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概要版 - 北海道
平成 26 年度 1 技能人材定着化事業 事業実施報告書(概要版)(平成 27 年3月 北海道) 事業の目的 塗装や左官、型枠など技能職種においては、若手入職者の減少や受注の増加により人手不足の 状況にあることから、雇い入れて間もない新入社員等の定着促進に向けた対策を行い、技能系職 種における人材の安定した定着を図る。 2 事業の内容 (1)賃金上昇等の状況調査 (調査期間:平成 26 年 10 月~12 月) 企業を対象として賃金面や資格取得等の処遇状況を把握するとともに、雇用される技能人材側 の意見も聴取して技能人材等が企業に求める処遇等も明らかにするために、企業および技能人材 の双方に対してアンケート調査を実施した。 (2)技能人材育成研修会 (実施期間:平成 26 年 10 月~平成 27 年3月) 新入社員等従業員(若手社員)が社会人としての基本的なビジネスマナー、期待される社会人 としての自覚やルールを身に付けるとともに、コミュニケーション能力を備えた人材となること を通じて職場への定着促進を図るために技能人材育成研修会を実施した。 (3)技能人材育成セミナー (実施期間:平成 27 年2月~3月) 人材育成のための研修等を独自に実施することが困難な道内建設関連企業、特に中小企業に対 して、新入社員等在職者の定着化を図るため、経営者・管理職を対象とした技能人材育セミナー を実施した。 3 事業の結果 (1)賃金上昇等の状況調査 建設産業専門団体北海道地区連合会の会員団体に属する企業・事業所(以下、企業)、一般社団 法人北海道技能士会の会員団体である地方技能士会に属する建設関連(塗装、左官、型枠施工な ど)の技能士(以下、 「技能士」)、および前期の技能人材育成研修会参加者(以下、 「若手」)にア ンケート調査を行なった。アンケート調査対象の概要は表1のとおりである。 表1 「企業」 回答は道内建設関連企業 1,134 社、1社 当たり技能人材の平均常用従事者は 15.6 人、階層別には「4~10 人」の企業が最 も多い。 アンケート調査対象の概要 「技能士」 「若手」 回答は道内の建設関連業他の技能士 514 回答は前期の技能人材育成研修会参加者 人、平均年齢は 52.2 歳、平均経験(就業) 238 人、平均年齢は 23.9 歳、平均経験(就 年数は 31.9 年、男性が 97.7%。 業)年数は 3.7 年、男性が 93.7%。 一般に、中高年と比べて若手は職場への定着率が悪いと言われることがあるが、 「企業」におい て「20 歳代」の若手で定着率が特に低いという様子はうかがえない。ただし、各年齢階層の入社・ 退社の平均人数から、定年などにより退社人数が多くなる「60 歳代」を除けば「20 歳代」で技能 人材の出入りが最も多い。 「技能士」が最初に離職を考えた時の平均年齢は 25.2 歳で、その理由の上位3位は、「収入が 低い」 「休日がとれない」 「労働時間が長い」である。一方、 「企業」が考える技能人材の離職理由 の上位3位は、 「作業環境が厳しい」 「収入が低い」 「職場の人間関係」である。 「技能士」でも「収 入が低い」ことは高い割合で選ばれていたが、 「作業環境が厳しい」および「職場の人間関係」に ついては比較的選択割合が低い。雇用側と被雇用側の意識の差異がうかがえる。 人材の定着に向けた取り組みについて、 「企業」が実施していること、 「技能士」および「若手」 が企業に求めることを比較すると、「資格取得等の費用支援」「給与水準の引き上げ」は「企業」、 「技能士」 、そして「若手」において比較的上位(4位以内)、そして「企業」で2位の「話しや すい職場作り」は「若手」では1位となっており、これらについては雇用側と被雇用側の意識の 差は小さい。しかし、 「企業」で3位の「懇親行事の開催」は「技能士」では 17 位、 「若手」では 20 位となっており、雇用側と被雇用側の意識の差が大きい。「企業」が考える技能人材の離職理 由の上位3位には「職場の人間関係」が入っていることから、 「企業」では人間関係を良好にする ために「懇親行事の開催」を実施していると予想されるが、 「技能士」や「若手」からはあまり希 望されていない。また、 「若手」では3位の「休暇の増加」は「企業」では 14 位、 「技能士」では 11 位となっている。しかし、 「企業」では「休暇の増加」に取り組んでいる割合は多くない。これ らの結果から、人材の定着を図るために企業には、給与水準の引き上げ、資格取得等の費用支援、 話しやすい職場作りなどは従来どおり進めていくとともに、今後は休暇を取りやすい体制づくり や労働時間の短縮化に取り組むことが求められる。なお、賃金および資格取得に関する回答から、 「企業」では完成工事高の増加に伴い給与面での改善が進んでおり、資格取得について積極的に サポートしている様子がみてとれる。 先に、 「懇親行事の開催」が「技能士」や「若手」からあまり希望されていないと記したが、技 能人材が人間関係を軽んじているわけではない。 「技能士」が離職を思いとどまった理由の上位3 位には「職場の人間関係が良好」が選ばれている。 「30 歳未満」の「技能士」では相談の相手とし ては「職場の上司」と「恋人・配偶者」がともに高くなっている。これらの結果から、若手では、 職場で良好な人間関係が築けていれば他の年齢階層と比べて離職を防げる可能性が高まるとみら れる。若手と上司が関係を築く上で上司に求められることに焦点をあてると、 「技能士」と「若手」 の回答から、人間関係に配慮して部下の話に耳を傾け、仕事を丁寧に教えるとともに良い仕事を したとき褒める、ということが上司には期待されており、特に技能系の職種では仕事を丁寧に教 えることが求めらていると考えられる。 「企業」および「技能士」が若手に優先的に身につけて欲しい力として同様の項目が多く選ば れていることから、技能系の職種において若手は「主体性」 「実行力」 「課題発見力」 「計画力」と いった要素を優先的に身につけることで、企業にも、また先輩となる技能士などからも必要とさ れる人材となることができると考えられる。 (2)技能人材育成研修会 道内 28 地域において各2回ずつ(計 56 回)実施した。各地域における2回の研修会は前期と 後期に分け、前期を平成 26 年 10 月~12 月に、後期を平成 27 年1月~3月に実施した。前期は 基礎編として基本的なビジネスマナー、社会人としての自覚やルールを身につけることに重点を 置き、後期は応用編としてコミュニケーション能力を向上させることに重点を置いた内容とした。 受講者数は前期 240 人、後期 231 人となった。 (3)技能人材育成セミナー セミナーは平成 27 年2月中旬~3月中旬にかけて道内6地域で実施した。セミナーの内容は、 若手社員のモチベーションを上げて早期離職を防ぐために、経営者・管理職が自ら意識改革を行 い、適切な人事評価制度や若手社員育成計画の作成、コーチングによる社員育成方法等、それら を即行動できる実践的な内容とした。セミナーの受講者数は 72 人となった。 4 まとめ アンケート調査の結果から、雇用側と被雇用側に期待される姿を示した。この姿を実現してい くためには、今後も引き続き人材を育成するための取り組みが必要である。本事業における研修 会・セミナーの参加者の満足度は高く、今後も同様の研修会・セミナーへ参加したい、または参 加を検討したいとした参加者が多かった。今回の調査結果を踏まえると、若手に対しては、主体 性、実行力、課題発見力、計画力を身につけられる研修会が有用であり、企業の経営者・管理職 に対しては、限られた経営資源を有効に活用する昇給・処遇制度の構築支援、現代の若手の気質 を考慮した話しやすい職場作りやコーチング手法等に関するセミナーが有用と考えられる。今後、 建設関連団体や個別の企業において研修会・セミナーを催すにあたっては、このような、雇用側 と被雇用側の双方の意見を踏まえた内容とすることで、より効果的に若手技能人材の定着が図ら れることが期待される。