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巻頭言 - 分子ロボティクス

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巻頭言 - 分子ロボティクス
News Letter No. 4
2013 年 12 月 26 日発行
巻頭言
バイオインフォマティクスの黎明期もそうであったが、新
しいサイエンスの領域が立ち上がるときには独特の昂揚感が
ある。何がなんだかわからない。先行研究がほとんどない。
真似しようにも真似する例がない。そういう未知の領域に
直面した時、先端的研究者はそれまでに培った武器を片手
に、直観を頼りに新しい領域になんとか切り込もうとする。
ゴールドラッシュではないが、研究テーマの鉱脈を掘り当て
てゆく様は宝探しと似てなくもない。現時点では、「分子
ロボティクス」は、一部の「新し物好き」な研究者による「マ
ニアックな研究テーマ」でしかないが、近い将来に大勢の研
アメーバ班代表 小長谷 明彦
究者や技術者が集まり、誰もが知るような研究領域に育つと
東京工業大学大学院
確信している。この確信のさしたる根拠は何もない。しいて
総合理工学研究科知能システム科学専攻
言えば、これまでの研究経歴の中で、筋の良い研究、悪い研
究を見極めてきた経験からの主観的判断である。
逆説的に聞こえるかもしれないが、始める前から結果が
「分子ロボティクス」の活動に初めて参加したのは、第一回
予見できるような研究はもはや研究とは呼べない。できるか
分子ロボティクス合宿研究会(浜松市、平成 22 年 3 月 8 日
どうかわからないから研究する、というのが正しい研究のス
~ 9 日)の時である。これまで、
20年以上、
バイオインフォ
タンスである。研究調書には、あたかも全てを見通したよう
マティクスの研究に取り組み、DNA コンピューティングの
に研究計画が掲げられているが、計画通りに物事が進むよう
プロジェクトとも多少関わっていた。そのため、DNA や生
では最先端研究ではない。五里霧中の中で、研究者としての
化学に関する知識はそれなりに持ち合わせていたが、分子で
直観を信じて突き進み、様々な試行錯誤を繰り返し、画期的
ロボットを創るという発想には正直衝撃を覚えた。以来、研
なブレークスルーを生み出す。新学術領域研究が求めている
究の方向性を分子ロボティクスにシフトし、幸いにも、新学
のは、まさに、このようなブレークスルーである。目先の成
術領域「分子ロボティクス」の一端を担わせて頂いている。
果に囚われずに、果敢にブレークスルーにチャレンジして欲
ここでは研究管理の立場から皆様に一言述べさせて頂く。
しい。
Molecular Robotics Research Group. News Letter No.4
1
分子ロボティクス研究会夏合宿 2013 in 北陸 開催日時 : 2013年 8月24日(土)
・25日(日)
開催場所 : 石川県 片山津温泉ホテル森本
各計画班員17名、公募研究者13名を含め総勢35名に参加いただいての合同夏合宿(北陸)が開催されました。萩谷
領域代表の挨拶と今回の夏合宿の趣旨についての説明があったのち、各計画班員より研究進捗状況・成果に関する報告とそ
れに対する質疑応答がありました。今回は公募研究代表者が計画研究班員の先生方の発表を直接聴くことが出来る機会とい
うこともあり、2日間にわたって熱心な議論が交わされました。夕食後の懇親会も朝まで領域代表をはじめ多くの研究者が
語り合うなど合宿形式ならではの盛り上がりも見受けられ、公募班員と計画研究班員の間での共同研究も今後期待できるな
ど、本領域がすでにチームとして融合かつ機能している様子が伺えました。
プログラム
■ 8月24日(土曜日)
14:00
はじめに
14:00-14:20 萩谷 昌己
14:20-14:40 村田 智
14:40-15:00 菅原 研
15:00-15:20 鈴木 泰博
15:40-16:00 藤本 健造
16:00-16:20 原 雄介
16:20-16:40
有村 隆志
17:00-17:20 小林 聡
17:20-17:40 小宮 健
17:40-18:00 山下 雅史
18:30 - 2
食事・懇親会
Molecular Robotics Research Group. News Letter No.4
■8月25日(日曜日)
9:00- 9:20 小長谷 明彦
9:20- 9:40 平塚 祐一
9:40-10:00 松浦 和則
10:00-10:20 瀧口 金吾
10:40-11:00 齊藤 博英
11:00-11:20 瀧ノ上 正浩
11:20-11:40 遠藤 政幸
11:40
おわりに
Molecular Robotics Research Group. News Letter No.4
3
BIOMOD(国際生体分子デザインコンペティション)国内大会 開催日時 : 2013年 9月 8日(日)
開催場所 : 東京大学山上会館
北は北海道から南は福岡まで、全国 7 つの学生チームが東京大学山上会館に集って、9 月 8 日に BIOMOD の国内大会が
開催されました。今年度は総勢 85 名が集まっての発表となり、当日開催決定された東京オリンピックの余韻覚めやらぬ
まま始まりました。領域代表の萩谷昌己の挨拶に引続いて、
事務担当の村田 智からルール説明がありました。今年度のルールは、
前年度のボストン本大会の反省も踏まえて、英語での発表に加え質疑も英語となりましたが、中国やペルー、タイ等、様々な
国出身の方々からの質問に、各チームは一生懸命答える努力をしていました。結果の方は、前年度世界チャンピオンの東北大
チームが、wiki の完成度の高さに加え、寸劇も交えた発表で優勝となりました。初参加の北海道大チーム、福岡工大チーム
もオリジナルのアイデアを発表し、会場から活発な質問が出ていました。国内大会後に各チームより出されました奮戦記に
よると、3 チームが目標・世界一を公表しており、( 本ニュースレターが発刊される頃には、結果がわかっているかとは思
いますが )、本年度も本大会の日本勢の活躍が期待されます。
参加チーム
大学 チーム名
Kansai University Team Kansai
Tohoku University Team Sendai
The University of Tokyo Kashiwa Todai nanORFEVRE
Hokkaido University The University of Tokyo Komaba Hokkaido-U MARIMOD
Team UT-Komaba
Tokyo Institute of Technology Team Platanus Symphony
Fukuoka Institute of Technology Team Fukuoka
プログラム
14:00 初めに ( 萩谷昌己 )
14:05 ルール説明 ( 村田 智 )
14:10 チーム① : Kansai University – Team Kansai
14:30 チーム② : Tohoku University – Team Sendai
14:50 チーム③ : The University of Tokyo Kashiwa – Todai nanORFEVRE
15:10 休憩
15:30 チーム④ : Hokkaido University – Hokkaido-U MARIMOD
15:50 チーム⑤ : The University of Tokyo Komaba – Team UT-Komaba
16:10 チーム⑥ : Tokyo Institute of Technology – Team Platanus Symphony
16:30 チーム⑦ : Fukuoka Institute of Technology – Team Fukuoka
16:50 休憩 / 集計
17:20 結果発表・記念撮影
18:00 解散
18:30 学生懇親会 ( ノンアルコール )・メンター親睦会
4
Molecular Robotics Research Group. News Letter No.4
日本大会 成績
順位 大学 チーム名
1 位 Tohoku University Team Sendai
2 位 The University of Tokyo Kashiwa
Todai nanORFEVRE
3 位 Tokyo Institute of Technology Team Platanus Symphony
4 位 Hokkaido University
Molecular Robotics Research Group. News Letter No.4
Hokkaido-U MARIMOD
5
第 51 回日本生物物理学会年会共催
新学術「分子ロボティクス」シンポジウム
開催日時 : 2013年10月28日(月)ー30日(水)
開催場所 : 京都国際会議場
2013 年 10 月 28 日 -30 日に京都国際会議場で開催された第 51 回日本生物物理学会にて、
本新学術領域分子ロボティクスは、
シンポジウム「生物物理学による生体分子ロボットの設計原理の探求」を共催した(オーガナイザー:東工大・瀧ノ上正浩、
東工大・小宮健、京大・齊藤博英)
。本新学術領域のメンバーである、東北大・野村慎一郎、九州大・柳澤実穂、東大・庄田
耕一郎、名古屋大・瀧口金吾、およびオーガナイザーによる 7 つの講演で構成され、生物物理学分野における分子ロボティクス
研究の最前線に関する報告がなされた。会場は立ち見が出るほどの盛況で、会場からの活発な質議が行われた。
Program
1SBA-01 動的人工細胞・分子ロボットの作製のための微小非平衡場の制御
Control of micro-sized nonequilibrium system for the construction of dynamic artificial cells and molecular robots based on
microfluidics
○瀧ノ上 正浩(東京工業大学大学院総合理工学研究科)
Masahiro Takinoue (Interdisci. Grad. Sch. Sci. & Eng., Tokyo Tech.)
1SBA-02 分子ロボティクス指向による人工細胞構築
Molecular robotics approach for constructing an artificial cell model
○野村 M. 慎一郎 1, 藤原 慶 1, 2(1 東北大学工学研究科 , 2 日本学術振興会)
Shin-ichiro Nomura M.1, Kei Fujiwara1, 2 (1 Division of Mechanical Engineering, TOHOKU University, 2JSPS Research Fellows)
1SBA-03 細胞サイズ液滴内での高分子混合系の相分離とゾル - ゲル転移
Aqueous phase separation and sol-gel transition of biopolymer blend in cell-sized droplets
○柳澤 実穂(九州大学大学院理学部)
Miho Yanagisawa (Grad. Sch. Sci., Kyushu Univ.)
1SBA-04 外部環境情報をリポソーム基盤分子ロボットの内部に伝達する分子センサーの開発
A development of molecular sensor that delivers environmental information to inside of liposome-based molecular robots
○庄田 耕一郎 , 陶山 明(東京大学総合文化研究科)
Koh-ichiroh Shohda, Akira Suyama (Graduate School of Arts and Sciences, The University of Tokyo)
1SBA-05 アクチン線維とミオシン、細胞サイズの膜小胞を利用した分子アメーバ構築の試み
Construction of motile artificial cell model using actomyosin and cell-sized giant liposome
○瀧口 金吾 , 林 真人(名古屋大学大学院理学研究科)
Kingo Takiguchi, Masahito Hayashi (Grad. Sch. Sci., Nagoya Univ.)
1SBA-06 人工 RNA-Protein 複合体による細胞内外で機能する分子ロボットの創出にむけて
Synthetic RNA-Protein complexes to construct molecular robot in vitro and in cells
○齊藤 博英
1,2
(1 京都大学 iPS 細胞研究所 ,
1,2
Hirohide Saito
1
2
京都大学 白眉センター)
2
( CiRA, The Hakubi Center for Advanced Research)
1SBA-07 分子ロボットを制御する試験管内知能の実装
Implementation of in vitro intelligence for controlling molecular robots
○小宮 健(東京工業大学大学院総合理工学研究科)
Ken Komiya (Interdisci. Grad. Sch. Sci. & Engi., Tokyo Tech.)
6
Molecular Robotics Research Group. News Letter No.4
CBI 学会 2013 年大会共催
新学術「分子ロボティクス」公開シンポジウム
開催日時 : 2013年10月29日(火)ー31日(木)
開催場所 : タワーホール船堀(東京)
CBI 学会大会との共催により、公開シンポジウムをタワーホール船堀で開催した。キーノートスピーカーとして、Prof.
Peng Yin (Harvard, USA)、Prof. Laurent Blanchoin (CNRS, France) をお招きし、Gel-based Molecular Robots, Molecular
Robotics Theory and Practice, Self assembling and DNA logic gates の 3 つのセッションを開催した。
Program
Keynote (Oct. 30 th 10:00 – 11:30)
 Peng Yin (Harvard, USA):
“ Programming Nucleic Acids Self-Assembly ”
 Laurent Blanchoin (CNRS, France):
“ Directed actin self-assembly and contractility ”
Gel-based Molecular Robotics (Oct. 29 th 14:00 – 15:30)
 Hiroshi Morita, Yusuke Hara: Modeling and Simulation of self oscillating gel – toward a molecular gel robot
 Hitoyuki Mayama, Yusuke Hara: Spatio-temporal change of BZ gel
 Ibuki Kawamata, Satoshi Murata, Masami Hagiya: Toward Spatial and Temporal Gel-Sol Transition of Hydrogel Driven by DNA
Hybridization Reaction
 Jin Gong, Takahiro Hazama, Masanori Arai, Shota Murata, Yosuke Watanabe, Masato Makino, M. Hasnat Kavir, Hidemitsu Furukawa:
Smart Lenses Created with Transparent Shape Memory Gels
Molecular Control Theory and Practice (Oct. 29 th 16:00 – 17:30)
 Tamiki Umeda: Numerical Studies of Protein-induced Shape Changes of Liposomes
 Fukuhito Ooshita, Shusuke Takatsu, Hirotsugu Kakugawa, Toshimitsu Masuzawa: Simple Local-information-based Self-optimizing
Algorithms in Grid Networks
 Takashi Nakakuki, Jun-ichi Imura: A study on controller structure of biochemical reaction networks
 Naohiko Shimada, Wei Song, Atsushi Maruyama: Acceleration of DNA strand exchange reaction by cationic comb-type copolymers
DNA and Lipid-based Molecular Robotics (Oct. 31st 10:00 – 11:30)  Masato Ikeda: Heat-induced Morphological Transformation of Supramolecular Nanostructures
 Yuno Natsume, Taro Toyota: Construction of Giant Vesicle Containing Microspheres at High Volume Fraction and Its Transformation
 Takashi Nukada, Koh-ichiroh Shohda, Akira Suyama: Dynamic biomolecular computing system for artificial genetic network
 Yuexing Han, Hara Akito, Akinori Kuzuya, Ryosuke Watanabe, Yuichi Ohya, Akihiko Konagaya: Towards an Automatic Recognition
of DNA Nanostructures on AFM Images
Molecular Robotics Research Group. News Letter No.4
7
研究活動紹介
東京工業大学
として、物理学・化学・生物学など幅広い分野で利用されて
いる。我々は、直径 5 ~ 20 μm の範囲において、リポソー
大学院総合理工学研究科
ムを効率よく作製することに成功した。
森田 雅宗 ・ 瀧ノ上 正浩
には、実験サンプル量が極めて微量 ( 数 μL) で行えるため、
我々の作製法は、マイクロ加工技術を必要とせず、さら
貴重な実験試料を無駄にすることなく使える高い汎用性が期
待できる。この技術を、新学術領域「分子ロボティクス」に
参画している方々に利用していただき、研究の発展につなが
ることを期待している。なお、本研究は、尾上弘晃博士、永
井健博士(東京大学)、柳澤実穂博士(九州大学)
、齊藤博英
博士(京都大学)との共同研究である。
( 森田・早川・瀧ノ上 )
動的な細胞サイズ分子ロボットのための
ボディを創る!
生 命 シ ス テ ム の よ う な 動 的 か つ 自 律 的 な シ ス テ ム は、
ナノスケール ( 分子サイズ ) からマイクロ・ミリスケール ( 細
胞・組織サイズ ) まで階層的に相互作用することで、動的機
能や自律性を創発している。生物の最小単位は細胞で、細胞
膜と呼ばれる膜でできた超微小容器である。我々は、細胞と
同じスケールの容器を人工的に創り [1]、中に分子反応系を
入れて自律的なシステムを生み出すということを目指してい
る。しかし、これを人工的に設計・構築・制御する方法論は
未だ開発途上で、開発が望まれている。
図 1. 使用したマイクロ流体デバイス (a) と作製した複雑な形状を
もつ異方性ゲル粒子と使用したガラス管の断面図 (b)
我々は、高重力下において液体が封入された微細管から
の微小液滴生成に着目し、遠心型マイクロ流体デバイスを開
発した [2]。卓上遠心機と組み合わせ、簡便にマイクロサイ
ズの構造体を作製する方法を用いて、複雑構造のゲルビーズ
や細胞サイズリポソームなどの作製を行っている。
本稿では、
その成果について報告する。
複雑な形状をもつ異方性マイクロ粒子は、その形状に起
因する様々な特性を示すため、あらゆる分野への応用が期待
されている。様々な形状のガラス管を用いて球形ゲル粒子を
作製し、その一部分を除去することで複雑形状をもつ異方性
ゲル粒子を得ることに成功した [3]。
また、この技術を利用して、均一サイズのリポソームの
作製を行った。近年、細胞サイズ ( 数十μm) の膜小胞 ( リ
ポソーム・油中水滴 ) は、細胞機能を解析するためのツール [4]
8
図 2. 細胞サイズリポソームの位相差像と蛍光像 (a) と細胞サイズ
リポソームの単分散性 (b)
[1] M. Takinoue, S. Takeuchi: Anal. Bioanal. Chem., 400, 1705, 2011.
[2] K. Maeda: et al. Adv. Materials, 24, 1340, 2012.
[3] M. Hayakawa: et al., Proc. microTAS2013, 630, 2013.
[4] M. Morita: et al. Soft Matter, 8, 2816, 2012.
Molecular Robotics Research Group. News Letter No.4
研究活動紹介
京都大学
物質 ‐ 細胞統合システム拠点
遠藤 政幸
AFM で走査している間に旗状マーカーが上下に動く様子が
観察され、旗構造のフレーム空間内での位置やその高さを測
定することで、B-Z 転移によるらせんの回転に伴って旗構造
が回転することが分かった。
このように、DNA 構造体によって作られたナノ空間に可
動な DNA 鎖を導入することで、その動的な挙動を直接観察
することができる。こうした DNA ナノ構造体やナノ空間は
DNA 構造変化の1分子イメージング
多種多様の1分子観察や1分子操作を行う上で利用価値の高
い実験システムである。
DNA の構造変化は生体内の遺伝子発現の制御など重要な
役割を果たしている。これらの構造変化を直接捉えることが
できるならば、生命現象を理解するうえで多くの情報を得る
ことが可能である。我々のグループでは、DNA オリガミ法
で作成した DNA ナノ構造体に酵素や DNA などの生体分子
を相互作用させることで、反応のコントロールとその振る舞
いを高速原子間力顕微鏡 (AFM) で直接観察する方法を確立
した。DNA によって直接1分子を観察する空間を構築する
ことで、観察上の利便性に加え、分子に対してさまざまな
制御や操作が可能となる。ここでは、DNA ナノ構造体を利
用して、代表的な DNA の構造変化である、B-Z 転移による
DNA2 重らせんの回転の1分子観察を報告する。
B-Z 構造転移のナノ構造内での 1 分子観察 [1]
DNA 構造のバリエーションに左巻きらせん構造である Z
型の DNA 構造が存在する。CG 繰り返し配列の 2 本鎖 DNA
は塩濃度によって右巻きらせんの B 型 DNA から左巻きの
Z 型の DNA 構造をとる。この B-Z 遷移を可視化するため、
(5-methyl-CG)6 回繰り返し配列を導入し、可視化のマー
カーとなる 3 本の 2 本鎖 DNA が並んだ「旗」となる構造を
結合し、DNA フレーム構造内に導入した ( 図 1A)
。これら
の旗状マーカーを持つ 2 本鎖は上側が B-Z 転移を起こせる
CG 配列を含むもの、下側がコントロールとなる転移しない
ランダムな配列を持つもので、それらの両側の回転を可能に
するため、垂直方向に吊り上げた新たな DNA フレームを用
いた。溶液中の Mg イオンの濃度を上昇させていくと、それ
図 1.B-Z 転移の DNA フレーム内での 1 分子観察。(A)B-Z 転移する
配列 (5meCG)6 と旗状構造(マーカー ) を導入した DNA 鎖を DNA
フレームに導入する。下の DNA 鎖は特異的な配列のないコント
ロール。(B)Mg イオンによる B-Z 転移状態の平衡状態での観察。
B-Z 遷移配列を導入した旗構造 ( 矢印 ) が回転した AFM イメージ。
[1] A. Rajendran, M. Endo, K. Hidaka, H. Sugiyama: Direct and
real-time observation of rotary movement of a DNA nanomechanical device, J. Am. Chem. Soc.135, 1117-1123, 2013.
に伴って B-Z 転移できる配列では旗状マーカーが下向きか
ら上向きになる割合が増加した ( 図 1B)
。また、Mg イオン
の濃度を制御することで、B-Z 転移の平衡状態を作り、旗構
造が回転する様子を高速 AFM によって観察した。その結果、
Molecular Robotics Research Group. News Letter No.4
9
研究活動紹介
北陸先端科学技術大学院大学
マテリアルサイエンス研究科
藤本
健造
超高速光クロスリンク反応を基盤とした
核酸類操作法の開発
図 1.cnvK(秒単位で核酸類を光架橋する人工塩基)とチミンの架橋
構造を含めた高速光架橋反応機構解析 (JACS. 2013 in press)
我々は酵素を使わずに、光を用いて核酸類を操作する方法
の開発を行っており、これまで [2+2] 光環化反応を組み込ん
だ DNA 光ライゲーション反応ならびに光クロスリンク反応
の開発に成功し、ビニル基含有ヌクレオシドを含む光応答性
人工オリゴ DNA が相補的核酸存在下でのみ光ライゲーショ
ンならびに光クロスリンク可能であることを見出している。
今回特に超高速操作可能な光クロスリンク反応の詳細を明ら
かにするために、
速度論的解析や NMR による構造解析を行い、
光活性反応種の同定にも成功した(図 1)
。DNA 光クロスリン
カーの更なる改善の礎となる基礎的かつ学術的に重要な知見
を得ることに成功した [1]。
また超高速光クロスリンク反応を用いることで、DNA 3重
鎖構造における3本目の鎖の結合力を著しく強化できること
も明らかにした [2]。
その他、小林 聡博士(電通大)との共同研究成果として、
この超高速光クロスリンク反応を組み込ませることで核酸
類の鎖置換反応を大きく加速させることも見出した [3]。鎖
置換反応は核酸による論理回路等に広く利用されており、本
知見は核酸反応をベースとした情報処理システム 構 築 に 役
立て ら れ る の で は と 期待できる。
[1] Kenzo Fujimoto, Asuka Yamada, Yoshinaga Yoshimura,
Tadashi Tsukaguchi and Takashi Sakamoto: Details of the
ultra-fast DNA photocrosslinking reaction of 3-cyanovinylcarbazole nucleoside; Cis-trans isomeric effect and the application
for SNP based genotyping, J. Am. Chem. Soc., 135 (43), 16161–16167,
2013.
[2] Kenzo Fujimoto, Hiroki Yoshinaga, Yasumasa Yoshio and
Takashi Sakamoto : Quick and Reversible Photocrosslinking
Reaction of 3-Cyanovinylcarbazole Nucleoside in DNA Triplex,
Organic & Biomolecular Chemistry, 11 (31), 5065 – 5068, 2013.
cnvK を用いた3重鎖核酸中における超高速光架橋反応に関する成果
[3] 藤本健造、中村重孝、橋本浩寿、小林聡、特願 2013-133163
が OBC の表紙掲載
10
Molecular Robotics Research Group. News Letter No.4
研究活動紹介
東京大学
新領域メディカルゲノム専攻
多田隈 尚史
DNA-kinesin の特徴を生かして実験を行った所、かかと部分
に力がかかる事が重要である事がわかった。これは、かかと
部分に ATP 加水ポケットが存在するため、張力によって、化
学エネルギーの力学エネルギーへの変換が制御されている事
を示唆している。この実験は機能モジュールを単純に DNA
で連結させた物であるが、分子間の距離を制御する事で、分
生体ナノシステムの合理的設計に向けて
生物は精緻な機構で効率良く動いている。そのような生
体システムでは、蛋白質等の多数の素子が協調して動いてい
る。近年、" 部品としての蛋白質 " の性質は理解が進みつつ
ある。しかし、それらの蛋白質がシステムにおいてどのよう
に協調して働いているかは、わからない事が多い。システム
における協調性を調べるために、我々は、従来行われてきた、
天然システムにおける分子の挙動を詳細に調べる代わりに、
自分達で設計したナノシステムの挙動を調べるという手法を
用いている。第一歩として、我々は、細胞内で輸送を担っ
子メカニズムの一端を明らかにする事が可能である事を示唆
している。
我々は最近、この実験系を発展させ、DNA ナノ構造を鋳
型 (scaffold) とし、特定の場所に蛋白質等の生体分子を結
合させたナノシステムを構築する事でナノ反応場をデザイン
し、その活性を測定している。具体的には、上述のキネシン・
輸送モーター蛋白質や、DNA から mRNA を作成する RNA
ポリメラーゼ (RNAP) を用いた研究を行っている。
今後は、DNA ナノ構造の分子配置制御技術を用いる事で、
DNA 蛋白質ハイブリッドナノシステムを構築し、分子ロボ
ットの発展に貢献できればと考えている。
ている二足歩行モーター蛋白質キネシンを題材に、堅い棒で
ある DNA を用いて、二つの足の間にある股の距離を変化さ
せ、二足間の分子内協調性を調べた [1]。キネシンの片足の
特定場所に DNA を結合させた後、DNA 鎖同士のハイブリダ
イゼーションを利用して、2 量体化させた (DNA-kinesin)。
DNA-kinesin は DNA の向きによって、パラレル型とアンチ
パラレル型の 2 種類が得られ ( 右図 )、運動観察を行った。
片足のキネシンは、レールである微小管に結合してもすぐ
外れるだけであったが、DNA を用いて 2 量体化した DNAkinesin は微小管の上を 2 足歩行する様子が観察された。短
い DNA が堅い棒のように振舞う事を利用して、股の長さを
図 1. DNA- キネシン
変えて、運動活性を測定した所、股の長さを天然キネシンよ
りも少しでも伸ばすと、速度は余り変わらない物の、連続歩
行距離がかなり短くなる事がわかった。これは、キネシンの
両足間が普段はぴんと張って張力が両足間にかかっているの
が、股の距離が長くなった事で、張力が弱まり、制御機構が
おかしくなった結果、まっすぐに歩けなくなり千鳥足にな
ってしまった為であった。次に、張力を感知しているセン
[1] Miyazono Y, Hayashi M, Karagiannis P, Harada Y, Tadakuma H.:
Strain through the neck linker ensures processive runs: a DNAkinesin hybrid nanomachine study, EMBO J. 29(1): 93-106,
2010.
サー部分がどこであるかを検討した。蛋白質の任意の表面
残基を ( 負荷がかかる ) 接続点とする事ができるという、
Molecular Robotics Research Group. News Letter No.4
11
研究活動紹介
付加させたものをリポソームと室温で 30 分程度混合さ
埼玉大学
せた後、共焦点レーザー顕微鏡で観察したものが図 2 で
理工学研究科
ある。ペプチドはリポソーム膜に結合(おそらく一部が
根本 直人
今後は多士済々な本研究領域の方々と共同でこの人工ペプ
2重脂質膜内に陥入している)と思われる。
チドの性質や新たな機能創出及び RNA- ペプチド連結体とリ
ポソームの関わりについて研究できれば幸いです。
リポソームに結合する人工ペプチド
DNA は 刻 々 と 変 化 す る 外 的 環 境 に 適 応 す べ く 己 の
DNA を 書 き 変 え て き た。 し か し な が ら、DNA 関 連 酵
素 に は DNA 同 士 を つ な ぐ「 の り 」 の 役 割 を す る リ ガ ー
ゼ や「 は さ み 」 で あ る 制 限 酵 素、 他 に「 消 し ゴ ム 」 の
役 割 を す る 修 復 酵 素 が あ る も の の 実 は「 鉛 筆 」 の 役 割
を す る 酵 素 は な い。 進 化 工 学 で は ダ ー ウ ィ ン 系( シ ス
テ ム ) が ま さ に 環 境 情 報 を DNA に 書 き 込 む た め の「 鉛
図1.cDNA display 法
タンパク質(機能)を選択するとその情報をコードするDNA
が一体化されているため、PCR によってそのタンパク質の配列
が容易に解読される。
筆 」 の 役 割 を 担 っ て い る と 考 え て い る。 特 に、 試 験 管
内 進 化 は 人 為 的 に 環 境 を 設 定 で き る こ と か ら「 分 子 進
化」を1回限りの地球型物質発展史の歴史学からデザ
イ ン 可 能 な 実 験 科 学 の 分 野 に し た。「 試 験 管 内 で DNA
にどのような環境情報を書き込ませることができるの
で あ ろ う か?」 こ れ が わ れ わ れ の 興 味 で あ る。 最 近 わ
れわれはタンパク質を効率良く進化させるウイルス型
対 応 付 け ツ ー ル で あ る cDNA display 法( 図 1) を
開 発 し た [1]。 こ れ は 機 能 を 担 う タ ン パ ク 質( ペ プ チ
Fluorescence microscopy
ド ) を 淘 汰 し た 際 に 遺 伝 子 型 で あ る cDNA が ピ ュ ー ロ
image(FITC)
マイシンリンカーを介して共有結合しているためその
情 報 を PCR で 簡 単 に 増 幅 す る と 同 時 に 変 異 も 導 入 し 高
速 に 試 験 管 内 進 化 を 実 現 す る [2]。cDNA display 法
は mRNA display で は 不 可 能 な 比 較 的 厳 し い 条 件 下
においても安定して試験管内進化を実行できることか
ら、試みに細胞膜の単純化したモデルとしてリポソーム
(1,2-Dioleoyl-sn-glycero-3-phosphocholine (DOPC) )
に結合するペプチドの探査を行った。3回の淘汰を繰り
返すことで幸いにも配列が収束し、いくつかの候補ペプ
チドが得られた。その中の一つを化学合成し蛍光分子を
12
Fluorescence Intensity(a.u.)
図2. 蛍光修飾したリポソーム結合ペプチドの共焦点蛍光顕微鏡像
[1] Y. Mochizuki , M. Biyani , S. T.-Ueno , M. Suzuki , K. Nishigaki ,
Y. Husimi , N. Nemoto: One-pot preparation of mRNA/cDNA
display by a novel and versatile puromycin-linker DNA, ACS
Comb. Sci., 13, 478–485, 2011.
[2] 根本直人、望月佑樹、上野真吾 , cDNA display による分子デザイン - mRNA display(in vitro virus) から cDNA display へ- , 生物物理 ,
53, 250-253, 2013.
Molecular Robotics Research Group. News Letter No.4
BIOMOD2013 奮戦記
チーム北海道
■タイトル:
「MARIMOD の歩み」
Ogawa,Shunsuke Imai, Yoriko Hashida, Judith
hiro Tomaru,Takuto Hosoya, Thanapop Rodjana,
■チーム名:Hokkaido-U MARIMOD
Satoru Yoshizawa, Koichi Kurashima, Masaru
■メンバー:Hiroki Sakai,Shinji Yamada,Kyohei Uenishi,
○Shizuka Anan
■学生メンター:Shoki Wada,Masaki Ito
■教官メンター:Akira Kakugo 私たちは今春、北大からの BIOMOD チームとして Hokkaido-U MARIMOD を結成しました。活動初年度というこ
ともありメンバー集め、資金集めなどから実験の指導、Wiki
の作製まですべてが手探りの状態でのスタートでした。生体
分子モーターをどのように用いることで面白いことができる
かを考え、それに伴ってするべき実験や測定などの計画を練
りました。そして、Wiki およびプレゼンテーションの作製
と並行して、必要な材料の作製までを国内大会までに行うこ
ととし、入賞を目標として日々活動してきました。
当日のプレゼンテーションにおいては、課題の残る結果と
なりました。発表については人に「面白さを伝える」という
意識が、質疑応答については対策が不足していたように感じ
ました。しかし、「分子モーターを分子モーターで動かす」
というアイデアは他のチームと区別できるポイントであると
考えているので、頂いた貴重なアドバイスを参考にし、アイ
デアを活かしたより良いプレゼンテーションをしたいと思い
ます。
今後はこれまで以上に実験に励み、ボストン大会に臨みた
いと思います。私たちのチームの特徴である「分子モーター
を分子モーターで動かす」面白さを十分に伝えられるような
発表をしたいと考えています。さらにはチーム名の由来でも
ある北海道の「マリモ」について、日本人だけでなく会場の
すべての人に面白いと感じてもらえるような発表をし、ボス
トンでも入賞を狙いたいと思います。
Merz, Koichiro Katayama,Ryo Kageyama,Taka-
Tsuzawa, Tomoyuki Hirano, Kazuki Hirahara
■学生メンター:Masahiro Endo, Ban Okabayashi, Daisuke Kandatsu, Shinnosuke Tsutsui, Yoshiaki
Tanaka, Keitel Cervantes-Salguero, Daiki
Komatsu, Akira Saito
■教官メンター : Ibuki Kawamata, Kei Fujiwara, Shin-ichiro M. NOMURA, Satoshi Murata
私は物理系もやりたいが生物系なこともやってみたいと
思っていました。そんな時東北大学の工学部の中にあるこの
BIOMOD の研究室を見つけた時は、
「おぉ、これだ!」と思
いました。しかし、いざ始まってみると、何だか自分が知っ
ている DNA と違うと思いました。DNA は遺伝情報と頭に
刷り込まれている私は、毎日 DNA の様々な性質を日々学ん
でいかなくてはならず大変ではありましたが、次第にその無
限とも思える DNA の可能性に胸がわくわくしていました。
また、プロジェクトを考えることも大変でしたがおもしろい
と感じていました。いろんな人が次々とやりたいことを言っ
ていき、それをひたすらホワイトボードに書いていく。その
どれもが、一見 DNA ではできそうでないものばかりだが、
そこをこうすればできるかもしれないとチーム内で言い合
う。そんな真剣なやりとりは、ただ大学にいただけではなか
なか体験できません。
そして、BIOMOD のいいところはチームで一つのプロ
ジェクトを進めるとう点だと思います。チームの中に状況に
応じてグループを作りまたその中で役割を分担する。一見一
人でやらないので気が楽なのではと思うが、チームの中のそ
の人が怠けると気づかないうちに全体が停滞してしまう、常
にその自覚を持って実験などやらなければならないため、実
は非常に一人一人の責任が重いということもこの BIOMOD
チーム仙台
で感じることができました。
はじめはここの研究室の雰囲気やこの分野について知りた
いと思い入ったのですが、今はチームの一人としてプロジェ
■タイトル:
「BIOMOD2013 奮戦記 」
クトを進めていくことの面白さを日々感じながら研究室に
■チーム名:Team Sendai
通っています。国際大会ではチーム一丸となって優勝目指し
■メンバー: Kota Kurosawa, ○ Masataka Tashiro,Norihiro て最後までがんばっていければいいなと思います。
Iwamoto, Ryoma Toyosato,Yohei Kon,Yuichiro
Molecular Robotics Research Group. News Letter No.4
13
チーム東大(柏)
■タイトル:
「優勝に向けて」
■チーム名:Todai nanORFEVRE
■メンバー: Fumihiro Horie, Kenta Koyama, Kyosei Urafuji,
Misato Iimura, Ryo Yatagai, Shiori Sasaki,
○Shuhei Egashira, Toshiumi Tatsuki, Yuka Onuma
■学生メンター:Kosuke Uekusa, Takeya Masubuchi
■教官メンター:Takuya Ueda, Hisashi Tadakuma
東大柏チームが国内大会で目標にしていたことは二つあり
ました。第一目標として国際大会での優勝に繋げること。第
二に一つのコンペティションとして優勝することです。結果
として後者は失敗したものの前者に関しては成功したと考え
ています。
国内大会の反省について述べます。私達はテーマ自体の面
白さとスライドや Wiki 資料については自信がありましたが、
2013 年の BIOMOD では是非上位入賞したいという気持
ちを胸に Team UT-Komaba はプロジェクト立案・実行に
取り組んできた。しかし、プロジェクトのテーマを決めるの
が遅かったこと、そしてメンバーのスケジュールがなかな
か合わずミーティングを開きにくかったことが元となり、少
なくとも 8 月まではプロジェクトが順調に進んでいるとい
るとは言いがたい状況であった。その結果、中間発表までに
実験がはじめられず、また Wiki 作成も満足いくものではな
かった。プレゼンのストーリーもとってつけたレベルのもの
しかできなかった。しかし中間発表後にメンバーの足並みが
時間的にも気持ち的にも揃うようになってから、現在プロ
ジェクトの進捗スピードがアップしている。本大会まで自分
たちがやるべきことははっきりしており、後はそこに向かっ
て突き進むだけである。中間発表は散々な点数であったが、
一つだけ収穫があった。それは DNA screw のアイディア自
体は評価されていたことである。残りの足りない部分をしっ
かりと補強し、次回は完璧な状態で本大会に望みたい。
コンペティションにおいては採点官の方々に評価してもらっ
て初めて勝てるという認識が甘かったような気がします。そ
チーム東工大
の点で他のチームからは大いに学ぶことがありました。東北
は発表方法自体が工夫されていましたし、東工大、駒場は私
達と同じ形式ながら発表の完成度と質疑応答の質が非常に高
■タイトル:「BIOMOD2013 奮闘記」
かったと思います。福岡工大、関西大、北大は斬新なテーマ
■チーム名: Team Platanus Symphony
でしたが、発表方法にそれぞれ工夫がされており、すっと頭
■メンバー:○ Takeya Sho, Taku Ueki, Honami Sakaizawa,
に入ってきました。単調な発表に抑揚をつける、聴衆とよく
Tadashi Shiozawa, Noriaki Shimamoto, Toshihiro
関わり質問に対して納得のいく解答を提示する、といった課
Hayashi, Asuka Masui, Nao Yamamoto, Atsushi
題に取り組んでいきます。
Kayama
国際大会に向けて、期日内の資料の完成、雰囲気の体感、
採点官からのフィードバック、他チームとの交流…このよう
な機会はプロジェクトを進める上で非常に意義あるものでし
た。国内大会までの奮闘を優勝という結果に繋げられなかっ
■学生メンター:Zicong ZHANG, Vutha Phav, Mahemuti
Bulibuli
■教官メンター:Masahiro Takinoue, Ken Komiya, Masayuki
Yamamura, Daisuke Kiga, Akihiko Konagaya
たという悔しさをバネに、本当の勝負、国際大会での優勝に
向けて東大柏チームは更にプロジェクトを進めていきます。
国内大会を終えて、ここまでの活動を振り返ってみると苦
悩の連続でした。大きな壁は二つあったと思います。最初の
チーム駒場
壁は、アイデア決めでした。今まで経験してきた勉強では、
与えられた問題を、決められた解法で解くことを鍛えてきま
した。しかし、新しいアイデアを創造するという経験はゼロ
■タイトル:
「本大会への抱負」
と言っても過言ではありません。一から新しいことを考える
■チーム名:Team UT-Komaba
ことほど難しいことは無いと思いました。二番目の壁は、ス
■メンバー:○ Yusuke Fukuhara, Toyoki Kondo, Yuki Miyazaki,
トーリー決め。自分のアイデアをより魅力的に見せ、より理
Osamu Ishimura, Shoko Yokokawa, Shuhei Nakajim,
解しやすくするためのストーリーを作ることはアイデア決め
Tomohiro Soejima, Yuichi Nishiwaki, Wang Shaoyu
と並んで大変な作業であったと思います。
■学生メンター:Alexandre Baccouche
国内大会本番では、自分たちの決めたアイデア、ストーリー ■教官メンター:Masami Hagiya, Yannick Rondelez, Akira Fuji
を理解してもらえるように、わかりやすいプレゼンを目指し
14
Molecular Robotics Research Group. News Letter No.4
ました。その結果、自分たちの一番伝えたかったコンセプト
切であった。これは事前にリハーサルを行う時間が少ししか
が伝わりきらず、さらに、我々の作品の弱点も浮彫となりま
確保できていなかったので、周りを気にする余裕がなかった
した。しかし、この結果は作品を改善できる大きなチャンス
からである。本番ではもう少し余裕をもって挑みたい。
ととらえ、本大会に向けて更なるブラッシュアップをしてい
11 月に開催される BIOMOD 国際大会の目標は、もちろ
こうと思っています。
ん入賞を目指す。まず始めに BIOMOD 国内大会で上位に入
本大会での目標は、当然、世界一位です。これを目標に五
賞したチームのプレゼンを参考にしつつ、目で見て楽しい、
月から頑張ってきました。残り少ない時間で、世界優勝でき
かつ分かりやすいプレゼンを心がけたい。また、うさぎとか
るような作品に仕上げなければなりません。容易なことでは
めの設計に関してはご指摘していただいた点を踏まえ、改良
ないことは明らかですが、国内大会を経験したことで分かっ
を加えていきたい。
た、自分たちの作品の長所と短所をしっかりと受け止め、本
大会に向けて邁進して参ります。
チーム関西
チーム福岡工大
■タイトル:
「The DNA weathercock mounted on a porous
substrate」
■タイトル : Nano Flip-book
■チーム名: Team Fukuoka
■チーム名 : Team Kansai
■メンバー :Shinya Anraku, Ryo Iwashita, Maika Kuroki
■メンバー : Arashi Asano, Yoshihiro Iiida, ○ Yuta Ikeda,
■学生メンター : Naoya Yamaguchi
Sizuma Tanaka, Kenta Hirayama, Ryotaro
■教官メンター : Hajime Mita, Nobuyoshi Miyamoto
Yumishita, Ryosuke Watanabe
■学生メンター:Mana Ishino, Yusuke Kitawaki, Shinya
私たちは国内大会の目標として、自分たちの発表が伝わる
Minamida, Masafumi Kaino
ような分かりやすいプレゼンをしようと考えていました。ま
■教官メンター: Akinori Kuzuya
た、私たちはこのような大きな場での発表経験がなかったの
で、発表する上で当たり前のことを当たり前に行おうと考え
我々は Nano-Flip-book、すなわち分子サイズのパラパラ
ていました。
漫画を用いてイソップ童話のうさぎとかめの話を表現するこ
プレゼンでの反省は、他のチームに比べてスライドが見づ
とをテーマに選び、誰にとっても理解しやすく親しみやすい
らく、理解しづらかったという点があります。他のチームを
プレゼンテーションを目指した。そのために先ず Wiki を作
参考にし、アニメーションや図を有効に活用するなどして、
成するにあたって、Top ページに掲載しているうさぎとか
見やすくわかりやすいスライドに改良し、説明も詳しくわか
めのアニメーションには 100 コマ以上のイラストを使用し、
りやすいものにしようと思います。他のチームと比べると、
さらにイラストはすべて手書きした。DNA origami の設計
私たちのプレゼンはただ発表するだけのように感じたので、
ではうさぎとかめに使用する staple を出来るだけ少なくな
傍聴者の印象に残り、面白いと感じてもらえるようなプレゼ
るように工夫し、集合していない独立した構造体が撮れるま
ン方法を考えたいです。また、英語で発表ということもあり
で何度も AFM 観察を繰り返した。最後に全員でプレゼン原
途中詰まることが多かったので、もう少し流暢に話せるよう
稿を考えてリハーサルを行った。結果として入賞できなかっ
練習を重ねていこうと思います。今回の大会で他大学の発
たものの、初めての英語でのプレゼンということもあり、と
表を聞いたり、交流したりすることで他大学のレベルやモチ
ても良い経験になった。
ベーションの高さを知り、よりいっそうの努力が必要だと感
我々のプレゼンテーションが至らず入賞出来なかったの
じました。
は、第一に英語力の低さにあり、その最たるはプレゼン後の
国際大会では、今回の反省をふまえ自分たちの発表が伝わ
質疑応答であった。リスニングはおろかトークでさえもうま
るような分かりやすいプレゼンをしたいです。また、他国の
くできていなかったので、今後の課題に英語力の向上が必須
学生はどのようなアイデアを持ち、どのようなプレゼンをす
となる。次に挙げられるのは聴衆に訴えかけるようなプレゼ
るのかをよく見聞きし、参考になることは多く吸収して、今
ンではなかったことが挙げられる。プレゼン中にカンペに頼
後に活かせるようにしたいです。
り過ぎて相手の目を見ずに話していたため聴衆に対して不親 Molecular Robotics Research Group. News Letter No.4
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TOPICS
● BIOMOD2013 ~ 速報
2013 年 11 月 2 日から2日間にわたってハーバード大学(ボストン)で、国際生体分子デザインコンペティション (BIOMOD2013)のジャンボリー(プロジェクト発表会と表彰式)が開催されました。
一定の刺激で連鎖的に崩壊して大量の薬物を放出するリポソームシステムを作った東北大チームが総合三位に
入賞するなど、日本勢は今年も大健闘しました。
●京都大学齊藤博英の「RNA インバータ」論文が京都新聞等メディアで紹介されました。(2013 年 9 月 3 日付)
●北陸先端科学技術大学院大学藤本健造の「遺伝子配列の違いを秒単位で解析」が東京新聞に掲載されました。
(2013 年 10 月 16 日付 共同通信配信)
●鳥取大学松浦和則の研究が日刊工業新聞 ( 理系漫画家はやのんさんの「キラリ研究開発」コーナー)で紹介され
ました。(2013 年 11 月 4 日付、18 日付)
2013 年の主な活動報告
2 月 2 日
分子ロボティクス研究会 2 月定例会兼エレクトロニクス研究所特別講演会 ( 福岡工業大学 )
「分子ロボットとゲルマテリアル」
3 月 22 日
第一回領域公開シンポジウム ( 東京大学山上会館 )
4 月 13 日
公募班への領域説明会 ( 東京工業大学田町 CIC)
4 月 27 日
分子ロボティクス研究会 4 月定例会 ( 名古屋大学 )
5 月 25-26 日
第二回領域会議 ( 東京工業大学田町 CIC)
6 月 29 日
分子ロボティクス研究会 6 月定例会 ( 北海道大学 )
7 月 3-5 日
ナノ・マイクロ ビジネス展 にブース出展 ( 東京ビッグサイト )
7 月 6 日
分子ロボティクス研究会 ( 東京工業大学田町 CIC)
7 月 26 日
分子ロボティクス研究会 7 月定例会 ( 東京工業大学田町 CIC)
(人工知能学会 SIGMBI と共催)
8 月 24-25 日
9 月 8 日
分子ロボティクス夏合宿 2013(加賀片山津温泉ホテル森本)
BIOMOD 国内大会 ( 東京大学山上会館 )
10 月 28-30 日
第 51 回日本生物物理学会年会 ( 京都国際会議場 ) (分子ロボティクス共催シンポジウム)
「生物物理学による生体分子ロボットの設計原理の探求」
10 月 29-31 日 11 月 2-3 日
CBI 学会 2013 年大会 分子ロボティクス共催セッション(タワーホール船堀)
BIOMOD 本大会 ( ハーバード大学 Wyss 研究所 )
11 月 14-15 日
「細胞を創る」研究会 6.0(2013 年度年会 ( 慶應義塾大学鶴岡タウンキャンパス )
(分子ロボティクス共催)
12 月 13 日 分子ロボティクス研究会 12 月定例会 ( 東北大学 )
今後の予定
1 月 17 日
分子ロボティクス研究会 1 月定例会 ( 産業技術総合研究所 )
3 月 14-16 日
第 4 回領域会議・3 月定例研究会(宮城県モンタナリゾート岩沼)
Molecular Robotics Research Group. News Letter No. 4
発行:新学術領域 分子ロボティクス 感覚と知能を備えた分子ロボットの創成
事務担当 :村田智(東北大学 [email protected])
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広報担当 :小長谷明彦(東京工業大学 [email protected]) Molecular Robotics Research Group. News Letter No.4
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