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ガンマ線(と可視光)で見る宇宙
Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt ガンマ線(と可視光)で見る宇宙 水野 恒史 広島大学理学部 物理科学科 高エネルギー宇宙研究室 @岡山大学「量子の世界と宇宙」 2009年10月30日(金) Fermiガンマ線衛星 Tsunefumi Mizuno 「かなた」望遠鏡 1 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt Contents (目次) 1. 2. 3. 4. 5. 高エネルギー光子による宇宙観測 Fermiガンマ線衛星と「かなた」可視望遠鏡 最新の成果の紹介:可視望遠鏡 最新の成果の紹介:Fermiガンマ線衛星 まとめ Tsunefumi Mizuno 2 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt (1) 高エネルギー光子によ る宇宙観測 Tsunefumi Mizuno 3 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt 宇宙観測の意義 (1) • 人類は宇宙を観測することで、生活に役に立つ、あるいは科学の進 V. Hess, 1912 歩に寄与するさまざまな知見を得てきた 実用的な物 時刻を計る (日時計;太陽の運行。バビロニアBC2000頃) 暦の発明 (星の運行。エジプトBC4000年頃) (比較的)純粋科学に近いもの 万有引力の発見、検証 (惑星の運動) 一般相対論の検証 (水星の軌道。重力レンズ) Isaac Newton 1643-1727 Tsunefumi Mizuno http://www.astraea-libra.net/star/tenmon/solar_1.html 4 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt 宇宙観測の意義 (1) • 人類は宇宙を観測することで、生活に役に立つ、あるいは科学の進 V. Hess, 1912 歩に寄与するさまざまな知見を得てきた 実用的な物 時刻を計る (日時計;太陽の運行。バビロニアBC2000頃) 暦の発明 (星の運行。エジプトBC4000年頃) (比較的)純粋科学に近いもの 万有引力の発見、検証 (惑星の運動) 一般相対論の検証 (水星の軌道。重力レンズ) Isaac Newton 1643-1727 Tsunefumi Mizuno Albert Einstein 1879-1955 A2218 銀河団の重力で背景 銀河からの光が曲げられる ESA/Hubble 5 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt 宇宙観測の意義 (2) • これらの宇宙観測は、長い間可視光(目に見える光)に限られてきた V. Hess, 1912 が、近年あらゆる波長域での観測が可能となった。特に、X線ガンマ 線を用いて宇宙の活動的な姿や、基礎物理学を調べるのが高エネル ギー宇宙物理学。Fermiガンマ線衛星が昨年打ち上げられた。 M31 (銀河;星の集団) d = 780 kpc M = 7.1x1011 Msun L = 2.6x1010 Lsun Author: John Lanoue Tsunefumi Mizuno Pulsar(高速回転する 中性子星)の想像図 1000 回転/s B ~ 1012 G M87からのジェット(高エ ネルギー粒子の噴流) d = 17 Mpc M ~ 109 Msun 5000 光年 6 ESA/Hubble Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt Fermi衛星以前のガンマ線観測 • 1991-2000の10年間かけて得られた昔のガンマ線マップ (銀河座標) 270個のガンマ線天体 • 画像がピンボケのため、2/3が可視光などで対応天体を絞り切れず、正体が不 明だった Tsunefumi Mizuno 7 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt Fermi衛星以前のガンマ線観測 • from 1991-2000の10年間かけて得られた昔のガンマ線マップ (銀河座標) Wikipedia 270個のガンマ天体 • 画像がピンボケのため、2/3が可視光などで対応天体を絞り切れず、正体が不 明だった 四角が銀河面、真ん中が銀河中心 丸印がガンマ線天体(銀河系内、系外) Tsunefumi Mizuno 8 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt ガンマ線天文学の新展開 • 昨年打ち上げのFermiガンマ線衛星による9か月の観測でえられたガンマ線マップ ~1000個のガンマ線天体(パルサーやブラックホールなど) 宇宙線(高エネルギー粒子)が星間物質と衝突してできるガンマ線 などがはっきりとらえられている。最新の観測装置により高い解像度で撮影できるよ うになったため。天体の物理量の議論が可能に。 四角が銀河面、真ん中が銀河中心 丸印がガンマ線天体(銀河系内、系外) Tsunefumi Mizuno 9 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt 電磁波について • 我々は天体からの光 = 電磁波を観測する 電場と磁場の横波 E = hc/l (エネルギーが高い => 波長が短い;粒子性が卓越) 紫外 赤外 電波 可視光の106倍以上 可視 青 波長 (長) 色の違い 赤 <=>波長の違い <=>エネルギーの違い エネルギーの数え方。電子1個に1Vの電圧をかけて得られるエネルギーをeVと呼ぶ。 106 eV = 1 MeV (100万電子ボルト), 109 eV = 1 GeV (10億電子ボルト) Tsunefumi Mizuno 10 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt 宇宙物理学(現代天文学) 物理学の立場から、宇宙を科学的に 研究する学問 適用、確認 (地上で得られる)物理法則 宇宙観測 極限状態での検証 観測対象(天体)の質量、組成、温度などを電磁波の 観測から導き出す Tsunefumi Mizuno 黒体放射; 温度に応じた放射 光の強さ 物理学が必要 力学、電磁気学、量子力学 相対性理論、熱統計力学 波長(nm) 11 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt ガンマ線の生成プロセス • X線までは、主に天体の温度に対応した電磁波を出す(黒体放射) 電波:数 K(宇宙背景マイクロ波放射)、赤外線:数100 K(星間ダスト)、可視光: 1000 K-10000 K(星の光)、X線:100万度以上(ブラックホール周りの高温ガス) • ガンマ線は、高エネルギーに加速された粒子(宇宙線)が放出する => 宇宙線や周りの 環境を調べられる。 e + B シンクロトロン放射 p中間子の崩壊 核子-核子反応で生じた p中間子生成がガンマ線 に崩壊 電子が、磁場や物質の電場 で曲げられて放射 (時間に依存する項を含む Maxwell方程式) e + h コンプトン散乱の逆過程 電子が光を跳ね飛ばす e + matter Tsunefumi Mizuno p+ matter 制動放射 逆コンプトン散乱 12 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt (2) Fermiガンマ線衛星と 「かなた」可視望遠鏡 Tsunefumi Mizuno 13 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt Fermiガンマ線衛星 (1) • 米国フロリダ州 Cape Canaveral Air Station から打ち上げ。現地時間 2008 年6月11日。 • 科学観測を8月4日に開始。 • 高度 565 kmのほぼ円軌道。1日15回 地球を回る Tsunefumi Mizuno 14 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt Fermiガンマ線衛星 (2) LAT検出器 • 20 MeV to >= 300 GeV • FOV: 2.4 sr • 高エネルギーガンマ線の撮像 • 日本も大きく貢献 Tsunefumi Mizuno GBM検出器 • 8 keV to 40 MeV • FOV: 9 sr • 突発現象をとらえる パルサー、ブラックホール、 ガンマ線バースなどを観測 15 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt 広島大学のアプローチ=「かなた」可視望遠鏡 • ガンマ線だけでは天体の正体が分からないこともある 様々な波長の光で観測することが重要 • 国立天文台より望遠鏡を移管。指向性能を5倍に改善。 大学キャンパスと 天文台とは車で20分 高いアクセシビリティ Tsunefumi Mizuno 1.5mクラスとしては最高 レベルの駆動性能 5度/秒 16 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt 「かなた」の主な観測対象 • • • • ブラックホール天体 ガンマ線バースト 超新星 矮新星、古典新星 宇宙における高エネルギー現象 の多くは一過性の突発的現象 数十秒で暗く見えなくなって しまう天体もある ⇒これまでは観測が困難だった ガンマ線バーストの 空想図 Illustration: NASA/D.Berry 爆発前 爆発後 M51の超新星(© Cosmotography) Fermi衛星と連携、あるいは独自の観測で成果を出す Tsunefumi Mizuno 17 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt (3) 最新の観測成果: 「かなた」可視望遠鏡 Tsunefumi Mizuno 18 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt 恒星の進化と超新星 (© 粟野、福江ほか スペクトル博物館) 超新星爆発 時間とともに進化 • 白色矮星、中性子星:星の進化の果てにできる高密度な星 • 超新星:重い恒星または白色矮星が吹き飛ぶ大爆発 Tsunefumi Mizuno 19 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt 核爆発型(Ia型)超新星 • 白色矮星の爆発によるものをIa型と呼ぶ • どの核爆発型超新星も同じような明るさ。銀河までの距離を測ったり、宇宙膨 張(ハッブルの法則)の測定に利用される。 • 白色矮星の爆発 • どの核爆発型超新星も同じような明るさ 核爆発型超新星は、白色矮星が連星系をなし、降 着によって限界質量に達したときに起こす大爆発 Tsunefumi Mizuno 20 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt 「限界」を超えた超新星爆発? SN 2009dc 明るさが太陽の約80億倍に達し たことを発見 (通常のIa型超新星の2倍以上 の明るさ) 史上最も明るいIa型超新星 Tsunefumi Mizuno 明るさ • 2009年4月9日にアメリカのグループが発見 • 広島大学かなた望遠鏡でフォローアップ観測 • 県立ぐんま天文台、岡山天体物理観測所、鹿児 島大学天文台、すばる望遠鏡などでも観測 これまで最も明るかった物 通常の場合 時間 21 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt 日本天文学会における記者発表の掲載紙面 その他、朝日新聞、産経新聞、中国新聞、NHKニュースほか 距離の指標、恒星の進化モデルの見直しの可能性 Tsunefumi Mizuno 22 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt 「かなた」のその他の観測対象 ブラックホールに周辺物質が落ち込むことにより、光 速に違いジェット(物質の噴流)を形成 超巨大ブラックホールからの ジェット(ブレーザー) • マイクロクェーサー(恒星質量ブラッ クホールからのジェット) クエーサーやガンマ線バース トとの類似性、スケールの差異 観測、データ解析に大学院生が日々活躍 Tsunefumi Mizuno 23 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt (4) 最新の観測成果: ガンマ線観測 Tsunefumi Mizuno 24 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt 宇宙線とは • ほぼ光速で運動する高エネルギー荷電粒子の総称。1912年に発見。 V. Hess, 1912 • 手のひらサイズで1秒間1個程度、我々の体を突き抜けている。 • 高いエネルギーを持つ。1018 eV以上は超高エネルギー宇宙線と呼ばれ、物理学、天文 学的に重要な研究対象(地上の加速器は1013 eV程度) • 1015 eV程度までは、銀河磁場に閉じ込められている (銀河宇宙線)。大きなエネルギー 密度をもち、星の光のエネルギーと同程度。 宇宙線の銀河系内での分布や、宇宙線を生み出す天体を調べ ることが、ガンマ線観測の主目的のひとつ Hessの気球実験 空(宇宙)から高エネルギー粒子 (宇宙線)が来ていることを実証 Tsunefumi Mizuno 25 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt Fermiガンマ線衛星が見た宇宙 • 1年弱で~900個のガンマ線天体 銀河面には多数のパルサー(高速回転中性子)、超新星残骸の候補 高銀緯では、無数の活動銀河核(巨大ブラックホールからのジェット) いずれも、宇宙線を生成しガンマ線で光る • これらガンマ線天体の背後には、宇宙線と星間物質の反応で生じるガンマ線 =>ガンマ線は、銀河を満たす宇宙線、およびそれらを作り出す”エンジン”を調べ る強力な手段 銀河面天体:パルサー、超新星残骸など 高銀緯天体:超巨大ブラックホール Tsunefumi Mizuno 26 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt (4-1) 銀河系のガンマ線天体: パルサーと超新星残骸 Tsunefumi Mizuno 27 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt パルサーと超新星残骸 (© 粟野、福江ほか スペクトル博物館) 超新星爆発 • 太陽の10倍程度以上の質量をもつ星は最終的に(II型)超新星爆発を起こし、 重元素および莫大なエネルギーを放出 中性子星(パルサー)もしくはブラックホールを残す • 爆発の痕跡が超新星残骸。膨張過程で、銀河宇宙線を作り出す。 • パルサーは回転運動によりさらに宇宙線を生成 パルサー、超新星残骸ともガンマ線の重要な観測対象 Tsunefumi Mizuno 28 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt パルサー(中性子星)とは • 1967年:Bell & Hewishにより発見 回転する中性子星からの規則正 しいパルス信号を電波で検出。理論 上の産物にとどまっていた中性子星 の存在を証明。 1974年にノーベル賞受賞 • 中性子(フェルミ粒子)の縮退圧で重力を支える 太陽と同程度の質量が半径10 kmに凝縮 自転周期: 1 ms ~ 10 s (角運動量保存;サイズが小さいと回転が速い) 表面磁場: < 104 ~ 1011 T (磁束の保存;サイズが小さいと磁場が強い) なぜパルス(周期的な電磁波放射)を出すのか? Tsunefumi Mizuno 29 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt パルサーからの電磁波 • 中性子星は完全な導体 磁場中を導体が回転すると、~1015 Vもの巨 大な起電力が生じる。 加速された電子が磁場に巻きつくようにして 運動。加速度を受け電磁放射。 回転軸と磁極の向きが異なると、パルサーと なる (磁極が我々の方を向いたときに見える) 電波の放射領域 ファラデーの発電機。ローレンツ力 で回転軸に電子が、円盤の端に 正の電荷がたまる => 起電力 • 電波では1800天体が知られる一方、ガンマ線は6例しか検 出例がなく、ガンマ線がどこからくるのか不明だった Tsunefumi Mizuno 30 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt Fermi衛星で検出されたパルサー http://www.nasa.gov/images/content/300646main_pulsarmaplabeled2_HI.jpg 全数: 46 パルサー • これまで知られていたもの: 6 • 若い電波パルサー: 16 • ガンマ線データからパルス探査: 16 • ミリ秒パルサー(リサイクルパルサー): 8 Tsunefumi Mizuno ガンマ線でのみ光るパル サーの存在;電波パルスは 我々の方を向いていない? 31 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt 電波でも明るいパルサー (Vela: P=89 ms) パルス波形(エネルギー帯域ごと) • エネルギーによってガンマ 線のパルス波形が変化。 • ガンマ線パルスは電波より も遅れる。 • 電波には、第一パルスが 見えない ガンマ線 (低エネルギー) ガンマ線 (高エネルギー) X線 Tsunefumi Mizuno • ガンマ線の放射領域は、 電波とは異なるらしい。 電波 パルスの周期 (回転に対応) 32 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt 電波でも明るいパルサー (Vela: P=89 ms) ガンマ線の強度 ガンマ線放射のエネルギー分布 仮にガンマ線が磁極 付近で作られた場合 Fermi EGRET(昔の衛星) 理論モデル 0.1 1 エネルギー (GeV) 10 • 青印がFermiによって得られた エネルギー分布。緑は昔の観測 (精度が悪かった)。 • スペクトルは、 3 GeV付近に指 数関数的な折れ曲がりを持つ。 • 折れ曲がりは加速された電子の エネルギーの上限を示す。もしガ ンマ線放射が磁極付近であれば、 強磁場中での電子陽電子対生成 により、ガンマ線が吸収され、より 強い折れ曲がりになる。 • 他のガンマ線パルサーでも同様 な結果。 ガンマ線は、電波より外側の磁場の弱い領域で放射される Tsunefumi Mizuno 33 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt Fermi衛星で分かったパルサーの姿 • この1年間で46天体ものガンマ線パルサーが検出。うち16個は他波長では知 られておらず、ガンマ線で発見された。 • パルス波形、エネルギー分布から、ガンマ線放射領域が電波のそれとは違うこ とが分かった。 従来のモデル 電波、ガンマ線とも磁極付近から 新しく確立した描像 電波は磁極付近か ガンマ線は外側から • 電波観測ではつかまらない多数のパルサーが隠れている。 パルサーの進化、銀河宇宙線への寄与、銀河系での超新星爆発の歴史を調 べる上で、ガンマ線観測が力を発揮。 Tsunefumi Mizuno その他、超新星残骸からのガンマ線を初めて検出などの成果 34 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt (4-2) 銀河系外のガンマ線天体: 超巨大ブラックホール Tsunefumi Mizuno 35 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt 宇宙物理学におけるBlack Hole (1) • ブラックホールとは Einsteinの一般相対論で得られた概念。質量Mの周りに rs 2GM / c 2 3.0M / M sun km なる事象の地平線が存在し、光すら(つまり、あらゆる信号が)逃 げ出せない。よって黒い穴(Black Hole; BH)。rsは Schwarzschild radiusと呼ばれる。(見たことないけど)多分こん な感じ。 http://www.jaxa.jp/article/interview/no7/p2_j.html Tsunefumi Mizuno 36 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt 宇宙物理学におけるBlack Hole (2) • BHには、でき方、質量に応じて色々ある。 始原BH: 初期宇宙の密度揺らぎでできるとされるBH。小質量。Hawking 輻射によりγ線を出すと予想される。 恒星質量 BH: 星の進化の終末、超新星爆発に伴いできるBH。 M~10Msun 超巨大 BH: 銀河の中心にある。M=106-109 Msun • 特に銀河の中心の超巨大BHは、物が落ち込む際に莫大なエネ ルギー(重力エネルギー)を解放し、あらゆる波長で明るく輝く。これ が活動銀河核。ジェットを伴うことも多い。 M87(宇宙ジェットの例) 5000 光年 Tsunefumi Mizuno 37 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt ガンマ線でみる超巨大BH • 超巨大BHからはジェット(物質の噴流)が出ることも多い ジェットがなぜできるのかは大事なテーマ。超高エネルギー宇宙線の源 とも言われる。 ジェットをどの方向から見るかで、天 体の見え方(どの波長で明るいか、時 間変化の仕方、など)が異なる • ガンマ線は、電子が光を跳ね飛ばす逆コンプトン散乱で生じる。 • ジェットが我々の方を向いていると、放射がジェットの向きに集中する相対論 効果のため、~1000倍に増幅。ガンマ線で強く輝く。 これまでは、ジェットが我々の方向を向いているものしかガンマ線 で観測できず、限られた天体しか議論できなかった。 Tsunefumi Mizuno 38 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt Fermiガンマ線衛星で見た電波銀河 • 1年の間に、3つの電波銀河(ジェットが横を向いている)からガンマ線放射を 発見。 • 天体の種類(ジェットの向き)によらず、超巨大BHからの放射を研究できるよ うになった。 Tsunefumi Mizuno 39 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt ジェットが横を向いているBHからのガンマ線 NGC 1275 (電波銀河)の時間変動とガンマ線イメージ ガンマ線の変動 上限値 電波の変動 • 電波で明るい電波銀河。ジェットは40度ほどずれている。 • 30年以上前にガンマ線で検出の報告があるが、1990年代の観測では検出され ず、ガンマ線を放出するか否かは確定していなかった。(左図) • Fermiガンマ線衛星で、ガンマ線放射を検出(右図)。約10年の間に、ジェットが 10倍ほども強くなったと考えられる。 電波の活動性と相関? Tsunefumi Mizuno 40 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt 超巨大BH: Fermi衛星による進展 • 電波銀河など、これまでガンマ線では 見えなかった天体からもガンマ線検出 超巨大BHのガンマ線放出機構、 ジェットの構造などを広いサンプルで 議論 10年の時間スケールでジェットの 強さが10倍も増減 • ジェットがこちらを向いている = ガンマ 線で明るいものは常時モニタ可能 X線、可視光との相関は天体に よって尐しずつ違っており、放射領域 の違いなどが調べられる。「かなた」 望遠鏡も活躍 Tsunefumi Mizuno PKS1502+106 (多波長で相関している例) ガンマ線 X線 「かなた」望遠鏡 41 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt (4-3) Fermi衛星で見る突発現象: ガンマ線バースト Tsunefumi Mizuno 42 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt ガンマ線バーストとは Light curve counts • 空のある点が突然ガンマ線で明るくなる 現象。1967年に発見 • 一日に1回程度 • 瞬間的な明るさは、全宇宙の星の光をも 超える、宇宙最大の爆発現象 20s 時間(s) 中性子星の合体、 もしくは 大きな星の超新星爆発 でできた、宇宙で最高エネ ルギーのジェットがガンマ線 で輝く ジェットの研究、宇宙線の研究、物理学理論の検証などに重要 Tsunefumi Mizuno 43 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt Fermi衛星によるガンマ線バースト観測 2009年9月までに捉えたガンマ線バースト ©Fermi collaboration GRB 090510 *,*:Fermi衛星で捉えたガンマ線バースト (291個) *: 高エネルギーガンマ線(100 MeV以上)放射を捉えたもの (10個) • 1年間で10個のガンマ線バーストから高エネルギーガンマ線を検出 過去の検出数をすでに上回る • 73億光年かなたのガンマ線バースト GRB 090510を使い、相対性理論の 基礎「光速不変」の原理を過去最高の精度で検証 Tsunefumi Mizuno 44 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt 「光速度不変の原理」とは ? 60km/h 光(電磁波)でも同じことが起こるか? (マイケルソンとモーレーの実験など) 80km/h 地球の自転の向き 時速60km/hで走る電車内で 時速80km/hのボールを投げると 電車の外では60+80=140km/h となって見える。 地球の自転を利用した実験。「真空中の光 速は観測者の運動によらず常に一定」(光 速度不変の原理) しかし量子重力理論の枠組みの中にはミクロなスケールで 「光速が電磁波の波長(エネルギー)によってわずかではあるが変化する」 (光速度不変の原理の破れ)を主張するものが存在する。(時空が連続でなく、 量子構造をもつ効果) Tsunefumi Mizuno 45 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt どうやって光速のずれを測定するのか 量子重力理論が予言する光速の「ずれ」はごく僅か。測定可能な「ずれ」を 生むには、天文学的な距離を旅した光を観測する必要がある。 高いエネルギーの光 低いエネルギーの光 光速度不変が成り立っている場合 遅れ 高いエネルギーの光 低いエネルギーの光 光速度不変が破れる量子重力理論に従う場合、 高いエネルギーの光が遅れて届く できるだけ遠い天体からできるだけ高いエネルギーの光を観測する必要 => ガンマ線バーストを観測する Tsunefumi Mizuno 46 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt 光速不変の原理の検証 GRB 090510の エネルギー毎の時間変動 ガンマ線バーストが起きた時刻 低いエネルギー(X線) 31GeVの光子 GBM/NaIs 高いエネルギー(ガンマ線) Tsunefumi Mizuno 31 GeVの最高エネルギーのガンマ線は、低 エネルギーのX線ガンマ線にたいして、最大で も0.83秒しか遅れていないことが分かった。 47 Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt Fermiで分かったガンマ線バースト • 31 GeVのガンマ線の到達時間は、73億光年という長い距離 を経ても、最大でも0.83秒しか変わらない。 光速度の差にしてわずか4 x 10-18 (Dc/c)以下の違い • 一方、量子重力理論の一部は、もっと大きな時間差を予言し ていた。 • 光速不変の原理を過去最高の精度で検証。量子重力理論に、 観測から史上最高の制限。アインシュタインの相対性理論は、 非常に微小な領域まで厳密に成立。 • その他、これまでの観測で最も高いエネルギーのジェットを見 つけるなどの成果をあげている。 Tsunefumi Mizuno 48 まとめ Okayama_GammaRayAstronomy_2009Oct.ppt • 宇宙観測は、実用と科学の両面で大きな役割 • X線ガンマ線で活動的な宇宙を見るのが高エネルギー宇宙物理学 • 広島大学は、Fermiガンマ線衛星と「かなた」望遠鏡を軸に研究 「かなた」は突発現象や変動に注目して研究。最も明るい超新星爆 発の発見などの成果。 パルサーからのガンマ線は、電波より外側から放射。隠されたパル サーの存在。超新星残骸をガンマ線で初めて検出。 ジェットの向きによらず、超巨大BHからのガンマ線放射を捉えた。 可視光と連携したモニタ観測も日々継続。 ガンマ線バーストを用いて、光速不変の原理を最高精度で検証。 その他のトピックス http://www-heaf.hepl.hiroshima-u.ac.jp/glast/glast-j.html http://fermi.gsfc.nasa.gov/ ご静聴ありがとうございました Tsunefumi Mizuno 49