフリクトがあったわけです。それで国公法の 全体の中で独立行政法人の形態の中で起きてくる弊害 原理からいけば、基本的に文部大臣が国立大学の長を をどういうふうに是正するか。今日の朝日新聞も非常 任命するというシステムになるわけで、実際に任命権 にいいバランスのとれた記事だったと思うんですが、 もそうなっているんですが、実際の発動からいうと、 問題の指摘がすべて「独立行政法人はいかん」という 大学の中で決めたことでその人間を学長に任命する。 論調にはならないわけです。ここは大学人の議論とい だから現行でも“学長候補者”を決めるのであって、 うのは細かな対応の仕方が大学の中でも必要だし、全 国立大学では学長を決めてはおりませんね。 体に対しても必要ではないかという気はしておりま この関係が安定的になるのは、おそらく1 9 7 3年の井 す。 −3 9− 司会 どうもありがとうございました 営費が分かれている。どのぐらい教育研究費にお金を ほかにどなたかご意見はありませんでしょうか。質 使っているかということが一目瞭然で出る仕組みにな 問にとどまらず、意見でも結構ですし、あるいは私の っているのですね。 大学では、単組では、こういう取り組みをやってつな いま北海道大学の方がおっしゃっているのはまった げていこうと考えているという紹介でも構いません。 くそのとおりだと思うんですが、逆に立ち返ってみた もちろんこれは明日からの分科会でも結構なのです ときに、先生方は本当にご自分の大学でどのくらい自 が、ありませんでしょうか。 分たちのお金が研究費に充てられており、それに無駄 ○ いまの羽田先生の最後のところのお話について がないかということを論証できるのか、逆にこういう お聞きします。第二の問題についての考え方の問題 問題でもある。企業の話はイメージ的にはそのとおり で、特に大学に対しての国民全体の関連です。要する なのですが、理屈から言えば企業会計原則が適用され に大学の中で努力をするという場合、具体例のところ ているので株主総会においては財務は公開されてい に関して言った場合に、なぜ国立大学が現在まで存在 る。国民あるいは株主はそれを見て投資行動としてど してきて、今後についてもその必要があるかというこ の会社がいいかということを判断できるわけですね。 とに関しての財政的な保障の必要性の部分についての では大学は逆にそういう情報を公開していて、その大 われわれの中での議論の深め方と、大学関係者以外の 学で無駄なく研究し、活動しておるとか、そういうこ 国民全体にも理解してもらう。そこのところが必要で とが言えるのかという問題として出てくるわけであり はないか。そうでないと、単純な言い方なのですけれ ます。一般論としてはおそらく効率化ということだけ ども、民間でこれだけ企業努力なり、いろいろ努力さ ではない。こんどはそこの部分が各大学の財政が全部 れているのだから、大学でもそうあってしかるべきだ 公開されていく。ここの問題が出てくるので、そこを ろう。そういった感じの対処の仕方、そのへんのとこ どういうふうにやっていくかではないだろうかと思っ ろについての訴え方というか、どう考えるべきかとい ています。 った点についてぜひお教えいただければと思います。 いま大学評価とか自己点検が盛んですけれども、い 司会 まず羽田先生のほうから。もし補足がありま ちばん遅れているのが管理運営と財務の公開問題で したら三橋先生からもお願いします。 す。これは大学の教員だけの責任ではありません。事 羽田 企業会計原則を取り入れるという通則法にな 務局の責任でもあり、文部省の責任でもあると思うん っておりまして、これはおかしいと私は思うんですね。 ですけれども、具体的に国からお金が来ながら、大学 私立大学の場合でも学校法人は企業会計原則を別に取 全体でどういうふうに運用されているか把握されない り入れておりません。学校法人会計基準というのを昭 状態で動いている。しかし行政法人になったらもうこ 和4 0年代に作りました。これは国が補助金を出すため れは許されないのですね。全部一本で出て行って、だ に作ったのですね。当時も企業会計原則はありました れでも見られるという状態になるということです。 けれども、これではやはり大学に適さないということ 三橋 羽田先生がお話しになった最後のところ、財 で、文部省が2年9カ月かけて学校法人の基準を作り 政の公開のことについてだけ少し申し上げておこうと ました。ですから、今でも実は私立大学は企業会計原 思います。ご承知のように国レベルで情報公開法が制 則を採用しているのは事業部だけであって、学校全体 定されて、再来年から実施になります。国大協の中で は学校法人会計基準を適用しています。企業会計原則 も情報公開法が施行されると大学も実施機関になると はもともとなじまないのです。 いうことで、いろいろ検討されてきたのですけれども、 ただ、そこで言っていることで一つ重要なのは、基 特に大学の中での文書管理が普通の行政官庁と異なる 本的にディスクロージャーだということです。情報公 ところがあります。大学には事務組織が管理するもの 開をして、どんなふうにお金が使われているかをこん のほか、共同研究とか、教官が公務として職務上作成 ど全部出すということなのです。これはいま放送学園 したり取得したのもあったり、あるいは学科会議会議 大学でもこれを使ってやっておりますけれども、その 録とかいろいろな文書があるのですけれども、そうい 中身を見ますと、基本的な費目は教育研究費と管理運 う文書管理をどうするかということもかかわってきま −4 0− す。いずれにしても大学はこんど制定された情報公開 うでは、「新自由主義的国家改造」という言葉が出て 法の下で実施機関になる。そうすると、今の話は大学 くるわけですけれども、もしそうだとすると、それが の中だけの公開の問題にとどまらなくなります。私ど 独立行政法人の本当のねらいだとすると、それはもう もは大学の中の一員であるにもかかわらず、大学の全 国家公務員型の教職員なんていうのは絶対にあり得る 体の予算というのはよくわからないのです。しかしこ はずがないというふうに単純に思ってしまうのです。 んどはシステムが変わって、もちろん行政運営上、何 いったいこれはだれがこういった政策を進めたいと思 か支障があれば不開示ということですけれども、それ っているかということと関係があると思うんですけれ はできるだけ限定的に解釈するということですから、 ども、政府の関係の人がそう思っているのだったらそ 少なくとも今までと違った状況になり、特に財政の公 ういうまやかしも効くのでしょうが、産業界とか国民 開の問題については大学の中でもどうするかというこ がそういう政策を進めたいと思っているのであれば、 とが問われているのではないかと思います。 そんな独立行政法人に国家公務員がくっついているな そのほか、一般論としてはわれわれ大学にいる者と んていうことはとうてい許されることではないと思う して自己点検をし、改革改善をしていかなければなら んです。そのへんはどういうふうになっているのかと ない問題はたくさんあると思うんです。その前提とし いうところが、素朴な疑問です。 ての公開はもちろんのこと、さらにわれわれ自身が自 それから、基調報告の中でもう一つ、どうしてこん らの教育・研究、あるいは運営を、自己点検して、そ なに管理をしたいのか、締めつけたいのか、その本当 こから改善課題を発見して自ら改革をしていく。それ のねらいは何なのか。この点は、いまの問題からいっ はなかなか大変なことです。責任の伴う自治能力と政 ても、行革とか減量するという事態そのものが本当の 策形成能力をどういうかたちで大学の中で作っていく ねらいではないのか。本気になってそういうことをや かということは、難問ですけれども、考えなければい っているのかどうか。基調報告の中では科学技術創造 けないということでしょう。それなしにはこの問題に 力路線というのが基調になる、法律的には科学基本法 も対抗できないというふうに思います。 が制定されているというような点が指摘されています ○ 「朝日」の論調については私も素人でよくわか けれども、そういうものをどうやって完結していくか りませんけれども、情報公開とか、大学がもっと開か ということがこの独立行政法人のいちばんのねらいで れた大学になるべきであるという中間部分があったの はないか。そのような話をうちの組合はしていたりす ですが、それと設置形態を変えなければいけないとい るわけですけれども、そのへんについてご意見をいた う因果関係がわからなかった。つまり、どうして行政 だきたいと思います。 法人にしなければいけないのか。国立大学のままでは、 司会 関連でございますか。 なぜできないのかという問題があるのではないかとい ○ 私は図書館職員ですけれども、この独立行政法 うことをです。 人化がもともと出てきた発想はこれは基調報告にもあ 名古屋大学はご存じのとおり松尾総長という、この あるように、公務員の2 5%削減というところにあるわ 問題では国大協でたいへん重要な役割をしておられる けで、そういうところからいくと、国家公務員型なの 方がいらっしゃいます。私たち組合としてもどういう かとか、あるいは非公務員型なのかとか、職員の身分 ふうに運動を進めていくか、今日のお話を汲んでいく がいったいどうなるのかということがもう一つよく見 と、大学に帰ってから総長と一緒に「どうやって特例 えないんですね。実際にいまの国立大学の下でも、2 5 法を作っていこうか」と組合と一緒に考えていかなけ %削減というのならば、実際の職員の立場から言えば、 ればいけないという話になってしまうので(笑)、そ 今までの定員削減計画の中で教員ではなく職員がその うならないように明日しっかり勉強したいと思いま ほとんどをひっかぶって削減されていった。大学改革 す。 の中で非常にたいへんな目に遭ってきている。さらに 非常に素朴な疑問なのですが、羽田先生のお書きに 2 5%削減ということならば、職員の半分以上が削減さ なった3ページで、要するに「独立行政法人の問題は れるのではないか、そういう危機意識がものすごくあ 効率的な減量」なのである。それから、三橋先生のほ るわけです。 −4 1− それから先ほど大教大のほうから質問されて羽田先 例法とかいろいろ研究していかなければならない。し 生がご説明になった校費の問題です。国立大学ではた かし、共通の基盤として私たちは、独立行政法人、あ くさんの定員外職員を抱えておるわけです。これは校 えて言えば設置形態を変えたい、この対抗軸を先生方 費でその人件費を賄っているわけですね。そうすると の知識も含めてやってきたというように思うわけで こういう形態になっていったときに、実際にその定員 す。そういう点で言いますと、国大協の中間報告とい 外職員のクビ切り、あるいは労働条件の改悪というと うのは整合性がまったくない。それはもう、用語を羅 ころにつながっていかないのかどうかという疑問が生 列しただけである。これは記者会見でも述べています じるわけです。このあたりのことについて何か考えて し、どの新聞でもそうなっている。したがってあそこ おられるところがあればお聞かせいただきたいと思い から特例法に国大協が入ったという具合には見られな ます。 い。 ○ 今回の国大協の案は通則法を越えるのではない ただ、国大協の基本的なスタンスは、明確になって かという一つの考えがあるというように見受けられた いるように、いまの政治の中で国立大学制度を維持す のですけれども、結論から申しますと、わが大学の例 る力はない。それが独立行政法人というものがこれか ですが、この国大協の案は通則法を越えているという ら大学人が頑張ってもどうしてもだめな場合に、それ 認識があるのではないかと思うわけです。それは今ま に対抗するための要求なり論点を整理しておかなけれ での例でいくと藤田論文、その後に文部省の案が報道 ばいけない。こういうのが基本的なスタンスで、ここ されて、それから東大の総長の記者会見があって、国 までもってきたのは全大教をはじめ私たちだと思うん 大協の案が出て、国大協の案に歩み寄ったという文部 です。それで藤田論文をつぶしながらやってきた。現 省の報道がされて、なおかつ国大協の委員会があって 在の局面はやはり、2 0日に文部省から出されるであろ 国大協の総会がある。そして今回がある。そうすると、 う、これも私たちの運動の中で非常に重要になってき この通則法に対する特例法というのが今までの藤田論 ますね。その出されたものがそれぞれの大学で検討さ 文から越えたものという理解をしていただろうと思い れていく。その場合に中間報告の要求を踏まえて、文 ます。 部省が出してくる。学長会議は、2 0日午前中、青少年 われわれの大学からも、そういう意見としてたくさ センターで1 0時からやりますけれども、その後に蓮實 ん上がっているのは、主にそういうものがあるわけで 会長が懇談会をやる。その後、たぶん各地区ごとに大 す。われわれの教授会から上がった数々の意見からい 学長を集めて意見の集約をやっていく。こういう流れ くと、今回国大協でこのように進めてきているものは、 であろうと思います。 今まで文部省から出されていたものを越えたというふ したがって、先ほど神戸大の方が言ったように、文 うに理解している。私は専門家ではないですから、そ 部省なり、あるいは国大協を含めて設置形態を変えよ の点で通則法を越えていないという展開を早くインタ うという議論じゃないですね。やはり2 5%という条項 ーネットでも出して、これを広めるということが非常 が入ってきている。ここをきちんと踏まえる。なおか に重要なのではないかと思っております。 つ、まだ闘いはあるわけで、ですから私は特例法でや 司会 いまのはご意見として承っておきます。先ほ むをえないんだ、ここらへんでやむをえないんだ、あ どお二方からは公務員の身分の問題と雇用の問題とい るいはそういう動きなんだ、したがって特例法でこう う点が出たのですが、いまの発言の要求はそういう関 いうのは確保できるとかではなくて、あくまでも独立 係でしょうか。 行政法人に反対するわれわれの対抗軸をかまえて、そ ○ はい。 こを深めるんだということで進むべきだろう。 司会 意見は承りました。 たしかに現在の政治状況から言えば何でもやるとい ○ 特例法をわれわれは前提にしたという流れがあ う状況ですけれども、しかしこの8月から9月1 3日の るので、基調報告とかで書いているように、独立行政 われわれの運動の中から見れば、そうとうそれなりに 法人設置形態は認めない、そういう立場を基本に据え 運動が進んでいると言えるわけで、特例法でやむをえ た上で、これに対していまなされている通則法とか特 ないんだと頭を垂れるんじゃなくて、やはり対峙する −4 2− んだ、その論理でやるんだということです。 ん。必要性はあるのかと言われれば、それは冒頭申し また後で高橋書記長に「言い過ぎだ」と言われるか もしれませんですけれども、ちょっと現場で頑張って ましたけれども、できた靴に足を入れるような話を今 しているというふうに言うほかはないんです。 いる一人から言えば、あと2日間あるんで、やっぱり ただ、国立大学でも改革ができるということには、 そういう気持ちをもってやっていきたい。非常に雑な 全面的には賛成しかねます。これは実際に国の財政一 発言ですけれども、そういう具合に思います。 つとってみても、私も財政の勉強をずっとしてきたの 司会 どうもありがとうございました。さっき雇用 ですが、なかなかそれは難しいのですね。単年度主義 の話が出てきたのですが、公務員の身分や雇用のお話 であれ、いろいろな財政運用のルールは、国会に対し というところに関連してお願いします。 て大蔵省を中心として、財政民主主義として国会に責 ○ 京都大学の定員外部会からやって来ました。雇 任をとっていくシステムの中で厳格な予算管理が絶え 用の問題で先ほど神戸大学の方のお話で、私たちは2 0 ず追及される。目的的にお金を使うよりは、法律に合 年、3 0年と継続雇用されて身分不安定のままに働いて わないとか、そういう点が厳しくされます。これは予 きましたので、今日は絶対にこの話で発言したいと思 算関係の職員の方は骨身にしみてよくおわかりだと思 ってやって来ました。 うんです。会計検査の中で若干、目的適合性とか、そ われわれは独立行政法人化のなかで何の議論もされ てないわけです。この中間報告の中でも、職員の身分 ういう議論もありますけれども、国立大学には制約が あるというのは、なかなか妙案が浮かばないのですね。 は正職員だけの中でしか報告されておりません。われ それはたぶん日本の国家行政システムが硬直的だか われは2 0年、3 0年、そして無念にも定員外のまま退職 ら、それを前提にする限り、思い切ってこれを壊さな していった仲間もいます。ぜひとも定員問題として検 いと柔軟にならないという関係になっているんだと思 討していただきたいということで今日は発言させてい います。 ただきたい。そういうことで勇気をもって発言してお ります。 独立行政法人の形態が不可避的だとは私は思いませ んけれども、他方、国立大学の運営システムの中でい もう一つ、今日ここに参加するに当たって私たちは ろんな可動性のある動きができるためには、それはそ 学習会を何回も重ねてきたのですけれども、京大の文 うとう思想改革が必要で、大蔵省も、行監も、人事院 学部の支部で学習した中で、支部長から、ぜひともこ もまとめてコロッと引っくり返らないと、なかなか難 れだけは言ってきてほしいということがあります。い しいだろう。たぶんそれで出てくるのがこういう形態 まの独法化の問題は政治的な問題と経済的な問題の大 なのかもしれないという面もあります。だから、あま 学の中での議論でしかない。教育・研究の中の問題で り「国立大学もできる」というふうにおっしゃられて 検討されているところでは全然ない。各大学が設置形 も、実はリアリティーがないのではないかという感じ 態の検討委員会の会合をしているけれども、次の手を がしております。 考える由として検討しているだけで、教育の原点とか、 それから効率化のための独立行政法人化というお話 公の教育をどうするかというところの論点が欠けてい で、これは効率化の定義にもよりますけれども、費用 る。このことを、ぜひとも強調して言ってきてほしい と効果の関係でいけば、産出効果が同じならば費用を といわれてきました。以上二点について発言させてい 削れば効率化であり、費用が同じなら成果が出るのが ただきました。 効率化ですから、これは両方あるだろう。削るだけの 司会 ありがとうございました。ここらでちょっと 話ではなくて、生産的な分野にお金を投資して研究グ 一回切りまして、羽田先生と三橋先生に、さっき疑問 ループの水準を上げていくというのはどこの世界でや がが出されましたので、お答え願いたいと思います。 ることでありまして、単に削る話だけではないだろう。 羽田 私がお答えできるのは三つほどだと思いま す。一つは、なぜエージェンシーに、独立行政法人に ただ、財界の委員の方はわりと削るほうに直結します けれども、それほど単純ではない。 しなければいけないのかがわからないというご質問に ただ、もういっぺん言っておけば、いま全体として 対して、私も正直に言うと、本当にそれはわかりませ 日本の研究者は潤っているんですね。科学技術基本法 −4 3− ができて5カ年計画で進行しておりますから、おそら えておく必要もあるのではないか。 く工学系の方なんかは今ほど金が来る時期はないとい さっき反対論をおっしゃった方がいたのですが、わ うふうに思っていらっしゃるのではないでしょうか。 たしはこのシンポジウムには別に反対・賛成を言うた これがもうじき効果が切れてくるわけです。日本の研 めに呼ばれたのではないと思っておりますけれども、 究費の構造というのはGNP比で見ると3%近くて、 国立大学でよいというのは一面では厳格な定員管理の 先進国ではけっこう大きいのですが、産業界の負担割 中にあって定員外の定員化については非常に制約があ 合が非常に高いという構造をもっているわけです。 るという、この枠も同時に設置形態変更をしないとい たとえばアメリカの場合には産業と政府の研究費の う主張ですね。今のなかで単純に言えば、さっきの反 比率は2対1ですが、日本では3対1なのですね。こ 対論はそういう話になるんですね。これは全体的な枠 の構造を変えられるかといったらなかなか変えられな 組みをどういうふうに押さえていくかという点では両 いんで、産業界からお金をどういうふうに引き込んで 方見ておいたほうがいいのではないかと思っておりま くるかという話に、科学技術計画が終わった段階で、 す。 司会 どうもありがとうございました。では三橋先 ならざるをえない。これは長期的な財源の見直しの関 係から見ましても、そういう話を引き込まざるをえま 生、お願いします。 三橋 議論の一つの重要な問題としてご意見もあり せん。 念のために言えば、いま日本の政府財政で研究費は ましたが、教育の公共性、大学・高等教育の公共性と 3兆円ですが、産業界は9兆3 0 0 0億出している。アメ いうものをどう考えていくかということが確かにたい リカは全部含めて3 0兆ですね。政府が1 0兆、産業界が へん重要だと思います。私どもの法律的な観点からす 2 0兆という2対1の比率で、産業界から大学におよそ ると、やや抽象的ですけれども、憲法が保障している 2 8 1 6億円出ている。日本は7 0 3億円ということです。 教育を受ける権利と、他方においては教育の自由、す そこらへんの比率が1%でも変われば、1 0 0億単位で なわち社会権的なものと自由権的なものが大学という お金が入ってくる。ここらへんに誘導するためには、 高等教育行政の中で、より保障される、実現されると いまの国立大学の煩雑なシステムの中では受け皿にな いうことだろうと思います。そして、そのような大学 り切れない。ですから教員も動けない。そのあたり、 教育政策というのを決めるプロセスですけれども、そ これは2 1世紀を日本がどう生きるかというのは、産業 ういう国の教育の国民の教育のあり方は国民が決める が特にありませんから、やはり高度化でいくしかない ということです。これは国民主権原理からして当然の でしょう。その時に国立大学の活性化というのは、こ ことだと思います。 れはかなりウエートが高い、それが入って来ているの 国民が決めるという場合の手続きは、国の教育政策 は間違いございません。逆にそういう枠の中で基礎科 を国民代表機関である国会等で議論をする。そういう 学がどういうふうに生き延びるかという話になるかも 意味では、わが国における大学教育にあり方、あるい しれません。 は大学政策をどこまで国民的なかたちで民主的に、よ 三つ目は定員外職員の問題です。これも私が非常に り公共的な内容とするための議論ができているかとい 気にしているのは、さっき企業会計で公開されるとい うと、そこができていないところにたいへん大きな問 う話が出ましたけれども、現在でも定員外職員の採用 題があって、したがって、必ずしも国民的な教育政策 については厳しい制約がかっておりますが、会計上開 が展開されているわけではないと思います。 けて見たときに、定員外職員の採用というのはたぶん たとえば教育の機会均等ということでは、これだけ 不効率として映ってくるのだろうと思うんですね。そ 国立大学の授業料が上がったこと一つをとっても、国 れで、そこから先がよくわからないんですが、さっき 際的比較をしても、たいへん問題だと思います。そう 定員外職員の方の本当に痛切なお話がありましたけれ いう教育政策に、国民の意思の反映がどこまでなされ ども、独立行政法人になったときに実は逆に国家公務 ているかが疑問であるにもかかわらず、次から次へと 員法の制約を離れて自由に雇用できる環境ができる可 大学審なり文部省は教育政策を出してきます。文部省 能性も、ある程度あるんです。これもやはりもっと考 による教育政策の実施ということでは、長年における −4 4− 大学の自治の歴史の中で、なかなか大学人が言うこと いるのではないかと思います。公務員の範囲をどうい を聞かなかったことがあると思います。大学にはちょ うふうに数えるかということはありますし、それぞれ っと経営努力の欠けるところもあるかもしれないけれ の公務員において必要な仕事を効率的にやらなければ ども、上からのコントロールがききにくいところがあ ならないというのはもちろん当然のことですけれど ったと思います。 も、そういう必要な仕事をしていくことにおいて必要 司法と並んで、大学というのはなかなか国のコント ロールがきかないところであったわけです。 な職員は確保するということでなければならない。そ このところがそうなっていないから定員問題等でいろ したがって、今回のやり方というのは、市場原理、 競争原理を基本にしているわけです。主務大臣は目標 んな厳しい状況が出てくるのではないか。ねらいとい うことにかかわっての補足をいたしました。 とか、大枠は押さえるわけですから、先ほどスマート 司会 ありがとうございました。お約束した時間に と申し上げたのですけれども、国のほうはスマートな なってきていますが、どうしてもという方がおいでに コントロールシステムを用意しつつ、外部的には大学 なりましたら手短にお願いします。 の自己責任を強調し、皆で競争しろというわけです。 ○率直な疑問なのですが、私たちは労働組合に所属 学部間競争とか、いろいろ、仲間うちの取り合いをし しているのですけれども、今回の独立行政法人化に対 ろというんじゃないでしょうか。だからそういう市場 する組合の対抗策のことですが、先ほどから基調報告 原理を基本とした競争的原理で本当のいい大学ができ にもあったように、基礎教育の重要性、それから高等 るのか。個性があることは必要だと思うのですけれど 教育の公共性、そういうものが大事だということはよ も、そういう競争的環境の中で出てくる大学の公教育 くわかるんですが、今日の議論のなかでの疑問なので 性、そこのところに大きな問題がある。 すが、私たち働く労働者の生活と雇用を守る、そうい そういうことで、ねらいということでは、一つは国 う視点もすごく大事ではないかと思うんです。 家財政等の危機の中からというような問題もあると思 日本語の曖昧さで、非公務員型とか、そういう言葉 うのですけれども、もう一つはそういう競争的環境の にだまされるようなところがあるのですけれども、ひ 中で自己責任という名の下で「社会的ニーズ」に応え ょっとしたらクビ切りとか、待遇切り下げということ る大学づくりを意図しているということです。大学の も起こってくることが目に見えているような気がする 自己資金といっても、それこそ出してくれるところと んです。労働組合なのだから、そこも共通して、国民 出してくれないところがあるわけです。先ほどらいい の理解を得られるよう、そのへんも強調してほしいと ろいろ議論になったと思うのですけれども、企業とか 思います。 資金を出すところにおいてはどうしても実用的な、当 私自身も定員外職員でもう2 5年になるのですが、本 面の役に立つというようなところが重要なファクター 当にクビ切りされるんじゃないかという疑問もある になってきて、基礎研究等が軽視されるということだ し、いい面も出てくるかもわからないといわれました ろうと思います。 が、やっぱりそんなに甘くないというふうに思うんで ですから大学というものの教育のあり方と、そうい す。だから、先生たちも給与の切り下げが起こるかも う大学の公教育性というものをどういうかたちで国民 わからないということで、もっとそれに対して腹を立 的な議論の中でつくりあげていくかということがたい てて、怒りをもって立ち上がらなければいけないんじ へん重要で、今回のエージェンシーの議論の中でもそ ゃないかと思いました。 司会 ありがとうございます。ただいまのご発言は、 れが重要ではないか。そこのところについて真っ当な 教育政策を作ることなしに、競争原理の中で流れるよ われわれがこの問題に当たっていく基本的な姿勢を確 うに大学を誘導しようというのが基本的にはエージェ 認したいというご意見として承るということにさせて ンシーだというふうに私は理解しております。 いただきたいと思います。 したがって教育に関して国家財政を、もちろん私学 もう約束の時間を過ぎております。先ほど名古屋大 も含めてですけれども、もっとつぎ込むべきである。 学の方からご指摘がありましたけれども、国立大学で 定員問題というのも、結局そのお金の問題にかかって どうしてもできないんだという、このことは非常に重 −4 5− 要だと思います。こういう問題で攻撃がかけられてく 学問の自由、大学の自治論というのが、1 0年あるいは ると、われわれの場合はどうしても守りに入ってしま 2 0年にわたって休耕田に近い状態であったという、そ う。ところがたとえば独立行政法人化、あるいは民営 のことのほうを深刻に考えるべきではないのか。その 化の議論の中で、これは基調報告の1 2ページに書きま 際に、いまご指摘があったようにわれわれが労働組合 したが、「私立大学があるから国立大学でなければな であるという原点をどのように生かしていくか。その らないことはない」 、こういう言い方がよくされます。 ことを明日から2日間にわたっての分科会の中で深め しかしその線で言えば、しばしば治安のフォローの ていっていただきたいと思います。 みが国家の役割であると言っているのですが、たとえ 各論点にわたって学術研究、あるいは教育のあり方 ば先だっての某県警のようなありさまであるならば、 について、そしてまたそれを実現するための基盤につ 何もああいう公共体である必要はない。そういうこと いて、たとえば三橋先生から情報交換について文書管 も一方では言えるということがあります。実際にこの 理というご指摘がありました。それは間違いなく事務 ような民営化論の中で、私立大学があるから国立がな 職員の負担となってのしかかる。そのことも見据えた ければならないという必然性はないと言っているので 上で、あり方を議論していただきたいと思います。 すが、では私立大学のほうがうまくいくという論証も 最後に先生方に一言ずつと思ったのですが、ちょっ ないという、その現実を見失ってはならないと思いま と時間的に難しいようですので、また交流会のときに、 す。 ぜひ交流を深めていただきたいと思います。 もしもわれわれの側が何か雇用に対してそういう負 たいへんつたない司会をおわびするとともに、最後 い目に負うことがあるとするならば、これは羽田先生 にパネリストの両先生に拍手でお礼を申し上げてこの が指摘になっておりましたが、今の時代にふさわしい 会を終わりにしたいと思います。(拍手) −4 6− 課題別・職種別分科会報告 提出レポートは5本。意見交換と討議の時間を確保 するため、報告者に報告時間2 0分以内の厳守をお願い 林 大樹 して、以下の報告が行われた。 第1報告…新「大管法」後の京都大学と独立行政法 「組織運営体制の整備」と 「独立行政法人化」問題 人化問題(京都大学) 第2報告…国立大の独立行政法人化=我々の行動と 視点(新潟大学) 司会 立山紘毅(山口大) 第3報告…島根大学での学長選挙への取り組み(島 参加 5 5単組 1 0 0名 第4報告…独立行政法人化問題に対する島根大学の 根大学) 取り組み(島根大学) 課題別分科会の一つとしての本分科会のねらいは、 第5報告…事務機構改編、独立行政法人化の嵐の中 「学校教育法等の一部改正」の成立・文部省令の「改 で定員外職員は?(京都大学) 正」後の、各大学での評議会、教授会等の「学内規則」 まず第1報告(京都大学)では、これまで京都大学 の「改正」などめぐる動向及び「独立行政法人」問題 経済学部では学部長選挙に際し、職員、院生が投票し、 について2 1世紀にむけて、大学の自治をもとにした高 結果を提示する「意向投票」が行われてきたのに、今 等教育充実の立場から政策的・具体的とりくみの交流 年の選挙では意向投票制度が行なわれなかったことが ・議論をおこなうことであった。 報告された。これは学部長が副学長に急遽転出するこ ところが、本分科会はそうした当初の課題設定の枠 とになったための補欠選挙だったという事情もある に収まりきれない一種異様な雰囲気とともに進行し が、それだけではなく、事務長が意向投票制度を継続 た。それは今回の研究集会の日程が偶然にも9月1 3日 すると概算要求が当たらなくなると主張し、教官がそ の国立大学協会の臨時総会とまさに研究集会閉会翌日 うした事務局サイドの考え方に従った面もある。報告 の9月2 0日の文部省による全国学長・事務局長会議に 者はエピソードとして、ある私立大学の新学部申請に 挟まれて設定されており、2 0日の同会議で国立大学の 際し、文部省から天下りの要求が行われた事例も紹介 独立行政法人化に関する文部省の態度表明が予想され し、文部省は文部省の利益しか考えていないのではな るという、いわば超大型台風の襲来前夜のような緊迫 いかとも指摘した。 感と不安感が参加者を支配していたからではないかと 思う。 第2報告(新潟大学)の報告者は、現在、国立大が 法人化という前代未聞の組織替えの前に立たされてい では一体どうしたらいいのかという気持ちを参加者 るのに、大学の教職員の態度は様々で、断固反対を貫 のほとんどが持ちながら、どうすべきかがはっきりし く者は少ない。数年前、任期制法案が出された時には ない、研究集会第1日の全体集会でも解消されなかっ こうではなかったとして、何がこの違いを生んでいる た議論の停滞への隔靴掻痒の感と焦燥感がこの分科会 のだろうかと問題を投げかけた。大学人が改革疲れで に持ち込まれた。また、最新の確実な情報を得たいと エネルギーが低下している面も確かにあるだろうが、 いう期待もあったであろう。参加者は分科会としては それだけではない。近年の「未来開拓推進事業」は1 非常に多く、ほとんど全ての単組から参加者があり、 プロジェクト当たり1億円を超えていて、以前に比べ 会場に入りきれないくらいで、いわばミニ全体集会の て資金が潤沢になった大学教員も少なくない。総合科 趣であった。 学技術会議(内閣府に置かれる)の設置による産学協 −4 7− 同路線の強化は、財界が学問の中身に直接入って、選 ンドでは、政府交付金(学生積算公費) の削減を柱に、 別と重点投資を可能にする方向にあり、日本の科学技 大学教育経費が3 0%も削減された。大学経営陣はその 術体制にとって極めて重大である。数値化しやすい自 対応策として、入学金の引上げ、コース別授業料の設 然科学は数値的評価によって、学問の中身を変質させ 定、学生定員増、効率的マスプロ授業の導入、教職員 ていくのではないかと危惧の念が示された。また、同 の人減らし合理化を行った。さらに今年度策定された 報告者からは学生(その態度やマナー)を通して国立 計画では、拠点大学への集中的な予算配分が行われよ 大学を見る一般市民の目は大変厳しいことを肝に銘じ うとしているという。日本の大学を取り巻く状況と容 つつ、そうではあっても我々は一般国民に国立大学が 易に重ね合わすことが可能な内容であり、我々にとっ 危機を迎えている状況を訴える行動をやめるわけには て貴重な先行経験の報告であった。 いかないとの発言があった。 以上の報告の後、昼休みを挟み、5人の報告者をパ 第3報告(島根大学)では、学内の意思決定の民主 ネラーとするディスカッション及び経験の交流が進め 化を進めるための組合の取り組み事例として、学長選 られた。初めはどこに議論の焦点を当てたらよいのか 挙への取り組みが報告された。島根大学教職員組合は、 参加者全体が手探りで進むような状態で、パネラーと 1 9 9 5年と1 9 9 9年の学長選挙において候補者に公開質問 フロアーとの間の質疑応答に費やされた。皆、独法化 を行なった。また、1 9 9 9年の選挙においては、評議会 問題を議論したいのだが、どこから切り込んだらよい に対して選挙運営についての提案を行った。 1 9 9 5年は、 のかがはっきりしなかったのだと思われる。しかし、 一部の候補者から公開質問への回答が得られず、結果 このじれったい状況の中で、大学の組合運動が紋切り 的に全候補者の回答を公開することができなかった 型では進展しない現実の奥行きと複雑さが浮かび上が が、1 9 9 9年の選挙では、評議会への提案が受け入れら ったように思う。分科会の終盤になり、独法化問題と れるとともに、全候補者から回答が得られ、それを全 組合の取り組みについての意見がフロアーから活発に 教職員に配付することができるという前進があったこ 出され、会場の雰囲気も熱気を帯びてきたが、予定の とが報告された。 時間が来て、続きはその後の分科会と各単組に持ち帰 第4報告(京都大学)は、国立大学に働く約4, 6 0 0 人の日々雇用職員と約1 5, 0 0 0人の時間雇用職員、いわ っての議論と具体的な取り組みに委ねることとされ た。 ゆる定員外職員の不明確な位置づけと不安定な身分の 改善を訴えるものであった。報告者は独立行政法人化 林 泰公 との関連では、国家公務員が総定員法の「定員」枠か ら外された場合、法人の長である学長の裁量で、定員 「研究教育支援体制」の充実 外職員の正規法人職員化への道が開かれることも考え 司会 佐々木敏昭(東京大) られるが、また逆に「効率化・合理化」優先の「評価 委員会」等の意見を法人が受け入れることにより、定 斉藤安史(群馬大) 員外職員は即解雇・リストラが行われるという最悪の 武市全弘(名古屋大) シナリオもあり、こういった方向の危険性をはらむ 「独 益子一郎(茨城大) 立行政法人化」には絶対反対である。しかし、反対運 金子一郎(北海道大) 動だけでは駄目で、教育・研究を高めていくという原 林 泰公(和歌山高専) 参加 2 5単組4 5名 点に立ち、条件闘争には走らず、世論に訴えていきた いとされた。 本分科会は、欧米に比べて立ち後れている「研究教 第5報告(島根大学)においては、独立行政法人に 育支援」体制の充実を図る立場から、学術審議会答申 類似する大学運営が行われている諸外国の先行経験を 「科学技術創造立国を目指す我が国の学術研究の総合 リサーチした成果として、ニュージーランドの事例が 的推進について」の中で提起されている「研究支援体 紹介された(北海道大学から発行された英語論文を島 制の整備」の問題についても視野に入れたT・A、R 根大学の組合員が翻訳)。過去1 0年間、ニュージーラ ・A等「非常勤研究員」の増大の現状と問題点、助手 −4 8− 問題等教員組織のあり方、さらに技術、 事務の 「組織」 、 独法化の推進、民間職業斡旋で人材派遣で非常勤職員 図書館の現状と今後の課題について教職員共同による もそうなることもありうるなど、これらの政策動向に 総合的な交流・論議を深めることを主要な課題として 対抗軸をどう作っていくのか。あるいは組合として大 開催された。参加数は2 5単組4 5名であった。 学の将来構想、支援体制のあり方等、教育研究をそれ レポートは3本あり、その概要は次のようであった。 ぞれが役割分担を担っていく中で具体的に考えていく は京都大学職員組合が9 8年度に行った職場アンケー 議論が早急に求められているなど意見が出された。 トをもとにした職場実態として、恒常的な人員不足と 図書館の現状と課題では、大学教育と図書館のリン 業務の繁雑化増大化による長時間労働が日常化してお ク、教育にどのようにアプローチしていくかが重要で り、業務の定型化簡素化、現行組織の見直し、人員配 あり、教養教育の一環として役割を果たしていくため 置の工夫などが求められている(京都大学)。 は大 に利用者の声をどう取り入れるのか、現場の意見や組 学院重点化等によりますます技術職員の役割が重要に 合も意見を出していくことが求められていること。ま なっているが定員削減で職員数が減少している。そう た組合は地位確立、改善と図書館の役割と充実を求め した中で学術審議会答申は外部委託や派遣労働、TA ているが、学術審答申の中で図書館の位置づけが弱く、 やRAで補おうとしていることについて、技術職員自 これを認めさせていく運動を向上させる必要があり、 らの資質の向上と大学改革論議に積極的に参画し、大 2 1世紀の大学図書館の位置づけを構築するためのプロ 学機能の中には任務と責任を明確にしていく必要性が ジェクトを求める意見が出された。 述べられた(名古屋大学)。 については独立行政法 技術職員問題の現状と課題では、研究教育の支援と 人化等の改革の中で農学部系付属施設の農場、演習林、 しての役割や業務、立場がまだ明確でなく、外注化、 牧場の将来について「フィールド科学」としての新た R・A、T・Aの他に研究推進員が出来たことによっ な機能を持たせるために人的資源、施設設備を活かす て立場がなくなるとの意見や、組織のあり方について 新たな組織や機能、大学間の連携、予算などの課題に は、定削で人が減る中で今のような形態は無理があり、 ついて提言(岩手大学) がそれぞれ報告された。また、 国大協の1 5人ユニットの見直しと具体的な技術部の運 口頭報告として、学術審議会答申と研究体制の充実の 営についていくつかの職場から報告があり、その中で 課題として、研究体制の整備と促進にボトムアップが 技術部の将来を技官自身が主体的に考え研究教育のニ 必要だが、トップダウン傾向が強くなっている。助手、 ーズに応える技術部を目指すべきであり、技術の継承 若手が研究をするために学術審答申では「問題がある」 問題はT・A、R・Aではその役割りが果たせるのか としか記述しておらず、研究体制の整備、研究を生か アピールしていく必要があること。また組織化では小 せる体制が必要と報告(群馬大学)された。 人数部局での組織のあり方、講座配属の問題が出され これらの報告の後、定員削減や改革の進行のもとで たが、研究者が講座制を必要としている中ではそうい の支援体制のあり方、職場や職種の現状と課題につい う中で技術部の支援体制をどう構築していくか、その て討論が行われた。 ための組織のあり方を考えていく必要があるとの意見 大学・高等教育に関わる課題として、大学の果たす が出された。 役割の一つとして、研究に貢献する事で教育につなが 研究教育の支援、待遇等改善のために研修体制を充 るが、研究と教育が分離し、研究の評価が強調される 実させるために現状の技術専門職、図書館職員につい 反面、教育にきちんと目を向ける必要がある。学生に てそれぞれ研修実態の報告があり、研究教育支援のた 研究者となる教育環境を与える必要があることや、改 めに自から研修の需要を作っていくことが必要であ 革に絡む多忙化の中で技術や事務組織のあり方も問わ り、さらに内容的にも充実させていくことが求められ れている。きわめて早く議論が求められているが、職 ていることが強調された。またこれからの課題として、 場の要求はほとんど無視されている。あるいは、学術 全大教専門部の取り組みとして技術職員問題では組織 審答申で「支援体制の整備、図書・事務部門の改革等」 の役割・あり方、図書館職員では学術司書問題につい があるが、派遣労働の導入で充実、1 2年度概算でもR て紹介があり、研究教育支援の充実のために職種の枠 A等、非常勤研究者の増が入っており、派遣の導入、 を越えて議論し、学術審議会答申、独法化への対抗軸 −4 9− を早急に作っていくことが求められている。 大阪大学から「事務組織改革・一元化の動き」につ いての報告があった。本年4月から各学部からの定員 を吸い上げて調達センター(物品のみ)が創設され、 深見健次 学生部改組による合理化減がはじまった。1 0月からは 学内措置による学生センター(豊中、吹田のそれぞれ 「事務機構の一元化」問題 のキャンパスで)の設置が予定されている。2 0 0 0年か らは文学部、法学部、経済学部、国際公共の文系の事 司会 伊藤文隆(京都大) 務統合が予定されている。特に学生センター設置の準 伊藤正彦(熊本大) 備段階で8月の異動は高齢の女性配置替が特徴でリス 深見健次(京都大) トラされたという声も異動した女性から聞かれる。定 員削減の布石ともとられかねない。9次に及ぶ定員削 参加 1 8単組 3 6名 減により残業が常態化している。 本分科会は、前半を5本(当日持込みを含め)のレ 職員の健康悪化や過労死さえ生まれている。事務部 ポートの報告を受け、後半の討論は事務組織のあり方 会として職場実態についてのアンケート調査を行なう をめぐっての柱で行なった。 予定である。 レポート報告では、山口大学から「事務組織の改編 宇都宮大学からは「事務組織集約化後の現状につい と教職員組合の役割」についての報告があり、事務組 て」の報告があった。事務組織集約化はトップダウン 織の再編に関するアンケート結果では、大学事務のセ 方式で出されてきた。集約化に際して各学部の業務量 ンター化という集中化に対しては学生指導の難しさや を業務毎に算出したが事務組織の集約化が優先され、 密度のあるサービスは逆に望めなくなるという意見が 適正な人員配置がされなかったため、部署によって仕 あるものの、在り方として「望ましい」「望ましくな 事量のアンバランスが出ている。特に会計業務にしわ い」 「わからない」がほぼ3等分されている。しかし、 寄せがきており、教務課では教務事務電算化が未完成 事務組織の改編・見直しに関しては、情報公開を求め のうちに集約化を行なったため大変な状況となってい る。意見反映出来る機会を設ける。トップダウンや一 る。このため、教務関係は学部に戻すべきであるとし 部の人々ですすめるべきでないとする回答が大半を占 た意見が多数出ている。 めた。集中化即事務局一本化への方向は本来の姿でな 京都大学からは「事務機構改善検討の状況」につい く、むしろ教員サイドからは学部事務の充実化が望ま ての報告があった。大学をめぐる厳しい状況や事務量 れている。 の増大に対処するため、一部局事務組織からの部局共 名古屋大学からは「事務改善合理化に向けて」の報 用型事務組織に改編する。各事務の電算化、一元化・ 告があった。これまでの第9次にわたる定員削減と平 集中化の推進を行なうことを基本方針として、事務統 成1 3年度までに上積み削減によって現行の事務組織を 合を検討する構内毎の専門委員会、業務の改善を検討 維持・運営することは困難であるという認識の下、事 する専門委員会の2つの柱立で検討がなされている。 務改善合理化推進調査・研究会が設置され、 事務の 減量化・効率化の推進 そのためのホームページの これらを踏まえた事務 2 0 0 0年には宇治地区の5つの研究所事務の統合と農学 部、農場等の事務の統合が予定されている。 組織改革の必要性を方針とする改善案が提言された。 集中化を実施して具体的にどうなったのか。定員削減 この提言に際し、他大学の事務機構改革の状況等を踏 との関係で機能しているのか等々の質問に対し、学生 まえ、独自性が損われないよう検討がなされた。更な センター化を実施したが、学生は学部へ行くのかセン る定員削減が確実視される中で、現状の教育研究支援 ターに行くのか判かりづらい、又、センターも少人数 体制を維持することは困難であり、教官等の連携・協 で相談が集中し、対応に苦慮している。センター化に 力が重要となり、それに向けての体制の構築が必要で 伴なって学部は定員削減はないといわれていたが結果 ある。 的に学部も事務局も削減されている等の問題点が出さ 活用等事務の電子化の推進 5つのレポートに対する質疑が行われ、この中で、 −5 0− れた。これらのことから「一元化」された後の事務局 と学部との間での業務処理体制等の調整が不十分であ 塚本一郎 ること。「一元化」された部署への人員配置が不十分 で多忙をきわめていることなどが浮きぼりになった。 教員養成系大学・学部のあり方 共通しているのは「合理化減」の文部省通知にもとづ いて、一部の部課長による「机上」の計画で行われて いることや業務の検討や見直しから出発していないた 司会 塚本一郎(佐賀大) め、職場の実態にそぐわず多くの問題が生じている。 河原田博(京都教育大) 参加大学から次々に実状の報告がされたが、とくに 武田晃二(岩手大) 「一元化」によって学部事務室が廃止された福井大学 参加 1 5単組1 9人 の報告に注目が集まった。全学事務一本化に伴なって、 初年度は混乱し、学部長が企画・立案に際して学部事 来年度は教員養成課程5 0 0 0人削減計画の3年目(最 務長がいなくなったため、誰れと相談するのかという 終年度)にあたるが、分科会ではこうした状況を踏ま 不満が出、専門職員の導入で2年目に学部担当者を置 え、まず、司会から教育学部改組の全国的状況に関す く。一元化に対して何を残すのかが最初に問われると る簡単な説明が配布された分科会資料をもとになされ いうリアルな報告がされ、実状に即した手直しが行わ た。文部省発表の「平成1 2年度 国立大学等の入学定 れた。 員について」等によれば、1 2年度改組における教員養 全大教調査によれば、合理化減に伴なう一元化とし 成課程の削減数は8単科大学を含む1 4大学1 5 0 0人に及 て一斉に出されてきたのが共通している。しかも小規 んでいるが(3年間で合計5 0 0 0人弱が削減されること 模大学から先行された。半数以上のところが何らかな に)、1 2年度改組の特徴は、新課程へ振替や他学部へ 一元化をすすめている。今後のとりくみに生かすもの の振替がさらに抑制され、純減が増加する傾向が強ま として、「一元化」になじまない業務や学部、学科に ったことである。 どうしても残さなければならない部署等を明らかにす べきであるとの意志統一がなされた。 配布資料の説明に引き続き、岩手大学教職員組合教 育学部分会から、「岩手大学教育学部の改組と今後の 事務組織のあり方については名古屋大学から「事務 問題点」と題する報告がなされた。報告によれば、岩 職員の専門性と事務組織の役割」についてのレポート 手大教育学部の改組も5 0 0 0人削減計画の最終年度にあ があり、大学の管理運営のなかで果たすべき事務組織 たるが、その特徴は、校種別に複数設けられていた教 の役割りとその位置づけ、「教育と事務の中間的な領 員養成課程を、コースレベルでは校種別を残したもの 域」をになう人材の育成と職務の専門性を有する専門 の統合型の教員養成課程に一本化し、全体の規模を大 職員の位置づけを明確にすべきという注目すべき報告 幅に縮減したこと、教育学部としてはじめて新課程を があった。 設けたことである。 独立行政法人化とも関連して私立大学と比較した資 料も検討すべきであるとの要望も出された。 さらに、報告者から現状を踏まえて、新しい教員養 成課程と新課程に予想される問題点について具体的な 指摘がなされたが、紙幅の都合もあるので、ここでは その一部を紹介したい。まず、教員養成課程について は、定員的に中学校教員養成の部分が小さくなること により、教科別の教員養成数が著しく減退し、ひいて は教育学部の教科に関する教育力の低下が予想される こと、そして、新課程については新課程にコミットす る教員の授業負担が著しく大きくなることが懸念され ること、学校教員以外の職種への就職支援活動が強く 求められることなどである。 −5 1− 最後に報告をまとめるかたちで、第三者評価機関の 現職教員の派遣制度そのものが就労と就学を保障する 設置、今後予想される定員削減、独立行政法人化等も ものになっておらず、条件整備こそ必要とされるので 視野に入れて、教員養成学部として予想される問題点 はないかといった意見が出された。 については、改 について報告がなされた。すなわち、まず第一に、教 組で新しいコースを設置したが、学生から見たら不自 員就職率が低下するなか、教員養成学部に対して「効 然であるにもかかわらず、例えば英語の教員が福祉を 率性」の観点からネガティヴな評価がなされるのでは 教えるなど、教員が全く専門外の教科を教えなければ ないか、第二に、小学校に重心をシフトした統合型の ならないといった、教員自身も専門性のゆらぎ、教科 教員養成において、さらに教員の定員削減を被った場 の専門性の低下など、深刻な現状が報告された。 に 合、中学校全教科の教育組織が維持できなくなる、す ついては、地域社会に対して改組の理念が説明できな なわち、中学校教員養成が地域間でブロックされる危 いという問題などが指摘され、さらに、これから地域 険性があるのではないか、第三に、学部教育の縮減を がキーワードになるのではないか、「3 0人学級も視野 相殺する観点から、現職者研修の機会充実も視野に入 に入れて、もっと教育現場に先生が必要という運動も れた大学院修士課程の拡充によって教員組織の維持を 必要ではないか」といった提案がなされた。 につい 図っていく必要があるが、今後いっそう負担が増すの ては、全大教に対して、教員養成系大学・学部間で情 ではないか、といった点などが懸念されるということ 報交換を行い、組合全体で考える場をつくってほしい である。 という要望などが出された。 この報告を受けて、参加者から職場の現状報告も交 最後に、全体の議論を通じていえることは、教員養 えながら、熱心な質疑と討論が行われた。討論のなか 成系大学・学部の問題を、単に当該大学・学部だけの で出された特徴的な論点を、あえて大胆に整理すると 教育に対する責任体制、大学院問題、教員の専門 性、地域との関係、教員養成系大学・学部間の連 問題として矮小化するのではなく、地域の教育力の問 すれば、 改革疲れ、 改組の理念と手続き、 学生 題や、わが国のゆがんだ教育政策の問題等と関連づけ 携、といったことになろう。以下、これらの論点をめ うしの横の連携と教育諸団体との連帯の視点がいっそ ぐってなされた議論を紹介したい。 う求められており、そうした連帯を通じて、教員養成 ていく視点が求められているということである。さら に、運動論的観点からすれば教員養成系大学・学部ど まず については、改革後の点検・評価・総括もな 系大学・学部の存在意義を国の教育政策に反映させて いまま、改革が終わったらすぐに次の改革が始まると いく取り組みが重要となるということである。この分 いう、度重なる「改革」が教員の間で「改革疲れ」を 野における全大教の役割もますます重要になろう。 生じさせているという現状が報告された。 について は、改組の理念さえ説明できない、「改革疲れ」で教 小林隆夫 員が改組の手続きに無関心となり、意思決定が少数に 委ねられる傾向さえあり大学の自治の観点からも問題 「大学共同利用研究所」問題 である。教育学部の問題が全学的な課題となっておら ず、評議員や学部長・学長への働きかけがもっと必要 である、といった現状の指摘や意見が出された。 に ついては、新課程をつくったが、「どの教育課程で学 司会 小林隆夫(室蘭工大) んでいるのか学生自体わからない」 、学生の溜まり場、 長谷一憲(九州大) 固有の施設がない、新課程に教員がいない、といった 参加 5単組8名 学生へのしわ寄せや学生教育の責任体制の混乱の現状 が報告された。 については、「生き残り」のための 参加者が全て技術職員だったこともあり、分科会討 大学院拡充によって様々な矛盾が生じていること、昼 論は、 技術職員組織の現状と昇格問題、 独立行政 夜開講・通信制の開設による教員の負担の増大等の現 法人化問題、の2つの柱をたてて行った。 状が報告された。また、現職教員の再教育といっても、 【技術職員組織の現状と昇格問題】 −5 2− 参加人数が少なかったことや小生のように初めて参 ライン制組織の場合ポストが埋まってしまえば上位 加した者もいたため、討論に先立っていわゆる「共同 級からの退職者が出ない限り、いくら経験を積み技術 利用機関」の種類や機構について共通認識をもつこと が向上しても昇格しないのは自明である。だからとい からはじめた。 って手をこまねいて黙っている訳にはいかない。昨年 以下に略図で簡単に紹介する。 大学に専門職制が導入されたことがきっかけかどうか は不明だが、高エネルギー研では初めて係長にならな 〈共同利用機関の種類〉 いまま3―1 5から4級に昇格した。また、5級へも4 大学共同利用機関(直轄研、 14研究所) :共同運営、運営協議会 ―1 9と4―2 1から昇格できたということである。長年 の運動の成果でもあると思うが、それでも大学より遅 文部省 大学付置研究所 全国共同利用:運営は各大学 の併用による矛盾の解決が求められている。 共同利用:運営は各大学 【独立行政法人化問題】 〈直轄研の機構〉 この課題については、教員が参加していないことも 運営協議会:予算や人事の決定権をもっている。 外部と内部半々の人数比で構成 所長 (教授相当) れており、研究所からの参加者のいう通り専門職制と あって、お互いが現在捉えている情報などを、意見交 換・交流するにとどまらざるを得なかった、 評議員会:所長を選出する権限をもっている。 外部の人で構成(学識経験者や会社社長等) 高エネルギー研では、昨年文部省から機構長に対し て独立行政法人化の検討要請があり、各系および技術 幹事会議:所内の運営にあたる 部各々3名の委員を選出してWGをつくって検討し 昨年以来、共同利用研究所では大学・高専に適用さ た。WGでは、もし、どうしても独立行政法人化なら れた技術専門官・専門職員制度を共同利用機関の技術 これだけは、という視点で検討した。技術部問題につ 部組織にも適用できないかを追求してきている。しか いては議論されなかったので、WGメンバーが技術職 し、大学付置研の技術室では一部専門職制度との併用 員から意見集約した。機構としての案はつくったが、 が認められたものの、直轄研では認められていないと 当面共同利用研として共同歩調をとっていこうという いうことである。直轄研に省令にもとづく技術部がつ 状態である。天文台は2 0 0 3年までの間に速やかに結論 くられて久しい。その間、部長や課長などの上位級は を出せといわれている。また、8月3 1日に大学共同利 確保されたが、ライン制のため4級や5級への昇格は 用機関機構長会議があり、文部省から国大協との連携 大学に比べて立ち遅れる事態が生じ、以前から深刻な を要求され、9月1 3日の国大協臨時総会や9月2 0日の 課題として指摘されている。分科会に参加した3研究 学長・事務局長会議にも所長等が参加あるいは参加予 所の技術組織の構成を以下に略図で紹介する。 定である、との報告があった。また、東大も東大生研 〈高エネルギー研〉 も公式には検討していないといっているが、裏で動い 部 長 次 長 課 長 班 長 係 長 係 員 9級 8級 8級 7∼6級 5∼4級 3∼1級 1人 1人 13人 13人 50人 82人(?) 56歳位 51歳位 50∼60歳 50∼55歳 50∼36歳 教員併任 討論では、独立行政法人化によって共同利用研がこ れまでつくってきた民主的ルールや運営が潰されてし まうのではないかとの危惧や独立行政法人化のもつ問 題点は次第に明らかになってきているが反対運動が決 〈天文台〉 部 長 ているとの報告もあった。 課 長 課長補佐 係 長 8∼7級 7∼6級 6∼4級 2 人 2 人 12人 技術職員 定的に弱いとの意見などが出された。また、ネットワ ークによる情報交流を活発にすることや教職員研究集 30人 〈応用力学研(九大)〉 会にもっと多くの付置研究所から参加してもらうこ と、レポートやニュースの持ち寄り、共同利用機関関 室 長 班 長 掛 長 専門職員 7 級 7∼6級 6 級 5 級 1 人 3 人 6 人 13人 技術職員 係の会議の開催要望などがあった。 ? −5 3− 理科4分野を関連付けた授業科目「科学セミナー」を 開講したものである。具体的には、授業1週間前には 河原田 博 講義資料を配布し、講義ではOHPなどを使い、板書 「学生教育問題」 は大きく、教壇実験も含め学生が安心して聴いていら れるよう工夫した。しかし、受講者アンケートなどに よると、疑問がわかない、疑問があっても自分から進 司会 塚本 一郎(佐賀大) んで参考書を調べることはほとんどない、質問もほと 野田隆三郎(岡山大) んどしないなど、学習活動になじまない傾向が見られ 伊藤 正彦(熊本大) た。また、理科の「4分野の関連」を指摘しながら授 河原田 博(京都教育大) 業をすすめても、その指摘はあまり受け入れられず、 参加 3 0単組4 1名 無関係なこととして処理されてしまう傾向があった。 この分科会では、教育実践上の取り組みのレポート また、専門用語になじめない学生が多い、筆記試験や 3本に加え、外国人学校卒業者の受験資格についての レポートにも論理的でない説明文が多いなど、当初の レポートをもとに討議した。 目標であった学生の学習意欲の高揚は必ずしも達成で 1、レポート報告の内容と意見交換 きなかったとの報告がなされた。これについて、報告 まず福島大学から、教育学部学生への文部省の「フ 者から、「理科離れ」は「論理的思考が苦手である」 レンドシップ事業」 を9 7年度から3年間実施する中で、 ことの一つの現れと言われるが、大学での自然科学の 学生が主体的に関わる授業運営への工夫を行ってきた 学習の前に、論理的に考える訓練や自分自身に生じた 取り組みが紹介された。これは、学級崩壊、いじめ・ 疑問の本質が何かを考えたりそれについて調べたりす 不登校の増など教育現場の抱える問題への対応とし る、いわば「自己教育」とも呼ぶべき作業が必要では て、教育学部学生の「教師としての資質」の学びの場 ないかとの指摘もなされた。この報告に対し、参加者 として、また、「実践的指導力の向上」のために実施 からは、学生が主体的に授業に参加し疑問点を調べざ されてきたものでもある。具体的には、従来の教育実 るを得ないような課題をどう設定するのか、という提 習の枠を越え、福島市内の小・中学生の参加を得て 「自 起があった。レポート報告者からは、体系的に学んだ 然体験学校」 を実施し、学生主体の運営に力点を置き、 り自分で考えたりすることが、大学入試との関係で育 学部学生・院生が全体企画、運営、実施を担当した。 ちにくくなっていること。この「教育のゆがみ」を大 また、大学祭期間中に幼児から中学生、保護者を対象 学で解消し社会へ送り出すことが必要ではないか、ま に、大学キャンパスでものづくり、理科実験などの体 た、現在の学生が高校で学習する分野には偏りがある 験講座を学生の主体的な運営で実施した。そして、参 が、学校教員になったときには、どの分野の知識も必 加学生代表の報告及び小学校教諭などをコメンテータ 要となり、学生が主体的に関わる授業でない科目もあ ーとして迎え、これらの取り組みを多角的に総括し今 って良いのではないか、との見解も出された。 後の課題を明らかにしていくためのシンポジウムを開 さらに、京都大学附属図書館からは、図書館職員と 催した。この報告に対し、和歌山大学からは実施形態 大学教員との共同した授業運営の取り組みについての や報告集発行など相当の業務量であることから、この 報告があった。これは、全体の統括には図書館職員が 事業を実施するための常置委員会設置にまでいたら あたり、各教官の指導のもとで図書館職員が演習補助 ず、1年でやめてしまったことが報告された。京都教 者として具体的に関わる授業運営の実践報告である。 育大学からは、大学の事務担当部局の業務量増に対す 演習の内容は、図書検索システムや「サーチエンジン」 る質問もだされた。 を使って、参考図書や関連論文を調査することにより、 次に岩手大学から、複数の教員が担当者となり事前 図書館の利用方法及び情報機器の基礎的な操作の修得 に教員間で講義内容を検討しながら運営する授業の実 を目標にしたものである。報告者からは、講義と演習 践報告があった。これは、教育学部学生を対象とした を交互に実施することにより、演習補助者としての図 授業で、学生の知識体系や理解力の向上を目的として、 書館職員の役割が明確になっていることや、学生アン −5 4− ケートでは「役に立った」 との意見が目立つことなど、 手大学からは、学生は勉強不足であるが、教官側も4 5 教員と職員による授業が概ねうまく運営されているこ 時間の履修を要求せずに単位認定しているとすれば、 とが報告された。 それ自身の改善も必要ではないかという提起もなされ 最後に、名古屋大学から外国人学校卒業者の受験資 た。名古屋大学からの報告に関わっては、外国人留学 格に関する運動の報告がなされた。名古屋大学では、 生と日本人学生が一緒に学ぶことの教育効果への期 本年4月に「外国人卒業者の名古屋大学への受験資格 待、そこへ朝鮮人学校卒業者も入れるならもっと教育 を求める会」を発足させ、この問題に関する学内世論 効果が上がるのではないかなどの意見が出された。 を喚起するためにセミナーの開催や署名活動を実施す 以上のように今回の分科会での特徴的なことは、第 るなど、総長に対し受験資格を認めるように働きかけ 一に、現在の学生は、授業で議論することや、自ら研 を行ってきた。日本に在住する外国人学校の卒業者は、 究課題を探求することが困難な状況であり、教育方法 多くの公立大学や私立大学への受験を認めてられてい の問題は今後も引き続き検討する必要があること。そ るのに対し、国立大学には認めてられていない。この の際、学生同士のつながりを活性化しつつ、教官同士 ことは、文部省の強い意向が反映していると見られる。 や職員とのつながりをどのように確保するか、との問 その後、7月に文部省はそれまでの方針を変更し、大 題も併せて提起されたとも言える。第二に、外国人学 学受験資格検定試験(大検)合格者に対しては受験を 校卒業者の受験資格にみられるように、「真の国際化」 認めること、大学院の受験資格については、個々の大 のためには基本的な問題が解決されておらず、私たち 学の判断に任せることを各大学に通知した。しかしな の運動が引き続き必要になっていることが提起された がら、この問題を受験資格に関する規制緩和の一般論 と言えよう。 として取り扱っており、朝鮮人学校等を中心とした外 国人学校の問題として取り扱っていない。このことは、 林 大樹 何ら本質的な解決は図られていないことを意味すると の報告がなされた。また、各大学での受験資格の判断 研究体制と「国際化」 大学と社会 は、直接には入学試験事務担当職員が判断せざるを得 ない現実をどう考えるのか、といった点も提起された。 2、報告を受けての討議 司会 安藤安史(群馬大) レポート報告を受けて、以下のような意見交換を行 小平直行(広島女子大) った。岩手大学からは「理科離れは論理的思考不足」 林 大樹(一橋大) ということに関わって、最近、教育方法の面で「内容 参加 2 4単組3 7名 知(結果としての知識)から方法知(学び方にかかわ る知識や技術)へ」の流れがあるが、内容に則して考 提出レポートが少なく、B3分科会に対しては、岩 えなければ現実から遊離した思考に流れてしまう恐れ 手大学からの1本だけであり、B2分科会へは提出レ があること、また、学生は一定の知識を持っているの ポートがなかった。運営委員会で話し合い、出席者の だから、お互いに交流し合い話し合う中で、知識を通 了解を得て、これら二つの分科会を合同で開催するこ して人間的なつながりを確認しあう授業が有効ではな とにした。 いか、という指摘がなされた。山口大学からは、学生 唯一の報告は「『国旗・国歌法案』に対するささや の自主性を大切にする授業と学生が受け身になる授業 かな反対運動について」と題し、大学の組合員有志が を、学生に「どの時点でくぐらせるのか」というカリ 大学を出て、街頭デモを行った取り組みの経緯と狙い キュラム編成上の工夫が必要ではないか、また、「受 を紹介するものであった。報告者は、近年の大学人が、 け身の授業」もそれだけでは低い評価に値しないし、 若手研究者を中心に、自分の研究の世界に閉じ込もり、 カリキュラム編成を前提にすれば、いろんなタイプの 貴重な認識や学習の成果を携えて学外(社会) に出て、 授業があって良いのだから、学生の現状に即して具体 訴えていこうとしないと批判的に指摘された。また、 化していく必要がある、との意見があった。再度、岩 報告者は岩手県国公議長の任にあり、大学以外の組合 −5 5− の集会にも数多く参加した経験から、組合活動が非常 参加者が直面しているいくつかのトピックも議論され にマンネリ化しており、若い人たちは労働組合を古臭 たので、以下に紹介したい。 いと感じていること、この際、運動論を大胆に見直す べきであることを主張した。 新潟大学から大学院の重点化について、全大教とし て問題点を研究してほしいという要望が出され、すで この報告を受けて、「国旗・国歌法案」成立後の学 に大学院重点化(部局化)の進行した大学から現状と 内の変化として、北海道大学で日常的に大学本部に日 問題点についての報告が行われた。教育環境の悪化、 の丸が掲揚されるようになった事実の紹介や国旗・国 院生の質の低下、教職員の多忙化、過重負担になって 歌の必要論とそれに対する反論、民主的な討議の重要 いる、十分な教育ができない、などの問題点が異口同 性などの論点をめぐって議論が交わされた。平和運動 音に語られた。北海道大学からは大学院への社会人入 部をもつ京都大学の組合からは、組合活動は労働条件 学を増やしたことと社会経験の中から課題を抱えて大 の維持向上が何より優先するので、平和運動と単純に 学院に来ようとする社会人の学習意欲が高いことが指 は噛み合わない面がある。平和運動のような運動は学 摘され、社会人の大学院入学は、地域社会で様々な活 習が基本であると考えるべきだとの意見が出された。 動をしている人々と大学および大学の教員や学生が結 独立行政法人化問題への取り組みについては、どう びつくことになるので高く評価したいという意見が出 いう取り組みを行えば大学の存在意義を社会の中に訴 されたが、社会人の再教育は大学の基本的な使命では えていけるかという問題意識からの発言が多く出され ないのかという反対意見も出された。 た。 大学病院は患者を通じてきわめて密接かつ日常的に 愛知教育大学から、大学と社会が共同の価値を掲げ 社会と接している機関であるといえよう。そうした大 て、大学のミッションに社会的価値を注入すべきであ 学病院においても変革の動きが押し寄せ、医療看護の るが、その際、平和は共通に掲げる価値であるとの指 稼働率上昇の要請などの圧力が高まっている。一方、 摘があった。宇都宮大学からは、大学は社会の中の英 大学の病院の目的は研究と教育が第一であり、患者の 知の中核であるとの認識を持つべきであり、全大教は 治療に必ずしも高い優先度が置かれていないことも事 そうした大学の組織の良心である。大学の良心として、 実としてある。そうした状況の中で患者と接する看護 英知の中核である大学を守るために闘いたいという発 婦が批判にさらされることも増えてきている。名古屋 言も出された。 大学からはこうした問題に組合としてどう取り組んだ また、多くの大学人が大学の社会に対する役割に確 信が持てていないのではないかという発言もあった らよいかという課題が提起され、大学病院をもつ大学 を中心に議論が交わされた。 が、北海道大学からは、教育や研究を通してどれだけ 山口大学からは、わが国の司法試験改革や法曹養成 社会に貢献できているかが重要との意見が出され、そ システムの改革が議論される中で、ロー・スクール構 うした観点から、実際に大学人が地域社会に出て実践 想が浮上してきているが、この動きについての情報の 的な活動を行っている例が紹介された。それに関連し 流れがきわめて偏っていること、さらにそもそも法律 て、島根大学からも、地域住民参加で公開講座を企画 の教育とはどうあるべきかの議論が抜け落ちているこ した経験などが報告された。 とが指摘された。 加えて北海道大学からは、独立行政法人のアイデア の根底にある「市場主義」に対抗するのには、「連帯 と協同」しかない。地域社会では、大学に取り上げて もらえない問題が山積しており、そうした問題に労働 者の立場から、労働組合らしく取り組む「労働大学」 を展開することで既存の大学を変えていこうという構 想も出された。 独立行政法人化問題への取り組みと直接関係するわ けではないが、大学と社会の関係という観点で分科会 −5 6− 意見が出された。 この中で、 についてはすでに別の分科会(「組織 小野 亘(一橋大) 運営体制の整備」と「独立行政法人化」問題)で報告 されていたが、定員外職員に関わる問題なので、この 図書館職員 場で改めて報告してもらった。 この課題については、関連する派遣労働等も含めて 情勢分析をした上で、図書館職員部会としてどうする のか検討する必要がある、との意見が出された。 司会 村上健治(大阪大) では、今年4月東大の大型計算機センターと教育 佐藤守男(東京大) 参加 1 3単組 2 2名 用計算機センターが改組し、そこに総合図書館の電子 化部門を取り込む形で「情報基盤センター」が作られ 図書館職員部会は、 「学術の中心」にふさわしい たことにより、総合図書館から9名の職員が減り(当 大学の図書館づくり、 図書館職員の地位の確立と待 初1 0名の計画、最終的に8名の持ち出し+定削1名の 遇の改善、の2点を基本的な柱にしており、この分科 減)、総合図書館の業務に支障が出ている、という報 会では、2日間に亘ってこの2点に沿う形で、以下の 告があった。これに対し、「設置に対する東大総合図 6本のレポート・報告と、「全大教図書館職員部1 9 9 9 書館職組の見解はあるのか」という質問が出され、東 年度活動方針」 についての報告・討議を行った。以下、 大からは「見解は特に出したことがない、図書館の電 その概要を記す。 子化部門を外に作るべきか中に作るべきか、当時はあ 1 レポート・報告 まり議論にならなかった。電子図書館部門が必要との 「パート学術司書制度」試案(京都大 竹村 心) 事務機構改編、独立行政法人化の嵐の中で定員外 職員は?(京都大 荒木 香) 情報基盤センター設置問題への取り組み(東京大 認識はある」との発言があった。また、「人が減る」 ということだけでは共感が得にくいのではないか、と の意見もあり、「大学における学術情報をどういう組 織で発信していくべきか」全大教図書館職員部として 学総合図書館職員組合) 見解を出す必要がある、との発言があった。 インターネット情報の活用―』について(京都大 の組織とした大阪市大の「学術情報総合センター」の 京都大学全学共通科目『情報探索入門―図書館と 後藤 慶太) 東京大学に働く図書館職員の昇格改善に向けて― これに関連して、図書館と情報処理センターを一つ 事例について意見交換を行った。 についても、すでに別の分科会(学生教育問題) 役職についていない職員の5級頭打ちを打開する で報告されていたが、図書館職員部では、一昨年、昨 ために―(東京大学図書館職員部会賃金対策部会) 年とこのテーマについて継続的に議論しており、この 安易な派遣労働の導入への反対について(名古屋 大職員組合図書館支部) 場でも改めて報告をしてもらった。京都大学での取り 組みは2年目を迎えており、今回のレポートでは、昨 まず、 については、図書館職員部会が長年に亘っ 年度との相違、改善点を中心に報告され、受講生の感 て検討してきた「学術司書制度案」が案としてまとま 想、職員の研修の問題などを中心に意見交換をした。 り、今後は文部省をはじめとする関係各方面に提案、 では、特に女性職員で「5級高位号俸への溜まり 協議していくことになるが、その中で図書館職員の4 込み」という状態が続いており、原因としては、役職 割を占める定員外職員については結論が出されないま 率が低くポストが不足していることと、ライン制重視 まとなっており、その定員外職員の問題に応えるため の人事政策により主としてスタッフ的業務についてき に将来こういうこともあり得るという形での個人的な た職員の6級昇格への道が開けないことが揚げられ 試案だ、との説明がなされた。これに対して、独法化 る。この問題について、東大職組図書館部会では、人 により定員外職員の雇用が危ぶまれる中で「現段階で 事課長との勉強会を開く等の取り組みを行っている、 これを提案することの意味づけはなにか」等の疑問・ 等の報告がされた。また、この問題については「一大 −5 7− 学の力では困難であり」各大学で交流しともに行動に 全大教の中に図書館職員部とは別にプロジェクトを設 取り組む必要があるとの指摘があった。 置し、2年後をめどに報告を作成する予定である。こ 議論の中で、従来から異動をしないから昇格できな の「2 1世紀の図書館像」については、新しさを競うの い、と言われてきたが、図書館ではそもそもポストが ではなく、basic な部分を確立したい、また、組織の 少なく、いくら異動してもポストにつけない、という 問題としては、電子メール等を使い全大教と単組とを 実態も明らかになった。このような状況の中で、現行 結ぶネットワークづくりを行いたい、との提案もあっ 制度を活かす形で昇格改善を行うには、専門職員ポス た。 トによるしかないとの指摘もあった。また、以前ほど その他の質疑、討議では、「派遣労働の問題につい ではないが、依然として男性にくらべ女性の方が昇格 て項目に加えるべき」「電子図書館事業、情報基盤セ のハードルが高い、との指摘もされた。 はレポートではないが、カウンター業務に派遣労 ンターについての全大教としての見解を示すべき」 「6 働の導入の計画がなされた際の取り組みについて、名 狭隘の問題が深刻である」などの意見があり、議論の 大職組図書館支部名の「安易な派遣労働の導入に反対 後、以上の意見を今期の図書館職員部委員会の課題と する要望書」に基づいて報告された。当初、定削分の して確認し、分科会を終了した。 級昇格の問題に具体的にどう取り組むのか」「書庫の 補充として3 0時間の定員外職員を充てる予定だった が、部課長が「同じ経費で派遣を導入すれば毎日来て 横治大樹(大阪教育大) もらえる」と言いだし、現場ではそれに対し反対、組 事務職員 合でも事務部長にあて上記要望書の提出を行った。結 果としては、「時期早尚」 として今回は見送られたが、 今後、派遣労働導入の動きが再び起こることが予想さ 司会 深見 健次(京都大) れ、予断を許さない、との報告がなされた。 武市 全弘(名古屋大) 2 全大教図書館職員部1 9 9 9年度活動方針 伊藤 文隆(京都大) 図書館職員部長から資料に基づき概要が報告された 長谷 一憲(九州大) あと、質疑、討議が行われた。概要の中で、一つ目に 参加 1 3単組2 0名 図書館職員部としての図書館政策(「2 1世紀の図書館 像」)を確立すること、二つ目は、(定員外職員も含 本分科会は1 3単組2 0名が参加した。 め)専門職にふさわしい職務の評価と昇格改善を実現 議題としては,「事務一元化」が別の分科会で議論さ すること、三つ目に「学術司書制度案」の実現、四つ れたこともあり、 独立行政法人化問題と大学事務の 目として図書館の自主財政の確立、の4点が今年度の 在り方 要求と取り組みの重点としてあげられた。 事務職員の課題(第一次案)に対する意見変わるかの 昇格の改善闘争,専門職員のポスト増 3点目については、今後、文部省をはじめとする関 三つの議題で討議した。なお、独法化に関わって、独 係各方面に提案、協議していくことになるが、「学術 法化反対の取り組み、事務の簡素合理化、大学事務の 司書制度案」の8に述べられている「実現のための条 あり方についても議論となった。 件整備」への取り組みを各大学で行っていく必要があ ることが説明された。 司会からの提起、独行化になれば事務はどうなるのか 「経過報告」では、「1 9 9 0年代の大学図書館政策の レポートが一本も出されなかったこともあり,最初 概要」が述べられているが、いずれの答申等にも「2 1 に「独立行政法人になれば事務職員はどうなる?」と 世紀の図書館像」が描かれておらず、また答申等の内 いう問題提議が司会から出された。補足のあったもの 容の具体化に際しての職員の問題、財政の問題、施設 を加えると、次のようなものである。 の問題についても触れられていない。1点目と2点目 独立行政法人は「効率」があげられるため,収入を については、図書館職員部として政策を確立する必要 あげ、支出を押さえることが今以上に必要になる。収 があるとの認識に立った。特に、1点目については、 入の増加では, 入学料、受験料アップ、コース別料 −5 8− 金の導入、 学生数の増加、支出の削減では、 高齢 い,既に独法化が「決定」している機関でも法律で決 者の早期退職奨励、 人員削減、教官は3分の1、職 定したわけではなく,反対運動をすすめていること, 員は2分の1、 需要がすくない学科の閉鎖(アメリ 現在は,国立大の独法化が決定もしていないこと,教 カの大学の例)が考えられる。 員をまじえての運動を進めることの重要性,反対を言 職員はどうなるか 移行時の業務、膨大なものに なる。 これまでの知識や電算機のシステムが役にた えるのは組合しかない,地域にうってでるような大規 模な運動をすすめることが必要との話がなされた。 たなくなる。会計業務、人事関係は、大幅に変わり、 スリム化する。教務、学生関係の業務は変化なし。 事務の簡素合理化について 中期目標にみあう中期計画をたてる業務があらたに発 次に,事務の簡素化・合理化について議論された。 生。年度、これに見合う業務が増える。また金をかせ 事務の簡素化については,もっとも多く出されたの ぐ部門の業務が発生,「営業部門」の業務が増える。 政府が要求する国家的施策については、一層推進す は,会計法規を中心とする法規の改正(簡素・合理化) る必要がある(例 留学生の受け入れ増、生涯教育、 領時代につくられたものであり,形骸化し,印鑑を数 である。会計法は,その基本的な法規関係が戦後の占 社会人教育、入試改革、カリキュラム改革)。 職員 多く必要とする手間ばかりかかるようなシステムにつ のおおきなリストラが起こる可能性がある。会計部門 いて批判が集中し,「会計法」をかえる運動が必要を を処理できる人材がいない以上、民間から受け入れざ 強調された。人事関係事務でも現在の昇格,昇給のや るを得ない。その分はじき出される可能性がある。高 りかた等についての批判が出た。 齢者の早期退職勧奨、人員の一層の減少。 縁故採用 全大教に対する要望では,以前に事務局長会議が要 者が増える可能性。 賃金体系が変わり能率給が一層 望した大学事務の簡素化について,現時点でどこまで 高まる。この提起を受けて議論が始まった。 簡素化されたのか調査すると共に,全大教として法規 の簡素化について運動をすすめてほしい旨の要望をす 独立行政法人化問題と大学事務の在り方 ることとなった。 最初は「国立大学の独立行政法人化問題と大学事務 事務の合理化における事務電算化については,文部 のあり方について」の議論である。独立法人化問題に 省の汎用システムについて,現在の汎用システムも, ついては、不安,疑問点が数多く出された。 また新汎用システムについても,事務電算化の最大の なかでも,人員削減が問題となり,独立行政法人化 メリットであるはずのデータの共有が一部を除き考慮 されれば定員削減がまぬがれるはずがなく,業務の一 されていないこと,新汎用システムはデータの副次的 括委託などで,人減らし,人件費減らしが一層行われ 利用が困難であること等,批判が多く出された。 るのではないか等,不安が多くだされた。更に,大規 それ以外でも,概算要求のやり方,入試のやり方な 模なリストラ,首切りがあり得るのではないか等雇用 どを標準化し,簡略化すべきではないかとの意見もだ についても多くの不安がだされた。また国立大の附属 された。また事務の簡素化については,アンケートを が切り捨てられるのではないかとの不安も附属学校事 事務職員にとり,すぐできるものはすぐ行う,といっ 務職員からだされた。 た取り組みを行った単組の報告もあった。 独法化反対の取り組みについて 大学事務のあり方についての議論 現在の独法化反対の取り組み状況について議論にな 大学で事務をしている特殊制についても議論となっ った。教授会でも独法化反対の決議を上げられない状 た。大学事務の特殊性、教官と話し合うことにより相 況,反対運動をしてもしかたがないとのあきらめムー 互理解,改善案も聞ける等の経験も出された。さらに ド等の状況のなかでどう運動を進めるかについて,議 大学事務の例として教室事務、学科事務について議論 論された。 がなされた。その中では、学科事務が忙しくなってき この中では,「これはおかしい」 と反対をしないと, ており、係長が3年で人事異動するため、結果的に責 大学の「独法化やむなし」の論議に歯止めがかからな 任を負わない形になっている大学の話もだされた。ま −5 9− た学科事務、教室事務に女性がおいやられ、そのため 次案)」について議論を行った。 に昇格でも不利になっている問題なども出された。ま その中では現在の文部省発令職員の位置づけ、大学に た学科事務、教室事務が削減され、学部事務に一元化 おける事務職員の位置と役割、研修のあり方等が議論 されている現状について、むしろ学部事務の分散処理 となった。その中では、事務長、課長補佐等の学内の を指向すべきではないか等の議論もだされた。一元化 生え抜き職員の管理職が元気を失っている現状がださ の問題では、事務処理の一元化はかねてから要求であ れた。あわせて、事務職員の質の向上の具体的施策、 るが,組織の一元化ではないとの意見が強く出された。 研修・人事異動のあり方等についても議論された。 「事 こうした中で大学の事務の在り方として管理部門に多 務職員の課題(第一次案)」について意見をかわした。 くの人を配置するのではなく,直接学生に接する部門 その中では、事務の現状をふまえ、肯定的な意見がだ に人を多く配置する必要があるとの共通認識となっ されたが、十分に煮詰めることができなかった。 た。 井上晶次 昇格の改善闘争,専門職員のポスト増 技術職員 現状について経験交流を行った。大きな大学ではじ めて7級までいける主任専門職員がついた反面、専門 職員の定数増の延びが止まっている現状が報告され 司会 佐々木敏昭(東京大) た。反面,本来的には大学に適しているはずの専門職 益子一郎(茨城大) 員制度がうまく運用されていない実態も出され,専門 林 泰公(和歌山高専) 職員が係長もあわせて発令されているという大学の実 井上晶次(名古屋大) 態の説明もあった。あわせて,専門職をうまく運用し 参加 3 3単組5 6名 ないと仕事がうまくいかないとの具体的事例に基づく 報告もあった。飛躍的に専門職員ポストが増加しない はじめに、益子部長の挨拶では、技術職員組織のあ と,団塊世代の待遇改善につながらないとの声も出さ り方について、中央執行委員会のもとに「組織の在り れた。 方検討小委員会」 を発足させ、検討を進めてきている。 一方,教育にふみこんだ専門性が高まっている例と 大学での研究の規模、技術職員の年齢構成、これまで して、「マネージメングプロッセッサー」が紹介され の取り組み状況など様々なちがいがあるが、その大学 た。この職種は,配置は2名、講義なし,教授会にで にふさわしい技術組織の在り方を模索していく必要性 ない,教育研究を担当しないが,数学コンクール、ア があり、今後集中的に議論を進めて行く方針を強調し ジアの法整備、東南アジアとの連絡調整を行うという た。 教育職だ。このようなポストは本来は職員のポストで ひきつづき、佐々木副委員長から、資料集の「1 9 9 9 あるし,このような専門性を養成していくことが必要 年度の取り組み方針」を基に昇格等についての説明が であり,こうした専門職こそが部課長と同等な待遇を なされた。これまで誰を昇格させるか文部省に権限が 受け得るとの報告もなされた。 あったが、今年度から各大学の判断で可能なったこと これらも受けて,「キャンパスガイドアドバイザー が大きな特徴であると報告された。 (仮称)」等の名称で,学生に対し,生活面での相談、 全般的なアドバイザーができうる専門職員をつくれば 昇格に関わる質疑応答は、退職2年前に6級昇格が できていない状況の問題に集中した。 どうかという話がなされた。あわせて,最近の昇格改 昇格に関するレポート報告では、東大生産研職組か 善の運動,専門職員の大幅増の運動がやや息切れして ら、技術職員の業務実態として、研究室技術職員の論 いるので,これを突破する重要性が強調された。 文数、試作工場技術職員一人当たりの工作依頼件数、 事務職員の課題(第一次案)に対する意見 計算機室利用登録者数の図をもとに紹介があり、5級 在職者の9 0年度から9 8年度までの6級昇格実態が報告 最後は、全大教が提議した「事務職員の課題(第一 された。この報告から、6級昇格における、世代間の −6 0− 不公平をなくすため、団塊の世代への特別対策が必要 術部が発足し、技術部運営についての協議事項(業務 であることの認識を深めた。 システム、研修、事務関連、予算、技術開発・継承、 福井、熊本から昇格に関するレポートが報告され、 評価システム)について、いつまでに検討し、いつか 質疑応答を踏まえ、佐々木副委員長から、昇格等につ ら実施するか平成1 6年度までのタイムスケジュールを いての情報は是非全大教に報告してほしいとの要望が 作成し進めていることが紹介された。 出され昇格等についての討論を終了した。 秋田大学からは、2 1世紀を展望した秋田大学技術組 東北大職組科研支部からは、今年度新たに文部省が 織の在り方について、技術組織の法的位置づけの必要 主催した、ブロック技術専門職員研修の経験をふまえ、 性、将来業務(人事)評価方法とその公表システムの 技術職員が主催者となって研修に取り組んでいること 確立、技術部(技術職員個人)の成果のアピール、高 を文部省に説明していく必要性を強調した。 度な専門研修による資質の向上、人事交流、自己評価 今回初めて参加した筑波大学、横浜国大に発言を求 め、筑波大学から、組織に関して大学の学部に相当す を行なえる組織の必要性を検討し、それに基づく要求 活動をしていることが紹介された。 る学群があり、学群の中に教育組織として「学類」、 岐阜大学工学部からは、工学部技術部運営委員会と 研究組織として「学系」がある。技術職員は「学系」 して、「技術部のありかた」をまとめた(平成1 1年3 に所属し人員は、2 0 0名強いる。技術職員組織は、研 月5日の教授会で理解された) 。そこでは、業務形態、 究協力部研究協力課に所属していることなどが紹介さ 管理運営、新規採用人事、技術部室の整備、技術部の れた。 予算、技術業務評価の6項目について具体的に提起が 横浜国大からは、技術職員は、旧態依然として、研 なされている内容の紹介がなされた。 究室に所属している、技術職員研修については活動が 行なわれていることが紹介された。 2日目は全大教中央執行委員会の下につくられた 「組織のあり方検討小委員会」で検討してきた、技術 今回の教研集会の主テーマである組織のあり方につ 組織の役割、技術職員(技術者集団)の役割、組織形 いては、議論に先立ちレポートに基づく報告が行なわ 態について、技術組織運営の4項目について井上委員 れた。 が報告した。 東京大学海洋研究所からは、国立大学の独立行政法 報告についての多数の活発な質疑応答、議論がなさ 人化、大学審議会の答申、学術審議会の答申に触れな れ、今後、教研集会で出された意見を踏まえ「組織の がら、技術職員は職場で真っ先に定員削減されるので あり方検討小委員会」 でさらに充実させることとした。 はないか、これに対抗するには、技術に関する予算・ そのためにも各単組、ブロックで検討を行ない意見を 人事権を確保し、組織運営を技術職員集団が積極的に 集中していただくこととした。 おこなうことが必要だ。仕事の進め方については、従 最後に研修に関する課題として、今年度から始まっ 来型の教官とのマンツーマン方式から、組織として仕 た、文部省主催の技術専門研修に参加した方からの報 事を受ける方式に変更していく必要があるなど、組織 告を受けた。 の在り方、仕事の進め方に対する問題提起がなされた。 まとめとして益子部長から、いろいろな事について 岩手大学からは、技術部長(学部長)から技術組織 の各大学からの情報を全大教技術職員部会に連絡して 見直しの提案があり、技術部運営委員会として専門委 ほしい。その情報を各大学に知らせるのも部会の重要 員会を設置し平成1 2年4月に新組織発足の予定で検討 な役目と思っているとの挨拶があり、全日程を終了し が進められている。 た。 検討に当たって、教育・研究のニーズに応えられる 技術部、技術職員の育成、技術の開発・蓄積の3つの 課題があり、それをクリアーするには、独立した集団 として人事権・予算執行権、大学の管理運営に参加、 業務評価システムの確立、の必要なことが報告された。 熊本大学教職組技術職員部会からは、本年4月新技 −6 1− 雇用主が学生である場合には、身分の不安定、低賃金 (学生にとっては高負担)状態にあります。こうした 金子一郎(北海道大) 状況下で、学生の健康、食生活向上のため最大限の努 力をしています。 現業職員 大学病院では患者さんの命を守るうえで、教職員の 労働条件、特に、残業・超過勤務は限界にあり、(夜 1 1時過ぎまでの勤務=事務職員)、(月1 3日からの夜 司会 金子一郎(北海道大) 勤=看護婦)定員増が焦眉の課題となっており、この 参加 6単組1 0名 点では、今回の看護婦等の増員要求署名の運動は労働 条件改善の「一歩」となったことが話されました。 環境問題では、「ゴミ問題」、廃棄物処理=資源回 岩手大2名、琉球大1名、山口大1名、静岡大3名、 収、特に、紙の回収・再利用は、資源保護、環境保護 東大1名、東北大1名、司会(中執)1名の6大学1 0 上、重要性を増しているが、個人のモラル(不法投棄 名の参加で行われました。 禁止)、国・地方自治体に対する予算措置等での組合 今回は、教務職員、組合書記の方の参加により、環 からの提案、実践の必要性が提起されました。 境問題などで、討議の幅が一層広がりました。 安全問題では、病院における使用済み注射針の処理 自己紹介に続き、琉球大から「琉大医学部における は、問題がなくなったが、今年は、「コンピュータ2 0 行(二)職員の定員削減数と行革行動計画」のリポー 0 0年問題=誤作動などによる事故防止シミュレーショ トを受けました。このリポートから、行(二) 職員は、 ン」が行われていることが報告されました。 1 9 8 5年から1 9 9 9年の1 4年間に、9 0人から4 1人へと激減 その他、職場における「人間関係」をめぐるトラブ (削減数4 9人、削減率5 4%)し、 部局の運営、職員 ルは、「一人、悩まず」組合に相談し、解決をはかる の昇格などに一層、重大な支障をきたしていること。 更に、行政法人化問題の「先取り」ともいえる、「行 ことが大事であること、特に未組合員の相談にのるこ 革行動計画」により、5年後の全面外注化などの新局 した。 とは、組合に対する信頼が高まることなどが話されま 面を迎えていることなどが判明しました。 今回は、これら、職場の問題と共に医療、介護、年 各大学での、職員各人の職場での問題をあげると、 金などの社会保障の貧困などにみられる悪政に対する 行(二)職員は、9次にわたる定員削減と、欠員不補 怒りと、これらの改善の必要性を確認するものとなり 充、低賃金、昇格が遅れており、更に、新たなる「独 ました。 立行政法人」化による身分の不安定さへの不安が生じ ていることなどが、各職場に共通するものとして率直 に述べられました。 昇格問題では、データで迫ることが、当局に説得力 を持つこと、そのようなデータを職場の仲間や、支部 役員と共につくることの重要性が確認されました。 更に、当局から行(一)事務への「異動」を薦めら れることがあるが、高齢になってから仕事を変わるの は「きつい」、事務職員は2∼3年で異動していくの で仕事を十分に教えてもらえず、異動に躊躇するケー スがあるとの「相談」があり、当局(研修係など)に、 対応させるよう要求するのも解決策のひとつであるこ となどが話されました。 職場の現状では、学生寮に働く調理師、栄養士は、 −6 2− 第1 1回教職員研究集会 閉 会 集 会 1 9 9 9年9月1 9日 司会 閉会集会を始めさせていただきます。皆さん、 置委員会から出た中間報告を国大協の方針・方向性と 3日間にわたりご参会いただきまして、どうもありが して確認したいという動きだったようですけれども、 とうございました。私は、全大教の中央執行委員で所 結論的には国立大学協会としては改めて独立行政法人 属は熊本大学ですが、司会を担当します伊藤と申しま 化に反対という態度を総会として確認した。したがっ す。閉会集会は私のほかに副委員長の三宅さん、岩手 て第1常置委員会の扱いは「各大学で検討していただ 大学の種倉先生の3人で担当させていただきます。 く素材」ということにとどまった状況であります。 時間の都合がございまして、閉会集会全体として4 0 一方、文部省は9月2 0日、これもご案内のとおりで 分を予定しております。その点、ご協力をお願いいた すけれども、1 0時から全国の学長を集めて、独立行政 します。 法人化問題について文部省の判断を説明するというこ まず、昨日の全大教の中央執行委員会を踏まえまし て、執行部報告を高橋書記長にお願いいたします。 とになっております。その中身としましては、これは 新聞記者等の情報ですから正確ではありませんけれど も、国立大学に法人格を与える。それから通則法をベ ースにして個別法で対応することになるだろうという 全大教中央執行委員会報告 のが何社かの新聞記者の情報として入っています。し たがってこの点でも決してわれわれは油断できない。 書記長 高橋浄司 しかし同時に、文部省としてはその判断だけではま ずいということで、短期間に各大学の意見を集中的に 高橋 3日間、熱心な議論をありがとうごさいまし 聞きたいということで、各ブロックで、学長さんにお た。書記長の高橋です。先ほど司会者からお話があり 集まりいただいて議論するという予定にもなっていま ましたように、今回は地理的に北のほうにあるという す。そうした状況を踏まえて現在の執行部の問題意識 ことで、1 2時半には終わってほしいという要望があり ですけれども、基本としては前からお話ししましたよ ましたので、そのことを踏まえ、ちょっとイレギュラ うに、独立行政法人化を含む設置形態の変更、特例法 ーな方式で申し訳ありませんが、4 0分にさせていただ か、個別法かという議論が今回の分科会でも出ました きます。したがって、この場で発言したい、あるいは けれども、基本的にどっちにしても反対だ、この立場 この場で議論してほしいというご意見もたくさんあり を明確にしたいということです。そうした立場から取 ましたけれども、しかるべき日に単組代表者会議を開 り組みを進めていくことにしています。 きたいと思っていますので、その場で集中的に議論し 2点目として、明日、文部大臣が判断すれば、いよ たいと思います。私からの報告は独立行政法人化問題 いよ本格的な闘争が始まる。もしも法人化という話で に限って、どういう局面か、これからどういうふうに あれば、われわれとしては総合的な大きな反対闘争を 闘っていこうとしているかということについて、昨日 組む。独立行政法人化になるまでには彼らの考えとし の執行委員会を踏まえての報告をさせていただきま ても、少なくとも3年から4年かかる。そうなればわ す。 れわれは3年から4年かけた大きな闘いとして展開し 現在の状況ですが、もうすでに皆さんご承知のとお なければいけない。したがってその取り組み方は全面 り、国大協は9月1 3日に臨時総会を開いて中間報告を 的になるし、ありとあらゆる戦術を考える。ありとあ まとめました。当初の国大協の読みとしては、第1常 らゆる戦術を考えて、総合的な取り組みをしていくと −6 3− いうのが基本です。 なお、昨日、日本経済新聞の記者が来ていまして、 したがってそのための体制の問題とか、長期の運動 委員長に対するインタビューをやりました。記者から の仕方については改めて臨時大会を開くなど、必要な 1 0月の段階で「日本経済新聞」に投稿してほしいとい ときにその判断をして具体的に提起したいと思いま うことになっていることもご紹介させていただきま す。今日の段階ではそうした問題意識を踏まえながら、 す。 当面、全大教としては明日午後、正式に文部省から学 最後に署名の問題ですけれども、昨日の執行委員会 長会議の中身について説明ないしは資料を渡されると でも議論をしたわけですけれども、署名をするという いう状況になっていますので、それを受けた段階で直 ことは決まっているのですが、具体的にいつの時期に ちに分析して、全大教の中央執行委員会として反対の すればいいか、それから相手は文部大臣なのか、ある 声明を出したいと思っています。 いは政府なのか、あるいは事態が動く中で要求内容が その中身は、いまお話ししたような中身ならば許せ 変化してくるといった状況があって遅れていますけれ ないということの表明になると思いますが、委員長声 ども、9月2 3日に改めて取り組む内容について確定し 明と併せて各単組に生資料をそのままファックスした ていきたいと思っています。その点、おわびしながら、 いと思います。夕方ぐらいになると思いますけれども。 ご確認いただければと思います。 その段階で改めて各単組から文部大臣に対して抗議 いずれにしても明日から本格的に闘争体制に入る。 打電、それからその中身を踏まえて、学長に対する申 今までは文部省や国大協などがどういうふうに言って し入れを一斉にやっていただきたいということです。 いるのか、何を言っているのかさっぱりわからない状 最低限のこととして、この2、3日でそのことをお 況もありましたが、かなり具体的な内容が明日出され 願いしたい。その上で中央執行委員会としては、その るだろうと予想されます。明日、その中身を分析しな 中身を踏まえまして2 3日に緊急の臨時中央執行委員会 がら徹底的な闘いを全面的に、しかも長期間、しかし を開いて今後の全大教の取り組みについて相談するこ 勝負するのはおそらく半年ぐらいの期間になるだろう とにします。この取り組みは、シンポジウム、分科会 と思っていますから、半年ぐらいに集中して闘いの戦 でもありましたけれども、こんどの闘いは学内だけで 線を拡大していくような問題意識でとりくんで行きた はなく、国民全体に広げた大きな取り組みにしなけれ いと思っていますので、その点を含めてよろしくご協 ばいけない。もし独立行政法人になれば、たとえば労 力をお願いします。報告を終わります。(拍手) 使協約ができますから、各個別の大学で交渉するとい う話になります。そうなったときに、多数の組合員、 多数の意識をしっかり獲得するようなことを視野に入 司会 いまの高橋書記長のご報告に対して何か質問 れれば、組合として学内構成員の意思を全部まとめ、 等ございましたら、若干、時間に余裕がごさいますの 組合員にしていくような、そういう取り組みをしつつ、 で、ありましたら挙手をお願いします。 ○ 大阪大学ですけれども、あらゆる戦術の中身に 同時に国民に向けて広く宣伝していきたいと思ってい ます。 ついてもストライキも含むのかどうか。 司会 そのほかにありませんでしょうか。 特にこの間、全大教としてやっていくことの一つに はマスコミに対する宣伝があります。この間いくつか ○ 質問というよりは要望に近いのですけれども、 教員が投稿したり、あるいは社説で出ていますけれど まず、世の中によく知ってもらうということで新聞報 も、全体としてはまず独立行政法人については慎重に 道や何かいろいろとやってもらうことも大事だとは思 議論しろというのがマスコミの状況です。したがって いますけれども、ぜひともこの際、新聞広告というの 全大教としても、マスコミに対していろいろな働きか でしょうか、まず世の中の人に、いま大学の現状はど けを続けていきたいと思っています。各単組でも、地 うなのか、どんなふうに改悪されようとしているのか 方紙、本紙を含めて、あらゆる方法で独立行政法人化 ということを訴えてほしいと思います。その一つの手 は反対であるという投稿を具体化していただきたいと 段としてたとえば新聞広告などがあるのではないかと 思っています。 いうことを考えていただきたいと思います。 −6 4− ◎ ちょっと異例な発言なのですけれども、この間 年続いた国立大学という設置形態が変えられていく。 の議論を聞いておりますと中央執行委員会にやってほ それが簡単に半年ぐらいの議論でいいのかという問題 しい、やってほしいという要望があって、皆さんのと 意識をもっています。ですから、投稿をして、国民の ころで、では具体的にどういうふうにやって、どうい 皆さんに知ってもらうことは一つの有力な戦術だとい う成果が出たからこういう問題を全国的に広げてほし うことで考えています。 いという発言がなかなか出てこないのですね。われわ それからストライキについてですが、この課題は当 れは指令も出しますけれども、指令待ちではなくて、 然それぐらいの重みをもっていると思っています。し いくつかの単組からは具体的に、地域でいろいろな活 かし、お金の問題や処分問題にもからんできますので、 動をしているという報告が上がってきております。地 実際に可能かどうかは今後検討していくことになろう 方紙なんかだったらわれわれが指令しなくてもその組 と思っています。以上です。 司会 それでは3日間の討論を踏まえまして集会ま 織でできると思います。 要望を言っていただくのは結構なのですけれども、 これからの闘いは中央の指令待ちで動くというのでは とめに移りたいと思います。全大教の森田書記次長、 お願いいたします。 なくて、ぜひ各単組の努力を積み重ねながらもやって いただきたい。これは私からのお願いですし、全大教 第1 1回教職員研究集会の まとめ 書記次長 森田和哉 の運動としてそういう運動をこれからつくっていく必 要があると思います。これは要望です。 司会 そのほかありませんでしょうか。ごく手短に お願いします。 ○ もちろん私どもとしてもずいぶん取り組んでい るつもりです。たとえば首都圏ネットワークを創立し 森田 全大教の書記次長で、この集会の事務局長を たり、学長に対する申し入れを行なうなど、そういう 務めさせていただきました森田でございます。3日間 ことはずいぶんやっているつもりではあります。それ の熱気ある議論と交流、本当にご苦労さまでした。今 以外に、たとえば全国版のところでの運動というよう 回の集会は何よりも独立行政法人化をめぐる緊迫した なことを考えればそういうこともお願いしたいという 情勢も反映し、5 8の組合、2 9 1名という、近来にない ことです。 参加を得て、集会自身、ある意味の緊張感と同時に新 司会 それでは時間の関係もありますので、高橋書 たなエネルギーを生み出しながら、成功裏に終わろう としているということをまず申し上げたいと思いま 記長よろしくお願いします。 高橋 最初に東大の要望ですけれども、私どもとし す。 ても問題意識としてはもっていまして、意見広告をや その上で集会の内容に関してのいくつかの特徴点に ろうと思ったら2 0 0 0∼3 0 0 0万の金がかかるわけです。 ついて申し上げたいと思います。一つは、もうすでに その金を皆さんにお願いしてやるのか、あるいは全大 それぞれの方々からも出されておりますが、国立大学 教の特別闘争資金を使ってやるのか、そのタイミング 等の独立行政法人化問題を文字通り最大の焦点とした はどういうときがいいのか、どういう意見広告を出し 集会となったということであります。全体集会、分科 たらいいのかといったあたりを検討している最中で 会を通じて独立行政法人化に強く反対する立場からそ す。 の問題点について多角的に議論が深められたというこ ただ、私どもの問題意識としては、中央紙に全大教 とが一つです。 委員長の投稿が載る、別の新聞にも大学教員の投稿が それから先ほど執行部報告にもありましたように、 載る、どんどんやっていくことによって、新聞社の問 取り組みの一段の強化についても相互に確認し合う、 題意識は現在は慎重論ですけど、投稿した場合の反応 そういう集会になったということがまず第1に挙げら は非常に大きいわけです。これは任期制とか国立学校 れると思います。 設置法と明らかに違う状況ですね。国民の多くも1 0 0 −6 5− 二つ目に、独立行政法人化に反対するということと 併せて高等教育の今日における社会的役割と責務、こ なのですけれども、意図的なのかどうかわかりません れを自覚しながら、いかにして大学・高等教育を充実 けれども、われわれが疲れているときにそういうこと させていくかということについての実践的なレポート をするという(笑)、非常に大きな怒りを感じており などに基づいて議論が深められたことが挙げられると ます。そういう緊迫した状況のなかで、ちょっと緊張 思います。この点で申し上げますと、たとえば学生教 しておりますが、集会宣言を読ませていただきます。 育問題の分科会での教育実践のレポート等に象徴され 一部修正がありますけれども、読みながら修正したい ています。福島大学や岩手大学、あるいは京都大学等 と思います。(集会宣言は別掲)(拍手) 司会 いまの拍手で宣言案は承認されたと考えても 々から、文字通り地道な学生との対話を通じた教育実 践の取り組み等々が報告されています。 いいですか。それでは改めてご賛同いただける方は拍 私ども大学人が国立大学の独立行政法人化に反対す るとともに、いかにして大学・高等教育を充実させて 手をお願いいたします。 (拍手) いくのか、そしてそれを社会にアピールする、そうい 司会 ありがとうございます。それでは閉会挨拶に う取り組みが実践的に動きだしているということが一 移りたいと思います。閉会の挨拶は全大教の佐々木副 つの特徴ではないかと考えます。 委員長、よろしくお願いします。 佐々木 「団結、頑張ろう」で閉会としたいと思い 三点目に申し上げますと、各職種間の協働、あるい は待遇改善、地位確立の取り組みであります。この点 ます。ご起立をお願いします。 では、研究・教育支援体制の分科会、これは昨年から 設けたものですが、この中で名古屋大学が、2 1世紀の 独立行政法人化を粉砕するため、全大教、団結、頑 張ろう。(頑張ろう三唱) 大学の創造、いわゆるアカデミック・プランと、そこ ありがとうございました。(拍手) における技術職員の役割をどう考えているのかという 司会 ご苦労さまでございました。以上で閉会集会 ことについて問題を提供されています。それから、各 を終わりにいたしますが、地元、岩手大学の皆さんの 職種の分科会等でも非常に地道ではありますが、地に お世話に心から感謝したいと思いますので、皆さんで 足がついた昇格改善や待遇改善、地位確立を求める政 拍手をお願いします。(拍手) 策的、具体的な取り組みの報告が行われたということ も一つの特徴として申し上げておきたいと思います。 司会をいただいた種倉先生から最後にご挨拶をいた だいて終わりにしたいと思います。 種倉 前に申し上げましたが、岩手大学の種倉です。 最後になりますが、集会の成功を大きく支えていた だいた岩手大学の実行委員会の皆さんに深く感謝を申 前副委員長です。岩手大学で教職員研究集会ができる し上げたいと思います。また、集会の熱い息吹と成果 かどうかという議論がありましたが、ぜひやろうとい を各職場にそれぞれ還流していただくということ、そ うことでやってきました。いろいろ至らない点があっ れから全大教執行部は独立行政法人化反対をはじめと たと思いますが、私たちも全国から皆さんをお迎えし した今後の取り組みに文字通り総力を挙げ、取り組み て学ぶ点がたくさんありました。この成果を十分今後 を展開していくということをお誓いして、まとめに代 の組合活動に生かしたいと思います。 えさせていただきたいと思います。(拍手) 岩手の名産はソバとか、いろいろありますけれども、 今日のおせんべいはちょっと味がないみたいな感じが されたかもしれませんけれども(笑)、レーズンを挟 司会 それではこの集会の集会宣言を採択したいと んだり、レーズンバターとかでつまみにしたりすると 思います。お手元に集会宣言の案があると思います。 うまいし、味がないけれども、見ているとジワーッと 集会宣言案の朗読を岩手大学の実行委員会のタケイ先 味が出てくるという岩手の特徴ですので、今後ともお 生にお願いいたします。武井先生、よろしくお願いい 付き合いのほどをよろしくお願いいたします。(拍手) 司会 ただいまの先生の挨拶で司会の任を解かせて たします。 武井 皆さん、3日間、お疲れのところ、先ほどの 報告ですと明日、文部省が重大発表をするということ いただきたいと思います。どうもありがとうございま した。(拍手) −6 6− 集 集 会 会 宣 宣 言 言 私たちは、9月1 7日から3日間岩手大学において、第11回教職員研究集会を開 催し、近年にない多数の参加を得て成功をおさめた。 本集会では、国立大学等の独立行政法人化問題をはじめとした「改革」問題と 各職種の待遇改善・地位確立について熱い議論と交流を深めた。 特に、最大の焦点である国立大学等の独立行政法人化のもつ問題点及び高等教 育の今日における社会的責務と充実の方向について議論を深めた。 国立大学の独立行政法人化について、先の9月13日に開催された国大協臨時総 会は、私たちの取り組みも反映して「反対」の再確認を行った。新聞報道等によ れば、文部省は、独立行政法人通則法では、大学の特性から無理があるとしなが らも、特例措置を盛り込んだ個別法で法人化をはかろうとしている。 大学教職員はもとより国民にもほとんど知らされていない独立行政法人化が、 「行政改革」や「25%定員削減」などの政府の方針に基づいて強行されることは、 断じて認めることはできない。 集会に参加した私たちは、後世に悔いを残さないために、大学の教育研究にた ずさわる者としての責務を自覚し、独立行政法人化反対の先頭に立って奮闘する ことを宣言するものである。 1999年9月19日 全国大学高専教職員組合 −6 7− 第11回教職員研究集会 原 稿 募 集 全大教時報編集部では、今日、私たちの直面し 〇掲載 投稿の翌月号(但し、投稿が多数の ている「改革」問題についての原稿を募集してい 場合は次号以降、刷上がり本文が5頁以上の ます。各大学・高専・大学共同利用機関の具体的 場合は分割掲載となることがあります)。 な動き、とりくみなどについて、下記投稿要領に 〇謝礼 よって、積極的にお寄せください。 ◇投稿要領 〇その他 〇文体 自由 〇原稿 2 0 0字詰原稿用紙、横書(ワープロ 投稿原稿は返却いたしません。 投稿にあたっては、標題、投稿者氏名、所 属大学名の英文表示および、連絡先を明記の の場合は、1行2 4字詰)。 〇字数 規程により謝礼(図書券)を進呈し ます。 刷上がり本文については、以下を基 上、封筒には、全大教時報投稿原稿在中と朱 準とします。 書してください。 2頁 3 5 0 0字 5頁 9 5 0 0字 抜刷は、50部以上とし、実費で作成します 4頁 7 5 0 0字 6頁 1 1 5 0 0字 ので、投稿時に、その旨の申込みをしてくだ 〇原稿締切り 毎奇数月1 0日 さい。 年間購読料 (6回刊) 3 0 0 0円 送 料 (年間)2冊まで1 5 0 0円 5冊まで1 8 0 0円 9冊まで2 0 0 0円 1 0冊以上全大教で負担 講 掲載論文の複写配布は、筆者と全大教の 読 了解のある場合を除いては、認めており 料 ませんのでよろしくお願いします。 全大教時報 第2 3巻5号 1 9 9 9年1 2月 (大学調査時報・大学部時報通算1 1 8号) 編集・発行 全国大学高専教職員組合 〒1 0 1―0 0 5 1 東京都千代田区神田神保町2―1 4 朝日神保町プラザ2 0 1号 6 7 1 振替口座 (0 3) 3 2 6 2―1 6 3 8 0 0 1 7 0―6―1 8 8 9 FAX (0 3) 3 2 6 2―1 印 刷 株式会社日本機関紙印刷所 〒1 0 5―0 0 0 3 東京都港区西新橋3―1 7―8 (03)3431―5131 FAX (0 3) 3 4 3 8―0 0 1 4