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細 材 細野 材料 野・平 料物理 平松 理科 松研 科学 研究 学専 室 専攻

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細 材 細野 材料 野・平 料物理 平松 理科 松研 科学 研究 学専 室 専攻
htttp://lucid.msl.titecch.ac.jjp/
‘世
世界の潮
潮流を生
生み出す
出す’
細
細野
野・平
平松
松研
研究室
材
材料
料物理
理科
科学
学専
専攻
◎24 年度の大学
学院募集要項
項は以下のサ
サイトで入手で
できます。
h
http://www..titech.ac.jp//admission/ggraduate/gu
uideline.htm
ml
募
募集要項内
内の総合理工
工学研究科 材
材料物理科学専攻(p.73
3, 74)をご覧
覧ください。
◎材料
料物理科学
学専攻の入学
学試験情報お
および過去問
問は、以下のサイトから入
入手できます。
。
入学案内:http
p://www.ma
ateria.titech..ac.jp/ent/index.html
過去問:http:///www.materria.titech.acc.jp/ent/ent_
_003.html
住所:〒226-8503
神奈川県
県横浜市緑
緑区長津田町
町 4259
東京工業
業大学応用セラミックス
ス研究所 R3
3-1
細野 教授
教
J1 棟 606
6 号室 0045-924-535
59
平松 准教授
准
COE
E 棟 102 号
号室 045-92
24-5855
松石 助教
助
S2 棟 5F
5 東 045--924-5134
目次
・ 研究室の構成 ・・・・p.2
・ 学生の活躍 ・・・・p.3
・ 細野・平松研究室へようこそ ・・・・p.5
・ 研究紹介 ・・・・p.7
・ 研究テーマ ・・・・p.9
・ 研究設備 ・・・・p.15
・ 著書紹介 ・・・・p.18
・ 特集記事(産学官連携ジャーナル)の紹介 ・・・・p.19
・ Tokyo Institute of Technology Bulletin 記事の紹介 ・・・・p.25
・ 現役博士課程学生による研究テーマ紹介 ・・・・p.26
・ 海外渡航記 ・・・・p.33
1
研究
究室の構
構成
■ ス
スタッフ
・ 細野
・ 福長
・ 黒木
・ 平野
・ 平松
・ 松石
秀雄 教授(電子メール
秀
ル:[email protected])
脩 名誉教授
授
和
和彦
客員教
教授(電気通
通信大学)
正
正浩
客員教
教授
秀
秀典
准教授
授(電子メー
ール:h-hiram
[email protected]
msl.titech.acc.jp)
聡 助教(電子
子メール:saatoru@lucid
d.msl.titech
h.ac.jp)
■ 学
学生
・ 博士課程
程7名
・ 修士課程
程 10 名
・ 学部 4 年生
年 1名
■ 大
大型プロジェ
ェクト
現
現在のところ
ろ以下 4 つの大型プロ
ロジェクトが走
走っています
す。
・
最先端研
研究開発支
支援プログラ
ラム(期間:2010.3 – 201
14.3)
http://ww
ww.supera.ttitech.ac.jp/
↑最先端
端研究開発
発支援プログ
グラム(First プログラム)
)のロゴマー
ーク
・
・
・
NEDO 革新的太陽
革
陽電池プロジ
ジェクト(期間
間:2008.4 – 2018.3)
文部科学
学省元素戦
戦略プロジェ
ェクト(期間:2008.10 – 2013.9)
2
文部科学
学省光アライ
イアンスプロ
ログラム(期間:2008 – 2017)
これらの
のプロジェクト
トでは、藤津
津 悟 特任
任教授をはじ
じめとする、特
特任准教授
授 3 名、
博士研究
究員 5 名が
が活躍してい
います。これ
れらのプロジ
ジェクトメンバ
バーだけでなく、
物質科学
学創造専攻
攻の神谷利夫
夫 教授のグ
グループとも
も緊密な連
連携をして研
研究を
遂行して
ています。
2
学生の活躍
■ 日本学術振興会 特別研究員(DC)実績
難関といわれる学振特別研究員として毎年 1 名以上が選出され、研究費や学
費のサポートを受けながら研究しています。
2011 年 1 名 2010 年 1 名 2009 年 1 名 2008 年 1 名 2007 年 2 名
2006 年 2 名 2005 年 2 名
■ 過去 5 年間における学生の受賞歴
国内だけでなく、国際学会においてもその研究と発表が認められ、毎年多くの学
生が受賞しています。
2011 年
2010 年
2009 年
2008 年
2007 年
D2 李君 Gold Poster Award of TOEO-7
D3 李さん Silver Poster Award of TOEO-7
D2 片瀬君 応用物理学会講演奨励賞
D2 片瀬君 Oral Presentation Award, Symposium L of MRS Spring
D1 片瀬君 JJAP 論文賞
M2 李君 The Best Poster Award of TOEO-6
M2 篠崎君 The Best Poster Award of TOEO-6
D3 小郷君 The Best Poster Award, E-MRS Fall
D3 金君 応用物理学会講演奨励賞
D3 戸田君 先端技術大賞(特別賞)
M2 菊池さん 学問のすすめ賞(材料物理科学専攻)
■ 学生の過去 5 年間における国際学会口頭発表
学生自身が国際学会で口頭発表しています。中には招待講演を依頼されたケー
スもあります。ここでは口頭発表のみをリストアップしましたが、ポスター発表も含め
るともっと多くの学生が国際学会の場で積極的に研究発表を行い活躍していま
す。
2011 年
2010 年
D3
M2
D2
M2
D2
片瀬君
井出君
片瀬君
村場君
片瀬君
MRS Spring(アメリカ サンフランシスコ)※招待講演
TOEO-7(東京)
ISS2010(筑波)※招待講演
ISS2010(筑波)
ASC2010(アメリカ ワシントン)
3
2008 年
2007 年
D2
D3
M2
D2
D1
M2
M2
D2
D1
片瀬君
松崎君
片瀬君
野村君
野村君
渡辺君
志村君
小郷君
西尾君
MRS Spring(アメリカ サンフランシスコ)
E-MRS(ポーランド ワルシャワ)
E-MRS(ポーランド ワルシャワ)
MRS Fall(アメリカ ボストン)
日韓ワークショップ(韓国)
日韓ワークショップ(韓国)
日韓ワークショップ(韓国)
E-MRS(フランス ストラスブルグ)
E-MRS(フランス ストラスブルグ)
4
細野・平松研究室へようこそ
本研究室は川副 博司先生(現名誉教授)が 1990 年に開設し、1999 年までは
川副・細野研究室として運営していました。川副先生は 1999 年 3 月 31 日で退
職され、細野が研究室を引き継ぎました。2002 年には神谷利夫先生を迎え、細
野・神谷研として松石先生と共に昨年度まで運営してきました。2010 年に神谷
先生が物質科学創造専攻に異動になり、2011 年の 3 月に平松先生を迎え、細野・
平松研として新しくスタートしました。神谷先生とは引き続き連携体制をとっ
て研究を継続します。当研究室は応用セラミックス研究所という学内の研究所
に属しておりますが、総合理工学研究科 材料物理科学専攻の協力講座でもあり
ます。従って、当研究室配属希望の学生は材料物理科学専攻を志望してくださ
い。
研究室の主テーマは「電子活性材料の創製─電子状態から探る新しい光・電
子・磁気および化学機能─」です。固体中の電子の動きを巧く制御して、新しい
機能を実現しようとしています。生き物にみられる効率的な電子の伝達系を、
文字通り無機物の中に造り込もうと考えています。
身の周りのありふれた物質を細工して、人類は文明を発展させてきました。
これからもこの方向は変わらないでしょう。数多くある物質を人類の生活に直
接的に役立つ形に工夫したものが「材料」です。いつの時代でもその時代なり
の制約があり、材料の研究者はその制約下で革新的なものを創り出す必要があ
ります。今世紀の制約は資源・環境問題と言えます。ありふれた、そして環境
調和性の高い物質を使って、これまでに無い新しい機能やより高い性能をもつ
材料を創り出すことがこれからの研究の方向でしょう。電子状態から様々な物
質を眺めてみると、工夫次第で新しい機能を発現できる場合が数多くあります。
要は「アイデアと工夫」と頑張り次第で、石ころを半導体や超伝導体といった
材料に変身させようという魂胆です。
最近の成果のうちで国際的にインパクトがあると思っているものを 3 つ挙げま
す。
1. 鉄を含む高温超伝導体の発見
2. セメント原料が透明半導体、金属、そして超伝導へと変身
3. 透明アモルファス酸化物半導体のトランジスタ応用
5
研究のやり方としては、
「どういった機能を狙うか」、
「いかにして作るか」、
「どんな物性か」、そして「どんなデバイスができるか」までの一連のことを
できる限り研究室内で取り組むようにしています。すなわち、自分たちで設計
し、それに合った(または合っていると思われる)物質を探索し、バルクや薄
膜試料を合成し、それらの物性を調べ、デバイス特性評価までを一連して行っ
ていきます。当研究室で取り上げる物性は、光・電子・磁気・化学と多岐にわ
たりますが、共通しているのは電子が主役となることです。人によっては興味
や得意分野が違うかと思いますが、個々の興味を活かした研究が一緒にやって
いけると考えています。
自分の名前がつくような新機能の発見を志す人、革新的デバイスを創って大
儲けしてやろうという野心に満ちた人、自分の感性や個性を活かした機能材料
研究をやってみたい人、大学院に入ったら心機一転して研究に集中してみたい
人を大歓迎します。
自分たちが源流になって世界的な潮流となる研究をしたいと張り切っていま
す。興味を持っていただいた方は是非研究室を訪問してください。
2011 年 4 月
細野
秀雄
6
研究紹介
1.
研究室の目指すもの
膨大な数の「物質」の中で、人間の社会に直接に役に立つものが「材料」で
す。私たちの研究室は、自分たちが打ちたてた材料設計指針をもとに、以下
のような新しい材料を開発しています。
・
物質が持つ特有の結晶構造を利用して新しい機能を創る。
層状構造を持つ混合アニオン化合物で、室温励起子発光ダイオードや新
しい鉄を含む高温超伝導材料などを開拓しました。特に、鉄系超伝導体
は、現在銅酸化物に次ぐ高い転移温度を有し、当研究室は発見した本家
として、現在世界中で激しい競争の中、さらなる超伝導新物質を求めて、
探索し続けています。また、0.4 nm の大きさのかご構造からできている
結晶 C12A7 をベースに、新しい透明導電膜、高輝度電子放出源、有機発
光 TV 用高性能電極、反応触媒、超伝導などの機能を開拓しました。
・ 材料研究の新しい潮流「ユビキタス元素戦略」
私たちは、今までは希少金属を使ってしか実現できていなかった機能を、
Ca や Al などの豊富で無害な元素だけを使って実現しようとする「ユビキ
タス元素戦略」を提唱しています。これは、政府の科学政策の大きな柱
の一つとなり、2008 年から新しい国家プロジェクトを始めました。これ
まで開拓してきた C12A7 や深紫外ファイバーはそのもっとも成功してい
るユビキタス材料の例です。
・ 酸化物でシリコンを凌ぐ半導体デバイスを実現する。
私たちは、透明酸化物半導体(Transparent Oxide Semiconductor: TOS)という
新しい研究領域を開拓してきたパイオニアです。アモルファス酸化物半
導体で、最高の性能を持つフレキシブルトランジスタを開発し、フレキ
シブル TV、電子ペーパーに有望な新しい材料を提供しました。
材料研究はしばしば、すでにある材料を発展させるための開発に終始
してしまいがちですが、これまでに作り出された画期的な新材料-ナイ
ロン、カーボンファイバーや高温超伝導体など-は、そのような改良研
究からは決して生まれません。物質の内部で何が起こっているかをしっ
かり調べ理解すると同時に、他人とは違った発想とアプローチで研究を
する必要があります。
7
私たち
ちが目的と
としているの
のは、この
のような独自のアプロ
ローチにより新
しい物質
質と機能を
を創り出し、
、それらを
を人の役に立
立つ「材料
料」へと進化
化さ
せること
とです。Naature 誌や S
Science 誌な
などの世界
界トップの学
学術誌に掲
掲載さ
れる研究
究成果をあ
あげ、企業と
と連携し産
産業化すると
とともに、 その実践研
研究
の過程で
で「真の材
材料研究」の
のセンスを
をもつ学生を
を育てるこ
ことを理想とし
ています
す。
図 1.電子
子活性の樹
樹(こんな具
具合に育っ
って欲しいと
という図)
2.
アプローチの特徴
徴
構成元素が資源的に
に豊富で、か
かつ環境調
調和性に優れ
れたも
の
のが多いこ
ことから、当研究室はこ
当
これまでは
は酸化物を主
主軸と
し
して研究を
を行ってきま
ました。そ の酸化物は
は、古くから
ら陶磁
器
器やガラス
スとして人類
類の発展を
を支えてきた
た材料です
す。それ
に
にもかかわ
わらず、酸化
化物中で電
電子が主役を
を演ずる機
機能は、
以
以前は殆ど
ど見出されて
ていません
んでした。これはその物
こ
物質の
本
本質によるものではあ
ありません
ん。私たちは
は、物質に内
内在す
る
る特徴的な
なナノ構造に
に着目し、そ
その電子状
状態や欠陥構
構造を
制
制御・活用することで
で、新しい光
光・電子・磁気および
び化学
機
機能をもつ
つ材料を創り
り出すこと を目指して
ています。
そしてこれからは酸
酸化物だけ にこだわら
らず、周期律表にのっ
っているあ
あらゆ
る
る元素を対
対象とするこ
ことによっ
って探索範囲
囲を拡げ、その物質の
の持つ結晶
晶構造
か
から電子状
状態を予測し
しながら、材料・機能
能探索研究
究を行ってい
いきます。ただ
試
試料を作るだけではな
なく、計算
算と実験の両
両面から電
電子状態を調
調べて物質
質のイ
メ
メージを作
作り、研究方
方法を考え
えています。独自の視
視点からのア
アイデアに
に基づ
い
いたアプローチで、世
世界で「初
初めての」、
「最高の」
、あるいは
、
は「唯一の」
」結
果
果を出せるよう、研究
究を進めて
ています。
8
研究テーマ
(1) 独自の攻め方で新材料を探す:新しい高温超伝導体の探索と薄膜・デバイス
化
材料の結晶構造を観、電子構造に思いを馳せ、物性との関係について考え
ると、どのようなアプローチで新しい特性を持つ材料を作ったらよいか、ア
イデアがでてきます。
超伝導は数ある固体物性の中でも最も劇的でかつ明快な現象です。また、
超伝導転移温度 (Tc) の高い新物質が見つかれば、その社会的インパクトの
大きさは比類ないほど大きなものです。当研究室では、2006 年にこれまで磁
性原子である鉄の化合物は超伝導にならないという常識を覆し、2008 年 2
月には Tc = 26K の LaFeAsO を報告し、世界的ブームを巻き起こしました(図
1)。現在、最高の Tc は 56K に達し、銅系材料以外では一番高くなっていま
す。どこまで Tc があがるか世界中で競争になっています(図 2)。
O
F
La
e-
Fe
As
La-O
layer
Fe-As
layer
図 1. 鉄系高温超伝導体 LaFeAsO の結晶構造。磁性を持つ鉄を含むにもかか
わらず超伝導を示すことから、「鉄化合物は超伝導にならない」という常識
を覆しました。
本家である当研究室も秘策を持って新規物質探索を頑張っており、つい最
近では、LaFeAsO と同型構造で、重い電子と軽い電子が共存し、それぞれが
反強磁性と超伝導を示す新しいタイプの超伝導体 CeNi0.8Bi2 を発見しました
(Physical Review Letters 誌)。
9
図 2. 超伝導
導の歴史。当研究室が
が発見した
た鉄系がどこまで超伝
伝導転移温度
度が
あ
あがるか、世界中が注
注目してい
います。
さらに、鉄系超伝導
導体の物性
性研究だけで
でなく、送
送電線などへ
への応用面
面で特
に
に重要とな
なる薄膜作製
製・デバイ
イス化にも注
注力してい
います。図 2 は、当研
研究室
が
が、鉄系超
超伝導体薄膜
膜分野では
はすべて世界
界に先駆け
けて実現して
てきたエピ
ピタキ
シ
シャル薄膜
膜と超伝導量
量子干渉素
素子(SQUIID)の例で
です。
図 3. 世界初
初の鉄系超
超伝導薄膜 Co 添加 SrrFe2As2 の超
超伝導特性
性と試料の写
写真
(左)。それ
れをさらに
に高品質化 した BaFe2As2 薄膜を
を利用して作
作製した超
超伝導
量
量子干渉素
素子(SQUIID, 右)。S
SQUID は磁
磁場を加えることによ
よって周期的な
電
電圧の変調
調が見える。
。
10
(2) ユ
ユビキタス
ス(ありふれ
れた)元素戦
戦略: ナノか
かご構造と包
包接イオン
ンが多彩な機能
を
を創る
これまで、酸化物の
の多様な機
機能は遷移金
金属や希土
土類イオンな
など陽イオ
オンを
変
変えること
とで実現して
てきました
た。私たちは
は発想を変
変え、陰イオ
オンの状態
態を制
御
御すること
とで新しい可
可能性が拓
拓けないか、
、という視
視点からアプ
プローチを
をして
い
います。
12CaO・77Al2O3 (C12
2A7)は、酸
酸化カルシウ
ウムと酸化
化アルミニウ
ウムというあり
ふ
ふれた酸化
化物から構成
成されてい
いる、何の変
変哲もない
い物質と考え
えられてき
きまし
た
た。ところ
ろが、原子レベルで結
結晶構造を見
見直してみ
みると、陰イ
イオン(通常
常は
2–
O イオン)を包接でき
きるナノか
かご構造を持
持っています。合成法
法を工夫す
するこ
と
とで、ナノかご構造中
中に様々な イオンを包
包接させることができ
きます。例え
えば、
–
空
空気中では
は不安定です
すが最強の
の酸化力を持
持つことで
で知られる O イオンを
を、
20
–3
110 cm 以上の高濃度
以
度で安定に
に含有させて
て、最も安
安定な白金さ
さえ容易に
に酸化
で
できました
た。また、C12A7 は典型
型的な絶縁
縁体であると
と信じられ
れていました
たが、
–
H イオンを
を包接させて
て紫外光や
や電子線を照
照射するこ
ことで、透明
明で電子が
がよく
流
流れる状態
態に変えるこ
ことに成功
功しました(図 4)。さ
さらには、電
電子を包接
接させ
–
る
ることで、世界初の室
室温で安定
定なエレクトライド C12A7:e
C
を実
実現し、電
電界放
射
射型ディス
スプレイ(図
図 5 右下)、 電界効果型
型トランジスタや有機
機発光ディスプ
レ
レイなどへ
へ応用できる
ることを実
実証し、その
の低仕事関
関数はディス
スプレイや
や蛍光
灯
灯の消費電
電力を半減させられる
る電極材料として応用
用できるこ と最近見い
いだ
し
しました。さらにこの
の材料は、 超伝導をも示します
す。
図 4. (左)未処理 12
2CaO・7All2O3 (C12A7
7)粉末。普
普通のセメン
ント材料と同じ
白
白色。
(右)は H イオ
オンを包接さ
させて紫外
外光を照射した C12A77 に抵抗テ
テスタ
ー
ーを当てた
たときの写真
真。普通の
の C12A7 は絶縁体にも
は
もかかわら
らずこの試料
料は
電
電気が流れ
れる。
11
このように、ありふ
ふれた原料
料だけから構
構成される材料でも、 ナノ構造
造を巧
く
く利用する
ることにより、多彩な
な電子・光・化学機能
能をひきだす
すことがで
できま
す
す。このア
アイデアを追
追及してい
いくことで、
、深刻化し
している環境
境・エネル
ルギー
問
問題の解決
決に大きく寄
寄与できる
るスーパーセ
セラミック
クスが誕生す
すると期待
待し
て
ています。
図 5. (左) エレクトラ
エ
ライド C12A
A7:e– の結晶構造と電
電子分布。(中
中央) ナノかご
構
構造 (かご
ごの内径は約
約 4Å)。(右上
上) 電子が
が生成する様
様子が色の
の変化でわか
かる。
((右下) 電界
界放射型発光デバイス
ス。
図 6. C12A77 エレクトライドの特
特徴である
る低仕事関数
数は、ディ
ィスプレイの
のバ
ッ
ックライト
トや蛍光灯の
の消費電力
力を半減でき
きる性能を
を発揮する。
。
12
(3) 曲
曲がる高性
性能透明トランジスタ
タ:透明酸化
化物半導体
私た
たちは、19995 年に透明
明アモルフ
ファス半導体
体の電子構
構造とその優
優位性をす
すでに
提唱
唱していまし
した(図 7)
)。さらには
は 1997 年に世界で初
初めて、P 型
型透明酸化
化物半
導体
体の設計法と
と具体例を
を Nature 誌 に報告し、透明酸化物
物エレクト
トロニクスとい
う新
新分野を開拓
拓しました
た。2004 年 には、酸化
化物半導体の特長を活
活かして、フレ
キシ
シブル透明トランジス
スタ(TFT)を
を実現しまし
した(図 8 左・中央)
)。このトラ
ラン
ジスタは世界で
でトップの
の性能を示し
し、Nature 誌にも掲載
載され、世
世界中の大学
学や
企業
業が研究を開
開始しまし
した。その僅
僅か 4 年後
後には、曲が
がる電子ペ
ペーパーや 12 イ
ンチ
チの有機 EL
L ディスプレイなどが
が試作されるなど、大
大きな反響
響を呼んでお
おり、
今で
では 70 イン
ンチの大型 3D-LCD
3
が
が試作される
るまでに至
至っています
す(図 8 右)
右 。
自分
分たちの創っ
った材料で
で世界を席巻
巻する例に
になりつつあ
あります。
図 7.. 1995 年に
に提唱した透
透明アモル
ルファス半導
導体の電子
子構造イメー
ージ。球対
対称で
広が
がりの大きな
なs軌道が
が伝導帯下端
端を主とし
して形成する
るのがアモ
モルファス酸
酸化
物半
半導体の特徴
徴であり、これがアモ
モルファス
スシリコンを
をもしのぐ
ぐ現在のアモ
モル
ファス酸化物半
半導体を用
用いた薄膜 トランジス
スタ実現へと
とつながっ
った。
図 8.. 2004 年に
に達成した当
当研究室オ
オリジナルの
の透明アモ
モルファス酸
酸化物半導
導体を
用い
いた薄膜トラ
ランジスタ(TFT) は、現在
在まで使われ
れているア
アモルファス
スシ
リコンよりも2
20倍の移
移動度など多
多くの優れ
れた性能を示
示し、作製
製も容易なこ
こと
から次世代の薄
薄型TVを
を駆動するT
TFTの本
本命と目され
れている(
(左は TFT の構
造、中央はプラ
ラスチック基板上に作
作製した TF
FT の写真)
)。右の写真
真は、これ
れを使
うことで実現し
した70インチ、超高
高解像、3D-LCD
D。
13
(4) 新
新材料・機
機能を創るた
ために: 理
理論と実験に
による電子
子状態の解析
析
やみ
みくもに実
実験をしてい
いても、新
新しい機能・材料を見
見つけること
とはほとん
んど不
可能
能です。私た
たちは、光
光電子分光法
法、パルス
ス電子スピン
ン共鳴法や
や X 線回折法な
どを
を用いて、物
物質や欠陥
陥の電子状態
態を直接的
的に実験で観
観察してい
います。さらに
第一
一原理計算を
を併用することで物質
質のイメー
ージを作り、
、物質探索
索や材料設計
計の
指針
針をたてて開
開拓研究を
を進めていま
ます。図 9 は、C12A
A7 の中でか
かご構造のひず
みを
を X 線構造解
解析と第一
一原理計算で
で調べた結
結果です。C
C12A7 中の
の電子数が
が増え
るに
にしたがって
てかごの形
形がきれいに
になり、電
電子の通り道
道である波
波動関数が拡
拡が
って
ていく様子が
が見えます
す。
図 9.. (左から 1 番目、3 番目の図)
番
M
MEM/Rietveld 解析で観
観測した電
電子密度。左の
かご
ご構造は酸素
素イオンが
が入っている
るためにひ
ひずんでいる
る。(左から
ら 2 番目、4 番
目の
の図) 第一原
原理計算で求めたかご
ご構造のひ
ひずみと電子
子密度。電子
子数が多くなっ
てか
かごの形がき
きれいにな
なると、波動
動関数が結
結晶全体に拡
拡がる(右図
図)。
14
研
研究設備
備
世界
界最先端の最
最新設備を
を駆使して、
、世界一の
の結果が出せ
せるよう日
日々精進して
てい
ます
す。ここでは
は HP に公開していな
ないつい最近入った代
代表設備を 紹介します
す。
PPM
MS,
S
SQUID-VSM
抵抗
抗率・磁化率
率・比熱といった超伝
伝導研究に
には欠かせな
ない物性を
を測定する装
装置
です
す。液体 Hee 代を抑えるために気
気化した Hee を再生するための再
再凝縮装置
置を取
り付
付けています
す。
グロ
ローブボ
ボックス
ス
1ppm
m 以下の酸
酸素濃度・露
露点マイナ
ナス 90℃以下
下の不活性
性でドライな
な環境下で
で、た
とえ
え大気中で取
取り扱えな
ない試薬であ
あってもそ
それを使って
て試料合成
成ができます
す。
15
高圧
圧合成装
装置
現在
在立ち上げ中
中を含めると 4 台の高
高圧装置を
を使って新し
しい試料合
合成に取り組
組ん
でい
います。
低温
温 XRD
D
キャピラリー式
式透過型 X 線回折装置
置です。液
液体 He を吹
吹き付ける
ることによっ
って、
およそ 20K ほどまでの低
低温測定が可
可能です。
16
PLD-MBE
E 複合成
成膜装置
置
パル
ルスレーザー
ー堆積法(P
PLD)として
ては 5 種類の
の励起源を
を、そして分
分子線エピ
ピタキ
シー
ー(MBE)とし
しては 3 つの K セルと
と 1 つのク
クラッキング
グセルを併
併せ持つ複合
合成
膜装
装置で、試料
料準備室は
はグローブボ
ボックスとも連結させ
せています
す。現在立ち
ち上
げ中
中です。
17
著
著書紹介
介
担当編集者
者よりひと言
言
もう、話
話し出したら止まらない !しかも内容
容が難
しくてつ
ついていけな
ない…(涙)。それが、最初
初にお
会いした
たときの、細野
野先生の印象
象でした。しか
かし、
取材を重
重 ねるごとに
に、先生は文
文系出身の私で
でも理
解できる
るレベルで話
話をしてくださ
さるようにな
なりま
した。話
話し出したら止まらないの
のは相変わら
らずで
すが、そ
その主張する
る メッセージ
ジは一貫して
ていて、
ブレのな
ないもの!また、先生は写
写真集を購入
入する
ほどの大
大のネコ好きで、時折触れ
れるネコの話
話に癒
されまし
した(笑)。先
先生ご自身 が
が、
「これまで
での研
究人生の
の区切り」とおっしゃる珠
珠玉の一冊。ぜひ
ご覧くだ
ださい。世界
界的発見の舞台
台裏と、発見
見にい
たるまで
での思考法が
が書かれた本書
書は、間違 いなく
い
読みごた
たえ十分です
す!
サン
ンマーク出版
版(1400 円)
円
研究
究室の成
成果をわかりやす
すい
本と
として出
出版
ソフ
フトバンクク
クリエイテ
ティブ(9000 円)
18
産学
学官連携
携ジャーナ
ナル特集
集記事
産学
学官連携
携の新たな挑戦
細野
野秀雄・東京工業
業大学教
教授
材料
料科学の
の“新大陸
陸”を発見
見
研究
究にオー
ール・オア
ア・ナッ
ッシング
グはあり得
得ない
材料科
科学の分野で
で、世界中を
をあっと言わ
わせるホー
ムランを次々とス
スタンドにた
たたき込んで
でいるの
野秀雄・東京
京工業大学教
教授だ。科学
学技術振興
が細野
機構(JST)戦略
略的創造研究
究推進事業の プロジェ
務め(ERAT
TO:1999-22004、発
クトリーダーを務
究 SORST:2004-2009)、常識を覆
覆す大成
展研究
果を挙
挙げた。細野
野教授の研究
究テーマは透
透明な酸化
物。か
かつては絶縁
縁体、つまり
り電気を通さ
さない物質と
というのが一
一般的だった
た。ところが細野
教授は
は、教科書に
に「絶縁体の
の代表」と記
記載されてい
いた酸化物で
でも優れた導
導電性材料ができ
ることを実証し、
、科学技術の
の“新大陸”を
を発見・開拓
拓してきた。1 本目のホー
ームランは、PET
ルでおなじみ
みの PET の上
上に、IGZO
O という酸化
化物(アモルファス酸化物
物)で、透明
明の高
ボトル
性能薄
薄膜トランジ
ジスタ(TFT
T)を作り上
上げたこと。曲げても機能する TFT で、2004 年の成
年
果だ。
。透明 TFT と言えば液晶ディスプレ
れているのが
が有名。現在
在はアモルフ
ファス
レーに使われ
シリコンによる TFT が最も多
多いが、これ
れに置き換わ
わる新材料の
の登場だ。2 本目は、セメン
酸化物(12C
CaO・7Al2O
O3)。何のこ
こともない普
普通の材料だ
だが、この物
物質構造の特
特殊性
トの酸
(ナノポーラス)
)を解明し、それを操作
作することで
で、半導体(2
2002 年)、金
金属(2007 年)、
年
導(2007 年)に変身することを実証
証した。3 本目のホーム
本
ムランは、20008 年 2 月に
に発見
超伝導
した鉄
鉄系超伝導の
の発見だ。8
86 年の高温超
超伝導以来、初めての新
新系統の物質
質で、狂騒曲
曲の再
現が始
始まっている
る。10 年前には想像もつ
つかなかった
た新しい世界
界をいかに切
切り開いてき
きたの
か、細
細野教授にお
お聞きした(松尾義之) 。
材料
料研究は10年
「
「成果を挙げ
げ続ける戦略は何ですか」
」と聞かれる
るのですが、それほどの
の戦略がある
るわけ
ではな
ないんです。
。1つ言えることは、こ の分野が、そ
それだけ肥沃
沃(ひよく) な土地だと
という
ことで
です。少なく
くとも僕はそ
そう思ってい
いるから、新しいことを見
見つけようと
と探している
ると、
19
せずに自然に
にいろいろな
な成果が出て
てくるんです
す
無理せ
よ。セ
セメントの化
化合物、アモ
モルファス酸
酸化物、鉄系
系超
伝導体
体と、一見何
何の脈絡もな
ないように見
見えるかもし
しれ
ません
ん。でもやっ
ってる本人に
には筋道はあ
あるんです。す
べて、
、固体酸化物
物をベースに
にした材料で
で、その構造
造を
うまく見ながら、
、新しい機能
能を探してい
いる。すべて
ては
結果出てきた
たことなんで
です。材料や
や物質の研究
究で
その結
は、110年ぐらい食
食らいつかな
ないと、新し
しいことには
は結
び付か
かない。僕の
の場合も、E
ERATOとSO
ORSTの合計1
10
年のプ
プロジェクトで、フレキ
キシブルTFT
Tと30Kの鉄系
系
超伝導
導は、後期に
に入ってから
ら出たのです
す。「継続し
して
頑張る」ことが重
重要ですね。そういう意
意味では、材
材料
は、長期にわ
わたる支援が
が生きる分野
野です。一遍
遍に
科学は
10億円もらうより、1年に1億
億円ずつ10年
年もらう方が
がは
に成果が挙が
がります。鉄
鉄系超伝導を
を発見して、あらためて
て「最初にゴ
ゴールを切るのは
るかに
気楽だ
だなぁ」と感
感じます。転
転移温度が上
上がったり、ほかから次
次々と成果が
がもたらされます
が、結
結局、ルーツ
ツは僕らにあ
あるからです 。1番だから焦る必要がない。開拓者
者の特権です
すね、
当たっ
ったときは。
。
ガラ
ラス屋の来
来るところ
ろじゃない
い
高
高い電子移動
動度をもつアモルファス酸
酸化物半導体
体の物質設計
計というコン
ンセプトは、1995
年のア
アモルファス
ス半導体国際
際会議で初め
めて発表しま
ましたが、「
「ガラス屋の
の来るところじゃ
ない」
」と嫌み(?)を言われ
れました。そ
そもそも当時
時は、アモル
ルファスの酸
酸化物でまともな
半導体
体ができるな
なんて信じら
られていませ
せんでしたか
から。
ア
アモルファス半導体の話を耳にしたの
のは東京都立
立大学の学生
生のときで、 現在JST 研究開
研
発戦略
略センター上
上席フェロー
ー(当時は電
電子技術総合
合研究所)の
の田中一宣さ んの情熱にあふ
れた講
講演を聞いた
たのです。い
いずれ取り組
組んでみたい
いと思い続け
け、1993年に
に名古屋工大から
東工大
大に移ったと
とき研究テー
ーマに上げま
ました。アモ
モルファス半
半導体の会議
議で発表したのは、
そうい
いう因縁があ
あったのです
す。
こ
この会議は20000年ぐらいから風向きが
が変わり、ア
アモルファス
スシリコンに
に代わる新し
しい半
導体が
が必要で、有
有力なのは有
有機物質だと
と言われてい
いる中で、僕
僕らが2003年
年に酸化物で高性
能なT
TFTを作って
て見せたわけ
けです。大き
きく注目され
れたのは、2004 年にフレ
レキシブルな
なTFT
を作っ
ったときです
す。1995年の
の発表を覚え
えていた人が
がそれなりに
にいて、10年
年前の仕事が出発
点であ
あることがよ
よく理解され
れました。
そ
そしたら、産
産業界が飛び付き、一気に
に酸化物の方
方に傾いてき
きました。こ
これは想定外
外でし
20
た。22005年の国際
際会議に分科
科会ができ、 いきなりプ
プレナリー講
講演をするこ
ことになったので
す。そ
そして2007年
年の会議では
は、ついにア
アモルファス
ス酸化物の発
発表件数が、 アモルファスシ
リコンを抜いちゃ
ゃったんです
すよ。ガラス
ス屋の来ると
ところじゃな
なかった国際
際会議が、です。
年の会議でも
もプレナリー
ー講演を依頼
頼されていま
ますが「あい
いつが15年前
前にこの分野
野の発
2009年
端を作
作ったんだか
から」という
うことだと思
思います。
世
世界最大のデ
ディスプレー学会(The S
Society for Infformation Display)が、特
特別功績賞を
を出し
てくれ
れました。ア
アモルファス
ス酸化物で高
高性能なTFT
Tを作り、ディ
ィスプレーへ
への応用に貢
貢献し
たことが理由。うれしいのは
は、ディスプ
プレーの専門
門家でもなく、ただ新し
しい酸化物のアモ
を作りたいと
と思って始め
めた仕事が実
実を結んだこ
ことですね。
ルファス半導体を
こ
この仕事は、実は別の見方ができるん
んです。半導
導体の基本は
はシリコンで
です。アモル
ルファ
スシリコンは、シ
シリコンとい
いう名前があ
あったから注
注目された。そして「ア
アモルファスシリ
で成立してい
いる理屈は、すべてのア
アモルファス
ス半導体に成
成立する」と みんなが勘違い
コンで
し、酸
酸化物なんて
てゲテモノが
が使えるわけ
けがないと思
思ったんです
す。しかし、 酸化物ではアモ
ルファスでも大き
きな電子移動
動度が見られ
れるのには、きちんとし
した理屈があ
あるのです。
ア
アモルファス半導体一般の中で、共有
有結合性の半
半導体は、半
半分なのです
す。日本全体
体を見
たとき
リコンは東京
京で、銀座通
通りもあるし
し地図もよくできている
るけど、非常
常に狭
き、結晶シリ
い領域
域にすぎませ
せん。名古屋
屋には名古屋
屋の、九州に
には九州の良
良さがある。 僕らはそういう
広い視
視点で仕事を
をしてきたか
から、新世界
界を開くこと
とにつながっ
ったのでしょ う。物質を広く
眺めるのは大事だ
だと思います
す。
オリ
リジナリテ
ティーの系
系譜から
1 993年に東工
工大にくるま
までは、名工
工大にいました。
ラスのエキスパートである阿部良弘先
先生(研究室
室のボ
ガラ
ス)は、オリジナリティーの
の高い人です
す。あんなに
にオリ
ナリティーのある先生、そ
そうはいませ
せん。学生時
時代の
ジナ
恩師
師でした都立
立大(後に東工
工大)の川副
副博司先生もまた、
すさ
さまじくオリジナリティーのある人で
でした。共に
に、あ
意味で、研究の実績だけで
で生きてきた
た方です。逆
逆に言
る意
うと 、オリジナルな研究をや
やらなかった
たら、競争に
になら
いわけですね
ね。彼らの基準
準ははっきり
りしていて、日本
ない
の中
中の評価なん
んかどうでもいいから、世
世界が認める
る研究
をす
すること。そういう点では
は、両先生と
とも非常に厳
厳しい
方で
でした。
世
世界が認めて
て、明らかに
にその人がい
いなかったらでき
ない
い仕事がオリジナリティー。研究とは
は、人と違っ
ったこ
21
やる孤独な仕
仕事なんだと
と肌身に感じ
じました。
とをや
ER
RATOのプロ
ロジェクトリーダーに推
推薦された経
経緯は正確には知りません
ん。ERATO
O担当
のJST
T職員が、い
いろいろな人
人に聞き取り をして候補に挙げてくれ
れたのだと思
思います。取
取り上
げられ
れた業績は、
、たぶん、ガラスの点欠
ガ
スの酸化物半
半導体でしょ
ょう。
陥の研究とアモルファス
この段
段階で、よく
く推薦してく
くれたと思い
います。そう
ういう意味で
では、僕にと っては本当に偶
然に近
近いのです。
。でも結果と
として、JSTに
には「目利き」の職員がお
おられたとい
いうことです
すね。
ERAT
TO に拾って
てもらわなか
かったら、短
短期間でここ
こまでの成果
果は得られな
なかったでしょう。
ER
RATOのリー
ーダーはやっ
っぱり厳しい
いです。人の
のまねなんか
かしたら、す
すぐばれてしまう。
「あん
んなに金もら
らって、ろく
くな仕事やっ
ってない」と
と研究者の評
評価は厳しい
いです。成功した
か失敗
敗したか、自
自然にわかっ
ってしまう 「針のむしろ
ろ」です。
セメ
メント材料
料のヒントは学生実
実験だった
ER
RATOの研究
究構想を出す
すとき、自分
分のやってきた仕事を
振り返
返りました。
。そして、自
自分のやって
てきた中から、小さく
てもい
いいから、今
今なお不思議
議で、どうし
してもやりたいテーマ
を選ぼ
ぼうと考えま
ました。その
の1つがセメ ントの化合物
物だった
のです
す。セメント
トの材料は、何か出てき そうな気がして仕方
なかっ
ったんですよ
よ。このテー
ーマは僕にと
とって歴史が
が古く、
1986年
年にそのガラ
ラスが感光す
する現象を見
見つけて、ドイツの第
1 回オ
オットー・シ
ショット研究
究賞を頂いて
ています。何
何も加えて
いない
いセメントの
のガラスに紫
紫外光を当て
てるだけで感
感光する、
という非常に不思
思議な現象で
で、そのメカ
カニズムを解
解明したの
。
です。
き
きっかけは、名工大で石灰
灰とアルミナ
ナを混ぜてセ
セメントを作
作る学生実験
験を見ていた
た時で
した。
。早く済ませ
せるために、いったん溶
溶かすんです
すが、それを
を流し出すと 、赤い色になっ
て、冷
冷めても黄色
色い。「あれ
れっ」と思い
いました。石
石灰とアルミナで色がつ
つくはずがないか
らです
す。
何
何か、面白い
い現象があるに違いない と直観しまし
した。そこで
で高純度の試
試薬をもらっ
って作
ってみ
みても、同じ
じことが起こ
こる。こうし
して作った感
感光性ガラス
スは、光を当
当てると褐色に着
色し、
、光を切って
ても消えない
い。ところが
が、ガラスを
を溶かす条件
件を還元性雰
雰囲気にすると、
光が当
当たったとき
きだけ青くな
なって、その
の後消えるガ
ガラスができ
きた。成分が
がまったく同じな
のに、
、溶かす条件
件を酸化性の
の雰囲気と還
還元性の雰囲
囲気に変える
るだけで、2つ
つのフォトク
クロミ
ック・ガラスがで
できてしまっ
ったんです。
22
セメ
メントに電
電気が流れ
れた!
ER
RATOを始め
めるときに、何であんな
なことが起きたのか、不思
思議だと思い
い返しました
た。も
しかしたら、結晶
晶に秘密があ
あるのかもし
しれない。そ
そこで、粉末
末、薄膜、単
単結晶の全部をそ
て、材料研究
究の理想型と
として研究し
してみようと
と始めました
た。それがう まくいった。単
ろえて
結晶が
がなかったら
ら、わからな
なかった。
ま
まず当時のガ
ガラスを再現するため、酸
酸素のある雰
雰囲気で作っ
ってみた。言
言われた学生
生はま
じめだ
だから、ボン
ンベからきち
ちんと酸素を
を流して作っ
った。そした
たら、名工大
大の時とは全
全然違
うもの
のができてし
しまったので
です。分子構
構造の籠の中
中に入ってい
いたのは、O-
-(オー・マ
マイナ
ス)と
といって、こ
こんなにすご
ごいの見たこ
ことない、とい
いうぐらい強
強い酸化力の
のイオンでし
した。
この発
発見は偶然で
です。
次
次に、今、東工
工大の別の部
部門の准教授
授をして
いる林
林克郎君(当
当時は博士研
研究員)に 「これを
還元して」と頼ん
んだ。彼は水
水素を流した
たのです
できたものの
のエックス線
線回折の測定
定をした
が、で
後の試
試料には、エ
エックス線が
が当たった位
位置が着
色して
ていたんです
すよ。「これ
れ、先生が昔
昔見つけ
たやつ
つですよね」
」と持ってき
きた。「いや
や、色が
違う」
」。昔は黄色
色だったのに
に今度は緑だ
だったの
です。
。
結
結晶で緑にな
なるはずがないので、も う1 回やって
てもらいまし
したが、間違
違いない。そ
そして
光吸収
収をはかって
てみたら、可
可視域は通る
るのですが、赤外域が通
通らないんで
です。赤外域
域が通
らない
い(自由電子
子による吸収
収)と電気が
が流れる現象
象があるので
で、あるいは
は……。実験
験して
みたら、やっぱり電気が流れ
れていたんで
です。あんな
なにびっくりしたこと、 いままでないな
セメントに本
本当に電気が
が流れちゃっ
ったのです。キツネに化
化かされてい
いるんじゃないか
あ。セ
と、ま
まず林君が僕
僕のほっぺた
たをつねる。 僕もつねっ
ったんですよ
よ。
こ
この仕事はNaature に出た
たけれど、その
の発表がされ
れる前に、新聞社の人が
新
生(現
北澤宏一先生
在、科
科学技術振興
興機構理事長
長)のところ
ろにコメント
トをいただき
きに行ったん
んです。北澤
澤先生
はMIITでアルミナ
ナの研究で学
学位を取った
た専門家で、アルミナがど
どのぐらい電
電気を流さな
ないか
1番よ
よく知ってい
いる。第一声
声は「ガセネ タじゃないの」。かくか
かくしかじか
か、こういう
う理由
らしい
いと説明を聞
聞いたら「そ
それならあり
りうるかな」。この反応
応は1番うれし
しかった。ア
アルミ
ナを11番知ってい
いる人が「もしかしたら 」と思ってくれたからで
です。
そ
その後この物
物質は、金属になって、超
超伝導になりました。で
でも、超伝導
導になった時
時より
は、電
電気が流れた
た時の方がう
うれしかった
た。学生実験
験だって、よ
よく目を凝ら
らしてみると、ネ
タがた
たくさんある
るんですよ。
23
材料科学の条件は、社会に役立つこと
よく「挑戦的なテーマはオール・オア・ナッシング」と言う人がいますが、それを聞く
と「ああ、この人は本当の研究をやっていないな」って思います。そんな研究などあり得
ないからです。一生懸命やっていると、必ず新しい考え方やヒントが出てくる。物質は多
面的だから、ある面で切ったら見えないかもしれないけど、別の視点で切れば、必ず新し
い顔を見せてくれるんですよ。
材料科学を縛るのは、世の中のために役に立つ、それを目指すことだけです。すぐに役
立たなくても構わないけれども、いずれ必ず社会の役に立つことをする、それを目指すの
が材料科学の最低条件なんですね。
聞き手・本文構成:松尾 義之
株式会社白日社 編集長
インタビューを終えて
東京電力科学誌「イリューム」編集長
あまり伝えられないが、日本の科学技術の本当の強さは「本物の研究」がきちんと存続・
支援されているところにある。正式な組織があるわけではないが、きちんとわかっている
人々がいて「あの人の仕事はいい」と評価している(としか考えられない)。当の研究者
を含む彼らを、私は「豊かな地下水脈」と呼んできた。細野先生もまたその1人、ピカピカ
の一級品としか言いようがない。
1986年の超伝導騒動の折、後にノーベル賞を受賞するミュラー博士にロンドンで失礼な
質問したことがある。「あなたが発見の根拠としたヤン・テラー・ポーラロンを信じてい
る科学者は皆無のようだが……」。博士は壇上から私の席までやって来て、持論をまくし
立てた。こっちも「なら、どういう実験で証明するのか」と反論すると、最後は「I will do」
だった。クリスマス講演会で有名な講堂での出来事である。卓越した科学者に共通するの
は、深い知識と合理性に基づきつつ「極端にバイアスをかけた論理」を展開することだ。
細野先生にこの話をしたら、「それが“信念”なんです」と切り返された。「ただ、女房に言
わせると“僕の勝手な思い込み” になる」。一級の科学者は話術も1つ抜けている。
24
2011年3
2
3月に掲
掲載され
れた
Tookyo Insstitute of Techn
nology Bulletin
B
記事
掲
掲載URL
L:http
p://www
w.titech.aac.jp/bu
ulletin/inndex.htm
ml
このペー
ージにアクセ
セスすると以
以下記事のインタビューがご覧になれ
れます。
―――――――
――――――
――――――
――――――
――――――
――
IIn searcch of neew funcctional materia
m
als
A
An interview
w with Hideo
o Hosono off the Frontier Research
h Center to hhear more about
a
his reesearch on new
n functio
onal materiaals.
25
研究
究紹介
鉄
鉄系超伝
伝導体薄
薄膜を用い
いたデバ
バイス応
応用
D3 片瀬
瀬貴義
20008年2月、私
私たちの研究
究グループに
により、F添加
加LaFeAsO(LaFeAsO1-xxF x)が26Kと
と高い
温度で
で超伝導現象
象を示すとい
いうことを発
発見されて以
以来、「鉄」を
を含む超伝導
導体「鉄系超
超伝導
体」が
が新しい高温
温超伝導体と
として認識さ
され、世界中
中で集中的な
な研究が立ち
ち上がり、現
現在そ
の最高
高Tc(超伝導
導に転移する
る温度)は、 YBa2Cu3O7-δに代表され
れる銅系酸化
化物系超伝導
導体を
除けば
ば最高の56K
Kにまで達し
しています。この鉄系超伝
伝導体は、第2種超伝導体
第
体に属してい
いて、
銅酸化
化物並に高磁
磁場中でも超
超伝導現象を
を維持するこ
ことが
可能で
で、さらに、
、銅酸化物と
とは異なった
た利点も有す
するた
めに、
、実用上非常
常に期待でき
きる新材料で
です。
超
超伝導体は、電
電気抵抗が完
完全にゼロで
である(完全
全導電
性)、外部磁場を
を内部から排
排除する(完
完全反磁性)、ごく
バリア層を通
通して電圧を
をかけずに電
電気が流れる
る(ジ
薄いバ
ョセフソン効果)
)といった特
特異な現象を
を示します。私は
まで、鉄系超
超伝導体のC
Co添加BaFe2 As2において
て、ジ 図 1::粒界ジョセ フソン接合の構造
これま
ョセフソン効果を
を用いた超伝
伝導デバイス
スの作製を行
行
きました。図
図1に作製し
したジョセフ ソン接合素子
子
ってき
の構造
造を示します
す。面内の[1
100]の結晶方
方位が対称的
的に
なるように接合さ
させたバイク
クリスタル基
基板上に、エ
エピ
シャル薄膜を
を形成し、傾
傾角粒界を含
含んだブリッ
ッジ
タキシ
構造に
に加工してい
います。図2
2にマイクロ ブリッジのII–V
特性を示します。
。非線形型の
のジョセフソ
ソン接合に特
特有
V特性が得ら
られ、傾角粒
粒界がバリア層
層の役割を担
担
なI–V
い、ジョセフソン接合として
て動作しまし
した。さらに
に、
図 2:ジョセフソ
2
ソン接合の I–V 特性
ジョセフソン
ン接合を応用
用して超伝導
導量子干渉素
素
そのジ
子(SQ
QUID)を試作
作しました。SQUID素子
子はジョセフソ
ン接合
合素子を含ん
んだ超伝導ル
ループでの磁
磁束の量子化
化
現象を利用したデ
デバイスで、超微弱な磁
磁場の検出器
器と
認識されてい
います。実際
際に、外部か
から磁場を印加
して認
すると、周期的な
な電圧変調が
が観察され、SQUIDとして
図3はノイズ特性)。これ
れらは、鉄系超
動作しました(図
体薄膜を用い
いたデバイス
ス動作の最初
初の実証の成
成
伝導体
果です
す。今後は、
、薄膜オリジ
ジナルな特徴
徴を生かして
て、
図 3:SQUID のノ
ノイズ特性
さらに
に新しい研究
究成果を目指
指していきた
たいと思って
てい
ます。
。
26
研究
究紹介
The solar cell abbsorbing energy of
o UV ligght
D3 李 敬美
Reecently, blackk or blue solarr cell panels hhave been seeen in our
enviroonment such as on the roo
ofs or light staands on the sttreet. They
absorrb only limited range of lig
ght among soolar radiation (the bottom
solar cell in Figuree 1), and it means that the rest of them is converted
into hheat or reflecttion loss. Theerefore, manyy researchers have studied
the soolar cells reduucing energy loss by applyying various materials
m
whichh can capture all the energ
gy from sun, aas shown Figu
ure 1.
Seemiconductor has the band
d gap which iss the gap betw
ween the
band bound electroons (valence band) and thee empty band
d (conduction
n
band)). Electrons inn valence ban
nd can move tto conduction
n band when
it getss energy enouugh to releasee from the vallence band. Solar
S
cells,
compposed of p andd n type semiiconductors, uuse this charaacteristic and Figure 1. Soolar spectrum
m and
makee a depletion region
r
when conjunct
c
them
m. When solaar light with
each solar ccell using it
greateer energy thann the band gaap of the semiiconductor paasses
through the solar cell,
c it may bee absorbed byy the materiall. This absorp
ption takes thhe form of a
band--to-band electtronic transitiion, so an eleectron/hole paair is produceed. If these caarriers can difffuse
to thee depletion region before th
hey recombinne, then they are separated
d by the electrric field, as sh
hown
in Figgure 2.
Myy study is to apply
a
transpaarent amorphoous In-Ga-Zn
n-O (a-IGZO)) semiconducctor into the solar
s
cell ab
able to absorbb the energy of
o UV light. aa-IGZO based
d solar cell caan absorb shorrt wavelength
h of
400 nnm corresponding band gap of 3 eV am
mong the solarr radiation and a-IGZO baased solar celll can
expecct to increase open circuit voltage and m
may lead to in
ncrease in thee efficiency (aa-IGZO based
solar cell is categoorized to the top
t solar cell in Figure 1.)
Figure 2. a-IIGZO / Si sollar cell
27
研究
究紹介
新し
しい高温
温超伝導体
体を目指
指して
D3 柳基勲
柳
私
私は鉄系超伝導
導体に関する
る研究と共に
に、新しい高
高温超伝導体
体を目指して
て新物質の探
探索を
行って
ています。具体的には、
具
鉄系超伝導
導体の代表物質である111
11系と呼ばれ
れるZrCuSiA
As型層
状化合
合物の中でも
も、特に3d遷
遷移金属を含
含む伝導層を
をもつ層状構
構造に着目し
しています。その
ZrCuSiAs型構造は
は、下図のよ
ように絶縁層
層と呼ばれる
るLnO層(Lnは
は希土類)と伝
伝導層と呼ば
ばれる
属)層から構
構成されてい
いる。Mサイト
トは鉄のほか
か様々
MAs (MはMn, Fe, Co, Niなどの3d遷移金属
遷移金属に置
置換が可能で
であり、Mnの
の場合は反強
強磁性の半導
導体、Coの場
場合は強磁性
性金属、
な3d遷
Niの場
場合はFeと同
同様の超伝導
導、と様々な
な物性を示す
す。
高い反強磁性の転移温度を
を示す銅系超
超伝導体や鉄
鉄系超伝導の
の場合には、 電子や正孔
孔を添
磁性配列を崩
崩すことによ
よって、高い
い温度で超伝
伝導が発現してい
加することによりその反強磁
。そこで本研
研究では、高
高い反強磁性
性の転移温度
度を示すMn系
系1111化合物
物に注目しま
ました
ます。
(下表
表)。これま
まで知られたLnMnPnO (P
Pn = P, As, Sb
b)に加え、L
Lnをアルカリ
リ土類金属(S
Sr, Ba)
に置換
換すると同時
時にOをFに置
置換したAeM
MnAsF(Ae = Sr, Eu, Ba)を
を新たに合成
成し、電子や
や正孔
のドー
ーピング効果
果を検討して
ています。現
現在のところ
ろ、これら一
一連のMn系化
化合物から新
新しい
超伝導
導体は得られ
れておりませ
せん。しかし
しながら、Fe系化合物と
とは異なって
て、第一近接
接の面
内Mnn間に強い相
相互作用があり反強磁性の
が面内の距離
離に依存する
る傾向を示す
すこと
の転移温度が
を明らかにしまし
した。この後
後この強靱な
な反強磁性配
配列を何らか
かの方法で消
消すことができれ
温度の新超伝
伝導体として
て有望である
ると信じて日
日々研究して
ています。
ばより高い転移温
図:ZrrCuSiAs 型構
構造を有する Mn 系 1111 化合物
表 :特性の比較
較
28
研究
究紹介
鉄系
系超伝導
導体にお
おける水素
素ドーピ
ピングの
の効果
D2 半那
那 拓
20008年に本研究
究室にて発見
見された鉄系
系超伝導体L
LaFeAsO1–xFxを皮切りに 数多くの鉄系超
伝導物
物質が急速に
に研究、発見
見されてきま
ました。その
の中でも希土
土類酸化物層
層をブロック層、
鉄砒素
素層を伝導層
層とした1111系と呼ばれ
れる構造を持
持つ物質RnFeeAsO(Rn=希 土類)は酸素
素サイ
トをフッ素で置換
換または、酸
酸素サイトに
に欠損を意図
図的に入れる
ることによっ
って電子ドープを
最大で55Kと
という高い超
超伝導転移温
温度Tcを持つことが知られ
れています。
。
行い最
超
超伝導研究における醍醐味
味の一つに高
高いTcを目指
指すという事
事があります
す。Tcが77Kを
を超え
れば液
液体窒素下で
での使用が可
可能となり実
実用化に向け
けての大きな
な一歩を踏み
み出すことができ
ます。
。残念ながら
ら現在のとこ
ころ鉄系超伝
伝導体のTcは55Kで頭打ち
ちとなってい
います。一般
般的に、
鉄系及
及び銅系超伝
伝導体では電
電子または正
正孔ドープ量
量に対してTcが上昇し最適
適値を頂点とし
てドー
ームを描くこ
ことが報告さ
されています
すが、鉄系超
超伝導物質で最も高いTcを
を持つ1111系
系にお
いては
はオーバードープ側の挙
挙動が見えて
ておらず、ドープが可能な固溶限界も
も約20%程度
度で現
在のT
Tcが本当に最
最適値である
るのかを判断
断することが
ができません
ん。これらの問
問題を解決す
するた
めに本
本研究ではフ
フッ素の代わ
わりに水素を
をH–としてド
ドーピングす
する方法を発
発見しました
た。そ
して、
、水素は1111系化合物に
に対して先述
述のフッ素や
や酸素欠損よりも固溶限界
界が広く、4
40%以
上のドーピングが
が可能で有る
ることが分か
かってきまし
した。これらの
の結果から一
一部の1111物
物質の
上昇すること
とも明らかに
になってきて
ています。さらに、水素は
は加熱するこ
ことで気化し
し試料
Tcが上
内の水
水素の含有量
量を容易に決
決めることが
が可能です。これらの水
水素の特性を
を生かして鉄
鉄系超
伝導体
体におけるドーピング依
依存性を系統
統的にまとめ
め、明確にす
することで、なぜTcが55K
Kで止
まって
ているのか、
、より高いTcを得るには どのようなアプローチが
が必要かを知
知る手掛かり
りが得
られると考えてい
います。また
た従来超伝導
導を示さない
い類似物質に
に対しても、 もっと高濃度の
来れば超伝導
導を発現する
る可能性があ
あります。“新
新しい”、“777Kを超えた
た”とい
ドーピングが出来
魅力的なキー
ーワードを実
実現すること
とを意識して
て日々研究を
を行っていま
ます。
った魅
29
研究
究紹介
アモ
モルファス酸化物
物/金属
属のショットキー
ー接合
D2 李 棟熙
毎
毎年日本で開かれる「フラ
ラットパネル
ルディスプレ
レイ(FPD)の総
総合技術展」
」では、世界
界中の
企業か
からの試作品
品も展示され
れ、高解像・
・大画面3Dテ
テレビや透明
明で曲がるデ
ディスプレイ
イなど
次世代
代に向けたデ
ディスプレイ
イが見学でき
きます。その
の次世代ディスプレイの
の性能は、特
特にデ
ィスプ
プレイに欠か
かせないスイ
イッチング素
素子(薄膜トラ
ランジスタ、TFT)など個
個々のデバイ
イス特
性に大
大きく影響を
を受けますが
が、2004年当
当研究室が発
発見した新し
しい半導体材
材料TAOS(透
透明ア
モルファス酸化物
物半導体)を
を用いたTFT
Tが、従来の
のアモルファスSiをベース
スとしたTFT
Tでは
できない優れ
れた特性を持
持つことから
ら、ディスプ
プレイ応用を
を目指して猛
猛烈な研究開発が
実現で
進められてきまし
した。たった
た数年間です
すでにTAOS TFTを用いた
たLCDが実用
用化されよう
うとし
ており、使え
える新材料発
発見の威力を
を実感してい
います。
てきて
TA
AOSの半導体
体材料として
ての歴史は他
他の半導体に
に比べまだ浅いため、これ
れからTAOS
Sをベ
ースとしたオプトエレクトロ
ロニクス展開
開のためには
は、より優れ
れた特性のTA
AOS材料やま
まだ実
れてない高性
性能p型半導
導体の開発は もちろん、T
TFT以外のオ
オプトエレク
クトロニクス
スデバ
現され
イス作
作製とともに
にそれらの物
物理的な特性
性をきちんと
と調べる必要
要があります
す。そこで私は
TAOS
Sと金属のシ
ショットキー
ー接合による デバイスに着
着目していま
ます。簡単な
な構造を持つ
つショ
ットキ
キー接合は半
半導体側の電
電子状態評価
価に有用であ
あるとともに
に、別の誘電
電材料層を必要と
しない
いMESFETや
や太陽電池な
などの光セン
ンサーに応用
用ができる長
長所を持ちます
す。半導体と
とそれ
より大
大きな仕事関
関数をもつ金
金属を接触さ
させると、通
通常は整流性
性を示すショ ットキー接
接合が
できま
ます。しかし
し、酸化物半
半導体の場合
合はショット
トキー特性の
のバラツキが
が大きく(作
作製条
件によっては極端
端な場合オー
ーミック特性
性を示すこと
ともある)、理
理想的なショ
ョットキー接
接合を
のは難しいこ
ことが知られ
れています。しかし、Ptを用いて半導
導体との界面
面に与えられ
れる悪
得るの
影響をできるだけ
け抑えること
とで、TAOS /Ptの良好な
なショットキ
キーダイオー
ードを作製す
するこ
できました。
。
とがで
本
本研究室の長所
所としては、
、研究に集中
中できる環境
境はもちろん
ん、先生方や
や先輩皆さん
んから
のアドバイスや蓄
蓄積されたノ
ノウハウが多
多いことと思
思います。ま
また様々なバ
バックグラウンド
った人々が集
集まっている
るため、互い
いに刺激し合
合い学び考え
えることで研
研究生活以外
外にも
を持っ
一層広
広がった視野
野を持つこと
とができると
と思います。
a-IGZ
ZO/Pt ショットキー接合
合の J-V 特性
性
a-IGZO
O/Pt ショッ
ットキー接合を
をもちい
た ME
ESFET の伝達
達および出力 特性
30
研究
究紹介
層
層状構造
を持つ新
新規超伝
伝導体Sr1-x
1 LaxFe2 As2
D1 村場
場 善行
層状構造を持つ
つAeFe2As2(A
Ae =Ca, Sr, B
Ba, Eu)はAe原
原子層とFe-A
As層が積層 した結晶構造
造を
取って
ています。こ
これらの物質
質群はFeAs層
層が電気伝導
導層となって
ており、構成
成元素の一部
部を置
換して
てFeAs層にキ
キャリアを注
注入する事に
によって超伝
伝導が発現し
します。 例え
えば、①2価
価のAe
サイトを1価のK
Kで部分置換
換して間接的
的にFeAs層に
に正孔を注入
入、②Feをd電
電子が1つ多い
いCo
分置換して直
直接的にFeA
As層に電子を
を注入する事
事で超伝導が
が誘起され、 FeAs層に間
間接的
で部分
にキャリアを注入
入した方が超
超伝導転移温
温度が高い傾
傾向がありあ
あます。しか
かし、間接的にキ
アを注入した
た例は、正孔
孔を注入した
た例(Aeサイ
イトをKで部分
分置換)しか
か無く、電子
子を注
ャリア
入した
た報告例は無
無いため、正
正孔と電子ど
どちらを間接
接的に注入し
した方が高い
い超伝導転移
移温度
をもた
たらすのか興
興味が持たれ
れていました
た。そこで、Aeサイトを
を3価のLaで置
置換する事で
で間接
的に電
電子を注入し
した物質の合
合成を試みま
ました。
その結果、2万
万気圧程度の
の高圧下でAeeFe2As2にLaを部分置換し
した物質を合
合成する事が
ができ、
分置換した物
物質が22Kで超
超伝導になる
る事が明らか
かになりまし
した。
そのうちSrFe2Ass2にLaを部分
場合(K置換:38K)と比較 して超伝導転
転移温度は低
低くなること
とが実験的に
に分か
正孔を注入した場
なぜ正孔を注
注入した方が
が、超伝導転
転移温度が高くなるのか ?②AeFe2Ass2の中
りましたが、①な
ぜSrFe2As2だけがLaを部
だ
部分置換する
ると超伝導を
を引き起こすのか?③バン
ンド計算では
はLa
でなぜ
で置換
換すると電子
子的な不安定
定があるとさ
されているが
が、電子構造
造は実際にど
どのようになって
いるの
のか?といっ
った疑問が出
出てきます。
Reisitivity (mΩcm)
今後はそれらの疑問を解明
明していこう
うと思ってい
います。
0.4
0.3
0.2
0.1
(a)
0.0
0.0
4πχ
A
Ae
F
Fe
A
As
図 1: AeFe2As2 の結晶構造.. Ae は(Ae =
Ca, Sr, Ba, Eu).
-0.5
-1.0
0
(b)
10
20
30
40
50
Te
emperature (K
K)
図 2: Sr0.6La0.4Fe
F 2As2 の(a)電
電気抵抗率
(b)磁化率の温
温度依存性
31
研究
究紹介
透
透明アモ
ルファス
ス酸化物
物TFTの動作モデ
デル
D1 安部
部勝美
本
本研究室で発見
見された透明
明アモルファ
ァス酸化物半
半導体In-Ga--Zn-O(a-IGZ
GZO)は、そ
その電
子構造
造に由来する
る高い電流能
能力(移動度
度)から、従
従来のアモル
ルファスSi(aa-Si)に変わ
わる薄
膜トランジスタ(Thin-Film--Transistor,T
TFT)の半導
導体材料とし
して注目され
れています。2011
在、最初の報
報告(2004年
年)から数年
年で、a-IGZO TFTを用いた製品(液晶
晶ディスプレ
レイ)
年現在
がまもなく市場に
に出る、とい
いう状況にな
なっています。私は、2010年まで、企業
業においてa--IGZO
の研究開発を
を行っていま
ました。その 企業は、a-IG
GZO TFTの発
発見後すぐに
に本研究室と
と共同
TFTの
研究を始めており、幸運にも
も、このa-IG
GZO TFT技術
術の急速な発
発展に、初期
期から携わる
ること
ができ
きました。
企
企業での私の研
研究テーマは
は、a-IGZO TFTの動作モ
モデルの構築
築でした。a--IGZO TFTの
の特性
を詳細
細に検討する
ると、既存の
のa-Si TFTの モデルでは説
説明できない
い点があるこ
ことがわかり
りまし
た。このため、キ
キャリア密度
度に依存する
る移動度を用
用いた動作モ
モデルを構築
築し、その妥
妥当性
証しました。 図は、測定
定とシミュレ
レーションに
によるa-IGZO
O TFT
をシミュレーションにて検証
気的特性です
す。本動作モ
モデルを用い
いたシミュレ
レーションは
は、測定され
れた特性を再
再現し
の電気
ており、モデルが
が妥当である
ることを示し
しています。本モデルを
を用いれば、 a-IGZO TFT
T特性
測できるので
で、デバイス
スの設計・開
開発が容易に
になります。
を予測
現
現在は、本研究
究室の学生として、透明
明アモルファ
ァス酸化物半
半導体を用い
いた機能デバ
バイス
の研究
究を行ってい
います。その
の電子構造に
に基づく新た
たな特長を持
持った機能デ
デバイスを獲得す
ることが目標です
す。
32
海
海外渡航記
D3 片瀬
瀬貴義
2011 年 4 月 25 日から、アメ
メリカのサン
ンフランシスコで開催された Materiaal Research Society
S
(MRS
S) Spring meeeting に参加しました。私
私は超伝導の
のセッション
ンで、“Robuust grain boun
ndary
naturee in iron pnicctide supercon
nductors”とい
いうタイトル
ルで招待講演
演を行いまし
した。超伝導
導の分
野は特
特に競争が激
激しく、ライ
イバルも多い
い中で、招待
待講演をさせ
せて頂けたの
のは、名誉なこと
だと思
思っています
す。学会後、アメリカニュ
ア
ューメキシコ
コ州のロスア
アラモス国立
立研究所(LA
ANL)
に招待
待していただ
だき、私が行
行ってきた研
研究に関して
てセミナーも
も行ってきま
ました。セミナー
に参加
加して頂いた
た LANL の職
職員・ポスド
ドクの方たち
ちから有意義
義な質問、ア
アドバイス等
等も頂
けてよい経験にな
なりました。その後、こ れまでのそ
今後の共同研
研究について
て夕方まで議
議論を行い
して今
ました
た。LANL では、
で
多種多
多様な研究所
所と豊富な研
究設備
備があり、とても良い環
と
環境でした( 周りは広大
な自然
然に恵まれ、
、穏やかな気
気分になれる 場所です)。
今回このような機
機会をアレン
ンジしてくれ
れた Boris
感謝していま
ます。
Maiorrov 氏には感
D3 李 敬美
日
10 日ま
まで、スペイ ンのバレンシ
シアで開催さ
された国際学
学会 25th Eurropean
2010 年 9 月 6 日から
nference and E
Exhibition (E
EU-PVSEC) and
a 5th Worldd Conference on
Photoovoltaic Solarr Energy Con
Photoovoltaic Energgy Conversio
on に参加しま
ました。
EU--PVSEC は 10
1 以上のセッションから
らなり、シリコン・
CIGS
S を中心に、ワイドギャップの太陽電
電池から有機
機物太
陽電池
池まで研究発
発表と Exhib
bition が行わ
われるという大き
な学会
会でした。私
私は“Photovo
oltaic propertties of n-typee
a-In-G
Ga-Zn-O / p-ttype c-Si heteerojunction soolar cells”という
題名で
でポスター発
発表を行いま
ました。発表
表以外の時間
間は、
他のポ
ポスター発表
表や講演など
どを聞いて大
大変勉強にな
なりま
した。
。また、この
のような大き
きな国際学会
会に参加する
ること
で、自分の研究分
分野に限定さ
されず、幅広
広い最新の研
研究動
産業界におけ
けるニーズな
などをよく知
知る事が出来
来まし
向や産
た。今
今後は、この
の経験を自分
分の研究に活
活かすと共に
に次の
学会で
では口頭発表
表で行きたい
いと思ってい
います。
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