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平成20年度 アジア産業基盤強化等事業 (モンゴルカシミヤに係る認証

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平成20年度 アジア産業基盤強化等事業 (モンゴルカシミヤに係る認証
平成20年度
アジア産業基盤強化等事業
(モンゴルカシミヤに係る認証制度及び品質管理実施可能性調査)
報告書
平成21年2月
株式会社 野村総合研究所
0
0
目
第1編
次
本調査事業の背景と目的 ........................................................................................ 1
1.背景............................................................................................................................ 1
2.目的............................................................................................................................ 2
第2編
調査結果 ................................................................................................................. 3
1.カシミヤ産業の現状分析............................................................................................ 3
2.モンゴルのカシミヤ産業の現状分析........................................................................ 15
3.今後の支援策のあり方 ............................................................................................. 20
4.モンゴル政府の取り組みとそれを踏まえたわが国の協力方法 ................................ 22
5.来年度以降に実施することが望まれる取り組み...................................................... 31
6.まとめ ...................................................................................................................... 33
0
第1編
本調査事業の背景と目的
1.背景
(1)カシミヤ不適正表示の頻発が引き起こすマーケットの不信感
近年、日本において、カシミヤ100%と表示しながら他の獣毛の繊維が混紡されている
等の不適正表示の事例が頻発し、カシミヤ製品に対する消費者の信頼低下により、日本
市場におけるカシミヤ製品の需要が減少傾向となっている。カシミヤ・キャメルヘア工
業会(以下、CCMI1)によると、このような事例は、主に中国産カシミヤ製品に多く発
生しているとされ、これに起因するカシミヤ製品の需要減は、日本にとどまらず世界的
に共通な傾向となっている。このような状況をうけ、日本の小売事業者は、カシミヤ製
品の取り扱いに慎重になっており、昨今、原料のトレーサビリティが厳しく問われてい
る状況下で、特に高級カシミヤ製品については確固とした産地証明や品質証明等がない
限り、百貨店等大手小売事業者には事実上納入できない状況にある。
(2)カシミヤ製品に対するニーズ
このような状況にありながらも、カシミヤ製品の高い機能性や品質に対する需要は少
なからず存在している。消費者のカシミヤ製品に対する信頼性を回復し、製品の品質向
上を図るため、カシミヤ製品には「品質管理、トレーサビリティの確保」が求められて
いるといえる。
(3)有望なカシミヤ生産地であるモンゴルとわが国との関係
モンゴルは、中国に次いで世界第2位のカシミヤ原毛の生産量であることから、わが国
にとって有望なカシミヤ供給国である。また一方、モンゴル政府は、カシミヤ産業を同
国の主要な輸出産業として育成することを目指すとともに、国内カシミヤ産業の高付加
価値化を望んでいる。
近年のわが国とモンゴルとの二国間関係の一環に、官民合同協議会の設立がある。日
本モンゴル首脳間で策定された「今後10年間の日本・モンゴル基本行動計画」に盛り込
まれていた投資貿易促進のための官民合同協議会が経済産業省とモンゴル産業通商省間
で設立され、2007年11月の第一回当該協議会において「モンゴルの一次産品(カシミヤ)
の工業化への協力」について合意された(本調査事業は、この合意に基づき実施される
ものである)
。
わが国の繊維産業にとっては、カシミヤの安心かつ信頼できる原料調達先の確保が重
要な課題になっていることから、技術協力の実施によりモンゴルから信頼できる原料調
達が可能となれば、モンゴルとわが国の両国経済の発展に資するWin-Winの取り組みが
実現することとなる。
1
Cashmere & Camel Hair Manufacturers Institute
-1-
2.目的
「1.背景」を踏まえ、モンゴルとわが国の両国経済の発展に資するWin-Winの取り
組みを実現するためには、モンゴル政府及び産業界の協力が不可欠であり、本調査事業
のおいて、モンゴル側の実施体制の受け入れ能力を確認し、我が国からの技術協力の可
能性を検証することを目的としたフィージビリティースタディーを実施した。本フィー
ジビリティースタディーを実施することにより、
「モンゴルのカシミヤ産業の活性化を通
じた経済的自立」と「日本の繊維産業への高品質、安全なカシミヤの安定的調達先の確
保」に資する協力の実現が期待されるものとなる。
3.検討方法及びスケジュール
委員会(4回)に加え、実際に現地へ訪問(2回)し、モンゴル側関係省庁の担当者な
らびにモンゴルカシミヤ事業者などとディスカッション等を行った。
・第1回委員会
:
2008年6月26日
・第2回委員会
:
2008年9月10日
・第3回委員会
:
2008年11月12日
・第4回委員会
:
2008年1月21日
・第1回現地訪問
:
2008年7月28日~8月1日
・第2回現地訪問
:
2008年12月14日~12月17日
4.検討委員
○委員長
近藤
健一
大正紡績株式会社
営業部長
重松
健
株式会社三越伊勢丹ホールディングズ
常務執行役員
栗谷
雅文
伊藤忠商事株式会社
羊毛担当部長
○委員
大和田
徳久
株式会社良品計画
繊維カンパニー
チーフマーチャンダイザー
皆川
魔鬼子
株式会社イッセイミヤケ
取締役
山口
真奈美
株式会社FEM 代表取締役
山口
泰
株式会社FEM 営業部主任(山口真奈美委員代理)
(敬称略)
-2-
第2編
調査結果
1.カシミヤ産業の現状分析
カシミヤ産業の現状分析として、世界のカシミヤ生産量および日本のカシミヤの輸入
状況について、とりまとめた。また、世界の2大カシミヤ生産国である中国産カシミヤな
らびにモンゴル産カシミヤの原毛についての比較分析を行った。さらに、日本市場にお
いて頻発しているカシミヤ表示偽装問題と問題への対応状況についてとりまとめるとと
もに、中国における偽造・偽装表示問題の発生要因についてとりまとめた。
その結果を以下に示す。
(1)世界のカシミヤ生産量
世界のカシミヤ原毛生産量のうち、中国産カシミヤ原毛が全生産量の約71%(約15,435
トン/年)、モンゴル産カシミヤ原毛が約15%(約3,173.6トン/年)を占めており、2国で世
界の85%強のカシミヤ原毛を供給している状況にある。また、中国、モンゴルにおける原
毛生産量は年々増加傾向にあり、両国とも2000年~2005年の5年間で約5,000トンの生産
増加となっている。
図表・ 1 世界の原毛生産量(2005 年)2
中国
モンゴル
イラン
3 ,1 7 3 .6
1 5 ,4 3 5 .0
2
出所:(中国)中国統計年鑑、(モンゴル)JETRO 資料
-3-
アフガン
その他
図表・ 2 世界の原毛生産量の推移(重量ベース)3
(ton)
※ 豪州・南米でも、20t程度の生産あり、その他に含む。
※ 本数字は生産量であり、製毛量は歩留まりを考慮すると約50%となる。
(2)日本のカシミヤの輸入状況
①原毛輸入量
わが国のカシミヤ原毛輸入量は、年々減少する傾向にある。ピークの1994年には1,800
トンを超えていたが、2007年には約243トンと、ピーク時の15%弱まで減少している。こ
れは、日本のカシミヤ需要が減少したことに加え、加工・製造拠点の海外展開が進んだ
ことも原因と考えられる。
主な輸入先を見ると、2007年には中国が74%(約178.1トン)を占めている一方、モン
ゴルは17%(42.4トン)にとどまっている。
3
出所:(中国)中国統計年鑑、(モンゴル)JETRO 資料
-4-
図表・ 3 日本のカシミヤ原毛輸入先と輸入量の推移4
1,200
ton
中国
モンゴル
その他
合計
1,000
800
600
400
200
0
1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 年
図表・ 4 日本のカシミヤ原毛輸入先と輸入量(2007 年)5
その他
22.6トン
(9%)
中国
モンゴル
その他
モンゴル
42.4トン
(17%)
中国
178.1トン
(74%)
②最終製品輸入量
わが国のカシミヤ最終製品の輸入状況を見ると、輸入量は近年減少傾向にある。数量
ベースでは中国が輸入量全体の95%と大きなシェアを占めているが、金額ベースの場合、
イタリアのシェアが17%(数量ベースでは2.5%)となり、中国は76%となっている。こ
れは、イタリアから輸入するカシミヤ最終製品の価格が、中国の価格と比較して高いこ
とを示している。2007年における最終製品1ピースあたり単価の差は、約3~3.5万円にな
る。英国から輸入する最終商品の単価もイタリアとほぼ同水準である。
4
5
出所:日本貿易統計
出所:日本貿易統計
-5-
モンゴルは量、金額ともに規模が小さく、どちらも全体の1%を占める程度である。さ
らに、製品単価も中国と同等の水準に留まっている状況である。
図表・ 5 日本のカシミヤ最終製品6の輸入量の推移と内訳(2002 年~2007 年)7
百万ピース
9.0
8.2
輸入量(合計)
8.0
7.0
6.2
6.1
5.4
6.0
5.0
4.4
3.9
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
2002
2003
2004
2005
2006
2007
年
図表・ 6 日本のカシミヤ最終製品の各国別輸入量の推移と内訳(2002 年~2007 年)8
2002
中国
2003
2004
2005
2006
2007
3,579,212
5,880,869
7,971,810
5,975,020
5,134,815
4,153,640
モンゴル
80,696
67,073
22,127
31,650
28,356
25,863
イタリア
125,500
128,348
141,168
145,859
132,697
110,751
英国
41,029
30,359
32,452
28,229
20,524
13,740
その他
合計
50,043
32,042
43,211
51,601
54,048
51,671
3,876,480
6,138,691
8,210,768
6,232,359
5,370,440
4,355,665
単位:ピース
6
ここでは、日本貿易統計における“ジャージー、プルオーバー、カーディガン、ベストその他これらに
類する製品(メリヤス編み又はクロセ編みのものに限る。)-カシミヤ毛製のもの”を集計した
7 出所:日本貿易統計
8 出所:日本貿易統計
-6-
図表・ 7 日本のカシミヤ最終製品輸入先と輸入量(2007 年)9
110,751 イタリア
(3%)
25,863
モンゴル (1%)
中国
モンゴル
イタリア
英国
その他
中国
4,153,640
(95%)
単位:ピース
図表・ 8 日本のカシミヤ最終製品の各国別輸入額の推移と内訳(2002 年~2007 年)
中国
2002
11,405,290
2003
16,591,908
2004
21,840,436
2005
18,798,285
2006
18,164,331
2007
15,923,892
モンゴル
イタリア
英国
その他
合計
305,248
3,076,457
1,111,110
686,673
16,584,778
242,067
3,196,313
823,066
615,380
21,468,734
74,522
3,505,688
844,004
578,461
26,843,111
104,759
3,793,162
893,979
566,440
24,156,625
123,789
3,717,400
606,721
725,924
23,338,165
130,388
3,551,118
533,323
603,673
20,742,394
単位:千円
図表・ 9 日本のカシミヤ最終製品輸入先と輸入額(2007 年)10
中国
モンゴル
イタリア
英国
その他
イタリア
3,551,118
(17%)
モンゴル
130,388
(1%)
中国
15,923,8
92(76%)
単位:千円
9
10
出所:日本貿易統計
出所:日本貿易統計
-7-
図表・ 10 日本のカシミヤ最終製品輸入先別の単価(2007 年)11
千円/ピース
45.0
38.8
40.0
35.0
32.1
30.0
25.0
20.0
15.0
10.0
3.8
5.0
中国
モンゴル
5.0
0.0
11
出所:日本貿易統計より作成
-8-
イタリア
英国
(3)中国産カシミヤ原毛とモンゴル産カシミヤ原毛の比較
日本の事業者は、カシミヤ生産の絶対量に比例した部分もあり、また、中国産カシミ
ヤの特徴であるホワイトカシミヤ、繊維が細いなどが受け入れられていることに起因し、
中国産カシミヤの取扱量が多い。以下に、中国産カシミヤ原毛とモンゴル産カシミヤ原
毛の特長を示す。
【中国産】
中国産カシミヤは、繊維が細く短い。色はホワイトが圧倒的に多く、表面はぬめり
感がある。内モンゴル自治区のアラシャン地方のものが、特に高級品とされている。
【モンゴル産】
中国産より繊維が太く長い。中国産よりも風合いは劣る(ただし、モンゴル産カシ
ミヤ独特の風合いが良いとする向きもある)が、強度は高い。
図表・ 11 中国産カシミヤ原毛とモンゴル産カシミヤ原毛の比較
色
産地
平均の太さ(μm)
平均繊維長 mm)
中国
13.5
28
モンゴル
15
40
中国
14
32
と白の中間
モンゴル
15.5
45
長いが太い
中国
14~15
34~36
モンゴル
16
55
特徴
ブラウン
ライトグレー
ホワイト
細いが短い
濃い色の染めに適する
太さと長さは、ブラウン
鮮明色の染めに適する
なお、CCMI12によれば、CCMIがカシミヤの定義を提唱し、2007年1月4日に米国の毛
製品品質表示法 (The Wool Products Labeling Act of 1939)に法律として明文化された。
図表・ 12 米国の毛製品品質表示法によるカシミヤの定義13
The Wool Products Labeling Act of 1939(旧) New Statute – 15 U.S.C. 68b(6)(新)


カシミヤ山羊の毛またはフリースを含有
する製品の繊維内容
(Fiber content of a product containing
hair or fleece of the Cashmere Goat)
12



カシミヤ山羊(Capra hircus laniger)
のウブ毛由来の繊維
平均繊維直径 19 ミクロン以下
30 ミクロン超の直径の繊維が重量比で
3%未満
平均直径を中心とする変動係数
(Coefficient of variation) が 24%未満
CCMI(カシミヤ・キャメルヘア工業会)は 1984 年に設立された高級獣毛繊維の主要加工業者の国際
団体である。その使命はカシミヤ・キャメルヘア・スーパーファインウール製品に対する信頼性を維持す
ることである(www.cashmere.org)
13
出所:CCMI
-9-
(4)日本市場におけるカシミヤ表示偽装問題と対応状況
わが国では、カシミヤ製品の品質表示偽装およびそれに伴う製品回収に係る問題が数
多く報告されている。我が国では、カシミヤ製品の品質表示偽装などの不適正品質表示
は、
「家庭用品品質表示法第3条(および繊維製品品質表示規定第3条1号)」
、
「不正競争防
止法2条1項13号」、
「不当景品類及び不当表示防止法4条1項1号」といった法により規制さ
れている。なお、CCMIが2006年10月から実施した店頭製品検査や製品販売会社の自主
検査により、カシミヤ混合率表示が家庭用品品質表示法の基準を満たしていなかった製
品の存在が発覚し、2007年4月までに約80万点が自主回収された。
このようなカシミヤ表示偽装問題への対応策を検討するため、2007年9月、公正取引委
員会の要請によりカシミヤ100%ラベルを発給している(財)毛製品検査協会を事務局と
した検討会が開催され、カシミヤ品質表示の適正化に向けた対策案が検討された。
また、2008年5月、日本繊維産業連盟は「輸入繊維製品の品質ガイドライン」をまとめ
た。企業に対して、輸入前に自社で直接品質を検査し、問題製品を持ち込まない体制を
確立するよう求めるなど、加盟各社に販売前の品質確認と管理の徹底を促している。
図表・ 13 カシミヤ表示偽装の発覚した事例14
14
出所:日本経済新聞、読売新聞
-10-
図表・ 14 輸入繊維製品の品質ガイドラインでまとめられた各段階における注意事項15
15
出所:日本繊維産業連盟(輸入繊維製品の品質ガイドライン検討会)資料、2008 年 4 月
-11-
(5)中国における偽造・偽装表示問題の発生要因
CCMIによれば、世界の主要なカシミヤ生産国かつ日本の主要な輸入元でもある中国で、
カシミヤ偽造・偽装表示が行われる背景として、昨今の品質表示問題は単一の要因によ
るものではなく、主に下記の4つの状況が複雑に絡み合って発生を誘発していることが
指摘されている。
①
需給の不均衡
②
価格構造の歪み
③
流通ルートの複雑化
④
混入異繊維の多様化、偽装技術の高度化
以下、これら4つの原因についてCCMI資料を概説する。
①
需給の不均衡
世界的にカシミヤ需要が増加する一方、中国では需要に見合うだけの供給が不足し
ている。その結果、需給量にギャップが生じている。2007年4月に北京金鷹羊絨集団に
よって発表された推定値によれば、中国国内におけるカシミヤ需要は計11,100~
12,600トンであるのに対し、供給量は計6,800~7,800トンであるとされている。需給
ギャップは約4,000~5,000トンの需要超過であり、この超過分は、モンゴルからの密
輸や、偽装毛によって賄われている可能性がある。
図表・ 15 中国におけるカシミヤの需給状況16
カシミヤ需要 計11,100~12,600トン
カシミヤ供給
• カシミヤ製品
• 整毛輸出
• 国内消費
• 国内原料生産
• モンゴルから輸入
• その他から輸入
輸出
5,600~6,300トン
3,000~3,500トン
需要超過分
2,500~2,800トン
約4,000~5,000トン
需要増の原因
5,000~6,000トン
1,500トン
300トン
供給減の原因(内モンゴル自治区について)

欧米市場における消費拡大

牧民の定住化政策による放牧農家の減少

カシミヤ製品低価格化による幅広い消費者層

環境意識が高まる中、砂漠化防止のための放牧
への市場拡大

16
計6,800~7,800トン
制限による牧畜の減少
中国内の富裕人口増加による国内需要の拡大
出所:北京金鷹羊絨集団(CCMI 資料、平成 19 年 4 月)より作成
-12-
②
価格構造の歪み
カシミヤ市場では、原料価格が上昇する一方、最終製品の小売価格は大きく変化し
ていないため、加工・製造事業者の経営が窮地に追われている。
カシミヤ整毛価格の例では、2003年~2007年の5年間で60年~70%上昇したとする
報告17もあり、事業者の調達コストが急速に増加していることが伺える。一方で、米国
や日本のような消費国の大手小売事業者の価格引き下げに関する圧力が強まってきた
ことに加え、中国国内のカシミヤ加工業者の増大に伴う価格競争が激化していること
により、卸価格や小売価格は伸び悩む傾向にある。そのような中で、低価格を維持す
るために他の安い獣毛を混入する例も散見される。
③
流通ルートの複雑化
1980年代後半、中国では、それまで国家管理商品として国が管理していたカシミヤ
製品を民間へ開放・自由化した。この結果、産業・流通構造に以下の様な変化が起こ
った。
・
小規模なカシミヤ整毛工場が乱立
・
多数の仲介業者やファブレス事業家の出現
・
多数のニット工場の出現
・
大手企業の協力工場、下請け工場の増加
この結果、産業・流通構造が極めて複雑化したため、カシミヤの加工・製造経路を
トレースすることが困難となった。そのため、たとえ偽装が行われても、それが発覚
し難い産業構造が形成されたといえる。
CCMI 資料「カシミヤ製品品質表示問題 その背景と防止策」では、Schneider Cashmere Market
Indicators による国際価格の推移からこのように報告している
17
-13-
④
混入異繊維の多様化、偽装技術の高度化
中国におけるカシミヤ偽装では、当初羊毛やアンゴラ山羊(モヘア)などの混入が
行われていた。その後、スケール形状がカシミヤと近く、顕微鏡による判別難易度が
高い繊維であるヤクの毛や綿羊絨(めんようじゅ)の毛といった他の獣毛を混入する
ケースが増加した。特に綿羊絨は、産毛の毛質がカシミヤ山羊の毛質と似ていること
から、顕微鏡検査でも判別が難しい。また、死んだカシミヤ山羊の死体や皮からウブ
毛を採取・回収した毛(スライプカシミヤ)が混入されるケースもある。
また、羊毛や他の獣毛の繊維表面スケールの厚さや形状を物理的または化学的に変
形させる加工をして偽装するケースもある。例として、引っ張り加工や薬品による毛
表面加工が挙げられる。
“偽装技術”に関する研究開発が行われているとの仄聞もあり、
偽装技術は日々高度化していると言えるかも知れない状況である。
-14-
2.モンゴルのカシミヤ産業の現状分析
(1)調査の手法
モンゴルのカシミヤ産業の現状分析にあたっては、まず有識者によって構成された現
地調査団を構成した後、実際に現地へ訪問(第1回:2008年7月28日~8月1日、第2回:
2008年12月14日~12月17日)し、モンゴル側関係省庁の担当者ならびにモンゴルカシミ
ヤ事業者などとディスカッションを行った。また、モンゴルカシミヤ事業者の現地工場
および原料畜産農家の現況などについての視察も行った。現地調査団メンバー、調査主
体は以下のとおり。
【現地調査団メンバー】
・近藤健一氏
大正紡績(株) 営業部長
・重松健氏
(株)三越伊勢丹ホールディングズ
・栗谷雅文氏
伊藤忠商事(株)繊維カンパニー
・大和田徳久氏
(株)良品計画
・皆川魔鬼子氏
(株)イッセイミヤケ
・山口泰氏
(株)FEM 営業部主任(第2回目のみ)
・由上睦子氏
(株)FEM(第1回目のみ)
常務執行役員
羊毛担当部長
チーフマーチャンダイザー
取締役
【調査対象(一部)】
・Gankhuyag氏
国会議員(羊毛・カシミヤ協会現会長)
・Sedvanchig氏
国会議員
・Batbayar氏
元国会議員(羊毛・カシミヤ協会元会長)
・Badarch氏
食糧・農牧業・軽工業省軽工業局長
・Batjargal氏
外務省貿易経済協力局副局長
・Tumenbayar氏
羊毛・カシミヤ協会副会長
・市橋康吉氏
在モンゴル日本国大使館特命全権大使
・小貫和俊氏
JICA
次長
・羊毛カシミヤ協会
・Gobi社
・Goyo社
・T and I社
・Sunshiro社
・Ezio Foradori社 ・Sor Cashumere社
・丸紅ウランバートル連絡事務所
・原料畜産農家
など
-15-
(2)モンゴルのカシミヤ産業の現状分析の結果
関係省庁担当者ならびにモンゴルカシミヤ事業者などとのディスカッションならびに
現場の視察を行った結果、有識者からモンゴルカシミヤ産業の優位性ならびにモンゴル
カシミヤ産業が抱える課題について数多くの意見が出された。その結果を以下にまとめ
る。
①
モンゴルカシミヤ産業の優位性
モンゴルカシミヤ産業に対する優位性について、各委員から以下の意見が出された。
・モンゴル国民の特性
 モンゴルは極めて信頼できる国であり、従業員のモラルは高いと感じる。
・モンゴルカシミヤ産業の可能性
 ものづくりに対して誠実であるといった感があり、モンゴルカシミヤ産
業に大きな将来性を感じている。
 適切な支援を実施すれば、品質管理が不十分な企業においても適切な品
質管理を実施する素養を十分備えているといえる。
 中国製の品質不安に対応して、確実なトレーサビリティを確立し、消費
者へ新たに価値提供をすることが可能である。例えば、原毛の調達に関
しては、産地と加工所が直結しているように、流通経路がシンプルなこ
とから、他の獣毛等が混入する可能性は低く、トレーサビリティを構築
できる素養がある。
 各カシミヤ企業は、積極投資により製毛から最終製品までの一貫生産を
追求し、事業拡大に意欲的である。
 素材で勝てなければ、商品では勝てない。しかし、モンゴル産カシミヤ
は素材で勝てる可能性を数多く秘めている。それらの可能性をいかに引
き出し、実現できるかが今後の重要なポイントになる。
 ただし、単なる「モンゴル製」表示では消費者への説得力はない、産地
や農牧民(つくり手)を感じる消費者へ直接的な表示が重要。これは広
域生活、広域流通の中国には全く不可能で、可能とすればモンゴルの強
み、スペシャリティとなる。
・モンゴル政府のカシミヤ産業に対する熱意
 モンゴル政府の本技術協力への理解度も高い上、カシミヤ産業に対する
姿勢も評価できる。
-16-
所管省庁
畜産農家
紡績企業
Ministry of
Food Agriculture
Ministry of
Industry and Trade
-17-
流通・輸出
カシミア糸
撚 糸
スレイパー
紡 績
カシミア原毛
選 毛
整 毛
産毛の収集
畜産
Cooperative
仲買人
農家
Group
関係主体
産毛の採取
サプライチェーン
カシミア山羊
の飼育
図表・ 16 モンゴルにおけるカシミヤ産業のサプライチェーン
②
モンゴルカシミヤ産業が抱える課題
一方で、モンゴル産カシミヤを高付加価値化していくにあたって、大きく6つの課
題が指摘された。
 トレーサビリティ確保、適切な品質管理の実施
・トレーサビリティ確保、適切な品質管理により、付加価値が向上すること
をモンゴル企業は認識していない。適切な仕組みづくりと啓発が必要。
・事実、ISO を取得している企業はほとんどいない。
 紡績工程における調合段階までに異繊維混入が生じる可能性、調合
段階以降においてロット違いなど糸の不適正使用が生じる可能性が
ある。
・また自社で分別した原毛が混在しないよう、地域別、色別に袋に詰み分け、
書面で管理するなどの取組を実施している企業もほとんどいない。
 設備の高度化
・設備の老朽化は否めず、メンテナンスが必要。
 人材の育成
・総合的(生産工程、設備(メンテナンスを含む))な技術を持つ人材を育て
ることが必要。
 マーケティング力の向上
・消費者ニーズを的確に把握し、消費者起点のものづくりを行うことが必要。
・消費者にとって、本質的に良いモノに対する需要の高まりに対応するため、
「素材を楽しむ」という日本人の最近の傾向での製品作りが必要。
 デザイン力の向上
・デザイン性を重視し、消費者が求めるデザインを考慮したものづくりを行
うことが必要。
 高機能な製品の開発
・素材を混合することでさらなる付加価値を高めることも可能。
・例えば、綿に 5~10%カシミヤを混ぜると大変暖かい。モンゴルは寒冷地で
あることから、国内需要も期待できる。ヤクを 30~40%ブレンドすること
で、ウール 100%のように暖かい製品にすることも可能。日本の先進的な技
術が役に立つだろう。
・製品によっては、高機能な製品としつつ、コストを削減することも可能。
これら6つの課題をバリューチェーン上で表記すると次表となり、ほとんどの段階
において、モンゴル産カシミヤの高付加価値化を実現するために克服すべき課題が存
在しているといえる。
-18-
図表・ 17 バリューチェーンから見たモンゴルカシミヤ産業における課題
(農)
企画
牧畜
(工)
調達
整毛・染色
調合
(商)
紡績
デザイン
縫製(ニット)
取引(輸出等)
販売
品質管理
トレーサビリティ確保
品質に関する視点
原産地の明示
異繊維混入の防止
糸の不適正使用(ロット違い)の防止
技術者のスキル向上
技術者のスキル向上
高性能設備・機器の導入
高性能設備・機器の導入
表示偽装の防止
企画・デザイン
マーケティング
品質以外に関する視点
企画力の向上
デザイン力の向上
マーケティング力
の向上
オーガニックの確保
その他
機能性の高い製品の開発
持続可能性の確保
12
19
3.今後の支援策のあり方
モンゴル産カシミヤの高付加価値化を実現するために提示された「6 つの課題」の克服
のための方策として、これまでにモンゴル・羊毛カシミア協会より日・モ官民合同協議
会に対し、日本の援助による生産能力の高い羊毛紡績工場の設立や、モンゴルカシミヤ
製品の知名度向上に資するマーケティング活動の実施が要望された。しかし、カシミヤ
100%と表示しながら、他の獣毛の繊維が混紡されている等の我が国の不適正表示の事例
が物語るように、トレーサビリティが確保され、品質が保証されなければ、企画力やマ
ーケティング力をいくら向上させたところで、市場からのモンゴル産カシミヤの評価は
期待できない。つまり、
「品質の向上:品質管理とトレーサビリティの確保」が最優先課
題であり、この課題の克服がモンゴルカシミヤ産業の高付加価値化に求められる最低限
の条件であるといえる。
また、モンゴル産カシミヤは素材で勝てる可能性を数多く秘めており(例:コシがあ
って堅牢度が高い。ナチュラルカラーなど)、中国のホワイトカシミヤを目指すのではな
く、モンゴル産カシミヤの特長を変えずに、モンゴル産カシミヤ独自の良さを追求すれ
ばよいといえる。ただし、品質を決める要素の一つとして、「1グラムあたりに他の色の
毛が何本入っているか」があるが、現状のモンゴル産のカシミヤ原毛を購入すると、5~
6%も他の色の毛が混じっており、結果的に商品の品質が落ち、原毛価値が低いと判断さ
れているのが実状である。
以上の観点から、素材で勝てる可能性を十分引き出すため、まずは、ベースとなる品
質の向上、特に品質管理とトレーサビリティの確保を進めていくことが重要であるとい
える。特に、原毛段階は全工程の起点であり、
「素材の品質」を向上させることが必要で
ある。さらに、市場ニーズを満たすには「原毛段階以降の工程での品質」も向上させる
ことが必要である。
20
図表・ 18 ビジネス・パターンから見た今後の支援策の方向性
モンゴルカシミヤ産業成熟度
(モ
=ンゴルカシミヤ事業者の意向)
モンゴル
原毛
海外
モンゴル
原毛
原毛の輸出
整毛調合
紡績
縫製
整毛調合
紡績
糸の輸出
縫製
海外
モンゴル
原毛
整毛調合
紡績
縫製
販売
•• 100%カシミヤのきれい
100%カシミヤのきれい
な毛・糸を作る仕組みが
な毛・糸を作る仕組みが
必要不可欠。
必要不可欠。
販売
•• 具体的には
具体的には 「品質管理
「品質管理
(不純物の排除)」、「ト
(不純物の排除)」、「ト
レーサビリティの確保」が
レーサビリティの確保」が
重要。
重要。
製品の輸出
販売
海外
① 原毛は全工程の起点であり、 「素材の品質の向上」が必要である。
② さらに、市場ニーズを満たすには「原毛以降の工程での品質の向上」が必要である。
21
4.モンゴル政府の取り組みとそれを踏まえたわが国の協力方法
モンゴルカシミヤ産業において、「品質管理(不純物の排除)」
、「トレーサビリティの確
保」を進めていく上で、政府の現状の取組事項(一部検討段階もある)を把握するととも
に、我が国の協力方法について検討した。協力方法の検討にあたっては、既存のモンゴル
政府が実施している取り組みをベースとして、我が国が実施可能かつ費用対効果に優れる
協力方法を検討した。
事項は、トレーサビリティの確保に資すると想定される「原料取引所創設」、
「品質管理」、
「原毛の検査」の3点にまとめられる。以下にその内容を示す。
(1)原料取引所創設について
現状の検討事項・取組事項
2007 年 12 月 26 日、モンゴル内閣は 2008 年を“食糧供給・安全の年”と宣言し、その
活動計画書に、
“原料調達の調整に関する法案”を作成し、国会で審議するよう規定した。
それをうけ、現在モンゴル政府は、原料取引所創設に関する法案の策定を進めていると
ころである。
具体的には、
「家畜関連原料の品質が悪化しており、その原料から産出された製品の国
際市場での競争力が低下している」ことや、「家畜関連原料を輸出する際、検査・管理の
体制が完全に整備されていない」こと、「個人や法人が原料売買における権利・義務を守
らず、違法行為が行われている」ことなどを背景とし、「家畜関連原料を調達・供給・運
搬・保管・使用・販売・品質管理・また原料取引所の新設やその活動に関わる関係を調
整する」ことを目的としている。
現在、原料取引所の運営方法の検討を進めており、取引所は各県に設置され、取引所
ごとに県の産地証明が出ることとする予定となっている。また、取引所外で取引を行っ
た場合、家畜税の支払いを義務づけ、取引所で取引を行った場合、家畜税を免除し、製
造業者側にも、取引所から購入したカシミヤの証明書の提示を求め、証明書がある場合、
税金を免除する措置を検討している。
日本への要望事項・委員からの意見
現地調査において、ディスカッションを行った結果、日本への要望事項として、以下
の 2 点が挙げられた。
・トレーサビリティに関する専門家の派遣
 現在、モンゴル政府では、原料取引所の設置に関する法案を作成するなど、「原
毛段階」におけるトレーサビリティの確保の一助を担う検討が進められている。
 モンゴル産カシミヤの高付加価値化を実現するため、原料取引所法案と関連する
22
トレーサビリティの仕組みを構築できる人材が必要である。
・原料取引所創設に向けた支援
 取引所に関するアドバイザーや顧問としての提案
 過去に取引所創設に向けたモデル事業を実施したが、取引所の運営方法を検討で
きる材料が少なく、頓挫した経験があることから、日本の様々な取引所に関する
情報の提供を期待。
わが国の協力方法
要望事項を踏まえ、我が国としての協力方法を検討した。
トレーサビリティに関する専門家の派遣としては、モンゴル政府へのトレーサビリテ
ィに関する日本人有識者の派遣が考えられる。具体的な有識者の派遣スキームについて
は後述するが、トレーサビリティの構築にあたっては、産地証明が必要であり、付加価
値をつけるのであれば、県単位、村町単位の産地証明が求められ、証明制度の運営主体
は、国や公的な第 3 者認証機関となることが望ましい。事例としては、オーガニック・
コットンに関する認証制度が広く普及していることから、参考とすることが望ましい。
オーガニック・コットンに関する認証制度の場合、トレーサビリティに関するチェッ
クについては、専門の審査員により、工程中の全ての工場において、文書審査と現場審
査のチェックを実施している。文書審査では、管理マニュアルや取引記録のチェック、
取引企業の情報との照合などを行う(別途、抜き打ちでの書類チェックもあり)
。現場審
査では数量データのつじつまが符合しているかチェックするとともに、従業員インタビ
ューやサンプリング調査も行う。ダブルチェックにより、正しく管理されていることを
確認するなど、厳格な審査を行っている。
原料取引所創設に向けた支援としては、他国の類似する取引所に関する情報提供が有
効であり、情報提供に向けて情報収集に係る調査の実施が挙げられる。具体的な調査項
目としては、取引所に必要な機能、取引所の運営体制、取引所の運営方法、取引所の運
営に必要なリソース(人材、資金、設備、インフラ)等を取りまとめる必要があると考
えられる。
-23-
図表・ 19 原料取引所創設の具体化およびトレーサビリティ確保に向けた支援策の全体像
(原料取引所)
(製品加工)
A ソム
モンゴルカシミヤ基準に関する
「技術条件(MNS 38:2001)」
色
白
B ソム
✓
C ソム
明るい色
暗い色
級
加工時期
加工企業
加工工程
製品情報
・製品種類
・製品量
条件
カシミア毛、不要毛共に白であること
カシミア毛が黄色っぽい、白っぽい、不要毛が赤茶色
である
B ソム:3級
カシミア毛が暗い色、不要毛が黒色である
カシミア平均ミクロン
取引
モンゴル産
カシミヤ
(整毛・染色・調合段階)
A ソム:最上級
カシミア内に占める不要毛
の割合
最上級
13.0-15.5
20%まで
1級
15.51-16.5
20%まで
2級
16.51-17.5
20.01-30.0%
3級
17.51-19.0
30.01-60.0%
• 追加的に提供する情報
• 原産地証明書
C ソム:2級
• 原毛グレード証明書
• その他の情報
(取引日、取引量等)
(紡績企業/縫製(ニット)段階)
製造時期
製造企業
製造工程
製品情報
・製品種類
・製品量
(流通段階)
原産地の明確化
原毛グレードの明確化
情報の明示
(短期的施策)
(長期的施策)
+
トレーサビリティ有識者の派遣
24
専門家、検査員等の派遣
設備機器、システムの導入支援など
輸送日
輸送元
輸送先
輸送量
輸送手段
(2)品質管理について
現状の検討事項・取組事項
モンゴルにはカシミヤ関連企業が 40 社程度存在するが、ISO 取得企業はわずか 3 社に
とどまっている。モンゴル政府も品質向上の取り組みを重要な課題であると認識してお
り、ISO 取得に対する奨励制度を確立するなどの取り組みを進めているが、普及してい
ないのが実状である。
また、最終製品の品質低下に特に影響を及ぼしている製造工程はスピニングであり、
特に機械のメンテナンス技術者または技術者を育成できる人材が不足している。これは、
現在のモンゴルでは製造パートごとに担当技術者を育成しているため、幅広い工程を管
理できるトータルエンジニアがおらず、その結果、総合的な製品開発ができない状況に
あること、工場内で技術の伝承を行える仕組みが構築されておらず、技術レベルが低下
していることなどによる。
さらに、モンゴルのカシミヤ企業にはトータルエンジニアがいないため、設備が古く
なると、廃棄して新しい設備を導入しようと考える傾向にあるが、実際はパーツのみの
修復をすればよいことを知らない。また、品質管理に資するデータ管理などのルーチン
ワークができていない事業者も多い。
日本への要望事項・委員からの意見
現地調査において、ディスカッションを行った結果、日本への要望事項として、以下
の 2 点が挙げられた。
・TQC(Total Quality Control)専門家の派遣
 カシミヤ生産工場の全工程の運営管理、設備機器のメンテナンス、適切な投資判
断などの全体管理を実施できる TQC 専門家を工場に派遣することで、全体の最
適化・品質向上を図ることが可能となる。
・ISO 取得の促進
 モンゴル国内における品質管理水準の高度化を実現するためには、ISO 取得を促
進させる必要がある。
 ISO 取得を促進させる取組が必要である。
わが国の協力方法
要望事項を踏まえ、我が国としての協力方法を検討した。
TQC(Total Quality Control)専門家の派遣としては、個別事業者への TQC に関する
日本人専門家の派遣が考えられる。具体的な専門家の派遣スキームについては後述する。
また TQC 専門家の派遣のみならず、現地での TQC 専門家を育成するための技術指導講
習会の実施などが挙げられる。さらに、我が国の優れた品質管理を習得するためのモン
ゴル企業の研修生の受け入れなども有効な支援策として考えられる。
25
ISO 取得の促進に向けた支援としては、事業者の「品質の重要性」についての意識変
革や ISO の取得支援が考えられる。例えば、ISO 取得の必要性や取得することによるメ
リットなどに関する事業者への普及啓発活動やグローバル・レベルで要求されている品
質管理水準についての指導や講習の実施などが挙げられる。また、現在モンゴル国内で
実施されている ISO 取得支援研修をサポートできる指導者の派遣や個々の企業への ISO
専門家(指導員)の派遣なども有効な支援策として挙げられる。
-26-
(3)原毛の検査について
現状の検討事項・取組事項
モンゴルでは、基準策定機関である測量・基準庁と、検査実施機関である国家専門検
査機関(副首相が直接管轄する機関。各地方にも地方検査機関がある)が、カシミヤの
検査・認証を担当している。カシミヤ検査の実施にあたっては、「基準」の遵守状況につ
いて事業者への抜き打ち検査が行われている。しかし、カシミヤ分野の専門検査員が 2
名しかおらず、検査時には羊毛・カシミヤ協会と協力して専門検査員を派遣するなど、
我が国の検査体制よりも相対的に実効性は低いといえる。また、現状では問題のあった
場合のみ、かつ国として対応すべき事案のみ、国家専門検査機関が検査を行っており、
違反があると罰則(営業停止等)があるものの、未然に違反を防止することは難しい状
況にあるといえる。
図表・ 20 国家専門検査機関の概要
・国家専門検査機関には、カシミヤの専門検査員が2名いる
・検査の結果によっては、違反者への罰金や営業中止といった罰則も課すことがある
・抜き打ち検査もする
・現状は、検査する設備と人材が不足している状況である
・現状では問題のあった場合のみ、国として対応すべきものについて機関で調査して
いる
・例えば、農家と工場側で原料の品質に関するもめごとがあった場合には、検査を実
施する
日本への要望事項・委員からの意見
現地調査において、ディスカッションを行った結果、日本への要望事項として、以下
の点が挙げられた。
・効果的・効率的な原毛検査に資する支援
 原毛を検査する設備と人材が不足しており、支援が必要である。
 品質管理体制を厳格化するため、偽装問題が発生した時だけでなく、常時品質を
チェックする機能をもつ国家機関へと改変する支援が必要と考えられる。
わが国の協力方法
要望事項を踏まえ、我が国としての協力方法を検討した。
効果的・効率的な原毛検査に資する支援としては、まず、我が国の検査機関「財団法
人毛製品検査協会」の手法に関する情報提供が有効であると考えられる。財団法人毛製
品検査協会は、カシミヤを含むあらゆる素材の繊維原料等について、試験鑑定を行い、
-27-
その結果に基づいて、証明書を発行しており、モンゴル国家専門検査機関の今後の検査
体制強化に必要な情報の整理が考えられる。
国家専門検査機関の検査体制強化に必要なリソースが明確になった場合、当該リソー
スの提供、例えば、専門家や検査員等の派遣、検査機器、システム等の導入支援などが
考えられる。
また、基準を遵守させる上で必要となる法規制を確立し、明文化することによって、
法的抑止力が働き、事業者のルール違反を防ぐことが期待される。例えば、我が国の法
規制「家庭用品品質表示法」、「不正競争防止法」、「不当景品類及び不当表示防止法」な
どの内容や罰則などに関する情報提供を行うことも考えられる。
-28-
図表・ 21 我が国の法規制
家庭用品品質表示法
第3条
・経済産業大臣は、家庭用品の品質に関する表示の適正化を図るため、家庭用品ごと
に、次に掲げる事項につき表示の標準となるべき事項を定め、これを告示するもの
とする。
 成分、性能、用途、貯法その他品質に関し表示すべき事項
 表示の方法その他前号に掲げる事項の表示に際して製造業者、販売業者又は表示
業者が遵守すべき事項
前条に基づき告示された繊維製品品質表示規定 第 3 条 1 号
・繊維の組成の表示については、組成繊維であるすべての繊維の名称を示す用語にそ
れぞれの繊維の混用率を百分率で示す数値を併記して表示(繊維製品の一部の部位
に革又は合成皮革を使用している場合は、その部位を分かりやすく示し、雑貨工業
品品質表示規程(平成九年通商産業省告示第六七二号)の内容に準じて材料の種類
を示す用語を併記して表示)すること。ただし、繊維製品の部位を分離して分かり
やすく示し、それぞれの部位について、当該部位の組成繊維であるすべての繊維の
名称を示す用語にそれぞれの繊維の当該部位の組成繊維全体に対する混用率を百分
率で示す数値を併記して表示することができる。
・参考人又は鑑定人が虚偽の陳述又は鑑定をしたとき
不正競争防止法
→ 罰則「20 万円以下の罰金」
2 条 1 項 13 号
この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
 商品若しくは役務若しくはその広告若しくは取引に用いる書類若しくは通信に
その商品の原産地、品質、内容、製造方法、用途若しくは数量若しくはその役務
の質、内容、用途若しくは数量について誤認させるような表示をし、又はその表
示をした商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、
輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供し、若しくはその表示をして役務を
提供する行為
・不正の目的をもって不正競争を行った者
→
罰則「5 年以下の懲役若しくは 500
万円以下の罰金」
不当景品類及び不当表示防止法
4 条 1 項 1 号(不当な表示の禁止)
・事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号に掲げる表示を
してはならない。
 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のも
のよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と競争関係に
ある他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示すことにより、不当に顧
客を誘引し、公正な競争を阻害するおそれがあると認められる表示
・参考人又は鑑定人が虚偽の陳述又は鑑定をしたとき →
の懲役」
-29-
罰則「3 月以上 10 年以下
(4)その他の技術協力について
「(1)原料取引所創設について」、
「(2)品質管理について」、「
(3)原毛の検査につい
て」の具体的な技術協力をもって、モンゴルカシミヤ産業における品質管理の徹底、トレ
ーサビリティの確保を進める。品質管理の徹底およびトレーサビリティの確保が達成され
次第、「各工程の技術力の向上」、「企画力の向上」、「デザイン力の向上」、「マーケティング
力の向上」などに資する取り組みを展開することで、さらなるモンゴルカシミヤ製品の付
加価値向上が期待できる。
例えば、平成 19 年度に日本貿易振興機構(JETRO)が実施した調査事業報告書「モン
ゴル「繊維産業基盤強化支援事業(一村一品)
」専門家報告書」によれば、今後実施するこ
とが望まれる技術協力として、以下の3点が記載されている。
・紡毛糸を対象としたカシミヤ繊維を損傷させない染色技術の導入に関する技術指導
・紡毛糸の品質改善
・モンゴル産カシミヤのブランド化
これらの技術協力についても、品質管理の徹底およびトレーサビリティの確保が達成さ
れ次第、実施することで、モンゴルのカシミヤ産業のさらなる付加価値向上に貢献するこ
とが可能と考えられる。
また、今後も持続可能なモンゴルカシミヤ産業とするには、遊牧・牧畜生活による草
原の劣化や砂漠化を食い止めるための方策もあわせて実施する必要がある。
-30-
5.来年度以降に実施することが望まれる取り組み
来年度以降、実施すべき事項として、専門家派遣が挙げられる。専門家派遣となる技
術協力は「トレーサビリティに関する専門家の派遣」、「TQC(Total Quality Control)
専門家の派遣」の2点であった。
我が国で専門家派遣を活用できるスキームとしては、「JICA専門家派遣」「JETROの
JEXSAスキーム」がある。それぞれのスキームの特性を鑑み、具体的な専門家派遣先、
および専門家による実施事項等について次ページのとおり(案)としてとりまとめた。
なお、専門家派遣によって期待される効果については、以下の項目を把握することに
よって定量的に算出することが可能となる。
・モンゴル側:カシミヤ原毛・製品等の輸出量額および単価、モンゴルカシミヤ事業
者の売上・利益率
など
・日本側:モンゴルからのカシミヤ原毛・製品等の輸入量額および単価、モンゴル製
品における偽装件数など
・共通事項:モンゴルカシミヤ事業者と日本の繊維事業者との取引件数・取引量
など
-31-
図表・ 22 具体的な専門家派遣のスキーム案
原料取引所創設法案の範囲
原料調達
原料取引
加工・製造
想定される人材
期待される効果
認証機関の専門家
カシミヤの品質認証
制度を導入する基盤
が構築される
JICA
1年目 2年目
長期にわたる継続的な支援(2年間)
対象:食糧・農牧業・軽工業省、科学技術大学織物研究所
対象:同左
 原料取引所創設法の実現に向けたアドバイス
 原料取引所創設法の内容を踏まえた、原料段階におけるトレーサビリティ
確保の重要性の伝達・理解の促進
 トレーサビリティ確保のための「仕組み」づくりに関する情報提供
 「仕組み」の効率的な運営に資する実施体制づくりの支援
 加工・製造段階におけるトレーサビリ
ティ確保のための「仕組み」に関する情
報提供
 「仕組み」の効率的な運営に資する実
施体制づくりの支援
望まれる打ち手
トレーサビリティの確保
最重要テーマ 【
品質管理】
モンゴルカシミヤ産業の高付加価値化
JETRO
企業の進捗状況を確認しながら、断続的な指導(2年間)
望まれる打ち手
TQC技術者の育成
(加工・製造工程の最適
化が可能な人材)
TQCの専門家
対象:カシミヤ羊毛協会および同協会が選定するモデル企業
事業規模:●名×●日
 TQCの重要性の伝達・理解の促進
 TQCの手法の指導
 支援終了後も継続的にTQC人材を育成・輩出できる手法の指導
カシミア羊毛協会の
TQC人材育成を図る。
(その結果として、高
品質のカシミアサプ
ライチェーンが構築
される。)
・・・
・・・
・・・
効果を測る定量的な指標
効果を測る定量的な指標
モンゴル側
モンゴル側:: カシミヤ原毛・製品等の輸出量額および単価、モンゴルカシミヤ事業者の売上・利益率
カシミヤ原毛・製品等の輸出量額および単価、モンゴルカシミヤ事業者の売上・利益率 など
など
日本側
:: モンゴルからのカシミヤ原毛・製品等の輸入量額および単価、モンゴル製品における偽装件数など
日本側
モンゴルからのカシミヤ原毛・製品等の輸入量額および単価、モンゴル製品における偽装件数など
共通事項
共通事項 :: モンゴルカシミヤ事業者と日本の繊維事業者との取引件数・取引量
モンゴルカシミヤ事業者と日本の繊維事業者との取引件数・取引量 など
など
32
6.まとめ
今回の調査により、モンゴル政府のカシミヤ育成への意欲が明確になり、認証制度構
築や品質管理の重要性についての認識を有することが確認できた。また、モンゴルのカ
シミヤ企業においても品質管理の重要性や製毛から一貫生産を追求するなどの事業拡大
への意欲を有するなど、我が国の技術協力により、モンゴルカシミヤ産業の高付加価値
化のベースとなる、「品質の向上:品質管理とトレーサビリティの確保」が達成できる可
能性が確認できた。したがって、
「トレーサビリティに関する専門家の派遣」、
「TQC(Total
Quality Control)のできる専門家(技術者)の派遣による現地の人材育成」など、専門
家を派遣することによる効果は大いに期待できるとの結果を得た。
図表・ 23 期待される役割
「TQC(Total Quality Control)専門家」に求め
られる役割
「トレーサビリティ有識者」に求められる役割
個別企業の品質向上の実現
原料取引所法案という国の規制に関する仕組み
づくり
(→トップダウン型)
(→ボトムアップ型)
両輪での取り組みが効果的な
両輪での取り組みが効果的な
品質向上につながる
品質向上につながる
33
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