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IEEE1888通信方式による スマートビル/スマートキャンパスの 設計・構築
IEEE1888通信方式による スマートビル/スマートキャンパスの 設計・構築・運用事例の紹介 東京大学 大規模集積システム設計教育研究センター 助教 落合 秀也 博士(情報理工学) 2013年3月11日 講演の内容 • 東京大学の電力可視化システム – 5万kW 超の電力需要家 – 東日本大震災のインパクト – 震災を受けて行われたシステム設計・構築 • IEEE1888の概要 – 時代背景 – アーキテクチャ – 進む商用利用 2011年7月 東大の電力可視化システムが稼働開始 • 特徴 – 5キャンパスの統合監視 • 本郷キャンパス • 駒場 I キャンパス • 駒場 II キャンパス • 柏キャンパス • 白金キャンパス – 総電力は5万kWを超える – IEEE1888通信方式で構築 された 東京大学 キャンパス電力のリアルタイム見える化 (一般公開用) 東京大学 は 50,000kW 超の需要家 • 東京電力管内の1/1000の電力を消費 • 本郷キャンパスだけで、東京都ワースト1 を記録 • 文京区の全世帯に相当する・・・という噂も • 5万kWって、どのくらい? – 浴槽(100ℓ)の水を 0.18 秒で 20℃ à 42℃ にできる – 250トンの列車(10両)を 2 秒で 時速100km にできる – 1時間の電気料金は 120万円 (1kWh = 24円 換算の場合) 2011年3月11日: 東日本大震災が発生 • 地震&津波により多数の大型発電所が長期停 止に追い込まれる • 東日本全体で電力が 足りない事態に・・・ – 輪番停電 – 極度の節電 • 東京大学も激しい節電をすることに・・・ 福島第一原発 福島第二原発 広野火力 東海第二原発 常陸那珂火力 鹿島火力 輪番停電(計画停電)の実施 計画停電エリア ※ 東京電力の公表資料より 計画停電スケジュール 6 2011年3月23日(大地震から12日後) の電力需給バランス 電力 供給力 ※ 東京電力の「でんき予報」 2011年3月23日 より 7 (Maximum 1 hour) Power Usage [kWh] 東大 工学部2号館の 電力消費変動グラフ (2010年度) 1,400 1,200 1,000 800 600 400 200 0 東日本大震災 Apr Jul Oct 2010 Jan Apr 2011 8 東京大学は・・・ • 様々な設備の使用を停止 – 実験設備 (小型なものから大型なものまで ほぼすべて) – 照明 – コンピュータなど • 春になり一旦は回復。 • しかし、夏の電力供給は大変厳しくなる・・・ • 夏に向けて、電力の見える化診断をする必要に迫られ た – どの部署(学部・研究科)が、どのように電力を消費している かの、実態が見えない (伝わらない) – 電力需要の予測が立たない – 電力需要の制御アクションをどう起こしたらよいかがわから ない 電力の「見える化」計画 • 大学の目標 – ピーク電力を 2010年度比 70% 以内にする – 総量を 2010年度比 75% 以内にする è しかし、需要予測が立たない&制御が簡単ではない • システムへの要件 – 「エリア」や「ビル」の単位で分析する • 各学部・各研究科での電力使用パターン(変動)を分析するため • 重点削減エリアの算定のため – リアルタイムに現在の使用率を把握(&伝達)する • 現在の状態に合わせて、設備を運転してもらうため (e.g.,) 電力が厳しい時には、そのことを伝え、設備を止めてもらう – 電力消費の大きい 上位 5キャンパスを統合する • 可視化のWeb画面(を含むシステム)を大学内で標準化するため 10 「エリア」や「ビル」の単位でと言っても... 計測対象はどのくらい? (東大 本郷キャンパスの 例) 100ヵ所に近い計測点!! どのようにして 2 ~ 3 ヵ月で工事するのか? (4月の懸念事項) 11 成功の鍵1: 変電所からデータを取る 一般的な変電所のイメージ 引用: h<p://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/2/2a/ Inokashira_line_kugayama_electrical_substaLon.JPG 本郷キャンパスの 変電所は建物の中 12 変電所に集まる電力データ (本郷の例) (イメージ図) 高圧(6600V)電力供給エリア 課金目的の電力計測ポイント (注意) ここで提示している図はイメージ図であり、実際の場所に対応していません! 13 リアルタイムに現在の使用率を把握(&伝達)する 成功の鍵2: IEEE1888 により データをインターネット・オンライン化 1200m 監視App (Tool) Storage 600m IEEE1888 IEEE1888 見える化App (Tool) IEEE1888 The Internet 6600V power supply areas (23 lines) Power monitoring for accounting (about 200 points) (Note) This diagram is just a sample, and does not really correspond to the locations above. キャンパスへの電力供給 IEEE1888 Gateway CSV 日立 30,000 kW 特高受電設備 (66kV à 6600V) CSV 三菱電機 BNET Smart Meters (100V, 200V) 14 どこでも閲覧可能に キャンパスのエネルギー診断マップ h<p://ep-‐monitor.adm.u-‐tokyo.ac.jp/areamap/ 5 キャンパスの統合へ向けて • キャンパスごとに異なるベンダーの設備が投 入されている – 日立製作所、三菱電機、東芝、近計システム、パ ナソニック、高岳製作所、エービル、明電舎... • データ提供方式が様々 (方言はさらに独特に) • CSV + SMBプロトコル • CSV + FTPプロトコル • UDPプロトコル • SQLサーバへのアクセス キャンパス キャンパス キャンパス キャンパス A B C D 16 成功の鍵3: 規格の差異 を吸収する • IEEE1888 GW を 各変電所に導入、アクセス方式を統一化 • 統一的なフレームワークでデータ管理&「見える化」を実現 • 短期間の開発に成功 (6月の1ヵ月間で4キャンパスに対応!) データの蓄積と共有 「見える化」サービス提 供アプリ IEEE1888 App IEEE1888 Storage 東京大学 CIMX IEEE1888 IEEE1888 インターネット IEEE1888 IEEE1888 GW IEEE1888 IEEE1888 GW IEEE1888 IEEE1888 GW IEEE1888 IEEE1888 GW IEEE1888 IEEE1888 GW ALTER BUILDING HITACH MITSUBISHI KINKEI PANASONIC TOSHIBA MEIDENSHA 特高受電 特高受電 TAKAOKA 特高受電 集中検針 本郷キャンパス 受電設備 駒場Ⅰキャンパス 特高受電 駒場Ⅱキャンパス 柏キャンパス 白金キャンパス 17 柏キャンパスに設置された IEEE1888 Gateway ベンダー固有のプロトコル&データフォーマット à IEEE1888 通信に対応 18 東大で稼働している IEEE1888 のStorage サーバ群 すべてのキャンパスからのデータが保管され、必要に応じて提供されている 19 実現された 電力可視化サービス 第一階層(キャンパス単位の消費量) h<p://ep-‐monitor.adm.u-‐tokyo.ac.jp/campus/denryoku 一般公開中 20 三階層の可視化 entry 第一階層(キャンパス単位) ポータルサイト 第二階層(エリア単位) Internal 第三階層(ビル単位) 21 ズーム 第二階層 (エリア単位: 6600V系統) 22 電力の可視化がもたらしたこと • 無駄な節電我慢をせずに済んだ – 電力に余裕があるときには、快適に生活することがで きた – 本当に厳しいときにだけ、努力すればよかった • 可視化されたデータに基づいて、指示が出された – X号館の電力消費量が多いので、調査工夫するように – ピークシフトをお願いできないか(夜や週末の利用を) • 自主性(強制しない)の尊重 – 大学特有の事情 23 講演の内容 • 東京大学の電力可視化システム – 5万kW 超の電力需要家 – 東日本大震災のインパクト – 震災を受けて行われたシステム設計と構築 • IEEE1888の概要 – 時代背景 – アーキテクチャ – 進む商用利用 IEEE1888 とは何か? IEEE(米国電気電子学会)が 2011年に策定した 国際的な通信規格の一つ 「次世代の監視制御のための通信規格」 として開発された Ubiquitous Green Community Control Network (UGCCNet) と呼び、 1.コミュニティーの電力管理・設備管理 2.ITシステムと(設備機器、センサー類)の連携 などを得意とする (*) 日本では、FIAP (Facility InformaLon Access Protocol) と呼ぶこともある 25 IEEE1888 が 誕生した時代背景: その1 グローバルな情勢の変化 • 新興国の急速な発展 – エネルギー消費量の急激な増加 – CO2濃度の上昇 – 地球温暖化 – 慢性的なエネルギー不足 – 化石燃料の高騰 • エネルギーに対する考え方&行動の変化 – 風力・太陽光発電の導入 – 見える化 ・ 節電の実施 26 実際のデータ:世界のエネルギー消費量 ~ 過去25年間でおよそ倍に ~ 1985 引用: BP StaLsLcal Review of World Energy 2010 27 IEEE1888 を取り巻く 時代背景:その2 コンピュータ・システム(IT)の進化 • 設備ネットワークが誕生した時代 (1990年代~) – 計測機器や設備機器を物理的なケーブルで配線 • 標準バスネットワーク (RS485など) • 標準アプリケーション・プロトコル (Modbus, BACnet など) • 一体標準型 (Lonworks) 当時は、 最も現実的で 最良の方法 – 集中管理(帳票出力など)は、デスクトップ・パソコンで。 • 専用アプリをインストールして使用 • ユビキタス時代の到来 (2010年代~) – スマートフォン、タブレット端末が普及した – クラウド(インターネットの向こう側)で、アプリケーションが動いている – 情報システム間は HTTP+XML によるオブジェクトの交換が主流になった – 多様な通信媒体 (例えば、無線センサネットワーク) が実用化された è このような変化に合わせた通信規格が必要となることに 28 IEEE1888: HTTP+XML で “設備機器”、 “データベース”、“情報システム” をつなぐ 通信プロトコル データ蓄積・基礎分析専門 事業者 見える化専門 事業者 分析アプリ 制御ロジック専門 事業者 ⾒見見える化 分析アプリ ⾒見見える化 制御アプリ ストレージ 制御アプリ ストレージ IEEE1888 通信 IEEE1888 通信 IEEE1888 通信 IEEE1888 通信 大手総合管理事業者 インターネット IEEE1888 通信 IEEE1888 通信 IEEE1888 通信 GW 照明 動態 動態 動態 配電 配電 配電 施設D GW 照明 GW GW 動態 GW 配電 29 施設C GW 照明 照明 空調 GW 空調 GW 空調 空調 GW アプリ ストレージ IEEE1888 システム・アーキテクチャ *アプリケーション ユーザ・インタフェース データ分析 帳票出力 コマンド発行など *レジストリ GW, Storage, APPの登録・検索 ポイントの登録・検索 *ストレージ データの蓄積 (長期間・大容量など) IEEE1888通信網(HTTP) TCP/IP Network *ゲートウェイ アクセス方式 の統一化 Proprietary Circuits CSV Files, … 既存技術に基づく設備・機器 フィールドバス センサ・アクチュエータ 計測ネットワーク 30 IEEE1888の 3つの通信手順 WRITE, FETCH, TRAP手順のシーケンス例 WRITE 手順 GW主導のデータ送信 (Storageに対しての場合) APP主導のシーケンシャルな データ読出し (Storageからの場合) FETCH手順 APP主導のシーケンシャルな データ読出し (GWからの場合) APP主導の(GWに対する) イベント条件登録と (GWからAPPへの) イベント配信 APP主導のデータ送信 (GWに対しての場合) TRAP 手順 WRITE 手順 31 IEEE1888 通信メッセージの例 102B1号室 (10F, 工学部2号館) 電気式空調の状態 <transport> <body> <point id=“h<p://gutp.jp/Engbldg2/10F/102B1/EHP/SWC”> <value Lme=“2012-‐12-‐13T15:30:00+09:00”>ON</value> </point> <point id=“h<p://gutp.jp/Engbldg2/10F/102B1/EHP/MODE”> <value Lme=“2012-‐12-‐13T15:30:00+09:00”>HEAT</value> </point> <point id=“h<p://gutp.jp/Engbldg2/10F/102B1/EHP/FAN”> <value Lme=“2012-‐12-‐13T15:30:00+09:00”>HIGH</value> </point> <point id=“h<p://gutp.jp/Engbldg2/10F/102B1/EHP/DB”> <value Lme=“2012-‐12-‐13T15:30:00+09:00”>21.0</value> </point> </body> </transport> 運転 “ON” 稼働モード “HEAT” 風力 “HIGH” 室温 “21.0” 32 IEEE1888 商用システムの実例 h<p://www.n<datacs.co.jp/product_html/service/system/remoteone/index.html BEMSアグリゲータ として 1200拠点に導入 (2年間) 33 IEEE1888 対応の商用ソフトウェア h<p://www.seiko-‐p.co.jp/systems/soluLon/greentalk/ h<p://www.cimx.co.jp/01_products/espdragon/0_espdragon_2012_030.htm h<p://www.comzeit.co.jp/L_IEEE1888.html h<p://www.otsuka-‐shokai.co.jp/products/miseruka/soluLon/ugs-‐saas.html 34 IEEE1888 多回路エネルギー診断メータ 特徴 ・ 分電盤の簡易電力計測 ・ IEEE1888通信対応 CT(電流センサ) 取付の様子 35 IEEE 1888 機器 IEEE1888 デジタルアナログ入力装置 IEEE1888 パルス計測装置(電力計測) IEEE1888 デマンド警報装置 h<p://futaba-‐kikaku.jp/DemandAlarmEquipment.pdf IEEE1888開発キット 36 h<p://futaba-‐kikaku.jp/IEEE1888DevelopmentBoard.pdf IEEE 1888 機器 (GW装置) FT-‐10 78Kbps 2 ポート Lonworks GW IEEE1888-‐BACnet/IP GW変換装置 クラウド サービス The Internet IEEE1888通信 LAN BACnet/IP GW BACnet/IP通信 BACnet/IP機器 BACnet/IP機器 利用構成 37 IEEE1888 オープン・ソース・ソフトウェア 簡易施設監視アプリ ヘルスチェックアプリ FIAPStorage (データ蓄積サーバ) 帳票出力アプリ 38 XML生成器 XML解析機 TCP/IP 通信プラットフォーム IEEE1888 コンポーネント (機能の実装) ユーティリティ (サーバ・ メイン) オブジェクト生成器 サンプルGW サーバ通信スタブ サンプルAPP (クライアント・ メイン) クライアント通信スタブ SDK: ソフトウェア開発キット IEEE1888 通信スタック IEEE1888 C言語版 参照コード IEEE1888 SDK,通信スタック,テスター オペレーティング システム 組込み機器向け IEEE1888 通信スタック Download URL: h<p://fiap-‐develop.gutp.ic.i.u-‐tokyo.ac.jp/dist/ テスター 39 << 現在の展開 >> 東京工業大学 環境エネルギーイノベーション棟 4570枚の太陽光パネル (総発電力 650kW) で覆われたビル IEEE1888通信プロトコルを使って 発電量監視・機器制御を行う Modbus や BACnet/IP などを IEEE1888で統合する Cite: h<p://www.n<datacs.co.jp/news/20121204.html 40 まとめ • 東京大学の電力可視化システム – 5万kW 超の電力需要家 – 東日本大震災のインパクト – 震災後のシステム設計・構築 • IEEE1888の概要 – 時代背景 – アーキテクチャ – 進む商用利用