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「スリランカぱれっと」の継続支援事業(PDF/204KB)

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「スリランカぱれっと」の継続支援事業(PDF/204KB)
業務完了報告書様式
世界の人びとのための JICA 基金・業務完了報告書
1.
業務の概要:
(1)事業名
障害者の社会参加と自立の場「スリランカぱれっと(Palette)」
(2)実施団体名
特定非営利活動法人ぱれっと
(3)実施期間:
平成 20 年 9 月 16 日∼平成 21 年 3 月 31 日
(4)実施国
スリランカ
(5)活動地域
スリランカ ミーゴダ(Muthuhenawatta Meegoda SriLanka)およびコロンボ周辺
(NGO
PALETTE)
(6)活動概要:
①活動の背景:
ぱれっとのミッションは「就労・暮らし・余暇などの生活場面において障害のある人たちが直
面する問題の解決を通して、全ての人が当たり前に暮らせる社会の実現に寄与することを目的」
に活動をしています。ぱれっとが設立した26年前の日本社会の障害者に対する受け止め方は、
保護の対象であったため、就労を通して自立をする場はほとんどありませんでした。ぱれっと
をはじめ多くの障害者支援の組織や国際社会の流れから、以前とは大きく変化し、障害者の就
労支援は現在当たり前のこととして捉えられるようになってきました。
一方、スリランカでの障害者への理解は以前の日本と似ており、障害者の職業訓練の場や学
校は国内にはほとんどなく、障害者が働いて経済的自立をする機会すらありません。卒業後は
自宅で過ごすしか、選択肢はないのが現状です。
クッキー製造を通して障害者が自立を目指す就労支援「PALETTE」を立ち上げ、障害
者が質の高いおいしいクッキーの製造ができることはこの10年の中で実証されました。就労
を希望する障害者の待機者リストには、常に50人の方が登録されています。片道2時間もか
かるような、バスを何台も乗り継いで来なければならない方なども大勢登録しています。しか
し、国内での公的サポートや資金援助は無いため、経営を成り立たせながらの運営は容易では
なく、そこで働く障害者の人数は限られます。
②活動の目標:
スリランカ国内では未だ内紛は収まらず、負傷兵や内紛に巻き込まれて障害を負った人が後
をたちません。障害者が経済的自立できる就労支援はスリランカでは重要な課題でもあり、
Palette が取り組む事業は、今後ますます必要になってきます。しかし、公的資金のない中、彼
らの経済的自立のために支払う給料は、クッキーの売り上げです。クッキーの売り上げを上げ、
Palette の安定した運営基盤を作ることが課題であり目的です。そのためには、Palette のクッ
キーを卸すスリランカ国内のスーパーマーケットとの関係を強化し、レストランやホテルなど、
新たな販路を拡大してクッキーの売上に反映させることが必要です。そのための専任スタッフ
を雇用しセールスに力を入れる事が必要です。同時に、一般の方にクッキーを購入していただ
くために、Palette のクッキーを新聞広告やニュース等でアピールし、より多くの方へ障害者の
自立につながる Palette の事業を知っていただくことを目標として今回 JICA 基金の協力を仰ぎ
ました。
2.
業務実施結果:
1
(1) 実施した内容 *活動の具体的内容ごとに、実施した内容について記載下さい。
【実施内容①】売上を上げるための営業担当スタッフを雇う
【実施内容②】
● 営業担当スタッフの公募
6月後半より、営業スタッフの募集広告及び関係者を通し情報を流しました。日本人が作っ
たクッキー工場ということもあり、待遇のよさを見込んだ応募者が多く、数人の面接を行いま
したが、Palette の現状とマッチする人は現れませんでした。スリランカでも、営業という一定
のスキルを伴う専門職は、ある程度の給与保証が求められるため、セールス経験のある方で現
役を退いた協力者を求める方向に転換しました。幸い新聞広告の掲載に関わってくれたアーナ
ンダ・ウェダアーラッチ氏が、Palette のコンセプトに共感し、活動への協力を申し出てくれ、
営業スタッフとして契約しました。
●営業担当スタッフとしての仕事
仕事の内容として、Palette のクッキー売り上げアップのための店舗開拓、ネットワーク構築、
広報活動、プロモーション(店頭販売)の実施に取り組みました。コロンボ周辺にスーパーマー
ケットのヘッドオフィスが集中しているため、通常は自宅から直接店舗回りをし、コロンボか
ら離れた Palette の工場へは、週 1 回スタッフとのミーティングを兼ねて出勤することとしま
した。日本とのやり取りは、パソコンによるウィークリーレポートの提出とメールでのやり取
りによって進めました。日本からスタッフが出張した際は同行し、店舗マネージャーに直接コ
ンタクトを取り協力のお願いをし、店頭販売をするなどしました。ウェダアーラッチ氏の努力
で取引先も若干ですが増えました。
【実施内容①】商品の宣伝広報掲載
【実施内容②】
営業担当スタッフのウェダアーラッチ氏が元新聞記者をしていたこともあり、新聞広告デザ
インや各代理店とのつながりから、比較的スムーズに新聞広告掲載を行なうことができました。
スリランカ国内で効果的な広告の打ち方なども、アドバイスにもとづき行ないました。広告掲
載は8月、9月12月に、英字新聞とシンハラ語のローカル新聞6紙に、Palette のロゴとカラ
フルな商品の写真を載せたデザインで掲載しました。また、Palette のスリランカ国内での障害
者を支援する取り組みが記事として2回掲載されました。これは、以前より NPO ぱれっととつ
ながりのある方の紹介で実現しました。障害者が働くクッキー工場として大々的に取り上げら
れました。
【実施内容①】日本国内での支援金集め
【実施内容②】
●寄付集めのための広報
ぱれっとつうしんにて、
「スリランカぱれっと継続に向けて」の特集記事を毎月掲載し、まず
は現状を知ってもらうことに重点を置きました。また、同時に支援金やチャリティのための商
品寄付を求めるなど、各セクションのスタッフのネットワークや販売の機会を活かして宣伝を
しました。ホームページでも、スリランカの状況を訴えると同時に、オンライン寄付サイトを
利用して、スリランカぱれっとへの協力と寄付を広く求めました。
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(実施内容つづき)
●資金獲得に向けたぱれっと独自の具体的な取り組み
アースデイへの展示と資金獲得(4万4千円)
:余暇活動支援「たまり場ぱれっと」のボランティアが中心となり、スリランカの展示コーナ
ーを設け、イベント企画の売り上げと、おかし屋のクッキー販売の一部が支援金となりまし
た。
音楽イベントでの支援金(2万2千円)
:ぱれっとの支援者の声かけで、音楽イベントが開催されました。その際、スリランカぱれ
っとの映像を流し、参加した方たちに支援を求めました。
企業イベントや会合・勉強会等でのチャリティ(6万1千円)
:企業の社員貢献イベントの際、Palette の現状を訴え支援を求めました。支援をくれた方には、
出張の際購入してきた、Palette のクッキーをお礼に渡しました。また、各スタッフが参加し
たり企画した集まりで、その都度 Palette の現状を訴え支援を求めました。
チャリティバザー
掘り出し市とフリーマーケット(27万9千円)
:ぱれっと関係者に協力を求め、チャリティバザーを開催しました。丸1日公共のスペースを
お借りし、つうしんや地域の掲示板、ミニコミ誌等で集客のための広報をしました。商品と
して、地域の個人の皆さんからの衣類や雑貨、企業からの提供品などを集めました。また、
有志を募り、余ったバザー商品でのフリーマーケットを行ない資金獲得に勤めました。
チャリティボックス(1万8千円)
:店舗や各セクションの目に付くところに、チャリティボックスを設置し、協力を仰ぎました。
また、おかし屋ぱれっとは販売の際にもボックスを設置し、購入者への協力も仰ぎました。
その他:日本のぱれっと全スタッフが集まり、今後の Palette の資金獲得に向けてのアイデア
を出し合う企画会議を数回設けました。来年度に向けて、実現に向けたイベントを企画して
いるところです。
(2) 実施成果:
*上記実施内容ごと、あるいは、全体を通しての成果を記載下さい。
広告を掲載した後の9月10月には、問い合わせの電話が相当数入り、大口スーパーマーケ
ットの注文につながりました。現場にも活気が戻り、休み返上で製造に追われたほどでした。
また、広告や新聞記事の掲載により、Palette の取り組みについて周知することができました。
広告掲載やセールスマンを雇って3ヶ月ほどは、順調に売り上げを伸ばし、問い合わせも増え
ていきました。日本のぱれっとの支援者の紹介で、
「ディルマ」という国内大手の紅茶会社とも
つながり、具体的なアドバイスをいただく関係にまで発展しました。また、製菓学校とのつな
がりもでき、Palette の製品に関する様々な助言をいただきました。このまま良い形で進んでく
れれば Palette の運営も軌道にのると、手ごたえを感じていたほどです。
しかし、昨年の11月以降は、世界的な経済不況がスリランカにも序々に影響を与えはじめ
3
ました。激化する北部の内紛による治安の悪化、クッキーの原材料の高騰による圧迫やスリラ
ンカ国内全体の物価上昇(インフレ)による一般国民の買い控えなど、悪い条件が重なりまし
た。これは Palette のような小さな団体にとって大変な打撃となり、12 月・1 月以降の注文が
激減しました。
注文には直接つながらないまでも、福祉省のアラーム氏とのつながりは、スリランカ国内の
障害者福祉の状況を知る有力なネットワークとなりました。Palette のような新しいタイプの国
際支援活動に対して、補助金を含めた行政の考え方に触れることができました。今後、障害者
分野に関する相談ができることは安心感につながります。またアラーム氏から、スリランカ国
内の社会開発・社会福祉が学べる専門学校「National Institute of Social Development」を紹
介され、訪問する機会をいただきました。福祉分野の専門家を養成する学校とのつながりは、
Palette にとっても大変貴重なつながりとなりました。また、12月3日の「障害者の日」にイ
ベントが毎年開催されていることをお聞きし、Palette のスタッフとメンバーが参加しました。
スリランカ全土から参加した多くの障害者や団体との新たなネットワークと、Palette のクッキ
ーと活動を知っていただく機会となりました。
(3) 得られた教訓など:
*今回の活動を通じて得られた教訓・気づきなどがありましたら記載下さい。
売り上げを上げることが、Palette の道を開く唯一の方法だと思い、資金を投じてでも必要と
思われることはしてきました。その取り組みの要となったのが、営業担当スタッフの雇用と広
報活動です。そのための資金作りをはじめ、日本とスリランカでの日々のメールでの情報交換
と情報共有、国際電話でのやり取りやスリランカスタッフのフォローなど、ぱれっと全体が、
どうすれば Palette を良い方向に向かわせることが出来るのか、一人ひとりが真剣に考え、自
分にできることは何であるのかを考えて進めてきました。
スリランカスタッフや通所員も、自らスーパーの店頭に立ちプロモーションを行ない、直接
お客様に声をかけて販売しています。イベントのある時期は、休みを返上してクッキーの販売
をし、関係者には商品を売る機会を設定してもらえるよう協力を仰ぎました。
国を超えて、全てのぱれっとメンバー及びスタッフが、Palette の継続を願う一人ひとりの気
持ちを動かしていたことは間違いありません。
しかし、スリランカ国内の情勢は安定せず、世界規模の景気低迷というダブルパンチを前に、
希望を託して雇った営業スタッフと新聞広告の効果が、結果につながらなかったことは大変残
念でなりません。1月末でウェダアーラッチ氏との契約は打ち切り、現在スリランカ人と結婚
をしてスリランカ在住のグナワルダナ孝子さんに協力を仰ぎ、彼女のネットワークの中での販
売促進に力を入れていただいています。
(4)今後の活動・フォローアップの方針
*今回の実施期間終了後の、現地での活動やフォローアップの方針・見通しなどにつきまして記載下さい。
現在、どのような方向で今後 Palette を進めていくか、難しい選択を迫られています。とい
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いうのも、Palette の工場の建っている土地を提供し、Palette の立ち上げ当初からチェアマン
であるワルナクラスーリア氏から、このような社会状況の中、今後 Palette を支援することは
難しいという話しが出されました。ご自身の経営する事業も景気悪化で大変厳しい状況にあり、
Palette の事業の必要性は理解しているものの、実質的に支援できない状況になってきたことが
理由です。
Palette で働く障害者及びスタッフの成長は素晴らしく、自立型の障害者就労支援がこの国に
とっていかに必要であるかを理解しています。このまま工場を閉じてしまうには、あまりにも
ったいなく、彼らの行き場を閉ざしてしまうことから、現在2つの方向性を探っています。
1. 現在のクッキー製造を通した障害者自立支援の形を維持するために、Palette の別の理事長
を探す
2.クッキー工場に限らず、別な業種も加味して障害者自立を目指すパートナーシップを組み、
事業を維持する
いずれにしても、ワルナクラスーリア氏の土地を出て、新たなパートナーとの可能性を探る
必要があります。4月28日(水)∼5月21日(木)の約1ヶ月間、今後の可能性を探るため、
ぱれっとインターナショナル・ジャパン代表の谷口奈保子が出張いたします。
3.その他(エピソード・感想・写真など)
(1)活動中のエピソード・感想など
*今回の事業を通して経験したエピソード、感じたことなどがありましたらご記入下さい
<JICA からの様々な支援と協力>
学校や病院、施設など、物に対する国際支援や助成はあっても、現地の障害者本人が自立を
するために、事業を起こし収益を上げるための支援や、ノウハウを伝え人の成長を促す、目に
見えにくい支援は、助成金や公的資金がほとんどつかない現状があります。今回、JICA 基金が
自立型の障害者支援事業に対しての助成を決定してくれたことは画期的で、現地の活動を支え
る大きな希望となりました。資金面だけでなく、以前、元 JICA 隊員の方が Palette の日本人駐
在員として働いてくれていました。日本とスリランカをつなぐ、大変重要な役割を担い、事業
を支える強力な力となってくれました。今も日本人駐在がいれば、状況は大きく違っていたか
もしれません。しかし、内紛による治安悪化で NGO 団体に対するビザの発行が大変厳しく、取
得できない状況です。また、日本で駐在スタッフの募集をかけても、治安の悪いスリランカで
働くことを希望する日本人の公募はまったくありません。また、Palette の立ち上げ当初は、地
域の子供たちも巻き込んで、Palette とともに余暇活動の支援を JICA 隊員が行なっていました。
このような、資金提供及び人的支援が、小さな NGO 団体にとっては大変重要で大きな力となり
ます。
<スリランカ国内での障害の理解と変化>
障害者の中には、いまだに学校に通えない人たちがおり、一般の人と接する機会も少ないで
す。特に知的障害者に対する国民の偏見は強く、理解されにくい現状があります。それは、知
的障害に対する知識が乏しく、また彼らと社会のつなぎ役となる良き理解者が少ないために、
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なかなか彼らの自立に結びつかない現状があります。そんな中、福祉の専門学校がスリランカ
にもでき、障害者福祉への関心が高まってきています。スリランカぱれっとのスタッフも、障
害者本人とのクッキー製造を通し、多くの時間を共にする中で、様々な問題にぶつかりクリア
しながら、障害への理解と彼らの人権に対する理解を深めてきました。
「スリランカ国内で彼ら
を理解し、スリランカぱれっとの重要性を理解しているのは自分たちしかいない」と言葉に出
るほど、良き理解者として成長しています。
(2)活動の写真
*活動の様子がわかる写真がありましたら添付下さい(枚数は問いません。多い方が望ましいです。また
キャプション(説明)を簡単に付けて頂ければ幸いです)
クッキー製造の様子
クッキー製造の様子
クッキー製造の様子
クッキー製造の様子
スリランカのスーパー「MAGNA」
スーパー店内と Palette クッキー
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(写真のつづき)
スーパー他店の店内
ペアレンツミーティング
メンバーミーティング
スタッフミーティング
ボードミーティング
左:チェアマン
ダヤシリ氏
右:営業担当
車両広告のステッカーとメンバー
アーナンダ氏
メンバーの家庭訪問
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