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心肺蘇生法教育を牽引する
心肺蘇生法教育を牽引する 学びたいという『旬』を逃してはならない 希望者は一人残らず受け入れる 茨城県の医療施設に従事する人口 10万人あたりの医師数は、都道府県別にして全国最 下位から2番目。同じく人口 10万人あたりの就業看護師数は最下位から4番目である (共に2010年末現在 厚生労働省統計情報部発表) 。その中にあって、今、茨城県看護職の心肺蘇 生法トレーニングが熱い。茨城県看護協会会長 村田昌子氏に話を伺った。 取材協力 NPO 法人茨城 ACLS 協会理事長 安田 貢 氏 (独立行政法人国立病院機構水戸医療センター救命救急センター長) 知識だけでは人命は救えない 医療従事者として真っ先に求められる技術 茨城県看護協会会長 村田昌子氏 1回の募集に対して何倍もの申込者が殺到したのは嬉しい悲鳴 んでもらいたい」 。技術を次世代に伝えていこうとする日本 ACLS であり、嬉しい誤算でした。しかし、通常であれば定員で締め切 協会員の方々の医療人としての使命感と誇り、そして並々ならぬ るところ、 日本 ACLS協会が 「学びたいと思い立ったその時が 旬 熱意に支えられ、茨城県における看護職の心肺蘇生法教育は新し なのです。旬を逃したら次はありません。我々が希望者数に合わ い時代を迎えたのです。茨城県の看護職は本当に幸せです。 せた体制を整えましょう」と、動いてくださったのです。そして、 ゴールデンウィークの開催は非常に大きな成果をもたらしまし 筑波大学が会場を提供してくださり、トレーニングインストラク た。達成感を得た修了者たちが伝道師となり、例年開催に期待が ターが、受講者3人に対し1人付く体制で、全国から緊急参集し 集まるようになりました。そして日本 ACLS 協会でも「ナイチン てくださいました。研修に必要な医療用マネキンや機材は日本 ゲール月間」と称し、毎年 5 ∼ 6月に看護職のための特別期間を ACLS 協会本部の方が奔走し、各方面からかき集めてくださいま 設けてくれています。私ども茨城県での成功は、隣県の千葉県、 した。何よりも驚くべきことは、こうした協力がほとんど無償で 埼玉県にも連鎖しています。どちらも申込みが殺到して「とんで 看護職は、 「働く女性の20人に1人は看護職」と言われるほど てきました。しかし、どうしても一般的なレベルで、 「研修を行 行われているということです。 もなく広い会場が必要になった」と(笑) 。私は、こうした都道 地域に存在しています。つまり、看護職こそが地域において様々 いました」 「修了証を出しました」という域を出るものではあり 「一人でも多くの看護職に、世界標準レベルの心肺蘇生法を学 府県単位の取り組みが全国で行われていくことを願っています。 な形で県民の方に関わっているわけですが、その中でどれほどの ませんでした。そうした中、あるとき日本 ACLS 協会茨城トレー 看護職が、心肺蘇生という人命にとって最優先される危機的状 ニングサイト長 安田貢先生が「茨城県看護協会で看護師の心肺 況に対応できるでしょうか。それは決して、所属する医療施設の 蘇生法教育をリードしてほしい」と、私どもを訪ねて来られたの 性格や診療科や病棟といった専門性によって対応の可否が分か です。そして世界標準レベルである心肺蘇生法トレーニングの話 私ども茨城県看護協会には約1万 2000人の会員がいますが、 ちょうどこの4月から、当協会の入る建物に理学療法士と言語聴 れるものではありません。医療に携わる者であれば、誰しもが最 を伺うと同時に、県がそれらの研修に対し予算化をしているのは このトレーニングを受けたいという看護職には、協会員でなくと 覚士、作業療法士の事務所が入居しました。医師、歯科医師は 優先で身につけておくべき技術なのです。 医師と救急救命士のみ、看護師は対象外であるということが分か も受講の門戸を開いています。そして、今後はさらなる他職種と もちろんのこと、そうした職種とも連携して、複合型医療サービ 心肺蘇生が必要な状況は、日常生活においていつ何時起こる りました。そこで平成 21年、 「救急看護はすべての人々を対象と 手を携えて現場の体制を強化していくことを計画しています。特 スの提供を目指します。そこには一般のボランティアの方々も関 か分かりません。今、AED は学校にもデパートにもどこにでも し、すべての看護師が備えるべき知識と技術である」と県に要望 に特別養護老人ホームや福祉施設では看護職が12名しかいな わってきます。看護だけでやれることは何一つありません。やる 設置されていますが、看護職はそれを瞬時に使いこなせるでしょ し、翌年度から日本 ACLS 協会が実施する研修への参加に対し、 いところが多いですし、訪問看護も24時間行っているわけです べきことはたくさんありますので、多職種間でも考え方をひとつ うか。近くにいる医療に従事しない人にも正しく補助を頼めるで 看護師にも予算がつくようになりました。 から、介護福祉士の方々にも広く一次救命の技術を習得していた にして、できるだけ多くの方々に一次救命処置を習得してもらう しょうか。おそらく、 「どうしよう」と顔を見合わせることになる 県の理解は、私ども茨城県看護協会の力だけでは到底得られる だければ大きな成果をもたらすことは間違いありません。また、 仕組みづくりに努めてまいります。 でしょう。いざという時、知識だけ持っていても人を助けること ものではなく、実績を伴った日本 ACLS 協会本部と茨城トレーニ はできません。基礎を理解した上で技術を磨いておかなければ、 ングサイトのメンバーの大変な熱意と協力があってこそのもので 何もできないものです。 した。 「チーム医療」という問題が注目されてきたことも追い風で 茨城県看護協会でも過去長い間、救急に携わる看護師や認定 した。日本 ACLS 協会のコースでは、職種に分け隔てなく、内容 看護師を対象に、継続教育という形で心肺蘇生法の研修を行っ とレベルでトレーニングを積んでいくのですから。 世界標準レベルの心肺蘇生法をすべての看護職に 県看護協会から県下にくまなく周知 県の予算がついた最初の年、平成 22年は 9月の祝日に実施し になっていたのです。それが、県のバックアップを受けて看護協 たのですが、勤務調整が難しかったのか、参加者はそれほどいま 会が積極的に推奨し、世界標準レベルのトレーニングを受けられ せんでした。そこで翌年はナイチンゲールの誕生月でありゴール ることが周知されるようになったのですから、技術取得を切望し デンウィークがある5月に実施したところ、大変な数の受講申込 ていた看護師が一気に顕在化してきたのです。 みがありました。本当に学びたい人というのは連休中でも喜んで 最大の効果は、日頃からそうした情報や機会に恵まれる大病 出てくるのですね。それまでも熱意のある看護師が潜在的に大勢 院だけでなく、県下のあらゆる医療機関に所属する看護職にも等 いることは救急看護研修の統計からも分かってはいましたが、自 しく情報と機会が与えられるようになったことではないでしょう 費参加や勤務調整の難しさ、あるいは「勉強はしたいが、どうやっ か。心肺蘇生を必要とする場面は、急性期病棟に限らず、療養 て勉強したらいいかが分からない」といった情報不足が、ネック 病床でも、訪問看護先でも、どこでもあり得るのです。 15 Nurse Partners 今後の展開 複合型医療サービスの基本として 心肺蘇生法トレーニング ナイチンゲール月間(5 ∼ 6 月)が開催されます! ●コース紹介 今年も全国で 看護師限定コースを開催します。 この期間に受講された方には、 例年どおり ナイチンゲールバッジを差し上げます。 コース詳細は、 協会HPよりご覧ください。 ナイチンゲール月間 受講者バッジ 新しいコース HS-FA(ハートセイバーファーストエイド)が加わりました。5月以降開始予定です。 1. HS-FA けがや突然の発作等に対して医療用具・機 器のほとんど無い状態での応急手当(エピペ ンの使用方法含む)を学ぶ 2. HS-CPR-AED 心肺停止状態の人を救命するために必要な 成人・小児の心肺蘇生法とAEDの使用方法 を学ぶ 3. BLS 心肺停止に対する一次救命処置、窒息の解 除、AEDの使い方を学ぶ 4. ACLS 二次救命処置、重症不整脈、急性冠症候群 や脳卒中の診断と初期治療を学ぶ 5. ACLS-EP ACLSの例外、心血管系、中毒、電解質異 常や特殊な状況(喘息、アナフィラキシー、 外傷や電撃傷など)について学ぶ 6. PALS 乳児、幼児の呼吸、循環係にかかわる緊急 病態や心停止の評価と管理を学ぶ ■お問合せ・お申込み NPO 法人日本 ACLS 協会 【URL】 http://acls.jp 【Tel】 047- 468 - 8912 【E-mail】 info-staff@acls.jp Nurse Partners 14