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「親密性」の意味転換 : 「共依存」概念の批判的検討

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「親密性」の意味転換 : 「共依存」概念の批判的検討
Nara Women's University Digital Information Repository
Title
「親密性」の意味転換 : 「共依存」概念の批判的検討
Author(s)
羽渕,一代
Citation
羽渕一代: 家族研究論叢, 1998, No.6, pp.119-131
Issue Date
2010-09-08T01:08:44Z
Description
URL
http://hdl.handle.net/10935/2050
Textversion
publisher
This document is downloaded at: 2017-03-31T03:44:14Z
http://nwudir.lib.nara-w.ac.jp/dspace
「
親 密性」 の意味転換
「共 依 存 」 概 念 の 批 判 的 検 討
羽
渕
0は
一
代
じめ に
「親 密 性 」 に つ い て、 社 会 的 関 心 が高 ま って きて い る よ う に思 わ れ る。
例 え ば 、家 庭 内暴 力、 家 庭 内離 婚 とい った 家 族 問 題 が 報 道 され た り、 人 々の
話 題 に上 って くる こ とは珍 し くな い。 こ うい った 状 況 に お いて 、 家 族 成 員 同 士
の 「親 密 性 」 の あ り方 が 問題 解 決 の鍵 とな る の で は な い か と考 え る こ とは お か
し くな い 。
また 、 心 理 学 の 分 野 で は1970年 代 以 降 、急 速 に 「親 密 性 」 に関 連 す る研 究 が
増 加 して きて い る。 研 究 の 深 化 に伴 い 「親 密 性 」 に ま つ わ る新 しい言 葉 も作 ら
れ流 布 して きて い る。 「ア ダル トチ ル ドレン」[共 依 存 」 「セ ク シ ュア リテ ィ」
とい っ た言 葉 がそ の 例 とい え るだ ろ う。
こ う した 傾 向 は、 人 々 に とって 「親 密 性 」 が 大 きな 問 題 を は らん だ もの と し
て感 じ られ て い る こ とに起 因 して い るの で は な い だ ろ うか 。 人 々に は 、政 治 的
な こ とを語 る よ り も恋 人 や友 人 、 そ して 家 族 との 人 間 関 係 を語 る こ との方 が重
要 な事 柄 と して感 じ られ て い る の で は な いだ ろ うか 。
「親 密 性 」 とい う言 葉 は`intimacy'の
訳 語 で あ る。 しか し、 日本語 と して、
「親 密 性 」 は 耳 慣 れ な い 言 葉 で あ る 。`intimacy'は
「親 しい 関 係 」 や 「親 し
さ 」 とい う意 味 で あ る。 こ うい っ た意 味 を総 称 して 「親 密 性 」 と して い る。
本 稿 で は 、 「共 依 存 」 とい う言 葉 が 起 こ した影 響 の 分 析 を通 じて 「親 密 性 」
な る もの の探 求 を 目的 とす る。
Xlg
羽渕 一 代
そ もそ も、 「共 依 存 」 とは1970年 代 の ア メ リカ に お い て 、 臨 床 の 現 場 か ら創
出 され た 言 葉 で あ る。 そ の た め 、 「共 依 存 」 とい う言 葉 は 限 定 され た き わ め て
専 門的 な領 域 の 中 での み 使 わ れ る言 葉 で あ った 。 ところ が 、 日本 に この概 念 が
輸 入 され 、 少 しず つ で は あ るが 専 門 的 な 領 域 外 に お い て 、 「共 依 存 」 が 「親 密
性 」 に関 わ る問 題 と して 語 られ る よ うに な って きた。
「共 依 存 」 は 「親 密 性 」 と似 て 非 な る もの で あ る、 とい う専 門家 の コ ンセ ン
サ ス が あ る。 つ ま り、 「共 依 存 」 は 真 の 「親 密 性 」 を築 くた め の 障壁 で あ る と
い う もの で あ る。
本 稿 の 構 成 と して は 、 「親 密 性 」 研 究 を概 観 し、 「共 依 存 」 が どの よ う に 「親
密 性 」 に 関連 して い る の か を論 じ、 「共 依 存 」 とい う言葉 の 問題 化 を行 う。
1「
親 密 性 」 に 関す る既 存 研 究
社 会 心 理 学 者 で あ る古 畑 和 孝 に よれ ば 、 誰 か を好 き にな る、愛 す る、 とい っ
た よ うな経 験 に 関 す る心 理 学 的 研 究 は 、1970年 代 には い るま で あ ま りみ られ な
か っ た とい う[古 畑,1988:240-243]。
これ は、rr愛 、 あ るい は 親 密 性 』 を 研 究 テ ー マ に し よ う もの な ら研 究 費 が 得
られ な い」 とい う理 由や 心 理 学 の 数 時 間 とい う限 られ た時 間 の 中 で 「愛 、 あ る
い は親 密 性 」の研 究 ・実 験 な どで きな い 、とい う仮 定 に起 因 す る もの で あ る[古
畑,1988:241]。
この よ う に 「親 密 性 」 を研 究 テ ー マ に す る こ とは 、 奨 励 さ れ
な い で き た が、1970年 代 以 降 、 「親 密 性 」 に関 す る研 究 は 急 速 に積 み上 げ られ
て きた 。
そ こで1970年 代 以 降 の 既 存 の 研 究 を い くつ か 検 討 す る こ とに す る。 「親 密 性 」
とは、 辞 書 的 意 味 に おい て 相 互 の 関 係 の 深 さ や 仲 の 良 さを は か る もの さ し と し
て使 わ れ る言 葉 で あ る。 そ れ で は 、学 問 的 な 定 義 は どうな って い る の だ ろ うか。
例 えば 、 社 会 学 者 の ア ン ソニ ー ・ギ デ ン ズ は 「親 密 性 」 を 将来 的 に変 容 して
い く もの で あ り、 そ の 予 見 を 含 め た見 方 で 「対 等 な人 間 ど う しに よ る人 格 的 き
ず な の 交 流(=transactionalnegotiationofpersonaltiesbyequals)」
て い る[Giddens,1992:3]。
と述 べ
加 え て、 女 性 の解 放 等 に よ る平 等 な社 会 が 実 現 し
つ つ あ る現 代 に お い て は 、 「親 密 性 」 の 形 態 は 変 容 を 遂 げ て き て い る こ とか ら
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「親密性」の意味転換
「親 密 性 」 に関 す る社 会 的 な 問題 が起 こ って い る と述 べ て い る。
ギ デ ン ズ は 、 女 性解 放 に よる平 等 な社 会 の 到 来 を理 由 に、 個 人 対 個 人 の 「親
密 性 」 の あ り方 の 意識 変 革 を 求 め て い る。 個 人 間 の 平 等 な 「親 密 性 」 を理 想 と
して い るの で あ る。 その 「親 密 性 」 を純 粋 な関 係 性(purerelationship)と
し
た。
次 に、 精 神 医 学 や 心理 学 の分 野 で は 「親 密 性 」 の 研 究 は どの よ う に試 み られ
て い るの だ ろ うか 。
エ リ ック ・エ リク ソン は 、 「親 密 性 は青 年 期 を 卒 業 して 、 よ う や く一 人 前 に
な る ヤ ソ グ ア ダル ト期(若
い成 人 期)に 固 有 の発 達 課 題 」 と捉 え た[エ リクソ
ン/訳 書,1973:119-120] 。
親 密 性 が可 能 に な るの は適 切 な 同一 性 の 感 覚(reasonablesenseofidentity)が 確 立 した後 だ け で あ る、 と述 べ て い る。 そ して 、 性 的 な 親 密 さ とい う も
の は彼 の 考 えて い る親 密 性 の 一部 分 で しか な い。 自分 自身 につ いて 確 実 な 感 覚
を もてた 人 間 は、 友 情 や 闘 争 、 リー ダ ー シ ップ、 愛 、 直 感 な どの 形 の 親 密 性 を
求 め る よ うに な る。 親 密 さ の 対 照 は 「隔 た り」(distantiation)で あ る[エ リク
ソン/訳 書,1977:339-342]。
こ こ か ら、 「親 密 性 」 を 自己 の連 続 的 な ア イ デ ン テ ィ テ ィ の保 証 人 で あ る他
者 との融 合 とエ リク ソ ン は述 べ て い る。 「若 い 成 人 期 に人 が達 成 す る べ き親 密
性 とは、 自分 を失 って い るの で は な い か 、 とい う不 安 な しに 自分 の ア イ デン テ
ィテ ィ と他 者 の ア イ デ ン テ ィテ ィを融 合 で き る こ とで あ る。 そ して、 この 親 密
性 は、 その 後 の 成 人 期 の ケ ア と生 殖性 に 包摂 さ れ て い く」 とエ リク ソ ンは 述 べ
て い る[エ リクソン/訳 書,1973:192]。
「親 密 性 」 につ い て 、 ギ デ ン ズ は きず な の交 流 と して、 エ リク ソン は 個 々人
の能 力 ア ッ プの た め の 課 題 と して 捉 え て い る の で あ る。
「親 密 性 」 とは 、 これ ら二 者 の 研 究 に お け る使 わ れ方 を見 る と、 人 間 関 係 で
の何 か 良好 な 関 係 性 を 「親 密 性 」 と呼 ん で お り 目指 すべ き もの と して 捉 え られ
て い る とい え るだ ろ う。
わ が 国の 研 究 者 は どの よ う に捉 えて い るの で あ ろ うか。 例 えば 、 平 木 典 子 は
「親 密 性 」 を 「『自律 性 の共 有 』 で あ り、 『結 合 と分 離 』 の一 見 相 反 す る状 態 が
共 存 す るパ ラ ドキ シ カル な 状 況 に耐 え、 人 間 と して対 等 で、 全 人 格 的 な 関 わ り
121
羽 渕 一代
を 持 つ こ とが 出来 る人 間 同 士 が 到 達 し うる 関 係」 と して い る[平 木,1994:2126]
。
上 記 の 「親 密 性 」 の 内容 を検 討 した 結 果 、 「実 現 され る べ き親 密 性(そ の 中
身 は確 定 す る こ とは 出来 な い もの の)」 とい うぼ ん や り した 目標 が設 定 され て
い る こ とがわ か る。 そ の 意 味 内 容 は依 然 と して 明確 とは い え な い。
「親 密 性 」 を(実 体 と して)正 面 か ら捉 え よ う と した研 究 はな いの だ ろ うか 。
婚 姻 や 恋 愛 に関 す る研 究 の 中 に は 「親 密 性 」 が い かな る もの か探 求 して い る も
の もあ る。
カナ ダ の精 神 医学 者 で あ る エ ドワ ー ド ・M.・ ウ ェア リン グ は、 結 婚 の 初期
の 「親 密 性 」 を計 るス ケ ー ル を作 成 して い る。 これ を参 考 に して み よ う。 ウ ェ
ア リン グは 人 々の も って い る 「親 密 性 」 を探 るた め に 「親 密 性 」 の 尺 度 化 を試
み て い る。 そ の 結 果 、 「親 密性 」 とは 婚 姻 関 係 を調 整 を して い る初 期 の デ ィメ
ン シ ョン で あ り、8つ の下 位 尺 度 に よ って 尺 度 化 され る と して い る。
そ れ は、 「葛 藤 解 決 」 「愛 情 」 「紐 帯 」 「セ ク シ ュア リテ ィ」 「ア イ デ ン テ ィテ
ィ」 「共 存 」 「自律 性 」 「表 現」 で あ る。
「葛 藤 解 決 」 とは 、 異 な った 意 見 を解 決 した や す ら ぎ感 で あ る。
「愛 情(affection)」
とは 、 カ ップ ル に よ って 表 現 さ れ た感 情 的 密 接 さ の
度 合 い であ る。
「紐 帯(cohesion)」
とは、 結 婚 へ の 感 情 的 コ ミ ッ トメ ン トの こ とで あ る。
「セ ク シ ュア リテ ィ」 とは 、結 婚 に お け る性 的欲 望 の コ ミ ュニ ケー シ ョン
の 状 態 と性 的 欲 望 の 満足 度 合 い で あ る。
「ア イ デ ン テ ィテ ィ」 とは、 カ ップ ル に お け る 自己信 頼 と自己 尊 重 の 程 度
で あ る。
「共 存 」 とは 、 共 に快 適 に仕 事 や余 暇 を こ な す こ と出来 る度 合 いで あ る。
「自律 」 とは 、 家 族 の 出 自 と彼 らの子 孫 か ら どの く らい独 立 して 自立 した
稼 ぎを カ ップ ル が 持 っ て い る か とい う こ とで あ る。
「表 現 」 とは 、 思想 、 信 念 、 態 度 、 感 情 が 結 婚 の 中 に どの程 度共 有 で きて
い る か とい う こ とで あ る[E.Waring/J.Reddon,1983:53-57]。
122
「
親密性」の意味転換
この 項 目の 作 成 に あ た って 、 ウ ェア リン グ は 以下 の事 項 につ いて 強 調 して
い る。 一 つ 目 と して 心 理 学 理論 を 援 用 し作 成 した こ と、 二 つ 目に抑 圧 した 反
応 の 可 変 性 の 必 要 性 を 考 慮 した こ と、三 つ 目に項 目の選 択 の手 続 きの 正 当 性
につ いて 配 慮 した こ と、 最 後 に 尺 度 の 均 質性 と一 般 性 を 高 め た こ との4点 で
あ る[E.Waring/J.Reddon,1983:53]Q
一 方 、 わ が 国の 研 究 者 で は 山 田 昌 弘 が 恋 愛 研 究 に お い て 「親 密 性 」 の メ カニ
ズ ム につ いて 考 察 して い る。
山 田 に よれ ば 「親 密 な 関 係 とは コ ミ ュニ ケ ー シ ョン が 活 性 化 して い る状 態 だ 。
『愛 は み る、 き く、 さわ る』 とい う よ う に、言 語 的(話 す ・聞 く)、身 体 的(見
る ・さわ る)、 物 的(あ げ る ・も ら う)コ ミ ュニ ケ ー シ ョン が 、 自然 に障 害 な
く行 わ れ て い る 『状 態 』 を親 密 性 と把 握 して お こ う。 人 間 が 生 活 の 中 で 多 くの
人 と接 触 し、 コ ミ ュニ ケ ー シ ョン を もつ よ うに な る と、 『好 きな 人 』 と 『嫌 い
な人 』 が 出 て くる。 好 きな 人 とは もっ とコ ミ ュニ ケ ー シ ョン した くな り(感 情
レベ ル)、 そ して 実 際 に コ ミ ュニ ケ ー シ ョン を す る よ うに な る(関 係 レベ ル)。
コ ミ ュニ ケ ー シ ョン があ る一 定 レベ ル に達 す る と、 安 定 した 親 密 な 関係 が形 成
さ れ る。
・ゲ シ ュタ ル ト療 法 の コ ミ ュニ ケー シ ョン の 深 さの 理論 を援 用 して、 挨
拶 、 役 割 、 デ ッ ドゾ ー ン(沈 黙)、 オ ー セ ン テ ィ ック の 四 つ の 段 階 を この 一 定
レベ ル に達 す る基 準 」 と して い る[山 田,1992:61-62]。
ウ ェア リン グ、 山 田 の研 究 は、 あ る社 会 にお け る恋 愛 、 婚 姻 とい った 限定 さ
れ た 中 で の 「親 密 性 」 を探 り出す 尺 度 と して は 十 分 機 能 して い る と思 わ れ る。
この 両 者 が 自覚 して い る よ う に、 「親 密 性 」 とい う もの が 様 々な 関 係 性 の 中
で様 々 に存 在 して い る こ とか ら、 「親 密 性 」 とい う もの は 可 変 性 の 高 い もの な
の で あ る。 可 変 性 が 高 く、 定 義 が そ れ ほ ど明確 で は な い に も関 わ らず 、 「親 密
性 」 が 良好 な人 間 関係 につ い ての 規 範 と して 機 能 して きた 、 とい う こ とを これ
らの研 究 か ら推 測 す る こ とは難 しい こ とで は な い と思 わ れ る。
こ うい った 「親 密 性 」 の 意 味 の 現 代 的 可 変性 に関 連 して、 「共 依 存 」 とい う
言 葉 が重 要 な意 義 を持 つ に い た っ て い る。 以 下 に おい て この 概 念 と 「親 密性 」
との 関 係 を考 察 す る。
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羽 渕
2孤
一 代
立 へ の 恐 怖 と融 合 へ の 恐 怖
「親 密 性 」 を め ぐる問 題 とい う観 点 か ら 「親 密 性 」 につ い て 考 え た ウ ィ リ ・
パ ジ ー こ とい う研 究 者 が い る。 パ ジー 二 に よれ ば 「親 密 性 」 は 様 々に あ り うる
もの で あ る 〔パ ジー二/訳 書,1995:41-180]。
論)一
愛 と性 の 彼 方 で一
彼 の著 書 『イ ソ テ ィマ シー(親 密
』 に よれ ば、 「親 密 性 」 とは文 化 ・社 会 的 に異 な
る もの で あ り、 性 差 、 また 個 々人 に よ って も異 な る。 ま た 、 そ の 「親 密 性 」 も
病 的 な もの か ら良好 な もの まで そ の デ ィメ ン シ ョン は数 限 りな く列 挙 さ れ て い
る。 しか し、 この 著 述 は 「親 密 性 」 の 能 力 的 な欠 陥 を 臨床 例 か ら記 述 してあ る
こ とか ら、 「親 密 性 」 の 不 足 の 実 体 を捉 え て も 「親 密 性 」 その もの の 実 体 を捉
えて い るわ け で は な い 。
人 に よ って 「親 密 性 」 に つ い て の見 方 が ち が う た め、 精 神 医 学 や 心 理 学 の 分
野 で は 一 言 で あ らわ す こ とが で きな い よ うで あ る。
「親 密 性 」 とは 、 「他 人 の皮 膚 の 中 に身 を置 きな が ら も、 自分 の 膚 を失 わ ず
に お れ る能 力 を意 味 す る」 とパ ジ ー 二 は 述 べ て い る[パ ジー 二/訳 書,1995:53]。
この 皮膚 とい う言 葉 が 自己 の境 界 線 の メ タ フ ァー で あ る、 と私 は 解釈 す る。
自己 の境 界 線 と他 者 の境 界 線 との ス タ ン スの 問 題 と して 「親 密 性 」 の 問題 は語
られ る こ とが多 い よ うで あ る。
「親 密 性 」 とい う もの は 、 必 要 性 か ら生 じると い う前 提 が一 般 的 に は あ る と
思 わ れ る。 「親 密 性 」 が 必 要 な 関 係 性 に お い て 過 不 足 な く愛 情 の 交 換 が お こな
わ れ て い る場 合 、 「親 密 性 」 とい う もの は 存 在 す る とい え よ う。
しか し、 「親 密 性 」 に は 必 要 性 だ け で は な く、 そ の 充 当 に対 す る恐 怖 も存 在
す る。
「親 密 性 」 に関 わ る恐怖 は二 通 りにわ け られ る。 融 合 を恐 れ て 自己 の 境 界 線
を守 る もの と、 孤 立 を恐 れ て 自己の 境 界 線 を放 棄 して しま う もの とで あ る。
自己 の境 界 線 を守 りす ぎる もの に対 して 、 パ ジー 二 は 「融 合 へ の 恐 怖 」 と呼
ん だ[パ ジー二/訳 書,1995:55-58]。
この融 合 へ の恐 怖 が助 長 され る と、 自己 と他 者 との 関 係 が 、 個 々人 の孤 立 と
い う極 に近 づ く。 この よ うな 形 態 は 、 対 人 恐 怖 、 ひ き こ も り、 と呼 ば れ る よ う
124
「
親密性」の意味転換
な ひ とつ の 問 題 現 象 と して 捉 え られ て い る。 また 、 そ こま で深 刻 な 問題 で な い
場 合 に お い て も、 「融 合 へ の 恐 怖 」 は くお た く〉 とい っ た現 象 に 代 表 され る コ
ミ ュニ ケー シ ョン不 全 症 候 群 の 個 人 的 要 因 とな って い る。
「親 密 性 」 は、 恥 じ らい や 気 後 れ とい った 弱 み を 保 護 して い る鎧 を放 棄 す る
よ うに要 請 す る。 つ ま り、 「親 密 性 」 が 増 大 す れ ば す るほ ど、 他 者 は 自己 の秘
密 に近 づ き、 自身 も他 者 の 秘 密 へ と近 づ くこ とに な る 。こ うい った 「脱 衣 行 為 」
は 、 当然 、恐 怖 が つ きま と う。
例 え ば 、 中 島梓 は くお た く〉 を分 析 し、 「… お タク とい う呼 び か け に よって 、
彼 等 は 自分 の 陣地 を守 る ん だ ぞ、 とい う態 度 を 明 らか に した 。 お タ ク、 つ ま り
あ ん た の 家 、 に 呼 び か け る事 は、 自分 の家 か らの 呼 び か けで あ る。 彼 等 は い っ
も大 量 の 宝物 を紙 袋 に つ め て、 バ ック ・レデ ィー さな が らに 自分 と とも に持 運
ん で い る が、 … そ れ らの 紙 袋 とそ の な か み は 、彼 ら(マ マ)の 自我 の殻 そ の も
の な の で あ る。」 と述 べ て い る[中 島,1991:38-39]。
一 方 、 孤 立 を怖 れ て 自己 の境 界 を放 棄 して しま う こ と こそ 「親 密 性 」 の あ る
べ き姿 で あ る、 と思 わ れ るか も しれ な い。 この状 態 が助 長 され る と自己 と他者
の 関 係 が 融 合 とい う極 に近 づ く。 この形 態 の一 つ が 「共 依 存 」 で あ る。 この 言
葉 は も とも と、 ア ル コー ル 嗜 癖者 に寄 り添 い、 世 話 を し、 叱 咤 激 励 す る配偶 者
が、 共 依 存 症 者 と名 付 け られ た こ とが発 端 で あ る6
相 手(嗜 癖 者)の
こ とを考 え な が ら、 現 在 の(親 密 な)関 係 性 が 破 綻 しな い
よ う に手 だ て を尽 くす 、 とい う こ とが病 的 に な っ た もの を 「共 依 存 」 と称 して
い る。 こ こか ら、 概 念 が 広義 な もの に な り、 ギ デ ン ズ が整 理 した よ うな もの に
な っ た。 ギ デ ンズ の 整 理 した もの とは 、 次 の 通 りで あ る。
共 依 存 症 の(人)と
は 、 生 き る上 で の 安 心 感 を維 持 す る ため に、 自分 の 求
め て い る もの を 明確 に して くれ る相 手 を、 一 人 な い しは複 数 必 要 と して い る
人 間 で あ る。 つ ま り、 共 依 存 症 者 は 、 相 手 の 欲 求 に一 身 を捧 げ て い か なけ れ
ば、 み ず か らに 自信 を持 つ こ とが 出来 な い の で あ る[Giddens,1992:89]。
「共 依 存 」 が な ぜ 問題 に な る か。 それ は、 問 題 で あ る嗜癖 者 が存 在 しな け れ
ば 、共 依 存 症 者 が親 密 な 関係 性 を保 て な い こ とか ら、 又 自分 の ア イ デ ン テ ィテ
12∫
羽 渕 一代
ィが失 わ れ て しま うこ とか ら、 関 係 す る他 者 の 嗜 癖 行 動 を助 長 す る こ とに な っ
て しま うか らで あ る。
他 者 の要 求 を 中心 に ア イ デ ン テ ィ テ ィが 保 た れ て い る場 合 、他 者 の要 求 が 自
己 の要 求 に転 換 され る とい う過 程 にお い て 自己 は失 わ れ て い る とい え る。 つ ま
り、 他 者 と自己 が 自己 を失 って しま うほ どの融 合 状 態 に あ る と もい え る。
自己 と他 者 が 相 互 の 境 界 線 を喪 失 した 融 合 状 態 で あ る 「共 依 存 」 は、 「親 密
性 」 とは 呼 べ な い と多 くの 研 究 者 等 は 指 摘 して い る(1)。厳 密 に 言 えば 、 「共 依
存 」 は真 の 「親 密 性 」 で は な い とい う こ とに な る。
パ ジー 二 自身 は 「共依 存 」 とい う概 念 を使 って い な い が、 彼 の言 う とこ ろの
「他 者 の た め に 生 き る と呼 ん で い る もの と結 び つ い た病 理 」[パ ジー二/訳 書,
1995:57]と
い う もの が 「共 依 存 」 で あ る。
「良 好 な親 密 性」 ま た は 「真 の親 密 性 」 とは、 この 自律 と融 合 の 微 妙 な バ ラ
ン ス の上 に な り立 って い る 関係 の こ とで あ る ら しい。 よっ て、 極 度 の 自律 に傾
い て も極 度 の融 合 に傾 い て も 「真 の親 密 性 」 は崩 壊 す る(2も
しか し、 この よ うな微 妙 なバ ラ ン ス を保 っ た 「真 の 親 密 性 」 は 現 実 に存 在 し
う るの だ ろ うか。
3「
共 依 存 」 概 念 の 検討
見 田宗 介 は、1962年 の 読 売 新 聞 の 身 の 上 相 談 か らそ の 時 代 に お け る不幸 の諸
型 態 とそ の社 会 的 基 盤 の 分 析 を行 って い る。 この うち の 「質 的 代表 性 」 を持 つ
と思 わ れ る事 例 の 中 に、 現 在 で あ れ ば 「共依 存 」 と名 付 け られ る関 係性 を見 い
だ す こ とが で き る。
事 例39歳
の 妻 。 中 学 生 の 長 女 を か しらに3人 の子 が い ま す。14年 前 兄 ま
かせ の 見 合 い結 婚 を した の で す が 、結 婚 後 半 年 もた た な い うち に、 夫 はバ ク
チ を始 め 、 私 の 着 物 も全 部 売 り、近 所 じゅ う借 金 だ らけ とな りま した。 別 れ
た い と思 い ま した が 、 実 家 に 帰 っ て 兄嫁 と暮 らす の が嫌 さ に ぐず ぐず して い
る うち 、 子 どもが 出 来 て しま っ た の で す。 勤 め に は 月 の半 分 もい か ず、 カ ヤ
か らユ カ タま で 質 に 入 れ て 酒 を飲 ん で はバ ク チ に ふ け る の で す。 親 に も らっ
126
「親密性」の意味転換
た 家 を処 分 して 、 東 京 の姉 の家 を た よ りに上 京 しま した が 、 家 の代 金 も半 分
は バ クチ に も って い か れ て しま い ま した。 東 京 に きて か らは 競輪 に こ りは じ
め 、 私 が 病 院 で 二 女 を 出産 して家 に帰 る と、 タ ンス も 内職 用 の ミシ ン も全 部
な くな って い ま した 。裁 ち板 、ハ サ ミま で お金 に か えて 遊 び にい って しま う
の で す 。 働 い て くれ と頼 む と うる さ い とな ぐ られ るの で 、 い まは 私 と子 ど も
が 働 い て どうや ら暮 ら して い ま す。 子 ど もは私 が引 取 って 別 れ た い と思 い ま
す が一
。(東 京 ・一 主 婦)[見 田、1984:17-18]
この 事 例 に対 して 見 田 は こ う した非 道 な夫 を もっ た女 性 達 に とって 離 婚 して
も 「行 く所 が な い」 とい う要 因 ・関 連 分 析 を して い る[見 田,1984:1-18]。
つ
ま り、 社 会 的 に 「出 戻 り」 は 白い 目で見 られ、 国家 的 な保 障 はな い 、 とい う社
会 的 障 壁 を問 題 に して い る。
こ うい った 不 幸 の 要 因 を 社 会 的 障壁 に 求 め る こ とは、 この 時 代 で あ れ ば 、 我
々が 一 つ の カ タル シ ス を 得 る こ とが で きた の だ と思 わ れ る。 しか し、 現 在 で は
要 因 を 社 会 的 基 盤 に 求 め て も、 カ タ ル シ ス は得 られ な い。 個 人 の 離 婚 は 、30年
前 に比 べ て 比 較 的 容 易 に な っ て い る。 人 々 は、 別 れ た くて も別 れ られ な い 理 由
を外 部 要 因 に 求 め る こ とは で きな くな っ た結 果 、 個 人 的 な理 由 を探 さな け れ ば
な らな くな っ た の だ 。 個 人 的 な理 由 と して 、 「共 依 存 」 とい う言 葉 が生 ま れ た
とも考 え られ る。
以 下 の 事 例 は 、10年 前 の もの で あ る が、 共 依 存 症 で あ る、 と斎 藤 学 が 分 析 し
た もの の 一 つ で あ る。精 神科 医 で あ る斎 藤 学 の開 く共 依 存 専 門 の 治 療 機 関 に訪
れ た 女 性 の 事 例 で あ る。
夫 の お 酒 は 結 婚後 ま もな くか らで、 私 は ナ ゼ ナ ゼ といつ も思 って い た の で
す が 、 人 に も相談 で きず に一 人 で抱 え込 ん で き て いた の で す 。 夫 が 暴 れ て 夜
中 に(私 が)逃 げ た 時 で も、翌 日は何 事 もな か った よ う に振 る舞 って い ま し
た 。 そ ん な私 で も離 婚 を考 え た こ とは何 度 もあ ります し、 せ め て静 か に過 ご
せ た ら と何 十 回 も思 い ま した が、 そ の た び に 『で も …… 』 と考 え て踏 み きれ
な か った の で す。 そ して、 夫 の お酒 か ら逃 げ て は 行 け な い 、逃 げ られ な い と
思 い こん で しま っ て い た の で す。 人 に相 談 を持 ち 掛 け る とい う こ とが 、逃 げ
127
羽 渕 一代
出す こ とに な る とい う閉 じ こめ られ た 考 え方 を して い ま した[斎 藤,1995:
59-60,()内
筆者補足]。
この 女 性 に対 して、 「で も」 の罠 に 閉 じ こめ られ 、 身 動 き とれ な くな って い
る と し、 自分 の幸 せの た め だ け 自分 の 力 と金 銭 と時 間 を 使 う よ うに助 言 し続 け
た 、 と斎 藤 は述 べ て い る。
と ころ が、 こ うい った 事 例 に もあ る よ うな 不幸 が 、 人 と人 を 結 び つ け る紐 帯
で あ る と した ら ど うだ ろ う。 共 依 存 的 関 係 は 当 事 者個 人 達 に と って は必 要 な こ
とで あ る。
「〈夫 に虐 待 され て もけ な げ に耐 え る私 〉 が好 きな私 」 と 「〈ろ くで もな い夫
で あ る 自分 に我 慢 す る妻 の 支 え に〉 拘 束 され る こ とが 好 きな夫 」 の 関係 性 に は、
隔 た りは存 在 して い な い、 と考 え られ は しな い だ ろ うか 。
「共 依 存 」 は そ れ で も 「真 の 親 密 性 」 で は な い 、 とい わ れ る。 しか し、 こ う
い った 「親 密 性 」 に真/偽 の 区 別 を つ け て い くこ とは 、誰 に とっ て意 味 の あ る
こ とな の だ ろ うか。
ア ル コー ル 中毒 、 ば くち 打 ち 、 麻 薬 中 毒 とい った 問 題 行動 は 、個 人 側 の不 幸 、
とい う側 面 もあ るけ れ ども、 これ らを 「問 題 」 と して 見 て い るの は誰 な の か を
明確 に さ せ る必 要 が あ る。 どこか らが 「偽 の 親 密 性 」 で あ り、 ど こか らが 「真
の親 密 性 」 で あ る と誰 が 判 定 す るの か 、 そ れ を 明 確 に す る必要 が あ る の だ。
「共 依 存 」 とい う概 念 自体 は 、 臨 床 の 現 場 で 問 題 改 善 の た め に使 わ れ る道 具
と しての 言 葉 で あ る。 しか し、 臨 床 の 場 か ら この 言 葉 が 社 会 へ流 出 した とき、
わ れ わ れ は必 要 以 上 に 「真 の 親 密 性 」 へ 到 達 す る よ う強 迫 的 に 促 さ れ る の で は
な い だ ろ うか。
「共 依 存 」 とい う概 念 構 築 は、 「真 の親 密 性 」 と 「偽 の 親 密 性 」 とを わ け る
とい う機 能 を果 た し、 新 し く 「真 の親 密 性 」 とい う幻 想 を わ れ わ れ に う えつ け
た とは い えな い だ ろ うか 。
4結
語
臨 床 に携 わ る人 々が ひ とつ の説 明 の言 葉 と して 「共 依 存 」 とい う概 念 を作 り、
128
「親密性」の意味転換
臨 床 の場 で役 立 て よ う と した もの が、 臨 床 以 外 の 場 に流 出す る こ とに よ って 、
人 々が 強迫 的 に 「真 の親 密 性 」 を 目指 す よう にな って しま う、 とい う可 能性 に
つ い て 考 察 して きた。
彼 等 が 「偽 の親 密 性 」=「 共 依 存 」 とす る こ との 機 能 につ い て 理 解 で きな い
わ け で は な い。 しか し、 「偽 の 親 密 性 」 に対 応 す る 「真 の 親 密 性 」 は どの よ う
な もの で あ る か は 明 確 で は な い。 「真 の 親 密 性 」 は わ れ わ れ に とっ て 本 当 に 必
要 な もの な の だ ろ うか 。 「偽 の 親 密 性 」 を設 定 す る こ とで 、 あ た か も 「真 の 親
密 性 」 が あ るか の よ うな幻 想 を わ れ わ れ に うえ つ け、 人 間 の あ るべ き関 係 性 と
い う もの を規 定/拘 束 して い る側 面 もあ るの で は な い だ ろ うか。 共 依 存 とい う
言 葉 の 出現 は 「真 の親 密性 」 と 「偽 の親 密 性 」 を わけ る、 とい う機 能 を果 た し
て い る。 加 えて 、 人 々は 本 物 の 「親 密性 」 を求 め な け れ ば な らな い とい う強 迫
観 念 にか られ て い る、 とい え るの で は な い だ ろ うか。
また 、 個 人 的 な 不 幸 の要 因 を社 会 的基 盤 の せ い に す る の で は な く、 個 人 的 な
原 因 に帰 結 させ よ う とい う考 え方 の根 底 に は、 社 会 的権 力構 造 の潜 在 的 存 在 が
あ る の で は な い か と私 に は感 じ られ る。 「親 密 性 」 に まつ わ る研 究 は この 権 力
構 造 の 研 究 を援 用 しな け れ ば 解 け な い 問題 で あ る と思 わ れ る。
今 後 の課 題 と して は 、 「親 密 性 」 に対 して権 力論 的 ア プ ロ ー チ の必 要 性 が あ
ろ う。
また 、 他 の 視 点 か ら も 「共 依 存 」 に 関 して、 これ を批 判 し、 権 力 論 的 分 析 の
必 要 性 を根 拠 づ け て い る論 考 もあ る[ベ プコ/訳 書,1997:70]。
例 えば 、 ク ラ ウデ ィア ・ベ プ コ らフ ェ ミニ ス ト ・セ ラピ ス トの立 場 の もの が
そ う で あ る。 「共 依 存 」 とい う言 葉 が、 以前 は 正 常 で 機 能 的 だ と考 え られ て い
た 社 会 的 役 割 を引 き受 け て い る女 性 の セ クシ ュア リテ ィを 同 じ意 味 内容 を指 し
示 して い る とい う理 由で 、 と くに女 性 を 悪者 に して非 難 した、 と彼 女 た ち は 批
判 して い る。 今 日、 彼 女 た ち が 「共 依 存 」 とみ て い る行 動 パ ター ン は 、 抑 圧 的
で 家 父 長 的 な 規 範 的 家 族構 造 に 固執 す る こ とに よっ て受 け た 傷 で あ る。 とこ ろ
が 、 「共 依 存 」 とい う言 葉 は 問 題 を個 人 的 な もの に し、 個 人 の な か に 押 し と ど
め る役 割 を果 た した 。 実 際 に は 、 も っ と大 きな社 会 構 造 のな か に この 問 題 は あ
る、 と彼 女 ら は主 張 して い る。
こ こ か ら、 「共 依 存 」 とい う神 話 の一 定 の修 正 を彼 女 らは迫 っ て い る。 そ の
129
羽 渕
一 代
試 み と して 、 相 互 責 任 と関 係 性 へ の 責 任 に つ い て 、 権 力 の つ り あ い の とれ た 物
語 構 築 を 彼 女 らは 提 案 して い る 。
フ ェ ミ ニ ス ト ・セ ラ ピ ス トら の 「共 依 存 」 へ の 批 判 は 、 私 の 批 判 の 根 拠 と は
異 な る も の の 、 「共 依 存 」 概 念 を 分 析 す る 方 向 と し て は 、 同 じ方 向 を 向 い て い
る 。 個 人 的 な 特 性 と し て 「共 依 存 」 を 理 解 す る の で は な く、 複 数 人 の 関 係 性 の
な か に あ る形 態 と し て 理 解 さ れ る べ き もの で あ る 、 と考 え る か ら だ 。
も う 一 点 の 課 題 と し て 、 「共 依 存 」 概 念 が 西 欧 型(あ
る い は 近 代 的)個
人主
義 の 価 値 観 に 基 づ い て つ く ら れ た 概 念 で あ る とい う こ とか ら 、比 較 文 化 的 な 「親
密 性 」 研 究 に お け る 「共 依 存 」 概 念 の 布 置 に つ い て 、 考 察 の 必 要 性 が あ げ ら れ
る。
亀
注
(1)「 共 依 存 」 とい う関 係 性 につ い て 、 「親 密 性 」 と正 面 き って 比 較 して い る代 表 的 な
研 究 者 と して は 、 ギ デ ン ス が あ げ られ る[Giddens,1992:92-96]。
また、斎藤学
は、 「共 依 存 」 を も とに 問 題 とな る嗜 癖 行 動 は お こ る、 と述 べ て い る。 そ うい った
「共 依 存 」 的 関 係 を築 い て い る当 人 た ち は 、 現 在 あ る親 密 な 関 係 を 保 つ た め の 努 力
を して い るつ も りに な って い る、 とい う こ とを指 摘 して い る[斎 藤,1989:1-2]。
(2)こ
ういった 「
親 密 性 」 に 関 す るバ ラ ソス の 問 題 に つ い て は 、 エ リク ソ ン[エ
ソン/訳 書,1977:339]、
パ ジ ー 二[パ
ジー 二/訳 書,1995:48-53]が
リク
、 指 摘 して
い る。
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131
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