...

はじめに・目次・P1~P41 - 愛知県建築物地震対策推進協議会

by user

on
Category: Documents
14

views

Report

Comments

Transcript

はじめに・目次・P1~P41 - 愛知県建築物地震対策推進協議会
は
じ
め
に
我々の住む愛知県は、地震活動の盛んなわが国の中でも有数の地震県であります。
ここ百数十年の間にも、1891年の濃尾地震、1944年の東南海地震、1945年の三河
地震と、死者千人規模以上の地震を3回も経験しており、本県では内陸の活断層の
活動に伴う地震と、フィリピン海プレート境界附近で発生する地震の双方を想定す
る必要があります。
特に近年では、大規模地震の予知に対する観測体制の整備や研究が進み、近い将
来発生すると言われている駿河湾を震源地とする東海地震については、平成13年
11月に国の中央防災会議により新たな震源地に基づく地震動や津波の分布につ
いて取りまとめが行われ、平成14年4月にはおおむね震度6弱以上の地震動が予
測される地域を含む県内の58の市町村(現在合併により39市町村)が新たな地
震防災対策強化区域として指定され、また平成15年12月には東南海・南海地震
に係る地震対策推進地域が県内の78の市町村(現在合併により51市町村)で指
定されました。
こうした地震による災害の軽減を図るためには、まず建築物の耐震性を向上する
とともに災害を少なくするような施設管理を行うことが必要です。先に平成7年に
発生した阪神・淡路大震災では、6,400名を超える尊い人命が失われ、約49万棟
の住宅が被害を受けました。犠牲者のうち約8割の方が建築物の倒壊等による圧迫
死や窒息死によるものであったことから、特に老朽化した既存建築物については耐
震診断を行い、必要に応じて建替え、耐震改修を行うなど耐震性の向上が危急の課
題であります。
そして、万一災害が発生した場合には迅速な応急・復旧対策を行うことが必要と
なります。被災建築物の応急危険度判定につきましては、本県では、平成7年度か
ら応急危険度判定士講習会を実施し、平成26年度末で、約8,133名の方々に登録
をいただいております。
この制度は、皆様方のご協力無くしてできるものではありません。特に大規模な
地震が発生し広い範囲で建築物に被害が生じた場合、現状では「応急危険度判定士」
が不足すると想定されています。いざという時のために備えるため、1人でも多く
の方々に「応急危険度判定士」として登録していただきますようお願いします。
目
1
総則
··································································
Ⅰ
愛知県に影響を与える地震
Ⅱ
建築物の地震対策の現状
Ⅲ
応急危険度判定実施の目的
2
1
··············································
3
············································
9
····················································
11
··················································
11
····················································
11
······················································
13
Ⅰ
判定制度の位置づけ
Ⅱ
判定の基本的事項
Ⅲ
判定の関係機関
Ⅳ
判定士業務マニュアル
················································
被災建築物の応急危険度判定
15
············································
26
··········································
26
Ⅰ
建築物の応急危険度判定基準
Ⅱ
木造建築物の応急危険度調査判定マニュアル
Ⅲ
鉄骨造建築物の応急危険度調査判定マニュアル
Ⅳ
4
1
············································
応急危険度判定制度
3
次
····························
39
··························
57
鉄筋及び鉄骨鉄筋コンクリート造建築物等の応急危険度調査判定マニュアル ··
76
建築物の応急復旧マニュアル
Ⅰ
総
Ⅱ
応急復旧
5
則
······························································
94
····························································
97
【1】
木
造
························································
【2】
鉄骨造
【3】
鉄筋コンクリート造
························································ 101
············································ 104
応急危険度判定士の登録等申請手続
Ⅰ
登録申請・更新・変更等
参
考
98
······································ 106
·············································· 106
······························································ 115
気象庁震度階級関連解説表
兵庫県南部地震被害状況写真
·········································· 115
········································ 116
兵庫県南部地震応急危険度判定活動状況写真
·························· 121
1
総則
Ⅰ
愛知県に影響を与える地震
私達の住んでいる地域、愛知県はわが国のほぼ中央、太平洋岸に面する東海地方の
中心に位置し、大規模な山岳地形はないが、地質構造運動の点で、本州でも複雑で激
しい地域に属しています。
特に愛知県南東部では、北東から南西方向に中央構造線が横断しており、濃尾平野
の西縁には養老-桑名-四日市断層帯(三重県)が南北に走っています。この断層帯
を西縁として、濃尾平野から猿投山にかけての地盤は、東が高く西が低下する東高西
低の濃尾傾動地塊運動が進行しています。そして、西部に位置する濃尾平野の西側部
分では、沖積層、洪積層が厚く分布し、軟弱地盤地帯を形成しており、地表部は低湿
地となっています。一方、東部では、台地、丘陵地、さらに猿投山などの三河山地が
続いています。
これに対し、名古屋東部の尾張丘陵から知多半島にかけては、愛知県の中央部が内
湾ないし湖水化したときに体積した第三紀の地層が丘陵を形成しています。
また、愛知県には濃尾平野、西三河平野および東三河平野があり、臨海部には、伊
勢湾や三河湾沿いに17世紀以降の新田開発や治水事業の推進に伴う干潟・干拓地が存
在し、更に、昭和30年以降の港湾施設の設備拡充、臨海工業地帯の造成に伴う埋め立
て地が、その規模を急速に拡大しつつあります。
このような状況の中で、愛知県に大きな被害を及ぼすと考えられる大地震は、東海
地震と東南海地震があります。東海地震は、駿河トラフで発生する地震であり、東南
海地震は南海トラフで発生する地震です。東海地震、東南海地震ともに海溝型の地震
であり、約100年から150年程度の周期で繰り返し地震が発生しています。
平成14年4月24日には、大規模対策特別措置法に基づき、東海地震が発生した場合
に「著しい地震災害が生ずるおそれがあるため、地震防災に関する対策を強化する必
要がある地域」として、地震防災対策強化地域が指定されており、また、平成15年12
月17日に東南海・南海地震がかかる地震防災対策の推進に関する特別措置法に基づき
地震防災対策推進地域が指定されています。県内の指定状況は39市町村が強化地域で
あり、51市町村が推進地域となっており、どちらにも指定されていないのは豊根村の
みとなっています。
平成14年度に行った愛知県東海・東南海地震等被害予測調査では、東海地震が発生
した場合は、渥美半島、県東部では、大半が震度5強から6弱、一部地域で6強であ
り、その他の地域では大半の地域が震度5弱以上になると予測しています。
-1-
建物及び人的被害については、揺れ・液状化による全壊棟数が約12,000棟となって
おり、死者数約270人、負傷者数が約12,000人となっています。
また、同調査では東南海地震が発生した場合、震源に近い渥美半島・知多半島の一
部で震度6強、山間部を除く大半の地域で震度6弱となると予測しています。建物及
び人的被害については、揺れ・液状化による全壊棟数が約60,000棟となっており、死
者数約1,300人、負傷者数が約47,000人となっています。
その他にも、猿投-高浜断層帯、養老-桑名-四日市断層帯、名古屋市直下断層、
加木屋断層帯など活断層が集中している本県周辺では、内陸直下型地震の危険性も高
いといえます。
中でも猿投-高浜断層帯については、内閣府の中央防災会議の被害想定で、マグニ
チュード7.6の地震が発生するとされており、濃尾平野東部、また岡崎平野南部の一部
では震度7、愛知県西部の広い範囲では震度6強以上となっています。
建物及び人的被害については、全壊・焼失棟数が約30万棟、死者数11,000人、負傷
者数は約69,900人となっています。
(建物及び人的被害については、愛知県外の被害も
含む)
このような様々な地震による危険性が危惧されている中で、兵庫県南部地震「阪
神・淡路大震災」の被害状況等を教訓として、海溝型大地震と内陸直下型大地震を合
わせた地震についての適切な対策及び対応が求められています。
(追記)
平成26年5月30日に愛知県防災会議地震部会より公表された「愛知県東海地震・東南海地震・南海地震
等被害予測調査結果」によると、南海トラフで発生する地震のうち、あらゆる可能性を考慮した最大ク
ラスの地震を想定した場合において、県内の広い範囲において震度7の非常に強い揺れになると予測し、
県内全市町村において震度6弱以上になると予測しております。
建物被害については、建物等被害が最大となるケースでは、揺れによる全壊棟数が約242,000棟となっ
ており、液状化による全壊数が約23,000棟となっています。
人的被害については、死者が最大となるケースでは、建物倒壊等による死者数約14,000人となってい
ます。
-2-
Ⅱ
建築物の地震対策の現状
1
建築物の主な行政施策と関連する被害地震
建築物の地震対策としては、従来から建築基準法等で地震に対して安全な構造とす
るため主に新築建築物に対する技術的規制がなされてきたところであります。しかし、
最近、国内において大規模な地震がたて続き発生しており、特に、
「阪神・淡路大震
災」は戦後最大の被害をもたらし、自然災害の驚異を改めて見せつけられる結果とな
っています。また、建設省(現:国土交通省)の要請により国内ではじめて応急危険
度判定が実施され、全体で建設省(現:国土交通省)・都道府県等の職員延べ5,068人
が判定に携わりました。本県においても、平成7年1月24日から2月6日までの4次
にわたり、県職員35名、県内の市町村職員23名、住宅供給公社職員2名、合計60名を
派遣し、被災地の応急危険度判定を支援してまいりました。このような状況をふまえ
平成7年12月25日に「建築物の耐震改修の促進に関する法律」が施行されました。こ
の法律は、多数の人が利用する一定規模以上の特定建築物に耐震診断・改修の努力義
務を課したもので、現行の耐震基準等に適合しない既存建築物の耐震性の向上・促進
を主な目的としています。また、さらなる既存建築物の耐震性の向上の促進等を目的
として平成18年1月26日に「建築物の耐震改修の促進に関する法律の一部を改正する
法律」が施行されました。
本県においては、平成19年3月に愛知県建築物耐震改修促進計画を策定し、この法
律に基づき県における住宅・建築物の耐震化を促進しております。
なお、過去に発生した被害地震と各施策についての概要は、5ページのとおりです。
(追記)
本県においては、平成24年3月に新たな「愛知県建築物耐震改修促進計画」(あいち建築減災プラン
2020)を策定しており、国の動きに関しては、平成25年5月29日に「建築物の耐震改修の促進に関する
法律の一部を改正する法律」が公布(平成25年11月25日施行)されているところです。
2
地域防災計画における建築物の防災対策
国土並びに国民の生命、身体及び財産を災害から保護することを目的とした災害対
策基本法第40条の規定に基づき、愛知県地域防災計画を昭和38年に制定し、いく度か
の修正を重ね現在「地震・津波災害対策計画」、「風水害等災害対策計画」、「原子力災
害対策計画」が作成されています。
この「地震・津波災害対策計画」の中では、総合的な建築物の耐震性向上の推進、
窓ガラス等の落下物防止対策等の推進及び地震により被災した建築物を余震等による
二次災害を未然に防止し、県民の生命の保護を図るため、建築物の応急危険度判定に
関してそれぞれの基本方針と対策が定められております。
また、市町村は災害対策基本法第42条の規定に基づき市町村地域防災計画を定めて
います。
-3-
地
震
地震規模・特徴・県内の建物被害状況
天正地震
(1586)
M7.8
宝永地震
(1707)
M8.4
安政地震
(1854)
M8.4
濃尾地震
(1891)
M8.1
サンフランシスコ地震
(1906)
関東大震災 (1923)
M8.2
エルセントロ地震
M6.7
東南海地震
(1940)
(1944)
M7.9
M7.9
三河地震
(1945)
M7.1
福井地震
(1948)
M7.1
新潟地震
(1964)
M7.5
十勝沖地震
(1968)
宮城県沖地震
(1978)
-
-4-
4
-
日本海中部地震
メキシコ地震
釧路沖地震
(1983)
(1985)
(1993)
M7.9
M7.4
M7.7
M8.1
M7.8
北海道南西沖地震
(1993) M7.8
ノースリッジ地震
(1994) M6.8
兵庫県南部地震 (1995)
「阪神・淡路大震災」
M7.2
トルコ西部地震(1999)
M7.3
台湾中部地震(1999)
M7.4
鳥取県西部地震(2000)
M7.3
芸予地震(2000)
十勝沖地震(2003)
新潟県中越地震(2004)
能登半島地震(2007)
新潟県中越沖地震(2007)
中国四川大地震(2008)
M6.4
M8.0
M6.8
M6.9
M6.8
M7.9
岩手・宮城内陸地震(2008) M7.2
関連して実施された大型
技術開発プロジェクト
震央は伊勢湾で、長島付近では大被害を受け震度7
尾張部6、三河部6~5。
渥美部、吉田(現豊橋)で大被害のほか、全県で
被害。震度7~6。
宝永地震に似た被害。三河、知多、尾張の沿岸部
の被害が目立つ。
全壊85,511棟、半壊55,655棟で県の地震被害史上
最大の被害最大の被害
サンフランシスコを中心に大被害。この地震は米
国の耐震研究のきっかけとなった。
東京を中心に全壊128,266棟、半壊35,233棟,焼失
447,476棟、死者・不明14万余の大被害。石造、レ
ンガ造、木造に大被害、S 造、RC 造にも被害あり。
カリフォルニア州に被害。強震記録(330ガル)は応
答解析に用いられている。
他県に比べ最大で、全壊16,532棟、半壊35,298棟
震度6~5、一部7。名古屋臨海部等で液状化現象。
三河南部の深講断層の活動によるもので、幡豆郡、
碧海群に大被害。全。全16,408棟、半壊31,679棟。
震度は、西三河南部を中心に7~6、大部分が5以上。
福井平野に大被害。倒壊36,184棟、半壊11,816棟。
南北に連続した断層(延長25km)が生じた。
新潟、山形を中心中心9県に振動・液状化による建 液状化関連研究
物被害。震央付近の震度5~6と推定。液状化が顕著。
北海道南部・東北地方北部に被害。全壊673棟、半
壊3,004棟。
RC 造短柱のせん断破壊の被害が目立っ
た。
宮城県ほぼ全域で震度5。RC 造、S 造の被害が顕著
で、軟弱地盤地域に集中。ブロック堀の被害が大。 新耐震設計法ー地震荷重、
秋田県、青森県で震度5を観測。液状化による建物 設計体型見直し (1972~1976)
被害が大。死者のほとんどが津波によるもの。
被災総プロ (1981~1985)
メキシコ市で大被害。メキシコ市内で400以上の中
高層ビルが倒壊。
釧路で震を6を観測。ある程度古い建物や地盤被害 二次部材関連研究
に関連したものが多い。落下物、家具転倒による
被害が目立つ。
尻島で揺れが激しく震度6と推定。津波による被害
が多い。振動による被害は少なく、屋内の被害が
目立つ。液状化被害が随所でみられた。
ロサンゼルス市を中心に居住不能建物が25,000棟。
ボランティアの協力を得て応急危険度判定を実施。
淡路島、神戸市、芦屋市、西宮市等では気象庁現
地調査結果により震度7とみられている。阪神・淡
路地域で震度6、県内では伊良湖、名古屋で震度3。
死者6,400余名、住家被害は全壊110,000余棟、半
壊147,000余棟、一部破損230,000余棟、非住家被
害は4,900余棟。応急危険度判定をはじめて実施。
応急危険度判定専門家が派遣され、危険度診断実
施に関する技術支援を実施
応急危険度判定専門家が派遣され、危険度診断実
施に関する技術支援を実施
鳥取県境港市、日野郡日野町で震度6強。全・半壊
家屋約3,000棟
広島県河内町ほかで震度6弱
十勝沖で震度6弱
住宅全壊3,100余棟、住宅半壊13,700余棟、震度7
石川県内で震度6強
新潟県柏崎市ほかで震度6強
最大震度は11(中国の震度階)であり、気象庁震
度階の7に相当する
宮城県栗原市ほかで震度6強
新築建物対策
既存建物対策
被害建物対策
その他
市街地建築物法
(1919)
同上改正
(1924.C=0.1)
学会 RC 規準(1933)
(
)内は年次]
追記
地震
備
考
平成 23 年東
北地方太平
洋 沖 地 震
(2011)
建築基準法
(1950.C=0.2)
公共建物点検
施行令改正
既存建物診断・
(1970. フープ等) 補強法 (1977.1978)
地震予知推進本部
(1976)
大規模地震特別
措置法(1978)
地震防災対策強化
地域の指定(1979)
施行令大改正
(1980. 新耐震)
被災判定・復旧
マニュアル(1988)
学会非構造設計
指針(1985)
↓
同上指針(1989)
同上改正
(1989)
建築物の耐震改修の促
告示改正
進に関する法律
(1995.耐震基準)
(1995)
告示改正
(2006)
地震規模
建築物の耐震改修の促
進に関する法律の一部
を改正する法律(2006)
地震防災対策強化
地域の指定(2002)
M9.0
最大震度 7
死者 18,483 名
不明 2,683 名
住家被害
全壊 128,801 棟
半壊 269,675 棟
一部破損
756,814 棟
長野県北部
M6.7
を震源とす
最大震度 6 強
る地震
死者 3 名
(2011)
住家被害
全壊 73 棟
半壊 427 棟
静岡県東部
M6.4
を震源とす
最大震度 6 強
る地震
住家被害
(2011)
半壊 103 棟
一部破損 984 棟
宮城県沖を
M7.2
震源とする
最大震度 6 強
地震
死者 4 名
(2011)
住家被害は「成 23
年東 北地 方 太平 洋
沖地震」に包含
淡路島付近
M6.3
を震源とす
最大震度 6 弱
る地震
住家被害
(2013)
全壊 6 棟
半壊 66 棟
一部破損 8,000 棟
長野県北部
M6.7
を震源とす
最大震度 6 弱
る地震
住家被害
(2014)
全壊 50 棟
半壊 92 棟
一部損壊 1,428 棟
(地震規模は気象庁データより)
・建築物の耐震改修の促進に関する法律
の一部を改正する法律(2013)
被災建築物応急危険度判定の歴史
1981年
建設省総合技術開発プロジェクト「震後建築物の復旧技術の開発」
1985年
応急危険度判定原案の作成
「メキシコ地震」においてJICA日本チームが原案を用いて判定実施
1992年
静岡県、神奈川県に判定士制度が発足
1995年1月
「兵庫県南部地震」において応急危険度判定を実施
(判定士 延べ約6,500名、判定棟数 約47,000棟)
4月
「新潟県北部の地震」において判定活動(12名、342棟)
1996年8月
「宮城県北部地震」(34名、169棟)
1997年3月
「鹿児島県薩摩地方を震源とする地震」(220名、2,048棟)
1998年
民間診断士に対する補償制度を運用開始
1999年2月
「秋田県沖を震源とする地震」(4名、9棟)
1999年9月
10月
「トルコ西部地震」において応急危険度判定に関する専門家を派遣
「台湾中部地震」において応急危険度判定に関する専門家を派遣
2000年6月
「新島・神津島・三宅島近海を震源とする地震」において判定活動(17名、122棟)
2000年10月
「鳥取県西部地震」において判定活動(約330名、4,000棟)
2001年3月
「芸予地震」において判定活動(640名、1,760棟)
2003年7月
「宮城県北部地震」において判定活動(743名、7,245棟)
2004年10月
「新潟県中越地震」において判定活動(3,821名、36,143棟)
2005年3月
「福岡県西方沖地震」において判定活動(444名、3,148棟)
2007年7月
「能登半島地震」において判定活動(391名、7,548棟)
2007年7月
「新潟県中越沖地震」において判定活動(2,758名、34,048棟)
2008年6月
「岩手・宮城内陸地震」において判定活動(475名、2,978棟)
2011年3月
「平成23年東北地方太平洋沖地震」において判定活動
(8,541名、95,381棟)
2011年3月
「長野県北部震源とする地震」において判定活動(229名、2,318棟)
2011年3月
「静岡県東部を震源とする地震」において判定活動(64名、513棟)
2013年4月
「淡路島付近を震源とする地震」において判定活動(56名、402棟)
2014年11月
「長野県北部震源とする地震」において判定活動(131名、602棟)
-5-
被災建築物応急危険度判定の主な判定実績
地
震
名
判定実施主 体
判
定
地
区
兵庫県南部地震
発
生
日
平成7年1月17日
兵庫県、神戸市、阪神間(尼崎市、西宮市、伊丹市、宝塚市、川西市、
芦屋市)、明石市、淡路地区
神戸市、尼崎市、西宮市、伊丹市、宝塚市、川西市、芦屋市、明石市、
淡路地区
判定対象建築物
全ての共同住宅及び長屋
判定実施期間
平成7年1月18日~2月9日まで
判
定
人
数
延べ約6,468人
判 定 棟 数
46,410棟
判
定
結
果
危険
名
鹿児島県薩摩地方を震源とする地震
地
震
6,476棟(14%)、要注意
判定実施主 体
鹿児島県、宮之城町、鶴田町
判
宮之城町、鶴田町
定
地
区
9,302棟(20%)、調査済み
発
生
日
30,832棟(66%)
平成9年3月26日
平成9年5月13日
判定対象建築物
木造住宅
判 定実施期 間
平成9年4月11日、5月17日、
6月4日、6月5日
判
定
人
数
220人(県、町職員、民間)
判 定 棟 数
2,048棟
判
定
結
果
危険
名
鳥取県西部地震
地
震
89棟(4%)、要注意
452棟(22%)、調査済み
発
生
1,507棟(74%)
日
平成12年10月6日
判定実施主 体
鳥取県:鳥取県、岡山県:新見市他1町、島根県:島根県
判
鳥取県:米子市他13市町、岡山県:新見市他1町、島根県:伯太町
定
地
区
判定対象建築物
判
定
人
数
判
定
結
果
地
震
名
鳥取県:平成12年10月7日~20日
岡山県:平成12年10月9日~10日
島根県:平成12年10月10日~11日
鳥取県:約300人、岡山県:24人
鳥取県:3,849棟、岡山県184棟
判 定 棟 数
島根県:8人
島根県:47棟
鳥取県:危険 435棟(11%)、要注意 1,395棟(36%)、調査済み 2,019棟(53%)
岡山県:危険 7棟、要注意 61棟、調査済み 116棟
島根県:危険 1棟、要注意 43棟、調査済み 3棟
住宅ほか
判 定実施期 間
芸予地震
発
生
日
平成13年3月24日
判定実施主 体
広島県、山口県、愛媛県及び各県内の市町村
判
広島県広島市他29市町、山口県大島郡東和町、愛媛県今治市ほか8町
定
地
区
判定対象建築物
判
定
人
数
判
定
結
果
地
震
名
広島県:平成13年3月25日~4月9日
山口県:平成13年3月26日
愛媛県:平成13年3月27日~4月6日
広島県:385人、山口県12人
広島県:979棟、山口県:25棟
判 定 棟 数
愛媛県:229人
愛媛県:742棟
広島県:危険 74棟(7%)、要注意 535棟(55%)、調査済み 370棟(38%)
山口県:危険 8棟、要注意 15棟、調査済み 2棟
愛媛県:危険 84棟(11%)、要注意 367棟(50%)、調査済み 291棟(39%)
住宅ほか
判定実施期間
宮城県北部地震
発
生
判定実施主 体
宮城県、矢本町、鳴瀬町、河南町、鹿島台町、南郷町
判
矢本町、鳴瀬町、河南町、鹿島台町、南郷町
定
地
区
日
平成15年7月26日
判定対象建築物
公共建築物、住宅
判定実施期間
平成15年7月27日~8月3日
判
定
人
数
743人
判 定 棟 数
7,245棟
判
定
結
果
危険
1,260棟(28%)、要注意
2,181棟(30%)、調査済み
-6-
3,804棟(52%)
地
震
名
平成16年新潟県中越地震
発
生
日
平成16年10月23日
判定実施主 体
新潟県、長岡市、見附市、栃尾市、越路町、小千谷市、川口町、魚沼市、
南魚沼市、十日町市、川西町、中里村、柏崎市、小国町、刈羽村、西山町、
松代町
判
小千谷市、見附市、長岡市等(8市6町2村)
定
地
区
判定対象建築物
住宅
判定実施期間
平成16年10月24日~11月10日
判
定
人
数
3,821人
判 定 棟 数
36,143棟
判
定
結
果
危険
名
福岡県西方沖地震
地
震
判定実施主 体
判
定
地
区
判定対象建築物
5,243棟(14%)、要注意
定
人
数
延べ444人
判
定
結
果
危険
名
能登半島地震
震
発
生
日
19,778棟(55%)
平成17年3月20日
福岡県、福岡市、前原市、古賀市、新宮町、須恵町、志摩町、宇美町、
玄海島
福岡市、春日市、前原市、古賀市、新宮町、須恵町、志摩町、宇美町、
玄海島
平成17年3月20日~3月31日
住宅
判定実施期間
平成17年4月20日~4月26日
判
地
11,122棟(31%)、調査済み
判 定 棟 数
517棟(16%)、要注意
3,148棟
1,131棟(36%)、調査済み
発
生
日
1,5007棟(48%)
平成19年3月25日
判定実施主 体
石川県、輪島市、穴水町、能登町、羽昨町、中能登町、志賀町、七尾市
判
輪島市、穴水町、能登町、羽昨町、中能登町、志賀町、七尾市
定
地
区
判定対象建築物
住宅
判定実施期間
平成19年3月25日~3月30日
判
定
人
数
延べ391人
判 定 棟 数
7,548棟
判
定
結
果
危険
名
新潟県中越沖地震
地
震
1,222棟(16%)、要注意
1,561棟(21%)、調査済み
発
判定実施主 体
新潟県、柏崎市、刈羽村、出雲崎町
判
柏崎市、刈羽村、出雲崎町
定
地
区
生
日
4,765棟(63%)
平成19年7月6日
判定対象建築物
住宅
判定実施期間
平成19年7月6日~7月23日
判
定
人
数
延べ2,758人
判 定 棟 数
34,048棟
判
定
結
果
危険
名
岩手・宮城内陸地震
地
震
4,955棟(15%)、要注意
8,943棟(26%)、調査済み
発
生
判定実施主 体
宮城県、仙台市、石巻市、塩竈市、栗原市、美里町
判
栗原市、美里町
定
地
区
日
20,150棟(59%)
平成20年6月14日
判定対象建築物
住宅ほか
判定実施期間
平成20年6月14日~6月23日
判
定
人
数
延べ475人
判 定 棟 数
2,978棟
判
定
結
果
危険
217棟(7%)、要注意
564棟(19%)、調査済み
-7-
2,197棟(74%)
被災建築物応急危険度判定の主な判定実績(追記)
地
判
震
定
名
地
区
判定対象建築物
平成23年東北地方太平洋沖地震
発
生
日
平成23年3月11日
【岩手県】北上市、一関市、奥州市
【宮城県】仙台市他11市、18町
【福島県】福島市他9市、15町、6村
【茨城県】水戸市他21市、5町、1村
【栃木県】宇都宮市他10市、5町
【群馬県】桐生市、太田市、渋川市、邑楽町
【埼玉県】久喜市
【千葉県】成田市他5市、2町
【東京都】墨田区他8区、武蔵野市他5市【神奈川県】横浜市他9市、3町
【岩手県】住宅他
【岩手県】H23.3.13~4.28
【宮城県】住宅、学校、公共施設
【宮城県】H23.3.11~5.10
【福島県】住宅等
【福島県】H23.3.12~5.31
【茨城県】住宅、学校施設他
【茨城県】H23.3.12~3.25
【栃木県】住宅等
【栃木県】H23.3.12~4.15、4.22、5.16
判定実施期間
【群馬県】住宅他
【群馬県】H23.3.12~3.30
【埼玉県】住宅等
【埼玉県】H23.3.12~3.23
【千葉県】住宅等、建築物
【千葉県】H23.3.11~4.1
【東京都】住宅等
【東京都】H23.3.11~3.18
【神奈川県】住宅等
【神奈川県】H23.3.11~3.30
判
定
人
数
延べ8,541人
判
定
結
果
危険
名
長野県北部を震源とする地震
区
【新潟県】十日町市、上越市、津南町【長野県】野沢温泉村、栄村
地
判
震
定
地
判 定 棟 数
11,699棟(12%)、要注意
95,381棟
23,191棟(24%)、調査済み
発
生
日
60,491棟(64%)
平成23年3月12日
判定対象建築物
住宅等
判定実施期間
平成23年3月12日~3月19日まで
判
定
人
数
延べ229人
判 定 棟 数
2,318棟
判
定
結
果
危険
名
静岡県東部を震源とする地震
区
小田原市、富士宮市
地
判
震
定
地
375棟(16%)、要注意
694棟(30%)、調査済み
発
生
1,249棟(54%)
日
平成23年3月15日
判定対象建築物
住宅、県有施設他
判定実施期間
平成23年3月16日~3月19日まで
判
定
人
数
延べ64人
判 定 棟 数
513棟
判
定
結
果
危険
名
淡路島付近を震源とする地震
区
淡路市、洲本市
地
判
震
定
地
13棟(3%)、要注意
155棟(30%)、調査済み
発
生
345棟(67%)
日
平成25年4月13日
判定対象建築物
住宅等
判定実施期間
平成25年4月15日~4月17日まで
判
定
人
数
延べ56人
判 定 棟 数
402棟
判
定
結
果
危険
名
長野県北部を震源とする地震
区
【長野県】大町市、白馬村、小谷村、小川村
地
判
震
定
地
46棟(11%)、要注意
156棟(39%)、調査済み
発
生
日
200棟(50%)
平成26年11月22日
判定対象建築物
住宅等
判定実施期間
平成26年11月23日~11月27日まで
判
定
人
数
延べ131人
判 定 棟 数
602棟
判
定
結
果
危険
144棟(24%)、要注意
241棟(40%)、調査済み
-8-
217棟(36%)
Ⅲ
応急危険度判定実施の目的
1
目的
応急危険度判定は、地震により被災した建築物について、その後の余震等による
倒壊の危険性並びに建築物の部分等の落下あるいは転倒の危険性をできる限り速
やかに判定し、その結果に基づいて恒久的復興までの間における被災建築物の使用
にあたっての危険性を情報提供することにより、被災後の人命に関わる二次的災害
を防止する。
近年、本県では東海地震発生の切迫性が叫ばれている。応急危険度判定は、このよ
うな状況の中で地震が発生した際、被災した建築物が応急的に安全であるか否かの判
定を行うことにより県民の住まいに対する不安を解消するものである。
ただし、建築物の安全性を確保する第一義的責任を有するのは、その建築物の所有
者である。所有者は、その建築物が地震によって被害を受けた場合に、自らの責任で
その安全性を確保することが求められる。
しかし、地震によって多くの建築物が被害を受けた場合には、必ずしも被災建築物
の所有者もしくは居住者が被災建築物の安全性を自らの責任において確認できる保証
はなく、多くの人々が二次災害の恐れに直面することとなる。特に被災建築物が道路
や隣家に影響を及ぼす恐れのある場合は第三者に被害が及ぶ可能性も高い。
そのために、市町村が主体となって、地震発生後の応急対応の一環として被災建築
物の危険性の判定を応急的に行い、地震後の住民の安全確保を図るものである。
2
応急危険度判定士の使命
判定士は建築士が自ら有している知識・職能を生かし、震災時における住民の住
まいなどに対する危険性の情報提供ニーズに対して、社会的使命としてボランティ
アで活動する。
一定規模以上の建築物は、建築士法・建築基準法により、建築士によって設計・工
事監理・既存建築物の安全性の調査をすることが求められている。地震によって被害
を受けた建築物の安全性の判定にあたっては、建築物について公に認められた専門家
である建築士としての知識、職能を生かしてそれらの判定にボランティアとして参加
することは建築士としての社会的使命と考えられる。
(追記)
本県においては、建物の施工状況を踏まえた判定や避難所等の迅速な判定を可能とするため、1級建
-9-
築施工管理技士、地方公共団体の職員も判定士の対象としている。
3
応急危険度判定士の責務
判定士は建築技術の進歩に応じて、必要な知識の取得、技能の練磨など資質の向
上に努め、震災時の判定活動に備える。
被災建築物の安全性の判定にあたっては、判定基準に従い、その基準に照らして判
定を行うことが必要である。そのためには判定基準及びその判定に必要な建築技術に
関する知識、技能を習得し、震災時の判定活動に備える必要がある。
-10-
2
応急危険度判定制度
Ⅰ
判定制度の位置づけ
応急危険度判定は、愛知県被災建築物応急危険度判定要綱及び県、市町村の地域
防災計画に定めるところにより実施する。
地震によって建物の被害を受けた住民は、建物が大丈夫なのか、住み続けてよいか
など不安を募らせ、建物の安全性の情報提供の必要に迫られることが予想される。
過去の地震では、特に被災建築物の安全性についてはその判断をする技術的基準も
定められていなかったことから、体系的に被災建築物の安全性を判定する体制になか
った。
平成8年に全国被災建築物応急危険度判定協議会が設立され、全国的に判定の技術
基準がまとめられたことから、
「応急危険度判定実施の目的」で述べた必要性に応ずる
ために、応急危険度判定が円滑に行えるよう、県要綱及び県、市町村の地域防災計画
体系づけ、判定実施に向け推進を図るものである。
Ⅱ
判定の基本的事項
1
基本条件
大規模地震が発生すると県・市町村に災害対策本部が設置される。
応急危険度判定活動は、市町村の災害対策本部長が建物の被害状況から、判定
が必要と判断し、その実施を宣言し実施される。
県・市町村では、管内に震度5弱以上の地震が発生した時、災害対策本部が設置さ
れる。
-11-
2
判定対象建築物
判定士は、市町村災害対策本部に設置される市町村応急危険度判定実施本部(以
下「実施本部」という。)の判定コーディネーターの指示により、判定街区内の指
定された建築物を判定する。
地震後に判定対象となる建築物は、判定士を指揮する市町村災害対策本部に設置す
る市町村応急危険度実施本部の職員(判定コーディネーター)が災害の状況に応じて
判定を行う街区を設定した中で指定された建築物である。
建築後の指定に当たっては、災害対応に貴重な役割を果たす施設等を地震後速やか
に防災行政によって安全性の判定が行なわれる必要があるが、判定士の協力を求めて
判定を行う建物は、必要に応じてこれらの建物も含まれるが一般には居住用建物が多
くなると考えられる。
また、建物の構造種別的にはすべての構造物が対象となるが、建物ストック数から
して木造住宅が多くなるものと考えられる。
(追記)
大規模地震を想定したBCP(事業継続計画)を策定している市町村もあり、これらを勘案した判定
対象建築物の指定も必要となってきている。
3
判定実施時期
判定は緊急輸送路の復旧後、速やかに開始する。
判定時期は被災状況、派遣判定士の人数等にもよるが、10日間程度で行う。
応急危険度判定は、被害を受けた建築物が余震等による二次災害を受けないように
行うものであるので、地震後できるだけ速やかに行うことが望ましい。
しかし、被災地の地域内の建築士が判定に協力することはなかなか困難であるため
被害を受けていない地域の建築士が判定士として協力することとなる。
被災地へ赴いて判定作業を行うため、その地域への移動手段が確保されるまでは実
質的には、判定を行うことは困難である。そのために地震後数日後に判定を開始する
こととした。(地震後2~3日目程度に判定開始を目途。)
判定にかかる日数は、短時間で完了することが望ましいが、一方余りに多数の判定
士の協力を短的に仰いでも、被災地の市町村災害対策本部もその対応がつかないこと
も考えられるので、10日間を一応の目安とした。
(追記)
平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震における被災建築物応急危険度判定士の実施 にお
いて、その被害の状況等から、支援要請を行おうとしても、ガソリン、水・食料及び宿泊場所の確保が
極めて困難で、被災した各県は県内判定士による対応とならざるを得なかった。
このことから、今後、本県においても、広域支援が期待できない状況を加味した体制づくりを検討す
ることが必要とされている。
-12-
4
判定士の作業日数
一人の判定士は基本的には、2~3日間、2人1チームで15棟/1日程度判定作
業を行う。
なお、判定士の意志により、引き続き協力が得られる場合はこの限りではない。
応急危険度判定作業は、被災地に赴いて個別の家屋をそれぞれ訪れ、それらの安全
性の判定作業を行うものである。ボランティアとして協力を求めているところであり、
あまり長い期間を設定することは適切ではないと考えられるので、一人の判定士につ
いて協力日数を2~3日間とした。
これはまた、判定士の勤務先である設計事務所・建設会社等が震災直後に行うべき
諸活動との配慮をも含んでいるものである。
5
判定結果の責任
判定結果の責任については、応急危険度判定の実施主体である市町村災害対策本
部が負う。
Ⅲ
判定の関係機関
1
市町村災害対策本部・応急危険度判定実施本部
判定の実施主体として判定作業に携わる判定士の指揮、監督を行う。
地域防災計画に基づく災害応急対応の一環として応急危険度判定を行う主体が市
町村災害対策本部である。また、応急危険度判定作業に協力する判定士に対して、判
定作業に関する指示を行う主体は市町村災害対策本部に設置する市町村応急危険度判
定実施本部である。
また、判定士の指揮・監督は、実施本部の職員(判定コーディネーター)が行う。
-13-
2
県災害対策本部・応急危険度判定支援本部
応援判定士の派遣計画や判定活動の後方支援を行う。
愛知県災害対策本部は、市町村災害対策本部の災害応急対策を支援するとともに、
被災した当該市町村以外の地域との連絡調整等を行う立場にある。また、応急危険度
判定については、県災害対策本部に設置する県応急危険度判定支援本部(以下「支援
本部」という。)が、判定士の派遣計画や判定を実施する市町村への後方支援を行うも
のである。
3
愛知県建築物地震対策推進協議会
応急危険度判定活動を的確に実施していくため、応急危険度判定士の支援、市町
村相互の支援等に関して事前に調整をし、県、市町村及び関係団体が協力して実施
体制の整備を推進していくための中心的な担い手となる組織である。
愛知県建築物地震対策推進協議会(以下「協議会」という。)は、県及び県内市町
村並びに建築関係団体で構成する組織であり、判定士の養成、判定資機材の購入・保
管、判定士を指揮監督する市町村職員を対象に判定コーディネーターの養成、判定士
の判定活動時の事故等に対応するための保険の加入、判定士の訓練などの事業を行う。
4
(一財)愛知県建築住宅センター
応急危険度判定士講習会の開催、判定士登録事務や協議会の事務局として機能す
る。
-14-
Ⅳ
応急危険度判定士業務マニュアル
1
目
的
このマニュアルは、地震による被災建築物の危険度の判定を行う判定士の業務
基準を定めることにより、被災建築物の判定を、迅速かつ的確に行い余震による
二次災害の防止を図ることを目的とする。
2
判定業務の心得
1
判定士は、原則として市町村に設置される実施本部等の要請により判定業務
に従事する。
ただし、要請を受けないで自ら判定業務に従事することを希望する場合は、
必ず県の指示に従い行動する。
2
判定士は、判定業務を行う被災地の都道府県等が定めた業務基準を遵守し、
迅速かつ誠実に建築物の応急危険度判定を行う。
判定士は、自ら判定業務に従事することを希望する場合、被災地の実施本部に直
接連絡すると混乱をきたす恐れがあるため、必ず県に連絡しその指示に従う。
被災地の都道府県等が定めた業務基準とは、それぞれの都道府県等の要綱等ある
いは業務マニュアル等という。
3
判定士の編成及び判定コーディネーター
判定士は、実施本部のもと以下の組織に編成される。
(1)チーム
被災地で実際に判定を実施する最小単位、判定士2名で構成される。
(2)班
被災地で実際に判定を実施する最小グループ、10程度のチーム(20
名)により構成され判定コーディネーターから任命された班長、副班長が統
括する。
-15-
(3)判定コーディネーター
実施本部、判定拠点及び支援本部において、判定の実施のために判定士
の指導支援を行う行政職員で、判定コーディネーター1名が5班程度
(100名)を統括する。
判定コーディネーターは、実施本部と判定士間の橋渡し的な役割を果たす。
4
判定士の参集行動基準
1
地元判定士の参集行動基準
地元判定士は、次のように行動する。
(1) 実施本部から依頼された連絡員から参集要請の連絡を受けた場合は、
参集日時、判定従事期間、参集場所(一次参集場所等)及び参集場所ま
での移動方法の確認を行う。
(2) 判定業務に協力するかどうかは家族、勤務先の被災状況及び自己の健
康状態を勘案し、家族、勤務先ともよく相談し決める。
(3) 判定業務に参加する場合は、連絡員に対し判定活動受諾の連絡をする。
(4) 判定士は、指定された参集日時、参集場所に指定された方法により移
動する。
(5) 判定士は参集場所に到着後、判定コーディネーターに対して必要な事
項の申告及び参集の途中で得た被災地の状況を報告する。
(6) 判定士は、参集場所到着後は原則として実施本部の指揮下に入る。
(7) 判定士は、判定コーディネーターから判定資機材の提供を受けるとと
もに、以下の内容の説明を受ける。
①
被災地の状況(危険区域、火災発生区域、救助活動区域等)
②
気象状況(気温、風速、降雨等)
③
余震情報(余震の震度、頻度、区域等)
④
判定方法(調査対象区域及び建築物、判定調査表等)
⑤
被災地情報(避難所の位置、被災住民への情報等)
⑥
出発時間、現地への移動手段、現地における参集時間、参集場所
⑦
判定作業中の危険防止についての注意
-16-
地元判定士は、原則として、以下に示すような方法で参集する。
[参集方法]
①
連絡員は、実施本部の依頼を受けた場合、予め定められた連絡網等により各
判定士に判定実施の連絡をする。この場合、連絡を受けた判定士は、判定業務
参加可能、不可能を回答する。
②
連絡員は、各地区毎の業務参加可能者リストを作成し、実施本部へ連絡する。
③
連絡員は、実施本部からの指示内容(判定従事期間、参集場所、参集方法、
参集日時及び持参品等)を判定士に伝え、できるだけグループ毎の移動に心掛
ける。
2
県内応援判定士の参集行動基準
県内応援判定士は、次のように行動する。
(1) 判定士は、居住市町村から依頼された連絡員から応援要請の連絡を受
けた場合は、参集日時、参集場所及び判定業務従事予定期間等の確認を
行う。
(2) 応援の判定業務に参加するかどうか自己の健康状態を勘案し、家族、
勤務先ともよく相談し決定する。
(3) 判定業務に参加する場合は、連絡員に対し判定活動受諾の連絡をする。
(4) 判定士は、参集場所に到着後、必要な事項の申告を行う。
(5) 判定士は、被災地に到着までの間は原則として派遣側の指揮下に入る。
(6) 被災地の実施本部への移動は、原則として派遣側が指定した方法によ
り移動する。
(7) 被災地の実施本部到着後は、原則としてその指揮下に入る。
(8) 被災建築物応急危険度判定士は、判定コーディネーターから判定用資
機材の提供を受けるとともに、以下の内容の説明を受ける。
①
被災地の状況(危険区域、火災発生区域、救助活動区域等)
②
気象状況(気温、風速、降雨等)
③
余震情報(余震の震度、頻度、区域等)
④
判定方法(調査対象区域及び建築物、判定調査表等)
⑤
判定実施地域周辺の情報(避難所の位置、被災住民への情報等)
⑥
出発時間、現地への移動手段、現地における参集時間、参集場所
⑦
判定作業中の危険防止についての注意
-17-
応援判定士の派遣は、原則として支援本部で調整し取りまとめる。愛知県等職員
が、被災地到着までの統括をする。
判定士は、被災地の実施本部到着後は実施本部が定める班構成に従う。また、判
定コーディネーターからの伝達事項や、判定コーディネーターへの報告事項は、判
定コーディネーターが任命した班長または副班長が取りまとめて行う。
指揮連絡系統を明確にするため、応援判定士は実施本部到着までは、支援本部の
指揮下に入り、被災地到着後は実施本部の指揮下に入ることとした。
3
県外応援判定士の参集行動基準
県外応援判定士は、次のように行動する。
(1) 判定士は、居住市町村から依頼された連絡員から応援要請の連絡を受
けた場合は、参集日時、参集場所及び判定業務従事予定期間等の確認を
行う。
(2) 応援の判定業務に参加するかどうか自己の健康状態を勘案し、家族、
勤務先ともよく相談し決定する。
(3) 判定業務に参加する場合は、連絡員に対し判定活動受諾の連絡をする。
(4) 判定士は、参集場所に到着後、必要な事項の申告を行う。
(5) 判定士は、被災地に到着までの間は原則として派遣側の指揮下に入る。
(6) 被災地の支援本部又は実施本部への移動は、原則として派遣側が指定
した方法により移動する。
(7) 被災地の支援本部又は実施本部到着後は、原則としてその指揮下に入
る。
(8) 判定士は、判定コーディネーターから判定用資機材の提供を受けると
ともに、以下の内容の説明を受ける。
①
被災地の状況(危険区域、火災発生区域、救助活動区域等)
②
気象状況(気温、風速、降雨等)
③
余震情報(余震の震度、頻度、区域等)
④
判定方法(調査対象区域及び建築物、判定調査表等)
⑤
判定実施地域周辺の情報(避難所の位置、被災住民への情報等)
⑥
出発時間、現地への移動手段、現地における参集時間、参集場所
⑦
判定作業中の危険防止についての注意
応援判定士の派遣は、原則として県で調整し取りまとめ、愛知県等職員が、被災
地到着までの統括を行う。
-18-
判定士は、被災地の支援本部又は実施本部到着後は実施本部が定める班構成に従
う。また、判定コーディネーターからの伝達事項や、判定コーディネーターへの報
告事項は、判定コーディネーターが任命した班長又は副班長が取りまとめて行う。
指揮連絡系統を明確にするため、応援判定士は実施本部到着までは、愛知県等の
支援本部の指揮下に入り、被災地到着後は実施本部の指揮下に入ることとした。
5
持参する判定資機材等
判定士は、実施本部等で準備する判定資機材とは別に、判定業務に必要となる
判定資機材を持参すること。
判定士自ら用意する判定資機材としては、登録証、判定士手帳、ヘルメット、ヘ
ルメット用シール、下げ振り、ハンマー、クラックスケール、筆記用具、コンベッ
クス、軍手、ナップザック、携帯電話等が考えられ、また、被災地の状況により生
活必需品として、雨具、防寒着、水筒、マスク、寝袋、常備薬等の準備も必要と考
えられる。
判定資機材として実施本部等で準備する物は、腕章、判定調査表、判定ステッカ
ー、判定街区マップ、ガムテープ等である。
-19-
6
応急危険度判定の実施
1
判定業務は、実施本部または判定拠点の判定コーディネーターが各班長に
指示し、各班長が各判定士に判定コーディネーターの指示内容を伝え実施す
る。
2
判定士は必ず判定終了時間、参集時間に遅参の場合の対応を確認しておく。
3
判定地区への移動は、実施本部又は判定拠点で用意した輸送手段により移
動する。
4
判定士は、判定作業を行う際には応急危険度判定士登録証を必ず携帯する
とともに、腕章等を身につけ判定士として識別できるようにする。
5
判定作業は、原則として2人1組で行う。
6
判定作業中及び移動中は、お互い危険に注意し、危険な場所に近づかない
等、無理は活動はしない。
7
緊急事態(余震その他の災害が発生した時等の障害等)については、班長
を通じ実施本部又は判定拠点と連絡を行い判定コーディネーターの指示をあ
おぐ。
8
判定作業は、迅速かつ誠実に行い被災地の住民に対し、誠意をもって対応
する。
9
判定結果については、判断根拠を随時建築物毎に記録する。
10
判定作業終了後、実施本部又は判定拠点に戻り、班長に判定結果等並びに
自己の健康状態の報告を行う。また、判定結果の中で特に注意を必要とする
被災建築物等については、その旨報告する。
11
班長は、各判定士から判定結果等の報告を受け次第判定結果の集計を行い、
判定コーディネーターに集計結果の報告を行う。また、判定結果の中で特に
注意を必要と報告された被災建築物等については、必要な措置について報告
する。
12
判定士は、原則として実施本部または支援本部で準備した宿泊施設に宿泊
する。ただし、地元判定士は自宅に戻ることが出来る。その場合は翌日の判
定活動について判定コーディネーターの指示を受ける。
13
体調の悪化等でやむを得ない理由により途中で判定業務と中止する場合
は、判定コーディネーターに報告しその指示に従う。
-20-
判定作業の指示伝達、報告等は連絡の一本化を図るため、必ず班長又は副班長に
行う。
判定作業中及び移動中においても、判定士としての責任と被災地の住民から大き
な期待を掛けられていることを認識し、誠意を持って行動する。
判定結果の中で特に注意を必要とする被災建築物については、判定時に判定調査
表の欄外にその旨記載し、判定結果報告時に班長に報告する。
判定に当たって、判定調査表への記入だけでは判断がつきかねる場合もあり、そ
の場合多分に建築士としての知識、経験に委ねられることとなる。そのため、どの
様な根拠で判断したかを記録しておくことは、所有者からの問い合わせ等に対する
説明資料にもなりうるため随時行っておくことが必要である。
判定作業終了後、判定結果を報告すると共に、異常が無くても必ずチーム員相互
の健康状態も報告する。
各判定士の行った判定結果の集計は、班長が取りまとめ判定コーディネーターに
報告する。その際各班長は、判定士から特に注意を必要を報告された被災建築物に
ついて、判定結果以上に、より強力な立ち入り禁止等の措置が必要な場合は、その
旨を判定コーディネーターに報告する。
7
判定結果の表示
各建築物判定終了後、判定結果に基づき、建築物ごとに当該建築物の出入口等
見やすい場所に「危険」(赤)、「要注意」(黄)、「調査済」(緑)のいずれかの判
定ステッカーを貼る。
判定ステッカーには、例えば判定結果に基づく対処方法に関する簡単な説明を
明記する。
判定ステッカーを貼る場所は、建築物の居住者・利用者だけでなく、建築物付近
を通行する歩行者等にも識別できる場所として、場合によっては複数の箇所に貼る
場合もある。
判定ステッカーには、例えば落下物を除去することで判定が変更になるような場
合の対処方法及び注意事項等の記入を行う。特に「要注意」の判定をした場合は、
必ず記入する。
-21-
8
住民対応
1
判定士は、判定を行う場合、実施本部等で準備した判定制度のPR用のパ
ンフレットを持参し、必要に応じて住民に手渡す。
判定に対する住民の理解を得るために、実施本部は広報活動を行うとともに、被災
地においては、判定士自らが住民に対し判定に対する理解を求めていく必要もある。
また、住民から判定実施状況等についての質問を受ける場合もあることから、判
定士は実施本部の方針を把握するなどして、答えられるようにしておかなければな
らない。
(参考)
民間判定士補償制度について
愛知県建築物地震対策推進協議会は、平成10年度に全国被災建築物応急危険度判定協議会が
立ち上げた民間判定士補償制度の愛知県内における本制度適用時引当金を備蓄しています。こ
の制度の補償の基に、安心して判定活動をしていただくことができます。
民間判定士補償制度の内容
対象
判定活動時に公務災害の対象とならない判定士
(民間判定士)
補償額
死亡:2,000 万円
入院:5,000 円/人・日
通院:3,000 円/人・日
施設賠償額:1億円/1件(対人、対物)
判定士の活動心得三箇条
一
無理に危険な場所に近づかない。
二
腕章を身につけ判定士として識別できるようにする。
三
被災地の住民には誠意を持って、判定には自信を持って対応する。
-22-
2
所有者(又は居住者等)が在宅していればその場で判定結果を知らせるこ
ととし、判定についての質問等があった場合には、適切に回答するものとす
る。
質疑応答の例
(緑の表示で)「この建物は安全ですか。これからどうすれば良いので
すか?」と聞かれた場合。
(答え) 建物被害は軽微であり使用可能だと思われます。今後とも注意して
使用してください。
また、部分的に損傷しているところは早めに応急修理してください。
(黄の表示で)「要注意とはどういう意味ですか。私はどうすればよい
のですか?」と聞かれた場合。
(答え) (技術的見地から危険と思われる箇所や状態を説明し)建物が立ち
入る場合には、ステッカーの注記に書いてある内容にしたがって、十
分注意してください。
(特に、就寝に使えない場合は、必ずその旨を強
調しておくこと。)
(赤の表示で)「危険とはどういう意味ですか。私はどうすればよいの
ですか?」と聞かれた場合。
(答え) この建物は構造的に相当の被害を受けていますので、このままお住
まいになると危険です。
速やかに避難してください。
住民から、「何をしているか?」との問合せがあった場合。
(答え) (応急危険度判定士登録証を提示し又、判定に関わるパンフレット
を渡しながら)私たちは○○市の要請により、被災した建物に引き続
き居住できるかどうか、また、二次災害の防止のため、建物の安全性
(危険性)を判定しているところです。
-23-
(黄や赤の内容を見て)「言うこと聞かなければならないのか?」あるいは、
「強制力はあるのか?」と問われた場合。
(答え) これらは、技術的見地からの勧告としての表示です。住民のみなさ
んの安全確保のため、ご理解とご協力をいただきたいと思います。
3
現地で判定以外の業務を求められたら、丁寧にお断りし速やかにその場を
離れる。
4
所有者(または居住者等)ともめたら、判定ステッカーを貼らずに、調査
表にその旨を記録する。(ステッカーを剥がされた場合も同様。)
5
外国人の居住者のうち、日本語の通じない外国人に対しては、予め用意し
た英語等で書かれたステッカー及び判定結果説明書を予め用意しておき、手
渡す。
A
被災地の住民又は建築物所有者の対応については、誠意を持って行うこと。
B
実施本部の計画した判定地区以外の建物の対象外の用途の建築物所有者から、判
定を頼まれた場合は、断ること。
-24-
応急危険度判定士参集フロー
◆県内被災市町村◆
◆判定士◆
災害対策本部
判定実施本部
地元判定士連絡網
参集要請
判定士地区連絡員
参集可能
判定士名
簿等報告
判定拠点
判定拠点
参
集
要
請
判定士
判定士
諾
否
回
答
移送
参
支
援
要
請
集
一次参集場所
(名簿確認)
◆愛知県◆
災害対策本部
判定実施本部
支
援
要
請
支
援
要
請
支
援
要
請
◆県内の被災の
ない市町村◆
◆建築関連団体◆
他都道府県からの支援
参集要請
地元判定士連絡網
判定士地区連絡員
参集可能
判定士名
簿等報告
参集要請
参
集
要
請
判定士
判定士
諾
否
回
答
関係団体判定士連絡網
連絡網リーダー
参集可能
判定士名
簿等報告
参
集
要
請
判定士
判定士
諾
否
回
答
※県外への応援の場合も原則として、地元判定士連絡網・関係団
体判定士連絡網による参集要請を行う。
-25-
3
被災建築物の応急危険度判定
Ⅰ
建築物の応急危険度判定基準
1
目的
応急危険度判定基準(以下「本基準」という。)は地震後の建築物の被災状況を短
時間で調査し、危険度の判定を行うためのもので、余震等による当該建築物の倒壊の
危険性、および、落下物の危険性等を判定し、その建築物の当面の使用の可否につい
て判定することによって二次的災害を防止することを目的とする。
[解
説]
本基準は、地震被害を受けた建築物等に対する被災状況を被災市町村の主導により
調査判定し、都市・地域の速やかな復旧に資することを目的とするものであり、図1
に示すフローに従って適用されることを想定している。
被災直後に適用される本基準は、比較的被害の大きい建築物が余震によって倒壊す
る、または倒壊に近い状態になることによって、その建築物の居住者等の人命が危険
にさらされることのないように建築物への立入りの可否・使用の制限等を適切に判定
し、勧告するためのものである。また、本基準では、直後の余震期間中を避難所とし
て使用することが想定される公共建築物について、その安全な使用の可否を判定する
ことも目的の一つとして持っている。したがって、この応急危険度判定には、被災を
生じさせた地震の直後、できる限り速やかに判定を終了させることと、判定に関する
基本的な考え方として、判定結果が結果的に危険につながらないように判定をするこ
と、の二つの使命が求められている。
この応急危険度判定は、災害対策本部内に設置された被災建築物応急危険度判定実
施本部によって、建築物等に対して行われる建築技術の専門的見地による応急的な調
査及び情報提供等を実施することである。したがって、被災による損害額の査定や被
災建築物の恒久的使用の可否の判定、その他の目的で行われるものではない。被災建
築物に対する恒久的使用の可否や復旧に向けての構造的な補強の要否の調査判定のた
めには、別途「被災度区分判定基準」が適用されることとなっている。
-26-
地震・被災
↓応急危険度判定(被災の直後に適用される)
応急危険度の調査
倒壊の危険性、落下危険物、転倒危険物による危険性を調査する
・建築技術者等による
・外観及び内部の目視による
応急危険度の判定
危険度を判定し次により区分し応急的対応を勧告する
・危
険
・要注意
・調査済
↓被災度区分判定(応急危険度判定後)
被災度の区分
1.被災状況を調査する
・建築技術者による
2.被災度を次により区分する
・軽微
・小破
・中破
・大破
・倒壊
補強等の要否の判定
被災度と震度階から次により判定する
被災度
軽微
小破
中破
大破
倒壊
震度階
○補修
4以下
○
△
×
×
×
△補修又は補強
5
○
○
△
×
×
(詳細調査)
6以上
○
○
○
△
×
×補強又は取り壊し
(詳細調査)
↓
補強等の実施
図1
被災度判定の構成とフロー
-27-
2
適用範囲
本基準は、地震被害を受けた木造、鉄骨造、鉄筋及び鉄骨鉄筋コンクリート造等の
建築物に適用する。建築物はその構造種別の違いによって構法や高さ等の規模が異な
り、地震被害の様相やそれに起因する危険度も異なるので、本基準の判定方法は構造
種別ごとに設定する。
a)木造
木造建築のうちで大多数を占めている在来工法による戸建住宅(専用・店舗併用)
及び、これに類する店舗・事務所・旅館等に適用する。また、在来工法であれば、そ
の他の用途や規模のものにも準用することが可能である。
さらに、枠組壁工法(ツーバイフォー)やプレファブにもおおむね準用することが
できるが、部分的に不適当な点もあるので(例えば、傾斜角度の判定区分など)、注意
を要する。
なお集成材などを用いた大規模木造建築や、社寺のような伝統的な建築には適用し
ない。
b)鉄骨造
鉄骨造建築物において、高さ45mを超える(階数が概ね10以上)もの及び大スパン
構造、立体トラス構造、吊り構造等規模・形式が特殊な鉄骨造建築物には適用しない。
これは、高さ45mを超えるような高層の構造物等に構造的被害を生じた例がなく、ま
たその被害度を簡易に判別することは現状では困難であるからである。また、大スパ
ン構造等の建築物は、その振動性状が通常の鉄骨造建築物と大きく異なる場合が多い
ので適用範囲から除外している。
c)鉄筋コンクリート
コンクリート系建築物の大半を占める場所打ちコンクリートのラーメン構造と壁
式構造に適用する。他のコンクリート系建築物としては、鉄骨鉄筋コンクリート構造、
補強コンクリートブロック高造、プレキャスト鉄筋コンクリート構造、プレストレス
トコンクリート構造等があるが、これらもラーメン構造か壁式構造のいずれかの見方
によって、準用可能である。しかしながら、プレキャスト構造の場合には、構造部材
に顕著な損傷が生じる場合と、部材相互の接合部に顕著な損傷が生じ、部材自身には
あまり損傷が生じない場合とが考えられる。前者の場合には、ラーメン構造か壁式構
造と同じ見方によって判定可能と考えられるが、後者の場合には、接合部に対する見
方が基準中に示されていないので、接合部を柱または梁あるいは耐力壁と読み替えて
適用するなど、柔軟な対応が必要である。
鉄筋コンクリート造の高層・超高層建築物(階数が10以上または、高さが31m以上
-28-
のもの)については建築物の絶対数も一般建築物に比べると少ないので一応本基準の
適用範囲外とし、これらについては別途調査判定することとしている。危険物貯蔵の
ための大規模特殊構造物等についても同様に本基準の適用範囲外とする。
d)異なる構造種別で構成される複合建築物
複合建築物では構造種別ごとに本基準を準用する。
3
用語の定義
本基準では、下記の用語を以下のように定義する。
●応
急
本基準では、応急の語には、暫定的という意味と緊急という意味の両方の意味をも
たせて使用している。すなわち、本基準では、被害を生じさせた地震の直後に短時間
に多くの判定をしなければならない緊急性と、判定には必ずしも十分な調査検討がな
されないために、後に十分な時間をかけて被害調査が行われた場合には判定結果が異
なる場合があることを考慮した暫定性、の二つの側面があることを前提としている。
●危険度
建築物の構造躯体の破壊、および建築物の部分等の落下、転倒が人命に及ぼす危険
の度合をいう。各部についての被災度調査の結果により、その危険度を危険、要注意、
調査済の3ランクとしている。
ここに、「調査済」の語は、この調査判定上ではいわゆる「安全」の意味に用いて
いるものである。しかし、外観調査を主とした限られた範囲の応急危険度判定では、
その建築物の「安全」を保証できる程度の調査判定が行われているわけではなく、調
査した内容の中に「危険」または「要注意」とする要因が無いことを確認しているの
みであるのが実態である。また、判定結果を「安全」とすると、その建築物の恒久的
な使用を保証しているような誤解を生む可能性もある。以上を考慮し、ここでは「調
査済」の語を用いることとしている。
●被災度
建築物及び建築物に付帯している物体の地震による破壊または変形の程度をいう。
応急危険度判定では、その程度により被害の小さい順にA、B、Cの3ランクとして
いる。
-29-
●損傷度
鉄筋コンクリート造における部材または部位の破壊程度をいい、破壊程度の小さい
順にレベルⅠからレベルⅤまでの5段階とする。
・損傷度Ⅰ:近寄らないと見えにくい程度のひび割れ
(ひび割れ幅 0.2mm 以下)
・損傷度Ⅱ:肉眼ではっきり見える程度のひび割れ
(ひび割れ幅 0.2~1mm 程度)
・損傷度Ⅲ:比較的大きなひび割れが生じているが、コンクリートのはく落は、ごく
わずかである。
(ひび割れ幅1~2mm 程度)
・損傷度Ⅳ:大きなひび割れが多数生じ、コンクリートのはく落も激しく鉄筋がかな
り露出している。
(ひび割れ幅2mm を超える)
・損傷度Ⅴ:鉄筋が曲がり、内部のコンクリートも崩れ落ち、一見して柱(耐力壁)
の高さ方向の変形が生じていることがわかるもの。沈下や傾斜がみられ
るのが特色。鉄筋の破断が生じている場合もある。
4
調査方法
震災発生後速やかに応急危険度判定士が、目視または簡単な道具を用いて被災建築
物の概要、建築物周辺の地盤状況、建築物の沈下・傾斜、構造躯体の被害状況、落下
物ないし、転倒物の危険性について調査し、継続して使用する上で余震等による当該
建築物の危険性を判定する。
調査は木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造の構造種別ごとに、それぞれの応急危険
度判定調査表によって行う。調査は建築物概要、建築物周辺の地盤状況、構造躯体の
状態、落下・転倒の危険物の有無について、それぞれに決められた区分方法にしたが
って、Aランク、Bランク、Cランクの3段階に区分する。ついで、これらの被災度
ランクに基づいて建築物の躯体および落下・転倒の危険物それぞれについて危険度の
判定(危険、要注意、調査済)を行う。
[解
説]
応急危険度判定では、外観調査によって「危険」と判定される条件が整えば、それ
以上の調査を省略することができる仕組みとなっている。しかし、外観調査からは被
害が観察されず、一見すると無被害で危険がないと観られる建築物でも、内部に顕著
な構造被害等があり、倒壊等の危険性が高いケースもある。従って、外観調査で被害
が観られないような建築物では、なるべく内部の被害の有無を確認することが望まし
-30-
い。この場合、建築物の使用者または所有者に対する現地でのヒアリングに基づいて
内部調査を行うこともできる。
5
判定方法
応急危険度判定調査表に記されている判定基準に従って建築物等の沈下、傾斜、構
造躯体の被害等を調査判定し、その結果に基づいて建築物等の危険度を次のように判
定する。
(1)建築物の危険度
・危
険:建築物の沈下、傾斜、または構造躯体の被害のいずれかに対して1つ以
上のCランクがある場合には、その建築物を「危険」と判定する。
また、Cランクが無くても、鉄骨造建築物においてはBランクが4つ以
上、鉄筋及び鉄骨鉄筋コンクリート造建築物においてはBランクが2つ
以上ある場合はいずれも「危険」と判定する。
・要注意:建築物の沈下、傾斜、または構造躯体の被害のいずれかに対して1つ以
上のBランクがある場合には、その建築物を「要注意」と判定する。
・調査済:「危険」または「要注意」に該当しない場合。
(2)落下転倒危険物の危険度
・危
険:落下あるいは転倒危険物に関する調査項目について1つ以上のCランク
がある場合には、その調査対象物を「危険」と判定する。
・要注意:落下あるいは転倒危険物に関する調査項目について1つ以上のBランク
がある場合には、その調査対象物を「要注意」と判定する。
・調査済:「危険」または「要注意」に該当しない場合。
その他、電気・ガス・水道などの設備、敷地地形・地盤被害、門扉の構造・被害状
況及び経年劣化について可能なかぎり調査する。
[解
説]
「危険」、「要注意」、「調査済」の各判定結果に対応する貼付用ステッカーを図2か
ら4に例示する。
建築物の傾斜が大きく、余震によってその建築物が剛体的に転倒する危険性がある
場合には、その建築物に対し、危険の表示を行い、注意を喚起するだけでなく、建築
物高さと同じ距離を建築物の傾斜方向に引いた範囲をその影響範囲として、その付近
へ立ち入ることの危険性を明らかにすることも必要である。1995 年の阪神・淡路大震
災では、本震で1階の柱が破壊して大傾斜した建築物が、余震で転倒し前面道路を塞
いだ例がある。この場合の転倒による影響範囲はおよそ建物高さを同程度であった。
-31-
建築物に付帯する物体の落下や転倒が起こった場合の影響範囲については、落下物
等の大きさや形状等によってその範囲は必ずしも同じでない可能性がある。落下危険
物に関しては、その物体が取り付いている地上からの高さhの 1/2 に相当する値を半
径とした円を直下の地表面において描いた範囲を危険範囲を目安とすることが考えら
れる。この場合、落下想定経路に庇などの遮蔽物がある場合には、その効果や影響を
別途考慮する必要がある。物体によっては遮蔽物によってリバンドすることも考慮し
なければならないこともある。
判定結果に基づく対応については、調査者は建築物の使用者等に説明するとともに、
判定ステッカーのコメント欄に立ち入り注意の範囲や注意事項等をわかりやすく記述
することが必要である。なお、建築物によっては、判定結果を口頭で説明するだけで
済む場合もあろうし、また、判定ステッカーが貼付されない場合もあり得る。建築物
が極めて危険な状態にあり、第三者に被害を及ぼす可能性がある場合などにおいては、
その建築物に対する立ち入りについての行政上の措置がとられることがある。
設備、地盤、門扉、経年劣化などの調査は可能なかぎり調査する。一見して異常が
ない、あるいは問題がない場合もその旨を記入しておくことがその後の対策のための
情報として重要である。
6
判定内容による対応
調査判定者は、前章の危険度判定の結果を建築物の所有者や使用者、または所有者
や使用者以外の第三者に知らしめるため、原則として所定の判定ステッカーを建築物
の出入口などの認識しやすい場所に貼付し、建築物の所有者等がいる場合には、判定
内容について説明を行い危険がないように注意を喚起する。また、落下危険物に対し
ては、危険個所付近に判定ステッカーを貼付する。
また、被害を受けた建築物等に対して、応急復旧を行う場合には、原則として、別
に定められた「応急復旧マニュアル」に従って行うものとする。
[解
説]
調査者は、現地において判定結果(危険、要注意、調査済)を建築物の使用者また
は所有者等に知らせ、それに伴って必要とされる使用制限等の応急的対応(措置)を
建築物の使用者または所有者等に勧告する。
建築物が倒壊寸前で極めて危険な場合には、付近への近寄りを規制することも必要
となろう。この点は、落下危険物や転倒危険物の場合においても同様である。以下の
注意は、公共建築物および公共性の高い建築物の場合には、特に注意すべきである。
建築物の被害や落下危険物および転倒危険物の被害が部分的な場合には、判定に伴
う措置としての使用制限等は、その危険範囲を適切に判断して、全体でなく区域につ
-32-
いて適用することを行ってよい。しかしながら、この場合には、部分的な使用制限等
の区域がだれにでも容易にわかるような十分安全な方法を講じるよう建築物の使用者
または所有者等に勧告すべきである。
また、そのような措置が必要とされる場合には、調査者は、そのことを調査表の備
考欄またはメモ欄に記入することとする。
7
判定の変更
応急危険度判定が行われた建築物について、後に崩壊等の危険を防ぐための有効な
処置が講じられた場合、あるいは被災状況に関するより詳細な調査が行われた場合、
その他被災状況に変化が生じた場合など、当初の判定を変更する必要があると認めら
れる場合には、これを変更することができる。
-33-
図2
図3
「危険」を表示するステッカーの例(赤色)
「要注意」を表示するステッカーの例(黄色)
-34-
図4
「調査済」を表示するステッカー(緑色)
-35-
-36-
-37-
-38-
Ⅱ
木造建築物の応急危険度調査判定マニュアル
1
全体的な記入方法
この調査表は、電算入力を前提としているため、左側調査欄と右端の集計欄に分け
て作られています。調査項目は、ゴシック体で表示されています。
調査者は、誤記入を防止するため、まず左側調査欄の該当する事項の番号に○を付
け、あるいは下線部分に該当する数字を記入してください。
つぎに各調査欄で○のついた数字、または下線部分の数字を集計欄に記入してくだ
さい。集計欄については、全て数字を記入してください。当てはまる内容がない場合
等はチェックマークを記入してください。迅速な調査結果の集計ができるように、ご
協力をお願いします。
2
整理番号等
「整理番号」
調査を実施する災害対策本部の担当者の指示に従って記入してください。
なお、その際配付された住宅地図等に調査表と対照できるように、当該被災建築物
の整理番号を転記するようにしてください。
「調査日時」
調査者が、調査対象被災建築物に到達し、調査を開始した時刻を記入してください。
その際、時間単位で記入し、分を省略してください。
(記入例
午前11時35分→午前11時)
「調査回数」
当初調査の場合は記入せず、2回目以降の場合、その調査回数を記入してください。
なお、古い判定ステッカーをはがした場合は、捨てずに持ち帰り、災害対策本部担
当者(判定コーディネーター)にお渡しください。
「調査書氏名」
下線部に氏名、都道府県名、判定士登録番号を順に記入してください。なお、基本
的に1チーム2人を想定していますが、3人以上の場合は下に追記してください。
記入については、調査表を何枚も記入する都合から、ひらがな、イニシャル等を使
用してもよいことにしますが、登録番号は正確に記入するようにしてください。
-39-
3
建築物概要
「1
建築物名称」
災害対策本部から配付された住宅地図等に記載された建築物名称を記入してくだ
さい。正式名称を事前に把握している場合は、それを記入してください。
個人住宅の場合は、地図には所有者等の名前が記載されていますので、その氏名を
記入してください。
なお、一つの敷地に複数の建築物があった場合、それぞれに異なる整理番号を付し
て別葉の調査表に記入してください。各建築物の名称は「~の住宅」、「~の倉庫」等
それぞれが区別できるように記入してください。
「1.1 建築物番号」
あらかじめ、建築物番号が定められている場合はそれを記入してください。
その他の場合は、配付された住宅地図に記載された建築物の番号(個々の建築物の水
平投影面の輪郭に付されている住居番号)を記入してください。
「2
建築物所在地」
字名地番を記入してください。市区町村名は省略して結構です。
(記入例
緑が丘1-2-1)
「2.1 住宅地図整理番号」
配付された住宅地図の番号の記入してください。
建築物名称等
この項は、調査後の問い合わせ等に対応するために、正確な記述に心がけてく
ださい。
特に住宅地図との対応関係が重要であるので、記入上の問題点が生じた場合な
どは必ず市区町村の担当者に相談するなど、調査後報告するようにして下さい。
なお、住宅地図と現場が異なる場合(隣地まで現場と整合していて、地図作成
後の建築行為等で異なったことが明らかな場合)は、住宅地図に現場見取り図を
書き込んで調査を続けることとしますが、開発行為等で大きく現場が変わってい
る場合は、その部分の調査を保留し、市区町村担当者の指示に従ってください。
-40-
「3
建築物用途」
項目に該当しないものについては下記の表を参考にしてください。また、どの項目
にも該当しない場合は、その他として(
)の中に内容を記入してください。
凡
例
店
舗
飲食店、スーパーマーケット、デパート等
館
学校の体育館、スケート場、屋内プール等
体
育
劇場、遊戯場等
建
築
物
用
途
パチンコ店、映画館、ボーリング場、公会堂等
複合用途のものは、主たる用途で記入してください。
13.学校は、教室の集合体を典型として判断してください。予備校や塾等は実態に
応じて 6.事務所と判断すべきものもあります。また、幼稚園は 10.保育所としてくだ
さい。
「4
構造形式」
主たる構造形式を判断して記入してください。
建築物を見て判断して下さい。木造で工法が特定できない場合は、1.在来構法とし
てください。
「5
階数」
調査対象建築物の被災前の階数を記入してください。
倒壊等のために判別出来ない場合、あるいは地下の階数が不明な場合等は、調査者
ができる範囲で推定し、集計欄の数値の右に?を付け、3?のように記入してくださ
い。
「6
建築物規模」
1階寸法を目見当で推定して記入してください。実測上の危険が無く、時間的余裕
のある場合は、コンベックス等で測定していただいても結構です。
原則として間口方向をアに、奥行き方向をイに記入してください。また、円形プラン
や不整形なプランの建築物の場合、外接する方形を想定して、その寸法を記入してく
ださい。
これらの寸法は、後日住宅地図上で建築物を特定して確認するために必要なもので
すが、原形を留めないほど破壊が激しい場合等は、記入しなくても結構です。その場
合、記入欄には×を記入してください。
-41-
Fly UP