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第4章 ノート PC

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第4章 ノート PC
第4章
ノート PC
- Ⅱ- 4- 1 -
4. ノートパソコンの LCCBA
4.1 概要
ノートパソコンにおいて,有害物質削減の対策前後の環境影響(LCA 結果)として社会コスト
を算出し,社会コスト削減量を「便益」とし,対策コスト(LCC 結果)を「費用」とした場合の
費用対便益を算出し、設計段階で費用対便益の観点から対策項目の選定が可能か否かを検討する。
4.2 評価対象機器
表 4.2-1 に調査対象として用いたノートパソコンの主なスペックを示す。
表4.2 ノートパソコンのスペック
ノートパソコンのスペック
表 4.2-1
スペック項目
ディスプレイ
CPU
メモリ
ハードディスク
PC重量
内容
15.4型
インテル® Core™ 2 Duo
プロセッサー T7100
1GB
120GB
2.8kg
4.3 環境対策内容
下記項目について、それぞれの便益を評価した。
・はんだの鉛フリー化
・液晶ディスプレイ(LCD)のバックライトを蛍光管から LED への変更による水銀レス化
4.4 有害物質含有量
・鉛:ノート PC に搭載しているプリント基板面積から,はんだ量を推定し,鉛含有量を求めた。
はんだ量 5g と推定し、対策前機器は 1.9g の鉛を含有と仮定した。
・水銀:LCD 蛍光管中の水銀含有量は文献値(環境省,2007)を採用し、3mg とした。
4.5 評価方法
システム境界は素材から製造,輸送,使用,廃棄までとした。また,インベントリデータは産
業連関表(2000 年)も基に作成した原単位を用い,LCA は自社作成の LCA ソフトを,また,環
境影響評価は,日本版被害算定型影響評価手法(LIME2)を用いて行った。さらに,「便益」は
有害物質削減対策前後における社会コストの差から求めた。
4.6 結果
4.6.1 LCA
有害物質削減対策前のノートパソコンのフルコストの内訳を表 4.6-1 に示す。また,廃棄ステ
- Ⅱ- 4- 2 -
ージでは,最悪ケースとして 100%不法投棄として算出した。これより、ノートパソコンの環境
負荷は素材、廃棄ステージが大きいことがわかり、廃棄ステージも素材に起因しているため、素
材と廃棄を加算して素材由来と考えると、社会コストの中で製品素材に由来するステージ(廃棄
も含む)が最も高く 85%を占めることがわかった。ノート PC の環境負荷削減には素材に注力す
ることが有効であると確認できた。ライフサイクルのステージごとの社会コストの結果を図 4.6-1
に示す。また,内部コストと外部コストの割合を図 4.6-2 に,社会コストと内部コストの対応を
図 4.6-3 に示す。図 4.6-2 から,ノートパソコンでは,フルコストの 99%が内部コストであるこ
とが確認できる。さらに,図 4.6-3 から,社会コスト,内部コストとも素材の占める割合が大き
いことがわかる。
ノートパソコンのフルコスト
表表4.6
4.6-1 ノートパソコンのフルコスト
社会コスト(LCA)(円)
社会コスト(円)
内部コスト(LCC)(円)
内部コスト(円)
素材
1076
製造
輸送
14
172300
使用
325
2352
4
廃棄
666
3000
社会コスト(円)
1200
不法投棄100%と仮定
1000
800
600
400
200
0
素材 製造 輸送 使用 廃棄
ノートパソコンのLCA
図図4.6.1
4.6-1 ノートパソコンの
LCA
割合(%)
80
60
40
100
社会コスト
内部コスト
割合(%)
100
80
60
素材
製造
輸送
40
20
20
0
0
使用
廃棄
社会コスト
図 4.6-2 社会コストと内部コストの割合
社会コストと内部コストの割合
図4.6.2
素材
+
製造
+
輸送
使用
廃棄
内部コスト
図4.6.3
図 4.6-3 社会コストと内部コストの対応
社会コストと内部コストの対応
- Ⅱ- 4- 3 -
合計
2086
177652
4.6.2 データの信頼性の検証
上記の LCA および LCC の実施による重要項目の選定結果につき,データの信頼性をチェック
した(表 4.6-2)
。改善策として,はんだの鉛フリー化,LCD バックライトに用いられる蛍光管の
水銀レス化(蛍光管を LED に変更)が挙げられた。また,LCC においては,素材費が大きな割
合を占めることがわかり,今後の検討課題とした。
表 4.6-2 データの信頼性チェック表と改善案の立案
信頼性
データ品質指標(DQI)
LCA
/LCC
イ
LCA,
ン
LCC
析
ベ 判定
項
全体に
ン 結果
目
対する
ト
数
割合
リ
分
改善案
エコ
デザイ
要改善 ンパラ (エコデザイ
項目 メータ ンパラメー
の抽出
タ)
可能性
時
プロセス 間
的
範
囲
地
理
的
範
囲
デ 不
ー 確
技
正 完 透 再
術
タ 実
確 全 明 現
範
ソ 性
性 性 性 性 ー
囲
情
ス 報
部品製
造・組立
輸送
5
5
5
4
5
4
5
4
3
3
○
52%
-
-
-
4
3
5
3
4
4
5
3
3
3
○
0%
-
-
使用
4
3
5
4
5
4
5
3
3
3
○
16%
-
電力消費
量
LCA
LCC
改善案の立案
廃棄
4
3
5
4
4
4
5
3
3
3
○
32%
部品製
造・組立
輸送
使用
廃棄
5
5
5
4
5
4
5
4
3
3
○
4
4
4
3
3
3
5
5
5
3
4
4
4
5
4
4
4
4
5
5
5
3
3
3
3
3
3
3
3
3
97%
○
○
○
1%
2%
-
-
鉛フリー,
水銀レス
○
はんだの鉛フリー,
LEDバックライトの水銀
レス
素材費
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
4.6.3 ノートパソコンの各ユニットの社会コスト
素材ステージにおいてノートパソコンのどのユニットの環境負荷が大きいかを調査するため,
ノートパソコンを7ユニットに分類し、社会コストを求めた(図 4.6-4)
。これより、プリント板
の社会コストが極めて高く,素材全体の 80%以上を占め、次に LCD ユニットが大きいことがわ
かった。
1600
:廃棄
社会コスト(円)
1400
1200
1000
はんだ中の
Pb廃棄
:素材
800
600
400
蛍光管中の
Hg廃棄
200
0
プリント板 LCD 電源, HDD, その他
バッテリ DVD
図
4.6-4
各ユニットの社会コスト
図4.6.4 各ユニットの社会コスト
その他:筐体,キーボード,マニュアルなど
- Ⅱ- 4- 4 -
4.6.4 有害物質削減による効果
4.6.4.1 はんだの鉛フリー化による便益評価
プリント板で使用されるはんだを鉛フリー化したノートパソコンについて、社会コストを求め
た結果を図 4.6-5,図 4.6-6 に示す。これより、はんだの鉛フリー化はプリント板の社会コストを
45%削減でき,また,ノートパソコンのライフサイクルにおいても約 30%の削減効果があり、は
2500
1600
1400
1200
1000
800
600
400
200
0
社会コスト(円)
社会コスト(円)
んだの鉛フリー化の便益である環境貢献は大きいことがわかった。
Pb廃棄
Pbはんだ
使用プリント板
2000
1500
1000
500
0
Pbフリーはんだ
使用プリント板
図4.6.5
プリント板の社会コスト
図
4.6-5 プリント板の社会コスト
廃棄
使用
輸送
製造
素材
対策前
対策前
(Pbはんだ) (Pbフリー)
図4.6.6
ライフサイクルにおける社会コスト
図 4.6-6
ライフサイクルにおける社会コスト
プリント板の社会コスト
4.6.4.2 LCD バックライトの水銀レス化による便益評価
バックライトを蛍光管から LED に変更した場合の社会コストを求めた(図 4.6-7)
。結果、水
銀レス化はもともと含有量が 3mg と少ないため、削減してもあまり効果は見られない。さらに、
LED の省エネ効果として、3W から 1.5W に削減できると想定し、評価した結果を図 4.6-8 に示
すが、蛍光管から LED に変更しても、顕著な効果は見られないことがわかった。
2500
社会コスト(円)
社会コスト(円)
120
100
80
60
40
1500
1000
500
20
0
廃棄
使用
輸送
製造
素材
2000
蛍光管
(Hg)
0
LED
(Hgレス)
図図4.6.7
4.6-7 LCD
ユニットの社会コスト
LCDユニットの社会コスト
蛍光管
(Hg)
LED
(Hgレス)
図4.6.8
図 4.6-8 ライフサイクルにおける社会コスト
ライフサイクルにおける社会コスト
- Ⅱ- 4- 5 -
4.6.5 費用対便益の検討
有害物質削減効果として、社会コスト削減額を求めることができたので、次に、有害物質削減
対策に係わる費用を算出し、
「はんだの鉛フリー化」と「LCD バックライトの水銀レス化」を比
較した。
「はんだの鉛フリー化」の費用として、はんだの購入価格上昇分として 20 円を計上した。また、
「LCD バックライトの水銀レス化」は蛍光管から LED への変更にともなう素材、ドライバ等の
基板も含め 300 円のコストアップとした。表 4.6-3 に各対策の費用、便益についてまとめた結果
を示す。便益を費用で割った値で2つの対策を比較すると、
「はんだの鉛フリー化対策」は「バッ
クライトの水銀レス化対策」に比べ、約 700(33/0.047)倍以上の効果があると考えられ、定量
的に捉えることができた。
このような環境対策に係わる費用対効果評価手法を設計段階で検討できれば、対策項目の優先
順位の選定が可能であると考えられる。
表 4.6-3 費用対便益
シナリオ
はんだの鉛フリー化
LCDバックライトの水銀レス化
環境保全コスト
費用(円)
20
300
環境保全効果
便益(円)
663
14
参考文献
環境省(2007)
:平成 19 年度 第 1 回 有害金属対策基礎調査検討会
- Ⅱ- 4- 6 -
改善案の効果・効率
便益/費用
便益-費用(円)
33
643
0.047
-286
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