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欧州石油会社のCO 2 地下貯留プロジェクト<気候変動
PEC 海外石油情報(ミニレポート) 平成 19 年 3 月 28 日 PISAP ミニレポート 2006-036 欧州石油会社の CO2 地下貯留プロジェクト <気候変動> 欧州で実施中あるいは計画中の大手石油・天然ガス会社が関係する CO2 地下貯留プロジ ェクトの状況を整理した。プロジェクトは大別して、天然ガスから CO2 を分離して地中に 貯留するものと、火力発電所で発生する CO2 を回収して油田の増進回収に利用するものが ある。 前者にはノルウェーの Sleipner ガス田(北海)および Snoehvit ガス田(バレンツ海)のプ ロジェクトがある。ともに CO2 地下貯留を商業生産の一部に組み込んでいる。後者にはノ ルウェーの Draugen 油田(北海)、 同 Heidrun 油田(北海)および英国の Miller 油・ガス田(北 海)がある。 いずれも経済性がなく政府の支援が必要とされているがまだ支援が得られない 状況にある。 そのほかフランスの Lacq ガス田(ピレネー・アトランティック県)で、火力発電所で発生 する CO2 を回収して枯渇ガス田に貯留する取り組みが始まっている。 (1)ノルウェー 1)Sleipner West ガス田 北海の Sleipner West ガス田(Sleipner ガス田とも呼ばれる)で産出する天然ガス は CO2 を約 9%含むため出荷前に 2.5%まで減らしている。プラットフォームにガス処 理設備を設置して CO2 を分離し、海床下約 1000 メートルにある大規模な帯水層(注 1)に CO2 を貯留している。 注 1)「海底の砂が地下深部に埋もれてできたため、砂の粒子の間には地層水で満た された空隙が多く存在する。帯水層の上部にキャップロック(帽岩)と呼ばれる 浸透率の極めて小さい地層が存在することにより、帯水層に圧入された CO2 を 長期間にわたり封じ込めることができる。 」(出所:財団法人地球環境産業技術 研究機構ホームページ) 同ガス田の天然ガスの出荷は 1993 年に、CO2 の注入は 1996 年に始まった。現在も 年間 100 万トンの CO2 の注入が継続されている。同油田のオペレーターは Statoil、 PEC 海外石油情報(ミニレポート) パートナーは ExxonMobil、Total、Norsk Hydro である。 2)Snohvit ガス田 バレンツ海の Snohvit(Snoehvit、 Snøhvit とも記す)ガス田で産出する 5~8%の CO2 を含む天然ガスをノルウェー北部の都市 Hammerfest の郊外の Melkoya(または Melkoeya と記す)に本年 1 月に完成した LNG プラントに移送、同プラントの手前で CO2 を分離、これを海床下 2600 メートルにある帯水層に貯蔵する計画である。年間 70 万トンの CO2 が注入される。 同油田のオペレーターは Statoil、パートナーは Petoro(注 2)、Total、フランス の大手ガス会社 Gaz de France、米国の石油・天然ガス会社 Amerada Hess、ドイツ の石油・天然ガス会社 RWE Dea である。 注 2)ノルウェー政府 100%出資会社。政府が保有する権益を運営している。 この欧州初の LNG プロジェクトは、 「本年 12 月に出荷を開始する」(2007 年 1 月 5 日、European Spot Gas Markets)と報じられているが、Statoil は本年 2 月、Snohvit ガス田に埋蔵されている石油の開発の可能性を評価するため評価井を掘削すること を決定した。 Statoil は1 月半ばにSnohvit の石油開発は採算がとれないとして評価井の掘削を 断念したが、 「有力政治家が Statoil とパートナー会社に対してプロジェクトの再考 を強く促した」(2007 年 2 月 15 日、Platts Oilgram News)とのことである。 3)Draugen 油田および Heidrun 油田 Statoil と Royal Dutch Shell が、ノルウェー沖の北海油田での CO2 を用いた増進 回収を共同で検討している。ノルウェー中部の Tjeldbergodden に天然ガス火力発電 所(発電能力 860 MW)を建設し、回収した CO2 を Shell の Draugen 油田および Statoil の Heidrun 油田に注入する計画である。 「Draugen 油田は 1984 年に発見され、ピーク時の 1999 年には 209,000bpd を生産 していたが、2005 年には 104,000bpd まで減少した。また Heidrun 油田は 1985 年に 発見され、ピーク時の 1997 年には 231,000bpd を生産していたが、2005 年には 140,000bpd まで減少した」(2006 年 4 月 5 日、Modern Power Systems)と報じられて いる。 Draugen 油田のオペレーターは Shell、パートナーは BP、Chevron および Petoro PEC 海外石油情報(ミニレポート) である。また Heidrun 油田のオペレーターは Statoil、パートナーは Petoro、 ConocoPhillips および Fortum である。 「2008 年末までに投資を決定、2010~2011 年に発電所の稼動を開始、2011~2012 年に Draugen 油田への CO2 の供給を開始する」(2006 年 3 月 8 日、OGJ Online)とし ている。Heidrun 油田への供給は Draugen 油田の後になる。このプロジェクトの実現 には政府の経済支援が不可欠である。 (2)英国 北海の Miller 油・ガス田のオペレーターの BP、そのパートナーの ConocoPhillips お よび Shell、そして電力会社 Scottish and Southern Energy(SSE)は、スコットランド 北東部のPeterheadにあるSSEの発電所内に水素を燃料とする複合サイクル発電プラン ト(発電能力 475 MW)を建設する計画である。同油・ガス田からの天然ガスを改質して 水素を製造し、副生する CO2 を戻して増進回収することで同油・ガス田の操業を 15~20 年間延長できる。 同プロジェクトは経済性がないので政府の支援が必要であるが、2006 年 12 月 6 日に 発表された政府の 2006 年予算編成方針には支援が盛り込まれなかった。政府は「経済 支援すべきか、 支援する場合にはどのように行うかを本年末までに調査する技術者を任 命する」(2007 年 2 月 12 日、Platts Oilgram News)と表明するに止まっている。 そのため BP は「結論は 2007 年末か 2008 年初めになるだろう。パートナー会社がプ ロジェクトに対する金融支援に関して政府からの情報を待っているため投資の最終決 定の時期が先送りとなっている」(2007 年 2 月 12 日、Platts Oilgram News)と説明し ている。 (3)フランス Total は本年 2 月、発電所からの CO2 を枯渇ガス田に貯留するプロジェクトをフラン スの大手工業ガス会社 Air Liquide と共同で実施すると発表した。国立石油研究所およ びフランス地質調査所もこのプロジェクトに協力する。 同プロジェクトは、フランス南西部のピレネー・アトランティック県にある Lacq ガ ス田の天然ガス処理施設に併設されたガス火力発電所のボイラーのひとつを酸素燃焼 方式(注3)に改造し、 その燃焼排ガスからCO2 を回収して30 キロメートル離れたRousse にある枯渇ガス田に貯留するものである。2008 年から 2 年間で 15 万トンの CO2 を地下 4500 メートルの岩層に注入する。 PEC 海外石油情報(ミニレポート) 注 3)Air Liquide の酸素燃焼プロセスを採用する。酸素燃焼の方が空気燃焼より高濃度 の CO2 を含む排ガスが得られるので CO2 回収が容易である。 (YY) 本資料は、 (財)石油産業活性化センター石油情報プラザの情報探査で得られた情報を、整理、分 析したものです。無断転載、複製を禁止します。本資料に関するお問い合わせは [email protected] までお願いします。 Copyright 2006 Petroleum Energy Center all rights reserved