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着用可能な歩行解析装置の開発

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着用可能な歩行解析装置の開発
平成17年度
卒業論文
着用可能な歩行解析装置の開発
指導教員
井上
喜雄
教授
芝田
京子
講師
高知工科大学
知能機械システム工学科
1060179
森岡
春彦
目次
1章
緒言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
1.1 本研究背景・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
1.2 本研究の研究目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
2章
歩行解析装置の試作・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
2.1 歩行解析装置 1 構成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
2.2 歩行解析装置 2 構成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
2.3 歩行解析装置の構成部品の選定理由・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
2.4 歩行解析装置の設計・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
3章
データレコーダの試作・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
3.1 データレコーダの構成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
3.2 データレコーダ歩行解析装置の構成部品の接続図と仕様・・・・・・・・・12
3.3 データレコーダの動作原理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17
3.4 データレコーダの設計・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
4章
各センサの出力電圧と角度の関係・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19
4.1 実験装置・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19
4.2 実験結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
4.3 考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
5章
歩行解析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21
5.1 装置配置・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21
5.2 解析方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22
5.3 実験結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22
5.4 考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24
6章
結言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27
謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28
参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29
付録・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30
1
1章
緒言
1.1 本研究背景
現在、高齢化社会という社会状況において、加齢や筋力低下など様々な原因により歩行
機能に障害を持つ患者が急増している。人間にとって歩行は体を移動するための最も重要
な手段であり、この機能が阻害されると日常生活に大きな支障をきたす。現在の医療現場
では予防医療に並んでリハビリテーション医療が重要になってきている。その中でも歩行
リハビリテーション医療は移動能力の回復のために極めて重要であり、患者の歩行障害の
原因を追究するためには歩行の診断・評価が必要である。
歩行異常のメカニズムを分析するためには、身体骨格がどのような力学の原理で働いて
いるかを理解する必要がある。これが理解できると、対象者が行おうとしている動作を筋
活動という形で把握することが可能となる。筋活動はどのような形で歩行動作を生み出し
ているかを分析するために必要となる。よって、歩行分析では動作中の筋活動を正確に把
握することが重要となる。
筋活動の分析には長い間、筋電位計測が行われてきたが、この方法には3つの大きな問
題が点あった。1つ目の問題は、電極を患者に貼り付ける必要があったために患者に負担
がかかるという点。2つ目の問題は筋張力がどれくらい発揮されているのかといった定量
的な計算が困難であるという点。そして、3つ目の問題は計測には熟練を要し準備に時間
がかかるといった点である。これらの問題から個々の対象者に対しての適応が困難であっ
た。そこで現在は、筋電位計測に代わる計測方法として3次元動作解析と床反力計を用い
て測定した関節モーメントにより筋活動を定量的に評価する方法が使用されている。
関節モーメントの測定が可能な3次元動作解析と床反力計を組み合わせた装置は、現在、
一部の大規模病院や施設等にしか導入されていない。なぜならこれらの装置は大掛かりで
高価なため、設置できる場所が限定されてしまうという問題があり、また、計測・解析に
は時間がかかり、装置操作には熟練が必要とされるといった問題もあるからである。日常
的な歩行リハビリテーションに使用するためには、こういった問題を解決する必要がある。
1.2 本研究の研究目的
本研究では、3次元動作解析におけるカメラ画像解析(モーションキャプチャー)方式
の歩行解析装置に代わる、安価であり、測定場所を必要とせず、装置操作の簡単な歩行解
析装置を提案し、装置から得られる情報により歩行解析を行う方法について検討する。
2
2章
歩行解析装置の試作
本章では歩行解析を行う装置について説明する。まず、歩行解析装置1とは、脛に装着
させる装置である。この装置には加速度センサとジャイロセンサが搭載されており、歩行
中における脛の位置での加速度と角速度を検出することが可能である。次に、歩行解析装
置 2 とは、足と股に装着させる装置である。この装置には、ジャイロセンサのみが搭載さ
れており、歩行中における足と股の位置での角速度を検出することが可能である。この装
置に加速度センサが搭載されてない理由は、歩行中、最も大きく加速度を発生させる位置
が脛の位置であり、あまり変化が見られない足と股の位置には、装置を安価にするめに搭
載させなかったためである。
2.1
歩行解析装置 1 の構成
・
加速度センサ(ANALOG DEVICES社製
・
ジャイロセンサ(村田製作所製
ADXL202)
圧電振動ジャイロ ENC-03J)
・ オペアンプ(BURR-BUOWN 社製 OPA2336PA)
加速度センサ
オペアンプ
ジャイロセンサ
図 2.1
歩行解析装置1
3
2.2
・
歩行解析装置 2 の構成
ジャイロセンサ(村田製作所製
圧電振動ジャイロ
ENC-03J)
・ オペアンプ(BURR-BUOWN 社製 OPA2336PA)
オペアンプ
ジャイロセンサ
図 2.2
歩行解析装置2
4
2.3
a)
歩行解析装置の構成部品の選定理由
加速度センサ
まず、本システムを制作するに当たり、最も重要視すべき点は、安価であり、なおかつ
小型軽量なシステムでなければならないということである。なぜなら、高価な装置になれ
ば歩行解析においては、現在使用されているカメラ画像解析システムの方が精度に優れて
いるため、有効であり、また、本システムは人体に着用させるため、大型で過重になれば
身体に負担が掛かり、歩行が乱れ、正しい歩行データが得られないからである。そこで、
本システムでは、比較的低価格であり、小型軽量であるANALOG DEVICES社の加速度セ
ンサADXL202を採用した。また、ADXL202は、消費電流が0.6mAと比較的低いため、本
システムの電力消費を抑えるためには有効である。なお、下表2.1に加速度センサADXL202
の仕様を示す。
ADXL202は完全2軸の加速度センサを単一ICチップに搭載しており、1つのチップでX
軸・Y軸の2方向について計測を行うことができる。動作の原理として、このICチップ上に
形成された固定の電極とスプリングで吊るされた可動部電極からできている差動キャパシ
タにおいて、可動部分が加速度で振れる。その時、この可動キャパシタの容量が加速度に
比例して変化することを利用している。この素子からの出力信号としてはPWMによる加速
度量に比例したデューティ比信号を出力する。即ち、加速度がゼロの時、デューティ比50%
を出力する。加速度の±及び大きさに比例してこのデューティ比が変化する。この出力パ
ルスを目的に応じて処理することにより、2次元でのX軸・Y軸方向の加速度値を取得するこ
とが可能となる。
表2.1
ANALOG DEVICES社製の加速度センサADXL202の仕様
仕様
Axis
2
Range
±2g
Sensitivity
12.5%/g
Sensitivity Accuracy
±16%
Output Type
PWM
Bandwidth
6kHz
Noise Density
200μg/rtHz (
Supply Voltage
3V ~ 5.25V
Supply Current
0.6mA
Temp Range
-40 ~ 85℃
Package
E-8
5
b)
ジャイロセンサ
村田製作所製の圧電振動ジャイロENC-03Jも同様に、低価格・小型軽量であるという点
に着目し、選定した。下表2.2に圧電振動ジャイロENC-03Jの仕様を示す。
物体の回転運動、すなわち角速度を検出するセンサとしてジャイロセンサが良く用いら
れている。そして、ジャイロセンサの特徴として、取り付ける位置と回転中心との距離の
影響を受けることなく、角速度を知ることができる応用範囲の広いセンサであることが知
られており、その中でも、本システムに使用したジャイロセンサは圧電振動ジャイロと呼
ばれるもので、振動体が電位体であり、振動体に回転角速度が加わるとコリオリ力が発生
するという原理を応用した角度センサである。
表2.2
村田製作所製の圧電振動ジャイロENC-03Jの仕様
仕様
供給電圧
2.7V~5.5V
消費電流
5mA
検出範囲
±300deg/sec
静止時出力
+1.35V
感度
0.67mV/deg/sec
感度温度変動
±20%
リニアリティ
±5%FS
応答性
50Hz
使用温度範囲
-5℃ ~ +75℃
保存温度範囲
-30℃ ~ +85℃
外形寸法(mm)
15.5×8.0×4.3
重量
1.0g
6
c) オペアンプ
本システムに用いたオペアンプは BURR-BUOWN 社製の OPA2336AP と呼ばれるもの
で,本システムにおける低価格・小型軽量という条件を満たしているため、採用した。
OPA2336AP の特徴としては単電源であり、消費電力が少なく、低電圧動作である。
このオペアンプは加速度センサとジャイロセンサの出力を増幅させるために使用した。
また、出力電圧のバランスを調節するためにも使用している。
表2.3
BURR-BUOWN社製のオペアンプOPA2336APの仕様
仕様
2.4
Supply Voltage
7.5V
Signal Input Terminals, Voltage
(V-) -0.3V ~ (V+) +0.3V
Signal Input Terminals, Current
10mA
Output Short-Circuit
Continuous
Operating Temperature
-55℃ ~ +125℃
Storage Temperature
-55℃ ~ +125℃
Junction Temperature
150℃
Lead Temperature (soldering, 10s)
300℃
歩行解析装置の設計
図 2.3 に構成部品を用いて設計した歩行解析装置の回路図を示す。
図 2.4 には図 2.3 の設計図から基盤を作成するための基盤加工機用の歩行解析装置の配線
図を示す。
7
図 2.3
図 2.4
歩行解析装置の回路図
歩行解析装置の基盤の配線図
8
3章
データレコーダの試作
前章で述べた歩行解析装置により人間の歩行解析は可能となるのだが、この装置だけで
は、ある問題に直面する。それは、歩行データを回収するためには歩行解析装置を直接 PC
に接続する必要があり、その際、必要となるケーブルが歩行を妨げてしまう可能性がある
ということである。この問題を解決するために、本研究ではデータ回収装置の制作を行っ
た。
本システムのデータレコーダの特徴は、歩行データを回収する元となる基盤(図 3.1、3.2)
にメモリ機能が搭載されており、データを一定時間記録することが可能である。データを
記録した後、PC に接続し、送信することで、歩行データを解析することが可能となる。ま
た、この基盤を Pac Tec 社の「006p、単 3 電池ホルダ付きケース」(46mm ×92mm ×33mm)
に組み込むことにより(図 3.3)、歩行を妨げることなく、安全に装置を携帯することができ
る。なお、Pac Tec 社の「006p、単 3 電池ホルダ付きケース」には、電池ホルダがあり、
装置全体の電源となるバッテリーを直接搭載させることが可能になっており、本システム
ではボタン電池(GP300)を搭載した。
データ回収装置の全体の重量は 215gであり比較的軽量なので、歩行を妨げないために、
ベルトによって人体の腰部に着用できるようにした。
9
3.1
データレコーダの構成
・
メモリ(TOSHIBA 社製
TC554001AF-70L)
・
PIC(MICROCHIP 社製
16F877A)
・
カウンタ(FAIRCHILD 社製
・
ドライバ(MAXIM 社製
・
デジタルスイッチ(VISHAY 社製 DG408)
MM74HC393)
MAX232)
カウンタ
ドラ イバ
デ ジ タ ルス イ ッ チ
PIC
図 3.1
データレコーダ(表)
メモリ
図 3.2
データレコーダ(裏)
10
図 3.3
データレコーダ内観
図 3.4
データレコーダ外観
11
3.2
データレコーダの構成部品の接続図と仕様
データレコーダに使用した各構成部品のピン配置図や仕様表を示す。
a)
メモリ
図 3.5
表 3.1
東芝セミコンダクター社製のメモリ TC554001AF のピン配置
東芝セミコンダクター社製のメモリ TC554001AF の仕様
仕様
製品分類名
低消費電力 SRAM
容量
4 Mbits
メモリ構成 (ビット)
512K×8
電源電圧 Vdd (V)
5.0±10%
アクセスタイム
max
70 ns
サイクルタイム
max
70 ns
消費電力 (動作時) P_D (mW) (max)
330
消費電力 (スタンバイ時) P_D (mW) (max)
0.275
パッケージ (外観形状)
P-SOP32-525-1.27
ピン数
32
防湿梱包品
Y
面実装区分 (Y/N)
Y
12
b)
PIC
図 3.6
表 3.2
MICROCHIP 社製の PIC16F877A のピン配置
MICROCHIP 社製の PIC16F877A の仕様
Operating Frequency
DC – 20 MHz
Resets (and delays)
POR, BOR (PWRT, OST)
FLASH Program Memory (14-bit words)
8K
Data Memory (bytes)
368
EEPROM Data Memory
256
Interrupts
14
I/O Ports
Ports A, B, C, D, E
Timers
3
Capture/Compare/PWM modules
2
Serial Communications
MSSP, USART
Parallel Communications
PSP
10-bit Analog-to-Digital Module
8 input channels
Instruction Set
35 Instructions
13
b)
カウンタ
図 3.7
Fairchild Semiconductor 社製のカウンタ MM74HC393 のピン配置
表 3. 3 Fairchild Semiconductor 社製のカウンタ MM74HC393 の仕様
Absolute Maximum Ratings
Supply Voltage (VCC)
-0.5 ~ +7.0 V
DC Input Voltage (VIN)
-1.5 ~ VCC + 1.5 V
DC Output Voltage (VOUT)
-0.5 ~ VCC + 0.5 V
Clamp Diode Current (IIK , IOK)
-1.5 ~ VCC + 1.5 V
Dc output Current, per pin (IOUT)
±25 mA
DC VCC or GND current, per pin (ICC)
±50 mA
Storage Temperature Range (TSTG)
-65℃ ~ +150℃
Power Dissipation (PD)
600 mW
S.O. Package only
500mW
Lead Temperature (TL)
260℃
14
d)
ドライバ
図3.8
MAXIM社製のドライバMAX232のピン配置及び標準動作回路
表3. 4
MAXIM社製のドライバMAX232の仕様
仕様
消費電力
+5V
RS-232 ドライバ / レシーバ数
2/2
外部コンデンサ数
4
コンデンサ値
1.0 μF
SHDN 及びスリーステート
No
データレート
120(kbps)
15
c)
デジタルスイッチ
図 3.9
表 3.5
VISHAY 社のデジタルスイッチ DG408 の接続図
VISHAY 社のデジタルスイッチ DG408 の仕様
Absolute Maximum Ratings
Package
16-Pin SOIC
Voltage Referenced to V- V+
44 V
GND
25 V
(V-) -2 V ~ (V+) +2 V or
Digital Inputs, VS, VD
20 mA, whichever occurs first
Current(Any Terminal)
30 mA
Peak Current, S or D
(Pulsed at 1 ms, 10% Duty Cycle Max)
100 mA
Storage Temperature
-65 ~ 150℃
Power Dissipation
600 mW
16
3.3
データレコーダの動作原理
歩行データ入力
パソコン
シリアル
デジタルスイッチ
ドライバ
P
インタフェース部
(CPU)
図 3.10
I
C
カウンタ
メモリ
データレコーダの動作原理フローチャート
まず、歩行を開始する前にデータレコーダのスイッチを ON にし、歩行を開始する。す
ると、人体に装着した歩行解析装置によりデータレコーダに歩行データが入力される(片
足 5ch、両足で 10ch)。次に、デジタルスイッチにより A/D 変換されたサンプリングデー
タが PIC に送られる。そして、PIC によりデータが処理され、メモリへと送られ、カウン
タでデータ量をカウントした後、記録される。
そして、歩行を終え、データレコーダのスイッチを OFF にし、データレコーダを PC に
接続する。すると、メモリに記録した歩行データが PIC により、再度メモリから呼びださ
れ、PIC を介して、ドライバによって PC に歩行データを送ることができる。
その後、PC に送られた歩行データは MATLAB プログラムにより解析する。
3.4
データレコーダの設計
図 3.11 に構成部品を用いて設計したデータレコーダの回路図を示す。
図 3.12 には図 3.11 の設計図から基盤を作成するための基盤加工機用の配線図を示す。
17
図 3.11
図 3.12
データレコーダの回路図
データレコーダの基盤の配線図
18
4章
4.1
各センサの出力電圧と角度の関係
実験装置
歩行解析を開始する前に、歩行中の各センサ位置での角速度を検出するために、各セン
サの出力電圧と傾斜角度の関係を把握しておかなければならない。この関係を把握するこ
とで、歩行中の各関節のあらゆる角度におけるデータの検出が可能となるからである。
図 4.1 に示す装置は出力電圧と角度の関係を把握するための簡単な装置である。装置内部
にポテンショメータを取り付け、歩行中における 0°~±90°の角度における歩行解析装置
2 の出力電圧をあらかじめ測っておくために、この装置に 0°~±90°のメモリを付け、そ
れぞれの角度における各センサの出力電圧を測定する。
なお、センサ角度は足に装置を装着した状態を想定しているので、実際では装置が地面
に対して垂直である、90°の状態を 0°として考える。(図 4.1 の状態の角度は 90°)
At
Ar
図 4.1
出力電圧と角度関係検出装置
19
4.2
実験結果
表 4.1
4.3
出力電圧と角度関係
角度[°]
ポテンショメータ[V]
加速度 At[V]
ジャイロ[V]
加速度 Ar [V]
0
1.438
2.541
2.552
3.004
-22.5
1.355
2.798
2.549
2.943
-45
1.284
2.985
2.549
2.813
-67.5
1.209
3.108
2.551
2.602
-90
1.134
3.138
2.553
2.369
22.5
1.512
2.294
2.55
2.969
45
1.595
2.096
2.55
2.849
67.5
1.671
1.937
2.552
2.663
90
1.748
1.882
2.552
2.457
考察
加速度 Ar の場合、角度が 0°の時には軸が地面に対して垂直になっており、最も重力加
速度の影響を受けているので 3.004[V]と高い出力を示した。また、地面に対して水平にな
る状態-90°と 90°の場合の出力は 2.369[V]と 2.457[V]を示し、重力加速度の影響を最も
受けにくいため、低い出力を示している。加速度 At の場合においても同様に、地面に対し
て軸が垂直となる-90°の時に 3.138[V]と最も高い出力を示した。これらの結果により、加
速度センサは、測定軸が地面と角度を持つ程、重力加速度の影響を受けていると言える。
なお、この実験では、角度 1 つ 1 つに対しての出力を検出したため、角速度変化を検出す
るジャイロセンサの出力値には変化が見られなかった。
以上のデータ結果により各センサの出力電圧と傾斜角度の関係を知ることができた。こ
れらのデータ結果を用いて MATLAB プログラムにより出力電圧から加速度を求めること
が可能となる。(付録1参照)
20
第5章
歩行解析
本来なら、両足に 2 章で説明した歩行解析装置 1,2 を装着して歩行解析を行わなければ
ならないが、今回の実験では歩行解析装置の特性・性能を知るために右足のみでの実験を
行った。
5.1
装置配置
データレコーダを腰に装着し、脛の位置には歩行解析装置 1 を脛・足の位置には歩行解
析装置 2 を装着した。
データレコーダ
股の位置での
ジャイロセン
脛の位置での加速度センサ
とジャイロセンサ
足の位置での
ジャイロセンサ
図 5.1
装置配置
21
5.2
解析方法
各センサ位置での角度変位 θ (i ) は、次式(1)、(2)によって算出することが可能である。
(1)式を積分することで算出することが可能とな
また、各センサ位置での角速度( ω (i ) )は、
る。
θ (i) = θ (i − 1) + (ω (i − 1) + ω (i ))∆t / 2
θ (0) = θ 0
i = 1, 2, 3…
(1)
(2)
上記 2 式を含む MATLAB のプログラムにより、角速度、加速度、角度変位を求める。(付
録2参照)
5.3 実験結果
図 5.2
足・脛・股の角速度
22
図 5.3
図 5.4
脛の 2 軸の加速度
足・脛・股の角度変位
23
5.4 考察
図 5.2 のデータ結果は配置した足・脛・股の各センサから得られたデータを MATLAB のプ
ログラムにより、導き出した角速度データである。歩数は 4 歩を測定。解析開始後、およ
そ 1 秒後に歩き始めた。
まず、足の位置でのデータ結果には、大きく 8 つの波形の谷が見られる。この谷では負
の方向への角速度が検出されており、歩行中、前進するために足が地面から離れた瞬間と
地面に足が付く瞬間において、足周りに大きな回転角速度が発生していることを示してい
る。つまり、足首を中心に右回転の角速度が発生していると言える。また、大きく 4 つの
正方向への回転角速度が発生しているが、足が地面から離れた後、踵から着地するために
足を起こす動作によって発生したものと考えられる。つまり、足首を中心に左回転の角速
度が発生したと言える。角速度があまり見られなかった状態は、足が地面に着いている状
態である。
次に脛の位置でのデータ結果には、正方向へ大きく 4 つの角速度が発生している。これ
は歩行中、前進するために足を前に出した際、膝を中心に左回転の角速度が発生したから
である。また、その動作の前後に負方向への角速度が発生しており、これは足が地面から
離れる瞬間と着地する瞬間に膝を中心に左回転の角速度が発生したからである。角速度が
あまり見られない状態は、先ほどと同様に足が地面に着いている状態であり、脛が地面と
垂直になった状態である。
そして、股の位置でのデータ結果も同様に、前進する際には、股関節を中心として正方
向への右回転の角速度が発生している。その動作の前後には、股関節を中心とした負方向
への左回転の角速度が発生している。歩行中、股は足や脛と比べ、あまり動かさないので
角速度は少ない。
図 5.3 のデータ結果は脛の位置での加速度センサの波形であり、2 章でも述べたように 2
軸方向の加速度データを検出することが可能であるため、Ar 軸・At 軸それぞれのデータ結
果である。Ar 軸は地面と垂直をなす軸で、歩行開始前は重力加速度 9.8[m/s2]のみを検出し
ており、歩行中に検出された加速度データは重力加速度と脛位置での加速度が加わった合
計の加速度データである。At 軸の波形、Ar 軸の波形共に前進するために足が地面から離れ
た瞬間に最も大きな加速度が生じている。脛が動くことで加速度が大きくなるからである。
その後、急速に足を戻すため負の加速度が検出されている。
24
図 5.4 のデータ結果は先程の図 5.2 の角速度データを時間積分したもので、足・脛・
股の位置での角度変位を知ることができる。このデータ結果において最も注目すべき点は、
歩行中の足の位置でのデータ結果である。このデータ上で最も角度変位が少ない部分が示
す足の状態は、足全体が地面に着いている状態である。このデータ結果を見ると、時間が
経過し、歩数が増す度、角度変位が徐々に増加し続けていることが分かる。本来ならば、
この状態の角度変位は存在しないので、波形は常に 0[m/s2]を示していなければならない。
そこで、この足の状態における、歩数と波形誤差の関係について調査した。
表 5.1
各測定場所における歩数と角度変位の誤差
表 5.1 において、全ての人のデータに誤差が見られた。さらに、歩数が増えるほど誤差
が増加してしまう場合が多いことが分かった。
これらの原因の最大の理由は、角速度データを時間積分することで角度変位を算出した
ところにある。数学の計算上では角度変位は角速度を時間積分することで求められるが、
本システムでは角速度の検出にジャイロセンサを用いているため、フロートエラーを含ん
でしまっていたからである。この原因により、本システムで検出した角速度データを時間
積分する度に、蓄積するエラーを加え続けた結果、角度変位が徐々に増加していたのであ
る。以下では、エラーの影響をより少なくする方法について提案する。
歩行解析データを正確に解析するために、歩行中の足の動きのパターンを大きく 4 つの
段階に分類する。1 つ目の段階は、足裏の全面が地面と接触している間の状態(着地状態)
である。2 つ目の段階は、1 つ目の段階を終えた状態。つまり、足裏の全面が地面から離れ、
爪先だけが地面についている間の状態であり、この状態は、爪先の関節に回転が加わり、
爪先が曲がっている状態(爪先接地状態)である。
25
次に、3 つ目の段階は先程の状態から爪先が地面から完全に離れた状態であり、足全体が
中に浮いている間の状態(スイング状態)である。そして、4 つ目の段階は、足が地面に着
いた瞬間であり、地面と踵のみが接している間の状態(踵接地状態)である。その後、踵
と地面との接点周りの足の全面が回転し、足の全面が地面と接した時点で、1 つ目の段階へ
と移る。以上のような 4 つの状態の組み合わせが歩行中の足の動きであると定義する。
着地状態
爪先接地状態
踵接地状態
スイング状態
図 5.5
歩行サイクル
ここで、足の 1 つの段階から、同じ足の次の段階までの期間(歩行サイクル番号 k=1,2,3…)
を 1 つの歩行サイクルとして定義し、歩行中における各段階への移行時間をそれぞれ
T41(k),T42(k),T43(k),T44(k)として定義する。
人間の歩行を段階的に解析することによって、このジャイロセンサを用いて体の各部分
の角度変位を算出することができる。次式(3)、
(4)の θ ( j )(k ) と ω ( j )(k ) はそれぞれ角度変
位と k 番目の歩行サイクルにおける状態区分の角度電位として定義する。
θ ( j )(k ) = θ ( j − 1)(k ) + (ω ( j − 1)(k ) + ω ( j )(k ))∆t / 2
T 41 ( k ) ≤ j < T 43 ( k )
k = 1, 2, 3…
(3)
(4)
足部分のセンサより4つの段階のどの段階であるかを推定しながら計測すれば、着地状
態では、足は地面と同じ角度であることが分かっているので、その時点では、それまでに
累積した誤差をクリアすることが可能になる。これにより、誤差を減少させることが可能
となるという方法である。
26
6章
結言
本研究では、3次元動作解析と床反力計を組み合わせた装置に代わる、コストがかから
ず、測定場所を限定せず、操作の簡単である、着用可能な歩行解析装置の開発を目標に行
った。現段階ではまだ様々な課題があり、本システムを使用して人間の歩行を完全に解析
することはできない。しかし、本システムを用いての歩行中の足の足首・膝・股関節の各
関節の角速度とおよその角度変位は測定することは可能である。つまり、本システムを用
いて検出した歩行データを正常な歩行データと比較することによって、一般の歩行障害者
の歩行の乱れを診断することは可能である。
今後、精度の改善を図るとともに、別途開発中の足底に圧力センサを内蔵した足底圧推
定装置と組み合わせることにより、3次元動作解析と床反力計を組み合わせた装置に代わ
るウェアラブルな運動解析システムへとさせる予定である。
27
謝辞
本研究を行うにあたって、ご指導賜りました井上喜雄教授、芝田京子講師に深く感謝致し
ます。また、高知工科大学知能機械力学研究室の博士後期過程の劉涛氏には本論文および
実験についての多くの有益な助言を頂きました。深く感謝の意を表します。また、多くの
援助を頂きました知能機会力学研究室メンバーの皆様に感謝の意を表します。ありがとう
ございました。
28
参考文献
1) 土屋和夫ほか:歩行の解析メカニズムについて、バイオメカニズム
東京大学出版会
2) 佐藤幸男
Ohmsha 社
雨宮好文:メカトロニクス入門シリーズ
3) 芦野隆一ほか:はやわかりMATLAB
信号処理入門
共立出版
4) 遠藤敏夫:プログラミングの世界へわかるPICマイコン制御
29
誠文堂新光社
付録1
fp1=fopen('C:¥Documents
and
Settings¥Administrator¥
¥cal2.txt','r'); %walk1
x=fscanf(fp1,'%f',[5,inf]);
x=x';
dt=x(:,3);
dr=x(:,5);
dg=x(:,1);
at=-9.8*sin(dg*pi/180);
ar=9.8*cos(dg*pi/180);
pr=polyfit(dr,ar,1);
pt=polyfit(dt,at,1);
Ar=pr(2)+pr(1)*dr;
At=pt(2)+pt(1)*dt;
Dg=-atan(At./Ar)*180/pi;
30
デ
ス
ク
ト
ッ
プ
付録2
%% Calibration
fp1=fopen('C:¥Documents
and
Settings¥Administrator¥ デ ス ク ト ッ プ
¥a.txt','r'); %walk1
x=fscanf(fp1,'%f',[5,inf]);
x=x';
dt=x(:,3);
dr=x(:,5);
dg=x(:,1);
dp=x(:,2);
at=-9.8*sin(dg*pi/180);
ar=9.8*cos(dg*pi/180);
pr=polyfit(dr,ar,1);
pt=polyfit(dt,at,1);
%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%
%% Computer Angular velocity and accelerations
fp1=fopen('C:¥Documents
and
Settings¥Administrator¥ デ ス ク ト ッ プ
¥d2.txt','r'); %walk1
x=fscanf(fp1,'%x',[15,inf]);
x=x';
Gfoot=x(:,5)*5/1023;
Gshank=x(:,7)*5/1023;
Gthigh=x(:,8)*5/1023;
Ashankr=x(:,4)*5/1023;
Ashankt=x(:,3)*5/1023;
Vfoot=-299*(Gfoot-sum(Gfoot(1:30)/30))*pi/180;
Vshank=-299*(Gshank-sum(Gshank(1:30)/30))*pi/180;
Vthigh=-299*(Gthigh-sum(Gthigh(1:30)/30))*pi/180;
Ar=pr(2)+pr(1)*Ashankr;
At=pt(2)+pt(1)*Ashankt;
Dg=-atan(At./Ar)*180/pi;
cont=size(Vfoot);
t=1:cont(1);
31
figure(1)
plot(t,Vfoot,'r',t,Vshank,'k',t,Vthigh,'c')
legend('Foot','Shank','Thigh');
grid on;
XLABEL('Time (0.01s)');
YLABEL('Angular velocity (rad/s)')
title('Angular velocity of foot, shank and thigh');
figure(2)
plot(t,Ar,'r',t,At,'k')
legend('Radial','Tangential');
grid on;
XLABEL('Time (0.01s)');
YLABEL('Acceleration (m/s/s)')
title('Two-axis acceleration of shank');
%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%
%% Directal Integral computer
Angfoot(1)=0;
Angshank(1)=0;
Angthigh(1)=0;
for i=2:size(Vfoot)
Angfoot(i)=trapz(Vfoot(1:i))*0.01*180/pi;
Angshank(i)=trapz(Vshank(1:i))*0.01*180/pi;
Angthigh(i)=trapz(Vthigh(1:i))*0.01*180/pi;
end
figure(3)
plot(t,Angfoot,'r',t,Angshank,'k',t,Angthigh,'c')
legend('Foot','Shank','Thigh');
grid on;
XLABEL('Time (0.01s)');
YLABEL('Angular displacement (Degree)')
title('Angular displacements of foot, shank and thigh');
%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%
32
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