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CAROWAA 第21号(PDF/2.37MB)
JICA GULU OFFICE NEWSLETTER JICAグルオフィスニュースレター第21号 2014年10月1日発行 CAROWAA CAROWAA —-ちゃろわ アチョリの言語で「our village」「our home」「our land」といった意味を持つ言葉です。 JICAプロジェクトとともに自分たちの故郷がより発展する、という気持ちを込めて、グルオフィスの現地スタッフが名 づけてくれました。 ちなみに配色イメージは北部らしく「ラテライト」です。 アチョリ地域地方給水プロジェクト 起工式 無償資金協力 2011年に調査が始まって以降、村の人々が待ちに待った村落給水プロジェクトの起工式 「アチョリ地域国内避難民定住促進のための地 が2014年8月28日、Kamuntu水環境大臣、藤田順三日本大使臨席のもとにアムル県 Pukure村及びグル市ボマグランドで開催されました。 方給水計画(Acholi Water)」 最初のPukure村では、村人の歌と踊りによる歓迎の後、井戸の掘削が予定されている 本プロジェクトは、10年以上にわたる国内避難 民キャンプ生活を終え祖父伝来の村に戻ったア 場所でテープカットが行われました。その後、大使車を先頭とした車列は、グル市内でブ チョリ地域住民に対し、生活に必要となる安全水 ラスバンドに迎えられ、人々が群がるグル市内をパレードしてボマグランドの記念式典会 をコミュニティ内で提供することを目指すもの。ア 場に到着しました。 チョリ7県で合計75本の井戸、及び6カ所の管路 式典では、東アフリカ共同体歌、ウガンダ国歌、アチョリ地域歌の演奏の後、日本国歌が 給水施設が建設される。無償資金供与総額は、 流されました。大使館から提供された君が代は、バックに男女のコーラスが流れ穏やか 9億7千3百万円。両国間のEN締結日は、2013年 7月4日で、供与の期限は、2016年8月31日となっ な曲調が胸に沁みました。 藤田大使は、スピーチの中で、北部ウガンダ復興支援は、ナイル架橋等の経済インフラ ている。 開発と並んで、我が国の対ウガンダ協力政策の柱であることを強調されるとともに、昨年 のTICAD5で発表された安倍イニシャティブに基づき数多くのウガンダの若手行政官が 日本での学位取得を目指すよう呼びかけられました。 これに応え、Kamuntu大臣は、ウガンダの経済開発、北部の復興支援に対する日本政府 の貢献に感謝するとともに、プロジェクトによって建設される給水施設が、地域住民の健 康増進に繋がること、更には、これまで水汲みに費やされた多くの時間が、子供の勉強 や女性達の生産活動に振り向けられ、地域住民の暮らしの向上に結び付くことに期待を 表明されました。 宿舎のボマホテルからPukure村及び式典会場までの道中、Kamuntu大臣は、藤田大使 歓迎ダンスに興じるKamuntu大臣と藤田大使 の車に乗り込み、2008年のTICAD4に出席した時の様子を楽しげに語りかける姿が印象 的でした。 今回、藤田大使は、グル市を初めて訪問されましたが、この機会にグル市を始めアチョリ 在住のJICA関係者25名が一堂に会しチャーチルコートホテルで懇親会が催されました。 公式の記録は残されていませんが、北部ウガンダで開催されて日本人のパーティとして は、過去、最大のものだったと思われます。 「アティアク-ニムレ間道路改修事業」 番外編 ハイテクを支えるローテク! 北部ウガンダの中心都市Guluと南スーダン側国境の町Nimuleを結 ぶ国際幹線道路は、世界銀行(Gulu-Atiak間74km)と日本政府 (Atiak-Nimule間36km)の協調融資によって着々と改修事業が進 められている。南スーダンの内戦は、大きな課題として残ったままだが、 ウガンダと南スーダンは日に日に近くなっている。 この道路工事の脇で、もう1つの大工事が進められている。1列になって 道路脇を掘っている人たち、これは光ケーブルの埋設作業。カンパラから 遥々350kmを掘り繋ぎ、今さらに南スーダンに向かって進んでいる。ハイ テクネットワークは、彼らの地道なローテク人力に支えられているのだ。 発行: JICAグルフィールドオフィス 所在地: 6A Samuel Doe Road, Gulu, Uganda Phone: 256-392-900158 Page 2 CAROWAA Lamwo県での小学校施設引き渡し式 「ウガンダ北部アチョリ地域国内避難民帰還・定住促進のためのコミュニティ再生計画」(REPRE) 木の下での児童集会。背景の左側がこれまで使われてきた校舎、右側が今回引き渡された 校舎。雨期が本格化する3学期(9月から12月)もこれで大丈夫。 紛争予防・平和構築無償資金協力 「ウガンダ北部アチョリ地域国内避難民 帰還・定住促進のためのコミュニティ再 生計画」(REPRE) 同プロジェクトは、アチョリ地域における 国内避難民の定住を支援する為の教 育施設(教室・教師住居・トイレ・井戸)、 保健施設の建設、付随するアクセス道 20年に亘る内戦により大半の教育施設が荒廃したアチョ リ地域では、国内避難民の帰還に伴い多くの小学校が 再開、新設されました。しかし基礎的なインフラ(教室、 水、トイレ、教員住居)が著しく不足しており、ウガンダ政 府、開発パートナー、NGOなどがその再建に取り組んで います。1つの教室に100人を超える児童が床に直接 座って授業を受ける状態、茅葺のハットや木の下で授業 を受ける状態の早期解消が強く望まれています。 2014年9月11日、REPREプロジェクトによるLamwo県では 最初となる学校施設の引き渡し式が、首相府、Lamwo 県、学校運営委員会、PTAなど関係者計約50名出席の もとOgwan Can小学校で行われました。スピーチでは、 校長、学校運営委員会代表からLamwo県知事、首相府 Maxwell氏に至るまで異口同音に、建設された各種施設 (教室、トイレ、教員宿舎など)の適切な維持管理と有効 利用を通じて、子供たちの学力向上につながることに期 待が表明されました。 左写真は、星JICAウガンダ事務所長よ り、新築された校舎の鍵が県知事(中央) に引き渡される様子。この後、鍵は、知事 から学校運営委員会に手渡されました。 式典の終了が午後4時と少し遅い時間に なったため、児童が引き渡しを受けた教室 でこちらも真新しい机につく姿を見ること が出来なかったことは残念でした。 最後に、県知事から星所長に対して、ヤ ギ1頭が贈呈されました。 路の整備など行う約11.5億円の無償プ ロジェクト。 2011年には、国内避難民キャンプが閉 これからは、絶対もっと頑張れる! 鎖され、ほとんどの避難民は帰還した が、帰還先の教育・保健などのインフラ が不十分なために多くの人々が不自由 な生活を送っている。本プロジェクトで は教育・保健・水・道路などマルチセク ターに対し機能性を考慮した支援を行う ことで、住民の生活の質の向上に貢献 する。 分野 対象 内容 教育 35小学校 教室、教員住居、トイ レなど 保健 3保健施設 外来棟、入院棟、医 療機器など 水 21小学校と2 保健施設 新規井戸の設置もしく は既存井戸の修理 アクセス 道路 各施設への 接続道路 道路修復及び排水管 の設置 左上はこれまで使用されきた教室の様子。机 はなく土とセメントで固めた椅子に座って、右 上の写真のような状態で授業を受けている。 左下は新しい教室の様子。新しい机といす は、低学年、中学年、高学年用の3種類の大き さに分れて提供される。 県の教育担当官から、「さあ、設備は整った、 今度はあなたたちが勉強を頑張る番だ」と激 励された。 Page 3 CAROWAA 重要なのは、施設が有効に使われること! REPREプロジェクトの学校サイトでは、教室、教員住居、トイレ、井戸、そして机や椅子な どの備品、保健サイトでは、ソーラーパネル発配電機器、ベッド、診療に必要な機材な どがセットで提供されます。これがこのプロジェクトが受益者から高く評価される一つの ポイントです。保健所が出来ても、診療するための器具が無ければすぐには役に立たち ません。教室が提供されても、机や椅子がないと学習環境は改善されません。また教員 住居がないと遠くからの出勤を余儀なくされるため、遅刻と早退が常習となっている教 師の勤務状況を変えることは出来ません。 とある小学校で、自分自身も遅刻してきた教師2名が、同じく遅刻してきた児童20名に体 罰を加える場面に遭遇しました。教師によると「遅刻をした児童が罰を受けるのは当然」 とのこと。一方、教師の遅刻理由は「数キロ離れた町から通っているので、自分が遅れ 教員住居。1棟が2世帯用。プロジェクトでは2棟4世帯分を るのは仕方がない」との回答。多くの児童が教師よりもっと遠くから通っているのに。 教師が遅れれば、授業は時間通りに始まらず、児童の定時登校へのモティベーションも 標準に建設。なかにはこの1世帯分の3部屋をさらに各教師 に割り当て、1棟で最大6家族を収容する予定の学校もあ 下がります。教師が変わらなければ、児童も変わりません。 教師のこの態度を変えるのはきっと難しいですが、近くに教員住居が整備されれば、こ る。 の課題の解決に大きな一助となることは疑いありません。 トイレの使い方はどこで習った? プロジェクトで建設された教室、井戸、トイレなどの、適正使用を目的に衛 生委員会(Health Club)を対象としたワークショップが開催された。 小学校衛生委員会ワークショップ 学校を含め公共施設の衛生状態が悪いことは、北部に限らず、ウガンダの大きな 課題です。北部ウガンダの特に村落部では、トイレがある家庭が全体の40%以下、 つまり、子供たちの半分以上が、小学校に来て初めてトイレを使うことになります。 家庭で学べないことを学ぶ機会を提供するのも学校の重要な役割です。 日本ではどうやってトイレの使い方を学ぶのか?意識したことはありませんが、子 供のころからゆっくり手順を踏んでできるようになったことは間違いありません。 それではアチョリの子供たちは、どうやってトイレの使い方を学ぶのでしょう?低学 年の男の子の「扉が壊れてるトイレをこっそり覗いて、高学年の人がどうしているか を見てまねをした」という意見に、ワークショップは爆笑に包まれましたが、これはそ の意見が突飛だからでなく、みんなどこか思い当るからです。トイレットペーパーの 使い方は、もっと未経験。みんなで真剣にデモンストレーションを見守っています。 安全情報:特に夜間の移動は要注意! ウガンダの首都カンパラから北部へ向かうバスの事故、事件が続いていま す。8月18日、長い直線が続くNakasongola県で、長距離バス同士が正面衝突 し7名が即死、約20名が重傷、重体となる事故がありました。原因は、片方の バスが、スピードを出し過ぎ、側道から入ってきた車をよけきれず、コントロー ルを失ったためとのこと。この事故は日中に発生しましたが、乗用車との衝 突、道路からのはみ出し事故、横転事故等は、主に夜間に発生しています。 特に舗装の路肩がえぐれ、路幅が実質1車線分しかなくなっている区間で は、傾斜を嫌がる大型車両が道を譲らないため注意が必要です。 今度は、8月27日午前1時ごろ、同じくカンパラ‐グル間のKiryandongo県で、 銃を持った盗賊が夜間長距離バスとトラックを襲い、バスの乗客などから、コ ンピュータ、携帯電話、現金などを奪取する事件が発生しました。犯人はまだ 捕まっていません。 こちらは、若干ローカルな話題ですが、8月12日、Kitgum県で深夜(午後10時 から翌朝5時まで)のバイクタクシーの営業が禁止されました。これは相次ぐ バイクタクシーを狙った犯罪を防ぐためのものです。今年の5月から6月に掛 けて、グルで頻発した同種事件は、最近は下火になっていますが、乗用車も 含め、夜間の移動には、十分な注意が必要です。 アチョリ交通ルール! アチョリ7県のうち舗装道路があるのは3県のみ、横断歩 道は、両手で数えるほどしかありません。ウガンダでは、 歩行者優先は徹底されていませんが、何者であれ横断 歩道を渡っている以上、日本人としては止まらないわけ にはいきません。思わぬ場面に遭遇し、面白がって写真 を撮っている我々に、この豚のオーナーから掛けられた 一言、「肉が欲しいのか?」。 Page 4 CAROWAA 南スーダン難民事情(続報) 9月12日、西ナイル地域アジュマニ県にあるUNHCR Pakele事務所及びその近くにあるNyumanzi Reception Center、Nyumanzi Refugee Settlementを訪問しました。前回の訪問から約4か月が経過しており、この間の動きを探ることが目的でした。 昨年12月に発生した南スーダン内戦の結果、最高時には一日1000人を超えたウガンダへの流入難民数は、8月末の政府軍と反政府 軍の間の停戦合意に好感し、最近では、一日、20名から30名と非常に落ち着いてきているとのことでした。それでも、昨年12月以降、 新たに約12万人に上る南スーダン難民がウガンダに流入し、今回、訪問したアジュマニ県には、その8割に当たる約9万人が受け入れ られています。UNHCRによれば、雨期が明ける11月以降に再び戦闘が激化する可能性もあり、本年末までに最大30万人がウガンダに 避難する最悪のシナリオは、まだ、捨てられていないとのことでした。 一方で、難民の登録が行われるNyumanzi Reception Centerでは、出入り口のゲート、ヘルスセンター、託児所等のインフラ整備が進 められており、また、難民セトルメントでは、今年中に新たに10校の小学校建設が見込まれる他、来年末までに、更に10校の小学校が 建設されるなど、難民滞在の長期化に向けた準備が進められていることが確認されました。また、その一環で、若者に対する職業訓練 の試みも始められており、この関係で、最近、ドイツのGIZの調査が行われたとのことでした。 これら保育所や小学校、或いは、職業訓練校では、JICAボランティアの活躍も大いに期待できますが、現時点では、対象外となってい るアチョリ地域、西ナイル地域へのJICAボランティア派遣への早急な対応が望まれるところです。 難民流入の長期化に備えたReception Centerの外構工事 おばあちゃんを中心に結束のとれた南スーダン難民の家族 ~人の動き~ ~GFOあれこれ~ ウガンダ事務所星所長のグル送別会 前号で紹介した子猫たちは無事みんな もらわれていきました。代わりに、先日 の引き渡し式の際に貰ったヤギが加わ りました。現在、ネコ1、ヤギ1、鶏1、ヒ ト7の合計10匹のGFO所帯です。 2011年3月~2012年6月の1年3ヶ月に渡り、グルフィール ドオフィスの事務所長を務められた星弘文所長が、9月10 日、帰国の挨拶のために北部ウガンダを訪問しました。 最初に向かったのがNwoya県に係るToli橋。建設中の橋 が洪水で流される等の苦い思い出があるためとのことで したが、地元の人たちに大切に使われている様子に安心 されたようでした。 9月11日には、チャーチルコートホテルでグル在住の JICA関係者による送別会が催され、記念にケネス山羊を 頂いた星所長は、「自分が計画したプロジェクトが、次々 に実施に移されているのを確認し感無量である」と語られ ました。 帰国後の益々の活躍を祈念しています。 <編集後記> 8月、9月、日本の大学が夏季休暇に入るこの時期、グルにも多くお訪問者が ありました。中には、マラリアの研究、頷き症候群の調査等の専門家もいるの ですが、最も多いのは、アフリカの開発協力に関心を持つ若い人達です。こ の2か月の間、JICA新人でOJT研修の満永有美さんを始め、合計6名の大学 生・大学院生がグルを訪問されました。 稲妻を伴う豪雨がトタン屋根を強く叩き、時折、停電のため闇に包まれるレス トランでアフリカに関連した私達の愚にもつかない話に熱心に耳を傾けてくれ た若い人達、まさに至福の瞬間でもありました。 わざわざグルを訪問してくれた彼らの今後の成長を楽しみにしています。 (グル事務所 高橋嘉行・佐藤由理) ご意見・ご感想は: JICAグルオフィス: 2014年10月発行担当 佐藤 [email protected] まで