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デロイト トーマツ チャイナ ニュース 中国の投資・会計・税務情報

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デロイト トーマツ チャイナ ニュース 中国の投資・会計・税務情報
デロイト トーマツ チャイナ ニュース
中国の投資・会計・税務情報
Vol.155 October 2015
Contents
投資情報
企業登記手続に 「三証合一」 全面開始 ............................................................................................................................................................................................................ 2
税務情報
国家税務総局が租税条約の恩典享受に関する新規定を公布
~デロイト中国発行 「Tax Analysis」~ ................................................................................................................................................................................................................ 4
会計情報
中国子会社における法定決算留意事項.............................................................................................................................................................................................................. 9
中国投資入門 Q&A
投資総額と資金調達 ............................................................................................................................................................................................................................................... 13
中国の投資 会計 税務 Q&A 《第 6 版》 発刊のお知らせ ....................................................................................................................................................................... 16
中国業務に関する主なお問合せ先 ..................................................................................................................................................................................................................... 17
本ニュースに基づいて、財務上の問題やビジネスの問題に影響があるような意思決定や行動をとられる場合は、下記の点を考慮した上で必ず当法
人の専門家にご相談ください。
1.
本ニュースは、一般的な情報を提供するものであって、各利用者の具体的な事情に即した会計情報を提供するもの、或いは会計、税務、 法
2.
3.
律、投資、コンサルティングその他の助言やサービスを提供するものではありません。
本ニュースに含まれている情報は、利用者の参考のためのみに供されるものです。
本ニュースは、その作成後の状況変化等により時機に即していない可能性があります。
翻訳部分の表現については十分吟味をしていますが、日本語では本来の意味を表現できていない箇所のある可能性がありますので、
ご利用に際しては原文をご確認くださいますようお願い致します。
発行人:デロイト トーマツ 中国サービス グループ
〒108-6221 東京都港区港南 2-15-3 品川インターシティ C 棟
電話:03-6720-8341 / ファックス:03-6720-8346
E-Mail:[email protected]
1
投資情報
企業登記手続に 「三証合一」 全面開始
2015 年 10 月 1 日から、三証書の一本化(中国語:三証合一、以下“三証合
一”と表記)による企業登記制度(以下、“新制度”と表記)が中国全土でスタ
ートしました。
これは、2015 年 6 月 23 日付国務院弁公庁の「“三証合一”登記制度改革の
加速推進に関する意見」(国弁発〔2015〕50 号)に応じ、工商総局と税務総
局が 2015 年 9 月 9 日に合同で公表した「三証合一に関連する業務のフォロ
ーアップに関する通知」(工商企注字〔2015〕147 号、以下“工商企注字
〔2015〕147 号”と表記)に拠るものです。
「三証合一」とは、従来工商行政管理部門が発行していた「営業許可証」と品質監督検査検疫部門が発行していた「組
織機構コード証」、更に税務部門が発行していた「税務登記証」の三証書を統合し、18 桁の統一社会信用コードの記載
してある「営業許可証」に一本化することを指します。
「三証合一」により今後は、企業新設登記の際に工商行政管理部門へ必要資料を提出し「営業許可証」を発行してもら
うのみで企業の登記手続が完了となります。また地方により対応が異なる可能性はありますが、登記申請から「営業許
可証」が交付されるまでの所要期間は従来の1か月弱から 3 日まで短縮されます1。
1.
新制度の特徴-三つの統合
(1) 設立登記の受理窓口は工商行政管理部門となり、従来のように税務部門・品質監督検査検疫部門への再申
請・登記が不要となります。従って申請書および提出資料も1部で足ります。
(2) 企業コードが法人毎に賦与され、法人存続期間に亘り変更されません。また法人消滅後も遡及検索の為保留
されます。
(3) 企業情報が各政府部門にリアルタイムで共有されるほか、社会に対しても開示されます。
1
人民日報 10 月 13 日 (http://www.saic.gov.cn/ywdt/gsyw/mtjj/201510/t20151013_162729.html)
2
2.
登記手続の実務
工商企注字〔2015〕147 号によると、10 月 1 日以降企業に以下の実務対応が求められます。
(1) 新設登記
新設登記の申請は、工商行政管理部門1か所のみとなります。また、申請資料に、生産経営住所・財務責任
者・計算方式などの税関連情報が追加されます。登記後に税務関連情報に変更が生じた場合、企業は直接
所轄税務局で変更手続きを行うこととなります。
(2) 登記済企業の対応
既に登記済の企業は、移行期間中に、既存の三証書(営業許可証・組織機構コード証・税務登記証)を統一
社会信用コードが記載された新しい「営業許可証」に切替をしなければなりません。その際、既存の三証書を
工商行政管理部門の窓口に返却しなければなりません。もし既存の三証書を紛失した場合、紛失声明を新聞
に掲載し提出する必要があります。
(3) 抹消登記
新「営業許可証」の交付を受けた法人が抹消登記したい場合、まず税務部門(国税・地税どちらか1ヶ所)に抹
消の申請をし、「清税証明」(税金を精算した証明)を取得した上で工商行政管理部門へ工商登記の抹消を申
請することとなります。
(4) 移行期間
原則として新制度の移行期間は 2017 年 12 月 31 日までとされていますが、実行が困難な企業は 2020 年末ま
で延期することができます。ただし、地方によって、移行期間が短縮されることがありますので、所在地の工商
行政管理部門への確認が必要です。
3.
浙江省・吉林省が「五証合一」に
浙江省と吉林省では、統一社会信用コードの適用範囲を拡大する「五証合一」を推進しています。これは、三証書の
ほか、浙江省では社会保険登記証と統計登記証、吉林省では社会保険登記証と会社印鑑使用許可証を新しい「営
業許可証」に統合させました2。
このように、「三証合一」より登記手続の更なる簡素化を推進している地方があります。今後、その経験が複製され全
国展開される可能性が考えられます。
4.
留意事項
新制度で申請手続の受理窓口が集約されることにより、企業の新規設立や変更届出等の行政手続において事前審
査の負担が軽減されました。一方で、今後は事後審査の厳格化が予想されます3。また、事後審査により虚偽や規則
違反などが発覚した場合には厳しい懲罰が課される可能性がありますので、登記申請資料および申請内容について
細心の注意を払う必要があります。
2
3
中国工商報 10 月 10 日(http://qyj.saic.gov.cn/gzdt/gdgzdt/201510/t20151010_162655.html)
2015 年 8 月付 国務院弁公庁「ランダムに抽出検査の推進で事中事後監督管理を規範するに関する通知」
(http://www.saic.gov.cn/ywdt/gsyw/zjyw/xxb/201508/t20150806_159837.html)
3
税務情報
国家税務総局が租税条約の恩典享受に関する新規定を公布
~デロイト中国発行 「Tax Analysis」~
国家税務総局は 2015 年 8 月 27 日に、「非居住納税者による租税条約の恩典享受に関する管理弁法」(国家税務総局
公告 2015 年第 60 号、以下「60 号公告」)を公布した。これは、非居住納税者(企業および個人)が中国において租税条
約および国際運輸業に関する協定(以下「租税条約」と総称)4の恩典(すなわち、納税義務の軽減または免除)を享受
するための手続について、新しい指針を提供するものである。60 号公告は、租税条約の恩典享受に係る手続の大幅な
簡素化を目的とするものであり、2015 年 11 月 1 日から施行される。
背景
これまで、租税条約の恩典を享受するための手続に関する規定としては、主に 124 号通達5および 37 号公告6があった。
そのうち、37 号公告は非居住者が国際運輸業所得に対して租税条約の恩典を享受する際の取扱いについて規定した
ものであり、124 号通達は非居住者がその他の収入または所得に対して租税条約の恩典を享受する際の取扱いにつ
いて規定したものである。60 号公告の発効をもって、124 通達の全文と 37 号公告の一部条項は廃止される。
2009 年に公布された 124 号通達によれば、非居住者が租税条約の恩典適用を受けるには、所得の性質に基づき、事
前に税務機関の承認を得るか、届出を行う必要があった。
•
配当、利子、使用料と譲渡所得について租税条約の条項の適用を受けるには、所轄税務機関または審査承認
権限のある税務機関から承認を得る必要がある。
•
その他の条項(例えば、恒久的施設および事業所得、自由職業所得、給与所得およびその他の条項)の適用を
受けるには、所轄税務機関に届出を行う必要がある。
2014 年に公布された 37 号公告は、国際運輸業に従事する非居住者企業の管理について規定したものであり、その第
11 条~第 15 条において、国際運輸業に従事する非居住者企業が租税条約の恩典を享受するためには、国際運輸業
所得について、事前に所轄税務機関に届出を行わなければならない旨が規定されている。
中国政府は最近、“简政放权”(手続の簡素化と権限の委譲)の政策を積極的に推し進め、行政の効率化および経済
の成長につなげようとしている。例えば、国務院は 2015 年 5 月に、124 号通達で要求されている租税条約の恩典享受
に係る審査承認手続の廃止を決定した7。60 号公告による、租税条約の恩典享受に係る事前審査、届出の手続から自
主判断に基づく手続への移行は、国家税務総局が国務院の決定に応えたものである。
租税条約とは、中華人民共和国政府と外国政府の間で締結された二重課税の回避および脱税防止のための協定(香港、マカオ
特別行政区との協定を含む)を指し、国際運輸業に関する協定とは、中華人民共和国政府と外国政府の間で締結された航空協定、
海運協定、陸上輸送協定、国際運輸業の所得に対する課税の相互免除に関する協定または交換公文を指す。
5
「国家税務総局:『非居住者による租税条約の恩典享受に関する管理弁法(試行)』の発布に関する通知」(国税発[2009]124 号)
6
「国家税務総局:『国際運輸業務に従事する非居住者企業の税収管理暫定弁法』の発布に関する通知」(国家税務総局公告 2014
年第 37 号)
7
国発[2015]27 号通達を参照のこと。
4
4
60 号公告の要点
適用範囲の拡大
60 号公告は、租税条約の恩典享受に係る手続を定めた 124 号通達と 37 号公告の規定を統合したものであり、国際運
輸業所得を含むすべての収入および所得項目に適用される。
納税者と源泉徴収義務者による納税申告時の自主判断
60 号公告は、124 号通達および 37 号公告で要求されている事前の審査および届出の手続を取り消し、非居住者企業
や個人が租税条約の恩典を享受するための手続を緩和するものである。具体的には、租税条約の恩典を享受するか
否かを、非居住納税者もしくは源泉徴収義務者が申告時に自ら判断することになる。
•
60 号公告の第 5 条によれば、非居住納税者は、租税条約の恩典を享受するための要件を満たしていると自ら判
断した場合、納税申告時に、その恩典に係る租税条約の関連条項を適用することができる。
•
60 号公告の第 6 条によれば、法定の源泉徴収義務者または企業所得税法の規定により指定された源泉徴収義
務者がいる場合で、非居住納税者が自ら、租税条約の恩典を享受するための要件を満たしていると判断した場合、
非居住納税者は自発的に源泉徴収義務者にその旨を通知するとともに、公告の第 7 条に規定された報告表と資
料を源泉徴収義務者に提供する必要がある。源泉徴収義務者は、非居住納税者から提供された資料が整ってお
り、報告表に記載された情報が恩典を享受するための要件を満たしていると判断した場合、租税条約に基づく軽
減税率または免税を適用することができる。さもなければ、中国国内税法の関連規定に基づき、税額の源泉徴収
を行わなければならない。
留意点として、60 号公告は、非居住納税者が租税条約の恩典を享受するために満たされなければならない実質的な
要件(例えば、受益者の認定、目的テスト等)に何ら変更を加えるものではない。そのため、納税者および源泉徴収義
務者による自主判断は、税務機関による審査の結果、事後的に否認される可能性もある。
報告表および資料の提出要求
60 号公告の第 7 条の規定により、非居住納税者または源泉徴収義務者は、納税申告時に以下の報告表と資料を提出
する必要がある。
1.
「非居住納税者の居住者身分情報報告表」(企業用と個人用に分けられる)
2.
「非居住納税者による租税条約の恩典享受に係る情況報告表」(所得の類型に応じて、企業用 4 種と個人用 4 種
の計 8 種がある)
3.
居住者証明書(国際運輸業所得を取得した企業または個人の場合、法人証明またはパスポートのコピーで代替
可能)
4.
取得した所得の所有権を証明する書類(例えば、契約書、董事会または株主会決議、支払証憑等)
5.
その他の租税法規によって要求されるその他の資料8
ここでいう“その他の資料”とは、その他の租税法規において、租税条約の恩典を享受するために提出を要求されている特定の資
料を指す。例えば、非居住者が代理人を通じて所得を取得し、自らが受益者であると主張する場合、「国家税務総局:租税条約にお
ける“受益者”の認定に関する公告」(国家税務総局公告 2012 年第 30 号)の規定によれば、代理人が受益者ではないことに関する
声明書の提出を要求される。
8
5
60 号公告は、網羅的な資料リストを提供することを意図している。非居住納税者は、租税条約の恩典を享受するため
の要件を満たしていることを証明するその他の資料を提出することもできるが、60 号公告に関する国家税務総局の公
式の解釈によれば、非居住納税者が上述した資料リスト以外のその他の資料を提出しなかったとしても、納税申告時
に租税条約の恩典を享受することには影響を与えない。124 号通達と 37 号公告はいずれも、税務機関が規定に列挙さ
れていないその他の資料の提出を納税者に要求することを認めているため、このことは大きな改善点と言えるだろう。
実務においては、非常に多くの追加資料の提出を要求する税務機関もあり、非居住納税者が大きなコンプライアンスの
負担を強いられるケースもあった。
源泉徴収義務者の責任の増大
124 号通達および 37 号公告と比べて、60 号公告の下で源泉徴収義務者が負う責任は重くなったと言える。非居住納税
者が作成する 2 種類の報告表には、多くの非居住納税者に関する項目が含まれており、種々の情報が記載される。源
泉徴収義務者がこれらの情報に基づき、非居住納税者が租税条約の恩典を享受できるか否かを判断するためには、
税務と法律に関する一定の知識と実務経験が必要になるだろう。
源泉徴収義務者の負担が増大する中で、源泉徴収義務者の判断に誤りがあったと、中国の税務機関が事後的に認定
した場合に、源泉徴収義務者は処罰を受ける可能性があるか否かという疑問が生じる。この点について、60 号公告に
は具体的な規定がないため、一般的に適用される現行の法規を参照すべきと考えられる。税収徴収管理法第 69 条の
規定によれば、源泉徴収義務者が源泉徴収すべき税額を源泉徴収しない場合、税務機関は源泉徴収義務者に対し、
未納税額の 50%以上 3 倍以下の罰金を科すことができる。源泉徴収義務者が“相当の注意”をもって判断したことを立
証した場合、そのことが処罰に対する抗弁となり得るのか否かは明確ではない。もし抗弁となるのであれば、“相当の
注意”と認められる基準をめぐって税務機関と源泉徴収義務者の間に論争が生じる可能性がある。実務においては、
税務機関から異議を唱えられる潜在的なリスクを避けるために、源泉徴収義務者は非居住納税者による租税条約の
恩典享受に関して、特に非居住納税者が非関連者である場合に、保守的な処理を行う可能性がある。その結果、源泉
徴収義務者と非居住納税者の間で摩擦が生じる可能性もある。
税務機関による事後管理
60 号公告により、租税条約の恩典享受に係る事前の審査、届出の要求が取り消されたため、今後は税務機関による
事後管理がより重要になる。中国の税務機関は事後管理において、提出された資料に対してレビューを実施するだけ
でなく、非居住納税者または源泉徴収義務者に対して補足資料を提出するよう要求する可能性もある。非居住納税者
は租税条約の恩典を不当に享受したと税務機関が判断した場合には、非居住納税者に対して、定めた期限までに税
額を追納するよう要求することになる。非居住納税者が規定に従って税額を追納しない場合、企業所得税法に基づき、
税務機関は当該非居住納税者のその他の中国国内源泉所得の中から税額を追徴する権限を有する。あるいは、税収
徴収管理法に基づき、その他の措置を取ることもできる。
6
納税義務の発生時点は、60 号公告の影響を受けることはなく、一般的に適用されるその他の税務法規によって定めら
れる。したがって、非居住納税者は租税条約の恩典を不当に享受したと税務機関が事後的に判断した場合には、税額
のほか、滞納金または延滞利息を追徴される可能性もある。
中国の税務機関による事後管理の具体的な方式と効果はまだ定かではないが、徴税管理の難易度が高まる可能性は
ある。一部の非居住納税者は、特に中国の税務機関の徴税管理手段が限られる場合において、60 号公告の公布前よ
りもアグレッシブな立場を取る可能性がある。例えば、非居住者企業が中国企業の持分(その持分の主たる価値は不
動産から生じるものではない)を譲渡するケースにおいて、源泉徴収義務者が、当該非居住者企業の居住者身分と持
分比率に関する租税条約の適用要件を検討した上で、当該持分譲渡による譲渡所得に対しては企業所得税の免除を
受けられると判断した場合、中国の税務機関が事後管理において、一般租税回避防止規則(General Anti-Avoidance
Rule)に基づき、非居住者企業は譲渡所得に係る免税の適用を受けられないと判断したとしても、税務機関が源泉徴
収義務者の責任を追及することは難しい可能性がある。また、売り手である非居住者企業が既に中国において事業活
動を行っておらず、ひいては中国国外で清算済みであれば、税務機関がその売り手に対して税額を追徴することも難し
いだろう。また、7 号公告9では、中国居住者企業の持分の間接譲渡によって得た譲渡所得に対しても、租税条約にお
ける譲渡所得条項に基づき、中国において納税を免除することを認めているため、60 号公告は、中国居住者企業の持
分の直接譲渡のみならず、間接譲渡にも影響を及ぼす可能性がある。
香港居住者身分の証明の簡易手続の取消し
2013 年に公布された第 53 号公告10では、香港の居住者企業は香港の関連当局が発行する会社の登録証書あるいは
商業登記証査、居住者個人は香港 ID カードおよびその他の証拠資料により、自らの香港居住者身分を証明することが
できるとされていた。60 号公告の発効をもって 53 号公告は全文が廃止されるため、この香港居住者に対する便宜的措
置も取り消されることになる。
コメント
60 号公告は、租税条約の恩典を享受するための事前の審査および届出の手続を取り消したため、手続面から見れば、
非居住納税者はより容易に租税条約の恩典を享受できるようになったと言える。しかし、60 号公告は、非居住納税者が
租税条約の恩典を享受するための実質的な要件、および納税義務の発生時点を何ら変更するものではないため、非
居住納税者および源泉徴収義務者に新たな課題をもたらす可能性がある。すなわち、非居住納税者および源泉徴収
義務者は、自らの判断によって租税条約の恩典を享受した後、中国の税務機関にその処理を否認されるリスク、およ
びその結果として滞納金または延滞利息、罰金を課される可能性についても考慮する必要が生じる。
「国家税務総局:非居住者企業による財産の間接譲渡に係る企業所得税の若干の問題に関する公告」(国家税務総局公告 2015
年第 7 号)
10
「国家税務総局:『所得に対する租税に関する二重課税の回避および脱税の防止のための内地と香港特別行政区との間の協定』
の実施に係る居住者身分の認定問題に関する公告」(国家税務総局公告 2013 年第 53 号)
9
7
企業が中国国内源泉所得を海外に送金する際、1 件当たり 5 万米ドル相当額を超える“サービス貿易等の項目”(例え
ば、配当、利子、使用料、譲渡収入)の支払に対しては、40 号公告11の規定に基づき、事前に所轄税務機関で税務届
出の手続を行う必要がある。支払者が送金手続を進めるためには、所轄税務機関が捺印した税務届出表を銀行に提
出しなければならない。これは、40 号公告において規定された手続上の要求であり、届出時に税務機関が実質的な審
査を行うことは必要とされていない(審査は届出後に行われる)。しかし、実務上は、非居住納税者の主張する税務処
理に同意できない場合に、税務届出表への捺印を拒否する税務機関もあれば、40 号公告において要求されている資
料に加えて、多くの追加資料の提出を要求する税務機関もある。そのため、非居住納税者および中国国内の支払者
(通常は、法定または指定の源泉徴収義務者である)は、“简政放权”の一環として、40 号公告で要求される税務届出
の手続が簡素化されるまで、今後も引き続き 40 号公告によってもたらされる実務的な問題に直面する可能性がある。
「国家税務総局、国家外貨管理局:サービス貿易等項目の対外支払に係る税務届出に関連する問題についての公告」(国家税務
総局、国家外貨管理局公告 2013 年第 40 号)
11
8
会計情報
中国子会社における法定決算留意事項
1.
はじめに
中国では10月初旬の国慶節休暇も終わり、企業各社においても12月末の法定決算の準備にとりかかる時期となり
ました。今回は、日系企業中国子会社が、この時期に、2015年度の法定決算に際して、事前に準備、検討すべきと
思われる事項について解説します。なお、文章中の意見にわたる部分ついては、執筆者の私見が含まれることをお
断りいたします。
2.
当期決算に考慮すべき外的要因、内的要因
まず、中国における会計制度に関して、この1~2年、留意すべき変化がみられますので、決算前に中国子会社の
決算に対してどのような影響があるかを検討する必要があります。
また、この1年、中国経済の景気減速が世界的に懸念されているのは周知の通りです。そのような中国経済環境下
で、中国における日系企業の中には、中国経済後退の影響を受け業績が急激に悪化している会社や、事業採算の
悪化を原因として撤退や事業再編等を計画している会社も増えていると想定されます。期末決算に際しては、業績
が悪化している子会社、事業再編等を検討している子会社は、後述の通り、特に注意が必要です。
3.
旧企業会計準則の廃止、ただし、旧企業会計準則体系のうち「企業会計制度」は存続 (2015年)
「デロイト トーマツ チャイナ ニュースVol.151(2015年6月号)」においてご紹介のとおり、中国財政部は、2015年2月
に財会〔2015〕3号「廃止及び失効する若干の会計準則制度規範性文件目録の公布に関する通知」を公表し、旧企
業会計準則(以下、“旧準則”と表記)の体系の一部である旧準則の具体準則をすべて廃止しています。
元来、広い意味で「旧準則」と言った場合、企業会計制度と旧準則が合わさって一つの会計基準を構成したものを
指していましたが、今回、そのうちの旧準則が廃止されたことになります。この廃止により、旧準則体系を会計基準
として採用していた会社は、影響を受けることになるため、特に以下の点に留意する必要があります。なお、詳細に
ついては、「デロイト トーマツ チャイナ ニュース(Vol.151)」をご参照ください。
(1)
旧準則での開示は継続可能
明文での定めはありませんが、旧準則体系では、企業会計制度がまだ廃止されず存続していることから、企業
会計制度にしたがった開示を継続することが可能であると考えられています。
(2)
企業会計制度に具体的な記述がないものへの対応
旧準則の体系のなかでは、今後、企業会計制度に具体的な記述がない取引も想定されます。そのような取引
の取り扱いは明文では定められていませんが、新企業会計準則(以下、“新準則”と表記)の規定が適用される
可能性もありますので、監査を担当している公認会計士と事前に相談する必要があります。
9
4.
新準則の大幅改訂(2014 年)
中国の会計基準設定主体である財政部は、2014年に相次いで5つの改訂具体準則及び3つの新規具体準則を公表
しました。これらの準則の改訂・新設は、概ね、近年の国際財務報告基準(IFRS)の改訂にキャッチアップするため
のものと言えます。また、これら8つの具体準則に対応する実務指針である「応用指南」についても逐次公表されて
います。改訂・新設された各具体準則の概要、詳細につきましては、「トーマツ チャイナ ニュースVol.143」(2014年
10月号)等のバックナンバーをご参照ください。
従来より新準則を採用している会社には、これらの改訂新準則が2014年度決算から適用されています。しかしなが
ら、改訂内容が十分に周知されていないことも予想されるため、期末決算に重要な影響があると予想される次の2
点に絞って解説します。
(1) 企業会計準則第2号―長期持分投資
企業結合による持分取得時の付随費用の取扱いについて、「企業結合のために生じた監査、法律サービス、評価
コンサルティング、仲介手数料等、及びその他の関連する管理費用は、発生時に当期の損益に計上しなければな
らない」と費用処理が明確化されています。従来、付随費用は取得した持分の取得原価に含めて計上していたケ
ースもあると考えられますので、留意が必要です。
(2) 企業会計準則第9号―従業員給付(改訂9号準則)
IAS 第 19 号「従業員給付」と同様、短期従業員給付、退職後給付等の会計処理が明示的に規定されました。その
中で、特に、有給休暇については、留意が必要です。改訂 9 号準則では、従業員の有給休暇の取り扱いについて、
「有給休暇は、累積型有給休暇と非累積型有給休暇とに分けられる。企業は、将来に享受する有給休暇の権利を
増加させる役務を従業員が提供した時、累積有給休暇に関連する従業員給付を認識し、未使用の権利の累積に
より増加する支払見込み金額をもって測定しなければならない。」とされていますので、翌期に有給休暇の権利を
繰り延べることが可能な制度を設けている中国子会社においては、未払有給休暇の計上の要否を検討する必要
があります。
5.
その他の留意事項
(1) 固定資産の減損
昨今の中国経済の急激な減速に伴い中国子会社の業績が悪化している場合、あるいは事業再編等を検討してい
る場合、当該子会社において固定資産の減損の兆候が生じていないか留意する必要があります。仮に、減損の
兆候が生じている場合には、早めに減損損失の測定を実施し、影響額を把握しておくことが望ましいと考えられま
す。特に以下のような状況が生じている場合には注意が必要です。
- 保有する資産の市場価格が大幅に下落している。
- 経営環境に大きな変化が生じ、会社に著しく不利な影響をもたらす可能性がある。
- 資産の陳腐化、遊休状態が生じている。
- 営業赤字が継続している、あるいは当期の業績が計画を大きく下回っている。
中国子会社において、減損の検討を行う際は、特に次の 2 点について注意が必要です。
10
① 新準則第8号「資産の減損」においては、日本基準(「固定資産の減損に係る会計基準」(企業会計審議会
平成14年8月9日))に定められているような、割引前の将来キャッシュ・フローによるテストというステップがあ
りません。したがって、減損の兆候が生じている場合には、直接、割引後の将来キャッシュ・フローを見積も
り、これを基に減損損失を測定するため、日本基準より減損損失が発生しやすい基準となっていることに留
意する必要があります。なお、このような減損テストのステップは、IAS第36号「資産の減損」(以下、“IAS第36
号”と表記)と同様のものです。
② 減損損失の測定に用いられる割引率について、新準則第8号「資産の減損」において、「割引率は、現在の市
場における貨幣の時間的価値及び当該資産固有のリスクを反映させた税引前の利率である。当該割引率
は、企業が資産を購入または投資する際に、要求される期待収益率である」と規定されています。当該規定
についてもIAS第36号と同趣旨のものと考えられますが、実務上は、中国現地での同種事業、同種資産に対
する投資に期待される加重平均資本コスト(WACC)を割引率として採用することが求められると考えられてい
ます。したがって、専門家を利用して割引率を算出した結果、人民元の時間的価値や中国における同種事
業、同種資産の期待収益率を反映し、日本の親会社が想定しているより高い割引率が算出されるケースが
散見されます。割引率が想定より高い場合には、結果として計算された減損損失の金額も予想以上に大きく
なる事態が生じうる点に留意が必要です。
(2) 継続企業の前提に関する検討
近年のように中国における経営環境が悪化しているような場合、日本の親会社において、中国子会社の採算性が
悪化していることを理由として、中国子会社の清算、組織再編等を検討しているケースがあります。
これに関して、改訂新準則第 30 号「財務諸表の表示」(以下、“改訂 30 号準則”と表記)においては、「財務諸表を
作成する過程において、企業経営者は、全ての入手可能な情報を利用し、少なくとも報告期間の期末から 12 か月
間の企業の継続企業としての存続能力を評価しなければならない」とされています。このように経営者に対して継
続企業の前提についての評価を求める規定は従来からもありましたが、改訂 30 号準則では一層、強調されてい
ます。
したがって、法定決算監査において、業績が悪化している会社、撤退・組織再編を検討している会社に関しては、
法定監査の会計監査人(中国公認会計士)から、当該中国子会社の事業継続の意思、能力に関して、経営者によ
る説明を求められるケースが予想されます。特に、営業赤字が継続し多額の欠損を抱える会社は、次の 2 点につ
いて、会計監査人から要求されるケースがありますので、事前に、会計監査人と協議を進めることが望ましいと考
えます。
① 中長期経営計画と翌期における資金計画の提示とその内容の説明
② 親会社が期末日以降、少なくとも期末から12か月間、当該子会社の財政的支援を行うことを表明した財政支
援書(Letter of Financial Support)の提出
(3) 期末決算・監査日程の確認
中国企業の決算年度は暦年と法定されているため、年明けの1月から3月にかけて年度決算及び会計監査がピー
クを迎えます。その一方で、中国ではその期間に旧暦正月休暇(春節休暇)があるため、決算・監査日程に影響す
11
るケースがあります。2016年の春節は2月8日(月曜日)であり、大部分の中国の会社では2月7日(日曜日)から2
月14日(日曜日)までが8連休となることが予想されますので、この休暇を考慮した決算日程の策定が必要となりま
す。事前に中国子会社の経理責任者と決算・監査日程について情報交換を行い、親会社の方で子会社の決算の
進捗状況を確認することが望ましいと考えます。
以上、中国子会社の年度決算に際し、特に留意すべきと思われる点について言及しました。これらの事項は、年度決
算開始後に検討する場合には、期末後に決算数値が大きく変動したり、子会社の決算数値の確定が大幅に遅れる事
態を招く可能性もあるため、事前に中国子会社の経理担当者等と協議し、早めの対策を講じることが望ましいと考えま
す。企業
会計準則第41号―他の企業への関与の開示
【中国子会社における法定決算留意事項のポイント】
1.
旧準則を採用している会社は、旧準則が廃止される一方で、「企業会計制度」は引き続き有効とされてい
(以上、中国財政経済出版社より出版)
るため、事前に、対応を担当会計士と協議する必要がある。
2.
新準則の改訂の影響、例えば未払有給休暇の計上の要否等について事前に検討する。
3.
中国経済の減速等による中国子会社への影響を把握する。特に、次の2点について前倒しの対応を行う。
4.
・
固定資産の減損の検討(将来キャッシュフローの見積り、割引率の決定等)
・
継続企業の前提の疑義への対応(将来計画、財政支援書の準備等)
決算日程等について、子会社と具体的な打ち合わせを行う(春節休暇は2月7日~14日と予測される)。
12
中国投資入門 Q&A
投資総額と資金調達
Q1
投資総額とは何ですか?登録資本金とは何が違うのでしょうか。
中国投資入門 Q&A 第 2 回は、投資総額に関する質問です。投資総額という言葉は中国投資ではよく登場する単
語ですが、考え方が分かり難いところもあり、しばしば「登録資本金」(日本で言う、いわゆる資本金と同等)と混同
されることもあります。
投資総額とは、簡単に言うと外商投資企業の設立・運営に必要な資金の総額枠、すなわち企業の規模を表す概
念です。言い換えれば、投資総額=登録資本金+借入金ということになります。これは外商投資企業に特有の概
念であり、中国の内資企業には投資総額という概念は存在しません。なぜこのような考え方が外商投資企業に適
用されたのでしょうか。中国の改革開放政策が開始された当初、外商投資企業は一般的な継続企業を前提とし
た企業体が想定されておらず、有期の個別具体的なプロジェクトとして捉えられていました。そして改革解放直後
で外貨を欲していた中国政府にとって、外商投資企業がもたらす外貨は貴重であったことから、各企業の過小資
本を規制する一方で中国国内での資金調達を制限し外貨投資を最大化するために、投資総額と登録資本金の
関係を明確に定義し借入による資金調達枠を定めたことが由来になっています。
さて、中国投資においては、一般的に一旦投入した資本金を減資で取り戻すことは極めて難しく、また清算するこ
とも時間がかかることから、登録資本金は可能な限り小さくしたいと考える企業が多いと思います。ところが、この
投資総額に関連するいくつかの規定が、「資本金は小さく、会社は大きく」という希望を阻む要因となっています。
投資総額は具体的には、①外商投資企業の登録資本金の決定、②外債限度枠の決定、③輸入設備の免税枠の
決定、④審査・認可機関の決定に用いられますが、ここでは会社の規模と直接関係する登録資本金との関係お
よび外債限度額との関連を概観します。
1.
投資総額と登録資本金の関係
外商投資企業は、投資総額と登録資本金を自由に決められるわけではなく、その規模に応じた投資総額とそ
れに応じて必要とされる最低限度の登録資本金の額が規定されています。
投資総額
登録資本金の最低限度
300 万米ドル以下
投資総額の 7/10 以上
300 万米ドル超 1,000 万米ドル以下
投資総額の 1/2 以上且つ 210 万米ドル以上
1,000 万米ドル超 3,000 万米ドル以下
投資総額の 2/5 以上且つ 500 万米ドル以上
3,000 万米ドル超
投資総額の 1/3 以上且つ 1,200 万米ドル以上
上記の通り、投資総額に応じて登録資本金として投入しなければならない最低資本金が定められてしまうため、
多額の設備投資が必要な企業については、相応の資本金規模になることを理解しておく必要があります。
13
2.
外債限度枠との関係
外債とは、海外からの借入金のことであり、一般的には中国子会社が日本の親会社から借入れる「親子ロー
ン」等が該当しますが、親子ローンを含めた外債には限度額が存在し、これは投資総額を基に計算されます。
具体的には、外債は投資総額と登録資本金の差額(「投注差」と呼ばれています)に限定されてしまいます。例
えば投資総額 500 万米ドルの外商投資企業で登録資本金を最低の 250 万米ドルとした場合、投注差は「投資
総額 500 万米ドル-登録資本金 250 万米ドル=投注差 250 万米ドル」となり、当該外商投資企業の親子ロー
ン限度額は 250 万米ドルとなります。なお、外債は契約締結後 15 日以内に外貨管理局で外貨債務登記を行
う必要がありますが、返済が 1 年以内の短期ローンは返済完了すれば外債枠が復活するのに対し、長期ロー
ンは完済したからといって外債限度額は元には戻りませんので注意が必要です。
また、過去には海外から直接借入れるだけでなく、海外の保証により中国国内で人民元を借り当該保証が履
行された場合には、外債登記が要求され且つ外債登記金額が当該債務残高を含めて限度額以内になるよう
に要求されていました。すなわち、たとえ中国国内の人民元借入であっても、海外の会社が保証を行っている
場合には、当該保証額を含めて外債枠を意識する必要がありました。しかし、2014 年 6 月 1 日に施行された
「クロスボーダー保証外貨管理規定」(匯発[2014]29 号)で上記が緩和され、保証履行時においても当該債務
は外債限度額管理の対象外となりました。詳細は「トーマツ チャイナ ニュース Vol.139」をご参照ください。
Q2
それでは、外債枠がいっぱいの場合、資金調達する方法はあるのでしょうか?
前述の通り、海外からの借入による資金調達は投注差の金額に限定され、それを超える海外からの借入は出来ないこ
ととなります。投資総額の相当部分は登録資本金が占めるため、多額の設備投資や運転資金を必要とする業種や、資
金が逼迫する場面においては、外債枠が資金調達の大きな足枷となっています。また、中国では民間企業間の金銭貸
借が禁じられていることから(「貸付通則」中国人民銀行令 〔1996〕第 12 号 第 73 条)、親会社保証の人民元借入以外
の方法としては、①地場の銀行からの人民元借入、または②委託貸付による関連会社からの資金調達が考えられま
す。
地場銀行からの借入については、預金・不動産等の担保や外国金融機関保証を求められる場合が多く、また各銀行の
貸付枠の関係から、外商投資企業が地場銀行から多額の資金を借入れるのは一般的にハードルが高いと考えられま
す。
一方で、委託貸付とは銀行が仲介者となって、貸し手企業(委託者)の資金を借り手企業に融資する方法であり、以前
から用いられている手法です。委託貸付では委託者、借り手、銀行の三者契約となり、銀行に委託手数料を支払って委
託貸付により資金調達を行います。但し、委託者の貸付資金原資は、原則として委託者の営業活動によって得た収入
に限定される点に留意が必要です。
また、最近の変化として、金融機関以外の民間企業間の金銭貸借が禁止されている点に関する規制緩和があります。
人民法院から、2015 年 8 月 6 日に「民間貸借案件の適用法律にかかる若干の問題に関する最高人民法院の規定」(以
14
下、「本司法解釈」と表記)が公布され、9 月 1 日より施行となりました。本司法解釈では、民間企業間の金銭貸借につ
いて明確に規定し、一定の条件の下で民間企業間の金銭貸借を認めるものとなっています。すなわち、企業が生産・経
営の必要性から締結した民間貸借契約については、契約法及び本司法解釈に規定する無効事由がない場合には、当
該契約は有効であるとしています(本司法解釈 第 11 条)。本司法解釈第 14 条及び契約法第 52 条には無効となる事
由や要件が記載されており、国益・公共の利益に反する場合、違法な場合のほか、金融機関からの借入金を高利で転
貸したり、他の企業や従業員から集めた資金を高利で転貸すること等が列挙されています。したがって、民間貸借規定
に基づいた金銭貸借を行う場合には、貸し手は資金を転貸するのではなく、自己資金により貸付を行う必要があります。
また利率についても制限が設けてあり、年利 24%未満の場合には貸主は約定利率の請求権を持ちますが、24%超 36%
未満の場合には 24%超 36%未満の部分の利息については自然債務(債務者が任意に弁済できるが、債権者は裁判所
に訴えることが出来ない債務)となり、36%を超える場合には当該超過部分は無効と規定されています(第 26 条、31
条)。
上記のとおり、本司法解釈により会社間の直接的な金銭貸借の可能性も開けましたが、一方で従来の貸借通則の規
定も存在しており、両規定が並存する中で実務的にどのような形で民間貸借が実現するのか、現時点では不透明であ
ると言えます。関連会社間の金銭貸借を検討する企業においては、今後の政府動向を注視しつつ、現地法令に詳しい
法律専門家のアドバイスを受けるべきと考えます。
更に、投資総額を超える人民元借入については明確に禁止する規定や罰則が存在しないため、実務上は資金調達の
一つの手段となっていますが、今後の法改正や政府の指導などによりどのような問題点が生じるか分かりませんので、
可能であれば投資総額は余裕のある範囲内で設定することが望ましいと考えられます。
以上
15
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会社法改正、外貨管理関連の規制緩和、自由貿易試験区の創設・拡大、クロスボーダー人民元取引、多国籍企業等
グループ企業間のクロスボーダー・キャッシュ・マネジメントの最新動向、「出入国管理法」「外国人出入国管理条例」施
行に伴うビザ関連の変更 等
第2編 会計
新中国企業会計準則の改訂内容を詳説、新旧中国企業会計準則の相違点、IFRS や日本基準との比較を充実、中国
子会社を連結する際の留意点、よく見られる会計処理の誤りを詳説
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第3編 税務
増値税改革、移転価格税制、組織再編税制のアップデート、賃金給与制度に含まれる福利性手当の損金算入条件の
明確化、一般租税回避防止調査に関する新規定を詳説、国外関連者への費用支払に係る移転価格管理の強化 等
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執筆:有限責任監査法人トーマツ 中村 剛、上村 哲也 デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社 三好 高志
監修:デロイト トーマツ合同会社 三浦 智志、鄭 林根、小林 信虹、西村 美香 デロイト トーマツ税理士法人 大久保 恵美子
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Xiamen, 361001 , PRC
Tel:+86-592-2107-298 / Fax:+ 86-592-2107-259
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デロイト トーマツ グループは日本におけるデロイト トウシュ トーマツ リミテッド(英国の法令に基づく保証有限責任会社)のメンバーファームおよび
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ョナルグループのひとつであり、各法人がそれぞれの適用法令に従い、監査、税務、法務、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリー等を提
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Deloitte(デロイト)は、監査、コンサルティング、ファイナンシャルアドバイザリーサービス、リスクマネジメント、税務およびこれらに関連するサービス
を、さまざまな業種にわたる上場・非上場のクライアントに提供しています。全世界 150 を超える国・地域のメンバーファームのネットワークを通じ、デ
ロイトは、高度に複合化されたビジネスに取り組むクライアントに向けて、深い洞察に基づき、世界最高水準の陣容をもって高品質なサービスを提供
しています。デロイトの約 220,000 名を超える人材は、“making an impact that matters”を自らの使命としています。
Deloitte(デロイト)とは、英国の法令に基づく保証有限責任会社であるデロイト トウシュ トーマツ リミテッド(“DTTL”)ならびにそのネットワーク組織
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