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モバイルコミュニケーションを支える技術(2)
2014 年 9 月 IP 電 話 普 及 推 進 センタ 技術解説 第 9 回 『モバイルコミュニケーションを支 える技 術 (2)』 無 線 LAN は、電 波 を利 用 して通 信 を行 うため特 有 の 課 題 があります。 一 つは他 の電 波 との干 渉 による通 信 性 能 の劣 化 、そしてもう一 つは無 線 LAN の通 信 内 容 の盗 聴 ・不 正 アクセスです。 今 回 はこれらの課 題 を解 決 する 技 術 を紹 介 します。 電 波 干 渉 と置 局 設 計 ●無 線 LAN と電 波 干 渉 オフィス街 や住 宅 密 集 地 など 多 数 のアクセスポイントが設 置 さ れるエリアでは通 信 速 度 が著 し く低 下 するこ とがあり ます 。 速 度 低 下 の原 因 の1 つとし て、 無 線 通 信 す る 機 器 が電 波 を発 生 するため、そうした機 器 が近 くにあると 電 波 がお互 いに影 響 し合 ってしまう 「電 波 干 渉 」が考 えられます。 無 線 LAN では、「電 波 干 渉 」による通 信 速 度 への影 響 を小 さくして 複 数 の機 器 が同 時 に 通 信 で きる よ う に、 利 用 す る 周 波 数 帯 域 を 分 割 す る 方 法 を 採 用 し てい ます 。 そ の 分 割 した周 波 数 帯 域 をチャネルと呼 びます。 2.4GHz 帯 の無 線 LAN は、使 用 周 波 数 が重 なる複 数 のチャネルで同 時 に通 信 があ ることを意 識 せず 複 数 のチ ャネルが重 なり 合 う構 成 となってい ます。そのため、 近 くに存 在 するアクセスポイント が同 じチャネル、又 は重 なり合 うチャネルを使 用 すると電 波 干 渉 を起 こしてし まい ます。なお、 5GHz 帯 のチ ャネルは干 渉 が考 慮 されお り、同 じチャネ ル が重 ならなければ干 渉 はほとんど発 生 しません。 14ch 4ch 3ch 2400 2410 2420 10ch 6ch 9ch 5ch 2430 2440 6chを例に見ると、 3,4,5,7,8,9chの合計6 チャネルと使用周波数 が重複します。 11ch 7ch 2ch 1ch 12ch 8ch 2450 ※ 6chに隣接する2chと10chは一部 重複しているが実運用上は問題ない 13ch 2460 2470 2480 2490 図 1: チ ャ ネ ル 割 り 当 て ( 2.4GHz) 2500 (MHz) W52 5150~5250MHz 36 5180 40 5200 44 5220 W53 5250~5350MHz 48 5240 52 5260 56 5280 60 5300 64 (ch) 5320 (MHz) 112 5560 116 5580 120 5600 124 5620 128 5640 5GHz帯のチャネルは、 干渉を考慮してあり、 隣り合うチャネルは重 なり合わない。 W56 5470~5725MHz 100 5500 104 5520 108 5540 132 5660 136 5680 140 (ch) 5700 (MHz) 図 2: チ ャ ネ ル 割 り 当 て ( 5GHz) ●外 来 波 との共 存 2.4GHz 帯 は無 線 LAN 以 外 の機 器 でも無 線 免 許 なしに利 用 が可 能 な帯 域 であり 多 くの機 器 で利 用 さ れてい ます。 代 表 的 な機 器 とし て、 医 療 用 装 置 、 家 庭 用 コー ドレス電 話 機 、低 周 波 治 療 器 、アマチュア無 線 、電 子 レンジ 、Bluetooth などがあり、これらが発 する電 波 が、無 線 LAN に影 響 を与 える場 合 があります 。 また 5GHz 帯 は日 本 国 内 では航 空 管 制 レーダーや衛 星 通 信 、気 象 レーダーで使 用 されています。無 線 LAN はこれらに影 響 を与 えないことを条 件 に利 用 が許 可 されていま す。5GHz 帯 無 線 LAN で利 用 する周 波 数 帯 域 は図 2 に示 す通 り、W52,W 53,W 56 と 呼 ばれる 3 つの帯 域 となります。 このうち W 56 を除 き屋 外 での使 用 が禁 止 されています。 また気 象 レーダーと利 用 帯 域 が重 なっている W 53、W 56 はレーダーの電 波 を監 視 し、 干 渉 し な い チ ャ ネ ル を 選 択 す る ”DFS 1 ” や 干 渉 を 防 ぐ た め に 電 波 の 出 力 を 調 整 す る”TPC 2 ”の搭 載 が義 務 付 けられています。 2.4GHz帯 (IEEE802.11b/g/n) 5GHz帯(IEEE802.11a/n/ac) 電波特性 伝達距離が長い 回り込みやすい 伝達距離が短い 直進性が強い チャネル構成 各チャネル間の重複あり 計13チャネル (11bのみ14) 各チャネルは重複なし 計19チャネル 周波数帯共有 ISMバンド(産業/科学/医療)、 アマチュア無線 気象/航空/船舶レーダー 屋外利用 全チャネルが可能 一部チャネルのみ可能 図 3: 2.4GHz 帯 、 5GHz 帯 の 特 徴 ●置 局 設 計 企 業 内 に無 線 LAN を導 入 する際 にはアクセスポイントを設 置 します。この設 置 場 所 を決 めることを置 局 設 計 と呼 びます。 建 物 内 の障 害 物 の影 響 やアクセスポイント間 や外 来 波 の電 波 干 渉 の影 響 を考 慮 し、利 用 可 能 エリア、性 能 要 件 、運 用 条 件 を満 たすよう に、アクセスポイント の設 置 場 所 、 利 用 するチ ャネル、 電 波 出 力 の組 み合 わせを決 め る 置 局 設 計 が重 要 です。 置 局 設 計 で は 最 初 に 電 波 調 査 ( サ イト サー ベ イ) を 行 い ます 。 電 波 調 査 は、 外 来 波 1 2 Dynamic Frequency control System Transmitter Power Control (他 の無 線 LAN システムの電 波 )の調 査 やアクセスポイントの置 局 を決 定 するために必 要 な 電 波 の 特 性 、 特 にア クセ スポ イン ト を展 開 す る 社 屋 ・ フロ ア にお け る 電 波 状 況 ・ 電 波 特 性 を得 る ため に行 い ます 。こ こ で 「 見 通 し の空 間 に お け る 電 波 到 達 距 離 」 「 電 波 を 遮 断 する障 害 物 の情 報 」「社 屋 内 における 既 存 電 波 や干 渉 機 器 の情 報 」「隣 接 建 物 か らの外 来 波 」 等 の情 報 を採 取 し て、 置 局 設 計 に反 映 し ます。 置 局 設 計 の際 には、 隣 接 する AP に同 じチャネルを使 用 しない、使 用 エリアをカバーできるように AP を設 置 する、 外 来 波 を考 慮 してチャネル設 計 を行 う、人 の集 まるエリアでは電 波 出 力 を抑 えて AP を 多 く配 置 するなど の点 に留 意 し ます 。また運 用 開 始 後 も環 境 は変 化 す るため定 期 的 に 電 波 調 査 を行 い、利 用 環 境 が最 適 になるように見 直 すことも重 要 です。 フロア平面図 1 5 アクセスポイント 設置位置 電波到達 範囲 5 1 1 13 9 チャネル番号 5 13 5 1 9 13 9 1 使用エリア 人の集まる エリア 図 4: 置 局 設 計 の イ メ ー ジ 無 線 LAN のセキュリティ ●セキュリティ対 策 の必 要 性 無 線 LAN はケーブル工 事 を伴 う有 線 LAN のような制 約 に縛 られることなく利 用 する ことができ利 便 性 がありますが、 逆 に第 三 者 による 盗 聴 、 不 正 アクセ スの試 み にも気 づ き難 いというリスクがあり、十 分 なセキュリティ対 策 が必 要 です。 ●盗 聴 対 策 (通 信 の暗 号 化 ) 無 線 LAN では、アクセスポイントと端 末 の通 信 内 容 を電 波 の届 く範 囲 であれば第 三 者 から傍 受 され、通 信 内 容 を 解 析 される危 険 性 があります。電 波 を傍 受 されることを防 ぐのは建 物 の入 退 場 管 理 や建 物 からの電 波 漏 洩 を防 ぐなどの総 合 的 な 対 策 が必 要 で すが、通 信 内 容 の解 析 を防 ぐためには無 線 LAN の通 信 内 容 の暗 号 化 が有 効 です。 無 線 LAN の暗 号 化 方 式 には、図 5 のような種 類 があります。 WEP 方 式 は無 線 LAN 規 格 策 定 の初 期 からの方 式 ですが、現 在 では家 庭 用 の PC でも数 分 で解 読 できるなどセキュリティ面 の問 題 が指 摘 されています。 WEP の脆 弱 性 が指 摘 されたため IEEE は、より強 固 な無 線 LAN のセキュリティ規 格 802.11i の検 討 を行 いました。策 定 途 中 に暫 定 的 なセキュリティ強 化 方 式 として公 開 さ れたのが W PA です。W PA は W EP 対 応 の無 線 LAN 機 器 のハードウエアを交 換 するこ となくファーム ウエア、 ドライバなど のソフト ウエ アバージ ョンア ップ で対 応 できるこ とが特 徴 です。 そして 2004 年 に策 定 された 802.11i の仕 様 を実 装 したものが W PA2 です。企 業 用 途 としては W PA2 を使 用 することが現 在 一 般 的 です。 方式 説明 WEP RC4と呼ばれる暗号化アルゴリズムを使った共有鍵暗号化方式。初期の 無線LAN標準暗号化方式として採用されたが、解読手法が広く出回るな ど深刻な脆弱性が明らかとなっている。 WPA 業界団体Wi-Fi Allianceが制定したセキュリティ方式。 パケットごとに暗号鍵を変更するTKIP方式によりWEPの脆弱性を改善。 業界団体Wi-Fi Allianceが制定したセキュリティ方式。WPAとほぼ同じセ WPA2 キュリティ方式。暗号化方式に米国政府の標準暗号であるAESを採用し、 WPAに比べ安全性を高めている。 図 5: 無 線 LAN の 暗 号 化 方 式 ●不 正 アクセス対 策 (アクセス認 証 ) 第 三 者 からの不 正 アクセスを防 ぐために、無 線 LAN にはアクセス認 証 の仕 組 みが規 定 されています。 一 つはアクセスポイントと無 線 LAN 端 末 の間 にパスワードを設 定 する PSK 方 式 3 で す。こ の方 式 は追 加 の認 証 装 置 が 不 要 であり 導 入 が 容 易 で す 。 一 方 企 業 で 利 用 す る 場 合 には、アクセスポイント 毎 にパスワード設 定 する 必 要 があること、共 通 のパスワー ド を利 用 することなどから利 用 者 の特 定 が困 難 であること、パスワード漏 洩 時 にすべての アクセスポイント・ 無 線 LAN 端 末 でパスワードを変 更 する必 要 があるなど運 用 の課 題 が あります。 もう一 つの方 式 は EAP 方 式 4 (IEEE802.1X 方 式 )です。この方 式 では無 線 LAN 端 末 のアクセス認 証 はアクセ スポ イン トではなく、 認 証 サーバにて行 われます。EAP 方 式 では利 用 者 の 特 定 ができ、また認 証 はパスワードだけではなく IC カードなど電 子 証 明 書 などを用 いる厳 格 な方 法 をとることができます。 まとめ このように、通 信 速 度 とセキュリティの課 題 を解 決 する技 術 が無 線 LAN の利 用 を支 え ています。 3 4 Pre-Shared Key(事 前 共 有 鍵 ) Extensible Authentication Protocol ( 拡 張 認 証 プ ロ ト コ ル )