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タイ・バンコクにおける街路の構造特性と空間利用形態の関わりについて

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タイ・バンコクにおける街路の構造特性と空間利用形態の関わりについて
タイ・バンコクにおける街路の構造特性と空間利用形態の関わりについての調査・分析
-ソイ(路地)の空間利用特性について日大生産工(院) ○星原 真彦 日大生産工 坪井 善道
日大生産工(院) 渡邉 佳英 日大生産工(院) 渡邊 貞文 佐久間徹設計事務所 秋山 槙ノ介
1. はじめに
「バンコクの街路構造の特性に関する研究-スクン
ビットエリアにおける路地空間を対象としてその1,
その2,その3」注1)に引き続きソイの特徴を調査・
分析して行く。
とすると路地が行き止まりであることが多いため,
一度元の大通りに戻ってから行かなければならな
い。それはタイの道路構造が川の構造を模したも
のであると言われている為である(図1)。
2. 研究の目的
タイの街路構造の特性は世界的にみても稀な
街路構造である。タノンとソイと言うかつての水路
を思わせる街路構造は奥と言う場所性を造る。奥
の空間が生まれることより,奥に行けば行くほど地
元独自の生活行為を生む機会を増加させる可能
性を持っている。しかし,近年タイは交通事情の悪
さから交通基盤が整備され始めている。横ソイが
整備され始めている為にタイ本来の生活形態が
壊れて行く可能性がある。
本研究では,ソイの持つ独自性を明らかにするこ
とで街路構造によるタイ本来の生活形態の変化
を明らかにすることを目的とする。
3. 調査の方法
図1 タイの街路構造
5. 調査・分析
5-1 ソイの沿道施設構成《地上階》
まず下記の施設分類表に記しているように
施設をあらかじめいくつかに分類しソイの沿
道建築施設構成調査を行った(表1)。
Table2
表1 施設分類表
分類
まず,事前調査として市販のガイドブックを用い
てスクンビットエリアのソイの中の施設構成及びエ
リア分布の把握を行った。現地調査は,これらの
事前調査で得られたデータを基に,2008年9月
1日〜9月12日に実施し,写真撮影及び観察調
査を行い,各ソイの特徴や施設構成等について
の記録を行った。
宿泊施設
例示
ホテル,ゲストハウス
○
○
旅行代理店
○
△
○
○
娯楽施設
タイマッサージ,日本式マッサージ,スパ,タトゥー屋,カラオケ,デ
クラブ,風俗店,漫画喫茶,ゴーゴーバー,フィットネスジム
両替所・銀行
ATM,仮設両替所
○
飲食店舗
レストラン,ファストフード,カフェ,バー,パブ,スナック,ビアガーデン
○
△
買い回り品店舗
総合衣料品,婦人服,子供服,紳士服,靴・履物,鞄,電化製品,
イシルク),アクセサリー・貴金属・眼鏡・時計,香水,書籍,絵画,
インテリア・小物,キッチン用品,金物屋,ウェディング,お土産店
車展示場
○
○
サービス
美容院,ランドリー,写真・カメラ屋,自動車修理,印刷屋,ガソリ
ド,運送屋,レンタル店
コンビニエンスストア
その他の公共施設
前槁で述べたようにバンコクの街路構造は,世
界の中でも特殊な街路構造になっており,大通りと
その道に付属する小通りから形づくられている。
大通りから延びる路地から別の大通りへ抜けよう
現地居住者
凡例:○→利用度高 △→利用度中
インターネットカフェ
スーパーマーケット
4. バンコクの街路構造
外国人観光客
大使館,教会,美術館・博物館,郵便局,公民館,警察署
△
△
○
○
○
○
△
△
医療施設
総合病院,診療所,歯医者,整形外科
○
最寄り品店舗
薬局,花,パン屋,酒・調味料店,雑貨店
○
屋台食堂(外部開放型)食堂,店舗溢れ出し型屋台
○
オフィス
事務所,工場,アトリエ
○
塾
学習塾,ダンススクール,ピアノ,ハープ,語学スクール,クッキン
クール
○
学校
幼稚園,小学校,中学校,高校,大学,インターナショナルスクール
○
マンション
コンドミニアム,アパート,レジデンス
○
住宅
戸建て住宅,タウンハウス
○
Survey and Analysis of Relations of Structural Characteristic of Street Bangkok and Space Form of Use in Thailand
- Characteristic of Space Use on the SoiMsahiko HOSHIHARA Yoshimichi TSUBOI
表2 スクンビットエリアの施設構成表
soi1
宿泊施設
インターネットカフェ
旅行代理店
娯楽施設
両替所・銀行
飲食店舗
買い回り品店舗
サービス
コンビニエンストア
スーパーマーケット
その他の公共施設
医療施設
最寄り品店舗
屋台食堂(外部開放型)
オフィス
塾
学校
マンション
住宅
その他
溢れ出し(屋台)
溢れ出し(モーターサイ)
タクシー
空き地
シーロー
施設数
soi3
soi3/1 soi5
5
4
1
1
1
1
4
3
0
2
5 18
8 33
5
6
4
3
1
0
0
2
1
1
2
3
2
6
0
1
1
0
1
1
14
3
7 14
0
2
0 12
0
4
0
0
0
0
0
0
62 120
0
0
0
3
1
13
20
12
1
0
0
0
0
3
0
0
0
0
0
0
7
6
0
0
0
66
5
1
3
2
0
3
4
12
2
0
1
0
0
0
0
0
0
1
1
2
6
0
2
0
0
45
soi7
3
0
0
0
1
7
3
0
0
0
1
0
0
1
0
0
0
7
6
0
0
0
0
0
0
29
soi7/1 soi9
1
0
1
0
0
11
0
3
0
0
0
0
0
5
1
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
24
soi11 soi11/1soi13 soi15 soi17 soi19 soi21 soi23 soi25 soi27 soi29 soi31 soi33 soi33/1soi35 soi39 soi41 soi43 soi45 soi47 soi49 soi51 soi53 soi53/1soi55 合計
1 14
0 0
0 2
0 1
0 4
0 12
0 19
1 13
0 4
0 0
0 0
0 0
0 2
1 1
0 5
0 0
0 1
2 10
1 10
0 2
0 16
0 13
0 4
0 0
0 0
6 133
3
0
5
2
0
3
5
1
1
0
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
23
4
0
0
3
0
3
4
7
1
1
0
0
1
0
2
0
0
11
3
3
14
0
0
0
0
57
4
0
0
0
0
3
11
3
0
0
0
0
0
1
0
0
6
12
15
1
3
2
1
0
0
62
1
0
0
0
0
1
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
7
0
2
9
0
0
0
24
4
9
2
0
4
0
0
2
2
5
3
8
0
2
1
5 11 17
6 20 18
8 23 14
2
8
3
2
2
1
0
4
1
0
3
1
0
2
3
2 14
3
0
2
1
0
1
2
0
0
6
4
5 11
10
9 10
4 11 11
4 18 11
0
7
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
56 160 127
研究対象地のソイの沿道施設構成を把握す
るため,現地調査により施設の分類及び施設
数の集計を行った(表2)。
調査した施設構成をクラスター解析にかけ,ソイ
の分類を行った(図2)。
グループA
グループB
グループC
グループD
図2ソイの沿道建築用途(地上階)による樹形図
0
1
0
1
0
1
3
0
1
0
1
0
1
0
1
0
0
1
2
0
0
0
0
0
0
13
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
2
0
0
1
7
3
0
0
0
0
0
14
2
5
0
0
0
0
1
5
0
0
4 11
2 10
4
3
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
4
2
0
0
0
1
6
8 48
0
3
0
7
0
7
0
0
0
1
0
0
26 110
3
0
1
16
1
24
2
7
1
0
0
0
1
0
1
0
1
5
4
1
14
3
0
1
0
86
1
0
1
3
0
13
10
4
0
0
0
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
34
0
0
0
3
0
1
2
1
0
0
0
0
0
0
1
0
0
4
16
1
0
0
0
0
0
29
4
0
1
7
0
14
8
2
0
0
0
0
0
1
7
0
0
7
13
8
1
9
0
4
0
86
3
0
0
0
0
1
2
0
0
1
0
1
1
0
0
0
0
4
5
1
4
0
0
0
0
23
2
0
0
0
2
2
2
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
10
11
1
0
0
0
0
0
31
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
6
1
0
0
0
0
0
9
0
3
0
1
0
0
0
2
0
1
1
7
2 21
0 12
0
1
0
0
0
0
0
4
0
1
0 10
1
5
0
0
0
0
5 17
17 43
0
5
0
9
0
0
0
0
0 28
0
2
26 172
1
0
0
0
0
1
2
4
0
0
0
0
0
0
3
0
2
4
17
0
0
0
0
5
0
39
4
0
0
0
1
5
2
2
0
0
0
0
0
0
0
1
0
2
18
4
0
0
0
1
0
40
1
9
0
4
0
1
0 10
0 13
0 45
0 64
0 26
0
7
0
1
0
1
0
0
0 12
2 22
0 14
0
2
0
0
1
9
0 13
0 13
0
7
0 17
0
2
0 34
0 23
4 349
98
13
21
82
29
242
286
175
40
9
11
11
29
75
53
11
18
162
321
77
135
77
10
75
25
2085
表3 ソイに付属する袋小路の数
ソイに属する袋小路の数
soi1
soi3
soi3/1
soi5
soi7
soi7/1
soi9
soi11
soi11/1
soi13
soi15
soi17
soi19
soi21
soi23
soi25
soi27
soi29
soi31
soi33
soi33/1
soi35
soi39
soi41
soi43
soi45
soi47
soi49
soi51
soi53
soi53/1
soi55
5
4
0
0
0
0
1
4
1
2
3
1
4
10
5
1
2
1
28
9
1
8
43
5
3
1
1
1
5
15
1
44
5-2 ソイに付属する袋小路の数
5-3 写真分析
横ソイが整備されているソイとされていないソイを
調べる為に,ソイに付属する袋小路の数を調べた。
横ソイの整備されていないソイには,タイ本来の生
活行為が残されている可能性が高い。その結果
ソイ31とソイ39とソイ49が他のソイと比較した結果
明らかに多いことが分かった(表3)。
写真からタイ本来の生活行為が発生されている
思われるソイとされていないソイを分類。その結果
ソイ1とソイ13とソイ31とソイ39とソイ49の写真から
観光向けの屋台ではなく,地元の人が活用する屋
台が多くあることや観光客の姿が見られないこと
からタイ本来の生活空間であることが窺える。
下記の写真を見比べてみてもソイ3とソイ55の特
徴は他の先進国とあまり変わらないソイであるの
に対し,ソイ1とソイ31とソイ39とソイ49はソイを日常
生活の共有空間として使い,タイ本来の生活行為
が見られる(図3〜8)。
図9ソイ31のパクソイ
図3 ソイ3
図4 ソイ55
図11ソイ49のパクソイ
図5 ソイ1
図10 ソイ31のタイソイ
図12 ソイ49のタイソイ
図6 ソイ31
5-5 各ソイの施設構成の傾向
図7 ソイ39
図8 ソイ49
5-4 パクソイとタイソイの比較
下記の写真を比較してみても,パクソイ注2)とタ
イソイの違いは明らかである。
パクソイはタノンと接続している為,公共性の高い
場所となりタイ固有の生活行為が発生する場所と
しては,可能性の低い場所である。しかし,タイソイ
注3)はパクソイからある程度の距離があり奥と言う
場所に位置し,プライバシー性の高い場所となりタ
イ本来の生活行為が発生する場所として可能性
が高い(図9〜12)。
下記にソイ49の施設分布表を表記する。この施
設分布表はパクソイからタイソイに向けての施設
分布表である。この施設分布表を見てもパクソイ
からガンソイ注4)の間はオフィス等の生活行為に
直接関わる機能でない施設が多くを占める。ガン
ソイからタイソイに向かう程が生活行為に直接関
わらない機能が減り住宅や最寄品店舗等の地元
住民が日常生活で利用する施設がパクソイから
ガンソイよりもタイソイに向かう程集まっている。地
元住人が利用する屋台(観光客向けのおみやげ
品等ではなく、野菜やお惣菜等を中心とした最寄
品)にしてもタイソイに向かう程その数は増加す
る。
地元の人の生活に関わると思われる住宅,マン
ション,屋台(外部開放)溢れ出し(屋台)最寄り品
店舗等のパクソイからガンソイとガンソイからタイソ
イの割合が左右とも訳40%対60%となり,そのデ
ータを見るとタイソイに向かう程奥的性格が高くな
る為プライバシー性の高い空間となり,タイ本来の
生活空間として機能しているとい言える(表4,5)。
表4 ソイ49の施設構成表(右側)
表5 ソイ49の施設構成表(左側)
参考文献
6 まとめ
クラスター解析と写真分析とソイに付属する袋小
路の数の相互関係を見ると,袋小路の数の多いソ
イ31と39と49はクラスター解析のグループAに位
置し,地元住民が活用することの多いソイのグル
ープに属する。写真分析の結果からもソイ31とソ
イ39とソイ49は庶民的雰囲気を持つソイとして見
れることから,まだ道路整備がされ尽くしていない
ソイにはタイ本来の生活行為が営まれていると推
測できる。
また,パクソイとタイソイの比較をした所タイソイの
方が地元住民が活用する施設が多く写真分析か
らもタイソイの方がタイ本来の生活空間が発生し
ている場所として言えるだろう。
タイの道路事情が悪い為に道路を整備して行く
のではなく,タイ特有の街路構造によるタイ固有の
生活行為を損なう可能性がある為,ソイ固有の空
間利用形態を残すことも考えた都市計画が手法
の検討も必要である。
1)下川裕谷 ,「バンコク迷走」 双葉文庫2003
2)D17 地球の歩き方 タイ 2008~2009 (地球の
歩き方 D 17) 地球の歩き方編集室 (著)
3)バンコク・チェンマイ・プーケット生活ガイド タイ
現地生活文化会 (著)
4)極楽タイの暮らし方 梅本 昌男 (著), 岡本 麻
里 (著)
5)横山宏治,安田綾香,古谷誠章,田中智之,
「多様な交通手段と居住空間の関連についての
研究 その1 陸上交通」,日本建築学会大会学
術講演梗概集,1999
注
1)「バンコクの街路構造の特性に関する研究-スクンビットエリア
における路地空間を対象としてその1,2,3」 星原 真彦 坪井
善道 渡邉 佳英 渡邊 貞文 日本建築学会学術講演概要集
2008 2)パクソイとはソイとタノンの接続部分 3)タイソイとはソイ
の一番奥のことを言う
4)ガンソイとはソイの真ん中の部分のことを言う
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