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Ar イオンビーム照射法による液晶配向

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Ar イオンビーム照射法による液晶配向
Ar イオンビーム照射法による液晶配向
知能機械システム工学コース修士 2 年
量子ビーム研究室
学籍番号 1145041
寺内
0
晃
目次
1. 序論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
1.1
研究背景・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
1.2
研究目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
2. 原理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
2.1
ラビング法による液晶配向 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
2.2
イオンビーム法による液晶配向・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
2.3
液晶アクチュエータの駆動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
3. 実験装置・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
3.1
試料を加工するためのイオンビーム照射装置・・・・・・・・・・・・・・・・4
3.1.1
イオンビーム生成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
3.1.2
イオンビーム分析・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
3.1.3
イオンビーム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
3.2
配向確認用光学顕微鏡 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
4. 実験手順・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
4.1
液晶配向膜の作成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
4.2
イオンビーム照射・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
5. 実験結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
5.1
画像比較による配向の評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
5.2
液晶アクチュエータの性能評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
6. 考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
7. 結論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
8. 参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
9. 謝辞 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
10. 付録 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
10.1レータによるイオンビーム照射径の測定 ・・・・・・・・・・・・・・・13
10.2 ンプの不具合の修理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14
10.3 数値データ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15
1
1. 序論
1.1 研究背景
イオンビーム法は、特に微細なサイズの加工や改質に適しており IC 回路部品の製造など
に利用されている。イオンビーム法を用い、液晶の配向膜にイオンビームを照射すること
で液晶が配向することは現在までの研究で分かっている。[1] 現在までの研究に比べ高いエ
ネルギーを用いることにより、イオンビーム照射時間を短縮できないか検証した。[2][3]
配向とは図 1 の様に液晶が均一な方向性を持つことである。
図1
液晶の配向
1.2 研究目的
液晶配向で用いられる最も一般的な技術は、液晶の配向膜に直接ラビング布を用い擦り
つけることにより、液晶に方向性を持たせることができる。イオンビーム法は、本研究は
イオンビーム法を用い、イオンビームを配向膜に当て配向させる。配向膜に対して、非接
触のプロセスであるため、ラビング法とは違い、キズや静電気といったものを発生が尐な
い。また微細加工を得意とするイオンビームでは、非常に小さな液晶の配向膜の実現が期
待できる。
2. 原理
2.1 ラビング法による液晶配向
ラビング法とは、ラビング布を図 2 の様に回転させながら液晶の配向膜を直接擦りつけ
ることにより、液晶を流し込んだ時に、均一な方向性を持たせる技術である。この技術の
メリットとして、大面積の配向を得意とし、短時間での配向が可能である。しかし、ラビ
ング布が直接配向膜に接触するため、配向膜に傷や静電気が発生しやすいことである。配
向膜にできたキズは透過度の低下の原因となるため、その発生率は低いほど良い。
2
図 2 ラビング法
ラビング法の応用例として液晶ディスプレイや液晶アクチュエータなどがある。
2.2 イオンビーム法による液晶配向
イオンビーム法とは、図 3 の様に液晶配向基板にイオンビームを照射することにより、
ラビング法で配向処理をした時と同様の効果が得られる技術である。この技術のメリット
は、イオンビーム法は原子レベルのダメージのため傷や静電気の発生を抑えることができ
ることである。しかし、この技術のデメリットは、イオンビーム照射に時間がかかってし
まうために大面積の配向を得意としないことである。
図 3 イオンビーム法
現在までの研究では、イオンビーム法で液晶配向させることは成功している。参考文献[1]
からは、イオンビーム法で配向処理を行った基板に液晶を挟み、電場を印加することによ
り光の透過度が変化した(図(4a))。そして、電圧と光の透過度の関係をラビング法とイオ
ンビーム法で比較している(図(4b))
。[1] 現在までの研究で照射されたイオンビームの照射
条件をまとめると表 1 となる。この表より、現在までの研究では加速エネルギーは最大で
も 2.5keV であることが分かる。エネルギーが高いほどイオンビームのビーム速度が速くな
り、照射時間の短縮につながると考えた。
3
(a)
(b)
図 4 現在までに行われた研究[1]
表 1 現在までに行われた研究のイオンビーム照射条件
イオン
エネルギー(eV)
照射量(ions/cm2)
入射角(度)
[1]
Ar1+
60
1.0×1016
80
[2]
Ar
150
1.0×1017
45
[3]
Ar1+
2500
5.0×1016
1+
30 or
75
2.3 液晶アクチュエータの駆動
今研究では、液晶をアクチュエータ化させ駆動させた。液晶がアクチュエータとして駆
動するメカニズムを図 5 に示す。
図 5 液晶アクチュエータの駆動
下部のガラス基板を固定し、電場を印加することにより図 5 の様に下部ガラス基板は固
定され、上部ガラス基板は固定されていないため、矢印の方向へと上部ガラス基板は駆動
する。電場をパルス波として印加すると、上部ガラス基板が矢印の方向に連続的に駆動し
アクチュエータとして利用できる。アクチュエータとして駆動するには、基板間に挟まれ
た液晶が配向膜によって配向されていなければならない。
4
3. 実験装置
3.1 試料を加工するためのイオンビーム装置
イオンビーム装置は、図6のように大きく分けると3つの部分1.ビーム生成、2.分
析、3.照射からなる。この章では、各部分について説明する。
図 6 イオンビーム装置
3.1.1 イオンビーム生成
今回の実験で使用したイオン源は、PANNTECHNIK 社製のNANOGAN ION SOURCE
である。まず、図6の①で、ガス導入口からプラズマ生成室にイオン化物質を導入する。ガ
ス流量はガス導入口の流量調節バルブで調整し、イオンゲージ真空計でイオン源の真空度
の変化として測定する。プラズマ生成室では、電離作用によりプラズマが発生する。永久
磁石により、プラズマ生成室内にミラー磁場を発生し、ECR(Electron Cyclotron
Resonance)に必要な電子に回転運動を与える。マイクロ波導入口から、ECR に必要なマイ
クロ波を与える。マイクロ波のアンプ電源Xicom Technology社製XTRD-100H で、マイク
ロ波の周波数は10[GHz]である。
3.1.2 イオンビーム分析
イオン源から取り出したイオンビーム中には、様々な価数のイオンビームが存在する。
図7 のように扇型の分析磁石を用いることにより、目的の価数のイオンビームを取り出す。
分析磁石の励磁用の定電流電源として、日本スタビライザー社製SHP-20-2 (60[A])を使用し
た。この分析磁石を使って、イオンビームの軸を曲率半径r が0.25m で90°曲げた。
5
図 7 分析磁石によるイオンビームの価数選択
イオンビーム強度の計測のために、ファラデーカップを使用した。Ar¹⁺イオンが1 個イ
オン集極用カップに打ち込まれた場合、この電荷を中和するためにイオン集極用カップの
電子が1個移動し電流が流れる。この電流を測定すれば、イオンビーム強度を測定するこ
とができる。また、ファラデーカップにイオンが入ることで2 次電子が放出され、見かけ
上実際より大きな電流が測定される。この効果を抑制するために、サプレッサー電極を用
いて、2 次電子をイオン集極用カップに戻す。サプレッサー電極には、負のバイアス電圧
をかける。
3.1.3 イオンビーム照射
図8 は、イオンビームがコリメータ、サプレッサーを通り液晶配向基板に照射される様
子である。基板に照射した粒子数を測定し、ビーム強度を測定する。照射システムに入射
するビームに含まれる電子の影響を抑制するためアブゾーバを用いる。コリメータで照射
面積を決定することができる。イオンビーム照射による2 次電子の影響を抑制するために、
サプレッサーを用いる。試料台は回転し、入射角を変更することができる。
また、照射基板全体にイオンビームを照射するため、サプレッサー、コリメータを取り
外した状態でのイオンビーム照射も行った。この場合、2次電子の影響を抑制できないため、
正確な照射量は測定ができない。本実験では、この2種類のイオンビーム照射法を用いた。
図 8 基板へのイオンビーム照射と照射量の測定
6
3.2 配向確認用光学顕微鏡
液晶の配向を確認するために、光学顕微鏡を使用した。上部と下部に液晶基板を挟むよ
うに偏光板を置き、上部の偏光板は 0°下部の偏光板は 90°の向きに設定した。図 9 のよう
に、下からハロゲンライトで基板を照らし、偏光板、液晶基板を通過した光を、上のカメ
ラで撮影する。
0°
90°
図 9 光学顕微鏡による配向の測定
4. 実験手順
4.1 液晶配向膜の作成
まず、
サイズは 10mm×10mm 厚さは 0.3mm の上部ガラス基板と、サイズ 20mm×20mm、
厚さ 1.0mm の下部ガラス基板を用意し、
超音波洗浄を行い、
配向用ガラス基板を用意した。
次に、スパッタによりガラス基板表面に ITO コートを施した。ITO コートを施すことによ
り、ガラス基板に導電性を持たせる。最後に、ITO コートの上にポリイミドの配向膜用の
高分子膜をスピンコート処理によって施し(膜厚は 50~100nm)
、180℃で 10 分の焼成を
行った。
図 10
基板の作成
7
4.2 イオンビーム照射
作成した配向用基板に対して、表 1 のような 3 種類の照射条件で照射を行った。
表 1 イオンビーム照射条件
実験 A
実験 B
基板
ITO ガラス
配向膜
ポリイミド
Ar1+
照射イオン
実験 C
Ar1+
Kr1+
10
加速電圧(kV)
照射面積(mm2)
19.6(5mmφ)
400(20×20)
400(20×20)
照射量(ions/cm2)
1.0×1016
1.25×1013
2.0×1014
45
照射角度(°)
まず 1 つ目の異なる条件は、照射したイオンが実験A、実験Bでは Ar のイオンビー
ムを照射し、実験Cは Kr のイオンビームを照射した。次に、実験Aは図 11 の a のよ
うに、照射したイオンビームの径は 5mmφ で、実験Bと実験Cは図 11 のbのように、
ガラス基板全体にイオンビームが当たるように照射した。また、照射量も実験毎に変
更している。
a
図 11
b
オレンジ色の部分は照射された領域
8
4.3 液晶アクチュエータの駆動測定
液晶アクチュエータの速度を測定するために limovie 動画解析ソフトを用いた。液晶
の種類は 5CB で、基板と基板の間に挟むスペーサーは、25μm の物を使用した。この
上部と下部のガラス基板にパルス波をかけると、下部ガラス基板は固定されているた
め、上部ガラス基板だけが駆動する。この基板の運動を、光学顕微鏡をつかって動画
を録画した。この動画をもとに、図 12 のように、液晶配向基板のマークまたはキズを
目印に、x軸方向、y 軸方向の速度を測定することで上部ガラス基板の速度を、測定す
ることが可能である。
図 12
速度を測定する際に目印として使用したキズ
5. 実験結果
5.1 画像による液晶配向の評価
図 12 は、未処理とイオンビーム法の顕微鏡画像(図 9 を参照)を比較することによ
り、液晶の配向が出来ているか確認をした図である。未処理の画像は、画像全体にし
ま模様のように光が乱れている。この画像から流動配向はされているが、均一な配向
ができていないと考えられる。一方、イオンビーム法で配向処理した画像は光が均一
であり、均一な配向処理ができたといえる。
未処理
イオンビーム法
100μm
図 13
イオンビーム法による液晶配向の確認(倍率×10)
9
図 14 は、ラビング法とイオンビーム法を比較することにより、配向膜に生成される傷の
ちがいを測定した図である。
ラビング法は、50μm ほどの傷(赤く囲んだ場所)が多くみられ、
イオンビーム法にはそういった傷は、ほぼ見受けられなかった。このことからイオンビー
ム法よりラビング法は、キズの尐ない配向膜をつくることが可能であるといえる。
ラビング法
イオンビーム法
100μm
図 14
ラビング法とイオンビーム法の比較(倍率×10)
照射条件の異なる 3 種類の液晶基板を、画像による比較を行った。図 15 の実験 A は照射
面積が 5mmφ で、下部が黒くなった。これは、イオンビームの照射が多すぎて、ポリイミ
ドの膜が剥がれおちたためだと考えられる。実験 B はガラス基板全体にイオンビームを照
射し、イオンビーム照射量を減らした。しかし、この条件では照射量を減らしすぎたため、
液晶の方向性が均一ではなくなった。そこで、実験 C は実験 B よりイオンビーム照射量を
増やし、照射イオンを Ar から Kr に変更した。その結果、液晶の配向が基板全体で均一に
なった。
実験A
実験B
実験C
100μm
図 15
照射条件の違いによる比較(倍率×10)
10
5.2 液晶アクチュエータの性能評価
図 16 は、イオンビーム法で配向処理を行った液晶アクチュエータの周波数と速度の関係
をグラフ化したものである。このグラフから周波数が 50Hz の時に速度のピークを迎え、そ
こから周波数を上げていくと速度が減尐していっていることが分かる。
35
イオンビーム法
平均速度(μm/S)
30
25
20
15
10
5
0
0
100
200
300
400
500
周波数(Hz)
図 16
液晶の周波数と速度の関係
図 17 は、イオンビーム法の液晶アクチュエータとしての性能を評価するために周波数と
速度の関係をラビング法と比較を行ったグラフである。ラビング法は周波数が 150Hz のと
ころで速度のピークを迎える。イオンビーム法と同じように、周波数をさらに増やすと、
速度が減尐する。イオンビーム法とラビング法を比較すると、イオンビーム法はラビング
法に対して、アクチュエータの速度が及んでいないことが、この図からわかる。
ラビング法
140
イオンビーム法
平均速度(μm/S)
120
100
80
60
40
20
0
0
100
200
300
400
500
周波数(Hz)
図 17
イオンビーム法とラビング法のアクチュエータの速度の比較
11
図 18 は、イオンビーム法とラビング法の低い周波数での速度の比較である。低い周波数
ではイオンビーム法はラビング法に匹敵するアクチュエータとしての速度を得られた。
平均速度(μm/S)
40
30
20
10
0
0
5
10
周波数(Hz)
図 18
6.
低周波数での比較
考察
図 13 のイオンビーム法と未処理の比較から、イオンビーム法で液晶の配向処理が可能で
あるということがわかった。図 14 から、イオンビーム法はラビング法に比べ傷が尐なく、
より透過度の高い液晶配向膜をつくることができるといえる。図 16 のグラフからは、イオ
ンビーム法で配向させた液晶で、液晶アクチュエータとして駆動させることが出来ること
が分かった。また、50Hz の周波数で最大速度が得られたことが分かる。図 17 からはイオ
ンビーム法とラビング法を液晶アクチュエータとして比較すると、イオンビーム法はラビ
ング法には速度は及んでいないことが分かった。しかし、低い周波数を見てみると、ラビ
ング法に近い速度が得られていることが分かる。
7.
結論
現在までの研究より高い加速エネルギー(10keV)のイオンビームを用いても、イオンビ
ーム法で液晶配向は可能であることが分かった。
また、ラビング法と比較して、傷が尐なく鮮明な配向基板をつくることができ、液晶ア
クチュエータとしても、応用できる可能性があるといえる。今後、イオンビーム照射で実
験Cより高いイオンビーム照射量、またイオンビーム照射角度を変更しラビング法と同程
度の性能、もしくはそれ以上の性能の実現できると考えている。
また、イオンビーム入射角によって、液晶のプレチルト角が変化し、液晶アクチュエータ
の速度の向上につながると考えている。
12
8.
参考文献
[1] Phil Kook Son, Jeung Hun Park, Sung Su Cha, et al. APPLIED PHYSICS LETTERS
88,(263512)2006
[2] Jong-Yeon Kim, Byeong-Yun Oh, Byoung-Yong Kim, et al. APPLIED PHYSICS
LETTERS 92, (043505) 2008
[3] Hong-Gyu Park,1 Young-Hwan Kim,1 Byeong-Yun Oh, et al. APPLIED PHYSICS
LETTERS 93, (233507)2008
9. 謝辞
本研究を行うにあたって、協力、助言をくださった皆様に感謝します。研究に対する助
言を下さった百田 佐多生准教授に感謝します。液晶配向測定のための、光学顕微鏡や液晶
アクチュエータ測定装置を使用させて頂き、蝶野 成臣教授、辻 知宏准教授に感謝します。
本実験のイオンビーム照射を手助けしていただき前田 一樹氏、福井 博之氏に感謝します。
本実験の液晶測定のための、光学顕微鏡、液晶アクチュエータの測定を手助けしていただ
き、富山 皓史氏に感謝します。
10.
付録
10.1 シンチレータによるイオンビーム照射径の測定
プラスティックシンチレータでイオンビームの照射径を測定し、出来るだけ均一になる
ようにQレンズの電圧値を調整した。その際ビーム径の測定を妨げるサプレッサー、コリメ
ータは取り除いた。Qレンズにかける電圧は、0.1kVからイオンビームが確認できなくなる
まで電圧値を上げ、出来るだけイオンビームが、均一になる所を目視で確認し、その時の
電圧を記録した。Qレンズとは、イオンビームを照射する時に、加速エネルギーによってイ
オンビームの速度が違うため、イオンビームの照射径を調整する装置である。図18は、イ
オンビームの照射径が、最も均一になった時のQレンズ0.5kVの時の画像である。
13
図18
シンチレータによるイオンビーム照射径の測定
10.2 RFアンプの不具合の修理
イオンビーム装置の高周波(マイクロ波)をかけてプラズマを発生させる装置(RFアン
プ)が、実験中に高周波がかからなくなり、プラズマを生成できない事態が発生した。こ
の事態の原因として、2つの原因が考えられた。ダイヤフラムポンプの振動と、RFアンプに
かかる電気的なノイズである。まず1つ目に対処するために、ダイヤフラムポンプの設置部
分とダイヤフラムポンプの間にウレタン製の緩衝材を挟んだ。この結果からイオン源周辺
に発生していた振動を、大幅に抑えることができた。2つ目に対処するために、富士電子回
路保護機器製のTRAFY(ノイズキャンセリング装置)をRAアンプに装着した。この結果
RFアンプにかかる電気的なノイズを抑えることができた。以上、2つの対策を行った結果、
RFアンプの不具合が起こる頻度が大幅に低下した。
図19
ダイヤフラムポンプの振動の抑制
14
図20
ノイズキャンセリング装置による電気ノイズの低減
10.3 数値データ
表2 実験Cの照射条件
加速電圧(KV)
10
GAS(Pa)
3.0×10-3
RF アンプ出力(W)
40
Q レンズ値(kV)
0.8
FC1 電流値(μA)
6.8
FC2 電流値(μA)
0.65
表3 実験Cのカウントと時間
基板サイズ
目標カウント
目標時間
実際のカウント
実際の時間
20mm×20mm
75102
900
78442
899.8
10mm×10mm
75102
900
113741
899.8
表4 パルス信号の周波数と液晶アクチュエータの速度の関係(イオンビーム)
周波数(Hz)
平均速度(μm)
1
2.644411765
5
11.7888986
10
23.95143443
50
32.42655738
100
24.95663603
150
21.77507813
15
200
20.01902344
300
14.43676829
400
10.29614516
500
7.113132911
表5 パルス信号の周波数と液晶アクチュエータの速度の関係(ラビング法)
周波数(Hz)
平均速度(μm)
誤差
1
3.4
1.43147006
5
18.4
4.88258404
10
34.5
6.94208953
20
54.5
10.0150351
30
69.6
12.6615048
40
79.9
12.0222803
50
86.1
13.5874418
60
92.3
10.3620731
70
96
16.3571814
80
102.7
15.0325024
90
107.1
10.5667106
100
110.9
7.81369091
125
114
7.8303299
150
116.7
7.73716457
175
117.6
9.30664739
200
113.2
8.99049204
300
104.9
10.6524867
400
96
13.8162808
500
85.9
14.0949318
600
81.1
12.2956294
700
73.6
13.1161517
800
65.6
14.11993
900
54.2
17.5953944
1000
44.9
20.9694651
16
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