Comments
Description
Transcript
平成 27 年度「全国商工会議所きらり輝き観光振興大賞」
平成 27 年度「全国商工会議所きらり輝き観光振興大賞」 日本商工会議所は、平成 20 年に「全国商工会議所きらり輝き観光振興大賞」を創設し、地域の個 が光り、他の商工会議所の模範となる観光振興活動に取り組む商工会議所を顕彰している。 8回目となる今年度の受賞商工会議所による観光振興事業の概要は、以下のとおり。 ◆大賞(1カ所) ▼富山商工会議所(富山県) -「自然」 「産業」 「文化」を結ぶ「交通」を柱に、県をあげて産業観光を推進- 【評価ポイント】 ● 県内8商工会議所が連携して富山の産業文化を発信した「産業観光図鑑」 ● 「自然」 「産業」 「文化」 「交通」を連動させた通年型観光への取り組み 富山商工会議所は、富山県の一人当たり製造品 出荷額が日本海側随一になっている特徴に着目し、 平成 14 年度から産業観光に取り組んでいる。これ まで富山県は、立山・黒部アルペンルートをはじめ とする「自然」や、世界遺産の五箇山などが主力の 観光資源だったが、天候に左右されにくい「産業観 光」を加えることで、通年型観光の定着を目指して いる。 26 年には、県内7商工会議所と連携して、 「富山 県広域産業観光推進委員会」を発足。来県者の多く がビジネスマンとなっている実情を踏まえ、 県内商 LRTの車両基地見学は大盛況 工会議所が一丸となって、 日帰り出張から宿泊型出 張にシフトしてもらうための仕組みづくりに取り組んでいる。 27 年には、県内にある 100 以上の産業観光施設 を掲載する「産業観光図鑑 2015」を作成。3月に 開業した北陸新幹線の県内3駅を起点に、 9つの産 業観光モデルコースなどを紹介している。 また、AR機能(スマートフォンをかざすと各 施設の詳細が読み取れる機能)を付与したほか、電 子書籍化してインターネット上でも閲覧できる仕 組みを構築した。さらに、マスコミに取り上げられ たことで、掲載企業のほか、富山のモノづくり産業 を広く周知するきっかけとなり、 団体向けの企画旅 旅行会社の商品造成にも活用されている 行商品として、 旅行会社からの関心が高まっている。 このほかにも同所では、岐阜県の神岡商工会議所と連携して、高山本線を活用したモニターツアー を開催したほか、市内の路面電車(セントラム)を「全日本チンドンコンクール」等のイベントの際 に活用するなど、JR富山駅を基点にした地域交通の活用による観光振興に取り組んでいる。 -1- ◆振興賞(2カ所) ▼長野商工会議所(長野県) -善光寺御開帳を活用した広域観光の推進- 【評価ポイント】 ●観光客の滞在時間の延長、周辺地域への波及効果を生んだ広域連携事業 ●奉賛会発足による戦略的な観光プロモーションの展開 長野商工会議所は、国宝・善光寺で数え年7年に一 度開催される「御開帳」を地域活性化の起爆剤とする ため、平成 25 年 11 月に県内外の観光関連団体ととも に「善光寺御開帳奉賛会」を発足。27 年4月の御開帳 に向けて、①周辺観光地への周遊促進、②滞在時間の 延長、③周辺観光地との人的連携、を目的に、善光寺 を軸にした広域観光を展開した。 全国9地域での誘客活動や各地域の情報をフェイス ブックやツイッター等で情報発信するなど、連携によ るプロモーション強化を図った。また、御開帳開催期 間中は、長野市内の観光案内所での共同ガイドや地域 善光寺御開帳の様子(写真提供:善光寺) 間の直通バスを運行するなど、善光寺を起点にした周 辺地域への観光客の誘導や滞在型観光を推進した。 こうした取り組みにより、27 年の参拝客は過去最多の 707 万人を達成した。さらに、県内地域、北 陸方面など周辺地域への観光客の流れが生まれるなどの波及効果があった。今後は、若者層へのPR 強化やインバウンドへの対応を進めていくことにしている。 ▼福山商工会議所(広島県) -まちなみと現代アートの融合により新たな地域の魅力創造- 【評価ポイント】 ●地域住民と一体となったイベント運営による地域活性化 ●自前主義の徹底による地方創生のモデル化 古くより国際貿易港として栄え、今でも情緒あふれるまちなみが 色濃く残る広島県福山市の鞆の浦。福山商工会議所は、ここに残る 数々の観光資源を発信するため、毎年9月下旬から約3週間にわた り、 「鞆の浦 de ART」を行っている。平成 24 年からの開催から 4回目を迎え、今では海外からも来場者が訪れる、一大イベントに 成長している。 鞆の浦の遺跡や寺院、町屋等、様々なスポットでアート作品を展 示し、作品の背景にある地域の歴史や伝統産業、文化を紹介してい る。イベントの回を重ねるごとに地域住民にも浸透し、今年4月に は、住民が中心となって実行委員会を発足、展示場所の提供や開催 期間中の来場者の案内等を住民が対応するようになった。 また、イベント期間中は、福山市内で栽培された生姜のジンジャ ーシロップ等、地産の素材を使用したオリジナルのメニューを地元 のカフェで提供。さらに、新たな鞆の浦アイテムとして、参加アー ティストがデザインした「鞆の浦手ぬぐい」が、地元の土産品とし 出展されたアート作品 て定着するなど、イベント開催による経済波及効果も生まれている。 -2- ◆観光立“地域”特別賞(2カ所) ▼ひたちなか商工会議所(茨城県) -「タコ日本一」宣言で地域に元気を促す- 【評価ポイント】 ●タコという地域資源を徹底活用した取り組み ●風評被害の払拭に向けて地域が一丸となって食の安全をPR ひたちなか商工会議所は平成 22 年、加工高日本一の タコを地域資源に、地域活性化プロジェクトをスター トさせた。しかし、開始直後の東日本大震災により、 放射能汚染問題などによる風評被害に見舞われた。 そこで、同所では、こうした状況を打破しようと 24 年2月に、市内 40 団体と連携して、 「タコ日本一!魚 のおいしいまち推進協議会」を発足させた。 「漁師(獲 り手) 」 「料理人(作り手) 」 「市民・観光客(食べ手) 」 が三位一体となり、加工ダコをはじめ、美味しい地魚 第1回世界タコ焼きグランプリの様子 の魅力を味わう場としての「旬魚万来サロン」や、料 理講習会を継続的に開催し、放射能に対する市民や飲食業者、流通業者らの理解促進に努めた。 24 年に開催した「第1回世界タコ焼きグランプリ」では、タコの仕入れ先であるモーリタニアの駐 日大使等も出席し、 市内在住の外国人や留学生が母国の味付けをしたオリジナルタコ焼きを競い合い、 「タコのまちひたちなか」を広くPRした。 「タコ日本一」を地域の元気の源としていくため、書籍の 発行やテーマソングを制作するなど、地域への普及活動にも努めており、 「タコ条例」の制定を検討し ている。 ▼児島商工会議所(岡山県) -地場産業で地域の再生・発展を図る「児島ジーンズストリート構想」- 【評価ポイント】 ●地場産業と商店街が連動した空き店舗対策 ●明確なコンセプトと計画で観光振興による地域の課題解決 日本各地で深刻な問題となっているシャッター商店街。 岡山県倉敷市児島の「味野商店街」も、商店主の高齢化 や後継者不在といった課題を抱えていた。そこで、児島 商工会議所は、 「国産ジーンズ発祥の地」という地域特性 を活かし、ジーンズ販売店の積極的な誘致による空き店 舗対策に取り組み、地域商業の再生・発展に努めている。 その結果、現在では 26 店のジーンズ店がオープンし、 それに関連するように雑貨店や飲食店などの出店も進ん だ。また、まち全体がジーンズ一色になるように、シャ ジーンズ通りとして生まれ変わった商店街 ッターの色や道路などを濃い藍色にカラーリングした。 こうした取り組みにより、ジーンズ愛好者など国内外から多くの観光客が商店街を訪れるようにな り、当初は年間 7,000 人程度だった通行量が、10 万人にまで増加した。そして、その1割が外国人と なっていることから、英語表記のマップ作成や、免税店申請の取り組みが進められている。 さらに同所では、ジーンズのまち・児島を国内外に発信していくため、大即売市「Lightning 稲妻 デニムフェス」や、芸術祭「KOJIMA BLUE International art festival) 」といったイベントを定期的 に開催している。 -3- ◆奨励賞(4カ所) ▼久慈商工会議所(岩手県) -「あまちゃん」のロケ地として北三陸の魅力発信- 【評価ポイント】 ●「あまちゃん」ブームを起爆剤に市民を巻き込んだ観光振興を推進 久慈商工会議所は、平成 25 年のNHK連続テレビ小 説「あまちゃん」のロケ地として選ばれたことをきっ かけに、地域住民を巻き込んだロケツーリズムに取り 組んでいる。 ドラマにちなんで開発された土産品や既存の特産品 等の販路開拓を目的に、百貨店のバイヤーや報道関係 者を集めた展示商談会の開催や、地域における「おも てなし」の基盤づくりのため、地元観光に関するQ& A集を作成し、市民に配布した。 また、ロケ地となった施設やエリアを実際に訪問し 海女さんの捕ったウニの試食体験ツアー てもらえるよう、モニターツアーを企画・実施するとともに、放映終了後も継続的に観光客を取り組 むために、 「あまちゃん」の世界を徹底して追体験できる旅行商品の造成に着手した。海女さんが捕っ たウニの試食や、郷土料理「まめぶ汁」づくり、琥珀採掘体験など、久慈の観光資源の魅力を満喫し てもらう商品づくりを進めている。 ▼熱海商工会議所(静岡県) -熱海コレクション「A-PLUS」を活用した観光振興と地域連携事業の推進- 【評価ポイント】 ● 認定品の層の厚さと、これらをプロモートする「場」の良好な組み合わせ 熱海商工会議所は平成 22 年から、熱海らしい魅 力ある地産商品を「熱海ブランド」として認定する 「熱海コレクション A-PLUS 事業」 を実施している。 この事業は、観光消費額の増加を目指して実施 しているもので、その特徴は、①「認定」にとどま らず、商品の「販路開拓」を積極的にサポート、② ターゲットを首都圏からの女性客に設定、 ③認定品 は 「すぐに食べられるもの」 に限定、 していること。 さらに、 熱海在住の国際的なソムリエである田崎真 也氏が特別審査委員を務めている。 「インパクトの 熱海駅のアンテナショップ ある商品」 「人にお土産として推薦できるか」 など、 地域のイメージアップにつながる商品かどうかが審査の基準となっている。 これまでに、熱海特産の橙を使用した羊羹や、新たな観光資源であるジャカランダの花をイメージ したクッキーなど、90 品を認定。認定された商品は、熱海駅のアンテナショップや地元のコンビニエ ンスストア等で販売されており、熱海駅ビルのリニューアルに合わせて、常設販売場の設置が検討さ れている。25 年からは、熱海観光の定番であるMOA美術館でも催事販売されており、新たな地域連 携を形成している。 -4- ▼美濃商工会議所(岐阜県) -自然、ITを活用した新たな顧客層への発信とブランドの構築- 【評価ポイント】 ●既存の観光資源の活用と新しい観光資源の発掘で新たな客層を獲得 国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている美濃市のまちなみや、ユネスコ無形文化遺産の 「本美濃紙」など、歴史ある様々な観光資源を有する岐阜県美濃市。美濃商工会議所では、まちのさ らなるイメージアップを目指して、新たな地域資源を活用した観光振興を進めている。 その一環として開催しているのが、美濃の自然で「できること」に着目した「長良川アウトドアフ ェスティバル in 美濃」である。平成 24 年からスタートした同イベントは、ファミリーや個人客をタ ーゲットに、 古城山のトレイルランニングをはじめ、 長良川でのカヌー体験やスキューバダイビング、 サ イクリングツアー等、イベント開催期間中、10~20 種目の催しを用意している。 また、地域の観光情報の発信にも注力している。 独自の多言語対応情報サイト「美濃アプリ」を開発 し、 アプリ上でツイッターと連動したキャンペーン や、 美濃和紙の体験チケットなどが当たるおみくじ イベントなどを企画している。観光客が美濃に「来 る前」そして、 「来てから」美濃のことを楽しんで もらえる工夫がなされていて、25 年7月の開設以 長良川アウトドアフェスティバルの様子 降、累計のページビューは 15 万を超えている。 ▼小浜商工会議所(福井県) -若狭小浜の“癒し”グルメと観光情報発信プロジェクト- 【評価ポイント】 ●危機感を共有した若手事業者によるまちおこしグループが観光をリード 小浜商工会議所は、市内の若手事業者を中心とした 地域おこしグループ「KISUMO小浜」を中心に観 光振興事業を展開している。 同グループは、平成 24 年に実施した「まちづくり」 をテーマにした講演会をきっかけに、小浜市の今後に 危機感を持った熱い志を持つ若手事業者らによって結 成された。 「来(KI)たい」 「住(SU)みたい」 「戻(MO) りたい」の頭文字をそれぞれ取って、 「KISUMO」 と名付けられ、特産品の開発や、繰り返し訪れたくな モニターツアーの様子 る観光コンテンツの企画等を手掛けている。 特産品では、小浜の海の幸・山の幸をふんだんに使った「若狭おばま鯖おでん」を開発した。地域 資源の「鯖」と日本遺産である「御食国若狭と鯖街道」をテーマに作られたもので、既に地域の飲食 店や宿泊施設のメニュー等で採用されている。 また、KISUMO小浜に新たに加わったIターン・Uターンのメンバーを中心に、外から見た小 浜の魅力を整理し、小浜ならではの観光商品の造成を進めている。新しい観光コンテンツやIターン マップを作成して、小浜の魅力の再整理と情報発信を行っている。 -5-