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冷却刺激による局所性皮膚血管収縮反応の in vivo での解析 石川智久

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冷却刺激による局所性皮膚血管収縮反応の in vivo での解析 石川智久
冷却刺激による局所性皮膚血管収縮反応の in vivo での解析
○石川智久、藤田行代志、小金澤禎史、山下知也、中山貢一
(静岡県立大学・薬学部・薬理学教室)
【目的】冷却誘発性血管収縮(cold-induced vasoconstriction: CIVC)は皮膚血管に特異
的な反応である。これまでに摘出皮膚血管を用いた in vitro 実験により、CIVC には中枢
神経系を介さない局所性の血管応答反応も含まれることが示唆されてきた。しかし、皮膚
循環は全身血圧の変化による反射の影響を強く受けることから、皮膚循環の in vivo での
解析は難しく、これまでに in vivo で局所性 CIVC を解析した報告は殆どない。そこで本研
究では、tetrodotoxin(TTX)処置により神経支配を除去したラットを利用することにより、
in vivo での局所性 CIVC のメカニズムを詳細に検討した。
【方法】Wistar 系雄性ラットをエーテルで麻酔したのち、TTX を静注し人工呼吸を施した。
レーザードップラー血流計により足底部の皮膚血流量を、そして頸動脈に挿入したカニュ
ーレから全身血圧および心拍数を測定した。局所冷却装置を左後肢に装着し、装置内温度
を 25℃から低下させることにより局所冷却刺激を行った。
【結果および考察】装置内温度を 25℃から 10℃にまで冷却すると、足底部の皮膚表面温度
は 20℃前後にまで低下し、その皮膚血流量は有意に減少した。この血流減少反応は、
phentolamine、bunazosin、および bretylium によって同程度まで有意に抑制されたが、
rauwolscine には影響されなかった。すなわち、10℃への冷却による血流減少反応は、交
感神経終末から遊離された NE がα1受容体に作用することで惹起されることが示唆され
た。また、P1 受容体遮断薬である 8-SPT、および P2 受容体遮断薬である PPADS もまた、こ
の血流減少反応を有意に抑制した。しかし、phentolamine 存在下では 8-SPT、 PPADS の抑
制効果は消失した。すなわち、これらのプリン受容体遮断薬は、シナプス後膜に存在する
プリン受容体に作用したのではなく、P1、 P2 両受容体遮断薬に感受性のあるシナプス前
膜 P3 受容体に作用して、P3 受容体の興奮による交感神経終末からの NE 遊離効果を抑制し
たのではないかと推察された。次に、装置内温度を 25℃から 5℃にまで冷却すると、足底
部の皮膚表面温度は 17℃前後にまで低下し、10℃へ冷却した場合と同程度の血流減少反応
が惹起された。この反応は phentolamine や bretylium によっては有意に抑制されたものの、
bunazosin や rauwolscine では抑制されなかった。しかし、bunazosin と rauwolscine の両
方を同時に処置した場合には、血流減少反応は有意に抑制された。すなわち、5℃への冷却
により生じた血流減少反応には、α1受容体だけでなくシナプス後膜に存在するα2 受容
体も皮膚血管収縮反応に関与することが示唆された。
【結論】冷却刺激は交感神経終末からの NE 遊離を引き起こし、10℃への冷却の場合にはα
1受容体を、そして 5℃への冷却の場合にはα1及びα2両受容体を介した局所性 CIVC を
惹起することが示唆された。また、この冷却による NE 遊離に、シナプス前膜 P3 受容体を
介したメカニズムが寄与していることが示唆された。
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