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2013 年上期 - 日本ロジスティクスフィールド総合研究所

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2013 年上期 - 日本ロジスティクスフィールド総合研究所
ロジフィールド・レター(2013 年 7 月)
㈱日本ロジスティクスフィールド総合研究所
首都圏における物流不動産マーケットの現状(2013 年上期)
1.2013 年上期の首都圏物流不動産マーケットの動向
1)大規模な賃貸物流スペースの供給とテナント誘致状況
首都圏において 2013 年は大規模な賃貸物流施設の供給が始まって以来の最大の年となる
見通しである。一昨年より物流不動産に対する投資家の熱の高まりを背景に物流不動産へ
資金が流入した結果である。当初、今回の大規模な供給により需給バランスの悪化が懸念
されたが、既に 2013 年の竣工物件では延床ベースで 80 万坪超のテナントが決定している
と推測される(予約契約ベース)
。一般的には竣工後、1年前後で満床化することが目標と
されるが、今回、リーシング進捗が 60%超(2013 年竣工分)と好調に需要が発生している。
この需要発生の内容をみると、荷主・3PL 事業者の大規模な物流スペースの拡大需要、割
高な賃料物件からの移転によるコスト削減需要、
湾岸エリアから内陸部への BCP 対応需要、
依然として高い成長性を有する通販物流需要等となっている。
2014 年、2015 年も引き続き、多量の供給が予定されている。
図 首都圏における大型賃貸物流不動産の需給バランスの推移
出所)当社の主要開発事業者による開発物件の竣工とリーシングデータより作成
注)2014 年、2015 年以降は今後、増加する可能性が高い。
2)市中賃貸倉庫の需給バランスの状況
市中賃貸倉庫(大規模な賃貸開発物件も含む)における空室率は約 2.4%(2013 年上旬)
となっている。昨年の 2.9%よりも低くなり、タイトな状況(当社調査)が一層強まってい
る。約 20 万坪もの供給があったにも関わらず、空室率も低下したことから実質的に新規約
23 万坪もの旺盛な物流スペース需要が首都圏で発生したことになる(当社データベースは
概ね千坪以上の倉庫を対象としているため全てを網羅しているわけではないが、基本的な
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ロジフィールド・レター(2013 年 7 月)
㈱日本ロジスティクスフィールド総合研究所
トレンドを抑えることができる)
。特に供給が増えた常磐線沿線等では約 10 万坪需要が発
生している。
このように、2013 年上期においても、首都圏では強い需要が発生していたと考えられる。
表
首都圏における賃貸物流不動産における空室、消化面積の変化
出所)当社の調査データより集計
注)対象倉庫:概ね千坪以上の賃貸倉庫。賃貸倉庫には自前倉庫でも賃貸している倉庫も含む。
2.物流不動産を取り巻く環境の変化
このような需給のバランス状況に対して、今後、影響を与えそうな環境変化が見えだし
てきている。以下、その内容について述べるものとする。
1)東日本大震災後の増加した在庫の減少
「企業物流短期動向調査」
(㈱日通総合研究所)において、企業における対前年比での在
庫量の増加、減少データが四半期ごとに示されている。このデータによる震災の影響によ
り 2011 年2Q以降から 2012 年4Qまでは、従前に比べ在庫量を厚くする傾向が見て取れ
る。さらに、2011 年3Qから 2012 年2Qまでは在庫量を増やす割合の方が減少する割合を
上回る状況となっており、特にこの期間は在庫量は増加した可能性が高い。現在、2013 年
1Q以降は震災前の水準に戻ってきている。
震災後から昨年末までは、通常よりも多く在庫量が確保されていたと考えられ、景況感
の改善がない経済状況のなかで、市中賃貸倉庫に空きスペースが限定的であったことの理
由の一つと考えられる。
下期では震災前の水準に戻るものと考えられ在庫の積み増しによるスペース消化も弱ま
る可能性があると考えられる。このことは市中倉庫を中心として空きスペースが生じる可
能性が高まると推測される。
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ロジフィールド・レター(2013 年 7 月)
㈱日本ロジスティクスフィールド総合研究所
図
荷主等による在庫量の変化(対前年比「増加-減少」)の推移
出所)企業物流短期動向調査(㈱日通総合研究所)より作成
注)在庫量と営業倉庫保管量の実績と見通しにおいて「対前年同期比で増加す
る」のポイントから「対前年同期比減少する」のポイントを引いたもの。
2)円安による輸入増加
全体的に在庫量をリーンにする傾向がみられる一方で、直近は円安の進行に対して為替
予約がある期間に輸入を増やしている事業者が多くみられる。例えば、日雑の小売事業者
では昨年の2倍強の輸入在庫を積み増しており、その保管スペースは溢れ近隣の外部倉庫
を活用している。また、次図に示すようにマクロ的にみてみると、主要な港湾においても
民生品を含む電気機械、家具装備品、製造食品、衣類・見回り品・履物等において、前年
同期間(1月から3月)を上回る輸入量となっている。
これらの輸入貨物の受け止めとして保管スペースが直近、消化されている。景気上昇等
を勘案しなかった場合、基本的には為替の予約期間において輸入が一時期的に増加する現
象と考えられる。今後、徐々に解消していくと考えられ、消化スペースも減少する。
図 主たる港湾において対前年比を越えている品目(1月から3月累計)トンベース
出所)各港湾管理者公表の速報値より作成
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ロジフィールド・レター(2013 年 7 月)
㈱日本ロジスティクスフィールド総合研究所
3)3PL物流と通販物流
実際に物流オペレーションを行っている3PL事業者や通販事業者においても変化の兆
しが生じてきている。
(1)3PL物流
大手事業者による3PL市場はこれまで概ね4%台の年間成長を達成してきた(当社分
析結果)が、2012 年度はやや成長の鈍化がみられる。
また、昨年度末の大手事業者による2つの大規模な物流子会社の吸収や、庫内作業に強
い中堅事業者と配送に強い3PL部隊とが統合され強みを補完した競争力のある事業者が
誕生する等、国内の3PL業界の産業組織構造に動きがみられる。
これらの背景として、依然として3PL業界に荷主からコスト削減が強く求められてお
り、事業環境が一層、厳しくなってきているためと考えられる。間接部門の大きな大手3
PL事業者よりも一定の品質のもとコスト競争力のある中堅、中手事業者が元気なことも、
このことが背景と考えられる。
今後、大手3PL事業者は消費財物流だけでなく、生産財物流への展開(生産財物流は
消費財物流に比べ売り上げ規模が小さいが収益性に余地がある)や、国内でのM&A等に
より売上の成長性を確保していくと考えられる。
このような状況の変化により、今後、賃貸物流施設への入居が大手事業者中心から中堅、
中規模事業者も入居するケースが増加していく可能性があると考えられる。
(2)通販物流
日本の小売・サービスのEC化率は英国、米国に比べ未だ、低く、我が国においてはE
C化率の上昇の余地があると考えられる。これまでと同等水準並み(10%前後)の高成長
が続くと考えられる。
そのような中で、通販事業者においては送料無料価格ラインの低下(アマゾンの原則送
料無料戦略の影響)による1回あたりの購入単価の下落や、一方での 2012 年末からの宅配
便における送料の値上げにより、事業環境の悪化が生じてきている。
通販物流についてみると通販市場の拡大により、これまで通り高成長を続けていくと考
えられる。取り扱う商品もドライだけでなく冷蔵も増加していくと考えられる。
通販事業者は厳しさを増す環境変化に対して、大手総合通販への集約や高付加価値な商
品特化への展開等、従前からのビジネスモデルの変化が求められる可能性が高まり、これ
まで鷹揚であった物流コストについても削減ニーズが強まると考えられる。
通販の事業環境の悪化が必要とするスペースの規模、賃料水準等の適正化が一層進み、
ここ数年見られてきた通販スペース需要の大量発生が抑制される可能性もある。
3.今後の物流不動産マーケットの見通し
首都圏では 2013 年後半から 2014 年、2015 年と大規模な開発、大量スペース供給が続く
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ロジフィールド・レター(2013 年 7 月)
㈱日本ロジスティクスフィールド総合研究所
ことになる。現時点ではテナント誘致は好調な状況となっているが、これまで述べてきた
ような環境の変化により、物流不動産マーケットの開発にとってはマイナス面が生じる可
能性がある。一方、アベノミクス等による景気上昇があった場合、これらのマイナスは打
ち消す可能性が高い。
・ここ1年で竣工した物件で、一部、埋まりきらずリーシングの長期化傾向が出てきてい
る物件も出てきていること、市中倉庫で空きスペースが発生していること等、やや需要
圧力の低下と考えられる現象も生じてきている。
・円安進行に伴う緊急的な輸入増による保管スペースが必要とされているため、現時点で
は顕在化してきていないものの、荷主による在庫量のリーン化により消化スペースの縮
小も今後、生じてくる可能性がある。
・主たる3PL事業者にとっても競争力のある商品(物流スペース)の確保はますます重
要な事業課題になってきており、自社拠点の周辺(労働力の効率的活用によるコスト削
減)か、割安な賃料の物流施設の賃借が進むと考えられる。割安賃料志向はこれまで以
上に強まると考えられる(一部の物流事業者では賃借よりも自前調達に重きを置く可能
性もある)
。
・さらに、ここ1,2年、大規模なスペース需要を発生した通販物流について引き続き需
要の発生は見込まれるものの、これまで意識が薄かった立地・賃料についての適正化が
進み、これまでの多大な需要量の抑制化が進む可能性も考えられる。
今後、足元での市中倉庫の空きスペースが拡大していく可能性があり、上期において賃
料水準が強含んでいたエリアも含め、地域の賃料相場は上げ止まってくる可能性も考えら
れる。ただし、アベノミクスにより本格的に景気が上昇した場合、市中倉庫の空きスペー
スも埋まってくると考えられることから、賃料水準も横ばい、または、上昇すると考えら
れる。
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㈱日本ロジスティクスフィールド総合研究所
担当:鯖田(サバタ)
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