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2011年度版 - 大阪市立大学 大学院 生活科学研究科・生活科学部
2011 大阪市立大学 大学院生活科学研究科/生活科学部 Osaka City University Graduate School of Human Life Science / Faculty of Human Life Science 大阪市立大学生活科学研究科・生活科学部の教育研究情報誌 『human life science 2011 HighLight』第6号をお届けします。 しています。 そのなかで本研究科・学部の役割はこれ な側面である、 健康・環境・福祉をキーワードとして、 食・ まで以上に重要になっていると自覚しています。 もう一 健康、居住環境、総合福祉、臨床心理のそれぞれの つの特徴は、変化する生活の個別の現象や要素を 分野で教育・研究を行い、 この分野のフロントランナーと 精緻に理解し解明することです。本研究科・学部は、 して活動を続けてきました。 また、 それぞれの分野には 生活に関する総合と分析という、相反する課題に果 密接に関連する専門分野があります。私たちはそれ 敢に取り組んでいます。 ぞれの分野の最先端の高度な研究にも積極的にか 下記のCONTENTSは本小冊子の内容です。そ かわっています。 この小冊子は、 そのような本研究科・ れらは本研究科・学部の活動の一部をお伝えして 学部の最近の様子をお伝えするものです。 いるにすぎませんが、雰囲気を感じ取っていただけ 生活科学研究科・生活科学部の特徴は、 まずひと るものと思います。生活科学研究科・生活科学部を つには対象とするテーマの幅広さと総合性です。近 いっそうご理解いただき、関心をお寄せいただけれ 年、生活自体とそれを取りまく環境は大きく変わろうと ば幸いです。 大阪市立大学 大学院生活科学研究科 生活科学部 研究科長/学部長 多治見 左近 由田 克士 教授 食・健康科学講座(大学院) 食品栄養科学科(学部) 日本人が健康で 長生きできるための、 より実践的な栄養学 東京農業大学農学部栄養学科 卒業。医学博士。栄養学博士。 ノートルダム清心女子大学講師、 助教授を経て2002より独立行 政法人国立健康・栄養研究所室 長。専門分野は公衆栄養学、栄 養疫学。研究テーマは「生活習 慣病の予防に関する栄養疫学」、 「食事調査法」、 「 産業保健・産 業栄養」、 「日本人の食事摂取 基準の活用」 など。著書は 『公衆 栄養学』 ( 共著/南江堂)、 『食 事調査マニュアル』 ( 共著/南 山堂)、 『 栄養指導のためのメタ ボ対策ガイドブック』 (「食生活」 編集部編/カザン) など多数。管 理栄養士。健康運動指導士。 Sakon Tajimi 康でない国民の増加はQOLの低下か社会コストを に対する取り組みが必要なんです」。 カップめん1つ 押し上げる、 という意味でも国民の疾病予防がいか の食塩量は約5gだそうで、 ちなみに「ご自身は?」 と に重要課題であるかを教授は指摘する。 問うと、 「努力してるんですが…」 と苦笑いした。過 大阪市立大学に着任して、4月でまる1年。東京 「まず大敵は生活習慣病ですね。 その代表は中 剰な塩分摂取は高血圧の要因で、放っておくと心 臓病、 脳卒中、 寝たきり、 認知症のリスクが高くなる。 若い研究者をもっと必要としている 日本社会の実態 CONTENTS human life science 2011 HighLight Katsushi Yoshita 生活科学研究科・生活科学部は、 人間生活の主要 よした かつし 生活が身についている由田教授はまだ大阪のカル 年のメタボリックシンドロームで、 こちらはすでによく チャーに戸惑うことも度々だ。電車を待つ駅のホー 知られていますが、 じつは若い女性の栄養不足も くわえて、教授は「日々の運動も怠らないように。 ム、 エスカレーターでの立ち位置や人なつっこい子ど 指摘できるのです。 その影響で、 赤ちゃんの出生時 目安は1日1万歩以上歩くこと」 と注意。腰のベルト もたち…。研究室も引っ越し荷物が片付いていな の体重が減少する傾向が見られますし、 また子ど には万歩計。 しかし、数学や物理と違い数値は必 い。 「研究や授業の体制もようやく整い、 いよいよこ もたちにも生活習慣病が認められます。偏食が原 ずしも解答を導かない。 「対象が生身の人間です れからです」。人当たりがじつに柔らかい。 因の栄養の不均衡…栄養は多く摂り過ぎても、逆 から…ね。栄養学は生活者に応用できてこそ成果 藤田 忍 教授/居住環境学講座(大学院)、居住環境学科(学部) 東京では「国立健康・栄養研究所」で、 おもに国 に少な過ぎてもダメなのです。個別に見ると、 日本 が判明する研究で、数値や実験の通りにはいきま 民健康・栄養調査や日本人の食事摂取基準ほか の実情は決して望ましい状況ではありません」。若 せん。 その点が難しさであり、奥の深さ、栄養学の 偏見や差別をなくし、 誰もが等しく共に生きる社会の実現を目指して 厚生労働省の施策に関わる調査の企画・集計・解 い研究者や人材がもっと必要だと教授が力説する 面白さでもあります」 と教授はいう。 析などに従事。研究面では、栄養と血圧に関する のには、 こうした社会的な背景がある。 現在、取り組んでいる研究は、地域や職域での 栄養学を通じて 社会に貢献できる人材を 習慣病の疾病予防対策の「構築」で、研究は現 日本人が健康で長生きできるための、 より実践的な栄養学 由田 克士 教授/食・健康科学講座(大学院) 、 食品栄養科学科(学部) 「人が主人公」の都市やまちづくりを研究し、 応援する 要田 洋江 教授/総合福祉・心理臨床科学講座(大学院)、人間福祉学科(学部) 介入研究など大規模な疫学研究にも参画している。 栄養学博士で医学博士でもある。 地調査などフィールドワークを重視している。調査 で得たデータは栄養疫学的な手法で科学的に解 大学の教壇に立つのはじつは2度目。 「最初は ●重点研究 ジェロントロジカル・ケアサイエンスの研究拠点形成 栄養・食生活の改善、効果的な健康増進や生活 国際共同研究や、生活習慣病予防のための長期 / 文:白澤 政和(人間福祉学科) ●生活科学研究助成 脂肪組織における肥満関連遺伝子の栄養学的制御 / 文:金 東浩(食品栄養科学科) 夜間避難時に有効な蓄光誘導システムの提案 / 文:酒井 英樹(居住環境学科) 長寿命RC造住宅を指向した外壁仕上げのための接着安全性評価に関する基礎的研究 / 文:渡部 嗣道(居住環境学科) 認知症高齢者のグループ回想法の効果に関する研究 —投影法を用いた非回想法群との比較検討 / 文:篠田 美紀(人間福祉学科) 子育て支援における新たなアプローチと治療実践についての臨床心理学的基礎研究 / 文:三船 直子(人間福祉学科) ●地域貢献 NPO・住民・行政と大学との共同によるニュータウンのモデル再生プロジェクト 国土交通省高齢者等居住安定化推進事業(2010年度~2012年度)/ 文:森 一彦(居住環境学科) 無我夢中で、今思えば教師として未熟だった点も 教授が集計に関わった厚生労働省「国民健康・ 析し、近い将来には全国の行政栄養士や職域の いろいろ…。 でも、 その後の長い研究活動でひと通 栄養調査」でも日本人の栄養摂取の問題点が浮き 産業栄養士、 さらに研究機関や他大学と積極的 りの仕事をしてきて、その経験を若い後継者の育 彫りになっている。 日本人は平均的に食塩(ナトリウ に連携することによって「研究成果をより実践的に 成に役立てようと思って、 ふたたび教員の道を選び ム) を過剰摂取している一方で、鉄やカルシウムは 役立てていきたい」。 ました」。 もっとこの分野の若い研究者を増やした 不足傾向にある。 もちろん、 地域差が認められ、 性別 目指すのは、 より実践的な栄養学(公衆栄養 い、 という思いが強くある。 や年齢階級によっても影響があると考えられる。 学)。そして教授は、学生たちには「将来、栄養学 いうまでもなく、 日本人の健康と栄養は今日的な大 「例えば、東北地方の食塩摂取の1日平均は以 を通じて社会に貢献できる人材に育って欲しい。 きな課題。 「一見、 豊かそうに見えても実態はだんだ 前は20~25g前後だったのですが、食生活の改善 そのための研究とスキルを指導していきます」。趣 ん悪化しているのです」。 日本は世界でも指折りの や社会環境の変化に伴って現在は約12gまで低下 味は音楽鑑賞で、学生時代はオーケストラ部に所 高齢社会で、 本来なら長寿は喜ばしいことだが、 重 しています。 それでも、国が示している当面の目標 属しフルートを担当していた。 その優しい音色はい 要なのは「健康寿命」である。 健康でない長寿や、 健 量は男性9g未満、女性7.5g未満なので、 まだ減塩 かにも教授のイメージに似合っている。 ●国際交流 日韓国際学術シンポジウムを開催 / 文:小西 洋太郎(食品栄養科学科) ●報賞等 西川禎一教授が「優秀教育賞」 を受賞 / 文:西川 禎一 (食品栄養科学科) Food Hydrocolloids Trust Medalを受賞して / 文:西成 勝好 (食品栄養科学科) 「大阪長屋の再生 ストック活用力育成プログラム」が2010年日本建築学会教育賞(教育貢献)/ 文:藤田 忍(居住環境学科) 宮野道雄副学長が「日本生理人類学会賞」 を受賞 / 文:宮野 道雄(大阪市立大学 理事・副学長) ●大学院入学状況(2011年度) ●学部入学状況(2011年度) ●教員構成 ●大学内競争的研究資金の採択課題(2010年度) ●大学外競争的研究資金の採択課題(2010年度) ●科学研究費補助金交付一覧(2011年度) ●研究業績 ●社会貢献など ◎発行人:多治見左近 ◎発行元 :大阪市立大学大学院生活科学研究科/生活科学部 ◎企画・編集:大阪市立大学大学院生活科学研究科/生活科学部 ◎編集・デザイン協力:DESK ◎印 刷:竹田印刷株式会社 ◎発行月:2011年6月 由田教授の研究にはフィールドワークが欠かせない。実地調査では、主 食・副菜やおやつなどの食事サンプルを使いながら、対象者ひとりずつ の食事摂取量を細かく把握していく。 こういった地道な調査の積み重ね が日本人の栄養摂取量や栄養バランスの偏りを浮き彫りにし、様々な 現場の栄養管理などに活かされていく。 著書左から 『「食事バランスガイド」 を活用した栄養教育・食育実践マニュアル』 (共 著/第一出版) 、 『 特定給食施設における栄養管理の高度化ガイド・事例集』 (共著 /第一出版) 、 『日本人の食事摂取基準 (2005年度版) の活用』 (共著/第一出版) 、 『食事調査マニュアル』 (共著/南山堂) 、 『 公衆栄養学』 (共著/南江堂) 。 本誌掲載の記事および写真の無断転用を禁じます。 2011 2 ようだ ひろえ 教授 居住環境学講座(大学院) 居住環境学科(学部) 「人が主人公」の 都市やまちづくりを 研究し、応援する 人と人をつなぎ、 まちに元気と活気を取り戻したい。 ラグビー選手のような骨太な印象だが、藤田教 大阪市立大学大学院生活科学 研究科後期博士課程修了。専 門分野は居住空間計画学、居 住地計画論。現在の研究テー マは景 観まちづくり、大 阪 型 近 代長屋スポットの保全・利活用」、 地域SNSの社会実証実験など。 著書は 『地域からの住まいづくり 住宅マスタープランを超えて』 (共著/ドメス出版)、 『まちづく り学』 ( 共著/西村幸夫編/朝 倉書店) 、 『 変革期における建築 産業の課題と将来像 その市 場・産業・職能はどのように変わ るのか』 ( 共著/日本建築学会 編/丸善) など。 それは経済成長に後押しされた不動産的な も再生するにも大家さんはどうしていいのかわか 開発とはまったく異質のものだ。 そして今日、都市 らないのです。 そこで私たちが応援して…」。 でも地方でも直面しているのは、人と人のつなが そうして、居住環境学科の谷直樹教授、設計 りが希薄になり、 まちが本来備えもっていた相互 を担当した竹原義二教授、小池志保子准教授 Hiroe Yoda FUJITA Shinobu 藤田 忍 ふじた しのぶ 要田 洋江 教授 総合福祉・心理臨床科学講座(大学院) 人間福祉学科(学部) 偏見や差別をなくし、 誰もが等しく共に生きる 社会の実現を目指して 明治学院大学大学院社会学研 究科博士課程修了。専門分野 は福祉社会学、障害学、 ジェンダ ー論。現在の研究テーマは「障 害」 「 障害者」の定義に関する意 味論的・構造的分析と 「障害者 差別」の分析、障害をもつ人とそ の家族への公的支援、地域支 援のあり方に関する研究、 「 共生 社会 (Inclusive society)」構築 の社会的条件に関する研究など。 著書は『 障害者差別の社会学 ―ジェンダー・家族・国家―』 (岩 波書店)、 『ソーシャルワーカーの ための社会学』 ( 共編著/有斐 閣)、 『 養護学校の行方―義務 化十年目の検証―』 (共著/ミネ ルヴァ書房) など多数。 れると、 かわいそうな人を助けること…と、 たいてい 社会のなかにある透明のバリアを とりはらう希望の社会学 う。社会のなかにインクルージョン (参加させる、 共 の人はそんなふうに捉えがちです。 自分は助ける 生)すべきなのに、逆に 〈障がい〉 という障壁を設 側で相手をかわいそうな人と位置づけ、 福祉の制 けて排除してしまっている。 そういう人たちを施設 標準語が威勢良くぽんぽん飛び出す。東京生 度を利用する人を特別な人と考えてしまう。 でも、 そ に、 ある意味、差別し隔離してしまっているじゃな 授はいたって穏やかなお人柄だ。 話し出すと、 たち 扶助の機能も低下し、 しだいに活力を失いつつあ や学生らと長屋再生プロジェクトに着手した。大 まれで大学まで東京。 「もうその倍近く大阪で暮 れは社会福祉のあまりにも狭い定義なの」 という。 い。排除でなく、地域にどう迎えるかを考えるべき まち表情が緩んだ。大学の自身のホームページで るという現状だ。高齢化につれてまちの空洞化も 阪駅に近く、 林立するビルに囲まれてひっそりと佇 らしているのに言葉は変わらないのよ」 と、要田 そしてさらにこう続ける。 「それではおかしいで なんです、 よ!」。 は受験生や学生に、 こんなメッセージを贈っている。 進んでいる。 む昔ながらの長屋。路地も未舗装の地道。 「奇跡 教授は肩を小さくすぼめた。大阪の水が合わな しょ。社会のすべての人が等しく、人として人生 この障壁こそ、 教授が先に指摘した透明のバリ 「あなたは今どんな夢をもっていますか。夢は人 教授はそんなまちに、 ふたたび元気を取り戻そ です。都会のただ中に残されたまるで真珠ですよ。 いのでなく、 むしろ逆で「大阪は市民の力が強い。 を生きることを保障する 〈権利〉 として捉えないと、 アで、 その元凶の一つが教育制度にあるという。 か つて就学猶予・免除で排除したが、 現在は特別支 生のガソリンです。大学はあなたがたが自分の夢 うとしているのだ。 「一言でいうと市民のまちづくり このまま放置するのはあまりにもったいない」。 そし 人への思いやりがある。そこがいい」 と気に入っ ね、そうじゃない。そういう 〈権利としての社会福 を描き、 ふくらまし、 その実現に向けて航海に出発 です。住む人がつながり、愛情を注ぎ、活き活き暮 て、 5棟15戸の長屋は見事に甦った。 レトロでモ ている。小柄だが、見るからにパワフルだ。 祉〉 を考える上で必須のいくつかのキーワードと 援教育という 「分ける教育」 となっただけで、 排除 するための場所です」…そして続けて、 大学教員 らせるまち…そういうまちづくりを研究するだけで ダンは若者たちの目も惹きつけている。 話していると、正義感のようなものが伝わってく 概念があります」。 するという論理は変わらない、 というのだ。 「障がい の役割とは夢の実現の手伝いをすることと記す。 なく、 実際に取り組んでもいます。 それはおもしろい 都会のオアシスのような、癒しの空間にはいま、 る。 そんな教授の著書の一冊で「希望の社会学」 教授がいうキーワードとは「社会的排除」、 「ア のある子どもたちやその家族の立場になって考え 優しさというより、 人に対する細やかな「愛」 とい し楽しい。 そこにはドラマがあります」。 そう話す教 若者とお年寄りが隣同士で暮らす。 「まさに人と と書かれた帯の付いた本がある。出版社の編集 ドボカシー (権利擁護)」、 「 社会的正義」、 「エン るとそれがどれほど深い悲しみか…、特別扱いと ったほうが適切だ。 専門は建築で居住環境コース 授の表情はいっそう弛み、 楽しげである。 人がつながるまちの誕生です」 と教授はいう。長 者がつけたそうだが、 表現がじつにいい。科学・技 パワーメント」などだが、 日本社会ではまだ理解 いう名の社会的排除って、 どう考えたってやっぱり 屋は国の登録文化財になり、 「大阪長屋の再生、 術や経済成長は人間社会に大きな豊かさをもたら が十分に浸透していないというのだ。 ストック活用力育成プログラム」 として2010年の したが、他方でさまざまな問題や課題も生み出し での専門と研究テーマは、 主に「まちづくり」。 その 中心軸に据えられているのが「愛」だ。 「まちという のは建物や住宅の集合体ではありません。 まちの 長屋再生プロジェクトで 2010年「日本建築学会教育賞」受賞 主人公はあくまでそこに生活する人びとで、住む 人が愛情を注いでこそまちになるのです」。街とも 藤田教授の担当科目は「居住地計画論」や 町ともいわない、 書かない。 あくまで「まち」である。 「都市計画」、 「まちづくり演習」などが主で、最 日本建築学会教育賞も受賞した。 この長屋モデ た。豊かそうに見えても、 ほんとうに豊かな社会だ ルを礎に、 教授は「市内に残る貴重な長屋を再生 と素直に感じられる人がどれだけいるのだろう…。 し、新しい活き活きしたまちに甦らせたい」 と今後 「希望の社会学」 という言葉は、 社会のさまざま の抱負を明かす。 な歪みや問題を解き明かし、希望へと導くのが社 おかしいじゃない。 人間にとってどういう社会がほん とうに大切なのか、 みんなでもっと考えて欲しい、 考 排除でなく、ソーシャルインクルージョンを みんなで考えよう えるべきですよ」。 まるで言葉が迫ってくるようだ。 かつては女性の前に立ちはだかる壁に立ち なく、授業でもつねに念頭に置くのは、福祉の向 体中に充満する社会的正義がきっと教授を自 然にパワフルにさせるのだろう。研究上いうまでも 戦後の日本の街や町は、高度成長とともにさま 近のゼミ活動では「地域SNSがまちづくりに及ぼ 住む人が愛情を注いでまちづくりをすれば「そ 会学の役割だというふうに受け取れる。 「そう!そう 向かった教授が、 その後一貫して取り組んでい 上をはぐくむ地域社会や、社会制度がどのような ざまに姿を変えてきた。 その繁栄の象徴が東京オ す効果」、 「景観まちづくりの研究」、 「大阪型近代 れまで何でもなかったまちの景色も輝いて見え なのよ」 と教授の顔がぱっと輝いた。 それは自身の るのは障がいのある人や児童と、 その家族の問 ものである必要があるのか、 という問題意識。 そし リンピックで、巨大な建築が小学生の藤田少年の 長屋スポットの研究」、 「マンション管理」、 「団地再 てくるのです」。そのために、建築や住居、都市 「希望」であり、 また強固な「意志」 を見事に代弁 題だ。 そして、 そうした人びとを取り巻く現代日本 て学生には問題解決のアプローチ、人間行動や 目を奪った。 「建築家の仕事ってすっごいな!」。大 生」、 「建築士によるまちづくり」 に取り組んでいる。 計画やまちづくりの専門的な立場から支援する。 している。教授はずっと社会の通念や偏見や制 の問題状況を分析し、障がいのある人びとと共 システム・制度の価値観の解明、 人権擁護。 学で専門的に建築に学ぶうちに、設計よりも関心 とりわけ、大阪市内全域に残る近代型長屋の 「学生にもそういう専門家になって欲しい」。 そう 度の矛盾と向き合い、 ときには先頭に立って闘って 生できる社会福祉システムを構築すること、 それ 教授は「この3つの視点を心がけています」 と はまちづくりへと向かった。 「当時は地味な分野で 調査は、都市部における「まちの再生」を考える 話す教授は目下、地域SNSを運営して地域の人 きた。 「豊かそうに見えて私たちの社会には透明 が教授のゴールなき課題である。 いい、 なかでも学生には「問題点を見つける力、 問 したが、建築よりも地に足がついた、人の暮らしと 上で大きな手がかりであり、 また方向性を示してい のネットワークづくりを進めているところだ。人と人 の目に見えないバリアがずいぶんあるのよ」。 「もう30年近くなるかな。 たとえば、 障がいってい 題点を見つける力、言うべきことを論理的に主張 密接に関わるまちと人の関係に興味をもつように る。 「棟数では約6000棟、 500以上のスポットが がつながらなければまちに活力は生まれない、 と そうした日本社会の、 「社会福祉」の理解の未熟 う言葉、 これは本来医学的な扱いの表現なのに、 できる力を磨いてほしい」 と話す。笑うと、 まるいチ なったのです」。 ある。大阪の伝統的景観をなんとか残したい。 で いうことである。 さを教授は指摘する。 「社会福祉のイメージを問わ 私にいわせると社会自体が障害そのものだって思 ャーミングな顔はいっそう溌剌とパワフルになった。 著書左から 『ユニバーサル・サービスのデザイン 福祉と共生の公共空間』 (共著/有斐閣) 、 『 新編 日本のフェミニズム第5巻:母性』 (共著/岩波書店) 、 『ソーシャルワーカーのための社会学』 (共著 /有斐閣) 、 『 障害者差別の社会学 ―ジェンダー・家族・国家―』 (単著/岩波書店) 。 リノベーションされた長屋の内観。伝統的な長屋の外観は残し つつ、築80年以上の長屋を基礎からやりなおした。建物の耐震 性を向上させる一方、内装や間取りを一新、 モダンな室内空間 の賃貸住宅に生まれ変わった。若者の人気も高いという。 3 2011 再生した長屋の模型。 この長屋でこれまで4棟11戸をリノベーションした が、建物としての再生だけでなく、 イベントを開催するなどの様々な仕掛け を施し、近隣のコミュニティごと再生させた。大阪にはこういった 「長屋ス ポット」 がまだ数多く現存し、建物の老朽化やそれに伴う防災上の問題、 また住民の高齢化など課題を抱えているという。 話し始めるとますます饒舌になる。社会 の偏見や矛盾…、 かつて女性問題と向 き合った教授は、今は障がい児・者、 そ の家族を社会がどう受け入れ、共生する ことができるかのサポート体制や制度の 提言などに積極的に取り組む。長年住 む大阪だが、 いまだに標準語が抜けな いが、教授の個性には、標準語の歯切 れの良さが似合っている。 2011 4 【2010年度の研究成果】 2011 重点研究 生活科学研究助成 ジェロントロジカル・ケアサイエンスの研究拠点形成 長寿命RC造住宅を指向した外壁仕上げのための接着安全性評価に関する基礎的研究 文:渡部 嗣道(居住環境学科) 文:白澤 政和(人間福祉学科) 本 研究は、平成18年度から平成22年度の Care Management) を開催した。国際学会形式 4年間にわたり、居住空間、 まちづくり、高 での英語によるディスカッションなどを通じて、高齢 齢者QOL、高齢者ケアなどをキーワードとして展開 者ケアや高齢者居住空間のあり方に関する議論が された学際的なプロジェクト研究である。 深まり、有意義な成果を得ることができた。 これまでの研究成果は、数多く存在するが、代 本研究チームは、本プロジェクト研究を通じて、国 表的なものを取り上げると、 1冊の成果物としては、 『エイジング・イン・プレイス-超高齢社会の居住デ 鉄 内外でのジェロントロジカル・ケアサイエンスの発展 に大きく貢献したと考えている。 ●『エイジング・イン・プレイス 超高齢社会の居住デザ イン』 ( 編著:大阪市立大学大学院生活科学研究科× 大和ハウス工業 総合技術研究所/学芸出版社) 。 ザイン-』 ( 学芸出版)がある。 また、本プロジェクト の一環として、大和ハウス工業株式会社との連携 事業である「高齢者いきいき居住アイデアコンテス ト」がある。 そのコンテストでは、高齢者居住に関す ●「高齢者いきいき居住ア イデアコンテスト」。全国か ら高 齢 者の居 住に関わる アイデアを募集。建築のプ ロのほか、介護・福祉の現 場からも様々なアイデアが 寄せられた。 るさまざまな優秀作品を表彰し、産学共同事業とし ても成功を収めている。 また、国際的な観点からは、毎年、韓国との交 流を深め、大阪や韓国で数回の国際会議(The Japan-Korea International Conference on 寿命化を図るには、その接着界面の力学 なるように工夫しました。その結果、モードⅠについ ては、 いずれの試験体についても安定破壊となりき ト系接着界面の破壊エネルギー評価のための試 ましたが、 モードⅡおよび混合モードについては、不 験方法の提案を行い、 き裂先端の応力場の違い 安定破壊となりました。 また、 モードⅠから混合モード におけるセメント系接着界面の破壊特性を明らか さらにモードⅡになるほど、その接着界面の破壊エ にするための実験を行いました。接着界面の加 ネルギーは大きくなる傾向を示しました。 また、 セメン 力方法は、接着界面の破壊形態が4種類の破壊 トに対するポリマーの含有量の影響についても明 モード (モードⅠ (開口型)、モードⅡ (せん断型)お らかにすることができました。 モード I 認知症高齢者のグループ回想法の効果に関する研究 ̶ 投影法を用いた非回想法群との比較検討 文:篠田 美紀(人間福祉学科) 研究では、軽度在宅アルツハイマー型認 傾向が認められました (図1)。 知症高齢者を対象にグループ回想法を また、投影法(Rorschach Test) によるパーソナ リティ評価においては、被害感や不安感を示す反応 回想法介入群 19.4 19.2 19 どのような効果が認められるかを検討しました。回 (Eye反応)が回想法を行ったグループにおいて、 想法を行ったグループ (N=27 平均年齢76.37歳± 減少しました (p<.05)。 これらの結果より、認知症の 18.6 文:金 東浩(食品栄養科学科) 5.55) は回想法を行わなかったグループ (N=17 平 初期にグループ回想法に参加することは、認知機 18.4 均年齢77.00歳±4.85) よりも、 グループ活動終了後 能においては、潜在的に保持されている能力の活 性化を促し、心理面においては、被害感と不安感の 活習慣病は多因子疾患であり、遺伝素因 果にDNAのエピジェネティクス制御機構が関与す (週1回1時間を10回継続、期間は約3ヵ月)の言 (DNA塩基配列)だけでは発症が説明 るかについて検討を行いました。エピジェネティクス 語性の認知機能評価(HDS-R)得点に若干の上昇 遺伝子と抗肥満遺伝子の発現量は組織間で異な り、皮下脂肪、内臓脂肪に比べ、褐色脂肪で高いこ D N Aが後 天 的な制 御を受け(エピジェネティク とが分かりました。 また、肥満モデルラットの褐色脂 ス)、生活習慣病を発症することが示唆されていま 肪においてエピジェネティクス遺伝子と抗肥満遺伝 と考えられます。エピジェネティクス制御機構に食品 す。すなわち、食習慣などの環境要因が遺伝素因 子の発現量が低下しましたが、 カプサイシン摂取に よって上昇し、体重低下を示しました。すなわち、 カ 因子が関与しているとする本研究結果は、食生活 体内の恒常性を制御する可能性が考えられます。 プサインの摂取はエピジェネティクス遺伝子と抗肥 を通じて、疾病を予防できるという概念を科学的に 本研究では、 カプサイシンの摂取による抗肥満効 満遺伝子の発現量を増加させ、抗肥満効果を示す 裏付けています。 夜間避難時に有効な蓄光誘導システムの提案 文:酒井 英樹(居住環境学科) で設置場所を選ばず、 長期間、 メンテナンスフリーで使 生した場合、暗闇による避難パニックが発生 うことができます。 しかし、 その発光輝度はそれほど高 することが懸念されています。本研究では, 電気を必 くはなく、充電池内蔵型の誘導標識ほどの誘導性は 要としない蓄光材を使った誘導標識を, 充電池内蔵 持ちません。そこで、本研究では, 現在の蓄光材の発 型の標識に代わる “命をまもる明かり” として提案して 光輝度を高める方法を開発するとともに、発光輝度に います。蓄光材は、太陽光や蛍光灯に含まれる紫外 応じた最適な標識サイズ・設置間隔を導きだすことを 線によって短時間(20分程度)励起するだけで、数時 目指しています。 (本研究課題は, 平成22年度科学研 間、光り続けます。電気を必要としないため配線不要 究費補助金・挑戦的萌芽研究に採択されました。) 2011 post ●図1/グループ回想法を行ったグループと 行わなかったグループの比較 子育て支援における新たなアプローチと治療実践についての 臨床心理学的基礎研究 文:三船 直子(人間福祉学科) 平 生活科学研究助成 地震など広域停電を伴う災害が夜間に発 pre 生活科学研究助成 に影響を与え、遺伝子発現を調節することにより、 大 軽減に効果があると考えられます。 回想法非介入群 19.6 脂肪組織における肥満関連遺伝子の栄養学的制御 出来ず、遺伝要因と、食習慣を含めた環境要因 混合モード 生活科学研究助成 行い、回想法を行わなかったグループと比較して、 との相互作用で発症すると考えられます。近年、 モード II ●き裂先端の応力場の状態 18.8 生 5 よび両破壊モードを有する2種類の混合モード) と 的特性を把握することが重要です。そこで、 セメン 本 生活科学研究助成 筋コンクリート構造物の外壁仕上げの長 ●蓄光標識の誘目性評価実験 成21年度生活科学研究助成を受けて、発達 子どもは母子二者関係と三者関係の中間である「2.5 障害のある幼児(1歳半検診から3歳まで) と 者」関係を徐々に築くことが可能となります。③この新た その家族への臨床心理学的支援プログラムの開発 に築かれた「2.5関係」は母子の二者関係に刺激を与え 研究を行いました。本研究の特徴は従来から行われて 展開をもたらし、 さらに④担セラピストが子どもやその母 Mother Therapist Mother-Child Unit 刺激 Child 再形成 個々の 関係性の 促進 きたグループセラピーとは異なり、 グループを1グループ 親、 その母子ユニットとの関係形成を通して臨床家とし 6人の子どもとその養育者(母親)、各親子には1名ず て育てられていく、 という 「関係性の多面的な育ちを目 つのセラピストを配置し、 プログラムの促進役としてファ 指して行われました。結果は当初の予想をはるかに超 シリテーター、 コファシリテーターを配する構成としたこ えて、母子ユニット同士の刺激、再形成促進、母子の相 とにあります。すなわちグループは6名の子どもと母親5 互的なかかわり、母親同士の関係性を促進していきまし 名、担当セラピスト等7名からなります。 このグループ構 た。 またセラピストと子ども、母親、母子ユニットとの関係 成の目的は、従来、関係性形成に困難をもつ自閉傾向 の深化、 セラピスト同士の相互刺激と共同性が形成され が強く示唆される子どもが豊かな母子の形成を促進 ていきました。 このように関係性の多面的な育ちが形成さ ラピストをもち、個々の子どもの個性豊かな関係性の成 することにあります。 セラピストを各々の母子に配置によ れ、 グループ全体がひとつの「育ての容器」の役割を果 長を育んでいく結果を得ました。本アプローチは現在も り、①母子ユニットの再形成に寄与し、②セラピストと たし、 その中で各々の子どもが5人の母親をもち、 5人のセ 他のグループで継続されています。 Another Mother-Child Unit 相互刺激 共同性 Therapist Child 関係性の多面的な育ち ●本プロジェクトで展開した多面的な相互関係 2011 6 【2010年度の研究成果】 2011 地域貢献 報賞等 NPO・住民・行政と大学との共同による ニュータウンのモデル再生プロジェクト 西川禎一教授が「優秀教育賞」を受賞 文:大阪市立大学広報 大 国土交通省高齢者等居住安定化推進事業(2010年度∼2012年度) 文:森 一彦(居住環境学科) 半 世紀前に開発された大規模住宅地、い バージョン (転用) し、 そこを拠点にして地域の様々 わゆる「ニュータウン」は、我が国の典型 な市民組織が連携し活動するプロジェクトです。 的な社会問題を抱えています。少子高齢問題、空 それらは、既存の制度には収まらないものでもあり、 き家空き店舗の活用、安心・安全の確保、 コミュニ 行政や制度との調整、住民ニーズへの対応など、 ティの再生など、 これらはすべて、単純な施策では 様々な課題を1つずつ丁寧に解決していくことが、 解決が困難な複合的問題です。 このような問題に これからの未来像を考える上での重要な手がかり 対し、地域で生まれたNPOを大学が支援し、地域 になると考えています。 ●このままでは10年後には 高齢者が4割を超す住宅地 ●地域資源をネットワークする仕組みと仕掛け 阪市立大学学友会の顕彰事業である 「優 現代的教育ニーズ取組支援プログラム (現代GP) に 秀教育賞」は、本学全学共通教育の授業 応募・採択された、 『 QOLプロモーター育成による地 等の担当者で、学生および同僚教員から極めてす 域活性化』 プログラム (2005~2007年、現在も継続 ぐれた授業の提供者と認められた教員に贈られる 中) の開始時より推進責任者として活躍し、 講義のみ 賞です。2010年度同賞は西川禎一教授(食品栄養 ならず学外実習にも尽力し、 これまでに多くのQOLプ 科学科) に贈られました。西川教授は、文部科学省 ロモーター資格を持つ卒業生を輩出してきました。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ Food Hydrocolloids Trust Medalを受賞して 住民や行政といっしょになって、次の世代にニュー 文:西成 勝好(食品栄養科学科) タウンを橋渡しするためのモデル再生プロジェクト 2 「泉北ほっとけないネットワーク・新近隣住区」が 始まりました。 この事業は2010年8月に国土交通 省の高齢者等居住安定化推進事業における先 進的取組に認定されるとともに、2011年1月に堺 市地域共生ステーション推進モデル事業の指定 も受けることとなりました。 ●Food Hydrocolloids Trust Medalを受賞した 西成教授 (左から2人目) このプロジェクトの特徴は、地域の物的資源と 人 的 資 源を掘り出して、つなぎ合わせて活用す ることです。地域内にある空き店舗、戸建て住宅 ンや配食センター、子ども広場、24時間支援セン 泉北ほっとけないネットワークは、地域の人的・物的資源を連携させ、有効活用することで、在宅要援護者が安心で健康な生活が営めるようにする仕 組みである。具体的には、高齢者による配食サービスや障がい者によるレストラン運営、 ボランティアによる菜園や緑花の保全・育成など、多様な住民 が主体的に参加し、生きがいが感じられる体制を整える。 さらに共有の場として、近隣センターの空き店舗を活用して地域共用施設と24時間支援セン ターを用意し、配食と見守り・緊急通報の連携、鍵の共有管理、地域情報の一括は威信など情報共有・活動連携を進める。これらにより、従来では難 しかった高齢者や障がい者へのきめ細やかな対応が可能となるとともに、既存の人的・物的資産の有効活用により運営コストの削減にもつながる。 泉北ほっとけないネットワーク< http://www.smile-center.jp/hotk9/index.html > 国際交流 日韓国際学術シンポジウムを開催 本 賞者:V.J.Morris( 英)、O.Smidsrod(ノルウェー)、 10回ハイドロコロイド国際会議において、 G.O.Phillips(英)、J.R.Mitchell(英)、E.R.Morris 上記メダルを頂くことになりました。食品ハイドロコ (英)。文科省、農水省、本学等関係団体および共 ロイドは食べ物を美味しくし、健康の維持増進にも 同研究者の援助・協力に感謝します。受賞を契機に 役立つため、世界中で盛んに研究されています。 咀嚼・嚥下困難者にも美味しい食事を提供するの 創刊25年の国際学術誌『Food Hydrocolloids』 に役立つ研究を進めたいと考えています。 のインパクトファクターは数年前に3を超えた(食品 科学118誌中5位、上4誌は総説)。 これまでの受 文:小西 洋太郎(食品栄養科学科) 「食・栄養・健康」 「居住・環境」 「福祉・家族・心理」 阪市立大学の創立130周年記念事業の一つであ 山市) および中央大学校生活科学大学(ソ の3つのセッションで計9題の講演(口頭) と24題の り、一般市民にも公開されました。 なお、開催にあた ウル市) とそれぞれ1999年、2005年に国際学術 ポスター発表があり、活発な討論が繰り広げられま り、学友会、有恒会、生活科学研究センター、研究 協定を結んでいます。今回、本研究科が主催校と した。参加者は150名でした。本シンポジウムは大 科長裁量経費から財政的支援を受けました。 文:藤田 忍(居住環境学科) 「大阪長屋の再生 ストック活用力育成プログラム」 研究者:谷直樹・竹原義二・藤田忍・小池志保子 本 教育プログラムは、大阪の住文化を代表す 組み込み、本物の現場に身を置いて住まい手と同じ る近代長屋を「豊崎プラザ」 として大阪市 目線で取り組む点、設計製図課題や卒業設計を通 立大学の教育・研究のテーマと位置づけ、90年以 して建築に必要な知識やチーム力を習得し、 ストッ 上前に建設された木造長屋の歴史的建造物とし ク活用の重要性を体得することができる点、 さらに ての価値を保存しながら、耐震面やデザイン面で 住宅の維持管理方法を習得し、現代人が忘れてい 改修を行い、現代に蘇らせるという取り組みです。 る「住みこなし」能力の育成が期待できる点などが 長屋の再生工事を大学の教育・研究プログラムに 高く評価されました。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 宮野道雄副学長が「日本生理人類学会賞」を受賞 文:宮野 道雄(大阪市立大学 理事・副学長) して両大学から教員13名、学生4名を招き、 「The Role of Human Life Science for Healthy, Sustainable and Anxiety-free Society」 (健康 平 成22年10月31日に千葉大学で開催された われ、講座主任であった中根芳一先生が第29回 日本生理人類学会第63回大会において、 大会長をされたことがきっかけでした。 その後、平成 で持続可能な安心社会を築くための生活科学の 日本生理人類学会賞を授与されました。 日本生理 役割) というテーマでシンポジウムを開催しました。 人類学会には主流の生理人類学のほか、生活科 号から15巻4号までの約11年間和文誌の編集を担 学や工学等の分野のヒトに関わる研究者が所属し 当してきました。今回の受賞は、 これらと平成13年に ています。私が同学会に入会したのは平成3年の 第46回大会長を務めたことなどを評価していただ ことで、当時、本学におられた綿貫茂喜先生に誘 いたことによります。 ●参加校:大阪市立大学、嶺南大学校、中央大学校 ●開催日:2010年11月4日 ●会場:大阪市立大学学術情報総合センター文化交流室 7 受賞者の業績紹介のWeb http://foodhydrocolloidstrust.org.uk/Winners.aspx 「大阪長屋の再生 ストック活用力育成プログラム」が 2010年日本建築学会教育賞(教育貢献) ター、サポート付住宅などの福祉的な役割にコン 研究科は、嶺南大学校生活科学大学(慶 010年6月上海交通大学で開催された第 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ や府営住宅の空き住戸を活用して、地域レストラ ●近隣センターの空き店舗と、府営住宅の空き住戸 ●生活科学部内の「食農演習畑」にて QOLプロモーター履修生と西川教授。 2011 7年から理事に選出され、平成11年8月発行の4巻3 2011 8 【各種データ】 一 般 定数 大学院 入学状況 (2011年度) 合格者数 入学者数 志願者数 合格者数 入学者数 志願者数 合格者数 入学者数 48 107 56 50 7 5 4 16 4 4 58 後期博士課程 15 2 2 2 2 1 1 3 3 3 6 推薦入試 (限定枠) 推薦入試 (全国枠) 留学生 基盤 (A) 合 計 入学者数 1,170 教科学習に位置づけた 「食に関する指導」 および指導者連携プログラムの開発 基盤 (C) 小島 明子 500 150 650 基盤 (C) 山縣 文治 1,200 360 1,560 子ども家庭福祉実践におけるリスクとリジリエンスの視座の有効性に関する基礎的研究 岩間 伸之 1,000 300 1,300 成年後見人等との連携と協働によるソーシャルワーク実践モデルの構築 89 36 35 2 13 2 2 6 48 6 6 — 17 0 0 43 167 44 43 基盤 (C) 清水 由香 400 120 520 精神障害者の地域移行支援におけるソーシャルワーク実践に関する統合的実証研究 45 基盤 (C) 永村 一雄 500 150 650 中国の熱負荷用気象データの品質検証と修正版の開発 123 基盤 (C) 谷 直樹 700 210 910 中井家所蔵資料の整理と公儀寺社造営における中井家の役割に関する研究 基盤 (C) 渡部 嗣道 600 180 780 気象因子を用いた建物外皮の劣化外力用温度推定法に関する実験的研究 基盤 (C) 多治見 左近 1,000 300 1,300 地域住宅市場における公的住宅・施策の役割と機能 基盤 (C) 所 道彦 1,200 360 1,560 子育て世帯に対する経済的支援策の国際比較研究 家計分析からのアプローチ 在宅認知症高齢者とその家族を対象とした介護援助プログラムの開発に関する研究 98 6 47 6 6 19 149 19 19 — 6 27 0 0 0 0 数 101 数 298 数 98 数 数 35 — 45 合格者数 270 居住環境科学科 7 志願者数 900 基盤 (C) 7 定 入学者数 春木 敏 35 38 合格者数 建築環境シミュレーションの高度化に対応できる新たな気象データの開発に関する研究 基盤 (C) 36 7 志願者数 生活科学分野における安全・安心に関する総合的研究 2,730 201 2 定 入学者数 3,250 630 35 2 合格者数 750 2,100 0 16 志願者数 2,500 井川 憲男 0 2 定 入学者数 宮野 道雄 基盤 (B) 4 36 合格者数 基盤 (B) — 37 志願者数 世代間交流に基づく小規模コミュニティの形成に関する総合的研究 ” 食のグローバリゼーション” の生理人類学的検証 6 93 定 入学者数 7,540 6 36 合格者数 14,820 1,740 志願者数 定 3,420 5,800 63 153 123 46 521 126 飲酒によって引き起こされる肝疾患を予防する食品成分の検索とその応用 男 性 女 性 合 計 教 授 21 (3) 4 25 (3) 准教授 8 6 14 基盤 (C) 篠田 美紀 1,000 300 1,300 講 師 1 3 (1) 4 (1) 基盤 (C) 森 一彦 1,300 390 1,690 視覚能力レベルに応じた「迷い点」による空間の分かりやすさ評価-居住福祉施設の場合 助 教 2 5 (4) 7 (4) 基盤 (C) 岡田 明 1,700 510 2,210 身体を基準とした方向認知と体性感覚に基づくヒューマンインタフェースの構築 基盤 (C) 西川 禎一 2,000 600 2,600 抗老化食品因子とその誘導体の評価実験への線虫モデルの導入と作用機構の究明 萌芽研究 中井 孝章 400 120 520 萌芽研究 酒井 英樹 800 240 1,040 夜間大規模停電下において有効な蓄光避難誘導システムの提案 研究代表者 萌芽研究 佐伯 茂 800 240 1,040 GPCRを介する植物繊維によるメタボリック症候群抑制仮説の検証 畠中 宗一 萌芽研究 金 東浩 1,300 390 1,690 Wntシグナル伝達経路を介する食品因子による脂肪細胞の分化制御 萌芽研究 三浦 研 1,300 390 1,690 転倒時の骨折を防ぐ高齢者施設の床の安全性確保に関する実証的研究 若手研究 (B) 長濱 輝代 500 150 650 周産期医療における 「きょうだい」 を含む家族支援に関する基礎的研究 若手研究 (B) 福村 智恵 1,900 570 2,470 栄養環境によるエピジェネティクス制御と生活習慣病抑制機構の解明 49,900 14,970 64,870 特任助手 0 1 (1) 1 (1) 合 計 32 (3) 19 (6) 51 (9) 研究課題 人間研究に基づく 「生活安全科学」 に関する研究教育拠点の形成 ジェロントロジィカル・ケアサイエンスの研究拠点形成 採択課題 都市問題研究 都市街区空間の暑熱環境改善のための再帰反射型建物外皮の開発 都市問題研究 インターネット・SNSを活用した “まちミュージアム” 実験 - “普通のまち” の魅力の発掘・収集・展示システムとその検証- 都市問題研究 大阪長屋の総合的な情報提供システムの構築~豊崎プラザの情報化と発信~ 研究費 (千円) 1,875 1,000 白澤 政和 650 生田 英輔 1,070 永村 一雄 850 三浦 研 3,050 藤田 忍 種 別 研究課題 生活科学研究助成 1,5-アンヒドログルシトールの機能性および利用に関する研究 生活科学研究助成 脂肪アミノ酸投与による非アルコール性脂肪肝の予防機構の解明 生活科学研究科戦略研究 種別・機関 大学コンソーシアム大阪 (独)科学技術振興機構(JST) 「研究成果最適展開支援事業(A-STEP) 本格研究開発ステージ(起業挑戦タイプ)」 厚生労働省 平成22年度老人保健事業推進費等補助金 (老人保健健康増進等事業分) 合 計 老化制御のための食品栄養科学の創造 (2年目) 研究費 (千円) 研究代表者 1,000 小西 洋太郎 900 佐伯 茂 2,000 西川 禎一 研究課題 大規模災害時の屋外避難誘導システムの構築 新規γ-グルタミルトランスベプチダーゼ(GGT)阻害剤によって引き起こされる細胞内コラーゲン産生の応用 介護保険における適切なケアマネジメントの推進に関する調査研究事業 研究代表者 研究費 (千円) (研究分担者) 1,450 土井 正 11,830 平竹 潤 (小島 明子) (市大配分額) 9,733 白澤 政和 地域貢献 ●第7回居住環境デザインフォーラム ●児童・家族相談所相談業務 ●国・地方自治体の審議会委員等63件 ●財団等の委員会委員等27件 ●客員研究員の受け入れ13名 ●大学コンソーシアム大阪「大学と地域との連携推進検討調査」 モデル事業 「大規模災害時の屋外避難誘導システムの構築」 (土井正准教授) ●国土交通省高齢者等居住安定化推進事業 (堺市泉北ニュータウン) (森一彦教授、春木敏教授、生田英輔助教) 国際交流 ●日韓国際学術シンポジウムの開催 ●アメリカ合衆国オハイオ州立大学との共同研究 ●海外出張22件 ●海外渡航1件 高大連携 ●出張講義16件 ●大学施設・研究室見学1件 ●模擬授業1件 ●オープンキャンパス参加者数1,830人 (2日間) 食品栄養科学科 居住環境学科 人間福祉学科 書 3 10 27 原 著・論 文 33 78 44 7 28 14 種 別 編 著 木造長屋建築の保全・再生と持続的居住に関する実践的研究〜「豊崎プラザ」における耐震改修工事と住生活の評価 600 小伊藤 亜希子 4 3 500 緒方 裕光 (由田 克士) 13 厚生労働科学研究費 健康日本21の中間評価、糖尿病等の「今後の生活習慣病対策の推進について (中間取りまと め) 」 を踏まえた今後の生活習慣病対策のためのエビデンス構築に関する研究 国 際 会 議 学会等発表 49 51 47 厚生労働科学研究費 健康増進施策推進・評価のための健康・栄養モニタリングシステムの構築 そ 39 61 59 厚生労働科学研究費 2010年国民健康栄養調査対象者の追跡開始とNIPPONDATA80/90の追跡継続に関する研究 200 厚生労働科学研究費 要保護児童における被虐待による問題や障害等の類型化された状態像とケアの必要量の相互関連に関する研究 500 厚生労働科学研究費 肝発癌抑制を視野に入れた肝硬変の栄養療法のガイドライン作成を目指した総合的研究 500 厚生労働科学研究費 食品中の毒素産生食中毒細菌および毒素の直接試験法の研究 ※交付研究費金額は2010年度分、上記の他に2010年度の受託研究・共同研究・教育奨励寄付金研究は24件 (38,357千円) 2,000 信男 克士) 克之 克士) 孝子 文治) 一幸 大記) 洋一 禎一) 社会貢献など ※2010年1月から12月までの実績 住宅総合財団 吉池 (由田 三浦 (由田 筒井 (山縣 鈴木 (羽生 鎌田 (西川 (2011年度) 乳幼児の生活リズムと睡眠習慣と親の養育態勢の関係に関する総合的研究 総 説・解 説 1,050 科学研究費 補助金交付一覧 ※配分額は2011年度分で直接・間接経費 社会貢献 ※交付研究費金額は2010年度分 2011 11,400 中井 孝章 6 ※交付研究費金額は2010年度分 9 曽根 良昭 基盤 (B) 2 大阪市の地域特性に応じた自主防災活動モデルプランの作成 (2010年度) 基盤 (A) 2 都市問題研究 採択課題 9,230 18 研究資金の 研究資金の 2,130 2 重点研究 大学外競争的 7,100 27 大学内競争的 (2010年度) 研究課題 食品ゲルの咀嚼過程におけるフレーバーリリースと食品ゲルの構造・物性との関係の解明 西成 勝好 28 重点研究 採択課題 配分額 (千円) 間接経費 合 計 116 種 別 研究資金の 平成23年度 27 ※ () は特任教員で内数 (2010年4月1日現在) 研究科内競争的 研究代表者 食品栄養科学科 合 計 (2010年度) 種 目 人間福祉学科 教員構成 入学合計 前期博士課程 学 部 (2011年度) 社会人 志願者数 前期日程 入学状況 留学生 受 の 他 賞 研究業績 ●宮野道雄・生田英輔ほか (地域安全学会技術賞) ●宮野道雄 (日本生理人類学会賞) ●岡田 明 (人類働態学会 優秀発表賞) ●竹原義二・小池志保子ほか (大阪市ハウジングデザイン賞特別賞) ●谷直樹・竹原義二・藤田忍・小池志保子 (日本建築学会教育賞) ●谷直樹・竹原義二・藤田忍・小池志保子ほか (都市住宅学会・業績賞) ●竹原義二・小池志保子ほか (住まいの環境デザインアワードグランプリ) ※2009年1月から12月までの実績 2011 10 大学院生活科学研究科 食・健康科学講座 居住環境学講座 総合福祉・心理臨床科学講座 生活科学部 食品栄養科学科 居住環境学科 人間福祉学科 Tel :06-6605-2803 〒 558-8585 大阪市住吉区杉本 3-3-138 http://www.life.osaka-cu.ac.jp/ 2011