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「転入生」の学校生活サポートガイド
小学校向け 「転入生」の学校生活サポートガイド ~子どもが安心して学校生活を送るためにできること~ 子どもの学校の転出入は、生活形態と学校環境の両方が大きく変わります。新しい友達や 先生、学習進度、言葉や習慣の違いなど様々な事柄に及ぶため、誰でもはじめは不安があって 当然です。また、子どもだけではなく、どの家庭でも新しい土地で生活を整えるまでには時間 がかかります。保護者の生活が整わないことで、保護者自身が不安な状態で生活をしていると、 子どもの学校生活にも大きく影響します。そのため、子どもが新しい学校に慣れ、よりよい 人間関係を築いていくためには、子どもたちはもちろんのこと、保護者と学校の教職員が安心 して話せる関係を築いていくことが重要です。 その「きっかけづくり」として、このサポートガイドをご活用ください。 転入事情は、 一人ひとり異なります 保護者の仕事の都合に伴う子どもの転出入はもちろんですが、そのほかにも、転出入の理 由は一人ひとり異なります。東日本大震災後には、多くの子どもたちが転出入を余儀なくさ れました。そして今なお、さまざまな事情により、転居を繰り返さざるをえないご家族がい らっしゃいます。また、病院への長期入院の場合なども、院内学級に在籍するときは、転出 入ということになります。外国からの転入もあります。さらに、児童福祉施設等の入退所に 伴う転入ということもあります。 一人ひとりの転出入の事情に応じて、必要な配慮を心掛けたいものです。 子どもの転出入を経験した保護者は、 教職員との対話の時間を求めています 子どもを安心して学校に送りだすために必要だと思うこと 必ず必要だ 保護者が転入時に教職員から丁寧な説明を受け、心配等話す時間 必要だ 子どもが学校に慣れたか、保護者と担任が話す時間 必要ない 子どもが学校に慣れたか、保護者とSSW又はSCが話す時間 全く必要ない 保護者に対する就学援助等の説明 保護者が教職員に校舎を案内されること 0% 20% 40% 60% 80% 100% 金澤・山中(2014)「児童・生徒の転出入時に保護者が抱えている思い」に関する調査研究 SSW=スクールソーシャルワーカー 社会福祉の専門的な知識、技術を活用し、子どもを取り巻く環境に働きかけ、必要に応じて、家庭、学校、地域の関係機関をつなぎます SC=スクールカウンセラー 子どもや保護者の悩みや不安を受け止めて相談に当たり、必要な支援をする心理の専門家です ※希望は様々ですので、次頁の「コミュニケーションシート」を活用し、子どもと保護者と教職員とで話し合う時間を作ってみてください。 子どもの学校 「転入時」 コミュニケーションシート 「コミュニケーションシート」は、子どもが安心して学校生活を送るために、子どもと保護者と 教職員とがお互いのことをよく知るためのものです。学校での活用例は、 ①転入の手続き時や初登校日の時に、保護者とお子様とで相談しながら記入してもらいます。 ②記入内容をもとに、子どもと保護者と先生とで、具体的なことについて、顔を見ながらゆっ たりとした空間でお話ししてみてください。 ① ② ご記入日: 年 月 日( ) ご記入者とお子様の続柄 お子様の名前: 学年: ( ) お子様の意見を尋ねてご記入ください。 ① 得意なことはなんですか。 ② 好きな教科はなんですか。 ③ 苦手な教科はなんですか。 ④ 先生に、聞いてみたいことはありますか。 はい ・ いいえ ・ わからない ⑤ 新しい学校で、楽しみにしていることはありますか。 はい ・ いいえ ・ わからない ⑥ 新しい学校で、心配なことはありますか。 はい ・ いいえ ・ わからない 保護者様がご回答ください。 ① 制服や体操服、文房具などの学用品は揃っていますか。 はい ・ いいえ ② お子様の持病や障害などについて、お話しされたいことはありますか。 はい ・ いいえ ③ 給食について、お話しされたいことはありますか。 はい ・ いいえ ④ 就学援助制度をご存知ですか。 はい ・ いいえ ⑤ 学童保育(放課後児童クラブ)について、お尋ねになりたいことはありますか。 はい ・ いいえ ⑥ 家族が受けられる福祉制度やサービスについて、知りたいことはありますか。 はい ・ いいえ ⑦ その他、ご質問になりたいことやお話しされたいことはありますか。 はい ・ いいえ ⑧ 本日、校舎内の案内を希望されますか。 はい ・ いいえ ・ 後日希望 保護者のみなさまへ 保護者の方から学校に何かをお願いするのは、とても勇気のいることかもしれません。 ただし、必要なことを伝えることはとても重要です。このコミュニケーションシートを参考に、 転入先の学校で、尋ねたいことを率直にお話ししてみてください。 学校の教職員の方へ ご家族のご要望や、学校によってできることは異なるでしょうが、大人同士が素朴に尋ね あえる関係を築くことが、子どもたちの安心した学校生活につながることと思います。 校舎内を知ることの意味 人は、見通しが持てないときに不安が高まります。どのような場所で学校生活を送るのか、 校舎を回るということも、子どもの安心感を高めることにつながります。前の学校との違い なども、楽しみながら確認できるといいでしょう。 必要な学用品をそろえるということ 子どもが学校生活をスムーズに始められるように物理的準備は重要です。何らかの事情で準 備が間に合わないこともあります。東日本大震災のときには、「文房具セットを用意している」 「卒業生から制服を集めている」という学校や自治体がありました。ただし、その家庭や子ど もが必要としているものは、尋ねてみないとわかりません。学校で用意がある場合は、それ を伝えながらも子どもと保護者の希望を確認することが大切です。 給食について―楽しい食事の時間を! MILK 「食べる」営みはとても重要なことです。食事の時間が苦痛だと、とても悲しい気持ちになり ます。アレルギーへの配慮はもちろんのこと、ほかにも国や文化、宗教上の理由から食べら れる食材に制限があることや、障害による口腔内の感覚過敏等による偏食、東北や関東からの 転入生や保護者の中には食材に対する不安(放射能汚染)を感じている場合もあります。ク ラスみんなが楽しい食事の時間を持てるように、「食べる」ことについて考えるきっかけにな るかもしれません。 専門家や学校以外の相談窓口 SSW や SC 等に相談できる学校体制であれば、その情報を一覧表などでお知らせください。 また、自治体によって、学校以外の相談窓口の名称はさまざまです。「どこで、何の相談にの ってくれるのかわからない」という声をよく聞きます。学校でも、市民が利用可能な地域資 源についての情報を可能な範囲で整理しておくとよいでしょう。 学校にかかわる相談職種(例) 受付方法(窓口) 職種名 相談可能日 スクールソーシャルワーカー(SSW) (SC) スクールカウンセラー その他( ) 学校以外の相談窓口(例)【空欄には、地域事情に応じた情報を書き加えてください】 相談窓口 家庭児童相談室 (福祉事務所) 等 障害者相談支援センター 児童相談所 その他 (その地域の名称) 相談内容 TEL番号等 子どもの力を信じて、 子どもが力を発揮できる環境を! 私たち大人は、子どもに何か心配なことが起きていそうなとき、心配であるがゆえに、 先回りをして解決の方法を考えがちです。けれども、大人に求められることは、「子どもに は子どもの気持ちがある」、「一人ひとりの子どもたちは大きな力を持っている」というこ とを信じて、子どもたち自身の力が発揮できるような応援体制を築くことです。以下は、そ のために大人が共有しておきたい視点です。 子どもの希望は、子ども自身に尋ねる たとえば、子どもが「クラスメイトにどのように紹介したいか・されたいか」ということ も重要な事柄です。保護者が説明してほしいことと、子どもの気持ちは異なることもありま す。ですから、とにかく「大人が勝手に決めない」で、子どもの気持ちは子どもに尋ねる スタンスを大切にしたいものです。 困ったときには相談するという力を育む 大人は子どもたちに、「何かあったらいつでも相談してね」と声をかけます。でも考えて みれば、何かあってからはじめて相談をするのは、大人でさえ難しいことです。ですから、 まずは私たち大人が、「支えあうということは、困った時に相談したり、されたりする関係」 なのだということを子どもたちに伝えていくことが大切です。その第一歩は、大人同士も、 ちょっとしたことでも声をかけあえる関係を築くことかもしれません。 心に留めておきたいこと 「いつもとかわらない」=十分に頑張っている証拠 新しい場所は誰でも緊張するものです。そんななかで、転校前の様子とかわらず過ごして いるように見えたときは、それだけで「十分頑張っているんだな」という証拠です。新し い学校での様子を聴いたあと、「よくがんばってるね」と頑張りを認めてあげてください。 頑張り過ぎることもよくある 子どもは新しい学校に馴染もうと、無意識のうちに、普段より頑張って新しい環境に合わせ ようとすることがあります。頑張り過ぎてしまうと、途中で疲れ、場合によっては登校す る意欲を失ってしまうこともあります。いつもよりテンションが高いなと感じたときには、 その行動は否定せず、焦らず、少しずつ友達づくりをするためにどのような方法があるか、 一緒に考える時間を持ってみてください。 『金澤・山中(2014)「児童・生徒の転出入時に保護者が抱えている思い」に関する調査研究』及び、『「転入生」の学校生活サポ ートガイド~子どもが安心して学校生活を送るためにできること~』は、平成 25 年度薫英研究費の助成を受けて作成しました。 ( 研究代表者:金澤ますみ,共同研究者:山中徹二【共に、大阪人間科学大学人間科学部社会福祉学科】) 協力:NPO 法人み・らいず,デザイン:aco,2014 年 3 月発行。 ※本リーフレットは、転校経験のある方、転勤の多い会社職員、教員、スクールソーシャルワーカー、スクールカウンセラー、 スクールロイヤー、東日本大震災の避難者や支援者の方々のご助言をいただき完成いたしました。ここに厚くお礼申し上げます。