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加熱成形が可能なセルロース (PDF:88KB)
加熱成形が可能なセルロース − メカノケミカルポリマーアロイ化法 − セルロースやキチン・キトサンに代表される天然 多糖類は、地球上で最も豊富なバイオマス高分子で ある。しかしながら、汎用プラスチックのように加熱 しても柔らかくなる性質(熱可塑性)を持たず、また 溶解できる溶媒も非常に限られている。そのため、工 業的用途は紙やレーヨン繊維に限定されている。 我々の研究グループでは、機械的処理による天然 多糖類の材料化について開発研究を進めている。近 年、セルロースと熱可塑性の合成高分子の混合物を、 溶媒を加えることなく固体状態のままで、機械的粉 砕によるドライプロセスで処理すると、固相独特の 反応が起こり、セルロースと合成高分子が分子レベ ル(ナノレベル)で複合化(分子の混合・分散)するこ とを見出した 1−4)。我々はこの機械的(メカノ)処理 により化学的(ケミカル)反応を起こさせ、高分子(ポ リマー)を複合化(アロイ)する方法を、 「 メカノケミ カルポリマーアロイ化法」と呼んでいる。 75 ■■ 溶融温度/℃ 70 ■ ■ ■ ○ ○ えんどう た か し 遠藤 貴士 [email protected] 海洋資源環境研究部門 熱可塑性合成高分子としてポリエチレングリコー ル(PEG)を用いた場合を例として、複合体におけ るPEG由来の溶融温度の変化を図に示す。単純な 混合物では、ほとんど熱特性の変化はみられないが、 生成した複合体ではPEGの添加量に依存して融点 が低下し、分子レベルでの相容化が起こっているこ とが分かる。種々の分析結果から、この複合体では、 PEG分子がナノレベルでセルロース分子鎖の間に 進入したり、その表面に集積することにより、お互い の分子間に水素結合が形成されて相容化しているこ とが推定される。 得られた複合体は、セルロースのように熱可塑性 がない物質が高い割合で含まれている場合でも、加 熱により成形が可能である(写真)。 この手法は,これまで材料化方法が限定されてい た、様々なバイオマス資源や合成ポリマーを他の物 質と複合化して成形材料に転換できることから、新 規な高機能材料の開発やリサイクル技術として大い に発展が期待できる。 ■ ○ 65 60 ○ ○ 55 ○ ■ 単純混合物 ○ 粉砕生成物 50 45 0 5 10 15 20 PEG添加量/重量% G 図 PEG添加量による熱特性の変化 100 ( G単独) (PEG ) 写真 セルロース(80重量%)−PEG(20重量%)複合体から の成形体 関連情報 1) 遠藤貴士 , 広津孝弘 , 細川 純 , 特許第 2979135 号 , 科学技術庁第 59 回注目発明選定 . 2) T. Endo, R. Kitagawa, F. Zhang, T. Hirotsu, and J. Hosokawa, Chem. Lett., 1999, 1155. 3) 遠藤貴士 , 広津孝弘 , 細川 純 , 特許第 3099064 号 . 4) 遠藤貴士 , Cell. Commun., 7, 63 (2000). AIST Today 2001.8 19