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5 浦和商業開発株式会社
第5 Ⅰ 1 浦和商業開発株式会社(以下、浦和商業開発とする。) 浦和商業開発の概要 浦和商業開発の目的 浦和商業開発は、昭和 53 年に着手した「浦和駅西口市街地改造事業」で、商業ビル「コ ルソ」の管理運営を行う会社として昭和 54 年4月4日に設立された。 (設立目的) (1) 土地の合理的な高度利用により、駅前広場を拡張整備し、交通体系の円滑化 を図ることによって都市機能を増進する。 (2) 改造ビルを商業振興の拠点とすることによって、公共施設と商店街の一体的 な近代化を図り、浦和駅西口を名実ともに県都の表玄関にふさわしい姿にする。 2 事業の種類 定款にて次の事業を営むことを目的に定めている。 (1) ビルの管理、運営 (2) 店舗の販売促進、調査研究及び指導 (3) 不動産の賃貸借及び売買 (4) 駐車場の管理、運営及び店舗関係者の福利厚生施設の管理 (5) たばこ、入場券、日用雑貨、食料品の販売及び飲食店業 (6) 生命保険募集業、損害保険代理業及び広告代理業 (7) 公共施設の管理、運営に関する受託業務 (8) 前各号に付帯する一切の業務 3 平成 17 年度に実施した具体的事業 後述9の損益計算書の趨勢を参照。 -83- 4 役員数 平成 17 年度末(平成 18 年3月 31 日)現在 役職名 プロパー 市の OB 市経験者 他官公庁 民間より 職員 出向 その他 合計 0 0 1 0 0 0 1 常務取締役 1 0 0 0 0 0 1 取締役 0 0 0 0 0 7(7) 7(7) 監査役 0 1(1) 0 0 0 0 1(1) 合計 1 1(1) 1 0 0 7(7) 10(8) 代表取締役 社長 (注)但し、括弧書きは非常勤で内数 5 従業員数 平成 17 年度末(平成 18 年3月 31 日)現在 役職名 プロパー 市の OB 市の職員 他官公庁 民間より 職員 出向 その他 合計 部長 1 0 0 0 0 0 1 次長 2 0 0 0 0 0 2 課長 3 0 0 0 0 0 3 係長 5 0 0 0 0 0 5 一般社員 2 0 0 0 0 0 2 13 0 0 0 0 0 13 合計 -84- 6 アルバイト等 平成 17 年度末 (平成 18 年 3 月 31 日)現在 7 契約社員 0 派遣社員 3 アルバイト 0 従業員の年代別人員数 平成 17 年度末(平成 18 年3月 31 日)現在 年代 プロパー 市の OB 市の職員 他官公庁 民間より 職員 出向 その他 合計 60 歳代 0 0 0 0 0 0 0 50 歳代 3 0 0 0 0 0 3 40 歳代 6 0 0 0 0 0 6 30 歳代 2 0 0 0 0 0 2 20 歳代 2 0 0 0 0 0 2 13 0 0 0 0 0 13 合計 8 組織 平成 17 年度(平成 17 年4月1日現在) 職名・係等 総務部長 人数 市職員 団体職員 嘱託職員 その他 1 0 1 0 0 経理課長 1 0 1 0 0 経理係 2 0 2 0 0 総務係 1 0 1 0 0 兼営業管理部長 -85- 営業部次長 1 0 1 0 0 営業課長 1 0 1 0 0 営業係 3 0 3 0 0 管理部次長 1 0 1 0 0 管理課長 1 0 1 0 0 管理係 2 0 2 0 0 14 0 14 0 0 合計 平成 17 年度末(平成 18 年3月 31 日現在) 職名・係等 総務部長兼 人数 市職員 団体職員 嘱託職員 その他 1 0 1 0 0 経理課長 1 0 1 0 0 経理係 1 0 1 0 0 総務係 1 0 1 0 0 営業部次長 1 0 1 0 0 営業課長 1 0 1 0 0 営業係 3 0 3 0 0 管理部次長 1 0 1 0 0 管理課長 1 0 1 0 0 管理係 2 0 2 0 0 13 0 13 0 0 営業管理部長 合計 -86- 9 財産・損益(収支)の推移表 貸借対照表の趨勢 借方 現金預金 (単位:千円、表示単位未満切捨) 平成 15 年度 平成 16 年度 平成 17 年度 352,621 323,379 357,721 30 30 30 34,019 47,575 42,269 前払金 0 503 374 預け金 99,897 104,542 63,310 その他 140 0 31 486,707 476,030 463,737 316,333 307,401 303,220 建物附属設備 97,913 101,938 119,050 一括償却資産 103 0 142 2,256 2,048 1,828 182 182 182 12 12 12 1,393,188 1,393,188 1,444,438 電話加入権 1,350 1,350 1,350 出資金 1,250 1,250 1,250 327,076 326,334 325,308 7,010 7,010 7,010 2,146,678 2,140,716 2,203,795 75 0 0 2,633,460 2,616,747 2,667,533 立替金 未収入金 流動資産計 建物 備品 構築物 車両運搬具 土地 差入保証金 商品券供託金 固定資産計 繰延資産 資産計 (注1)未収入金につき、平成 15 年度から平成 16 年度にかけて増加しているのは、コルソ商 店会販促費の予算超過分に伴い、本来3月末までに回収予定の「お買物券代金」が 11 -87- 月より未回収となった(計 19,256 千円)ことにするもの。なお、平成 17 年7月に全 額回収済。 (注2)預け金につき、平成 16 年から平成 17 年にかけて減少しているのは、25 周年改装に伴 う「区分所有者預け金」よりの支出 33 百万円及び「修繕積立金」からの修繕費支出に よるもの。 (注3)建物附属設備につき、平成 16 年度から平成 17 年度にかけて増加しているのは、25 周 年の改装に伴う共用通路照明増設(14 百万円)、空調機の交換(5百万)によるもの。 (注4)土地が平成 16 年から平成 17 年にかけて増加しているのは、地権者の相続及び廃業に 伴う区分所有権の購入によるもの。 貸方 平成 15 年度 平成 16 年度 平成 17 年度 未払金 10,351 10,529 12,567 未払法人税等 30,004 37,338 16,911 未払消費税等 4,553 4,791 1,354 201,925 196,195 193,551 30,000 30,000 30,000 前受金 1,416 1,385 1,367 その他 110 36 42 278,362 280,276 255,793 長期借入金 588,112 477,536 547,912 預り保証金 764,900 763,620 638,662 預り敷金 20,959 20,959 79,942 退職給与引当金 28,288 47,021 54,293 560,000 610,000 660,000 1,962,261 1,919,137 1,980,810 100,000 100,000 100,000 25,000 25,000 25,000 預り金 当座貸越 流動負債計 修繕引当金 固定負債計 資本金 利益準備金 -88- 別途積立金 220,000 220,000 250,000 当期未処分利益 47,837 72,333 55,928 資本計 392,837 417,333 430,928 2,633,460 2,616,747 2,667,533 負債資本計 (注1) 長期借入金の増加理由は、平成 15 年度は通常の借入(50 百万円)の他、地権者所有 権購入(24 百万円)、平成 16 年度は資金繰りから 80 百万円、平成 17 年度は通常の 借入にラオックス退店(9月)・タカキュー退店(10 月)に伴う保証金返還費用合 計 150 百万円、3月に館内店舗移動費用、共有持分者への差入保証金分として 90 百 万円の借入を行っていることによる。 (注2) 預り保証金が平成 16 年から平成 17 年にかけて減少しているのは、25 周年に向けて 大口テナントの退店を推進したための預り保証金の返還がほとんどであり、店舗移 動に伴うものが 27 百万円である。 (注3) 預り敷金が平成 16 年から平成 17 年にかけて増加しているのは、伊勢丹への3階、 4階部分の賃貸による預り敷金の増加分(従来より伊勢丹については預り保証金で はなく、預り敷金として対応している。)。 (注4) 退職給与引当金の計上基準は、年度末現在で常勤役員の退職金を計算し、及び社員 については自己都合要支給額に基づき引当計上。 (注5) 修繕引当金は将来の建替えのための積立であるが、当該引当金は資本の部の任意積 立金として計上すべきものであった。 損益計算書の趨勢 (単位:千円、表示単位未満切捨) 平成 15 年度 営業収益 賃貸・売上歩合収入 損保収入 その他営業収入 雑収入 平成 16 年度 平成 17 年度 759,136 766,876 824,571 721,238 725,532 728,274 811 799 725 2,242 4,758 54,411 15,945 16,404 21,026 -89- 受取手数料 18,898 19,380 20,133 636,396 629,002 699,146 636,396 629,002 699,146 122,740 137,873 125,425 営業外収益 157 72 54 受取利息 60 32 15 受取配当金 96 39 39 営業外費用 15,789 13,728 13,821 支払利息 15,713 13,728 13,643 76 0 177 経常利益 107,108 124,217 111,658 特別利益 1,237 10,308 450 賞与引当金戻入 786 0 0 退職給与引当金戻入 450 450 450 0 9,858 0 55,316 50,000 51,587 固定資産除去損 5,057 0 1,587 固定資産売却損 258 0 0 修繕引当金繰入 50,000 50,000 50,000 税引前当期純利益 53,029 84,525 60,521 法人税等 45,383 60,030 46,926 7,645 24,495 13,595 前期繰越利益 40,191 47,837 42,333 当期未処分利益 47,837 72,333 55,928 営業費用 販売費及び一般管理費 営業利益 雑損 前期損益修正益 特別損失 当期純利益 (注1) その他営業収入の主な内容は、①駅地下道営業収益 38 百万円、②共有資産運用収入 16 百万円である。 -90- (注2) 受取手数料の主な内容は、①商品券取扱手数料、②受取手数料(クレジット取扱手 数料)、③共有資産管理手数料である。 (注3) 前期損益修正益の主な内容は、過年度減価償却超過分の修正である。 -91- Ⅱ 包括外部監査の結果 1 契約関係 (1) さいたま市浦和駅西口駅前広場施設総合管理業務再委託についての問題点 当該業務は、さいたま市より委託されている業務であり、浦和駅西口駅前広場およびそ の地下道の施設管理業務および清掃業務である。具体的には、設備管理業務、エレベー ター保守業務、保安警備業務、清掃業務からなる業務である。 当該業務は毎年、指名競争入札により応札し、業務委託契約を締結している。 浦和商業開発は、設備管理業務、エレベーター保守業務、保安警備業務、清掃業務の 各業務につき、すべて業者に再委託している。しかし、「さいたま市業務委託契約基準 約款」第 3 条第 1 項(下記参照)によると、業務の全部を一括して、又は主たる部分を 再委託してはならないこととされており、当該規定に従っていない。具体的には、「業 務委託仕様書」に記載されている上記各業務を一括して単一の業者に再委託してはいな いが、各業者に合わせて全ての業務を再委託していることになるため、主たる業務を再 委託してはならないという当該規定に抵触する可能性がある。 なお、平成 18 年度も同業務を受託し、再委託しており、契約関係を検討する必要があ る。 また、実際に業務を実施している主体が各業者である現状を鑑みると、当該業務につ いては、さいたま市が直接、各業務ごとに委託する方が責任関係が明確になると考える。 (さいたま市業務委託契約基準約款) 第 3 条第 1 項 乙(受託者:浦和商業開発)は、業務の全部を一括して、又は甲(委託者:さいたま 市)が設計図書において指定した主たる部分を第三者に委任し、又は請け負わせてはな らない。 -92- 2 資産管理 (1) 台帳と現物の照合 固定資産、備品に関し、現物実査が実施されていない。定期的に実施することをルー ル化する必要がある。 現物実査は、現物の実在性を確認するのみならず、不特定多数の一般市民が利用する 資産の状況を把握・確認しておくためにも有効である。 3 財務会計 (1) 修繕引当金 浦和商業開発は平成 17 年度の貸借対照表上、修繕引当金を 660 百万円計上している。 しかし、コルソビルの修繕を行う場合、地権者全体がコルソ共有資産会計(地権者で構 成される組合の会計)に積立を行い、当該会計から修繕費を支払うため、浦和商業開発 で引き当てている修繕引当金は計上を要しない。浦和商業開発の説明では、当該引当額 は将来の建替えのための積立であるとのことであり、当該引当金は資本の部の任意積立 金として計上すべきものであった。 -93- Ⅲ 包括外部監査の結果に添えて提出する意見 1 さいたま市浦和駅西口駅前広場施設総合管理業務を受託する意義について 当該業務の過去3年間の収入と支出の実績は下表のとおりである。 <さいたま市浦和駅西口駅前広場施設総合管理業務> (単位:円) 平成 15 年度 市からの委託料収入 平成 16 年度 平成 17 年度 28,717,500 28,717,500 28,846,356 12 66 2 28,717,512 28,717,566 28,846,358 設備管理費 1,820,700 1,820,700 1,946,700 エレベータ保守 1,285,200 1,285,200 1,285,200 保安警備費 8,568,192 8,568,192 8,568,192 16,416,540 16,416,540 16,416,540 285,449 281,198 310,372 20,200 20,200 20,200 28,396,281 28,392,030 28,547,204 321,231 325,536 299,154 受取利息 収入計 清掃費 衛生消耗品 租税公課 支出計 差引収支 この表からわかるように、浦和商業開発にとって、当該事業は利益がほとんど出ておら ず、支出項目を見直してコストダウンを図る必要があると考えられる。 また、当該業務はコルソ及び伊勢丹に通ずる重要な区域であるから、一体として管理す ることによる集客効果等のメリットが享受できることも理解できるが、「Ⅱ包括外部監査 の結果 1契約関係 (1)さいたま市浦和駅西口駅前広場施設総合管理業務再委託について の問題点」で述べた責任関係等を考慮した上で、今後の当該業務の受託の可否について検 討されたい。 さらに、市としても直接各業者に委託する場合には、上表の利益や租税公課分が節約で きるため、総合管理として業務を受託することの是非を検討する必要がある。 -94- 2 給与支給額水準の決定について 浦和商業開発は、市の給料表を勘案して給与テーブルを決定している。具体的には、市 の給料と賞与の支給額合計を上回らないように各等級の給与を決定している。 浦和商業開発には、平成3年6月まで市の職員が在籍していたこともあり、市の給与水 準を勘案してきた経緯があるため、現在の支給額決定方式となっている。 しかし、浦和商業開発は市とは別個の独立した団体であり、かつ営利を目的とした株式 会社であるから、市の給与を勘案する必要性に乏しい。コルソの休館日が元日のみである ことや、営業時間の関係から、勤務時間がシフト制であったり、年間休日が 96 日と市より も 30 日ほど少ないこと、土休日は通常営業日であることなど、市とはそもそも勤務形態が 異なるのであるから、このような勤務形態や株式会社としての業績等を加味し、独自の給 与体系を確立しても差し支えないと考える。なお、現在上位者には年俸制を導入するなど、 市とは異なる体系に移管している部分もある。 「指針」においても、給与制度の適正化について、「プロパー職員の給与については、 従来のように市職員の給与体系に安易に準拠することなく、団体の業績、経営状況等の実 態を踏まえつつ、組織の規模や職務の困難性等を十分考慮したうえで、経営改善計画に適 した適切な給与体系に改めるとともに、業務実績を反映させる制度の導入や退職手当の見 直しを検討するなど、現行の給与制度全般にわたる適正化を進めるものとする。」とされ ていることからも、独自の給与体系を確立する方向で検討されたい。 3 賞与引当金の未計上 現在、浦和商業開発は税法基準で決算を行っており、賞与引当金は有税処理となるため 計上していない。夏季賞与の支給対象期間は 12 月から5月までの分であり、夏季支給見込 額のうち 12 月から3月までに相当する部分については平成 17 年度の会計期間に属するた め、当該決算期において賞与引当金として計上することが望ましい。 4 退職給与引当金の表示方法 現在、退職給与引当金には役員及び従業員の自己都合要支給額が一括計上されている。 -95- 役員退職慰労金は在任中の報酬の後払い的性格、功績に対する功労的な性格であり、定款 規定若しくは株主総会の決議事項となっている。一方、従業員に対して支給する退職金は、 就業規則等に定め支払条件が規定されている場合には、労働条件の 1 つとして保護の対象 となる。従って、両者は性格が異なるため、別個に計上することが望ましい。 5 発生主義会計の未適用 受取利息(平成 17 年度計上額 15 千円)及び支払利息(平成 17 年度計上額 13,643 千円) の計上は利息入金時及び利息支払時において処理されており(=現金主義)、発生主義会 計となっていない。一般に公正妥当な会計原則である発生主義に基づく処理をすることが 望ましい。 6 今後の方向性 (1) 利用者の分析 浦和商業開発は、浦和駅西口駅前の商業ビル「コルソ」を管理運営する会社であり、 建物は伊勢丹浦和店と繋がっている。「コルソ」各フロアの概要は次のとおりである。 フロア テナント群 屋上 テニススクール 7階 コミュニティ・セブン 5 階、6 階 伊勢丹 4階 ブックス・ホビーの路 3階 スポーティブフィーリングの路 2階 タウンファッションの路 1階 コルソファッションの路 地下 1 階 レストランと味の路・総合食品 地下 2 階 駐車場(167 台収容) -96- 最近3ヵ年の月次固定賃料、歩合賃料(毎月の売上高の或る金額(坪当たり売上高) を超過した場合、その超過分につき契約書に定めた割合を収受する。)収入の推移は次 のとおりである。店舗入退店のタイミング及び改装の時期(月初、月中、月末)等によ り、賃料収入に増減はあるものの、固定賃料収入は比較的安定的に推移している。 3ヵ年歩合賃料推移 1200 1000 800 H15年度歩合賃料 H16年度歩合賃料 H17年度歩合賃料 千 600 円 400 200 0 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 (浦和商業開発作成資料より作成) 最近3年間、市内で開業したショッピングセンター(以下、SC とする。)のうち、浦 和駅から比較的近隣地区のものは次のとおりである。 名 称 面積(㎡) 開業時期 コクーン新都心 23,000 H16.9.17 イオン与野 52,205 H16.12.15 かわぐちキャスティ Ario 川口 5,766 26,000 H17.7.1 H17.11.29 (「SC 白書 2006」より) 各 SC のコンセプトの違いによる部分もあるため一概には言えないが、近隣地域で SC が開業した月について見ると、上表のとおり、コルソの歩合賃料収入は減少傾向が見ら -97- れるが、その影響は単月かその翌月までであり、継続して歩合賃料収入への影響は見ら れない。これは、近隣 SC のオープン当初は物珍しさも手伝って当該新規 SC へ買い物客 が流れるため、相対的に「コルソ」の歩合賃料が減少するものの、結果として、当該新 規 SC での継続的な購買には結びついていないものと推察される。 次に、来客者数の推移でコルソの客層を検討する。 来客数推移 600,000 500,000 400,000 H15年度 H16年度 H17年度 人 300,000 数 200,000 100,000 0 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 (浦和商業開発㈱所有データを元にグラフ化) 過去3ヵ年度の来客数データで見ても、来客数の推移からは近隣 SC 開業による影響は 特段見られず、全体的傾向は過去3ヵ年度同様であることが分かる。 さらに、浦和駅周辺は現在、線路により東西のアクセスが分断されている状況にあり、 東西市街地を一体化するために鉄道高架化事業計画が進められている。 これらのことから、「コルソ」の顧客は、わざわざ浦和駅周辺を離れてまで購買を行 わない浦和駅西口周辺地域の住民から構成されており、商圏は比較的狭いのではないか と思われる。 ところで現在、浦和駅東口駅前地区市街地再開発事業として、平成 19 年秋に浦和駅東 口に浦和パルコ(仮称)が開業することが予定されている。店舗運営形態は専門店集積 -98- 型であるため、浦和商業開発が管理するコルソと類似しており、当社にとって事業運営 上のリスクと考えている。 これに加えて、浦和駅周辺鉄道高架化事業が計画されおり、これが竣工すれば、駅部 の東西連絡通路等が整備され、線路を境に浦和駅周辺が東西に分断されている状況は解 消されることになる。この結果、浦和駅西口在住者が東口へ流れやすくなるとともに、 逆に浦和駅東口在住者が西口商業ビル等に回遊する可能性もある。長期的に見た場合、 浦和駅を挟んだ東西の住民の回遊動向が現時点では不明であり、浦和商業開発にとって 事業運営上のリスクとなることは否めない。 (2) 財務の分析 浦和商業開発は当初、土地建物を取得するに際して金融機関からの借入により資金調 達を行っている。コルソのオープン後は、テナントからの預り敷金保証金及び賃貸家賃 で借入金の一部返済を行っている。なお、預り敷金保証金は契約書に定めた一定期間経 過後、一定割合及び一定期間に応じてテナントへ返金される(店舗の営業開始後 10 年据 え置き、保証金の7割を 11 年目から 10 年で均等返還。契約終了時(=退店時)に残り の3割を返還という契約形態が多い。)。 したがって、コルソのオープン後、10 年以上が経過すると、土地建物取得に伴う借入 金返済に加えて、預り敷金保証金の一部返済が加わり、資金負担が増加する。 また、修繕引当金約 6 億円を考慮すると、実質的な自己資本は約 10 億円であるが浦和 商業開発は株式会社形態であるにも拘らず、従来より無配当であった。浦和商業開発と しては、平成 19 年秋に浦和パルコ(仮称)開業による業績への影響を見極めたうえで、 配当方針を定めることとしている。 (3) 事業構成員(地権者)の分析 浦和商業開発はコルソのオープン時において、それまで浦和駅再開発地域で開業して いた商店主を取りまとめてコルソの地権者とし、狭隘だった浦和駅西口の環境整備に貢 献することを当初の目的としていた。しかし、コルソ開業後 25 年が経過し、下表のとお -99- り地権者の数は減少傾向にある。また、地権者の中でも「権利床」と呼ばれる地権者自 らコルソ内で商店を営んでいる人数の減少は顕著である。 日 時 昭和 54 年 4 月 4 日 地権者数 権利床数 56 35 48 24 (開業時点) 平成 18 年 3 月 31 日 (直近年度末時点) これは、コルソ開業から 25 年が経ち、商店主の高齢化が進み、かつ後継者がいないた めに撤退する商店が発生し始めたことが原因であると考えられる。地権者の中には他の 地権者に権利を譲渡するケースも見られるが、基本的には浦和商業開発が撤退する地権 者から権利を買い取っている。浦和商業開発は、権利を譲受した部分に相当する床につ きテナントを募集し賃貸することになる。 今後も、商店主の高齢化とそれに伴う後継者の不在という状況が続くと予想され、地 権者、特に権利床の減少傾向は続くと思われる。そのため、地権者を取りまとめるとい う浦和商業開発の設立当初の意義の1つは時の経過とともに徐々に薄れつつあるといえ る。 (4) 最後に 浦和商業開発には、市が 50%出資している(50 百万円)。設立目的は、浦和駅西口市 街地改造事業として、駅前広場の拡張整備を行い、合わせて商業ビルの設置を行うこと で、浦和駅西口を県都にふさわしい姿にすることにあった。 これは公共的性格を有する事業であり、該当する地域に存在する地権者間の調整等を 行う必要から、中立的な立場を維持できる団体を設立することは、当時それなりの意義 があった。 商圏は比較的限定されているものの、今後、浦和駅東口に「コルソ」と類似形態の商 -100- 業ビルがオープンし浦和駅連絡通路が設置されると、商圏が大きく変化する可能性があ り、浦和駅東西の商業ビルが1つの商圏を争う形になることも考えられる。したがって、 今後のテナント売上げ、すなわち、浦和商業開発の賃料収入の動向はきわめて流動的と いえる。 さらに地権者の高齢化に伴い退店するケースが生じてきており、浦和商業開発の目的 もテナントビルの管理運営がメインとなっていると考えられ、事業目的が、設立時の公 共的目的から時代の変遷に伴い、変化してきていると考えられる。 浦和駅西口再開発事業竣工から 25 年が経過し、当時の地権者で「コルソ」竣工当初か ら開店していた店舗数も減少傾向にあり、当商業ビルの持つ意味づけも時代の流れとと もに変化してきている。 浦和商業開発は、平成 15 年度以降毎期継続して 50 百万円以上の税引前当期純利益を 計上しており、十分に収益体質となっている。 また、以上のことを考慮すると、現在、市が 50%の株式を所有しているが、このような 収益体質であり、市の関与が今後も必要なのか、むしろ市の関与が自立運営を阻害して いないか再考する必要がある。 -101-