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1.事業目的 ① マレーシアの高校生の日本に対する理解を深める。 ②

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1.事業目的 ① マレーシアの高校生の日本に対する理解を深める。 ②
文部科学省委託事業
「ジャパン・マレーシア交流プロジェクト 2014」
~THE NEXT STAGE・THE STRONGER BOND~
1.事業目的
① マレーシアの高校生の日本に対する理解を深める。
② 日本の高校生の国際的視野を醸成し、次世代リーダー
を育成する。
2.テーマ
「THE NEXT STAGE・THE STRONGER BOND」
3.後援・協力
後 援:奈良県教育委員会 NHK 奈良放送局
協 力:マレーシア政府観光局 マレーシア教育省
4.実施日
平成26年11月7日(金)~11月18日(火)
11泊12日
5.対象者
マレーシアの高校生:フル スランゴール高校12名
高校生実行委員会 :奈良県内8校24名(公募)
6.参加者 / 募集定員
マレーシアの高校生 12名/12名
実行委員会高校生
24名/20名
7. 事業運営体制
【企画委員会構成メンバー】
マレーシア政府観光局大阪支局、
NHK奈良放送局、奈良県教育委員会、
奈良県立桜井高等学校、奈良県立畝傍高等学校、
奈良女子大学、奈良先端科学技術大学院大学、
奈良国立博物館、室生国際交流村
【実行委員会メンバー】
桜井高等学校 9 名、高取国際高等学校 6 名、
畝傍高等学校 4 名、奈良高等学校 2 名
奈良育英高等学校 1 名、青翔高等学校 1 名、
関西中央高等学校 1 名、香芝高等学校 1 名、
(奈良県内から公募)
8.プログラム(要約)
本事業は、文部科学省の「青少年教育施設を活用し
た国際交流事業」の一つとして、国立曽爾青少年自然
の家が委託を受け、実施している事業である。マレー
シアの高校生(以下「マレーシア高校生」)を1校1
2名、引率教員2名を招へいし、奈良県内から公募し
た高校生実行委員会(以下「実行委員会」)との交流
を中心としたプログラムを展開した。
実行委員会は、ウェルカムレセプションや フェア
ウェルパーティーをはじめとするマレーシア高校生と
の交流プログラム等、
本事業の中心的役割を担うため、
5月に結成し、本番までに7回の会議を開き、準備に
努めた。マレーシア高校生は、実行委員会委員(以下
「実行委員」)との交流の他、高校訪問、大学訪問や
文化体験、ホームステイ等のプログラムにより、日本
に対する理解を深めた。
「ジャパン・マレーシア交流プロジェクト 2014
受入事業」のスケジュール
1 日目:オリエンテーション・茶の湯「一期一会」
実行委員会とのアイスブレイク
2 日目:ウェルカムレセプション
野外炊事・スポーツ交流
3 日目:奈良先端科学技術大学院大学オープンキャンパ
ス・高山サイエンス参加
着物体験
4 日目:奈良女子大学訪問(講義体験・留学生交流)
NHK 奈良放送局見学
5 日目:亀山ハイキング
もちつき・郷土料理体験
ホストファミリー対面式・ホームステイ
6 日目:ホームステイ・おにぎりと味噌汁作り
7 日目:ホームステイ
畝傍高等学校訪問(授業体験・部活動体験交流)
8 日目:桜井高等学校訪問(授業体験)
9 日目:東大寺見学
奈良町散策
講義・ディスカッション
10 日目:奈良県高等学校総合文化祭 総合発表参加
フェアウェルパーティー
11 日目:ふりかえり・移動
12 日目:帰国
11 月 7 日(金)【1日目】
早朝、元気
に関西国際空
港に到着した
マレーシア高
校生は、バス
で自然の家に
向かった。途
中立ち寄った針サービスエリアでは、マレーシアでも有名
なアニメの土産物や初めて見るお菓子に興味を示してい
た。
自然の家に
到着後、オリ
エンテーショ
ンに続いて、
午後から、茶
の湯「一期一
会」のプログ
ラムを行っ
た。3人の講
師からお茶の
点て方を教わ
り、自分で点てたお茶を飲んでみた。決まった作法でお茶
を点てていただくことに興味津々な様子であった。
夕食後、実行
委員会が自然の
家に到着した。
8月 19 日以来
の再会のメンバ
ー、事前に連絡
はしていたが初
対面のメンバー
もいたが、自然
とハグしたり名
前を呼びあった
りして打ち解け
たが、さらに実
行委員の企画で
アイスブレイク
をした。「人間
知恵の輪」「ハ
ンカチ落とし」
「椅子とりゲー
ム」は大いに盛り上がり、今後の交流が楽しみに思われた。
その後も宿泊棟でのおしゃべりが続いた。
11 月 8 日(土)【2 日目】
朝のつどいではラ
ジオ体操やじゃんけ
んゲームで盛り上が
り、他の団体とも交
流をした。
午前中のウェルカ
ムレセプショ
ンでは、実行
委員会は自分
たちが運営す
ることから、
またマレーシ
ア高校生はた
くさんの方と
出会うことから、緊張をしている様子であった。桜井
高等学校書道部員、
曽爾中学校の生徒及び教員の参加、
曽爾村教育長、奈良県教育委員会学校教育課課長補佐
等、たくさんの方々のご臨席をいただき、実行委員会
運営による、レセプションが始まった。曽爾中学校に
よる獅子舞や日頃の学
習発表等の披露に続
き、桜井高等学校書道
部の書道パフォーマン
スで盛り上がった。
その後、着替えを済ませて野外炊事場に移動し、マ
レーシア高校生と実行委員は 6 班に分かれて「みぞれ
鍋」作りにとりかかった。実行委員の担当者が薪の割
り方や調理の仕方を説明し、作業を始めた頃、桜井高
等学校書道部員が加わり、さらににぎやかに作業をし
た。出来上がった鍋をお腹いっぱい食べ、自然の家の
ルールに従い片付けも全員で行った。
その後、体育館でのスポーツ交流プログラムでは、
まず実行委員会全員で「南中ソーラン」を披露したあ
と、
マレーシア高校生にも短時間ながら踊り方を教え、
一緒に踊った。衣装を着せてもらったマレーシア高校
生は嬉しそうであった。続いて実行委員会の企画でバ
レーボールと大縄跳びをチーム対抗で行った。罰ゲー
ムも用意され、盛り上がりを見せた。
参天製薬も見学し、日本の企業の研究にも触れるこ
とができた。後のインタビューで、マレーシア高校生
が、この日見学した研究に興味を持ち、将来の進路を
決めたと話した。
2日間一緒に過ごした実行委員とは、一旦お別れを
し、奈良ユースホステルに戻った。夜は、全員が着物
の着付け体験をした。思い思いのポーズをとって写真
を何枚も撮り、「明日まで着替えたくない。」と言って
いたが、着物を脱いだ後も、自分たちで丁寧にたたむ
姿が印象的であった。
夕方、奈良市に移動し、ユースホステルに宿泊した。夜
は、特にプログラムはなかったが、実行委員が、歌やゲー
ムの練習を呼びかけ、全員が集まった。マレーシアのゲー
ムも教えてもらい盛り上がった。
11 月 9 日(日)【3 日目】
奈良先端科学技術大学院大学のオープンキャンパス並
びに高山サイエンスに向かった。大学職員の方や6人のマ
レーシアからの留学生の案内で、6班に分かれてキャンパ
ス内を回
り、各研究
室のブース
で研究の内
容の説明を
聞き、体験
を楽しんで
いた。
11 月 10 日(月)【4 日目】
この日は朝から、奈良女子大学を訪れ、マレーシア
からの留学生2名の案内で記念館を見学し、学生食堂
での昼食をとった後、生活環境学部 久保田教授から
「A global problem of obesity in children and
adolescents: How can we cope with it?」の講義を受
けた。マレーシアは子どもの肥満率が高い事実や、夜
遅くに食事を取ることの悪影響などを知り、講義のあ
ともたくさんの質問があった。続いて、学長の講話と
留学生との交流の時間をもった。留学生には、日本で
の暮らし方や留学について質問が相次いだが、女子大
であることから、男子生徒は入学できないことを大変
残念がっていた。
徒歩でNHK奈良放送局の見学に向かい、実際に使われ
ているスタジオに入り、モニターに映る自分たちの姿をカ
メラで撮っていた。
その後、奈良市内で夕食をとった。初めて食べたそばが
とても気に入ったらしく、大きな器を持ち、つゆまで全部
飲み干した。その後、再び自然の家に戻った。
11 月 11日(火)【5 日目】
朝から亀山峠まで出かけた。天気もよく、すれ違う観光
客とあいさつを交わしながら峠まで上ると、美しい景色に
感動の声をあげた。
自然の家に戻り、もちつき体験をした。はっぴ、はちま
きを身に付け、全員が杵をもって餅をついた。きなこ餅と
あんこを包んだ餅を美味しそうに食べていた。引き続き、
巻き寿司作りを地元のボランティア曽爾の婦人の方々から
教えてもらった。上手に巻くことができたお寿司に満足げ
であった。
11 月 12 日(水)【6 日目】
室生国際交流村の6家庭に別れてホームステイを
した。室生寺、忍者村、やまと座などそれぞれのご家
庭でいろいろな体験をさせていただいた。
各家庭で、おにぎりと味噌汁を作ることが課題とな
っていることから、それぞれの家庭の味を一緒に作ら
せていただいた。おにぎりの形や中身、味噌汁の実な
どマレーシア高校生同士でも交流し合えるものであっ
た。
11 月 13 日(木)【7 日目】
2泊のホームステイを終え、室生振興センターに集
まってきたマレーシア高校生は、カメラの画像を見せ
ながらホストファミリーとの思い出を交流していた。
いよいよ出発の時刻が迫ると日本のお父さん、お母さ
んと抱き合ったり握手をしたりして、別れを惜しむ様
子から、彼らがいかに各家庭で温かいときを過ごした
のかがわかった。
その後、畝傍高等学校を訪問した。ここは、実行委
員4名が在籍している高校で、マレーシア高校生の受
入の仕方等、先生方と一緒に計画を立てたと伺った。
到着後、会議室で学校長より歓迎のあいさつがあり、
その後この日一緒に過ごすバディーと学生食堂で食事
をした。各テーブルでは思い思いの話で盛り上がって
いた。和室で礼拝をしたあと、5時間目はバディーの
案内で、普段の授業を参観した。6時間目は、1年生
全員が参加するレシテイションコンテストに参加し
た。各クラスの代表の英語のスピーチを聞き、引率の
英語教諭が審査に参加することになった。
午後から、宇陀市の「夢創の里」に向かい、ホストファ
ミリーとの対面式を行った。室生国際交流村村長の北森義
卿氏のあいさつのあと、クイズ形式でホストファミリーと
対面し、一緒に夕食を食べ、各家庭へと向かった。
続いて、マレーシア高校生のプレゼンテーションと
民族舞踊の披露となった。日本語で学校やマレーシア
の国について説明するため、ずいぶん練習をしたよう
だ。また民族舞踊「Indang Dance」「Joget」も緊張しな
がら披露したが、会場から大きな拍手をもらい、ほっとし
た様子であった。
実行委員の提案で、マレーシアでも有名な「未来へ」を
全員で歌った。歌詞がスクリーンに流れたが、その背景に
は、実行委員とマレーシア高校生との思い出の写真と、日
本に来てからのマレーシア高校生の写真が写っていた。マ
レーシア高校生が来日してからは一緒にいなくても SNS で
やりとりをし、
日々の写真を実行委員に送っていたようだ。
すでに高校生同士がしっかりとつながっていることを感じ
る一コマであった。
放課後は、部活動体験をした。茶道部では何回も自分で
お茶を点て、弓道部では実際に弓を引き的をねらった。ま
たグランドで暗い中練習する野球部やサッカー等の部活動
も見学した。
11 月 14 日(金)【8 日目】
ゆったりと朝を過ごした後、昼休みに、桜井高等学校に
到着した。バスが校門に入ると、300 本近いマレーシアの
小旗を振っての盛大な出迎えがあり、とても興奮しながら
校内へ入っていった。
桜井高等学校に在籍する受入事業の実行委員が9名と夏
まで活動していた実行委員が3名、生徒会のメンバーが参
加して昼食会があった。桜井高等学校生は、それぞれ持っ
てきた弁当を広げて一緒に食べた。バラエティに富んだお
弁当を見てマレーシア高校生も興味深げであった。中には
「キャラ弁」もあり日本語で「かわいいー」との声が聞こ
えた。その後、歓迎セレモニーでのあいさつやマレーシア
高校生からのプレゼンテーションを終えて授業に参加し
た。6限目の書道の授業では、1年8組の書芸コースの生
徒が、各グループにマレーシアの高校生を招き、漢字の成
り立ちを説明しながら身振り手振りで書き方を伝え、お気
に入りの一字を清書した。7限目の英語の授業は、10 月末
に修学旅行でマレーシアを訪れた 2 年 7 組の英語コースの
生徒と、授業を受けた。マレーシア高校生は質問に手を挙
げて積極的に参加をした。最後に講堂に移動し、マレーシ
アの民族舞踊を披露した。
その後、桜井高等学校近くで夕食を済ませ、宿泊す
る月ヶ瀬村の松原市少年自然の家
(クリエート月ヶ瀬)
に向かった。
11 月 15 日(土)【9 日目】
この日は、1週間ぶりの実行委員会メンバーとの再
会である。
東大寺南大門前に集まった両国の高校生は、
すっかり打ち解けた様子で、手を振りながら走り寄っ
て抱き合っていた。東大寺大仏殿を訪れ、その後は各
班の実行委員が計画を立てたコースを基に、奈良町を
散策した。実行委員が東大寺や奈良町について、個々
に説明をした。「奈良町資料館」では館長自らがプレゼ
ンテーターとなり、昔使われていた道具や看板など実
物に触れる機会を得た。どの班も「ならまち格子の家」
や「旧大乗院庭園」など奈良町ならではの景観に包ま
れながら会話をはずませるなど、高校生同士の交流が
さらに深まる散策となった。
めの練習をした。
夕食後、マレーシア高校生と実行委員は、本事業の目玉
でもある講義・ディスカッションプログラムに取り組んだ。
マレーシアの日本語学校で5年間教鞭をとった辰巳委子氏
から自身の経験を基にした「海外に住んで初めて気付く故
郷のすばらしさ」「海外生活から再構築されていくアイデン
ティティ」などについての講義を聞いた。そして、コミュニ
ケーションの基本が「相手に興味をもつこと」であるとの
言葉には、高校生たちは特に肯いていたようだ。そのあと、
「互いの国の違いビック3」と「取り入れたいところビッ
ク3」について各班で話し合いをし、発表をした。マレー
シア高校生からは「UWABAKI」があるので建物の中がきれい
なことや日本食が健康的なことなどを取り入れたいとの意
見があった。
プログラム終了後も研修室に再び集まり、両国の高校生
の話し合いは、夜食やお菓子を交換しながら深夜まで続い
た。また男女に分かれて、広い和室で一緒に就寝すること
になっていたので、部屋に戻ってからも話は続いた。
11 月 16 日(日)【10 日目】
朝から、マレーシアの高校生は、この日の「奈良県高等
学校文化祭総合発表」で披露するダンス練習に、一方実行
委員は、総合発表後に自らが執り行う「フェアウェルパー
ティー」の最終チェックと、ともに控えている大舞台のた
会場である「奈良県文化会館」に移動し、マレーシ
ア高校生が「国際ホール」でリハーサルする間、実行
委員はそれを間近で見守った。午後、本番がはじまり
発表の中頃で、マレーシア高校生が登場した。色鮮や
かな衣装を身にまとい、慣れないメイクをした 12 人
は、これまでにない大きな舞台に緊張しながらも堂々
と自国のダンスを披露した。客席と舞台袖からから見
守る実行委員は、まるで自分たちが踊るかのように同
じく緊張している様子が伝わってきた。
夕方からは、同会館内別会場に移り、実行委員会主
催によるフェアウェルパーティーを実施した。午後か
らの総合発表に参加していた高校生 37 名も加わり、
会
場は熱気であふれた。実行委員とマレーシアの高校生
が練習をしてきた童謡「もみじ」の三カ国語の輪唱や、
英語の歌詞で童謡「大きな栗の木の下で」を振り付き
の歌で楽しく過ごした。
歓談の時間は、あちらこちらから歓声や笑い声が絶
えなかったが、終盤は、お別れの時間が迫っているこ
とから涙を流しながら、抱き合う姿も見られた。最後
は、「せんとくん」や奈良県高等学校文化連盟のゆる
キャラ「ぶんたくん」「ならちゃん」も加わり、全員
が肩を組み一つの大きな円になって「We are the
world」の大合唱となった。サビを何度も繰り返し歌い
続ける高校生の姿から、別れたくない彼らの気持ちが
伝わった。日本人全員がつくったアーチをくぐりなが
らの退場では、マレーシア高校生全員の目から涙がこ
ぼれ落ちていた。その後も、控え室に戻ったマレーシ
ア高校生と実行委員と抱き合いながら別れを惜しむ姿
が部屋中にあふれた。
文化を学びたいこと、日本に留学したいこと、実行委
員とはずっと連絡を取り続けることを熱く語ってい
た。「大学生になったマレーシア高校生と実行委員が
同窓会のように会える機会を作りたい。」という意見
が出たときには、全員が賛同して盛り上がった。
日本での最後の夜、マレーシア高校生は、実行委員
へ手紙を書いた。
「この友情関係は死ぬまで続くこと」
「将来再会してもっと話をしよう」など実行委員一人
ひとりの顔を浮かべながら便せんに綴っていた。時間
が足りずに便せんを部屋まで持ち帰って手紙を書い
た。
11 月 17 日(月)【11 日目】
いよいよ残りあと2日。朝から、1F ロビーで荷物の重
量をはかり、荷作りをした。お世話になった松原市少年自
然の家の所長と、少しの間施設内のフィールド「アスレチ
ック」を楽しんだ後、翌日の帰国に向け関西空港のあるり
んくうタウンへ移動した。途中、家族や友達への日本らい
いお土産を買い、ホテルに入った。
夜は、この交流事業のふりかえりを含め、マレーシア高
校生へのインタビューを行った。やはり、実行委員との交
流が一番大きく心に残り、「もっと長い時間彼らと過ごし
たかった。」という意見がどのメンバーからも出された。
その他ホームステイや学校訪問、フェアウェルパーティー
等での人とのふれあいが忘れられないことや、もっと日本
11 月 18 日(火)【12 日目】
朝食後もぎりぎりまで、フリーの WI-FI を使って実
行委員とのやりとりをしていたが、出発時刻となり、
関西国際空港に移動し、最後に自然の家所長から修了
証を手渡されて、帰国の途についた。
夕方、クアラルンプール国際空港に到着すると、す
ぐにマレーシア高校生から実行委員に連絡があり、引
率教員と担当者のやりとりより早く無事到着の知らせ
が入ったことを微笑ましく感じた。
6.まとめ
マレーシア高校生が日本で過ごした11泊12日間で、
日本を理解し、日本が大好きになってくれるよう、加えて
たくさんの人々と交流できるようにプログラムを展開し
た。帰国前のインタビューや帰国後のやりとりから、「早く
日本に行きたい。」「日本に留学してみたい。」「実行委員と
会いたい。」という言葉が聞かれ、この事業に十分満足して
いる様子が伺える。
特に、この事業の一番の成果であり、マレーシア高校生
が最も充実した時間を得たのは、実行委員との交流の時間
であった。8月 19 日に派遣事業で出会った仲間との再会、
連絡を取り合っていた友達との対面であったので、受入事
業で一緒に過ごすことを楽しみにしていたが、
文化や宗教、
生活習慣の違いに不安があることは確かであった。
しかし、
1日目の夜に会ってから、時間を共有し、一緒に食事をし、
同じ部屋で寝泊まりする中で、
国を意識することのない
「友
達」としての姿が見られるようになった。単なる文化交流
にとどまらず、互いに国民性などについても意見交流がで
きたことは、彼らのアイデンティティの形成や自分の進路
選択に大きく影響を与えるだろう。
今年度の実行委員は、奈良県内の高等学校を対象に公募
し活動してきた。県内8校から集まった 28 名(受入事業時
は3年生を除く 24 名が活動)は、5月の結成式以来、派遣
事業へ参加するか否かにかかわらず一緒に活動し、ともに
考えてきた。昨年度から引き続き活動している実行委員が
リードしながら始まった学習も、会を重ねる度に、実行委
員としての経験や学年、学校など関係なく自分の意見を出
し合い、委員会以外でのやりとりも盛んになっていた。受
入事業を迎える頃には、本事業が求めた使命と役割をしっ
かりと認識し、互いにサポートし合うチームが完成してい
た。
マレーシアの高校生に何を紹介するのかを真剣に考える
中で、日本文化や奈良の歴史についても自分たちが学習す
る必要があることに気付き、準備を進めることもできた。
交流後は「それでもまだ満足できる説明ができなかった。」
とふりかえる実行委員に成長を感じた。
また、マレーシア高校生との出会いはもちろん、実行委
員会での出会いを大切に思い、
互いを認め合う彼らの姿は、
国際交流に必要なコミュニケ-ションに必要な力が育成さ
れたと考えられる。
国を越え強い絆を作ろうとする彼らは、
すでに同じ目的に向かって進む仲間としてしっかりとコミ
ュニケーションをとることができていたと言える。
そして、彼らは交流に満足することなく、実行委員会と
しての最後の活動「高校生 大いに語れ!」に意識が向け
られていた。自分たちの感動や学びをいかに伝えるか、彼
らの躍動はまだ続く。本事業の大きなねらいである「次世
代リーダー」へのさらなる一歩として、さらに実行委員そ
れぞれの力が開花すると信じている。
マレーシアの高校生と実行委員会のメンバーとの交流
は、
世界の人々が集う 2020 年の同窓会実現に向けて今もS
NSを上手に使って続いている。
(主任企画指導専門職 髙岡 訓子)
文部科学省委託事業
「ジャパン・マレーシア交流プロジェクト 2014」
~THE NEXT STAGE・THE STRONGER BOND~
1.事業目的
① マレーシアの高校生の日本に対する理解を深める。
② 日本の高校生の国際的視野を醸成し、次世代リーダ
ーを育成する。
2.テーマ
「THE NEXT STAGE・THE STRONGER BOND」
3.後援・協力
後 援:奈良県教育委員会 NHK 奈良放送局
協 力:マレーシア政府観光局 マレーシア教育省
4.実施日
平成26年8月17日(日)~8月23日(土)
5泊7日
5.対象者
奈良県内7校15名の高校生(実行委員から)
スリ・プトゥリ高校生(昨年度招へい校)
フル・スランゴール高校生(今年度招へい校)
MRSMアローガジャ高校生(昨年度招へい校)
6.参加者 / 募集定員
マレーシアの高校生
実行委員会派遣メンバー
69名/45名
15名/15名
7. 事業運営体制
【企画委員会構成メンバー】
マレーシア政府観光局大阪支局、
NHK奈良放送局、奈良県教育委員会、
奈良県立桜井高等学校、奈良県立畝傍高等学校、
奈良女子大学、奈良先端科学技術大学院大学、
奈良国立博物館、室生国際交流村
【実行委員会派遣メンバー】
桜井高等学校、奈良育英高等学校、
高取国際高等学校、関西中央高等学校、
香芝高等学校、畝傍高等学校、奈良高等学校
(奈良県内から公募)
8.プログラム(要約)
本事業は、文部科学省の「青少年教育施設を活用し
た国際交流事業」の一つとして、国立曽爾青少年自然
の家が委託を受け、実施している事業である。奈良県
内から公募で集まった高校生実行委員(以下「実行委
員会」)28 名のうち、15 名の実行委員(以下「派遣メ
ンバー」)派遣事業に参加し、マレーシアの高校3校
との交流プログラムを中心に展開した。
派遣メンバーは、5月から計4回の実行委員会で、
事前学習を進め、マレーシアを訪れ、帰国後も事後学
習と 11 月の受入事業の準備、事後学習をする。実行委
員の中には昨年度から活動しているメンバーもいて交
流の経験は様々であるが、実行委員会全体として、経
験したことからの学びを共有している。今回の交流の
経験やマレーシア現地ならではの学習は、派遣事業に
参加してない実行委員にも報告し、11 月の受入事業を
充実させさらに交流を発展させるものであり、1年間
を通しての事業の一つである。
「ジャパン・マレーシア交流プロジェクト 2014
派遣事業」のスケジュール
1 日目:出発式、移動
2 日目:スリ・プトゥリ高校訪問
マレーシア教育省訪問
3 日目:フル・スランゴール高校訪問
UCHIDA MK (日本企業)訪問
4 日目:国立森林研究所 FRIM 見学
MRSM アローガジャ高校訪問(寮 泊)
5 日目:MRSM アローガジャ高校 滞在
6 日目:MRSM アローガジャ高校
マラッカ見学
7 日目:関西国際空港 着
8月 17 日(日)【1日目】
朝、スーツケースを持った派遣メンバーが、続々と
関西国際空港に集合した。出発式では、実行委員会2
年目の園田さんがあいさつをし、マレーシアでしっか
りと学習と交流をすることを確認した。その後、個々
にチェックイン、出国の手続きをすませ、搭乗ゲート
へ向かった。搭乗したマレーシア航空 53 便は、午前
11 時定刻に飛び立った。約半数が海外渡航や飛行機が
初めてで、期待と戸惑いを持ちながら過ごし、客室乗
務員に飲み物を頼むこともわくわくしている様子であ
った。
クアラルンプールに到着し、通訳のアブドゥル・ラ
ーマン氏(マレーシア政府観光局大阪支局)とガイドの
エリック氏、プライベートで来てくれたMRSMアロー
ガジャ高校のニック先生の出迎えを受けた。その後、派
遣メンバーはバスに乗り込み窓外に見える日本とは違う
景色に見入っていた。
ホテルでは、次の日にプレゼンテーションを担当する
班のメンバーとあいさつ担当者が夜遅くまで練習をし
た。
今日交流する生徒が出迎えてくれた。会議室で、学校
長のあいさつ、自然の家次長のあいさつ、実行委員の
今西さんのあいさつ、学校紹介のあと実行委員会B班
が「日本の四季」をテーマにプレゼンテーションをし
た。スリ・プトゥリ高校の教員や生徒は、事前に準備
と練習を重ねたプレゼンテーションを興味深く聴いて
いた。
その後、バディが校内を案内してくれた。図書館や
売店など案内される中で、両校の高校生の会話と笑顔
が増えたようだ。
8月 18 日(月)【2 日目】
ホテルで朝食をすませ、官公庁が集まる街、プトラジ
ャヤへ向かった。街の中心部にあるプトラモスク(通称
ピンクモスク)を見学した。イスラム教の寺院を訪れる
のは初めて、派遣メンバーは、建物の美しさに感動し、
話を聞く中で信仰の深さを感じることができた。
続いて同じ街にある国立の全寮制女子高等学校、ス
リ・プトゥリ高校を訪問した。この学校は、昨年度 11
月に同事業で来日し、実行委員会と交流した生徒がいる
学校である。バスが到着すると、昨年度来日した教員と
次のプログラムはディスカッションで、派遣メンバ
ーがとても楽しみにしていたものである。全員が揃う
のを待つ間、バディたちが簡単なゲームを始め、とて
も和やかな雰囲気になった。ディスカッションは、事
前に打ち合わせをした5つのテーマ「食べ物」「天気」
「環境」「学校」「文化」で行った。両国の高校生は、驚き
の声や笑い声をあげながら会話を楽しんだ後、各グル
ープが全体に発表をした。その後はマレー語の授業を
受けた。スリ・プトゥリ高校の国語の先生から、簡単
なマレー語のあいさつを教えてもらい、バディに助け
てもらいながら声に出して練習をした。
昼食は、学校の食堂でバディとともに円卓を囲み、
マレー料理をいただいた。まだ辛い料理には慣れない
ようであったが、写真を撮ったり会話を楽しんだりしな
がらの楽しいひとときであった。
午後からは、同じ街にある教育省を表敬訪問した。マ
レーシア政府観光局及び教育省の職員の方の出迎えを受
け、
会議室でマレーシアの教育についての説明を受けた。
続いて実行委員の本田さんのあいさつとB班のプレゼン
テーション、質疑応答があった。派遣メンバーからは素
朴な質問が積極的に出された。
夕食はホテル近くのKLCCのフードコートに行き自
分たちで食事を注文して食べたが、各訪問先で軽食をい
ただいたせいか少しずつで十分だったようだ。
ホテルでは、次の日のプレゼンテーション担当のC班
とあいさつ担当者が夜遅くまで練習を重ねた。
8月 19 日(火)【3 日目】
少し早めにホテルを出発し、クアラルンプールから北
へバスで1時間のフル・スランゴール高校へ向かった。
この学校は 11 月に来日予定の国立の全寮制理系高等学
校である。6月にメールアドレスを教えてもらい数人は
事前にメールを送っている。到着するとマーチングパフ
ォーマンスでの出迎えがあり、実行委員も大きな拍手を
送っていた。
続いて、会議室で実行委員の平住さん、来日予定の高
校生、学校長、自然の家次長のあいさつがあり、バディ
の案内で校内見学をした。広々とした校内を歩きながら
マレーシアの高校生が派遣メンバーに案内をしていた。
途中音楽教室では、アンクロンやガムランなどの伝
統楽器の演奏を聴き、体験もさせてもらった。実行委
員がピアノを弾く場面もあり盛り上がった。
敷地内にある学生寮も見学し、25人部屋で生活し
ていることや学生寮でのチームが様々な場面でチーム
毎に競うこともあることを聞き、派遣メンバーは驚い
た様子であった。
最後に学校の食堂に行き、伝統的なパフォーマンス
「Dikir Barat」を見学し、続いて実行委員会C班のプ
レゼンテーションをした。篠笛や書道作品の披露のあ
と、11 月来日時に訪れる奈良公園周辺の説明もあり、
会場からは質問がたくさん出された。
両国の高校生が一緒に昼食をし、11 月の再会を約束
してバスに乗り込んだ。
午後からは、
現地日本企業 株式会社 UCHIDA
MKを訪問し、内田洋行グローバルリミテッドの取締
役副社長の岡田氏から「海外で働くということ」につ
いてお話を聞いた。
「英語を話すこと」も大切ではある
が、
「日本のことを語れるようになること」が最も重要
であることを聞き、派遣メンバーは改めて自分を振り
返り、11 月の交流までの課題がはっきりしたようであ
った。実行委員の河村さんが、工場の方にあいさつを
し、工場内を見学した。
その日の夕食は、現地のレストランでよりローカルな
食事に挑戦した。3 日目ともなるとスパイシーな味付け
にも慣れたのか、いろいろな料理を楽しそうに食べてい
た。食後はホテルの近くにそびえ立つ夜のツインタワー
を見た。今やクアラルンプールの象徴ともいえるこのタ
ワーの美しさに感嘆の声をもらし、何枚も写真を撮って
いた。
この日も、実行委員会A班とMRSMアローガジャ高
校でのあいさつ担当者は夜遅くまで練習をした。
8月 20 日(水)【4 日目】
朝食とチェックアウトをすませ、クアラルンプール郊
外にある「マレーシア国立森林研究所FRIM」(以下
「FRIM」)に向かった。日本を出発してから運動不
足気味の派遣メンバーは、マレーシアの自然の中を歩く
ことを楽しみにしていた。
FRIMに到着し、まず職員の方からレクチャーを受
けた。熱帯雨林や環境問題について学んだ。派遣メンバ
ーは、「この森は先祖から受け継いだものではなく、子
孫から借りているものである。」という考え方が心に残
ったようであった。この日はハリラヤ(断食明けのお祭
り)行事があり、森林博物館の見学ができないため、予
定を変更してジャングルトレイルに行き、続けてキャノ
ピーウォーク(つり橋)を体験した。熱帯雨林ならでは
のうっそうとした森の中では、日本では見たことのない
木や種があり、その都度立ち止まって説明を聞いた。標
高 1,000m、地上 30m、全長 150mのつり橋を渡るキャ
ノピーウォークは、右手に緑、左手にはクアラルンプー
ルの街が広がり、絶景を楽しみながらのウォーキングと
なった。山登りが苦手な派遣メンバーは、登りの最後は
さすがにきつかったようで、みんなで「あと5分」「5
分!5分!」と声をかけながら歩き切った。
昼食後、クアラルンプールを離れ、昨年度 11 月に来日
したMRSMアローガジャ高校へ向かった。およそ2時
間半のバスの移動は、来馬してからの疲れと午前中の疲
れからか熟睡していたが、到着前1時間は、次の日披露
する「南中ソーラン」の練習となった。バスの中で曲
を流しながら、座ったままで手足を動かしながら何度
も練習をした。日本では 7 校から派遣メンバー全員が
集まって練習する機会はなかなか取れなかったが、各
自で練習してきた動きを確かめていた。
学校に到着すると、校門から正面玄関までの道の両
側に生徒が並び、小旗と笑顔で迎えてくれているのが
目に入ると、派遣メンバーのテンションが一気に上が
り窓から手を振った。バスを降りると昨年度来日した
教員と8人の生徒も出迎えてくれた。昨年度から実行
委員を続けている派遣メンバーは互いの名前を呼びな
がら抱き合って再会を喜ぶ姿が見られた。
会議室に入り、学校長、次長、実行委員の森本さん
のあいさつのあと、学校長が派遣メンバー一人ひとり
の名前を呼び、名札をかけて歓迎してくださり、とて
も温かい雰囲気に包まれた。そのあと、それぞれのバ
ディが紹介され、
バディが学生寮まで案内してくれた。
並んで歩く両国の高校生はまだ恥ずかしさがあるよう
に映ったが、学校でのプログラムは全てバディととも
にすることになる。
荷物を片付けた後、
広い校内をバディの案内で歩き、
売店や生徒が運営しているお店を見るなど、派遣メン
バーには驚きがたくさんあったようだ。その後、夕食
の時間となったが、オープンな食堂で、両国の高校生
がたくさん集まり夕日をバックに写真をとる姿から
は、すっかり打ち解けたことが感じられた。バディは
マレーシアスタイルのご飯のとり方を丁寧に教えてい
た。また、バディと派遣メンバーのテーブルから「い
たたきまーす。」の大きな声が聞こえてくるなど、互
いの文化を積極的に取り入れようとしているのがわか
った。
夜は、昨年度来日した8人の生徒がアイスブレイク
のプログラムを担当した。彼らは直後に進学に関わる
大きな学内テストを控えているにもかかわらず、後輩
や「SONI students」(MRSMアローガジャ高校で
は実行委員をこのように呼んでいる)のためにゲーム
の内容や準備・進行・カメラも、全て8人で担当して
いる姿に、昨年度からの大きな成長を感じた。体育館
に定刻前に集まってきた高校生たちは、誰かが始めた
バレーボールの円に次々と加わり、全員で楽しく遊ん
でいた。8人の合図でアイスブレイクに移った。動物
の鳴きまねを手がかりにチームに分かれ、チーム対抗戦
の風船割りゲームが始まった。両国の高校生が入り混じ
って走り回り、ゲームに最後まで勝ち残っている生徒の
名前を大きな声で呼ぶ声が響いていた。続いてジェスチ
ャーゲームがあり、負けたチームは罰ゲームでダンスを
踊り盛り上がった。そして、マレーシアンルールのドッ
ジボールを行った。派遣メンバーは疲れも忘れて思い切
りボールを投げ、ナイスプレーの度に歓声が上がった。
最後は、8人からのプレゼンテーションがあった。大画
面に映された日本での思い出の写真と、彼らからのメッ
セージ「私たちの絆は 2013 年に始まった。さらにその絆
を強くしてほしい。」という言葉に、2年目の派遣メン
バーは涙をこらえ切れなかった。
プログラムが終わり、部屋に戻ったが、そのあともバ
ディが派遣メンバーの部屋に来て、折り紙などをして交
流した。
8月 21 日(木)【5 日目】
早朝5時頃にコーランが響き、目覚めるとあいにくの
雨であった。朝食後、広い図書室で副校長、次長、実行
委員の矢尾さんのあいさつのあとプログラムが進んだ。
バディのほかにもたくさんの生徒が集まっていた。
まず、
実行委員会A班のプレゼンテーションがあった。日本人
が大切にする「もったいない」の心を表す寸劇や実際に
お茶を点てるパフォーマンスもあり、会場は盛り上がっ
た。続いての派遣メンバー全員による「南中ソーラン」
は、衣装を身に着け、緊張した面持ちの 15 人が登場した
だけで大きな拍手であった。「構え!」の掛け声のあと
音楽が入ると、派遣メンバーはこれまでの緊張と不安を
飛ばすかのように声と動きを合わせて踊った。15 人の動
きや声から、日本の代表として踊っているという気迫が
感じられた。会場の教員や生徒は皆カメラやスマホで写
真を撮り、踊り終わって礼をする派遣メンバーに惜しみ
ない拍手を送っていた。続いて、マレーシアの格闘技の
パフォーマンスの披露のあと、モーニングティーへと向
かった。
次は、美術の先生によるバティックの絵付け体験で
あった。美術教教室にいくと、先生が溶かしたロウで
見事に布に絵柄を描いていた。派遣メンバーは先に描
いてある絵柄を受け取り、バディに教えられながら絵
付けを体験した。鮮やかな色の作品ができあがり、バ
ディがほめてくれていた。
午後からは、マラッカの伝統的なお菓子「オンデオ
ンデ」づくりを体験した。マラッカのお土産としても
有名な黒糖を中に入れたお団子であった。5つのグル
ープに分かれて一緒に団子を丸める様子、できあがり
の柔らかい団子を一緒にほおばる様子は本当に微笑ま
しかった。
夕方からは、バディと一緒にマラッカのナイトツアー
に出かけた。夜景が有名なマラッカの街を是非見せたい
というニック先生からの提案である。高校のバスに乗り
込み、マラッカに到着後、マラッカタワーに登り、バデ
ィから街の説明を受けた。続いて3班に分かれて散策と
食事をした。日も暮れて全員が集合し、リバークルーズ
に出発した。船から見るマラッカの街は、世界遺産の街
にふさわしい整備された美しい街であった。
8月 22 日(金)【6 日目】
MRSMアローガジャ高校での最終日、朝から荷作り
をすませて中庭に集合した。3つの東屋に分かれ、運と
頭脳で勝敗が決まる伝統的なゲーム「チョンカ」を楽し
んだ。派遣メンバーはルールを教えてもらって、夢中に
なって対戦していた。
その後、会議室に移動し、モーニングティーとお別れ
のセレモニーに移った。お世話になった先生方やバディ
との最後の時間、昨夜マラッカで買った「ヒジャブ」
(女
性が頭につけるスカーフ)をつける女子もいて、学校長
から「MRSMの生徒のよう。」と声をかけられた。そ
して「また帰ってきなさい。」という温かい言葉に涙を
流す派遣メンバーもいた。前日に絵付けしたバティック
と記念品を、学校長自らがひとり一人に手渡され、泣い
ているメンバーには肩を抱いて慰められる場面が多々あ
り、涙が止まらないシーンとなった。最後に実行委員の
足立さんからお礼の言葉を述べた。
写真を撮り、バスに乗ろうとしたとき、マレーシア高
校生たちが、Kiroro の「未来」の歌で送ってくれた。派
遣メンバーはバディとの別れを惜しんで抱き合ったり、
握手をしたりしてなかなかなはれることはできなかった
が、再会することを約束してバスに乗り込んだ。先生方
や関わった生徒がバスの両側で手を振り、校門を出る
まで見送ってくれた。
派遣メンバーは再びマラッカに入り、有名なニョニ
ャ料理を体験した。マラッカの街の歴史を語るには、
中国本土から渡ってきた民族がマレー文化を取り入れ
て生まれたババ・ニョニャ文化は欠かせない。
その後、マラッカの一番古い中国寺院チェン・フ
ン・テン寺院や、ポルトガル統治下の頃の宣教師たち
の活動拠点でありザビエルの遺体が安置されていたセ
ントポール教会、オランダとの戦いに備えポルトガル
軍が築いたサンチャゴ砦、オランダ統治下の建物が並
ぶオランダ広場、スルタン・パレス(王宮博物館)を
見学し、世界遺産の街の歴史を感じた。
夕刻、マラッカ見学を終え、空港に向かった。連日
の疲れはあるが、マレーシアを離れることはやはり寂
しいようであった。空港に着くと、スリ・プトゥリ高
校の先生と昨年度来日した8人と今年度交流した3人
の生徒が見送りに来てくれていた。時間の許す限り彼
女たちと会話し、その後実行委員の榎堀さんがお礼の
言葉を述べ、ラーマン氏、エリック氏ともお別れをし
て搭乗口へと向かった。マレーシア航空52便は 11
時 45 分定刻どおりクアラルンプールを飛び立った。
8月 23 日(土)【7 日目】
早朝、機内での軽食の後、間もなく関西国際空港に到
着した。飛行機の窓から見える空港を見て、ほっとした
様子も見られたが、やはり充実した交流の日々が終わっ
たことを寂しく思っている派遣メンバーの様子が伺え
た。
午前7時 30 分、
到着ロビーに出ると保護者の方が迎え
に来られていた。最後に次長から、この経験を 11 月につ
なげるよう励ましがあり、実行委員の長町さんから今後
も頑張ることが伝えられ、解散式を終えた。
6.まとめ
この事業の中心となる実行委員会のメンバーは、4 月
に奈良県内から公募し 5 月から活動を始めた。決して全
員が社交的で、英語が得意であるというわけではなく、
むしろ最初の自己紹介では、「恥ずかしがり屋」という
メンバーが多かった。派遣メンバーも同様であり、実行
委員会の中の特に社交的で英語が話せるメンバーが派遣
事業に参加したというわけでもなかった。
派遣事業直前の実行員会では、マレーシアでのプレゼ
ンテーションの準備を中心に活動したが、英語でコミュ
ニケーションをとることに不安がいっぱいの状態であっ
た。担当者から、「マレーシアでは英語で会話する能力
より、『対面力』である。」という話をして、人とどう
向き合っていくかを大切にするよう指導をした。
マレーシアでの 6 日間はまさにその実践の連続であっ
たと思う。3校のマレーシア高校生といかに交流すれば
よいのか、あらかじめ考えていたことよりも満面の笑み
で次々と話しかけてくるマレーシア高校生とどんな風に
すごせばよいのか、生活で必要なことをどのように伝え
ればいいのか、手探りな状態で交流は始まったように映
った。しかし、6日目MRSMアローガジャ高校での最
終日ともなると、素直に感情を表し、とにかく今の自分
の気持ちを必死に伝えようとしている姿、必死にバディ
の言っていることを理解しようとする姿が見られたた。
事業直後の実行委員会では、まさにそのことについて
報告がなされ、マレーシア高校生に比べ自分たちがいか
に表情に乏しいか、いかに自分の意思をその場で選択で
きないか等報告があった。
また、海外に出て「マレーシアにいる日本人」という
立場を経験する中で、日本のことを語る力の必要性を身
をもって感じたようである。日本企業では「日本を語る」
ことが国際交流には必要であることを話していただきた
が、高校生同士の交流の中でもそれを感じ取っていた。
マレーシア高校生から次々と問いかけられる日本につい
ての質問に答えられないことも多く、まず「日本のこと
を日本語で語る力」が必要であることがはっきりした。
昨年度の活動から日本のことを説明できるよう準備をし
てマレーシアに行ったが、まだまだ不十分であることを
感じ、11 月までにいかに語るようになるかが課題として
見えた。
今回参加した派遣メンバーの中には、本事業に関わる
のが3年目、実行委員としての活動は2年目となる高
校生もいる。彼女たちが、これまでの経験を踏まえ後
輩をサポートしたり班をまとめたりする力がついてい
ることにも驚きと頼もしさを感じることができた。そ
して、マレーシア高校生も、昨年度の参加者がこの事
業のねらいを理解し後輩に引き継ごうとしている姿に
も大きな成果が見え、感動を覚えた。
この事業全体はまだ折り返し地点を過ぎたところで
あるが、今回の派遣事業では、4年目を迎えるこのプ
ロジェクトが、両国の高校生の中でも引き継がれ、参
加者もプロジェクト自体も成長し、しっかりと歴史を
刻んでいることが見られたことが大きな成果である。
後半の受入事業、さらには「高校生 大いに語れ!」
でこの学びをいかに発展させるかが今後の課題であ
る。今年度のテーマである「絆」をさらに強くするた
め、見えた課題を大切に歩んでいきたい。
(主任企画指導専門職 髙岡 訓子)
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