...

トップ

by user

on
Category: Documents
14

views

Report

Comments

Description

Transcript

トップ
特集
トップ
コンサルタ
学ぶ仕事術
特集
曖昧な問題を原因とともに明らかにして、解決策を導き出すコンサ
ルタント。いったいどのような行動習慣を持って日々の仕事をこなし
ているのだろうか。トップコンサルタントの仕事術を学び、要件定
2
トップコンサルタントに学ぶ仕事術
義などさまざまな場面で役立ててみよう。
(西村 崇 [email protected] )
「真の問題や解決策は担当者の心の
質問や回答をサインペンで文字や図に
中にある。それを自然と浮かび上がる
していく。回答内容によって、箇条書
ようにするのが大切だ」
。
き、因果関係を示す図、縦軸と横軸か
ケンブリッジ・テクノロジー・パー
らなる図などを使い分ける。
トナーズのコンサルタント、池田稔氏
質問の相手は、池田氏の言葉が耳か
(アソシエイトディレクター、左の写真)
ら入ってくるのに加えて、文字や図の
は、ユーザー企業のシステム開発プロ
情報を目から取り込むことになる。
ジェクトでシステムの構想を立案する
とき、この心掛けを忘れない。池田氏
(池田氏)
。相手にサインペンを渡して
ムの刷新プロジェクトに携わってき
書いてもらうこともする。
「問題や原
た、同社のトップコンサルタントの一
因に対する理解を深めてもらえるの
人である。
で、その後のシステム開発プロジェク
コンサルタントの仕事は、ユーザー
トの成功確率はぐっと高まる」と池田
企業が抱える問題を洗い出し、解決策
氏は話す。
トの最初から、コンサルタントが問題
NIKKEI SYSTEMS 2011.3
は頭をフル回転させて考えてくれる」
は10年来、大手企業の基幹業務システ
を導き出すこと。とはいえプロジェク
38
「目からの情報も加わると、質問相手
問題解決から提案までの仕事術に迫る
をすべて把握し、解決策を持っている
「システム開発プロジェクトを始め
わけではない。問題は、経営者や業務
たものの、
要件定義が進まない」
といっ
担当者から掘り起こす必要がある。
た経験を持つITエンジニアの読者は少
そこで池田氏は、質問を投げかける
なくないだろう。その傾向は、最近ま
だけではなく、回答内容を必ず目に見
すます強まっている。それは、
ユーザー
える形にしている。フリップチャート
企業の事業戦略と、業務の現場で直面
(模造紙)を会議室の壁に張り出し、
する問題から、システムで実現する要
ントに
すための行動習慣を持って仕事に当
各社の動きを徹底的に調査。その結果
たっている。その行動習慣は主に「自
を基に「最近競合が取り組み始めた社
分なりの答えを用意する」
「相手に話し
内システムの連携に関する相談ではな
てもらう」というものだ(図1)
。
いか」といった仮説を立てる。そこか
習慣①情報ゼロでも成果は必ず出す
らシステム連携の事例集などの資料を
準備して役員との面談に臨む。
「忙し
件を導き出すコンサルタントも実は同
「相談があるので来てもらいたい」
。
い中、時間を作ってよかったという満
じだ。富士通総研の徳丸嘉彦氏(執行
金融機関向けにIT関連のコンサルティ
足感を持ってもらうことで、役員の心
役員常務 第一コンサルティング本部長
ングを手掛けるヘッドストロング・
をつかめる」と北添氏は語る。
代理)は「コンサルティングの対象と
ジャパンの北添裕己氏(副社長 金融
なるユーザー企業の業務と、解決策と
サービス業コンサルティング統括)は、
して示せるITがともに多様化してい
ユーザー企業の役員からこんなメール
プライスウォーターハウスクーパー
て、真の問題や解決策を見極めること
一つで面談を求められることがある。
スの杦岡充宏氏(シニア マネージャー)
が難しくなっている」と話す。
しかし北添氏は、ここで「どんな相
も、事前に仮説を用意することにこだ
問題から原因や解決策を導き出し、
談ですか」といった質問はあえてしな
わっている。担当者との面談を「自分
担当者が解決に乗り出せるようにする
い。情報ゼロからでもでき得る限りの
なりの答えを確認する場」とみなして
ために、コンサルタントは現場でどの
推測をして、役員が期待する資料を
いるからだ。
ような取り組みをしているのだろう
作って示すことにこだわる。
「企業の
杦岡氏は面談を「現状を教えてくだ
か。本特集では、冒頭の池田氏をはじ
トップはコンサルタントに『物事の1
さい」といった質問で始めることはし
め、コンサルティング会社各社のトッ
を伝えたら10返ってくる』という期待
ない。
「情報収集で大事なのはスピー
プコンサルタントの仕事術に迫った。
を持っている。それに応えなければな
ド感。まずは自分が立てた仮説の答え
10年以上のキャリアを持ち、業務改
らない」と北添氏は説明する。
合わせの場とすることで、面談相手か
革やITのプロジェクトの第一線で活躍
面談に臨むまでに、北添氏は依頼を
らの情報収集を一歩進んだところから
するコンサルタントへの取材の結果、
受けたユーザー企業の経営状況や競合
始められる」
(杦岡氏)という。
習慣②面談は答え合わせの場
特集
すぎおか
2
トップコンサルタントに学ぶ仕事術
独自の仕事術(行動習慣)があること
が分かった。これらを「問題を掘り起
行動習慣
こす」
「納得してもらう」という、コン
サルタントの仕事の流れに沿って、整
・自分なりの答えを用意する
・相手に話してもらう
ゼロインプットでも
必ずアウトプットを
出す
理して紹介する。いずれも、問題が明
確になっていないなかで、解決策を導
「違う」という返事
は大きな収穫とと
らえる
き出し、ユーザーを巻き込むのに参考
ントから仕事術を学び取ろう。
必ず仮説を用意する
問題を掘り起こす
コンサルティングでは、曖昧な問題
を明確にし、その原因を突き止める必
要がある。トップコンサルタントは、
相談相手の心をつかみ、問題を引き出
ケンブリッジ・テクノ
ロジー・パートナー
ズの池田稔氏
ヘッドストロング・ジャ
パンの北添裕己氏
になるものばかり。トップコンサルタ
プライスウォーター
ハウスクーパースの
杦岡充宏氏
知っています感
を前面に出さない
アビームコンサルティ
ングの下村雄吾氏
1 問題を掘り起こすための行動習慣
図
トップコンサルタントは問題や現状を掘り起こすために「自分なりの答えを用意する」
「相手に話してもら
う」といった行動習慣に基づいて仕事に当たっている
NIKKEI SYSTEMS 2011.3
39
Fly UP