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美しくなるはずが…美顔エステ「ピーリング」でやけど状態に!

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美しくなるはずが…美顔エステ「ピーリング」でやけど状態に!
消費者被害注意情報(危害情報システムから) No.29
2000 年 2 月 7 日
国民生活センター
美しくなるはずが…美顔エステ「ピーリング」でやけど状態に!
美顔エステの一つとしての「ピーリング」
。以前は皮膚の老化した角質などを物理的に擦りとるもので
あったが、最近では角質などをフルーツ酸と称する酸などで溶かし、再生させる新しい美顔技術、化学的
な「ピーリング」がエステティックサロンで広まっている。その一方で、ニキビやニキビあと、しみやし
わが取れることを期待してこれらの施術を受け、逆に皮膚のトラブルを起こしたという相談も 1998 年度
から急増している。相談内容は「真っ赤に腫れ上がり、翌日水ぶくれ」
「唇が裂けてあごの回りや顔面が
ふくれてボコボコ状態」などといった深刻なものが多い。このようなことから消費者に注意を呼びかける
こととした。
「ピーリング」とは…
は
「ピーリング」は「皮を剥ぐ」という意味で、角質の除去のため種々の技術・方法が用いられている。施術
内容は 90 年代前半は主に機械やスクラブ剤入り化粧品で擦り取るものであった。95 年以降は通称「フルー
ツ酸」などの酸により角質を剥離する「ケミカルピーリング」などと称される、エステティックサロンなど
で行われている施術が増加した。
1.危害の概要
1)
「エステティックサービス」は昨年の危害情報でも第 2 位
89 年度以降に全国の消費生活センターに寄せられた「エステティックサービス」
(以下エステ)の相談
件数は全体で 63,498 件(99 年 12 月末)あり、そのうち危害情報は 3,800 件(6.0%)と多く(全相談に占め
る危害全体は 2.0%)
、例年商品別危害情報の上位を占めている。昨年度も 479 件で商品全体の中の第 2 位
であった。
「エステ」の中には「脱毛エステ」
「痩身エステ」などがあるが、
「美顔エステ」の相談件数は 20,530
件と最も多いが、危害件数でも 1,583 件(7.7%)と一番多い。
2)
「ピーリング」に関する危害が
98 年度に急増
「ピーリング」の相談件数は、97 年度
は 5 件であるが、98 年度は 35 件に急増
し、
合計 100 件ある。
(99 年 12 月末現在)
(図 1)
そのうち危害情報は 97 年度の 2 件か
ら 98 年度は 22 件に増加し、98 年以降の
2年間だけで 42 件あり、合計は 53 件で
ある。
図1「
ピー リング 」
の 年度別相 談・
危 害件 数
相談
うち危 害
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
39件
35
20
末
年
年
12
月
98
年
97
年
96
年
22
5
2
5
2
0
95
年
94
年
93
年
年
91
年
90
年
89
92
1
1
3
1
3
2
5
3
3
89 年度∼昨年度迄の全相談件数に占
める危害情報の割合はわずか 2.0%であ
る。
また、危害件数の割合が高い「美顔エ
ステ」でも相談に占める割合は 7.7%にす
ぎない。これに比べ、
「ピーリング」の
全相談 100 件中危害件数は 53 件(53%)
と高率で、6倍以上であり、非常に危害
の割合が高い技術といえる。
(図 2)
99
3)
「ピーリング」は危害の割合が高い
図 2危 害件 数 ・
割合
53件
(53.0%)
ピーリング
美顔エステ 1,583
(7.7)
0%
100
20,530
20%
40%
60%
80%
うち危 害件 数
相談件数
100%
*この情報は、全国の消費生活センターおよび協
力病院から、国民生活センター「危害情報システム」に報告された事故情報を分析したもので、消費者に被害防止のための注
意を促すことを目的に提供するものである。
1
2.「ピーリング」の危害の特徴
1) 若い女性が多い
ピーリングで危害を受けた 53 件のうちで性別がわかっている 49 件は全員が女性である。
年代がわかっている 48 件中では、
10 代が1件、
20 代が 21 件、
30 代が 18 件で 30 歳代以下が 40 件
(83%)
でニキビやニキビあとを気にしているケースが多い。40 歳代以上は 8 件(17%)である。
2)契約金額
体験コース、お試し価格、モニター料金などでエステ技術を受けているが、契約金額は 1,000 円∼134
万円と開きが大きく、平均金額は約 23 万円である。
3)危害内容は「皮膚障害」や「やけど」が多い
危害を受けた部位がわかる 51 件中、
「顔面」47 件、
「眼」1 件、
「その他」3 件であった。
危害内容は、
「皮膚障害」が 46 件で圧倒的に多く、
「やけど」4 件、その他である。
「顔面」の危害は「全面」が「赤くなる」
「腫れる」などの「皮膚障害」
「やけど」の場合と、
「一部」
にかさぶたができたりしみなどができるケースとがある。顔が痛み、赤くなったり、しみになったり、
傷あとのようになったなど、中には後遺症が心配なケースもある。
「眼」の危害は「使用溶液が眼に入り、両目角膜びらん」である。
4)治療期間が長く、傷あとが心配なケースも
医師の治療を受けたのは 28 件であり、不明の 7 件を除いた 46 件中の 6 割が医者にかかっている。
治療期間は 1 ヵ月以上が 6 件(21%)
、1週間∼1 ヵ月未満が 10 件(36%)であり、半数以上が 1 週間
以上の治療を要している。
(図 3)
図 3 治 療期 間
1ヵ月 以上
3週間∼ 1ヵ月
3
6件
0%
10%
1∼ 2週間
20%
1週間未 満
7
30%
40%
12
50%
60%
70%
80%
90%
100%
5)施術内容の説明は「皮膚をめくる」
「酸で焼く」
「皮がむける程度」
相談者は「しみを取りたい」
「しわを取りたい」
「ニキビあとをとりたい」ということで「美顔エス
テ」などで「ピーリング」を受けているが、エステ前に説明を受けた施術内容は、
「皮膚をめくる」
「酸
で焼く」
「皮がむける程度」などである。
しかし、実際の施術後には、
「施術直後に顔がピリピリし、夜真っ赤に腫れ上がり、翌日水ぶくれに
なった」
「あご部分だけやけど状態」
「施術直後より肌が赤みを帯び、顔中傷あとのようになった」
「か
さぶたができそのあとがシミになった」
「唇が裂けてあごの回りや顔面がふくれてボコボコ状態になっ
た」などである。
6)使用物質の「酸類」は濃度や接触時間により皮膚腐食性があるので化学やけどの危険性が高い
「ピーリング」の危害件数が急増している 98 年度以降で 42 件あり、このうち「ピーリング」施術に「酸」
「フルーツ酸」
「植物の酸」
「薬品」
「フルーツ酸の薬」が使用されたと申し出ている事例は 16 件ある。
使用物質に多い「フルーツ酸」は通称で、エステ業者のパンフレット等を調査したところ「AHA・
アルファヒドロキシ酸」
「グリコール酸」
「りんご酸」
「乳酸」などの説明がある。酸単独の使用の場合と
酸を塗布した上で低周波や吸引を行う施術とがある。
「りんご酸」
「乳酸」
「グリコール酸」などは果物、ヨーグルトなどの一般食品にも含まれ安全性が高い
印象を受けるが、濃度によっては皮膚刺激性もある。
「グリコール酸(ヒドロキシ酢酸)
」などの酸類は濃度や塗布時間によっては皮膚腐食性があり、この
作用を利用して顔の皮膚を剥いでいく「ピーリング」に使用されている。
皮膚腐食性のある物質は、慎重に使用しないと化学やけどをおこしてしまうので、
「ピーリング」に際
しては、高度の技術と細心の注意が必要である。
(注 1)
2
相談者が受傷した皮膚障害の「ヒリヒリする」
「水ぶくれ」
「皮がめくれる」
「真っ赤に腫れあがる」等
は化学物質によるやけどの症状と推察され、また眼や唇などの障害も化学やけどと推察される。
(注 1) 酸類の性質と有害性等
「ピーリング」で使用されている酸類の中では作用が弱めの乳酸でも高濃度(40%以上)での性質は『強酸で、水の存在
下でいろいろの金属を腐食する性質がある。人に対する毒性は目、皮膚、気道に対して腐食性がある。目や皮膚についた場
合は、応急処置として大量の水で洗い流す。
』
(
「13398の化学商品」 化学工業日報社)
3.主な事例
1)酸などを塗る
①植物の酸を使って顔の皮を 1 枚ずつ剥いでいく方法で、1 回目はお試しで無料だった。次に有料の施術
を受けたところ、唇が裂けて、あごの回りや顔面がふくれてボコボコの状態になった。解約を何度も申
し出たが、エステ業者と提携している美容整形外科の診察を受けなければ対応できないと取り合ってく
れない。
(98 年 23 歳)
②ニキビのあとが気になると話すと、皮がむける程度で化粧ののりが良くなると言われ契約した。ケミカ
ルピーリングで3回目の施術中に痛みを訴えたが、続けても大丈夫ということで最後まで続けた。施術
後に洗顔した途端、痛みがあり、腫れて出血した。医師に顔面びらんと診断された。
(99 年 28 歳)
③6 ヵ月前「酸で焼く」というケミカルピーリングの施術を受けた。2 回目の施術の時にあごの部分だけや
けど状態になった。動転し、苦情を言うと「6 ヵ月通ってもらえれば治す」と言われ、美白の施術を受け
た。まだ、薄くしみが残っている。しみが取れるまで、治して欲しい。
(99 年 年齢不明)
④2 ヵ月前にピーリングの施術の契約をした、すでに 3 回は薬品を使用し、施術を受けたが異常はなかっ
た。しかし、4 回目の施術中に刺激を覚えて申し出たが、
「あと数分で終わるので、我慢できたらして欲
しい」と言うので、我慢していたらやけどをしていた。すぐ病院へ行きだいぶ良くなったが、かさぶた
が両頬にできている。
(99 年 36 歳)
⑤エステに行きケミカルピーリングで何度か薬品を塗って施術を受けたが、顔が赤くなり吹き出物がたく
さん出てきた。皮膚科に行き、治療を受けている。
(98 年 24 歳)
2)酸を塗り、低周波、吸引など併用
⑥タウン誌を見てニキビを治したいと思い店に行き、肌の角質と表皮をマッサージするピーリングをした。
ニキビが治らなく 2 ヵ月後に強い力で肌を吸引するマイクロピーリングを受けた。直後より肌が赤みを
帯び顔中傷あとのようになった。
(99 年 25 歳)
⑦しみ取りのためエステを受けた。業者は十分な説明もせずピーリングをし、電気吸引を受け、肌が赤く
なった。赤い所はかさぶたになり、その後きれいになると説明されたが、赤褐色のしみになった。医師
の診断では炎症による色素沈着で完治には 6 ヵ月必要とのことだった。業者に苦情を伝えたら、あなた
の肌が弱い、3 ヵ月すればきれいになると言われたが不安。
(99 年 36 歳)
4.
「ピーリング」の問題点など(専門医の見解)
1)主な「ピーリング」と問題点
皮膚の角質(主に老化角質)を除去する技法の総称を、
「ピーリング」と称している。このうち一部の酸
による化学的な角質溶解の技法を「ケミカルピーリング」と称し作用の深さで分類する。
原理は、化学物質により皮膚の表層部のこじわやクスミなども除去し、健常な皮膚にかえ、さらにコラ
ーゲンおよび真皮基質成分の産成を促進し、メラニン産成を抑制することである。
角質溶解物質は、刺激の強さや目に入った場合の危険性があるが、エステサロンや一部の美顔クリニッ
クで使用されている製品や原料(注 2)は、その基準を確認することができないのが現状である。
(注 2)主なピーリング使用薬剤
①AHA(アルファヒドロキシ酸)ピーリング
AHAに属する酸(グリコール酸、乳酸、リンゴ酸)の溶液を皮膚に塗る。
AHA濃度に関し日本には規定がない。米国のケミカルピール剤使用基準はAHA濃度を、化粧 品は10%未満 pH
3.5 以上、訓練された技術者(エステなど)は 30%未満 pH 3.0 以上、医師は 30%以上 pH 3.0 以下(米国化粧品業界
団体・化粧品成分調査委員会 CIRB 報告)としている。
②TCA(トリクロル酢酸)ピーリング、フェノールピーリング等は美容外科で行われる。
2)留意点
①日本人は欧米人に比べて、皮膚が敏感なので米国のAHA使用基準を適用すると作用が強すぎる場合
が考えられる。
②ケミカルピーリングは酸の種類や濃度、塗布時間によっては有害作用(注 3)があり、肌に傷などのトラ
3
ブルがある時は避ける(注 4)。
③肌に付けた時にヒリつきや発赤を生じるような高い濃度は避けるべきである。
肌の弱い人は、その施術を受ける前に試用を希望する。
:①表皮再生遅延、②紅斑の残存、③色素沈着、④瘢痕形成、
(注 3)有害作用(オーバートリートメント・やりすぎ)
⑤単純ヘルペス、⑥日焼け(光線感受性亢進による)
、
(注 4)ケミカルピーリングの禁忌:①皮膚炎、②単純ヘルペス、③結膜炎、鼻炎、④皮膚の傷(剃毛、除毛、脱毛)
⑤ステロイド使用(内服、外用)
(東邦大学医学部 皮膚科助教授 漆畑 修)
5.消費者へのアドバイス
「ピーリング」でフルーツ酸を塗るのは、レモンやきゅうりで行う野菜や果物のパックとは異なる。
フルーツなどのパックでも注意は必要だが、
「ピーリング」
の施術は高濃度のフルーツ酸と通称されているグ
リコール酸等の皮膚腐食性を利用して皮を剥ぐので、痛みを伴うことがありその後の手当ても大切である。
顔に傷や炎症がある、皮膚炎、単純ヘルペス、結膜炎、鼻炎、皮膚の傷(剃毛、除毛、脱毛)
、ステロイド使
用中などの人は「ピーリング」を受けない。
1)
「ピーリング」を受けようとする前に
①痛みを伴う皮膚障害ややけどの可能性があるので、施術が必要かどうか慎重に検討する。
施術部位の確認と他の部位の保護方法の確認をする。
②皮を剥ぐのに要する回数や剥いだ後にクリームや管理のために思わぬ費用がかかることもあるので、事
前によく内容や費用や施術責任者を確認する。
③契約する前に、施術内容については、施術期間、施術回数、使用溶液、効果の程度や有害作用、費用等
の他、有害作用があった場合の治療費用の負担、解約等に関して説明を受け、書面で確認の上契約する。
契約書は必ず保管する。
④もし、受ける場合には専門医の留意点を参考にし、異常を感じたらすぐ中止を申し出る。
2)施術後の管理
①異常があったら、写真を撮り、医師の診断を受ける。
②ピーリング後は、施術者に肌の状況の説明を受け注意事項を確認する。
③施術後の肌の状態によっては、日焼けを避ける、細菌汚染を避けるなどの管理を徹底する。
3)その他
こうしたトラブルにあったら消費生活センターや警察へ相談すること。
6.業界への要望
①「ピーリング」は「美顔エステ」の中でも非常に危害件数の割合が高い。施術内容の検討を行なうなど
安全性を確保すること。
②事前に、消費者に対し施術内容や費用や施術責任者などの説明をすること。
③契約する前に消費者に対し、施術内容(施術期間、施術回数、使用溶液、効果の程度や有害作用、費用
等)の他、有害作用があった場合の治療費用の負担、解約等に関して説明を行い、書面で確認の上契約
すること。
④消費者から異常の申し出があれば、施術の中止や解約などに応じるなど適切な処置の検討を望む。
7.行政への要望
危害防止対策として、業界が「ピーリング」施術で使用している溶液の実態調査と施術内容の安全性
の確認などの検討を望みたい。
(本件問い合わせ先
国民生活センター消費者情報部 ℡ 03−3443−1793)
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