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学習・教育到達目標の 達成度の総合的評価の原理と

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学習・教育到達目標の 達成度の総合的評価の原理と
2015夏 JABEE審査員研修会 講演資料
学習・教育到達目標の
達成度の総合的評価の原理と、
具体的な実施法
(参考事例)
東京電機大学
工藤一彦
1
「プログラムの目標」の
達成度の総合的評価法
達成度の総合的評価の目的は、プログラムが設定した学習・
教育到達目標を、プログラム修了時点で履修生全員が身に
付けていることを確認することにある。
以下に示す達成度の総合的評価法は、その目的を達成する
ための一例であり、目的達成の方法はこれに限定されるもの
ではなく、またこれでなければJABEEの認定を得られないこ
とを意味するものでもない。
今回の例を参考にして、各プログラムの実態に応じて創意工
夫することが期待される。
2
日本技術者教育認定基準(共通基準)における
学習・教育到達目標の達成度の総合的評価に関連する項目
基準1 学習・教育到達目標の設定と公開
(2) ・・・、プログラムの修了時点の修了生が確実に身に付けておくべき知識・能力として学習・
教育到達目標が設定されていること。
(プログラムの目標設定)
基準2 教育手段
2.1 教育課程の設計
(1) 学生がプログラムの学習・教育到達目標を達成できるように、教育課程(カリキュラム)が
設計され・・・ていること。また、カリキュラムでは、各科目とプログラムの学習・教育到達目
標との対応関係が明確に示されていること。
→ カリキュラムマップ (プログラムの目標と科目の目標の対応)
(1) カリキュラムの設計に基づいて、科目の授業計画書(シラバス)が作成され・・・ていること。
シラバスでは、・・・、その科目の教育内容・方法、到達目標、成績の評価方法・評価基準が
示されていること。・・・・。
→ シラバス (科目の目標とその評価法設定)
基準3 学習・教育到達目標の達成
(1) シラバスに定められた評価方法と評価基準に従って、科目毎の到達目標に対する達成度
が評価されていること。
(科目の目標達成度評価)
(3) プログラムの各学習・教育到達目標に対する達成度を総合的に評価する方法と評価基準
が定められ、それに従って評価が行なわれていること。(プログラムの目標の達成度の総
合的評価)
(4)修了生全員がプログラムの全ての学習・教育到達目標を達成していること。
3
課題、科目、プログラムの目標の相互関係
課題
目標達成度評価の
最小単位
各科目のシラバス
レポート、問題解決、作
品、討論、プレゼン・・・
課題(1)
科目1
(課題の目標) 科目毎の目標達成度
評価の実施
目標A11
目標B11
課題(2)
目標C11
目標D11
課題(3)
目標B21
目標E21
課題(4)
目標B22
目標F21
科目2
各レベルでの
コミュニケーション
能力の目標(例)
プログラムの目標
科目の目標
レポートの文章
が正確
プレゼンが分り
やすい
目標A1
目標B1
目標C1
目標D1
目標B2
目標E2
目標F2
修了生全員が、全目
標を設定水準以上で
身に付けていること
プカ
ロ リ
グ
ラキ
ムュ
とラ
科
目ム
のマ
目
標ッ
のプ
対
応
開発したロボットの独
創性を正確に表現で
き、それを他人に理
解させることができる
目標A
目標B
目標C
目標D
目標E
目標F
自分の考えを正確に表
現できる。
それを他人に理解させ
ることができる。
4
複数の学習・教育到達目標を育成する科目における、
目標毎の達成度評価に関する基本的考え方
 卒業論文で「専門知識とその応用能力」育成以外に、「コミュ
ニケーション」「問題解決」「デザイン」「自主的学習」などの人
間力を育成するカリキュラムの場合、これら複数の目標が卒
業論文の審査で個別に評価されていなければならない。
 これらの評価の結果、その科目の全ての目標が設定された内
容・水準で達成されることで、その科目の合否を決定している。
卒論審査が、専門知識とその応用能力に関する審査のみで行わ
れ、人間力に関する評価が行われないまま合否が決定されてい
る場合、卒論が合格だからと言って、卒論で育成することになっ
ている人間力に関する目標が達成されたことにはならない。
5
科目の成績のつけかたと、目標達成度の評価法
(複数の学習・教育到達目標を育成する科目)
 科目の学習・教育到達目標は、その科目の課題で育成される目
標以外に、科目全体で育成される目標がある。 (下記目標A,B)
(下記目標C)
 科目の学習・教育到達目標の達成度は、課題の目標達成度評
価と、これとは独立の科目の目標達成度評価を交えて評価。
 課題目標達成度および科目全体で育成する目標の達成度は
ルーブリック等を用いて評価する。
科目の成績は、最終的には合否あるいは成績点でつける。
科目の各目標の達成度を個別に評価し、それを成績評価に組み込むことが必要。
課題: レポート、
作品、討論内容・・・
PBL科目
課題(1)
例:最終レポート
課題(2)
例:作品
課題の目標
目標A
目標B
目標B
科目の目標
目標A
例:文章作成能力
目標B
例:問題解決能力
目標C
例:チーム活動能力
ルーブリック等で評価
6
目標を達成できるシラバスを
作成するための授業計画の例
授業時間内学習内容
(各コマの内容と課題)
【講義と実演】ガイダンス,ディジタル画像処理入門、
eラーニングシステム「ムードル(Moodle)」
【講義と実演】ディジタル画像処理基礎,Visual C#の
プロジェクトとクラス、資料調査法
【PBL コンピュータ実習】ディジタル画像処理基礎、
Visual C#によるプログラム作成法
授業時間外
学習内容
・PBL教育の意義学習
・Moodle の使用と基礎演習
・教科書の疑問点の発見
各コマで育成する目標
①
②
③ ④ ⑤
(1) (2) (1) (2) (3) (4)
自 プ 口
専
チ 問
主 ロ
頭 文 自
知門
ー
ジ
メ
コ シ 章学 主
的
題
識・
ン ミョ コ 習 的
専 独 ム 解 能 ・継 ン ェ
活
トク ュン ミ
・
ス 門 創 動 決 力 続能 ト 能 ニ 能 ュ 能 ・
継
力ケ ニ
性
キ基
・
能
力続
的
力
力
能
マ
ケ
ー
ル礎
学 ネ シ ー 的
力 力
の
習 ジ ョ
○
評価対象・
提出物(配点)
合計60点以上合格
各提出物で
評価する
教育目標番号
○
○
○
・演習問題(プログラムを含む)の提出
【PBL コンピュータ実習】Visual C#によるWindowsプロ ・演習問題(プログラムを含む)の提出
グラミングのコンピュータ実習
【講義と実演】濃度変換:ヒストグラムの変換処理プロ
・演習問題(プログラムを含む)の提出
グラム、プログラム開発環境の説明
【PBL コンピュータ実習】テスト画像作成:色データ、
・演習問題(プログラムを含む)の提出
画像ファイルのデータ構造,ツール,入出力
【講義と実演】発表用スライド見本説明,昨年度作成 ・担当の章のプログラム理解と問題点
の発見
のシステム例説明、発表テーマの選定
【特別講演:企業におけるシステム開発】卒業生が多 ・ 企業でのシステム開発の進め方と求
める人材像に関する個人レポート
数働く会社の開発部長による講演会
【コンピュータ利用PBL】担当部分のコンピュータ実習 ・担当の章のプログラムの理解と
問題・ 改良点の発見
と問題発見、グループ討論
・プロジェクト計画書(個人)作成
【コンピュータ利用PBL】各自作成のプロジェクト計画
書を基に、問題点整理と実現法検討、作成システム ・改良システム実現のプログラム作成
決定、プログラム作成、グループ討論、スライド作成 ・発表用スライド作成
【発表会】グループで作成したスライドによる発表会:
・発表用スライドの編集発表練習
各グループ説明,質疑応答
○
演習問題の解答
(5点x4回=20)
①-(1)
○
○
○
○
○
○ ○ ○
○
○
○ ○ ○
○
○
システム開発の仕事レ
ポート(5点) ⑤
プロジェクト計画書(5
点)②-(4)
チーム発表相互評価
○
(10点x2項目=20)③,①-(2)
筆記試験(20点)
①-(1),②-(2)
【定期試験】専門・基礎知識・問題発見解決に関する
・授業内容の復習
筆記試験
・個人最終レポート作成
【評価】グループメンバーの相互評価
最終レポート
○
(10点+5点=15)②-(2),④
チームメンバ相互評価
(5点x3項目=15))
②-(3),②-(1),①-(2)
7
「プログラムの目標」に対する達成度の総合的評価法
プログラム全体の学習・教育到達目標の各項目の達成度を総合的
に評価するには、積み上げ方式と直接評価方式の2つの方法が考
えられる。
① 積み上げ方式
 各科目の目標(各科目で育成する知識・能力)を足し会わせると、
プログラムの目標(修了時に身に付けているべき知識・能力)に
なるように設計されている。
 したがって基本的には、プログラムの目標の各項目の達成度は、
各科目の目標達成度を、目標の項目毎に重み付けして集計する
ことで評価可能である。
 ここで、科目の目標の合計とプログラムの目標との一致は完全
ではない可能性があるので、各科目の評価の合計として「積み
上げ方式で求めたプログラムの目標の達成度の総合的評価結
果」は、次項の直接評価方式で示すような手段を用いて、その妥
当性を最終的にチェックしておくことが望ましい。
8
「プログラムの目標」の達成度の総合的評価法
① 積み上げ方式実施の際の注意点
積み上げ方式では、「プログラムの目標」の各項目の総合的達成度
は、各科目の目標の項目毎の達成度を足し合わせて求めている。
 したがって、科目の目標の合計がプログラムの目標、あるいはそ
れ以上になっていなければならない。
 これが満たされない項目については、「②直接評価方式」を併用
する必要がある。
「プログラムの目標」の各項目の達成度の総合的評価の信頼性は、
各科目での項目毎の目標達成度の評価の信頼性に依存している。
 このため各科目の成績評価では、合否あるいは成績点だけでなく、
その科目の全ての目標について、個別に達成度を水準も含めて
評価していなければならない。
9
「プログラムの目標」の達成度の総合的評価法
② 直接評価方式
 「プログラムの目標」の各項目の達成度を、各科目の目標達
成度評価とは独立に、ルーブリック等で直接総合的に評価す
る方法。
 これは基本的には、卒業時点での「プログラムの目標」の各項
目の達成度を直接評価するための、ある種の卒業試験を実
施することに相当する。これには下記の方法が考えられる。
 TOEICや数学検定試験、あるいはPROGのような汎用的能
力測定用の外部試験、などのように、文字通りの卒業試験
と呼べる物の活用
 卒論や高年次のPBLのように、「これまで学んだ全てのこと
を活用して総合的な能力育成をはかる科目」をこの卒業試
験とみなし、カリキュラムの目標のかなりの部分の達成度
をこの中で評価する方法
10
「プログラムの目標」の達成度の総合的評価法
(課題の目標)
科目の目標
プログラムの目標
課題(1)
目標A
課題(2)
目標C
目標D
目標A
目標C
目標D
課題(3)
目標B
目標E
目標A
目標B
目標C
目標D
目標E
目標F
課題(4)
目標B
目標F
科目1
科目2
目標B
目標E
目標F
各科目の成績評価
合否あるいは成績点だけで
なく、その科目の全ての目標
各科目における
について、個別の目標毎に、
達成度を水準も含めて評価し、 目標達成度評価
これを科目の成績評価に組
み込んでいなければならない。
積
み
上
げ
評
価
方
式
 卒業試験による
目標達成度評価、
 それに類する科目で
の目標達成度評価
直接評価方式
プログラムの目標の
達成度の総合的評価
11
「プログラムの目標」の達成度の総合的評価法 まとめ
 実際には、「直接評価方式」と「積み上げ方式」のどちらかに限定
するのではなく、下記のような併用により、プログラムの目標全体
の達成度の総合的評価を実施すると、うまくいく場合が多い。
 卒論や高年次PBL(海外のCapstone Projectに相当)などや、卒業試
験を用いて、プログラムの目標の中の主要な汎用的能力(人間
力)の修了時点での達成度を直接評価方式で評価。
 これに含まれない知識・能力・スキルの評価は、これら以外の科目
の評価結果を用いた積み上げ方式による評価を併用する。
 卒業試験、卒論、高年次PBL等で直接評価する目標項目は、そ
れ以前の科目の中では、その科目の目標の達成度として評価し、
その科目の成績評価、科目の教育改善、学生の振り返り、には活
用するが、これらを積み上げてプログラム全体の目標の達成度を
評価することには用いない。
 またこの他、これらの評価の客観性確保のための、外部とのベン
チマーク、あるいは客観評価のための各種の外部試験などの活
用、が考えられる。
12
学習・教育到達目標の
達成度評価用ルーブリック
13
学習・教育到達目標の達成度評価用の
ルーブリックの標準形(4レベル)
ルーブリックの使用により、
目標達成度を水準も含めて評価できる。
評価水準(レベル)
評価項目
4(優)
3(良)
2(可)
学
習
・
教
1育
到
達
目
標
行動
特性
1
行動特性1に
関するレベル
4の記述語
行動特性1に
関するレベル
3の記述語
行動特性1に
関するレベル
2の記述語
行動
特性
2
行動特性2に
関するレベル
4の記述語
行動特性2に
関するレベル
3の記述語
行動特性2に
関するレベル
2の記述語
学
習
・
教
2育
到
達
目
標
行動
特性
3
行動特性3に
関するレベル
4の記述語
行動特性3に
関するレベル
3の記述語
行動特性3に
関するレベル
2の記述語
行動
特性
4
行動特性4に
関するレベル
4の記述語
行動特性4に
関するレベル
3の記述語
行動特性4に
関するレベル
2の記述語
1(不可)
• 評価者
• 評価時期
• 評価対象
行動特性1を誰
行動特性1に関
が、いつ、何を
するレベル1の
対象として評価
記述語
するか
行動特性2を誰
行動特性2に関
が、いつ、何を
するレベル1の
対象として評価
記述語
するか
行動特性3を誰
行動特性3に関
が、いつ、何を
するレベル1の
対象として評価
記述語
するか
行動特性4を誰
行動特性4に関
が、いつ、何を
するレベル1の
対象として評価
記述語
するか
14
4レベルのルーブリックの水準の考え方
レベル1:
期待した基礎レベルに達しておらず不合格
レベル2:
期待した基礎レベルには達していて合格(最低合格水準)
一部の定型的仕事は独立してこなせるが、特に意志決定、概
念構築などでは他人の支援が必要な場合が多い。
レベル3:
ほとんどの学生がここまで到達することが望まれるレベル。独
立して仕事がこなせ、まとまった概念の説明、構築、応用などが
できる。
レベル4:
基本的に期待される行動特性のレベルを超え、高い独立性、創
造性を示し、高度な批判的考察、変革ができる。
具体的なルーブリックの作成法は下記参照のこと
http://www.jabee.org/activity/symposium/
JABEE-日工教共催「国際的に通用する技術者教育ワークショップシリーズ 第3回」
 達成度評価法(2) ルーブリックの作り方 PDF
 学習・教育に関する達成目標の評価方法 PDF
15
エンジニアリング・デザイン能力、
チーム活動能力、
コミュニケーション能力、
の学習・教育到達目標と
その各項目の評価法
16
エンジニアリング・デザイン教育の定義と
学習・教育到達目標(=評価の観点)
2012年版JABEE個別基準
基準1(2)(e)
「種々の科学、技術及び情報を活用して社会の要求を解決
するためのデザイン能力」に関して、以下の観点を考慮して
学習・教育達成目標が設定されていること。
• 解決すべき問題を認識できる
• 公共の福祉、環境保全、経済性などの考慮すべき制約条件
を特定できる
• 解決すべき課題を論理的に特定、整理、分析できる
• 課題の解決に必要な、数学、自然科学、該当する分野の科
学技術に関する系統的知識を適用し、種々の制約条件を考
慮して解決に向けた具体的方針を立案できる
• 立案した方針に従って、実際に問題を解決できる
17
「チーム活動能力」の「評価観点」
 多様性が活用されているチーム: 「メンバーに多様性があり、そ
れが活用され」、「多専門分野のメンバーが協働している」チーム
の中で、
 チームワーク:他者と協働する際に、自己のなすべき行動を的確
に判断し実行する能力(メンバー能力)と、協働する際に他者の
取るべき行動を判断し、適切に働きかける能力(リーダー能力)
「多様性とその活用」が求められている理由は、「グローバル化され
た世界で活躍する際に必要となる、多様な文化・価値観・利害を有
する人々との対話能力と、広い専門分野の人々との協働作業の能
力」、の育成が目的となっているためである。
「チームの多様性」の例としては、「各種の多様性(男女、学年、専門、
年齢、職業、生産者・消費者、国籍、・・)あるメンバーで構成される
チーム」や、「目的とする能力が育成できる課題(チーム外部の多様
な人と対話することが必須となるような課題)(各種の多様性を考え
ることが必須となるような課題)を与えられたチーム」、などが考えら
れるが、これらに限定されるものではない。
18
「多様性が活用されているチーム」の「評価観点」
多様性の活用(自分の考えと異なる他の人々の多様な考え方を自分
の問題解決に役立てている)
 多様な背景を持った人々との有意義な意見交換を通して、自分と
は異なる多様な他者の考え方、自分が持っていない知識・経験を、
問題解決に使える形で理解している。
 これらの多様な考え方・知識・経験を自分の考え・知識・経験と有
機的に統合して複合的な問題解決に適用し、これにより、多様性
を活用しなかった場合に比べ、はるかに質の高い成果を得ている。
他専門分野の人との協働(他専門分野が問題解決にどのように役に
立つかを理解し、他専門分野の人に問題解決の一部を依頼でき
る)
 自分の専門以外の分野に好奇心と深い関心を持ち、その専門と
自分の専門との関係、その専門の特徴、その専門でできる事、な
どを体系的に理解している
 上記の他専門の理解をもとに、その専門の人に今のプロジェクト
の目標達成のためにしてもらいたいことをまとめ、依頼している。 19
「チームワーク」の「評価観点」
チーム内での自分の役割や責任を理解し、チームの目的を達成する
ための仕事ができる能力
(チーム内での建設的な議論の進め方や、好ましい人間関係作り)
メンバーシップ力
 議論を前進させるような、長所を明確にした提案の提出
 他のメンバーの意見を建設的に積み重ねたり統合したりすることによって、
チームのメンバーが話し合いに貢献することを促進する。
リーダーシップ力
 下記の実施により建設的なチームの雰囲気を支える
 礼儀正しく建設的なコミュニケーションを行うことで、チームのメンバーを丁
重に扱う。
 チームやその作業に対する肯定的な態度を伝えるため、肯定的な話し方、
表情、ボディーランゲージを用いる。
 課題の重要さや、それを遂行するチームの能力に対する自信を表明する
ことで、チームメートを動機づける。
 チームのメンバーに対して、支援および(もしくは)励ましを与える。
 チームの分裂、プロジェクトの頓挫などを引き起こす、チーム内での破壊的な
対立に直接言及し、その対立解消に取組み、解決することで、チーム全体の
結びつきや将来的なプロジェクト達成の確率を高める
20
人間力育成に関する主要な目標の
評価指標としての行動特性(例)
青字の学習・教育到達目標の達成度評価は、赤字の行動特性を
対象としたルーブリックによる評価を総合することにより実施
1. 種々の科学、技術及び情報を活用して社会の要求を解決するため
のデザイン能力
① 問題を分析し、真に解決すべき課題を、論理的に特定・整理・分析し、認識す
ることができる。(課題分析)
② 問題解決の過程で考慮すべき、公共の福祉、環境保全、経済性などの制約条
件を特定することができる。(制約条件特定)
③ 問題を解決できる複数のアイデアを、その理由をつけて提案できる。(問題解
決アイディア創出)
④ 課題の解決に必要な、数学、自然科学、該当する分野の科学技術に関する系
統的知識を適用し、種々の制約条件を考慮して解決に向けた具体的な方針を
立案することができる。(問題解決方針立案)
⑤ 立案した方針に従って、実際に問題を解決することができる。(問題解決作業)
⑥ 問題解決の過程で、既存の原理や知識を組み合わせて、新規の概念または
物を創り出すことができる。(独創性)
21
人間力育成に関する主要な目標の
評価指標としての行動特性(例)
青字の学習・教育到達目標の達成度評価は、赤字の行動特性を
対象としたルーブリックによる評価を総合することにより実施
2. チームで仕事をするための能力
① 他専門分野の人および異なる価値観を有する人、を含む多様性ある他者との
協働の中で、自分にない他者の知識・能力・スキルを問題解決に活かすことが
できる。あるいは自分の知識・能力・スキルを他者が問題解決に活かすことが
できるよう支援できる。(チームの多様性・多専門性を活用した能力の協働)
② 他者と協働する際に、問題解決のために自己がなすべき行動を的確に判断し、
実行することができる。(メンバーとしての役割認識)
 チームの問題解決の方向に向けた話し合いへの貢献
 他のメンバーの意見を集約することで他のメンバーがチームに貢献するこ
とを促進
③ 協働する際、問題解決のためにメンバーが取るべき行動を判断し、そのように
行動してもらうように働きかけができる。 (リーダーとしての役割認識)
 建設的なチームの雰囲気の醸成
 チーム内での対立解消への取組み
22
人間力育成に関する主要な目標の
評価指標としての行動特性(例)
青字の学習・教育到達目標の達成度評価は、赤字の行動特性を
対象としたルーブリックによる評価を総合することにより実施
3. コミュニケーション能力
①異なる専門・文化・価値観を持った人に対しても、きちんと自分の主張を言
葉で(文書で)伝え、理解してもらうことができる。(相手に伝える)
 伝達目的の理解:意味伝達の文脈,読者(聴衆),目的についての理解
 目的に応じた内容(素材、サポート資料)の選択とその論理的展開
 誤りのない構文と用語法
②異なる専門・文化・価値観を持った人に対しても、その人の主張を聞いて
(読んで)理解することができる。(相手を理解する)
③異なる背景(専門・文化・価値観)を持った人の主張も、その背景(文脈)を
理解し、時間を掛けて説得・納得し、妥協点を見出すことができる。
(主張のすりあわせ)
④ 量的表現(式、グラフ、図、表、文章)の意味を読み取れ、また自己の主
張を量的表現を用いて定量的に表現できる。(量的コミュニケーション)
⑤ 上記の能力をグローバルな環境でも発揮できる。
(グローバルコミュニケーション)
23
グローバル・コミュニケーション・スキルとはなにか
平田オリザ著 「わかりあえないことから―コミュニケーション能力とはなにか―」
講談社現代新書 2177 (2012.10.20発行) より
なぜいまグローバル・コミュニケーション・スキルが必要か
 社会の成長期には、上が決めたことに従ってがんばれば、みんなが幸せ
になったので、一致団結して事を進める「価値観を一つにする方向のコミュ
ニケーション能力」が求められてきた。(人はおたがいわかり合える、という
ことを前提) → ほぼ単一の文化・言語を有する日本が強い力を発揮
 社会の成熟期には価値観が多様化し、ばらばらな個性を持つ人間の集ま
りで社会が構成されるようになるので、多様な価値観に起因する相反する
意見の内容を一定時間内にすりあわせ、アウトプットを出す必要がある。
OECDの基本理念は多文化共生であり、どんな組織も、異なる文化、異なる
価値観、異なる宗教を持った人々が混在していた方が、最初は大変だが、
最終的には高いパフォーマンスを示す。
このために、「ばらばらな人間が、価値観はばらばらなままでうまくやって
ゆく能力」が求められる。 (人はお互いにわかり合えない、ことを前提)
→ 「文化を越えた調整能力」が求められる
(異文化理解力、 合意形成能力・人間関係形成能力)
24
日本人にコミュニケーション・スキルが欠けている理由
日本の子供達は家庭、学校で衝突を回避して、わかり合える人たち
の範囲でのコミュニケーションが続き、異文化コミュニケーションの
必要性を感じていない。
日本文化には価値観を同じくする者同士の「会話」はあるが、価値
観の異なる者の間で価値観をすりあわせる「対話」はなかった。
 会話:価値観や生活習慣等の近い親しい者同士のおしゃべり
 対話:あまり親しくない人同士の価値観や情報の交換。あるい
は親しくても価値観が異なるときにおこる価値観のすりあわせ。
2つの論理がすりあわされ、新しい概念が生み出され、両者と
も変る。
 ディベート:2つの論理が戦って、片方が勝つと、他方は意見を
変えて他方に従う。
日本文化は「わかり合う文化」「察しあう文化」であった。
ヨーロッパは、異なる宗教や価値観が隣り合わせるため、何でもき
ちんと他者に言葉で説明できなければ無能の烙印を押される社会
で、「説明しあう文化」である。
25
グローバル・コミュニケーション・スキル
育成のために何が必要か
日本の「わかりあい、察しあう」コミュニケーション文化は世界の少数派
であり、欧米とつきあおうとすると、前述の「説明しあってすりあわせる」
対話のスキルを身につける必要がある。人格まで変えると言うことでは
なく、これはスキル・慣れだと割り切って考えて、習得することが重要。
 対話の基礎体力を付ける
異なる価値観に出くわしたとき、物怖じせず、卑屈にも尊大にもならず、粘り
強く共有できる部分を見つけ出して行くことを教える。→多様性がありそ
れを活用しているチーム活動の必要性
なんとしても自分の意見を「伝えたい」という意欲を持たせる
「つたわらない」経験を多く持たせる。=自分と価値観やライフスタイルが違
い、話が伝わらない「他者」と接触する機会をシャワーをあびるように増やす
必要がある。→多様性がありそれを活用しているチーム活動の必
要性
 従来、社会や家庭で無意識のうちに経験したことを、公教育の中
に組み込む必要が出てきた
従来の社会・家庭の役割を代替する参加型、体験型の授業で、社会・世界で
出会うことになる「現場」を作り出す必要がある。
→PBLの必要性 26
繰り返して強調したいこと
達成度の総合的評価の目的は、プログラムが設定した学習・
教育到達目標を、プログラム修了時点で履修生全員が身に
付けていることを確認することにある。
以下に示す達成度の総合的評価法は、その目的を達成する
ための一例であり、目的達成の方法はこれに限定されるもの
ではなく、またこれでなければJABEEの認定を得られないこ
とを意味するものでもない。
今回の例を参考にして、各プログラムの実態に応じて創意工
夫することが期待される。
27
Fly UP