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知的財産報告書 2013
2013年8月 Intellectual Property Report 知 的 財 産 報 告 書 2 0 1 3 2012 年 4 月 ∼ 2013 年 3 月 目 次 ごあいさつ 1.中核技術と事業モデル 3 2.重点戦略分野と事業戦略の方向性 3 3.重点戦略分野と知的財産の概略 4 4.技術の市場性、市場優位性の分析 5 5.研究開発・知的財産関係図、研究開発協力・提携 6 6.知的財産の取得・管理、営業秘密管理、技術流出防止に関する方針 7 7.ライセンス関連活動の事業への貢献 7 8.特許群の事業への貢献 8 9.知的財産ポートフォリオに対する方針 9 10.リスク対応情報(権利行使の状況) 10 知 的 財 産 報 告 書 2 0 1 3 ごあいさつ カネカグループの知的財産報告書2013を発行する にあたり、一言ご挨拶申し上げます。 カネカグループは、2009年9月に長期経営ビジョン 「KANEKA UNITED宣言」を策定し、 「先見的価値 共創グループ」 “Dreamo l ogy Company” として世界 市 場で 存 在 感 のある真 のグロー バ ル 企 業を目指して おります。 わ が 国 経 済 は 、円 高 の 修 正 や 株 価 の 上 昇 が 進 み 、 デフレからの 早 期 脱 却 へ の 期 待 感も高まりつ つ あり ます 。このような状 況 のなかカネカグル ープとしまし ても、長 期 経 営ビジョンの実 現に向けて、更なる事 業 構造の変革を進め、早期に成長軌道への回帰をはかる 所存です。 事 業 構 造 の 変 革を成し遂げ るには 、戦 略 的な知 的 代表取締役 社長 財 産の創 造・保 護・活 用が必 須であります 。事 業 戦 略・ 菅原 公一 研 究 開 発 戦 略・知 的 財 産 戦 略 が 三 位 一 体となった 経 営 戦 略 の 遂 行 および 知 的 財 産 ポートフォリオ 管 理 の 充 実を基 礎として 、知 的 財 産 の 価 値・質 の 向 上 、海 外 における知的財産力の強化に一層注力してまいります。 知 的 財 産 報 告 書2013を通じて 、当 社 の 知 的 財 産 活 動に対 する皆 様 のご 理 解を深 め て い ただき、一 層 のご支援を賜りますよう心からお願い申し上げます。 2013年8月 1 知 的 財 産 報 告 書 2 0 1 3 先見的価値共創グループ (Dreamology Company) 健康に貢献する 地球環境に貢献する 事業群 事業群 食に貢献する くらしに貢献する 事業群 情報化社会に貢献する 事業群 事業群 環境・エネルギー 情報通信 健 康 食料生産支援 化成品 ライフサイエンス 機能性樹脂 食 品 機能性食品 医薬品 医療用カテーテル 血液浄化システム 反応性ポリマー モディファイヤー(樹脂改質剤) 耐候性アクリルフィルム の 5つ の事 業 領 域 か性ソーダ 塩化ビニール 合成繊維、その他 食品 パン酵母 電線技術 紡糸 ビーズ発泡 押出発泡 樹脂成形 フィルム成形 精密加工 ] 場 メ ント 中 】 【源泉 ジー 【シ ナ 技 術 展 固 】 有 技 術 【複 合 化 】 製 品 群 [複 成 長 市 無機材料技術 真空薄膜形成技術 核 化学 エレクトロニクス 薄膜太陽電池 眼 経 営 開 [ 高分子 技術 技術 発酵 技術 グ セ 業 事 ] 事 業 展 開 2020 図1 カネカの技術と事業の展開 2 化し たビ ジネ スモ デ 超耐熱性ポリイミドフィルム 光学用フィルム 電子材料 高分子加工技術 [進 分子設計技術 オリゴマー合成 重合 共重合・グラフト アロイ・ブレンド ル] 発泡樹脂製品 発泡包材 断熱建材 4つ の重 点戦 略分 野 食品加工 有機合成 酵素反応 油脂改質 菌体成分利用 分離膜・吸着制御 将来 アクリル系合成繊維 ニューバイオ技術 知 的 財 産 報 告 書 2 0 1 3 1. 中核技術と事業モデル カネカは創業以来、高分子技術と発酵技術を中核技術 しており、これを「複眼経営」と呼んでいます。その上で、 として技術展開(図1)をはかってきました。そしてこの 顧 客 の 視 点 にた つこと、原 料 から販 売 に 至 るまで の 多様な固有技術とそのシナジー効果によって、スペシャ バリューチェーン、グローバル化などの視点から、事業や リティーの高い製品群を創り出してきました。 製品によって、環境変化に柔軟に対応したビジネスモデ カネカは、多様な技術力とビジネスモデルを新しい ルを構築していきます。 発想で組み合わせ、複合化して新しい事業領域を創造 2. 重点戦略分野と事業戦略の方向性 重点戦略分野、現在の事業セグメント、および将来の へと進化させます。 事業群への展望を図1に示します。 2020年 には 新 たな事 業 領 域として「 地 球 環 境 に 2020年に向け てカネカが重 点 的に資 源を投 下し 貢献する事業群」、 「健康に貢献する事業群」、 「食に ていく重点戦略分野を、 「環境・エネルギー」、 「健康」、 貢献する事業群」、 「情報化社会に貢献する事業群」、 「情報通信」、 「食料生産支援」の4つとします。これらの 「くらしに貢献する事業群」の5事業群とする計画です。 分野は今後成長する市場であり、またカネカとして社会 2012年度のカネカグループにおける研究開発費の に貢献できる領域です。 総額は214億円です(図2)。そのうち4重点戦略分野 現在「化成品」、 「機能性樹脂」、 「発泡樹脂製品」、 に75%・160億円を投入して事業開発を促進しています 「食品」、 「ライフサイエンス」、 「エレクトロニクス」、 (図3)。 「合成繊維、その他」の7つの事業セグメントがあります が、各々が重点戦略分野で新規事業の創出やM&Aを 通じて事業を拡大し、将来カネカは5つの大きな事業群 環境・エネルギー 基盤および その他 (億円) 250 200 億 200 214 億 25 % 183 億 食料生産 支援 150 研究開発費 2% 100 図2 214億円 19 % 24 % 50 0 30 % 2010 2011 情報通信 2012 (年度) 図3 研究開発費の推移(グループ) 3 健康 2012年度 重点戦略分野別 研究開発費(グループ) 知 的 財 産 報 告 書 2 0 1 3 3. 重点戦略分野と知的財産の概略 カネカの企業理念「人と、技術の創造的融合により 重点戦略分野では、国内はもとより発展著しいアジア 未 来を切り拓く価 値を共 創し、地 球 環 境とゆ た か な をにらんだグローバルな特許の出願・権利化を推進して 暮らしに貢献します。」の底流にあるものは持続的発展 います。 であり、それにはイノベーションが必要不可欠であり、 グループにおける2012年度の国内特許公開件数は それを下支えするのが知的財産(権)であると当社は 480件であり、 4重点戦略分野への出願は62%・298件 認 識して います 。この 基 本 的 認 識 のもと、事 業 戦 略 、 となっています(図4)。 研 究 開 発 戦 略と知 的 財 産 戦 略 が 三 位 一 体となって 、 さらには2013年3月末時点での国内特許保有件数は 研究開発型企業としての経営戦略を遂行しています。 2388件であり、そのうち4重点戦略分野は67%・1600 知的財産戦略の遂行に関わる基本方針は、重点戦略 件です。また外国特許保有件数は2420件であり、その 分野への注力、グローバル化の推進、グループ経営の うち4重点戦略分野は61%・1476件です(図5)。 強化、M&Aの推進に対応した体制を構築し、知的財産 ポートフォリオ管 理をベースに競 争 力ある事 業 展 開 、 新規事業創出に貢献することです。 環境・エネルギー 環境・エネルギー 基盤および その他 基盤および その他 17 % 22 % 38 % 39% 33 % 2012年度 国内公開件数 480 件 0.1% 20 % 1% 食料生産 支援 17 % 0.2% 19 % 食料生産 支援 健康 9% 27 % 23 % 35% 健康 情報通信 情報通信 図4 外円 外国特許 2420 件 内円 国内特許 2388 件 2012年度 重点戦略分野別 国内特許公開件数(グループ) 図5 4 2013年3月末 重点戦略分野別 特許保有件数(グループ) 知 的 財 産 報 告 書 2 0 1 3 4. 技術の市場性、市場優位性の分析 カネカは研究開発型企業を目指しており、全社員が ここでは4つの重点戦略分野に沿って、競争優位性や 社会に役立つイノベーションに取り組み、新技術開発 市場成長性を示します。 や技術強化により新製品・新市場を創出していきます。 当社は高変換効率の薄膜太陽電池・周辺事業をはじめとして、有機EL照明デバ イス、燃 料 電 池やリチウムイオン2次 電 池 向けの電 池 材 料など、環 境・エネルギー に関 する技 術や素 材を持っています 。また当 社は100%植 物 由 来の軟 質 性・耐 熱 性を有する世界初のバイオポリマー(カネカ バイオポリマー アオニレックス)、 軽 量 化・省エネをキーワードとする発 泡 樹 脂 製 品など、様 々なポテンシャルを持っ ています。さらに新規事業・既存事業を問わず、環境・エネルギーで貢献できる分野 環境・エネルギー を拡大します。 2012年度は、従来から販売している太陽電池に加え、防眩モジュール(反射光 の眩しさを抑えた太陽電池モジュール)を開発し、一般住宅向けとして2013年度 より販売をしております。また一般住宅向けの陶器瓦へ太陽光発電システムを設置 する工法を開発し2012年度より販売を開始しました。 当社では医療機器、医薬バルク・中間体、機能性食品素材事業を中心として、健康 分野の事業を進めていますが、M&A等も活用して事業を拡大していきます。また当社 の持っているバイオ技術や素材技術で、再生医療用デバイス、メディカルポリマー、 バイオロジクスおよび予防医療や介護に関わる材料などの事業により、新たな市場 健 康 や製品を創出していきます。 当社は血糖値をすみやかに下げる効果のある機能性食品素材として、小豆を麹 (こうじ)菌 由 来の酵 素で分 解した小 豆 酵 素 分 解 物( 小 豆 ペプチド含 有 )の開 発に 成 功し2012年 度から販 売を開 始しました。また抗 体 医 薬 品 精 製 用 資 材として 、 高い抗体吸着容量とアルカリ耐性を実現したプロテインAクロマトグラフィー担体を 2012年度より販売を開始しました。 当社は高分子技術を活用しLED照明などに使用されるオプトエレクトロケミカルズ、 小型化・高性能化していく機器において高熱に対する課題を解決できるサーマルソ 情報通信 リューション材料、透明導電性フィルム(ITOフィルム)などの情報通信に関する事業を 進めています。また当社のエレクトロニクス技術と超耐熱性ポリイミドフィルムや光学 フィルムなどの素材技術を進化させ、未来の社会を支える新規製品を創出していきます。 2012年度はベース樹脂を高熱伝導化し、少ないフィラー添加量で樹脂材料を 高熱伝導化する技術を開発しました。 当社には人口増加による食料不足問題に対処できる様々なポテンシャルがあり ます 。機 能 性 飼 料 素 材などの畜 産・養 殖 支 援 素 材や、植 物サプリメントなどの農 業 食料生産支援 生産支援素材を通じて、食料生産支援の事業を創出していきます。 安全性の高い酵母由来の「カネカ・コエンザイムQ10」は、国内外において、鶏、 豚、牛等の畜産用飼料原料として使用されており、2012年度はベトナムにおいて 畜産分野で販売を開始しました。 5 知 的 財 産 報 告 書 2 0 1 3 5. 研究開発・知的財産関係図、研究開発協力・提携 研究開発・知的財産関係図を図6に示します。カネカ 知的財産部は、社長直轄組織としてカネカグループ全 の研究開発体制は、社長直轄の5研究所で運営されて 体の知的財産戦略の構築や知的財産ポートフォリオの います。各研究所は事業セグメントの研究組織と機能的 管理を実施しています。また知的財産活動を効果的に に連携し、人・物・カネ・情報のR&D資源の配分、有効 推進するため、研究開発部門、事業セグメントそれぞれ 活用、シナジー効果の発現をはかり、各研究開発テーマ に知的財産ポートフォリオ管理者として知的財産委員を の推進に取り組んでいます。 配置しています。 社 長 合 成 繊 維 、その他 エレク トロニクス ラ イ フサイエンス 食 品 発泡樹脂製品 機能性樹脂 化成品 知的財産部 生産技術研究所 成 形 プロセス 開 発 セン タ ー 太陽電池 ・ 薄膜研究所 フロンティアバイ オ メディカル研 究 所 先端材料開発 研究所 ・ 研 究 開 発 部 門 図6 事 業 セ グ メ ン ト 研究開発・知的財産関係図 研 究 開 発 活 動におい ては、海 外 の 研 究 開 発 拠 点 の 症候群患者に対して症状の改善効果があることを確認 獲得・整備を含め、グローバルにオープンイノベーショ しました。 ンを展開しています。外部の技術を創造的に組み合わ 2012年10月より販売を開始している衝撃吸収パッ せて「R&Dの変革」を進めるとともに「生産の変革」と ド付きインナーウェア「カネカヒッププロテクター」の してプロセスイノベーションを進め、地球にやさしいプ パッドにおいて、名古屋大学の田中英一教授と芝浦工 ロセスを開発、提案します。 業 大 学の山 本 創 太 准 教 授との共 同 研 究を通して開 発 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の横田力男博士を した衝撃拡散性に優れる独自の形状を採用することで、 中心とする材料開発グループとの共同研究において、 衝撃吸収性と衝撃拡散性の2つの機能を付与すること 高分子膜材料として唯一宇宙機に利用されてきた耐熱 に成功しました。さらに、国立長寿医療研究センター病 性ポリイミドに、宇宙環境耐性を損なうことなく、新た 院の原 田 敦 副 院 長の協 力を得て、同 病 院での実 用 評 な特 性として 加 熱 融 着 性を付 与 することに 成 功しま 価結果を製品設計に反映させることで「ヒッププロテ した 。 クター」としての完成度を高めました。 大阪市立大学の渡辺恭良特任教授を中心とする疲労 研究チームと共同で、還 元 型コエンザイムQ10に、原 因不明の疲労や倦怠感等の症状が長期に続く慢性疲労 6 知 的 財 産 報 告 書 2 0 1 3 6. 知的財産の取得・管理、営業秘密管理、 技術流出防止に関する方針 カネカは 知 的 財 産 管 理 規 程を定 め て 、知 的 財 産 の 職務発明における相当の対価の額は、発明実績報償 創造・保護・活用の適正な実施に留意してきました。 規程に従い、過去3年間の経常利益・実施料収入を基準 知的財産の取得・管理に係る知的財産部の運営方針 として 、実 績 報 償 審 査 会 の 審 査により決 定して おり、 を「高品質・スピーディ・グローバル」と定め、外国特許 社内に公開しています。なお報償金の上限額は設けて の 権 利 化・活 用 の た め 体 制 強 化 を は か るとともに 、 おりません。2012年度はこの制度の実施年度にあた 知 的 財 産 管 理 シス テ ム に よる 知 的 財 産 業 務 の 全 社 り、58名の発明者に対し実績報償金を支払いました。 ワークフローを充実させてスピード化・書類管理強化・ 知的財産活動のグローバル化を促進するため、米州 業務効率向上をすすめています。 統括会社であるカネカアメリカズホールディングに知的 営 業 秘 密 の 管 理 は 、就 業 規 則 およびノウ ハウ 管 理 財産専任者を配置しました。 手続に加え、C S R 委員会で作成したコンプライアン ス・ガイドブックの社員への周知徹底により、実施して います。 優 れ た 発 明 の 創 出を促 進 するため 、優 秀 発 明 表 彰 制度を設け、出願2年以内の発明に対して質に重点を おいて表彰しています。2012年度は13件の優秀発 明を表彰しました。 7. ライセンス関連活動の事業への貢献 一般に知的財産権を取得・管理する主な目的は、 「自 しかしながら特 許 化され た自社 技 術 に 関 す る市 場 社事業からの利益の最大化」と「知的財産権による直 拡 大 に お い て 、ライセンスが 有 効 に 機 能 する場 合 に 接利益の獲得」とされています。 は柔軟に対処します。 カネカは「自社事業からの利益の最大化」を第一義 また一方では新規事業の創出に向けて、ライセンス とし、排 他 的 独 占 権 で ある特 許 権を利 用して 事 業を やクロスライセンスを活用したアライアンスの構築に 最有利に展開していきます。 も積極的に取り組みます。 7 知 的 財 産 報 告 書 2 0 1 3 8. 特許群の事業への貢献 カネカは 事 業セグメントごとに、幅 広 い 国 内 出 願 、 図7、8に示 すように、機 能 性 樹 脂 、ライフサイエン 事 業 展 開との 整 合 性を吟 味して 選 択した 外 国 出 願 、 ス、エレクトロニクスの 各セグメントの 国 内 特 許 公 開 およびそれらの権利化により事業へ貢献しています。 件 数 および 特 許 保 有 件 数 の 比 率が高 いものとなって また成 長 するアジア市 場に対 応した外 国 知 的 財 産 権 います 。 の強化に努めます。 また図9に示 すように、特 許 保 有 件 数は国 内 特 許 、 外国特許ともに、毎年増加しています。 化成品 合成繊維、その他 エレクトロニクス 化成品 合成繊維、その他 機能性樹脂 2%1% エレクトロニクス 6% 3% 機能性樹脂 4% 3% 22% 27% 26 % 2012年度 公 開 件 数 41 % 外円 外国特許 2420 件 内円 国内特許 2388 件 480 件 10 % 15 % 5% 18 % 発泡樹脂製品 31 % 27 % 14 % 7% 34 % 発泡樹脂製品 食品 食品 ライフサイエンス 図7 3% 1% ライフサイエンス 2012年度 事業セグメント別 国内特許公開件数(グループ) 図8 2013年3月末 事業セグメント別 特許保有件数(グループ) (件数) 6000 外国特許 国内特許 5000 4000 2354 3000 2420 2084 2000 1000 0 図9 1893 2128 2010 2011 2388 2012 特許保有件数の推移(グループ) 8 (年度) 知 的 財 産 報 告 書 2 0 1 3 当 社 は 、重 点 戦 略 分 野 の 研 究 開 発 テ ー マなど 重 要 とする多数の特許からなる特許網を形成しています。 テーマについては、強い特許網の構築を目指して戦略 現在国内外159件の多くの特許出願(うち登録件数 的な特許出願を行ってきております。 は国内42件、外国13件)を行っており、今後も情報通 特 許 網 構 築 の 一 例として 、サーマルソリューション 信分野での市場規模拡大に伴って顧客ニーズに合致 材料であるグラファイトシート「グラフィニティ」を紹介 した技術開発を強力に進めながら、競合抑止を意識し します。グラフィニティは高分子フィルムを高温焼成し た特許網を構築していきます。 て得られる高熱伝導性材料であり、従来型の天然グラ ファイトシートや 金 属(アルミニウム、銅 )に比 べ て優 れた熱伝導性を発現する材料です。 グラフィニティはスマートフォンや 携 帯 電 話などを 中 心とする情 報 通 信 分 野での技 術 進 歩に伴って要 求 される熱対策に好適な材料として、年々需要が拡大し ています。当 社は今 後 市 場でのグラフィニティの定 着 化を図ると共に、更なる売上拡大を期待しています。 グラフィニティはポリイミドフィルムを原料とした製品 です。当社では、ポリイミドフィルム製造販売メーカーと しての利点も活かした特長的なグラファイトシート技術 を武器に、高靭性能(日本国特許第4521478号)や 高熱伝導性能(日本国特許第4684354号)をはじめ 図10 超高熱伝導グラファイトシート (グラフィニティ) 9. 知的財産ポートフォリオに対する方針 当 社 は 知 的 財 産 の 創 造・保 護・活 用という知 的 創 造 また神 戸 大 学との包 括 連 携 協 定における共 同 研 究 サイクルを回すための機軸が、知的財産ポートフォリオ では、特許価値評価方法の開発を進めています。この 管理であると捉えています。 方 法は、自社 特 許を単に件 数で管 理 するのではなく、 カネカの場合、権利行使可能な強い特許をベースに 価 値 評 価 指 標を導 入して特 許の質の向 上につなげ て 事 業 収 益に貢 献 する強 い 特 許 網を構 築 することが 、 いくことを目的としています。さらには競合他社特許と 知的財産ポートフォリオ管理の要点です。 比 較 可 能 な 特 許 価 値 評 価 方 法 の 開 発を目 指して い 知的財産ポートフォリオ管理をより充実させるべく、 ます 。 2012年 度 に 新 た に 確 立した 知 的 財 産 教 育 体 系 に 基づく研修を実施しました。この知的財産教育体系に おいては、従 来の新 入 社員向け知 的 財 産 研 修や 特 許 明細書作成研修を刷新し、また営業系社員に対しても 知的財産入門研修を新設するなど、知的財産風土の醸 成、特許マインドの強化を図っています。 9 知 的 財 産 報 告 書 2 0 1 3 10.リスク対応情報(権利行使の状況) カネカ は 、他 社との 係 争 を 未 然 に 回 避 す る た め 、 ポリイミドフィル ム 製 品とそ の 製 造 方 法 に 関 す る 新 テ ー マ 提 案・事 業 化 提 案・仕 様 変 更 など の 節 目 で 当社米国特許権5件に基づく特許侵害訴訟(テキサス 特 許 調 査 を 必 ず 実 施し、パ テ ントクリア ランスを 確 州東部地区連邦地方裁判所、2010年7月26日提訴) 保して います 。また 必 要 に 応じて 外 部 専 門 家を活 用 は、その後、カリフォルニア州中部地区連邦地方裁判所 して 、総合 的な判断により万 全を期して います。 に移送されました。その追加的措置として当社が2011年 一 方 、他 社 による特 許 権 侵 害 行 為 や 模 倣 品 に 対し 4月1日に米国国際貿易委員会(ITC)に対して被疑侵 て は 、侵 害 訴 訟 の 提 起を含 め た 毅 然 たる姿 勢 で 迅 速 害品の調査及び輸入差し止めを申し立てたため、本特 に 対 処 する方 針 です。 許侵害訴訟は中断していましたが、調査終了に伴い、 2012年12月10日に再開され現在も係属中です。なお ITCは、特 許 の 有 効 性 及 び 特 許 の 侵 害を一 部 認 めた 還元型コエンザイムQ10に関する当社米国特許権 ものの 、当 社 特 許を用 いた当 社 の 米 国 内 産 業 の 存 在 1件に基づく特許侵害訴訟(カリフォルニア州中部地区 が充分に立証されていないとして輸入差し止めの申立 連邦地方裁判所、2009年10月6日提訴)は、被告が、 を退けました(2012年10月5日)。 当該特許が有効かつ権利行使可能であることを認める とともに、過去に当該特許を侵害したことを認め、今後 難 燃 性ポリエステル 系 人 工 毛 髪に関 する当 社 米 国 は米国内での販売等を行わないことに同意することを 特許権2件に基づく特許侵害訴訟(テキサス州北部地 条件として2012年11月1日に和解が成立しました。 区連邦地方裁判所、2010年7月20日提訴)は、現在 も係属中ですが、2013年6月28日に当社の主張通り 酸化型コエンザイムQ10の製造方法に関する米国 に被告の特許侵害と当社の被った損害を認める当社に 特 許 権1件に基 づき、米 国 国 際 貿 易 委 員 会(ITC)に 有 利な陪 審 評 決 が 示されました 。また 被 告 は 当 社 の 対して被 疑 侵 害 品の調 査 及 び 輸 入 差し止めの申立を 特許がいずれも無効であると主張していましたが、陪 行っていましたが、 ITCより2012年11月29日及 び 審員はいずれの特許も無効ではないと判断しました。 12月6日に、当社特許の有効性は認めるものの、侵害 の 立 証 は 不 十 分 で あ るとの 委 員 会 通 知 及 び 見 解 が 2013年7月末現在までにおいて、経営に大きな影響 示され、2013年1月末をもってこれが確定しました。 当 社 はこの 結 論に極 め て 不 満 であり、 ITC決 定 後に を及ぼすような当社グループに対する知的財産に関す 審 理 が 再 開され た 特 許 侵 害 訴 訟( カリフォル ニ ア 州 る訴訟は提起されていません。 中 部 地 区 連 邦 地 方 裁 判 所 、2011年3月22日提 訴 ) において、係争を続けています。なお一部被告が、テキ サス州 南 部 地 区 連 邦 裁 判 所に対して 、非 侵 害と当 社 特 許 の 無 効 の 確 認を 求 める訴 訟を 提 起し、こちらも 係属中です。 また酸化型コエンザイムQ10の製造方法に関する 当社欧州特許権1件に基づく特許侵害訴訟(パリ地方 裁判所、 2010年10月28日提訴、及びデュッセルドルフ 高等裁判所、2012年4月13日控訴)は、現在も係属中 です。 10 知 的 財 産 報 告 書 2 0 1 3 見通しに関する注意事項 この資料に記載されている当社または当社グループの業績見通し、計画、 方針、経営戦略、事実認識等、将来に関する記述をはじめとするすでに実現 した事実以外の事項は、当社が現在入手している情報に基づく予測、想定、 計画等を基礎として記載されるものです。 また予 測を行うにはすでに実 現した事 実 以 外に一 定の前 提を使 用してい ます。その前提については、客観的に正確である、あるいは将来実現すると いう保障はありません。その前提に影響を与える要因としては、技術や需要 の動向、競合状況、経済環境、為替レートの変化等があります。 開示にかかわるポリシー 当社は、将来の不確定性の大きな事項、ならびに重要な戦略の詳細につい ては、開示を行わない方針を堅持しております。したがってこの資料には当該 事項は開示されていません。 以上 株式会社カネカ ■ 大阪本社 ■ 〒530-8288 大阪市北区中之島2-3-18(中之島フェスティバルタワー) T E L(0 6)6 2 2 6 - 5 0 5 0 FA X(0 6)6 2 2 6 - 5 0 3 7 ■ 東京本社 ■ 〒107-6025 東京都港区赤坂1-12-32(アーク森ビル) T E L(0 3)5 5 7 4 - 8 0 0 0 FA X ( 0 3 ) 5 5 7 4 - 8 1 2 1