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強酸性試料中の陽イオンの分析 - Thermo Fisher Scientific
AR048KY-0147 200805 試料の自動中和とイオンクロマトグラフィーの組み合わせによる 強アルカリ性試料中の陰イオン、強酸性試料中の陽イオンの分析 〈図 1 分析条件〉 【はじめに】 µg/L~mg/L レベルのイオン成分は、イオンクロマトグラ カラム フィーで容易に定量できますが、高濃度イオン成分を含 IonPac AG18, AS18(内径 4 mm) 水酸化カリウムグラジエント む試料を導入した場合に主成分が目的成分の定量を妨 0.0-16.0 分 :10-16 mmol/L 害することがあります。例えば、高濃度水酸化ナトリウム溶 16.0-24.0 分 :16-40 mmol/L 液中の陰イオン成分を測定すると、ナトリウムイオンが陰イ 24.0-28.0 分 :40 mmol/L オンの検出を妨害します。図 1 は水酸化ナトリウム溶液に 溶離液流量 1.0 mL/min 陰イオン標準液を添加した試料を測定した結果です。試 カラム温度 30 ℃ 料中の水酸化ナトリウム濃度が 1 %ではピーク形状が悪く 検出器 電気伝導度検出器(サプレッサー使用) なり、50 %では高濃度ナトリウムイオンの影響により陰イオ 試料導入量 25 µL ンのピークを検出することはできません。 試料: 図 1 に記載(前処理なし) 高アルカリ性または酸性試料は超純水で希釈するか、 イオン交換樹脂や透析を用いて中和処理した後に測定す る必要があります。しかし希釈すると目的成分の濃度も低 ピーク くなり十分な感度を得ることができなくなります。またイオン 交換樹脂や透析のような中和法では操作が煩雑な上に処 (mg/L) 1 F- 1.2 5 NO3- 2.4 2 Cl- 0.9 6 SO42- 1.2 3 NO2- 1.8 7 PO43- 2.4 4 Br- 3.0 理中に試料を汚染する恐れがあります。 この技術資料では、従来の中和法の諸問題を解決する 【中和デバイスを用いた試料中和の原理と利点】 ことができる、電気透析(イオン交換膜を介した電気分解) 中和デバイスには、オートニュートライザーSRN(Self を応用した中和デバイスを使用したインライン中和処理に -Regenerating Neutralizer)を使用します。SRN はオ ついて説明します。 ートサプレッサーSRS と同じ構造のデバイスで、2 枚のイ オン交換膜、液の流れるライン、電極で構成されています。 SRN は SRS よりも交換容量が高く、高い電流値で使用し A. 標準液 in H2O B. 標準液 in 1% NaOH C. 標準液 in 50% NaOH ます。 図 2 に ASRN-300 によるアルカリ試料の中和原理を示 します。ASRN-300 の 2 枚の陽イオン交換膜の内側に試 5µS/cm 1 2 3 4 5 料を、外側に超純水を供給します。超純水は電気分解さ れ、陽極で H+と O2 が陰極で OH-と H2 が生成されます。 6 7 試料中の Na+などの陽イオンは陽イオン交換膜を通過し A て陰極側の再生液ラインへ移動します。一方陽極側の再 B 生液ラインで生じた H+は陽イオン交換膜を介して内側の 試料ラインへ移動します。この Na+と H+の交換により C 0 ASRN-300 の出口では試料主成分は中和されて H2O に 10 20 Retention time (min) 図 1.試料中の水酸化ナトリウムの影響 30 なります。ASRN-300 により主成分が H2O となった試料は 濃縮注入法と同じ手段でイオンクロマトグラフへ導入でき るため、高濃度アルカリ試料中の微量陰イオン成分の定 量を精度よく簡単におこなうことができます。 酸性試料は酸性試料中和用のオートニュートライザー CSRN-300 を使用します。中和原理は ASRN-300 とほぼ 同じですが、CSRN-300 の内部には 2 枚の陰イオン交換 膜があり、この膜を介して SO42-などの試料中の陰イオン オンとなります。 従来の中和法ではイオン交換樹脂の再生や拡散透析 が除去されます。 この方法では、アルカリ試料中の陽イオンや酸試料中 をおこなうために試薬が必要であり、これらの試薬に含ま の陰イオンは主成分とともに SRN で除去されてしまうため、 れる不純物による汚染が問題となっていました。しかしこの 測定対象はアルカリ試料中の陰イオンと酸試料中の陽イ 方法では試薬が必要ないため、汚染は生じません。 再生液(超純水)ライン 陽極 H+ O2 H2O O2 陽イオン交換膜 + H 試料成分 (NaOH) 測定イオン (X-) Na+ H - X OH H2O X Na+ 試料ライン H2, Na+, OH- 濃縮カラムへ - Na+ 陽イオン交換膜 H2 OH H2O 陰極 再生液(超純水)ライン 図 2. ASRN-300 中和デバイスによる中和の原理 【試料中和の手順と流路配管図】 測定流路の配管を図 3 に示します。また、下記ⅠからⅣ にバルブの動きと試料の流れを説明します。バルブの駆 動やキャリアー水送液ポンプの On/Off はワークステーシ ョンのプログラムからおこないます。 Ⅰ. 初期 試料をサンプルループに導入します。 バルブ 1:Load(点線)、バルブ 2:Inject(実線) Ⅱ. 中和サイクル 1 サンプルループに導入された試料はキャリアー水(超 純水)により SRN へ送られて中和され、コレクションコ イルへ入ります。 バルブ 1:Inject(実線)、バルブ 2:Inject(実線) Ⅲ. 中和サイクル 2 コレクションコイルに入った試料はキャリアー水によって 再度 SRN へ送られて 2 回目の中和がおこなわれます。 その後バルブ 2 の濃縮カラムへ送られ測定イオンの濃 縮をおこないます。 バルブ 1:Load(点線)、バルブ 2:Load(点線) Ⅳ. 測定開始 測定イオンは濃縮カラムからガードカラムさらには分離 カラムへ移動して分離されます。データの取り込みを開 始します。 バルブ 1:Load(点線)、 バルブ 2:Inject(実線) 直接濃縮カラムに送る)方法もあります。この場合は 10 方バ ルブを使用せず、6 方バルブを 2 つ使用します。 【中和操作の留意点】 ・キャリアー水の流速が早すぎると中和効率が低下するため 流速は 0.5 mL/min 程度にします。 ・SRN の下流にモニタ用の電気伝導度セルを接続し、試料 が十分に中和されていることを確認します。中和が不十分 だと電気伝導度は高い値を示します。中和が不十分な状 態で濃縮カラムに試料が導入されても試料は濃縮カラム にトラップされません。中和サイクルが 2 回では不十分な 場合は、バルブをさらに 1 つ追加し 3 つのバルブを使って 中和サイクルを繰り返します。試料導入量を増やすと中和 が十分におこなわれないこともあるので、試料導入量にも 注意が必要です。 ・濃縮カラムは低圧タイプを使用します。濃縮カラムの圧力 が高いと SRN に背圧がかるため、SRN にダメージを与え ます。 ・測定成分によっては SRN を用いた中和処理により回収率 が低くなることがあります。このため、事前にこの方法によ る回収率の確認をすることが必要です。 ・自動中和システムでは強アルカリ試料中の陰イオンの測 定、強酸試料中の陽イオンの測定が可能ですが、高濃度 塩酸を含む試料については SRN による処理過程で塩素 ガスが発生するためこの方法を使用することはできませ ん。 試料が中性に近い場合は、コレクションコイルを使用せ ずに中和サイクルを 1 回にする(SRN で中和された試料を バルブ 1 10 方バルブ Load 排液 ③ 排液 バルブ 2 6 方バルブ Inject ⑤ ⑥ ② 試料 ⑩ ⑨ ⑧ ⑦ 排液 ① ④ 排液 キャリアー水 送液ポンプ 溶離液ポンプ ⑤電気伝導度セル(モニタ用) ⑥濃縮カラム ⑦ガードカラム ⑧分離カラム ①サンプルループ ②コレクションコイル ③SRN オートニュートライザー ④不純物トラップカラム ⑨SRS オートサプレッサー ⑩電気伝導度セル(検出用) 図 3.自動中和システムの流路図 <図 4 分析条件>図 1 の分析条件に同じ 【分析例】 中和デバイス SRN を用いて 50 %水酸化ナトリウムを中 <図 4 の中和条件> 中和サイクル:2 回 和したときの、陰イオンの測定例を図 4 に示します。 中和サイクル 1:3 分 中和サイクル 2 および濃縮時間:5 分 2 キャリアー純水流量:0.5 mL/min 濃縮カラム:IonPac AG18 図 5 に中和サイクルを 1 回にしたときの 24 %硫酸中の µS/cm 6 陽イオンの測定例を示します。 2 1 3 4 1 7 µS/cm 5 3 0 0 10 20 Retention time (min) 30 2 図 4.50 %水酸化ナトリウム溶液中の陰イオン 1 ピーク 4 5 7 8 9 (mg/L) 1 F- 0.02 5 NO3- 0.04 2 Cl- 0.41 6 SO42- 1.24 3 NO2- 0.01 7 PO43- 0.04 4 Br- 0.04 0 0 20 10 Retention time (min) 図 5.24 %硫酸溶液中の陽イオン 30 35 ピーク (mg/L) 1 Li+ 6 K+ 0.006 2 Na+ 0.049 0.051 7 Mg2+ 3 NH4+ 0.026 ― 8 トリメチルアミン 4 メチルアミン ― 9 Ca2+ 5 ジメチルアミン ― デュアルポンプ ユニット DP ④ ― 0.065 ⑤ <図 5 の分析条件> カラム IonPac CG16, CS16(内径 5 mm) 溶離液 28 mmol/L メタンスルホン酸 溶離液流量 1.0 mL/min カラム温度 25 ℃ 検出器 電気伝導度検出器(サプレッサー使用) 試料導入量 100 µL ① ② ③ <図 5 の中和条件> 中和サイクルおよび濃縮時間:4 分 キャリアー純水流量:0.5 mL/min カラムコンパートメント 濃縮カラム:TCC-LP1 および検出器ユニット DC 【オーダーインフォメーション】 製品名 製品番号 溶離液ジェネレータ ユニット EG 図 6. ICS-3000 自動中和システム アルカリ試料中和デバイス ASRN-300 67526 ①オートメーションマネジャー 酸性試料中和デバイス CSRN-300 67527 ②オートニュートライザーSRN およびコントローラ ー、モニタ用電気伝導度セル 【ICS-3000 を使用した自動中和システム】 中和デバイス SRN は、6 方と 10 方の 2 つのバルブ、 ③オートサプレッサーSRS およびコントローラー、 検出用電気伝導度セル SRN コントローラー、キャリアー水送液ポンプ、モニタ用電 ④キャリアー水送液用ポンプ 気伝導度セル、不純物トラップカラムとともに用います。オ ⑤溶離液送液用ポンプ ートメーションマネジャーを組み込んだ ICS-3000 を使用す ることにより、バルブやポンプの動きをワークステーションか ら制御できるため、自動中和とイオンの測定をより簡便にお こなうことができます。 Jun Kato 電子署名者 :Jun Kato DN : cn=Jun Kato, o=Nippon Dionex K.K., [email protected], ou=Marcom, l=DNX ShinOsaka Bldg. 6-3-14 Nishinakajima Yodogawa-ku Osaka-shi, st=Osaka, c=JP 日付 : 2008.06.25 11:21:34 +09'00'