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2015年11月4日

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2015年11月4日
国際サーカス村通信
Vol.20 No.01
2015 年 11 月 5 日(木)
文責 西田 敬一
編集 NPO 法人国際サーカス村協会
Tel 0277-70-5010 Fax 0277-97-3688
〒376-0303 群馬県みどり市東町座間 41-1
http://www.circus-mura.net
[email protected]
●15 年目に入ったサーカス学校
早いもので 2001 年 9 月に開校した当校も 15 年目を迎えた。この間いろいろな出来事があったが、
なかでも 2011 年東日本大震災、そしてその時に起こった大津波の来襲。津波の大きさを予測できたに
も関わらず対策を怠ったために地球規模の放射能汚染を引き起こし、未だに収束の見通しさえ立たない
東京電力福島第一原発の事故による影響がなによりも大きかった。この大事故はそれ以降の世の中につ
いてぼくらが何をどのように考えるべきかを示していると思う。よりはっきり言えば、原発廃炉を含め
てぼくらが目を向けて抗議していくべきことが見えてきた。そのために社会に向き合った表現を作り出
していくことが求められているということを、自覚すべきではないだろうか。
2011 年冬から半年の間休校し、学校や校庭の除染作業を市に求めた。もとの環境に戻ったわけでは
ないが、その後学校を再開。再開時 5 名の生徒が今は 8 名になっているが、被曝以前の人数には戻って
いない。このところ各方面よりイベント出演の声がかかったり、体験入学などの要望が増えてワークシ
ョップを秋も行うなど、活気を取り戻しつつあるが、経営的にはまだまだ苦しいままである。この状況
をなんとか乗り越える道を模索し、サーカス学校を続けていきたいと願っている。
昨年 3 月 11 日、足尾銅山の鉱毒被害によって消滅した松木部落(かの有名な谷中村ではなく、足尾
銅山よりさらに山に入った松木渓谷にあった)へ通じる道で、そこから先は侵入禁止になっている親水
公園脇のゲート前からスタートさせた“サーカスはリヤカーに乗って”の旅は、同年 9 月 28 日、鹿児
1
島川内原発再稼働反対の抗議集会に参加したのを最後に活動を休止しているが、再び旅ができないか検
討している。最大のネックはぼく自身の体力の衰えだ。
そんななか朗報は、今年初めて行われたモンゴル国の国際ユースサーカスフェスティバルに在校生の
油布直輝君が参加し、ベストパフォーマンス賞とモンゴル文化庁賞を獲得したこと。以前、モスクワの
サーカス劇場のショーにサーカス学校生徒 2 名を出演させてもらったこともあるし、グルジアのサーカ
ス団で 1 年間に渡って公演した卒業生や、現在、カナダのサーカス団で活躍している者もいるが、それ
とはまた違った興奮と勇気をサーカス学校生徒に与えてくれたことを思えば、なんとも嬉しい限りであ
る(詳しくは本人のレポートをご参照)
。
サーカス学校に入学する生徒はそれぞれ覚悟をして来ていると思えるが、それでも誰もが日々の稽古
に積極的に取り組むわけではない。日が経つにつれて、より真剣に稽古に取り組む姿が見られることも
あるが、油布君は当初から自分が選んだこの道で身を立てるという意気込みを秘めていたように思う。
ぜひ、在校生もこれからサーカス学校に入学しようと考えている人も、自分に問いかけ、その答えを
自分で作り出していく努力をしてほしい。ぼくらはそのお手伝いをするだけである。
●ナージャ先生
秋のワークショップが無事に終わりました
毎年 6 月に行っているワークショップはご好評につきましてこの秋も開催し、無事に終えました。
今回は最年少は小学 6 年生、そして遠方からは鳥取県より、合計 9 名の方にご参加いただきました。
ナージャ先生からマット運動や柔軟、筋トレ、バランスなどの基礎やハンド・トゥ・ハンドの技を学
びながら、サーカス学校の生徒からもジャグリングやシルホイールなどを学び、そして参加者の得意技
をサーカス学校生たちが学んだりして、お互いに勉強し合うシーンもありました。
「現状の日本ではサーカス学校がなく、そしてサーカスという位置づけが曖昧で、海外に出ないと学
校に行けないというのがとてももどかしいです。色々なことを学べるチャンスを創られている沢入国際
サーカス学校はとても貴重な場所だと思います。これからも色々と大変でしょうが、永く続いて行って、
沢山のパフォーマーの母校になって欲しいと思います」というメッセージをある方からいただき、あり
がとうございました。
次回のワークショップは、2016 年 6 月を予定しておりますので、ご興味のある方はぜひ今からご予定
いただければ幸いです。
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●会費納入のお願い
10 月より新年度となりました。つきましては、同封の郵便振替用紙にて会費の納入をお願いいたします。
いつもありがとうございます。
年会費
5000 円
郵便口座
00180-8-106528
加入者名
国際サーカス村協会
●総会のご案内
期日
11 月 30 日(月)午後 5 時より
場所
国際サーカス村協会・東京事務局
メール
[email protected]
議題
平成 26 年度事業報告・会計報告(別紙ご参照)
℡03-3403-0561
平成 27 年度事業計画
*同封ハガキにてご出欠をご連絡ください
●沢入国際サーカス学校
日時
冬の発表会は 12/12(土)、13(日)に行います
1 日目;2015 年 12 月 12 日(土)15:00
2 日目;2015 年 12 月 13 日(日)13:00
場所
沢入国際サーカス学校体育館
〒376-0301
最寄駅
※駐車場あり
群馬県みどり市東町沢入 491
旧沢入小学校体育館
わたらせ渓谷鉄道『沢入(そうり)』駅より徒歩約 8 分
●サーカス学校在校生 油布直輝(ゆふなおき)くん、モンゴルへ
在校生の油布直輝くんが、去る 10 月にモンゴルの首都ウランバートルで開かれた国際サーカスフェ
スティバル"The 1st International Youth Circus FESTIVAL"に出演。また、社会主義時代に建てられ
たモンゴルの常設サーカス劇場(元国営)で演技をした初めての日本人パフォーマーとなったと思いま
す。次ページより、油布くんからのご報告です。
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10 月 12 日。楽しみよりも不安が勝る気持ちの中、チンギスハーン国際空港へ向けて成田空港を飛び
立ちました。10 月 14 日〜18 日までモンゴルで開催される “The 1st International Youth Circus
Festival”に出演するために。
チンギスハーン国際空港に到着したのは午後 7 時過ぎ。ランウェイで U ターンしてスポットに向かう
新しい発見に昔の血が踊り、半ば興奮状態でモンゴルの地を踏みました(油布くんは元航空整備士とし
て働いていました)。
荷物受取所でシルホイールがなかなか出て来ず、いよいよコンベアも止まってしまって、まさかのロ
ストバゲージか!?とハラハラしながら回りを見ると、奥の壁際に"OVERSIZE BAGGAGE"と書かれ、置か
れていたのでした。空港スタッフに「中身はなんだ?」と聞かれたのだと思いますが、英語とモンゴル
語の噛み合わない会話をしばらく続け、納得してくれたのかようやく外へ出ることができました。
「ナオキですか?」今回呼んでいただいたハドガーさんが日本語で迎えてくれました。他のアーティス
トの方は到着しているということで、ハドガーさんの車で宿泊先のホテルへ向かい、軽食を食べてこの
日は就寝。
翌朝、みんなでバスに乗りサーカス場へ。
この日のリハーサル、1 日ある休演日を含め 6 日間で 8 公演、内 1 回コンペティションが行われると
いうスケジュールでした。サーカス場に着くと、外にデカデカと掲げられ
てるポスターに自分の姿を見つけ、いよいよここでやるんだなという実感
が湧いてきました。
自分のリハーサルの時間は聞いていましたが他のアナウンスは特にな
く、モンゴル語が飛び交う中いきなり全体のリハーサルが始まり、他のア
ーティストの人達とワサワサ、バタバタしながら進めていきました。場の
雰囲気を感じ、流れを読む努力を常にして、身を投じていました。
さて、今回の話をいただいた時からずっと気にしていたのは、床の状態
でした。僕の演技、シルホイールは、モンゴルのサーカス場のカーペット
の上ではまずできないだろうと思っていたので、カーペットを剥いでもら
い、下のゴム地の床でトライしてみましたが、妙にベタつきのある表面に
小さな砂利と凹凸。これがよく滑り、回りにくいのです。どうしよう…。
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次に、もう一度カーペットを敷き、カーペットの上で回ってみました。滑らないけれど、えっ?全然
回らない…!力がカーペットに吸収されて回転がつけられず、普通に回るので精一杯で、技への移行が
出来ませんでした。
他のアーティストも見てる中で、ほぼ何もできない姿を披露してしまい、精神的にかなり落ち込みま
した。一瞬、「やりたくない」という思いが脳裏をよぎりましたが、こんなチャンスをいただいて、こ
こまで来てやらないという選択肢はなく、この状況下で出来ることをできる限りやるしかないと開き直
り、演出的な部分を変え、構成を 1 から見直し、何ができるかを考えました。幸い、アーティストやデ
ィレクターの中には状況を理解して声をかけてくれる人がいて助けられました。
出発前から連絡を取り合ってお世話になっていた ACC の長屋さんと、着いてからも連絡を取り合い、
その中で「板みたいなものを敷いてもらったら?」という話になり、今より回れる環境になるならと翌
日劇場側に提案しました。
するとモンゴル側はすぐに用意してくれました。1.2m 四方の厚手の板物を計 25 枚、スタッフ総出で
敷いてくれました。もう本番の 2 時間前でしたが、いちどリハをして、問題をスタッフの力で解決し、
なんとかカタチにして本番を迎えたのでした。 (それぞれの板同士をつないで固定することができな
いので、油布くんの演技中に板と板がずれて隙間ができるたびに、スタッフが横から蹴って埋めるとい
う方法で乗り切ったそうです)
公演は休憩を挟んでの 2 部構成で、僕の出番は 2 部のトップバ
ッターでした。
2000 人の会場とフェスティバルの雰囲気に、毎回緊張は MAX で
したが、お客さんがすごく盛り上がっているのと雰囲気に助けら
れながら、無事に全公演を終えることができました。
最初の 2 日は緊張と不安のため、控え室で何度もルーティーンの
確認などしていましたが、だんだんと余裕ができてきて、他のア
ーティストの演技を観に行ったり、会話をしたり、写真を撮った
りと時間を作って過ごすことができるようになりました。
オンタイムでは決して始まらない公演、吊り物の操作は人力でや
るなど、モンゴルの空気も楽しめるようになっていました。
最終公演の日曜日にコンペティションとセレモニーが行われ、
結果、モンゴルの文化、教育、科学の大臣からの特別賞と”BEST
↑演技中の油布くん。
PERFORMANCE”賞をいただくことが出来ました。自分の出来のほど
桜ふぶきを散らしているところ。
はわかっていたので、素直に嬉しかったですし光栄でした。次への
大きな励みになりました。
本来、このような場所は勉強しにくるところではないのだろうけど、今回の公演で実力を知り、いろ
いろなことに気づき、他のアーティストと関わることで刺激があり、本当に貴重な、そして、次への大
きな経験になりました。
自分にはまだ早すぎるステージだと思いましたが、結局は何をやったかではなく、何を感じ何を得た
か、そしてそれを次へどう繋げていくかが大事なんだろうなと思います。
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休みの日には出演者たちと郊外へ出かけ、チンギスハーンの巨像を見たり、ゲルの中で伝統料理をい
ただいたり、大自然の中でバスケやバレーをしてはしゃいだり、ショッピングに出かけたりと、公演以
外の時間も楽しく過ごすことができました。ここで出会った人たちと、レベルアップしてまた同じステ
ージに立ちたいなと思います。
リハから公演中と大変お世話になった現地スタッフのみなさん、今回モンゴル側とのやりとりや現地
に着いてからもサポートをしてくれた ACC の長屋さん、そして毎日指導してくれているナージャ先生に
は感謝の気持ちで一杯です。
まだまだこの道を歩み出したばかり。これからもっともっと自分を磨いて、今回の大きな経験を機に
さらに羽ばたいて行きます!
ところで、モンゴルから帰国してからというもの Facebook で友達申請が止みません。これも戦利品
でしょうか?笑
(油布直輝)
―油布くん、本当におめでとうございます!これからのご活躍も願っています。(長屋)
●カンボジア
影絵芝居ツアー報告(西田敬一)
去る 9 月 4 日(金)から 9 日(水・雨)帰国で、大型影絵芝居のツアーに参加し、カンボジア・シェ
ムリアップへ出かけてきた。カンボジア行きは今回で 5 度目になるが、これまでアンコールワットなど
世界遺産で有名なシェムリアップには足を運んでいない。実は 2013 年 2 月に、サーカス学校の交流な
どでつながりのある PPS ことファー・ポンルー・セルパックが、シェムリアップにテント劇場を立ち
あげ、公演を始めている。ここにはサーカス村協会の大野洋子、辻卓也両名始め、会員の安部保範氏も
すでに見学に出かけている。この PPS のテント公演も見ることができるなと思い、一石二鳥を狙い、
このツアーに参加することにした。
この「スバエク・トム」
(大きな皮)という影絵芝居(ティー・チアン一座)はすでに何回か日本に
来ているので、すでにご覧になった方もいらっしゃるとは思うが、僕は見ていなくて、たまたま銀座の
画廊で行われた影絵の実演とレクチャーを聞き、興味を惹かれた。というのも、その理由の一つが、多
くのカンボジアの民族的な伝統芸能が長い内戦、特にポルポト時代に潰されてしまったということを聞
いていたので、そのひとつである影絵芝居が復活して現在活動していることにあった(といっても、影
絵芝居の復活は 1990 年代後半には、国の文化政策として復活している)。
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もちろん、この影絵芝居が、大きな幕の裏から影絵を見せるだけではなく、幕の前に来て、大きな牛
皮に穴を開けて作られた精巧なネタ絵を見せるという表現方法にも興味を惹かれたことが、現地で本物
を見てみたいと思ったのも事実。しかもこのツアーに、先の銀座の画廊で実演、レクチャーしてくれた、
『旅の指さし会話帳 カンボジア語篇』を書いた福富友子さんが案内してくれるというので、またとな
い機会であった。しかも実は、福富さんはティー・チアン一座に入団し、影絵の使い手になっているば
かりではなく、これまで口伝でしかなかった物語を、先代の影絵師から聞き書きとして記録していると
いう。その彼女が案内してくれる。こんな、贅沢なツアーはそうそうお目にかかれるものではあるまい。
*
9 月 4 日(金・曇り)成田発 9 時 30 分で、ホーチミンシティ経由シェムリアップへ。
ホーチミン
空港で、大阪・高槻市の青空書房という、素敵な名前の古本屋さんを経営している吉田御夫妻とドッキ
ング。シェムリアップ空港には多少遅れて 19 時着。出迎えのバスで、ロイヤルクラウンホテルに。ホ
テルで社会環境学の小村准教授、福富友子さんと会い、夕食・懇談。夕食後、みんなと別れて福富さん
と、公演終了時間に PPS のテント劇場に足を運ぶ。
終演後のテントの外で、PPS のリーダーであるコーン・デット、ここで働いている池内桃子さんが出
てくるのを待ったが現われないので、ほぼ客が退出したのを見計らって、テント内に入ると、そこには
まだ多くの客とパフォーマーたちが和気藹々と、写真を撮ったり懇談していた。テントは思ったほど大
きくはなかったが、それでも 200 席ほどのキャパか。だれか知り合いはいないかとキョロキョロしてい
ると、デットが現れ、続いてバッタンバンでいつも世話をしてくれるシナン、彼女のおねえさん、絵画
の先生、照明・音響のモンコルなどが現れて、次々にハグの挨拶となった。デットとは、後日、ゆっく
り会うことにして、この日は集合写真に参加させてもらい引きあげる。
公演後のお客の表情、振る舞い、テント周辺の写真の展示、売店の豊かな品数などなどを見れば、こ
こでのテント興行がうまくいっていると推測ができ、嬉しくなった。売店に置いてあるパフォーマンス
の影絵の T シャツや写真集などほしいものがいろいろあったが、とりあえず買わないでおいた。買わず
にというのは、買えば安心してなんとなくひと仕事を終えたような気分になるのが嫌だなという気持ち
が働いたのかもしれない。そんな気持ちになったのははじめてだったが。
9 月 5 日 晴れ。午前中はホテルで、福富さんのレクチャー。まずはカンボジア語について。子音文
字、母音記号、文字の表記など。まるで謎解きのような表記された文字の組み合わせに、つい、う〜わ
からんぞと呻きたくなった。
午後は、民族舞踊を教えている寺院へ。教えている先生は 80 歳を超えており、やはりポルポト時代
には踊ることはできなかったとのことで、兵士のいうことをハイ
ハイと聞くことで虐殺されることを免れたと、笑顔で話してくれ
たが、その一見、おだやかな目が、こちらの目の奥の気持ちを見
定めようとしているような気がしないでもなかった。
そのあとキリングフィールドへ。ここはポルポト時代収容所
(処刑場)があったところのひとつで、今は寺院ができている。
その境内には、ガラス越しに詰めこまれた骸骨や骨を見ることの
できる塔があった。以前バッタンバンにいった時、場所の名前を
記憶していないが、車に乗せられて丘陵地帯にある、ここから
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人々が投げ落とされて虐殺された場所というところに案内されたことがある。そこの崖の下の洞窟状の
ところに檻があり、その向こう側にたくさんの頭蓋骨、人骨が山積みに置かれている場所があって、そ
れこそ息を飲んでしまったが、そのせいか今回見た骸骨の塔はどこか人工的なものを感じてしまった。
その後、大きな廟の壁画が見事なのでぐるりと回ってみてみようということになり左回りにいくと、な
んと廟の横、ドアのない地下室のようなところ、そこを覗いてみると、なんとそこにも頭蓋骨やほかの
骨が、ロープや茣蓙やビニール袋などの他のゴミと一緒になって投げ込まれていた。このあたりは白骨
街道ではないが、地面を少し掘ると、人骨がでるところはまだまだあると聞き、改めて内戦、ポルポト
時代の虐殺について考えさせられてしまった。それは日本が大戦中、中国などで行った南京大虐殺など
と決して無縁ではないだろう。戦争、戦乱といったものが、人々を狂気に追いやる…。その序曲を、い
ま、安倍政権は奏でようとしているのではないか。
この日の夜は、フランス人が経営している高級レストランで、古典舞踊・民族舞踊を見ながら、綺麗
に飾られた食事を口にする。ここでの古典・民族舞踊は衣装が綺麗なわりにあまり感動しなかった。キ
リングフィールドの骸骨を見たからではない。踊り手がいきいきしていないのが気になったのである。
これは邪推かもしれないが、踊り子たちは十分なギャラをもらっていないのではないか。例えば、僕ら
が食事をしてショーを見る、その 1 人前の料金よりも、彼らの日当ははるかに少ないと思われる。なに
か理不尽なものを彼らが感じているとすれば、それがショーに出ていても不思議ではない。
9 月 6 日(日)この日も晴れ。午前中、影絵芝居の人々
が近くに住み、稽古場もあるところにいく。ここにある
稽古場は、KDDI の文化基金で建てられたそうで、縦 15
メートル、横 12 メートル、高さ 6、7 メートルほどの建
物。ここで、まずは「スバエク・トム」の説明と、実際
にこの影絵を動かしてみるとか木琴、ゴングなどの楽器
を叩いてみる、さらには、トム(皮)に穴を開けるとい
った体験をさせてもらった。一旦、昼食で中断、その後、
再度練習場所に戻り、野外に横幅 10 メートル、縦幅5
メートルほどの幕を貼る様子を見学。再び稽古場を後にして、カメラマン一ノ瀬泰造が世話になったと
いうレストランに行き、コーヒーを飲む。ついで大コウモリが集まるというロイヤル公園にでかけ、そ
の後夕食をとり、ティー・チァン一座の稽古場へもどる。すでに野外に白幕が張られ、その向こう側で
は、高さ 2 メートルほどの台の上で、ココナッツの殻が燃やされており、その炎が白幕を橙色に染めて
いた。
夜の7時半過ぎ、僕らが到着すると、早速、幕のこちら側の地面に置いたお盆に飾られた捧げ物を前
にお祈りが始まった。その祈りが始まると、日本語の字幕が投影され、「リアムケー(リアム王子の栄
誉)
」という、影絵芝居が始まった。この物語は、
「ラーマーヤナ」がカンボジアに伝わったもので、大
筋は「ラーマーヤナ」と同じだが、登場人物や場面設定は異なるそうだ。大きいものでは、幅1メート
ル以上、長さ 1,5 メートルほどの先端が丸みを帯びた“スバエク・トム”が次々と現れる。使い手たち
が巧みに操るスバエク・トムは幕前で影絵を作ったかと思えば幕の向こう側で影絵を作ったりする。
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天気良し風無しで、ココナッツの殻を燃やした炎を光
源に浮かぶ、幾つものスバエク・トムを見ていると、い
つしか、遠い昔の芸能の世界に吸い込まれていくようで
あった。ゴングという金属のお椀を伏せたような楽器、
木琴、笛、太鼓などの演奏が夜の闇に鳴りひびき、1 時
間 10 分ほどのショーはあっという間に終わっていた。
演者 12 名、語り 2 名、楽器演奏 6 名の構成であった。
9 月 7 日(月 晴れ)みんなは 5 時起きで、アンコール寺院の向こうに顔をだす太陽、御来迎を見に
行ったが、僕は遠慮して朝 6 時すぎまで寝る。
再度 9 時出発でアンコールワット、アンコール・トム、バイヨン、巨大な生き物のようなガジュマル
の樹木が遺跡のなかに根を張り包み込んでいるタ・プロム。写真でみた情景が目の前に次々と現れる。
そして人間ピラミッドのような技や大きな車輪を頭上に差しているレリーフも見るというよりも確認
し、大野女史や辻君に見たほうがいいと言われていた象のテラスの向かい側の 12 基の石積みの塔も見
るだけではなく、その一基のなかにはいることもできた。かつて、この塔と塔のあいだで綱渡りをして
いたと聞いていたので、実は、それが再現できないかと思って見たのだが、塔の痛みがひどく綱を渡す
ためには、アンカーを取る部分だけでも補強しなくてはならない状態であった。しかしここは世界遺産
に登録されているので、綱渡りのための補強は許されないにちがいない。残念である。後日、デットに
この話しをしてみたところ、アンコールワット敷地内で、PPS が公演したいと希望をだすと、普通より
も高い賃料を請求されると彼は苦笑いをしていた。
夜は、PPS の新作公演にツアーメンバーを誘っていく。この日のショーは influence(影響)という
新作であった。お客は 9 割の入り。強いものが弱いものを滅ぼしていく、その結果は?というコンセプ
トのように理解したが、ツアーの通訳のポッキーさんに言わせれば、より具体的で、一匹のカエルが他
のカエルを食べて大きくなる自然の姿から人間の家族、両親がいない家族で、長男が他の家族の面倒を
見ながら成長するが、その長男が暴力的になり、家族に大きなダメージを与え後悔し、やがて和解する
ストーリーになっていると解説してくれた。デットにその話しをすると、笑っていた。
僕の感想は、アクロバットは例によってすごいが、いささか暴力的な表現に傾きすぎているようにも
感じられたのと、技が少ないのが、サーカスショーとしてはいささか物足りないというもの。多分、こ
の日が初日なので、やがて技の数も次第に増えてきて、ショー全体がより立体的になり、お客もより楽
しめるものになっていくのではないかと思う。
*
9 月 8 日(火)この日も晴れ。カンボジアは雨季だというのに、ここへきて 4 日間、全く雨は降らず
晴天続き。日本では台風 8 号が近づいているらしい。飛行機が遅れたり欠航したりすることがないか、
心配になってくる。この日は、コンポンプルック水上集落見学がオプションになっていた。僕は参加せ
ず、ホテルでのんびり読書。3 時にデットと桃子女史がホテルに見える。デットに日本での公演の可能
性を聞かれたが、直近の話はないと答える。最近、海外のフェスティバルなどから相談があるので、大
型のショーの DVD ではなく個々人のパフォーマンスの DVD を送ってくれると、そうした折にプレゼ
ンしやすいと話をする。
9
6 時にホテルを出て、帰路に。ホーチミン空港で、成田行きは 40 分遅れですんだが、大阪便は 6 時
間のウェイティングになってしまったそうだ。
*
この企画を行った旅行会社から、PPS 訪問をメインにしたスタディツアーができないかと相談を受け
ている。もしもカンボジア、PPS に興味があり、ツアーに参加したい方がいらっしゃれば、早めにご連
絡いただければありがたいです。(西田敬一)
★木下大サーカス
●宇都宮公演
公演期間 2015 年 10 月 9 日(金)~2015 年 12 月 7 日(月)
●休演日;毎週木曜日と 10/14(水)と 11/15(日)
。
●会場;清原工業団地内 特設会場
●電話;宇都宮公演事務局
℡028-667-0036
★ポップサーカス
●岐阜公演
公演期間 2015 年 11 月 7 日(土)~2015 年 12 月 13 日(日)
●休演日;毎週水曜日
●会場;モレラ岐阜 大テント
●電話;岐阜公演事務局(モレラ岐阜内)
★野外民族博物館リトルワールド
℡058-320-5088
「ウクライナサーカス」
世界最高水準のアーティストを擁するサーカス大国ウクライナ。その中で世界最高峰と呼ばれるサーカス学校「国立キエ
フ・サーカス学校」出身者たちは、世界中の一流サーカス団で活躍しています。そんな同校出身のアーティストたちがリ
トルワールドのステージで世界中を魅了してきた華麗な演技を披露します。※入館料のみでご覧いただけます。
●公演期間 2015 年 9 月 12 日(土)~2015 年 11 月 23 日(月・祝)
●公演時間
◎平日 11:30/14:00
◎土日祝 11:00/13:00/15:00(各回 40 分)
●休演日;毎週火曜休演(11/3 は 11/4 に振替)
●会場;野外ホール
●電話;リトルワールド
10
0568-62-5611
★ふくろこうじソロ公演
こんなところでこんなことをしている場合じゃないし
まうし
みんなはそこで僕を待ってるし
どん増殖していき
「ドア」
早くしないと時間に遅れてし
なのにこの部屋は広すぎる
ドアはますます遠ざかる
遊園地はどん
はたして僕はそこにたどりつけるのか
作・演出・出演ふくろこうじ。クラウンが描くサイレントコメディーパフォーマンス。
●日時;2015 年 11 月 27 日(金)19:30 開演
11 月 28 日(土)14:00/18:00 開演
●チケット;前売 2,000 円
※開場は開演の 30 分前です。
当日 2,500 円
●会場;plan -B(東京メトロ丸の内線「中野富士見町駅」より徒歩 7 分)
●お問い合わせ・ご予約;アフタークラウディカンパニー(ACC)℡03-3403-0561
[email protected] ①希望日時 ②枚数 ③お名前(ふりがな) ④電話番号を
お知らせください。
「新作が生まれたという。前作『出口あり』を発表してから、だいぶ月日が経っているはずだ。この新しい作品と『出口
あり』の二作品を一日で公演する、そんな企画を夢想してにやにやしている(西田敬一)」
★plan-B「コメディナイト」Again
17 年たっても大誤算!?通称プラコメは、1998 年 3 月 18 日~2001 年 2 月 24 日まで、計 36 回にわたる公演を
ほぼ毎月開催いたしました。初演から 17 年。この年月の中で、得たものあり、失ったものあり。17 年後の「愚」の連
鎖を、お楽しみください。
●公演日時;2015 年 12 月 11 日(金)19:30 開演、12 月 12 日(土)14:00/18:00 開演
※開場は開演の 30 分前です。
●出演者;Kaja/クラウン・リキ/重森一(un-pa)/センチュリーカミヤマ/ダメじゃん小出
ななな/ハンガ~マン/VJ コミックカット/ふくろこうじ/三雲いおり
●チケット;前売 2,500 円
当日 2,800 円
●会場;plan –B
●お問い合わせ・ご予約;アフタークラウディカンパニー(ACC)
メール
℡03-3403-0561
[email protected] ①希望日時 ②枚数 ③お名前(ふりがな) ④電話番号をお知らせください。
★Takeshi and The Escargots(タケシ アンド ザ・エスカルゴッツ)『S-CARGO A GO-Go』
「シルヴプレ&アレックエレジャポネーズ」プレゼンツ。コミックテクノと歌とパントマイムで、空を飛ぶ?
●日時;2016 年 1 月 14 日(木)20:00 開演、1 月 15 日(金)15:00/19:30 開演 ※開場は開演の 30 分前です
●チケット;予約 2,500 円
当日 2,800 円(日時指定・全席自由)
●お問い合わせ・ご予約;アフタークラウディカンパニー(ACC)
①お名前(ふりがな)
②観覧日時
③枚数
●会場;plan -B
℡03-3403-0561 [email protected]
④ご連絡先のお電話番号をご連絡ください。
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