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すべての無線の世界

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すべての無線の世界
ジヤトコ株式会社
HP ProCurve Networking 無線 LAN 製品を用いて
工場内ネットワークインフラを構築
生産プロセスや中間品在庫の“見える化”によりスピード経営をサポート
AT や CVT など、トランスミッション分野の世界的なトップランナーとして業界をリードして
いるジヤトコは、製造ラインにおける各工程での生産実績をリアルタイムに近い形で収集・集計
し、在庫を“見える化”するためのネットワークインフラを構築。無線アクセスポイントの HP
ProCurve MSM320 Access Point W W を採用することで、ネットワーク工事費を大幅に削
減するとともに、今後のライン変更やグローバル展開にも柔軟に対応できる拡張性を確保した。
よりよいモノづくりを支援する
目 的
●
リアルタイム経営と BCP(事業継続計画)を支えるネット
ワークインフラ環境を無線 LAN によって整備する
●
工場内での全生産実績を、無線対応バーコードリーダー
ネットワークインフラの構築
2008 年秋より全世界を同時不況に陥れた経済危機、ポスト
京都議定書における地球温暖化ガス(CO2)の削減目標のさら
から無線アクセスポイント経由で収集し、生産プロセス
なる強化などを契機として、今日の自動車業界には「環境」を
と中間品を含めた在庫の
“見える化”を実現
キーワードとするパラダイムシフトが起きつつある。
そうした中、自動車のより効率的で快適な走行の実現、車重
CIO
情報システム部
部長
アプローチ
●
工場内のアクセスポイントを有線の Ethernet LAN で接
続 せ ず、HP ProCurve MSM320 Access Point W W
浅井 正克 氏
の MDS ならびにローカルメッシュ機能を活用することで、
ネットワーク工事費を大幅に削減し、今後の生産ライン
●
●
佐野 善和 氏
●
これら AT や CVT 分野における世界的なトップランナーとして
を導入
業界をリードしているジヤトコは、
「お客さま・クルマ文化・社
ネットワークが大規模化した段階で、集中管理を行うコ
会への価値の提供」を使命とし、このパラダイムシフトにフレ
ローカルメッシュ機能により、無線アクセスポイントに故障
キシブルに対応できる経営体制を強化するとともに、グローバ
ルな IT 環境の構築・拡充を推進している。
そこでの主要なテーマとなっているのが、リアルタイム経営を
が発生した場合でも自動的かつ短時間でリカバリが可能
支える生産現場のネットワークインフラの整備である。同社の
今後のコントローラ導入時に実データはコントローラを
CIO であり情報システム部の部長を務める浅井正克氏は、そ
経由せずに通信できるため、ネットワークのスループット
の狙いを次のように説明する。
ビジネスへの効果
●
速機)や CVT(Continuously Variable Transmission:無段変
初期コストを抑えるため、当面はアクセスポイントのみ
を犠牲にすることなく、多目的での投資保護が可能
●
の基幹ユニットである AT(Automatic Transmission:自動変
速機)などのトランスミッションだ。
システムの効果
●
る負荷軽減の役目を担っているのが、エンジンと並ぶ自動車
変更にも柔軟に対応
ントローラを追加導入し安定運用(計画)
情報システム部
プロフェッショナルスタッフ
の軽量化などを通じて、燃費性能の向上ひいては環境に対す
生産プロセスや在庫の
“見える化”を実現するネットワー
「私たちはユニットメーカーとして、素材(原材料)の加工から
組み立てまで一貫して手掛けています。しかし、完成品の在
庫こそ常に正確に掴んでいるものの、個々の工程における中
クインフラの構築コストを約 60%削減
間品の在庫まで即座に把握できているかというと、手入力に
需要変動にともなう生産ラインの拡大、縮小、組み替え
よる日次のデータ集計に頼っており、スピードを争う経営の
など、ビジネスの変化への俊敏な対応を実現
意思決定の要求に十分には応えきれていないのが実情でした。
情報システム部
主担
そこで生産プロセスならびに、よりきめ細かいメッシュでの在
芹澤 幸雄 氏
庫の
“見える化”を実現し、需要変動などの変化に対して、工程
変更やライン変更にスムーズに対応できる、最適なモノづくり
を支援する生産管理ネットワークインフラの構築を目指しま
した」
なお、ここでの生産プロセスならびに在庫の可視化には「ある
意味での BCP(業務継続計画)の狙いもあります」と、同社情
報システム部のプロフェッショナルスタッフである佐野善和氏
は、次のように言葉を続ける。
「以前、ある部品メーカーが大地震で被災し、その影響を受け
て納入先である各自動車メーカーの製造ラインまでストップし
てしまうという出来事がありました。これを教訓として、私た
ちはいかなる事態に際しても、お客様の事業計画に支障をき
たすことがないよう、常に適切な在庫を確保しておき、製品
を出荷できる体制を整えておく必要があります。少なくとも、
何日後に、どれくらいの数量まで生産・出荷をリカバリできる
情報システム部
アシスタントビジネスリーダー
橋本 直之 氏
のかといった情報を正確に把握し、お客様にお伝えできなくて
はなりません。そのベースとなるのが、生産プロセスや在庫の
“見える化”なのです」
バーコードリーダーで読み取った
生産実績データを無線 LAN で収集
同社は 2009 年 4 月、この構想を具体化するため、ある1 つの
製造ラインをパイロットラインとして、無線バーコードリーダー
HP ProCurve MSM320 Access Point W W である。WDS と
を用いた生産プロセス管理/在庫管理システムを構築した。 は、アクセスポイント同士が無線によって LAN 間のブリッジを
情報システム部
手塚 智 氏
その概要を、同社情報システム部の主担である芹澤幸雄氏は、 行う機能である。起点となる無線アクセスポイントが Ethernet
次のように説明する。
「さまざまな工程を経て、一定の荷姿になった中間品や製品の
パレットに貼付されたバーコードを無線対応のハンディターミ
LAN に接続されていれば、そこから先は必要に応じて、電
波の届く範囲に無線アクセスポイントを配置していくだけで
LAN を広げることが可能となる。
ナルで読み取ると、生産の実績データとして即座にセンターの 「HP ProCurve MSM320 Access Point W W は 2008 年12
情報システム部
米倉 祐二 氏
サーバに転送され、非常に短時間のサイクルで集計が行われ
月に発売されたばかりで、正直なところ私たちの認知はあま
るという仕組みです。従来のように製造現場の作業者が都度
り高くありませんでした。しかし、その前に正式採用を決めて
都度オフィスまで戻り、その日のデータをまとめてクライアン
いたデンソーウェーブ製の無線対応バーコードリーダー BHT-
ト PC から入力するといった手間はなくなりました。また、管
604QW との相性やコストパフォーマンスの良さなど、ベン
理職や経営者は、リアルタイムに近い形で、さまざまな中間
ダー側からも強い推薦を受け、やはり実績に裏付けられた製
品や製品の在庫量の変化を把握することが可能となりました」 品と組み合わせるのがベストと考え、HP ProCurve MSM320
ただ、このシステムの成果を他の製造拠点や製造ラインに普
Access Point W W の導入を決定しました」と佐野氏は、当時
及・拡大させていく上で、同社は大きなハードルに直面した。 を振り返る。
それは、導入コストの問題である。
「当社はグローバルに製造拠点を展開しており、日本国内だけ
セキュリティ保護に関する問題を
でも約 700 の製造ラインが稼働しています。これらのライン
MAC 認証機能の活用により解決
のすべての要所に無線バーコードリーダーの受け口となる無
もっとも、無線アクセスポイントの導入に際して、まったく懸
線アクセスポイントを設置するためには、そのインフラとして
念がなかったわけではない。特に問題となったのが、セキュリ
Ethernet LAN を敷設しなければならず、工事費だけでも巨額 ティの保護である。同社情報システム部のアシスタントビジネ
のコストがかかってしまいます。しかも、市場ニーズの変化に
スリーダーの橋本直之氏は、こう語る。
よって売れ筋製品もどんどん変わっていき、それに合わせてラ 「当社ではセキュリティゾーンという考え方を徹底しており、特
インの拡大や縮小、組み替えなども頻繁に行われます。その
定のエリアに立ち入ることのできる作業者を厳しく制限してい
たびに LAN を敷設し直さなければならないとなると、コスト
ます。そうした中に無線アクセスポイントを導入するのはリス
は膨らんでいく一方です」
(芹澤氏)
クが大きく、セキュリティポリシーに違反することにもなるの
こうした 経 緯を 経て同 社 が 着目したのが、WDS(Wireless
ではないかと危惧しました」
Distribution System)機能を備えた無線アクセスポイントの この懸念を払拭したのが、HP ProCurve MSM320 Access
工場内ネットワーク概要図
Point W W の持つ MAC 認証の機能である。
クをもとに机上で検討を行った後、図面上からは分からない
「あらかじめ接続設 定を行ったクライアント(無線 バーコー
障害物の有無などを現場に出向いて確認した上で、実際の配
ドリ ー ダー)の み を HP ProCurve MSM320 Access Point
置を決めていきました。具体的には、半径約 30m の間隔をと
W W 側の MAC 認証によって受け入れるため、各セキュリティ りながら柱に HP ProCurve MSM320 Access Point W W を
ゾーン外部からの不正アクセスは完全にシャットアウトできま
取り付けており、建屋内における通信をほぼ全面的にカバー
す。また、無線を利用した場合、1 つのアクセスポイントに大
しています。つまり、製造ラインのいかなる変更が行われた場
量のクライアントが集中的に接続されてしまい、ネットワーク
合でも、どこからでも無線バーコードリーダーの接続をサポー
のスループットが低下するケースがあると聞きますが、そこに
トすることができます」
MAC 認証を行うことで、結果的に多数のクライアント接続を な お、 合 計 18 台 の HP ProCurve MSM320 Access Point
効率よく分散できるというメリットもあります。これなら無線
W W は 4 つのセグメントに分かれており、各建屋において 2
アクセスポイントを導入しても、まず問題はないだろうと判断
台ずつの HP ProCurve MSM320 Access Point W W が基幹
しました」と橋本氏は言う。
ネットワークにケーブル接続されている。これらに関してはネッ
トワーク工事が必要であったが、同社はネットワークケーブル
ローカルメッシュ機能により
を通じて給電を行う HP ProCurve 1 ポート・パワーインジェ
無線 LAN の通信経路を自動設定
クタを導入することで、電源工事を削減している。
こうして 2009 年 7 月、同社の本社・富士地区内にある工場の
また、今回の HP ProCurve MSM320 Access Point W W の
2 つの建屋に、無線アクセスポイント環境の第一弾として、合 導入に際して、同社が特に大きなメリットを発揮したポイント
計18 台の HP ProCurve MSM320 Access Point W W が導
として挙げているのが、ローカルメッシュ機能である。
入された。同社情報システム部の手塚智氏は、その設置状況
先に説明した WDS そのものは業界標準の機能だが、一般的
をこのように説明する。
な無線アクセスポイントの場合、ネットワーク経路を手作業で
「まず HP ProCurve MSM320 Access Point W W のスペッ
設定する必要がある。これに対して HP ProCurve MSM320
導入ハードウェア
Access Point W W のローカルメッシュ機能は、起点となる きさについて語る。
・ HP ProCurve MSM320 Access
アクセスポイントを設定するだけで、あとはアクセスポイント
Point W W
この成果を高く評価し、同社はネットワークインフラを他の建
同士が通信しあって最適な経路を自動的に確立するのである。 屋や製造拠点、さらにはオフィスのクライアント環境にまで展
同社情報システム部の米倉祐二氏は、このローカルメッシュ機
開していくにあたっても、HP ProCurve MSM シリーズのアク
能を次のように評価する。
セスポイントをベースとした無線アクセスポイント環境を優先
「導入作業において、私たちが無線アクセスポイント間の通信
的に採用していく考えだ。
経路を意識する必要はなく、短期間のうちにネットワークイン 「今後のネットワークの大規模化に対応するため、アクセスポ
フラを稼働させることができました。万一、無線アクセスポイ
イントと基幹ネットワークを接続するコントローラとして、HP
ントのいずれかが故障した場合でも、ローカルメッシュ機能に
ProCurve MSM760 Access Controller の導入も検討してい
より正常な無線アクセスポイントを探し出し、自動的に経路を
ます」と佐野氏は言う。同コントローラは、実データにコント
復旧してくれます。これによりネットワーク管理の負荷を大幅
ローラを経由させることなくアクセスポイントの集中管理を行
に軽減できるのはもちろん、ネットワークのダウンタイムを最
うのが特長で、高効率かつ高スループットなネットワーク運用
小化し、経営サイドからの課題である BCP に関しても多大な
を実現するのである。
貢献を果たせるものと考えています」
さらに、その先に見据えているのが、米国、メキシコ、韓国、
中国、フランスといった同社のグローバル拠点へのネットワー
グローバル展開を見据え
生産管理ネットワークインフラを拡大
クインフラの拡張だ。
「今回のプロジェクトで HP ProCurve MSM320 Access Point
「今回、HP ProCurve MSM320 Access Point W W を導入
W W を選んだ背景には、私たちと同じグローバル企業の製品
したことで、工事費をはじめとする初期投資を大幅に抑えるこ
だからという理由もあります。無線アクセスポイント環境の拡
とができました。同じ機能を持つネットワークインフラを従来
充はもちろん、将来的には RFID をベースとした、より高精度
どおりの Ethernet LAN で構築したと仮定した場合の見積もり
な生産管理システムや SCM(サプライチェーン管理)システム
と比較し、約 60 %のコスト削減を達成しています。さらに、 の導入も視野に入れており、HP には今後も信頼できるパート
4AA0-2067JAP
今後起こりうるライン変更や生産プロセス改革にともなうネッ
ナーとして、グローバルで一貫したサポートを期待しています」
トワークインフラのメンテナンスや追加工事などに要したであ
と浅井氏は語る。
ろう手間や時間まで勘案すれば、コスト削減のメリットはます
よりよいモノづくりで世界のモータリゼーションの未来を切り
ます拡大していくはずです」と佐野氏は、掴んだ手ごたえの大
拓くべく、同社のチャレンジは続いているのである。
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