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グリーン・ツーリズムにおける農業体験の可能性
卒業研究概要 グリーン・ツーリズムにおける農業体験の可能性 地域科学課程 小原舞子 研究目的 グリーン・ツーリズムは、1970 年代にドイツやフランス、イギリスなどヨーロッパ先進国で始まり、80 年代か ら 90 年代にかけてヨーロッパ全域に広がった。日本では、グリーン・ツーリズムという概念が広まってから日が 浅く、ヨーロッパ型の余暇を農村で長期滞在して過ごすという考え方は浸透し難い現状にある。地方の過疎化が 進むなか、一つの対策として挙げられるグリーン・ツーリズムだが、ネームバリューのない地域では地域が一体 となって規模を確保することで補うほかにない。 秋田県においても、農家民宿や全国の競争力に並んだ好条件の魅力的な対象地があるのに対し、多くの中山間 地域ではほぼ横並びで、その地域独自の魅力を売り出すまでに至っていない場合が数多く挙げられる。 また、平成 14 年から「総合的な学習の時間」が教育課程に導入されるに伴い、近年修学旅行等において農家民 泊体験を実施し、農業体験を取り入れる学校が増加している。従来の、物見遊山的な修学旅行に代わって、児童・ 生徒の自主性・主体性を重んじた体験型観光に移行しつつあり、教育の一環である農業体験型の修学旅行であれ ば、観光の拠点とはいえない農村集落において、修学旅行の対象地になりうることが想定される。 本稿では、農業体験の受け入れ経験のない地域では、どのような対策がなされ、今後も継続して受け入れを行 うことが可能か、また、児童はその経験から何を得ることができるのか調査した。加えて、都市と農村の交流と してのグリーン・ツーリズムという点では、秋田県の地理的背景からも都市部から足を運んでまで秋田県で余暇 を過ごせるかが大きな課題であるが、こうした点を含め秋田が売り出せる魅力について事例研究を行った。 調査方法 [対象地域] 秋田県能代市・大館市 [調査対象] ・能代市の事例 北秋田市にある小学校の宿泊体験の一部である農家民泊に参加した4・5年生の児童を対象に アンケート調査を実施。また、受け入れ農家への聞き取り調査と、同行した様子を踏まえたフ ィールドワークを行った。 ・大館市の事例 首都圏を対象としたモニターツアーの同行調査を実施した。 《能代・農家民泊》 写真1 農家民泊先の家族との対面 写真2 そば打ち体験の様子 写真3 夕食作り体験 写真4 朝食づくり体験 写真5 お別れ式 写真6 民泊家庭への聞き取り 《大館・モニターツアー》 写真7 バス&ウォーク 写真10 もちつき体験 写真8 写真11 梨の剪定作業 曲げわっぱづくり体験 写真9 写真12 きりたんぽづくり体験 代表者への聞き取り 調査結果 能代市、大館市の事例は、どちらも性質も目的も異なるものであったが、両者に言えることは、どちらも行政 が体験の受け入れ態勢の一本化を図っている点と、従来型の観光ではない貴重な体験は、その土地の住人とのふ れあいと、体験者の新しい気付き、人と人との交流に特徴があるという点である。また、 「独自に売り出すものが ないのではないか」と考えている点も共通に見られた。 一方で、能代市と大館市では構成メンバーが異なる点で相違があった。能代市は行政主導型であり、大館市は 行政と受け入れ農家との協同型である。 内発的発展の視点から、住民の自らの動きが加わることで、地域の活性化や発展が見込まれると考える。行政 の存在は普遍的なものであるが、先導者が不在では活動が低迷してしまう恐れがある。継続的な活動にするには、 後継者の確保が必要になるであろう。 これらは、能代市や大館市だけでなく、同様の自治体であれば同じことがいえるだろう。それぞれの地域が住 民を巻き込んだ活動を行うことが、地域の発展に繋がり、人々のあたたかい真心が地域資源になるのではないだ ろうか。