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空き家問題の現状と対策

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空き家問題の現状と対策
市会ジャーナル
第
147 号
平成 27 年度 Vol.7
<政策調査レポート>
空き家問題の現状と対策
空き家の現状
(左上写真:島根県浜田市)
(右上写真:横須賀市(P52 参照)
)
(左下写真:長崎市(P54 参照))
(右下写真:秋田県横手市)
住宅・土地統計調査、空家実態調査等の資料
国の対策
空家等対策の推進に関する特別措置法
横浜市の対策
横浜市空家等対策計画素案、横浜市の空き家の傾向
他都市の対策
<インタビュー>
世田谷区役所住宅課、一般財団法人世田谷トラストまちづくり
~法制面での課題、空き家所有者と活用者のマッチングにおいて重要なこと等~
横浜市会議会局 政策調査課
空き家問題の現状と対策
1部 空き家の現状
第
…1
1 空き家の定義 …… 1
2 住宅及び世帯の総数、空き家数等の推移 …… 2
(1)総住宅数と総世帯数 … 2
(2)空き家数及び空き家率の推移、空き家の内訳 … 4
3 空き家増加の背景と管理状況・今後の利⽤意向等 …… 6
4 活用可能なその他空き家数の推計 …… 11
2部 国の空き家対策
第
… 12
1 地方創生における空き家施策の位置付け …… 12
(1)
「まち・ひと・しごと創生総合戦略」における空き家対策 … 12
(2)
「まち・ひと・しごと創生基本方針 2015」における空き家対策 … 13
参考 「
『生涯活躍のまち』構想(最終報告)
」における空き家の活用 … 13
(3)地方創生における国土交通省の空き家対策の方針 … 14
2 空家等対策の推進に関する特別措置法 …… 15
(1)空家等対策の推進に関する特別措置法の概要 … 15
(2)空家等対策計画に関する事項… 16
(3)「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイド
ライン) … 16
(4)国土交通省税制改正の空き家関連部分(平成 27 年度、28 年度)… 20
3 国の支援施策 …… 22
(1)空き家再生等推進事業【利活用】【除却】 … 22
(2)空き家管理等基盤強化推進事業【利活用】【除却】 … 25
第2部コラム ●神奈川県の空き家施策について … 26
3部 横浜市の空き家対策
第
… 27
1 横浜市の空き家の傾向 …… 27
(1)その他の住宅、一戸建の空き家の状況 … 27
(2)平成 25 年度 西区及び旭区の一部地域における空き家空き地調査結果の概要
… 29
(3)横浜市への空き家に関する相談状況 … 31
2 横浜市空家等対策計画素案 …… 33
(1)素案における空家等対策の取組方針 … 33
参考 横浜市空家等対策協議会 開催実績 … 35
(2)特定空家等の判断基準(案) … 35
3 専門家団体との連携協定 …… 36
参考 横浜市シルバー人材センターとの「空家等の適正な管理の推進に関する協定」の
締結 … 37
第3部コラム ●空家の適正管理に向けた啓発 … 38
4部 各都市等の空き家対策
第
… 40
1 政令市、中核市、特別区の空き家管理条例制定状況等 …… 40
2 空き家の利活用・除却事例 …… 44
(1)空き家バンク(金沢市)【利活用】… 44
(2)リバースモーゲージローンの空き家対策への活用(土浦市・常陽銀行)【利活用】
… 46
(3)空き家を活用した地域交流拠点づくり(東京都世田谷区)【利活用】… 48
インタビュー
「空き家等地域貢献活用モデル事業」実施に当たって(世田谷区役所住宅課、
一般財団法人世田谷トラストまちづくり)… 49
空き家活用にあたっての法制面での課題や、所有者・活用者のマッチングに重要なこと、空き家を
市民活動拠点として活用する利点や、全国に対して今後の空き家活用において期待すること等につい
てインタビューをさせていただきました。
(4) 相鉄の空き家・空き地あんしんサービス(相鉄不動産販売株式会社)【その他】
… 51
(5) 特措法に基づく行政代執行の実施(横須賀市)【除却】… 52
(6) 土地の寄附等による除却推進(長崎市)【除却】… 54
[ 参考資料
…56]
第1部 空き家の現状
第1部
空き家の現状
第1部では、住宅に関する調査を基に、「空き家の現状」を御紹介します。
1
空き家の定義
総務省の「平成 25 年住宅・土地統計調査」では、
「住宅」を「一戸建の住宅やアパ
ートのように完全に区画された建物の一部で、一つの世帯が独立して家庭生活を営む
ことができるように建築又は改造されたもの」とした上で「空き家」を、「二次的住
宅」、
「賃貸用の住宅」、
「売却用の住宅」、
「その他の住宅」の4類型に分けて定義して
います。
二次的住宅
別 荘:週末や休暇時に避暑・避寒・保養などの目的で使用される住宅で、ふ
だんは人が住んでいない住宅
その他:ふだん住んでいる住宅とは別に、残業で遅くなったときに寝泊まりす
るなど、たまに寝泊まりしている人がいる住宅
賃貸用の住宅:新築・中古を問わず、賃貸のために空き家になっている住宅
売却用の住宅:新築・中古を問わず、売却のために空き家になっている住宅
その他の住宅:上記以外の人が住んでいない住宅で、例えば、転勤・入院などの
ため居住世帯が長期にわたって不在の住宅や建て替えなどのため
に取り壊すことになっている住宅など
【出典】総務省「平成 25 年住宅・土地統計調査」調査の結果(用語の解説)
http://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2013/tyousake.htm
1
1 空き家の定義 2 住宅及び世帯の総数、空き家数等の推移 (1) 総住宅数と総世帯数
2
住宅及び世帯の総数、空き家数等の推移
(1)総住宅数と総世帯数
国の状況
平成 25 年 10 月1日現在における我が国の総住宅数は 6,063 万戸、総世帯数は 5,245
万世帯となっています。平成 20 年からの増加数をみると、それぞれ 304 万戸、248
万世帯、増加率は 5.3%、5.0%となっています。平成 10 年からの 15 年間では、総住
宅数は 1,000 万戸以上、総世帯数は 800 万世帯以上増加しています。
昭和 38 年以前には総世帯数が総住宅数を上回っていましたが、43 年に逆転し、そ
の後も総住宅数は総世帯数の増加を上回っています。その結果、平成 25 年には総住
宅数が総世帯数を 818 万上回って、1世帯当たりの住宅数は 1.16 戸となっています。
総住宅数及び総世帯数の推移‐全国
(昭和63年~平成25年)
(万戸・万世帯)
(戸)
7,000
6,000
1.13
1.11
1.14
1.15
1.16
1.15
1.11
5,000
4,000
3,000
2,000
4,201
3,781
4,588
4,116
5,389
5,025
4,726
4,436
5,759
4,997
6,063
5,245
1.10
総住宅数
1.05
総世帯数
1.00
0.95
1,000
0
1世帯当
たりの住
宅数
0.90
昭和63年
平成5年
平成10年
平成15年
平成20年
平成25年
※執筆者により図を一部加工
【出典】総務省「平成 25 年住宅・土地統計調査(確報集計)」結果の概要
http://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2013/10_3.htm
≪用語の解説≫
総世帯数:住宅・土地統計調査で調査されたもので、住宅に居住している世帯(主世帯、
同居世帯)と、住宅以外の建物に居住している世帯の数を全て足したもの。
主世帯、同居世帯:1住宅に1世帯が住んでいる場合はその世帯を「主世帯」とし、1住
宅に2世帯以上住んでいる場合には、そのうちの主な世帯(家の持ち主
や借り主の世帯など)を「主世帯」とし、他の世帯を「同居世帯」とし
た。
なお、単身者が友人と共同でアパートの1室を借りて住んでいる場合
など、1住宅に二人以上の単身者が住んでいる場合は、便宜、そのうち
の一人を「主世帯」とし、他の人は一人一人を「同居世帯」とした。
2
第1部 空き家の現状
住宅以外の建物に居住している世帯:次の建物に居住している世帯をいう。
①会社・官公庁・団体の独身寮などのように、生計を共にしない単身の従業員を泊め
て居住させる「会社等の寮・寄宿舎」
②学校の寄宿舎などのように、生計を共にしない単身の学生・生徒をまとめて居住さ
せる「学校等の寮・寄宿舎」
③旅館や宿泊所・保養所などのように、旅行者など一時滞在者の宿泊のための「旅館・
宿泊所」
④下宿屋、社会施設・病院・工場・作業場・事務所などや建設従業者宿舎のように臨
時応急的に建てられた建物で、住宅に改造されていない「その他の建物」
なお、この調査で、
「人が居住している」、
「居住している世帯」などという場合の「居
住している」とは、ふだん住んでいるということで、調査日現在当該住居に既に3か
月以上にわたって住んでいるか、あるいは調査日の前後を通じて3か月以上にわたっ
て住むことになっている場合をいう。
【出典】総務省「平成 25 年住宅・土地統計調査」調査の結果(用語の解説)
http://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2013/tyousake.htm
横浜市の状況
平成 25 年 10 月1日現在における横浜市の総住宅数は 176 万5千戸、総世帯数は 161
万8千世帯となっています。
平成5年以前には総世帯数が総住宅数を上回っていましたが、平成 10 年に逆転し、
その後も総住宅数は総世帯数を上回っています。その結果、平成 25 年には総住宅数
が総世帯数を 14 万7千上回って、1世帯当たりの住宅数は 1.09 戸となっています。
全国平均(1.16 戸)に比べると、1世帯当たりの住宅数は小さい数値にとどまっ
ているものの、今後、住宅余りの傾向が強まる可能性がありそうです。
(千戸・千世帯)
2,400
2,200
2,000
1,800
1,600
1,400
1,200
1,000
800
600
400
200
0
総住宅数及び総世帯数の推移‐横浜市
(昭和63年~平成25年)
(戸)
1.10
1.08
1.07
1.09
1.06
1.05
1.03
1.04
1.02
1.00
1.00
0.98
0.98
1,765
1,618 0.96
1,661
1,557
1,5371,461
0.94
1,373
1,327
1,231
0.92
1,097
1,235
1,115
0.90
0.88
0.86
昭和63年 平成5年 平成10年 平成15年 平成20年 平成25年
総住宅数
総世帯数
1世帯当
たりの住
宅数
※横浜市統計ポータルサイト掲載データより執筆者作成
【出典】横浜市統計ポータルサイト 平成 25 年住宅・土地統計調査 1 住宅の行政区別概況
http://www.city.yokohama.lg.jp/ex/stat/census/jutakutochi1310/1.pdf
横浜市統計ポータルサイト 過去の人口ニュースデータ
http://www.city.yokohama.lg.jp/ex/stat/jinko/mokuji.html
3
2 住宅及び世帯の総数、空き家数等の推移 (1) 総住宅数と総世帯数 (2) 空き家数及び空き家率の推移、空き家の内訳
(2)空き家数及び空き家率の推移、空き家の内訳
国の状況
空き家についてその推移をみると、昭和 33 年には 36 万戸となっていましたが、そ
の後一貫して増加を続け、平成 25 年には 820 万戸となっています。また、空き家率
(総住宅数に占める空き家の割合)は、平成 10 年に初めて1割を超えて 11.5%とな
り、平成 25 年には 13.5%と、20 年に比べ 0.4 ポイント上昇し、過去最高となってい
ます。
空き家の内訳をみると、「賃貸用の住宅」が 429 万戸、「売却用の住宅」が 31 万戸
で、それぞれ空き家全体の 52.4%、3.8%となっており、供給可能な住宅が6割弱を
占めています。
(318 万戸)
(318 万戸)
(429 万戸)
(429 万戸)
(31 万戸)
(31 万戸)
※執筆者により図を一部加工
【出典】総務省「平成 25 年住宅・土地統計調査(確報集計)」結果の概要
横浜市の状況
http://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2013/10_3.htm
4
第1部 空き家の現状
空き家についてその推移をみると、昭和 53 年には5万6千戸でしたが、その後は
増加し続け、平成 25 年には 17 万8千戸と、昭和 53 年の3倍以上となっています。
また、空き家率は、平成 10 年に初めて 10%に達し、その後も同水準で推移していま
す。このように、空き家数、空き家率ともに国と同様、増加傾向にあります。
空き家の内訳をみると、「賃貸用の住宅」が 112 千戸、「売却用の住宅」が 10 千戸
で、それぞれ空き家全体の 63.1%、5.9%を占めており、供給可能な住宅の割合が国
の数値を超える7割弱となっています。
空き家数及び空き家率の推移-横浜市(昭和 53 年~平成 25 年)
(千戸)
200
12
180
10.0
160
6.5
7.1
149
60
56
68
74
10
8
80
20
10.1
6.8
100
40
9.7
8.4
140
120
9.7
(%)
104
160
178
137
6
空き家数
4
空き家率
2
0
0
昭和53年 昭和58年 昭和63年 平成5年 平成10年 平成15年 平成20年 平成25年
空き家の内訳-横浜市(平成 25 年)
(%)
(53 千戸)
その他の住宅
29.5
(112 千戸)
賃貸用の住宅
63.1
二次的住宅
1.5
売却用の住宅
5.9
賃貸用の住宅
売却用の住宅
二次的住宅
その他の住宅
(10 千戸)
※横浜市統計ポータルサイト掲載データより執筆者作成
【出典】横浜市統計ポータルサイト 「平成 25 年住宅・土地統計調査」(1 住宅の行政区別概況)
http://www.city.yokohama.lg.jp/ex/stat/census/jutakutochi1310/1.pdf
5
2 (2) 空き家数及び空き家率の推移、空き家の内訳 3 空き家増加の背景と管理状況・今後の利用意向等
3
空き家増加の背景と管理状況・今後の利用意向等
国土交通省の「空家実態調査」は、「近年、戸建て住宅を中心に、空き家の管理不
全による地域の防災性・防犯性の低下や居住環境の悪化などの空き家問題が全国的に
社会問題化していることに鑑み、全国の戸建て住宅の空き家等について実態を把握し、
空き家に関する基本的施策の検討及び空き家対策に関する指標の設定等に資する基
礎資料を得ること」を目的としています。
ここでは、既に結果が公表された直近の調査である「平成 26 年 空家実態調査」の
データから、「空き家増加の背景」、「空き家の管理状況・今後の利用意向」に着眼し
て見ていきます。
≪平成 26 年
空家実態調査(国土交通省)≫
調査の対象
本調査は、平成 25 年住宅・土地統計調査(平成 25 年 10 月 1 日現在)の調査対象住
宅のうち、戸建て空き家から無作為に抽出したものの所有者を対象としました。
調査の方法
抽出された戸建て空き家について、登記簿謄本により所有者等を特定したうえで、
郵送により調査票を配布し、郵送による調査票の回収及びコールセンターによる回答
の受付を行いました。
調査の時期
回答時(平成 26 年 11 月~平成 27 年 2 月)を調査時点として実施しました。
【出典】国土交通省 「平成 26 年 空家実態調査」
http://www.mlit.go.jp/report/press/house02_hh_000088.html
着眼点1:空き家増加の背景は?
空き家等の所有者の年齢
下記のグラフは、
「戸建て空き家等の所有者」の年齢と、
「居住世帯ありの持ち家の戸
建て住宅の、家計を主に支える者」の年齢を比較したものです。前者については、「65
~74 歳」が 29.7%となっており、「75 歳以上」の 25.9%と合わせて、高齢者(65 歳以
上)が 55.6%を占めています。
後者においては、高齢者(65歳以上)の占める割合は44.5%であり、前者の方が10ポ
イント以上高くなっています。
【出典】国土交通省 平成 26 年度空家実態調査 集計結果報告書
http://www.mlit.go.jp/report/press/house02_hh_000088.html
6
第1部 空き家の現状
人が住まなくなった理由
人が住まなくなった理由については、最後に住んでいた人が「死亡した」が 35.2%と
最も多く、次いで「別の住宅へ転居した」が 27.9%、
「老人ホーム等の施設に入居した」
が 14.0%となっています。
n=1,700
【出典】国土交通省 平成 26 年度空家実態調査 集計結果報告書
http://www.mlit.go.jp/report/press/house02_hh_000088.html
≪考察≫
以上の2つのグラフから、空き家の所有者は高齢者が多く、また、人が住まなくな
った理由としては、住人の死亡や、老人ホーム等の施設に入居したといった、ライフ
ステージの変化が多いことが明らかになりました。
これらのことから、高齢化が空き家増加の背景にあることが伺えます。
平成 26 年版高齢社会白書(内閣府)では、「総人口が減少する中で高齢者が増加す
ることにより高齢化率は上昇を続け、平成 47(2035)年に 33.4%で3人に1人となる
と示しています。平成 54(2042)年以降は高齢者人口が減少に転じても高齢化率は上
昇を続け、平成 72(2060)年には 39.9%に達して、国民の約 2.5 人に 1 人が 65 歳以
上の高齢者となる社会が到来すると推計」されています。
このことから、我が国では将来、空き家問題がますます深刻化することが予測され
ます。
7
3 空き家増加の背景と管理状況・今後の利用意向等
着眼点2:空き家の管理状況・今後の利用意向は?
空き家の管理の頻度(腐朽・破損の有無別)
空き家の管理の頻度を、空き家の腐朽・破損の有無別にみると、本来、特に維持・管
理が重要なはずの「腐朽・破損あり」の空き家において、「年に 1 回~数回」以下しか
管理していない割合が大きく、34.4%(27.6+0.9+5.9)となっています。
①
②
③
※執筆者により図を一部加工
【出典】国土交通省 平成 26 年度空家実態調査 集計結果報告書
http://www.mlit.go.jp/report/press/house02_hh_000088.html
管理をする上での障害・課題
管理をする上での障害・課題については、「管理の作業が大変」が 26.3%、「住宅を
利用する予定がないので管理が無駄になる」が 23.6%、
「遠方に住んでいるので管理が
困難」が 21.4%などとなっています。なお、
「障害や課題はない」の割合は 28.1%とな
っていますが、この回答をした人の中には、上記調査(「空き家の管理の頻度(腐朽・
破損の有無別)」)で「腐朽・破損あり」と回答した人も含まれている可能性があります。
(n=2,140、複数回答)
【出典】国土交通省 平成 26 年度空家実態調査 集計結果報告書
http://www.mlit.go.jp/report/press/house02_hh_000088.html
※調査対象は、上記の「空き家の管理の頻度(腐朽・破損の有無別)」のグラフと同一
8
第1部 空き家の現状
今後5年程度のうちの利用意向
今後5年程度のうちの利用意向については、
「 所有者やその親族が利用する」が 22.9%、
「所有者やその親族以外が利用する」が 1.4%、「賃貸する」が 6.1%、「売却する」が
8.8%となっています。また、「空き家にしておく」が 21.5%、「取り壊す」が 11.2%な
どとなっています。
(n=2,140)
【出典】国土交通省 平成 26 年度空家実態調査 集計結果報告書
http://www.mlit.go.jp/report/press/house02_hh_000088.html
※調査対象は、p.8の「空き家の管理の頻度(腐朽・破損の有無別)」、
「管理をする上での障害・課題」
のグラフと同一
空き家にしておく理由
今後の利用意向を、「空き家にしておく」としたものについて、その理由を聞いたと
ころ、「物置として必要だから」が 44.9%と最も多く、次いで
「解体費用をかけたくないから」が 39.9%、「特に困っていないから」が 37.7%、「将
来、自分や親族が使うかもしれないから」が 36.4%の順になっています。
(n=461、複数回答)
【出典】国土交通省 平成 26 年度空家実態調査 集計結果報告書
http://www.mlit.go.jp/report/press/house02_hh_000088.html
9
3 空き家増加の背景と管理状況・今後の利用意向等
p.1の「空き家の定義」で示した「その他の住宅」は、管理が不十分なまま放置され
やすく、風景・景観の悪化、防災や防犯機能の低下等の様々な問題を引き起こしている
とされています。
そして、特に著しい問題を引き起こし得る空き家は、「空家等対策の推進に関する特
別措置法」(p.15 参照)で「特定空家等」と定義され、早急な対策が必要とされていま
す。
「特定空家等」とは、次の①~④の状態にある空家等をいうと定義されています。
(法第2条第2項)
① 倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
② 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
③ 適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態
④ その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
参考:空家等対策の推進に関する特別措置法(概要)
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000035.html
10
第1部 空き家の現状
4
4 活用可能なその他空き家数の推計
活用可能なその他空き家数の推計
国土交通省は、平成 27 年 10 月 26 日の社会資本整備審議会住宅宅地分科会にて、
活用可能な空き家数の推計をまとめました。
≪推計結果(平成 25 年時点)≫
「賃貸や売却用等を除く空き家 約 320 万戸」の中で、
「耐震性があり、破損等のない空き家を約 103 万個と推計」
「このうち、駅から1km 以内にあり、
簡易な手入れで活用可能なその他空き家 約 48 万戸と推計」
出典:住宅・土地統計調査(総務省)、空家実態調査(国土交通省)
※建築時期が不詳であるものについては按分して加算している。
※空き家の建築時期は、空家実態調査に基づき推計している。
※建築時期が昭和 55 年以前の「耐震性なし」とされているストック数については、国交省推計による建て
方別の耐震割合をもとに算定を行った。
【出典】国土交通省 社会資本整備審議会住宅宅地分科会(第 42 回) 資料3
http://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/house02_sg_000113.html
11
第2部
国の空き家対策
第2部では、
「まち・ひと・しごと創生総合戦略」での空き家対策の位置付け、
「空家等対策の
推進に関する特別措置法」の内容、国の具体的な支援施策等を御紹介します。
空き家対策は、法整備に先行して市町村が条例を制定(※)する等、具体的な施策を進
めていました(※平成 27 年4月1日時点で、全国 1,718 市町村のうち 431 市町村で条例が施行)。
国は、平成 26 年 11 月に、「空家等対策の推進に関する特別措置法」(以下本文で使用す
る場合は「特措法」という)を公布し、同年 12 月には「まち・ひと・しごと創生総合戦略」
でも、空き家対策の推進を定めました(平成 27 年 12 月 24 日に改定)。
1
地方創生における空き家施策の位置付け
(1)「まち・ひと・しごと創生総合戦略」における空き家対策
「まち・ひと・しごと創生総合戦略」とは、人口急減・超高齢化という我が国が直面
する課題に対し政府一体となって取り組み、各地域の特徴を活かした自律的で持続的な
社会を創生するための目標等を定めたものです。
その中で、基本目標の1つとして、
「時代に合った地域をつくり、安心なくらしを守る
とともに、地域と地域を連携する」が掲げられています。これに基づく施策として、
「人
口減少を踏まえた既存ストックのマネジメント強化」があり、この中で空き家対策の推
進を行っていくとしています。
<空き家対策の推進についての短期・中長期の工程>
2015 年度まで
○ 空家等対策の推進に関する特別措置
○ 次期「住生活基本計画」
(2015 年度中改
法の施行に併せて、「空家等に関する
訂予定)の内容を踏まえ、中古住宅流通
施策を総合的かつ計画的に実施する
を促進する取組を推進
ための基本的な指針」及び「「特定空
取組内容
2016 年度以降(2019 年度まで)
家等に対する措置」に関する適切な実
○ 地方公共団体が取り組む、空き家の活
用・除却についての支援
施を図るために必要な指針」を策定
○ 空き家に関するデータベースの整備、
空き家相談窓口の設置、空き家の活
用・除却等の地方公共団体が行う空き
家対策について、地方財政措置を創設
202 年 KPI
○ 中古住宅流通・リフォーム市場の規模:20 兆円(2013 年 11 兆円)
(成果目標) ○ 空き家に関する KPI は次期「住生活基本計画」において設定
【出典】まち・ひと・しごと創生本部 「まち・ひと・しごと創生総合戦略 2015
ついて 2.アクションプラン
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/info/
改訂版」の閣議決定に
12
第2部 国の空き家対策
(2)「まち・ひと・しごと創生基本方針 2015」における空き家対策
「まち・ひと・しごと創生基本方針 2015」は、
「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の
施策について、今後の対応の方向を取りまとめたものとして、平成 27 年6月 30 日に閣
議決定されました。
ここで、「空き家対策等既存住宅ストックの有効活用」について定められています。
空き家対策等既存住宅ストックの有効活用
空き家対策の推進に当たっては、空き家への住み替え、他用途への転用による利活
用、空き家の除却など、空き家の状況や地域の事情等に応じた取組を行う。また、空
き家の有効活用を図る観点から、中古住宅を市場に流通させる取組を進める。
【具体的取組】
◎空家対策特別措置法等に基づく地方公共団体への総合的な支援、中古住宅・リフ
ォ―ム市場活性化
・平成 27 年5月 26 日に全面施行された空家等対策の推進に関する特別措置法(平
成 26 年法律第 127 号)等を契機とし、住宅所有者等に対し、情報提供を行うな
どノウハウの普及と気運の醸成を図るとともに、地方公共団体が総合的な計画を
策定することを支援する。この際、売却、賃貸住宅としての活用、他用途への転
用など、リフォームを含めた空き家の積極的な利活用を図る。
・建物検査(インスペクション)や住宅性能表示、瑕疵保険の普及・定着等による
中古住宅の品質の向上・可視化、不動産関連情報の提供体制の整備等により、中
古住宅・リフォーム市場の活性化を図る。これを通じ、住宅ストックを流動化し、
ライフスタイルやライフステージに応じた住み替えを円滑化する。
【出典】まち・ひと・しごと創生本部 まち・ひと・しごと創生基本方針 2015-ローカルアベノミクスの
実現に向けて- 2.本体
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/info/
参考
「『生涯活躍のまち』構想(最終報告)」における空き家の活用
「まち・ひと・しごと創生総合戦略」に基づき、希望する高齢者が健康時から移住し、自
立した社会生活を継続的に営める「日本版CCRC」の導入が検討されており、
「まち・ひと・
しごと創生基本方針 2015」でも、平成 28 年度中には意向のある地方自治体でモデル事業を
開始するとされています。平成 27 年 12 月に「日本版CCRC構想有識者会議」にて「
『生涯
活躍のまち』構想(最終報告)
」が取りまとめられました。
この構想では、東京圏をはじめ地域の高齢者の希望に応じた地方や「まちなか」等への移
住支援が示されており、地方への広域的な移動のみならず「まちなか」への転居等も想定さ
れています。
構想実現に向けて、空き家や空き公共施設等の地域資源を活用することが目指されていま
す。
参考:まち・ひと・しごと創生本部 「生涯活躍のまち」構想(最終報告)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/meeting/ccrc/saisyu-houkoku.html
13
1 地方創生における空き家施策の位置付け (2) 基本方針2015における空き家対策 (3) 国土交通省の方針
(3)地方創生における国土交通省の空き家対策の方針
国において、空き家関連の施策は、主に国土交通省が行っています。同省では、重点
的に取り組もうとしている施策全体を俯瞰し、今後の施策の方向性を体系的に示すもの
として、「国土交通省重点政策 2015」(平成 27 年8月公表)を策定しました。
この中で、
「ストック効果の最大化を図る社会資本整備の推進」が掲げられており、既
存施設の最大限の活用、ソフト施策の徹底(賢く使う取組)を進めていくとしています。
そのための主な施策として、「空き家等の活用」について示されています。
空き家等の活用
空き家を子育て・高齢化に対応した施設等へ活用する取組への支援、空き家の所有者と移住希
望者の円滑な流通・マッチングの促進等により、空き家を含めた既存ストックの活用を促進し、
居住環境の向上や地域社会の発展を目指す。
【出典】国土交通省 国土交通省重点政策 2015 Ⅱ.国土交通政策の計画的推進 参考資料
http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/point/sosei_point_tk_000020.html
14
第2部 国の空き家対策
2
空家等対策の推進に関する特別措置法
特措法は、「適切な管理が行われていない空家等が防災、衛生、景観等の面で地域
住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしていることを受け、地域住民の生活環境を保全
し、空家等の活用を促進するため、空家等に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、
公共の福祉の増進と地域の振興に寄与することを目的に」成立しました。
法律の概要について、国土交通省の資料から抜粋して御紹介します。
(1)空家等対策の推進に関する特別措置法の概要
国による基本指針の策定・市町村による計画の策定等
○ 国土交通大臣及び総務大臣は、空家等に関する施策の基本指針を策定(5条)
○ 市町村は、国の基本指針に即した、空家等対策計画を策定(6条)・協議会を
設置(7条)
○ 都道府県は、市町村に対して技術的な助言、市町村相互間の連絡調整等必要
な援助(8条)
空家等についての情報収集
○ 市町村長は、
・ 法律で規定する限度において、空家等への調査(9条)
・ 空家等の所有者等を把握するために固定資産税情報の内部利用(10 条)等
が可能
○ 市町村は、空家等に関するデータベースの整備等を行うよう努力(11 条)
空家等及びその跡地の活用
市町村による空家等及びその跡地に関する情報の提供その他これらの活用のた
めの対策の実施(13 条)
特定空家等に対する措置
特定空家等に対しては、除却、修繕、立木竹の伐採等の措置の助言又は指導、勧
告、命令が可能。さらに、要件が明確化された行政代執行の方法により強制執行が
可能。(14 条)
財政上の措置及び税制上の措置等
市町村が行う空家等対策の円滑な実施のために、国及び地方公共団体による空家
等に関する施策の実施に要する費用に対する補助、地方交付税制度の拡充を行う
(15 条1項)。
このほか、今後必要な税制上の措置等を行う(15 条2項)。
【出典】国土交通省 空家等対策の推進に関する法律(概要)
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000035.html
15
2 空家等対策の推進に関する特別措置法 (1) 概要 (2) 空家等対策計画に関する事項 (3) ガイドライン
(2)空家等対策計画に関する事項
平成 27 年2月 26 日、特措法が一部施行され、同法第5条第1項に基づき、
「空家等に
関する施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的な指針」が定められました。こ
の中で、市町村の作成する「空家等対策計画」に関する事項について示されています。
空家等対策計画に関する事項
1 効果的な空家等対策計画の作成の推進
2 空家等対策計画に定める事項
(1)空家等に関する対策の対象とする地区及び対象とする空家等の種類その他の空家等に関する
対策に関する基本的な方針
・重点対象地区の設定、空家等対策の優先順位の明示等
(2)計画期間
・既存の計画や調査の実施年との整合性の確保等
(3)空家等の調査に関する事項
・対象地区、期間、対象など調査内容及び方法の記載等
(4)所有者等による空家等の適切な管理の促進に関する事項
(5)空家等及び除却した空家等に係る跡地の活用の促進に関する事項
(6)特定空家等に対する措置その他の特定空家等への対処に関する事項
(7)住民等からの空家等に関する相談への対応に関する事項
(8)空家等に関する対策の実施体制に関する事項
・各部局の役割分担、組織体制、窓口連絡先などの記載等
(9)その他空家等に関する対策の実施に関し必要な事項
・対策の効果の検証、その結果を踏まえた計画の見直し方針等
3 空家等対策計画の公表等
【出典】国土交通省 空家等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的な指針(概要)
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000035.html
(3)
「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドラ
イン)
特措法で定義される「特定空家等」について、ガイドラインでは、
「市町村長は、周辺
の生活環境の保全を図るために必要があると認められるときは、速やかに『特定空家等』
の所有者等に対し、適切な措置を講ずべきである。他方、これらの措置については、強
い公権力の行使を伴う行為が含まれることから、その措置に係る手続についての透明性
及び適正性の確保も求められるところである。」と記載されています。
その趣旨を踏まえて定められたガイドラインの概要と個別の事例の対応法を、次のペ
ージで御紹介します。
16
第2部 国の空き家対策
「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)【抜粋】
市町村が「特定空家等」の判断の参考となる基準等及び「特定空家等に対する措置」に係る手続につ
いて、参考となる考え方を示すもの。
「特定空家等に対する措置」を講ずるに際して参考となる事項
・「特定空家等に関する措置」を講ずるか否かについては、
(1)を参考に、(2)及び(3)に示す
事項を勘案して、総合的に判断。
(1)「特定空家等」の判断の参考となる基準
・空家等の物的状態の判断に際して参考となる基準を別紙(p.18、19 参照)に示す。
(2)周辺の建築物や通行人等に対し悪影響をもたらすおそれがあるか否か
(3)悪影響の程度と危険等の切迫性
特定空家等に対する措置
1.適切な管理が行われていない空家等の所有者等の事情の把握
2.「特定空家等に対する措置」の事前準備
(1)立入調査
・明示的な拒否があった場合に、物理的強制力を行使してまで立入調査をすることはできない。
・空家等を損壊させるようなことのない範囲内での立入調査は許容され得る。
(2)データベース(台帳等)の整備と関係部局への情報提供
・税務部局に対し、空家等施策担当部局から常に「特定空家等」に係る最新情報を提供
(3)特定空家等に関係する権利者との調整
・抵当権等が設定されていた場合でも、命令等を行うに当たっては、関係権利者と必ずしも調
整を行う必要はない。
3.特定空家等の所有者等への助言又は指導
(1)特定空家等の所有者等への告知
(2)措置の内容等の検討
4.特定空家等の所有者等への勧告
(1)勧告の実施
・固定資産税等の住宅用地特例から除外されることを示すべき。
・勧告は書面で行う。
・措置の内容は、規制目的を達成するために必要かつ合理的な範囲内
(2)関係部局への情報提供
5.特定空家等の所有者等への命令
(1)所有者等への事前の通知
(2)所有者等による公開による意見聴取の請求
(3)公開による意見の聴取
(4)命令の実施
・命令は書面で行う。
(5)標識の設置その他国土交通省令・総務省令で定める方法による公示
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2 空家等対策の推進に関する特別措置法 (3) ガイドライン
6.特定空家等に係る代執行
(1)実体的要件の明確化
(2)手続的要件
(3)非常の場合又は危険切迫の場合
(4)執行責任者の証票の携帯及び呈示
(5)代執行の対象となる特定空家等の中の動産の取扱い
(6)費用の徴収
7.過失なく措置を命ぜられるべき者を確知することができない場合
(1)「過失がなくて」
「確知することができない」場合
・不動産登記簿情報、固定資産税情報等を活用せずに、所有者等を特定できなかった場合、「過
失がない」とは言い難い。
(2)事前の公告
(3)代執行の対象となる特定空家等の中の動産の取扱い
(4)費用の徴収
・義務者が後で判明したときは、その者から費用を徴収できる。
8.必要な措置が講じられた場合の対応
・所有者等が、勧告又は命令に係る措置を実施し、当該勧告又は命令が撤回された場合、固定資
産税等の住宅用地特例の要件を満たす家屋の敷地は、特例の適用対象となる。
「特定空家等」の判断の参考となる基準1~4の概要
空家等の物的状態の判断に際して参考となる基準を示すもの。以下は例示であり、これによらない
場合も適切に判断していく必要
1 そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
(1)建築物が著しく保安上危険となるおそれがある。
ア
建築物が倒壊等するおそれがある。
(ア)建築物の著しい傾斜
・基礎に不同沈下がある、柱が傾斜している等
(イ)建築物の構造耐力上主要な部分の損傷等
・基礎が破損又は変形している、土台が腐朽又は破損している等
イ
屋根、外壁等が脱落、飛散等するおそれがある。
・屋根が変形している、屋根ふき材が剥落している、壁体を貫通する穴が生じている、看板、
給湯設備等が転倒している、屋外階段、バルコニーが腐食、破損又は脱落している等
(2)擁壁が老朽化し危険となるおそれがある。
・擁壁表面に水がしみ出し、流出している等
2 そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
(1)建築物又は設備等の破損等が原因で、以下の状態にある。
・吹付け石綿等が飛散し暴露する可能性が高い状況である。
・浄化槽等の放置、破損等による汚物の流出、臭気の発生があり、地域住民の日常生活に支障
を及ぼしている。
・排水等の流出による臭気の発生があり、地域住民の日常生活に支障を及ぼしている。
(2)ごみ等の放置、不法投棄が原因で、以下の状態にある。
・ごみ等の放置、不法投棄による臭気の発生があり、地域住民の日常生活に影響を及ぼしてい
る。
18
第2部 国の空き家対策
3
適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
(1)適切な管理が行われていない結果、既存の景観ルールに著しく適合していない状態となってい
る。
・景観法に基づき景観計画を策定している場合において、当該景観計画に定める建築物又は工作
物の形態意匠等の制限に著しく適合していない状態となっている。
・景観法に基づき都市計画に景観地区を定めている場合において、当該都市計画に定める建築物
の形態意匠等の制限に著しく適合しない、又は条例で定める工作物の形態意匠等の制限等に著
しく適合しない状態となっている。
・地域で定められた景観保全に係るルールに著しく適合しない状態となっている。
(2)その他、以下のような状態にあり、周囲の景観と著しく不調和な状態である。
・屋根、外壁等が、汚物や落書き等で外見上大きく傷んだり汚れたまま放置されている。
・多数の窓ガラスが割れたまま放置されている。
・看板が原型を留めず本来の用をなさない程度まで、破損、汚損したまま放置されている。
・立木等が建築物の全面を覆う程度まで繁茂している。
・敷地内にごみ等が散乱、山積したまま放置されている。
4
その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
(1)立木が原因で、以下の状態にある。
・立木の腐朽、倒壊、枝折れ等が生じ、近隣の道路や家屋の敷地等に枝等が大量に散らばってい
る。
・立木の枝等が近隣の道路等にはみ出し、歩行者等の通行を妨げている。
(2)空家等に住みついた動物等が原因で、以下の状態にある。
・動物の鳴き声その他の音が頻繁に発生し、地域住民の日常生活に支障を及ぼしている。
・動物のふん尿その他の汚物の放置により臭気が発生し、地域住民の日常生活に支障を及ぼして
いる。
・敷地外に動物の毛又は羽毛が大量に飛散し、地域住民の日常生活に支障を及ぼしている。
・多数のねずみ、はえ、蚊、のみ等が発生し、地域住民の日常生活に支障を及ぼしている。
・住みついた動物が周辺の土地・家屋に侵入し、地域住民の生活環境に悪影響を及ぼすおそれが
ある。
・シロアリが大量に発生し、近隣の家屋に飛来し、地域住民の生活環境に悪影響を及ぼすおそれ
がある。
(3)建築物等の不適切な管理が原因で、以下の状態にある。
・門扉が施錠されていない、窓ガラスが割れている等不特定の者が容易に侵入できる状態で放置
されている。
・屋根の雪止めの破損など不適切な管理により、空き家からの落雪が発生し、歩行者等の通行を
妨げている。
・周辺の道路、家屋の敷地等に土砂等が大量に流出している。
【出典】国土交通省 「特定空家等に対する措置」に関する適切な実施を図るために必要な指針(ガイドライン)
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000035.html
※横浜市でもこれを受け、市独自の「特定空家等の判断基準(案)」を策定し、市民意見募集を行いまし
た。
(p.35 参照)
19
2 空家等対策の推進に関する特別措置法 (3) ガイドライン (4) 国土交通省税制改正の空き家関連部分
(4)国土交通省税制改正の空き家関連部分(平成 27 年度、28 年度)
◆空家の除却等を促進するための土地に係る固定資産税等に関する所要の措置(固定
資産税等)
平成 27 年度国土交通省税制改正では、
「空家の除却・適正管理を促進するため、特
措法の規定に基づく勧告を受けた特定空家等に係る敷地について、固定資産税等の特
例措置(人の居住の用に供する家屋の敷地に適用される住宅用地特例)の対象から除
外すること」が定められました。
空家の除却等を促進するための土地に係る固定資産税等に関する所要の措置(固定資産税等)
空家の全国的な増加が懸念される中、空家の除却・適正管理を促進し、市町村による空
家対策を支援する観点から、空家の存する敷地に係る固定資産税等について必要な措置を
講ずる。
結果の概要
「空家等対策の推進に関する特別措置法」(平成 26 年法律第 127 号)の規定に基づき、市
町村長が特定空家等の所有者等に対して周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置を
とることを勧告した場合は、当該特定空家等に係る敷地について固定資産税等の住宅用地
特例(※)の対象から除外することとする。
施策の背景
○ 適切な管理が行われていない空家が放置されることへの対策として、固定資産税等の特
例措置(人の居住の用に供する家屋の敷地に適用される住宅用地特例)を解除すべきと
の指摘があった。
○「空家等対策の推進に関する特別措置法」には、
「市町村が行う空家等対策計画に基づく
空家等に関する対策の適切かつ円滑な実施に資するため、必要な税制上の措置その他の
措置を講ずるものとする」との規定がある。
○ 以上を踏まえ、空家の除却・適正管理を促進し、市町村による空家対策を支援する観点
から、固定資産税等の住宅用地特例に係る上述の措置を講ずることが必要と判断した。
※住宅用地特例
固定資産税
の課税標準
小規模住宅用地
(200㎡以下の部分)
一般住宅用地
(200㎡を超える部分)
1/6に減額
1/3に減額
【出典】国土交通省 平成 27 年度税制改正(概要)
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000035.html
◆空き家の発生を抑制するための特例措置(所得税・個人住民税)
次のページで示す、平成 28 年度国土交通省税制改正では、空き家化の最大要因で
ある「相続」により発生した古い空き家(除却後の敷地を含む)の有効活用を促進す
ることにより空き家の発生を抑制するための新たな制度を創設するとされています。
20
第2部 国の空き家対策
空き家の発生を抑制するための特例措置
趣旨
○相続人が使う見込みのない古い住宅が空き家として放置され、それが周辺の生活環境
に悪影響を与えることを未然に防止することが重要。
○「使える空き家は利用し、使えない空き家は除却する」観点から、使う見込みのない
空き家やその除却後の敷地の流通による有効活用を促進し、空き家の発生を抑制する
ことが必要。
内容
○空き家を売却した際の譲渡所得の特別控除の導入
相続により生じた空き家であって旧耐震基準しか満たしていないものに関し、相続人
が必要な耐震改修又は除却を行った上で家屋又は土地を売却した場合の譲渡所得に
ついて特別控除(3,000 万円)を導入。
【出典】国土交通省 平成 28 年度国土交通省税制改正概要
http://www.mlit.go.jp/page/kanbo01_hy_004214.html
財務省 平成 28 年度税制改正の大綱の概要
http://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/index.html
関係法令(抄)
(固定資産税の住宅特例関係部分)
≪地方税法≫
(住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例)
第三百四十九条の三の二
専ら人の居住の用に供する家屋又はその一部を人の居住の用に供す
る家屋で政令で定めるものの敷地の用に供されている土地で政令で定めるもの(前条(第十
二項を除く。)の規定の適用を受けるもの及び空家等対策の推進に関する特別措置法 (平成
二十六年法律第百二十七号)第十四条第二項の規定により所有者等(同法第三条 に規定する
所有者等をいう。)に対し勧告がされた同法第二条第二項 に規定する特定空家等の敷地の用
に供されている土地を除く。以下この条、次条第一項、第三百五十二条の二第一項及び第三
項並びに第三百八十四条において「住宅用地」という。)に対して課する固定資産税の課税標
準は、第三百四十九条及び前条第十二項の規定にかかわらず、当該住宅用地に係る固定資産
税の課税標準となるべき価格の三分の一の額とする。
2
住宅用地のうち、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める住宅用地に該当するも
の(以下この項において「小規模住宅用地」という。)に対して課する固定資産税の課税標準
は、第三百四十九条、前条第十二項及び前項の規定にかかわらず、当該小規模住宅用地に係
る固定資産税の課税標準となるべき価格の六分の一の額とする。
一
住宅用地でその面積が二百平方メートル以下であるもの
二
住宅用地でその面積が二百平方メートルを超えるもの
当該住宅用地
当該住宅用地の面積を当該住宅用
地の上に存する住居で政令で定めるものの数(以下この条及び第三百八十四条第一項におい
て「住居の数」という。)で除して得た面積が二百平方メートル以下であるものにあつては当
該住宅用地、当該除して得た面積が二百平方メートルを超えるものにあつては二百平方メー
トルに当該住居の数を乗じて得た面積に相当する住宅用地
3
前項に規定する住居の数の認定その他同項の規定の適用に関し必要な事項は、総務省令で
定める。
21
2 特別措置法 (4) 国土交通省税制改正の空き家関連部分
3
3 国の支援施策 (1) 空き家再生等推進事業
国の支援施策
空き家対策には、「利活用」と「除却」という大きく2つの方向性があります。ま
だ活用し得る空き家は、リフォームして希望者に住まわせたり、地域交流拠点に活用
したりすることが可能です。一方で、倒壊の危険や、ゴミの不法投棄の誘発等がある
場合は、除却が求められています。
ここでは、空き家の利活用や除却、それを行う団体を支援する国の施策について、
詳しく見ていきます。
※以下、各施策について、利活用に関するものには【利活用】、除却に関するものには【除 却】、
いずれにも合致しない施策には【その他】と見出しを付けました。
(1)空き家再生等推進事業【利活用】【除却】
空き家再生等推進事業は、空き家住宅等の集積が居住環境を阻害し、又は地域活性
化を阻害している区域において、居住環境の整備改善及び地域の活性化に資するため
に、空き家住宅又は空き建築物の活用及び不良住宅、空き家住宅又は空き建築物の除
却を行うことを目的とした、国土交通省の事業です。
この事業について国土交通省の資料から抜粋して御紹介します。
空き家再生等推進事業【活用事業タイプ】(社会資本整備総合交付金等の基幹事業)
老朽化の著しい住宅が存在する地区において、住宅環境の整備改善を図るため、空き
家住宅又は空き建築物の活用を行う。
対象地域
・空き家住宅等の集積が居住環境を阻害し、又は地域活性化を阻害している一因となっ
ている産炭等地域又は過疎地域
・空き家住宅等の集積が居住環境を阻害し、又は地域活性化を阻害しているため、空き
家住宅等の計画的な活用を推進すべき区域として地域住宅計画 (※1) 又は都市再生
整備計画 (※2) に定められた区域(居住誘導区域(※3) を定めた場合はその区域内
に限る。)
※1 地域における多様な需要に応じた公的賃貸住宅等の整備等に関する特別措置法に規定する地
域住宅計画
※2 都市再生特別措置法に規定する都市再生整備計画
※3 都市再生特別措置法に規定する居住誘導区域
対象施設
本事業を実施しようとする際に使用されておらず、かつ、今後も従来の用途に供され
る見込みのない空き家住宅又は空き建築物
※民間企業等又は個人に補助する場合は、地域コミュニティ維持・再生の用途に 10 年以上活用される
ものに限る
事業内容
空き家住宅及び空き建築物を、居住環境の整備改善及び地域の活性化に資する体験
宿泊施設、交流施設、体験学習施設、創作活動施設、文化施設等の用途に供するため、
当該住宅等の取得(用地費を除く。)、移転、増築、改築等を行う
22
第2部 国の空き家対策
補助対象経費
・空き家住宅空き建築物の改修等に要する費用
空き家住宅等を体験宿泊施設、交流施設、体験学習施設、創作活動施設、文化施設等
の用に供するため行う住宅等の取得(用地費を除く。)、移転、増築、改築等
・空き家住宅・空き建築物の所有者の特定に要する経費
空き家住宅等の所有者の特定のための交通費、証明書発行閲覧費、通信費、委託費等
空き家再生等推進事業【除却事業タイプ】(社会資本整備総合交付金等の基幹事業)
老朽化の著しい住宅が存在する地区において、居住環境の整備改善を図るため、不良
住宅、空き家住宅又は空き建築物の除却を行う。
対象地域
・空き家住宅等の集積が居住環境を阻害し、又は地域活性化を阻害しているため、空き
家住宅等の計画的な除却を推進すべき区域として地域住宅計画 (※4) 若しくは都市
再生整備計画 (※5) に定められた区域
・居住誘導区域 (※6) を定めた場合はその区域外で空き家住宅等の集積が居住環境を
阻害し、又は地域活性化を阻害している区域
※4 地域における多様な需要に応じた公的賃貸住宅等の整備等に関する特別措置法に規定する
地域住宅計画
※5 都市再生特別措置法に規定する都市再生整備計画
※6 都市再生特別措置法に規定する居住誘導区域
23
3 国の支援施策 (1) 空き家再生等推進事業
対象施設
・不良住宅
住宅地区改良法第2条第4項に規定するもの(空き家かどうかにかかわらず対象)
・空き家住宅
跡地が地域活性化のために供されるもの
・空き建築物
跡地が地域活性化のために供されるもの
補助対象経費
・不良住宅、空き家住宅又は空き建築物の除却等に要する費用
(「除却工事費」+「除却により通常生ずる損失の補償費」)×8/10
(※7)
※7 除却工事費については、除却工事費の1㎡当たりの額(一定の単価の上限あり)に、不良住宅
又は空き家住宅の延べ面積を乗じて得た額を限度とする。
・不良住宅、空き家住宅又は空き建築物の所有者の特定に要する経費
所有者の特定のための交通費、証明書発行閲覧費、通信費、委託費等
【出典】 国土交通省住宅局・一般社団法人すまいづくりまちづくりセンター連合会
空き家の有効活用等に関する情報提供 国土交通省関連
http://www.sumikae-nichiikikyoju.net/akiya/
空家住宅情報
24
第2部 国の空き家対策
(2)空き家管理等基盤強化推進事業【利活用】【除却】
空き家管理等基盤強化推進事業は、地方公共団体を主体とした多様な主体の連携に
よって地域の空き家の適正管理等に関する相談体制を整備する事業を行おうとする
者、または空き家の適正な管理を支援する空き家管理ビジネスを育成・普及する事業
を行おうとする者に対し、国がその実施に要する費用の一部を補助する事業です。増
加している空き家が適正に管理・活用(売買、賃貸)若しくは解体される仕組み作り
を推進しています。
この事業は、国土交通省が、
「一般社団法人 すまいづくりまちづくりセンター連合
会」と協力して実施しています。
【出典】一般社団法人すまいづくりまちづくりセンター連合会 国の主な支援制度(国土交通省関連)
http://www.sumikae-nichiikikyoju.net/akiya/
25
3 国の支援施策 (2) 空き家管理等基盤強化推進事業 ≪第2部コラム≫ 神奈川県の空き家施策について
≪第2部コラム≫ 神奈川県の空き家施策について
神奈川県では、市町村の空き家対策の担当者を集めた実務者会議と、空き家の所有者
向けセミナーの実施、空き家等の所有者向け総合相談窓口を設置し、空き家の適正管理
と利活用を促進しています。
公民連携による相談窓口の開設
神奈川県居住支援協議会では、空き家管理等相談体制構築事業を行っています。これ
は、県全体を対象とした空き家管理等の相談体制を、県及び協議会参加9市(横浜、川
崎、相模原、横須賀、平塚、茅ヶ崎、厚木、大和、小田原)、宅地建物取引業協会、建
設業協会、司法書士会等と連携して整備するものです。この事業の中で、空き家につい
ての相談窓口を設置しています。
※居住支援協議会とは、地方公共団体や不動産仲介業等の関係事業者、居住支援団体等が連
携し、住宅情報の提供等の支援を行うものです。
※空き家管理等相談体制構築事業は、平成 25 年度と平成 26 年度の「空き家管理等基盤強化
推進事業(p.25 参照)」の対象事業となっています。
◆広域相談窓口の設置
平成 26 年3月、空き家や空き家になるかもしれない持家の所有者向けに、広域相談
窓口が開設されました。
軽易な相談は、神奈川県居住支援協議会の事務局である「(公社)かながわ住まいま
ちづくり協会」のスタッフが対応しています。
そして、管理、賃貸、売買、権利調整、除却等、専門的な助言が必要な場合は、専門
相談員がアドバイスを行います。
さらに、個別の対応を希望する相談者は、空き家相談協力事業者登録制度に登録され
た事業者に相談できます。
※空き家相談協力事業者登録制度とは?
空き家相談に協力できる事業者・団体を登録・紹介する制度で、神奈川県居住支援協
議会のホームページに公表されています。(平成 27 年 11 月 24 日現在、59 の事業者が
登録)
・管理・流通分野(管理、売買、賃貸等関連事業)
・建物調査分野(建物調査、劣化・耐震診断・住宅診断等関連事業)
・リフォーム分野(解体・リフォーム等関連事業)
・権利調整分野(相続人調査、登記手続、権利調整等関連事業)
・その他分野(上記4分野以外で空き家の管理・利活用に関連する事業)
◆モデル地域による地域相談窓口の開設支援
平成 27 年3月、モデル地区3か所(川崎市、小田原市、大磯町)において、地域相
談窓口が開設されました。ここでは、地域の特性に応じた相談対応を行っています。
【出典】平成 26 年度空き家管理等基盤強化推進事業
http://h26.akiya-jigyo.jp/report/
A-2 空き家管理等相談体制構築事業
26
第3部 横浜市の空き家対策
第3部
横浜市の空き家対策
第3部では、市内の空き家の傾向、
「横浜市空家等対策計画素案」で示された空き家対策の方
向性、専門家団体との「空家等対策に関する協定」等について御紹介します。
1
横浜市の空き家の傾向
(1)その他の住宅、一戸建の空き家の状況
平成 25 年住宅・土地統計調査によると、横浜市における空き家の状況は、次のように
なっています。(空き家の定義については p.1参照)
空き家の戸数、住宅総数に対する割合等
・横浜市の、住宅総数に対する空き家総数の割合は 10.09%となっています(全国では、
13.52% ※p.4~5参照)。ただし、横浜市は住宅総数が多いため、空き家総数自体は
178,050 戸と他自治体より多くなっています。
※例えば川崎市の空き家総数は 78,500 戸、相模原市は 35,900 戸です。
・空き家のうち、二次的住宅(別荘等)
、賃貸用・売却用の住宅以外の「その他の住宅」
については、52,590 戸であり、住宅総数に対する割合は 2.98%となっています。
・また、一戸建に限ってみると、空き家総数は 28,740 戸であり、住宅総数に対する割合
は 1.63%となっています。そのうち、二次的住宅(別荘等)、賃貸用・売却用の住宅以
外の「その他の住宅」については 20,760 戸であり、住宅総数に対する割合は 1.18%と
なっています。
一戸建の空き家(その他の住宅)の内訳と対策のイメージ
・一戸建ての空き家の「その他の住宅」のうち、さらに「腐朽・破損あり」の住宅が 7,330
戸あります。そのうち、管理不全でそのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となる
おそれのある空き家等が、特措法の特定空家等として、除却等の指導対象となり得ます。
・住宅の状況に応じて、空家化の予防、流通・活用の促進、管理不全の解消等の対策を講
じていく必要があります。
戸数
住宅総数
うちその他の住宅
につい
て
一戸建総数
対する割合
(※)に対する割合
1,764,870 戸
空き家総数
一戸建
住宅総数に
一戸建総数
空き家総数
うちその他の住宅
うち腐朽・破損あり
178,050 戸
10.09%
52,590 戸
2.98%
608,030 戸
34.45%
28,740 戸
1.63%
4.73%
20,760 戸
1.18%
3.41%
7,330 戸
0.42%
1.21%
(※)居住世帯ありの総数+空き家総数
【出典】横浜市建築局 平成 25 年 住宅・土地統計調査の集計結果について(横浜市における空き家の状況)
http://www.city.yokohama.lg.jp/kenchiku/kikaku/plan/2015040 6181920.html
27
1 横浜市の空き家の傾向 (1) その他の住宅、一戸建の空き家の状況
区別の一戸建の住宅総数に占める空き家(その他の住宅)の割合
・一戸建の住宅に占める、空き家の中の「その他の住宅」の割合は、中区、南区、保土ケ
谷区等で高くなっています。
・腐朽・破損のある「その他の住宅」の空き家の割合は、南区、鶴見区、中区等で多い状
況です。
【出典】横浜市建築局 平成 25 年 住宅・土地統計調査の集計結果について(横浜市における空き家の状況)
http://www.city.yokohama.lg.jp/kenchiku/kikaku/plan/2015040 6181920.html
28
第3部 横浜市の空き家対策
(2)平成 25 年度 西区及び旭区の一部地域における空き家空き地調査結果の概要
横浜市は、空き家空き地の状況を把握するため、西区及び旭区の一部地域において
実態調査を実施しました。その結果を御紹介します。
◆調査概要
住宅・土地統計調査によると、横浜市では、空き家(その他の住宅)や腐朽等している
空き家は都心部に多く、南西部郊外に少ない傾向にあります。また、駅から遠い空き家は
都心部よりも郊外に多いと推測されました。
そこで、横浜市では、都心部の密集市街地と、南西部郊外で駅から遠い地域の2地域に
おいて、空き家の現地調査と周囲へのヒアリングを行いました。
・調査時期:平成 25 年8月~9月
・調査対象:水道が5年以上閉栓している建築物や敷地のうち、賃貸や売買用という表示
がなく居住の様子がない建築物と空き地(駐車場、菜園等管理されているもの
を含む)を対象とした
・調査方法:外観調査後、調査地区内の自治会や近隣住民へヒアリングを行った
・調査地区 「横浜市 行政地図情報提供システム」にて検索
http://wwwm.city.yokohama.lg.jp/index.asp?dtp=2&adl=%2C2
都心部のうち空き家数が特に多いと思われる
郊外部のうち駅から 500m以遠にある郊外住宅地
密集市街地
【旭区中沢1~3丁目、今宿1~2丁目】
【西区西戸部町 1 丁目、西区東久保町】
今宿 1~2丁目
東久保町
中沢 1~3丁目
西戸部町 1 丁目
桜木町駅
29
二俣川駅
1 横浜市の空き家の傾向 (2) 平成25年度 西区及び旭区の一部地域における空き家空地調査結果の概要
45
24
21
旭区
中沢 1~3
今宿 1~2
123.2
3,946
31
17
14
建築物の 危険性 (老朽 )
1,068
環境衛生 (ごみ 、害虫 )
20.7
侵入のし やすさ (防犯 )
西区
東久保町
)は課題のある空き家に占める割合
樹木の繁 茂
30
(
外壁等の 防火性
4
課題別空き家数(重複あり)
(裸木造や延焼のしやすさ)
34
課題のあ る空き 家数
空き家数
641
)は空き家 に占め る割 合
空き地数
14.1
(
対象物件 数
西区
西戸部町 1
(ha)
区域内の 戸建総 数
区 域 面 積
◆外観調査結果
23
19
15
12
6
2
(76%)
(63%)
(50%)
(40%)
(20%)
(7%)
16
14
9
5
2
3
(76%) (47%) (30%) (17%) (7%) (10%)
7
3
(50%)
(10%)
2
3
0
0
(7%) (10%)
【出典】横浜市建築局 平成 25 年度 空き家空き地調査結果の概要
http://www.city.yokohama.lg.jp/kenchiku/kikaku/plan/20150406181920.html
◆結果概要
密集市街地(西区)
・外壁が延焼しやすい裸木造であったり、樹木が繁茂していたりする空き家が多い
・権利関係が複雑であるため、手を加えようとしてもできない場合がある
・道路の接続状況がよいと、空き家が除却され、駐車場となっているケースが見られた
郊外住宅地(旭区)
・課題のある空き家が少ない。特に老朽等による建築物の危険性は見られなかった
・将来、地域のコミュニティに支障が生じるのではないかという不安がある
・自治会等による管理体制が自主的に生まれている地域がある
共通すること
・地域で課題となっている空き家に対して所有者や管理者が不明のため対応ができない
調査から見えた課題
・所有者・管理者の特定方法を確立していく必要がある
・空き家の状況や地域の特性にあわせて適切な対応策を検討していく必要がある
・腐朽・破損が進んでいる空き家や災害時延焼の可能性がある空き家などに対して除却や
建替を促進する必要がある(特に都心部の密集市街地における空き家への対応)
・適切な管理ができておらず地域に不安を与えている空き家に対して適切な維持管理、活
用、市場流通を促すための対策が必要である
【出典】横浜市建築局 平成 25 年度 空き家空き地調査結果の概要
http://www.city.yokohama.lg.jp/kenchiku/kikaku/plan/20150406181920.html
30
第3部 横浜市の空き家対策
(3)横浜市への空き家に関する相談状況
横浜市空家等対策協議会の資料の中から、建築局と 18 区それぞれへの空き家に関する
相談状況を示した部分を抜粋して御紹介します。
◆建築局建築安全課への相談状況(平成 27 年4月~7月)
・年度ごとの比較をすると、26 年度に空家の相談件数が急激に増加している。
・さらに、27 年度においては、4か月の相談件数が昨年度の相談件数の半分に達して
いる。
・相談内容は「建築物」だけではなく、
「隣地側の樹木の繁茂」についての相談も多い。
図
建築局建築安全課への空家相談件数
図
建築局建築安全課への空家相談内容
【出典】横浜市建築局 横浜市空家等対策協議会について(第1回 資料2)
http://www.city.yokohama.lg.jp/kenchiku/kikaku/plan/akiya-akichi/kyogikai/
31
1 横浜市の空き家の傾向 (3) 横浜市への空き家に関する相談状況
◆18 区への空き家に関する相談件数(平成 27 年4月~7月)
・相談の多い区は、鶴見区、南区、磯子区である。
・区役所への空き家に関する相談内容は、「建築物」に対するものが最も多く、「隣地
側の樹木の繁茂」が次に多い。
図表
区役所への空家相談内容別件数
40
31
30
24
20
13
23
18
14
21
16
8
10
15
5
11
15
16
7
2
10
5
0
鶴
見
神
奈
川
西
中
南
保
土
ケ
谷
鶴見 神奈川 西 中 南 保土ケ谷
相談件数
31 13 14
8 24
18
①建築物
16 13 11
6
9
11
②火災
4
0
0
0
2
1
相 ③防犯
3
0
2
1
3
1
談 ④ごみ
3
0
3
1
4
2
内 ⑤衛生害虫
8
1
1
0
3
10
容 ⑥道路樹木
4
0
1
2
4
9
⑦隣地樹木 13
0
2
2 16
12
⑧その他
9
0
0
0
8
0
磯
子
港
北
緑
青
葉
都
筑
金
沢
戸
塚
港
南
旭
栄
泉
瀬
谷
磯子 港北 緑 青葉 都筑 金沢 戸塚 港南 旭 栄 泉 瀬谷
23 16
5 15
2 11 15 16 21
7
5 10
13 10
2 13
1
9 11
8
9
4
2
5
2
1
0
1
0
4
1
4
4
3
0
2
6
5
1
0
0
2
1
4
5
2
1
2
1
4
2
2
0
1
1
3
0
0
1
2
7
5
2
5
0
6
3
7
3
1
0
3
9
6
2
2
1
1
0
6
7
2
0
2
13 12
2 12
0
4
3
7
9
2
3
4
0
1
0
1
0
0
0
0
5
0
0
0
合計
254
153
29
39
30
65
58
116
24
【出典】横浜市建築局 横浜市空家等対策協議会について(第1回 資料2)
http://www.city.yokohama.lg.jp/kenchiku/kikaku/plan/akiya-akichi/kyogikai/
32
第3部 横浜市の空き家対策
2
横浜市空家等対策計画素案
特措法の施行を踏まえ、横浜市においては、平成 27 年8月に横浜市空家等対策協議会
を設置し、弁護士やまちづくり NPO 等、専門家の御意見を取り入れながら「横浜市空家
等対策計画」作成を進めてきました。そして、同年 12 月には計画の素案が公表され、平
成 28 年1月にかけて市民意見募集が行われました。今後、その結果を踏まえ、計画が策
定されます。
(1)素案における空家等対策の取組方針
1「空家化の予防」、2「空家の流通・活用促進」、3「管理不全な空家の防止・解消」、
4「空家に係る跡地の活用」を取組の柱とし、住まいが空家になる前の利用中の状態か
ら、空家除却後の跡地活用まで、住まいの各段階の状況に応じた対策を講じていきます。
横浜市空家等対策計画素案における施策一覧
≪住まいの状態≫
現在取組中の施策
利用中
1 空家化の予防
(所有者への啓発)
2 空家の
流通・活用促進
・啓発ちらし・パンフレットの配布
・納税通知書を活用した全住宅所有者への空家適正管理のお願
い
・専門家団体の相談窓口への案内や「住まいの相談窓口」との
連携
・木造住宅耐震等改修補助の実施
空家化
・専門家団体の相談窓口への案内や「住まいの相談窓口」との
市と中
連携(再掲)
場し古
・エコリノベーション事業(改修費補助)の実施
流て住
・エコリノベーションアカデミー(講習会)の開講
通の宅
放置・管理
不全状態
等 地 ・まちづくりNPO等と連携した地域の活動拠点、社会福祉施
設、子育て支援施設への活用マッチング
途住域
へ宅の
の以活
活外動
用の拠
用点
3 管理不全な空家の
防止・解消
・専門家団体の相談窓口への案内や「住まいの相談窓口」との
の発
所 連携(再掲)
取・
有
組地
者
支域
啓
援で
除却
行
改
政
善
に
指
よ
導
る
跡地の活用
4 空家に係る跡地の
活用
密
集
対
市
策
街
地
以上
外記
33
・空家法を活用した区局連携体制による改善指導の実施
・不燃化推進地域等における除却補助(建築物不燃化推進事業
補助)の実施
・防災広場としての跡地の活用
・建築士による調査・助言(木造建築物安全相談事業)の実施
・建替困難地域における実態調査の実施
2 横浜市空家等対策計画素案 (1) 素案における空家等対策の取組方針
◆空家等に関する対策の実施体制の整備
庁内推進体制の整備
建築局が中心となり、区役所、政策局、財政局、市民局、健康福祉局、資源循環局、
都市整備局、道路局、消防局等から構成される庁内プロジェクトを設置し、関係区局
が連携して取組を進めます。
区役所での相談対応体制について
近隣住民からの空家相談に対しては、まずは内容に応じて、区政推進課等の区役所
の担当部署が対応します。相談が多岐にわたる場合は、担当部署が連携して対応しま
す。(各局も連携して対応します。)
【出典】横浜市空家等対策計画素案【概要版】
http://www.city.yokohama.lg.jp/kenchiku/kikaku/plan/akiya-akichi/keikaku/
“短期的”に実施する施策イメージ
【平成27年度、28年度中に実施・着手する施策】
“中長期的”に検討する施策イメージ
【実施に向けた継続検討課題】
・専門家団体と連携した空家相談会の実施
・地域への啓発活動(出前相談会)の検討
・インターネット、ケーブルテレビ等のツールを活用した施 ・高齢者ひとり一人への支援に向けた専門家等との連携
策の広報
の検討
・リノベーション事例集の作成
・中古戸建住宅の流通促進の国等の取組との連携の検討
・子育て世帯や若者の居住促進を目的とした中古住宅の活用 (例:インスペクション制度、住宅履歴情報等)
(例:子育てりぶいん事業や大学・地域と連携したシェアハ
ウスモデル事業)
・まちづくりと連携した地域の活動拠点、社会福祉施設、子 ・空家所有者と利用希望者で情報を共有する仕組み(空
育て支援施設への活用マッチング(例:持続可能な住宅地
家バンク)の検討
モデルプロジェクトにおける活用モデル事業の実施)
・地域の活動拠点等の活用マニュアルの作成
・活用に伴う課題解決に向けた検討(法制度、資金面
等)
・季節に応じた適正管理の注意喚起
・空家協力事業者の紹介の仕組みの検討
・地域(町内会、社会福祉協議会等)での見守り事例の紹介
・地域の人材(高齢者)を活かした維持管理の仕組みの構築
・本市独自の特定空家等基準の策定
・緊急対応措置の検討
・跡地を活用した個別建替えや共同建替えの誘導策の検討
・建替誘導施策の展開
・コミュニティスペース、菜園等跡地活用の検討
【出典】横浜市建築局 横浜市空家等対策計画素案【本編】
http://www.city.yokohama.lg.jp/kenchiku/kikaku/plan/akiya-akichi/keikaku/
34
第3部 横浜市の空き家対策
参考
横浜市空家等対策協議会 開催実績
日時
議題
(1) 協議会の概要について
第1回
平成 27 年8月 25 日 (2) 本市の空家の現状について
(3) 空家等対策計画(本市の取組の方向性)について
第2回
平成 27 年 11 月 16 日
(1) 横浜市空家等対策計画の素案について
(2) 特定空家等の判断基準について
(2)特定空家等の判断基準(案)
横浜市では、横浜市空家等対策計画の考え方や、国のガイドライン(p.17 参照)を踏
まえ、市独自の「特定空家等の判断基準(案)」を策定し、対策計画と共に市民意見募集
を行いました。その概要を御紹介します。
特定空家等の判断基準
次の(1)空家等の状態及び(2)周辺への影響等に該当し、指導経過、空家等の所有
者等の状況等を踏まえ、地域住民の生命、財産、生活環境等に著しく影響を及ぼすおそれ
があると総合的に判断される空家等を特定空家等として認定する。
(1)空家等の状態
空家等が、次のいずれかに該当する状態のもの
ア 倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
別表第1(あ)欄に掲げる建築物等の部分において、
(い)欄に示す状態にあるも
のをいう。
別表第1 倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
(あ)
建築物の倒壊
のおそれがあ
るもの
屋根、外壁等
脱落、飛散等
するおそれが
あるもの
塀、擁壁等が
倒壊、崩壊等
するおそれが
あるもの
35
(い)
建築物全体
1/20 超の傾斜が認められる
建築物の構造耐力上主要な部分 次のいずれの状態にある
①基礎又は土台
ア 基礎が著しく破損又は変形
イ 土台が著しく破損又は腐朽
②柱、はり等
柱、はり等が著しく変形又は破損等
③屋根又は外壁の構造材及び下地材
構造材、下地材が著しく破損等
屋根ふき材等
外壁の外装材等
屋外階段又はバルコニー
その他の建築物に付属する工作
物等(雨どい、窓ガラス、室外
機等)
門又は塀若しくは擁壁等の建築
物の敷地内に存する工作物
屋根ふき材等の大部分の剥離、破損等
外壁の外装材等の大部分の剥離、破損等
著しく腐食し、脱落等のおそれがある
著しく腐食等し、脱落、倒壊等のおそれがあ
る
著しく腐食、破損又は傾斜等し、倒壊、崩壊
等のおそれがある
2 横浜市空家等対策計画素案 (2) 特定空家等の判断基準(案) 3 専門家団体との連携協定
イ 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
ウ 適切な管理が行われていないことにより著しく周囲の景観を損なっている状態
エ その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
【解説】
イ~エについては、国の「特定空家等」の判断の参考となる基準(p.18 参照)を
参考に、特に周辺に著しく悪影響を及ぼすおそれがあると総合的に判断されるもの
を対象とする。
(2)周辺への影響等
空家等が放置されることにより、周辺の建築物や通行人等に著しい悪影響、危険等
をもたらすおそれがあるもの
【解説】
(2)の判断にあたっては、次に掲げる事項を参考とする。
ア 建築物の密集状況
イ 公園、道路等の有無、道路の利用状況等
ウ その他建築物の立地特性等
【出典】横浜市建築局 特定空家等の判断基準
http://www.city.yokohama.lg.jp/kenchiku/kikaku/plan/akiya-akichi/keikaku/
3
専門家団体との連携協定
横浜市では、平成 27 年3月 30 日、空家等の所有者の方への啓発、中古住宅としての
流通・活用促進、管理不全の防止や空家等の跡地の活用を柱とした総合的な空家対策を
推進するため、不動産、法務、建築、NPO法人の専門家団体との連携・協力に関する
「空家等対策に関する協定」を締結しました。
そして、本協定に基づき、適正な管理に向けた啓発・PR、地域活動拠点等としての
活用、更には中古住宅の流通促進などの取組を行うにあたり、各団体の窓口を活用して
空家等の所有者等を対象にした相談をスタートしました。
さらに、平成 27 年7月 23 日には神奈川県土地家屋調査士会、平成 28 年1月 21 日に
は一般社団法人神奈川県不動産鑑定士協会とも本協定を締結し、他団体同様、空家等の
所有者等を対象とした相談窓口を開設しています。
◆空家相談窓口の概要
空家の所有者が抱える課題に応じて専門家が相談に応じます。
○公益社団法人 神奈川県宅地建物取引業協会(045-633-3035)
○公益社団法人 全日本不動産協会 神奈川県本部 横浜支部(045-321-8733)
・不動産(空家)の売買や賃貸に関すること
36
第3部 横浜市の空き家対策
○横浜弁護士会(045-211-7719)
・空家の相続、成年後見等権利関係の整理、空家をめぐる紛争の解決に関すること
○神奈川県司法書士会(045-641-1348)
・土地・建物の相続登記、成年後見等に関すること
○一般社団法人 横浜市建築士事務所協会(045-662-1337)
・建物に関すること
○特定非営利活動法人 横浜プランナーズネットワーク(045-681-2922)
・空家の活用(※)に関すること
※地域活動や行政サービスを目的とするものに限ります。
※地域活動のために、建物を使用したい方の相談にも応じます。
○神奈川県土地家屋調査士会(045-312-1177)
・建物の表題・変更・滅失登記、境界の調査・確認に関すること
○一般社団法人 神奈川県不動産鑑定士協会(045-661-0280)
・不動産(土地・建物)の評価に関すること
【出典】横浜市建築局 「空家に関する相談窓口のご案内」
http://www.city.yokohama.lg.jp/kenchiku/kikaku/plan/20150406181920.html
参考
横浜市シルバー人材センターとの「空家等の適正な管理の推進に関する協定」の締結
平成 27 年 12 月 18 日に、横浜市と公益財団法人横浜市シルバー人材センターは、市民生活の安全・
安心を確保するために、市内の空家等の管理の適正化を進めること、かつ、高齢者の地域社会での活
動・貢献の場を広げることを目的とした連携・協力に関する「空家等の適正な管理の推進に関する協
定」を締結しました。
※横浜市シルバー人材センターは、高年齢者の生きがいの充実及び福祉の増進を図り、活力ある地
域社会をつくることを目的に、就業の機会を提供している公益財団法人です。
○シルバー人材センターが行う業務
空家等の所有者等と契約し、空家等の管理について、下記の業務を行います。
(1)空家等の現状確認 (2)空家等の除草、植木の剪定(高木除く)
(3)その他、横浜市シルバー人材センターが受託できる一般作業
○市が行う業務
市内にある空家等の所有者等から管理業務の相談を受けた場合は、シルバー人材センターを紹介
します。また、市ホームページ等で、シルバー人材センターの業務をPRします。
【出典】横浜市建築局 平成 27 年 12 月 18 日記者発表資料
http://www.city.yokohama.lg.jp/kenchiku/kikaku/plan/akiya-akichi/kanri/
37
3 専門家団体との連携協定 ≪第3部コラム≫ 空家の適正管理に向けた啓発
≪第3部コラム≫ 空家の適正管理に向けた啓発
横浜市では、空家の適正管理に向けた啓発のため、ポスターやパンフレットを作成して
います。区役所・市役所の窓口、専門家団体等にて配布しているほか、建築局のホームペ
ージにも掲載しています。
空家のポスター
空家のはなし
パンフレット。空家の定義、適正な管理や活用などについて紹介しています。
<表紙>
<パンフレットに挟まれたセルフチェックシート>
38
第3部 横浜市の空き家対策
セルフチェックシートには、次のようなチェック項目が示されています。
(抜粋)
■屋根
■家のまわり
・屋根材の異状(ズレ、割れ、ハガレなど)
・塀の異状(傾き、割れ、ヒビなど)
・アンテナの異状(傾き・垂れ下がりなど)
・雑草・樹木の繁茂
・衛生害虫等の発生(ハチ、ゴキブリ、ネズミ
■窓、ドア
など)
ガラスの割れ、ヒビ、開閉の不具合、落書きなど
・ゴミなどの不法投棄
■外壁
■家のなか
外壁材の異状(穴、浮き、ハガレ、ヒビなど)
・雨漏り(天井や床に湿ったシミができている
など)
・床の傾き
・カビの大量発生
・ドアなどの開閉の不具合
・壁紙が波を打っている
参考:横浜市建築局 空家対策のページ
http://www.city.yokohama.lg.jp/kenchiku/kikaku/plan/20150406181920.html
39
第4部
各都市等の空き家対策
第4部では、議会局が実施した他都市の空き家管理条例の制定状況等の調査結果及び、他都市
の空き家の利活用・除却事例を御紹介します。
1
政令市、中核市、特別区の空き家管理条例制定状況等
空き家の適正管理及び活用に関する条例制定状況や、市独自の特定空家等の判断基準
の策定状況、空き家対策計画の策定状況等について、議会局で調査を行いました。
≪議会局実施調査≫
調査の方法
各政令市、中核市、特別区に調査票をEメール送付
調査の項目(時点は平成 28 年1月 31 日)
①空き家条例の有無
「空き家バンク」
、
「活用」
、
「空き家の活用に対する助成」、「空き家の
②空き家条例での、
除却に対する助成」
、
「土地の寄附による空き家除却」の規定の有無
③市独自の特定空家等の判断基準の策定状況
④空き家対策計画の策定状況
⑤空き家対策協議会の設置状況
空き家の適正管理及び活用に関する条例等についての調査(平成 28 年1月 31 日時点)
※①については、ある場合(施行済み)は○、ない場合は×、未施行の場合は△と記載。③~⑤について
は、策定・設置している場合は○と記載。
<政令市>(20 市)
自治体名
【政令市】
②空き家条例での「規定の有無」。条例ではなく要綱等で定めがあ
る場合は「要綱」
③市独自の特 ④空き家対策 ⑤空き家対策
①空き
(ア)
(イ)
(ウ)
(エ)
(オ)
定空家等の判 計画の策定状 協議会の設置
家条例
空き家バン
活用
空き家の活 空き家の除 土地の寄附 断基準の策定
況
状況
の有無
ク
用に対する 却に対する による空き
状況
助成
助成
家除却
「○」もしくは「要
綱」と回答した自
治体数
10
3
2
4
10
1
札幌市
×
×
×
×
要綱
×
○
H27年度中策定
設置予定なし
仙台市
○
×
×
×
×
×
○
未定
未定
さいたま市
○
×
×
×
×
×
×
未定
H28年度設置
千葉市
○
×
×
×
×
×
H27年度中策定
未定
未定
横浜市
×
×
×
×
要綱
×
○
H27年度中策定
○
川崎市
×
×
×
×
×
×
未定
H28年度策定
H27年度中設置
相模原市
×
×
×
×
要綱
×
H28年度策定
H28年度策定
○
新潟市
○
×
×
要綱
要綱
×
○
H27年度中策定
設置予定なし(既
存有識者会議を活
用)
静岡市
×
要綱
×
要綱
×
×
未定
H28年度策定
H28年度設置
浜松市
×
×
×
×
×
×
H27年度中策定
H28年度策定
H28年度設置
名古屋市
○
×
○
×
要綱
×
策定予定なし
未定
設置予定なし
京都市
○
×
○
要綱
要綱
×
○
H28年度策定
H28年度設置
40
第4部 各都市等の空き家対策
自治体名
【政令市】
②空き家条例での「規定の有無」。条例ではなく要綱等で定めがあ
る場合は「要綱」
③市独自の特 ④空き家対策 ⑤空き家対策
①空き
(イ)
(ウ)
(エ)
(オ)
(ア)
定空家等の判 計画の策定状 協議会の設置
家条例
活用
空き家の活 空き家の除 土地の寄附 断基準の策定
空き家バン
況
状況
の有無
用に対する 却に対する による空き
ク
状況
助成
助成
家除却
大阪市
×
×
×
×
×
×
H27年度中策定
H28年度策定
○
堺市
×
×
×
×
要綱
×
未定
H28年度策定
未定
神戸市
○
×
×
×
○
○
H27年度中策定
H27年度中策定
○
岡山市
○
要綱
×
要綱
要綱
×
H27年度中策定
H27年度中策定
H27年度中設置
広島市
×
×
×
×
×
×
未定
H28年度策定
未定
北九州市
×
要綱
×
×
要綱
×
H27年度中策定
H28年度策定
○
福岡市
○
×
×
×
×
×
未定
未定
未定
熊本市
○
×
×
×
×
×
未定
未定
未定
<中核市>(43 市)
自治体名
【中核市】
41
①空き
家条例
の有無
②空き家条例での「規定の有無」。条例ではなく要綱等で定めがあ
る場合は「要綱」
③市独自の特 ④空き家対策 ⑤空き家対策
(ア)
(イ)
(ウ)
(エ)
(オ)
定空家等の判 計画の策定状 協議会の設置
空き家バン
活用
空き家の活 空き家の除 土地の寄附 断基準の策定
況
状況
ク
用に対する 却に対する による空き
状況
助成
助成
家除却
「○」もしくは「要
綱」と回答した自
治体数
24
15
4
10
13
4
旭川市
○
×
×
×
要綱
×
未定
H28年度策定
H27年度中設置
函館市
○
×
×
×
×
×
○
H27年度中策定
設置予定なし
青森市
○
×
×
×
×
×
未定
未定
未定
盛岡市
○
要綱
×
×
×
×
○
H27年度中策定
○
秋田市
○
要綱
×
×
×
×
策定予定なし
未定
未定
郡山市
×
×
×
×
×
×
策定予定なし
H27年度中策定
設置予定なし
いわき市
×
×
×
×
×
×
策定予定なし
策定予定なし
設置予定なし
宇都宮市
○
×
×
○
×
×
○
未定
未定
前橋市
○
要綱
×
要綱
要綱
×
策定予定なし
○
〇
高崎市
×
×
×
要綱
要綱
×
未定
未定
未定
川越市
○
×
×
×
×
×
未定
H29年度策定
H29年度設置
船橋市
○
×
×
×
×
×
未定
未定
未定
柏市
○
×
×
×
×
×
H27年度中策定
未定
未定
横須賀市
○
要綱
×
×
×
○
策定予定なし
策定予定なし
設置予定なし
富山市
×
要綱
×
×
×
×
未定
H28年度策定
H28年度設置
金沢市
△
○
○
○
○
×
未定
H27年度中策定
H27年度中設置
長野市 ×
要綱
要綱
要綱
×
×
未定
H30年度策定
H29年度設置
岐阜市
○
×
×
×
×
×
策定予定なし
未定
設置予定なし
1 政令市、中核市、特別区の空き家管理条例制定状況
自治体名
【中核市】
①空き
家条例
の有無
②空き家条例での「規定の有無」。条例ではなく要綱等で定めがあ
る場合は「要綱」
③市独自の特 ④空き家対策 ⑤空き家対策
(ア)
(イ)
(ウ)
(エ)
(オ)
定空家等の判 計画の策定状 協議会の設置
空き家バン
活用
空き家の活 空き家の除 土地の寄附 断基準の策定
況
状況
ク
用に対する 却に対する による空き
状況
助成
助成
家除却
豊田市 ×
×
×
×
要綱
要綱
未定
未定
未定
豊橋市
×
要綱
×
要綱
×
×
H28年度策定
H28年度策定
H28年度策定
岡崎市
×
×
×
×
×
×
H28年度策定
H28年度策定
H28年度設置
大津市 ×
×
×
×
×
×
未定
未定
未定
豊中市 ×
×
×
×
×
×
H27年度中策定
策定予定なし
設置予定なし
高槻市
×
×
×
×
×
×
×
未定
未定
東大阪市
○
×
×
×
×
×
未定
H28年度策定
H28年度設置
枚方市
×
×
×
×
×
×
H27年度中策定
未定
○
姫路市
×
要綱
×
×
要綱
×
H28年度策定
H28年度策定
H28年度設置
西宮市
×
×
×
×
×
×
策定予定なし
H28年度策定
H28年度設置
尼崎市
○
×
×
×
×
×
○
H29年度策定
H29年度設置
奈良市
×
要綱
×
×
×
×
×
H27年度中策定
○
和歌山市
○
×
×
×
×
×
未定
未定
H28年度設置
倉敷市
○
×
×
×
×
×
H27年度中策定
未定
未定
福山市
○
×
×
×
×
×
H27年度中策定
H27年度中策定
H27年度中設置
下関市
○
要綱
×
×
要綱
要綱
○
H27年度中策定
○
高松市
○
×
○
要綱
×
×
H27年度中策定
H27年度中策定
○
松山市
×
×
×
×
×
×
未定
H28年度策定
未定
高知市
×
要綱
×
×
要綱
×
未定
H29年度策定
H28年度設置
久留米市
○
要綱
×
要綱
要綱
×
未定
未定
未定
長崎市 ○
要綱
○
×
要綱
要綱
H27年度中策定
H27年度中策定
設置予定なし
大分市 ○
要綱
×
要綱
要綱
×
未定
H28年度策定
○
宮崎市
○
×
×
要綱
要綱
×
未定
未定
未定
鹿児島市
○
×
×
×
要綱
×
○
H29年度策定
設置予定なし
那覇市 ×
×
×
×
×
×
未定
未定
未定
42
第4部 各都市等の空き家対策
<特別区>(23 区)
②空き家条例での「規定の有無」。条例ではなく要綱等で定めがある場合は
「要綱」
自治体名
【特別区】
①空き家
(ア)
条例の有
空き家バンク
無
(イ)
活用
③市独自の特
⑤空き家対策協
(ウ)
(エ)
(オ)
定空家等の判 ④空き家対策計 議会の設置状
空き家の活用 空き家の除却 土地の寄附に 断基準の策定 画の策定状況
況
に対する助成 に対する助成 よる空き家除
状況
却
「○」もしくは「要
綱」と回答した自
治体数
8
1
1
4
7
1
千代田区
×
×
×
×
×
×
策定予定なし
策定予定なし
設置予定なし
中央区
×
×
×
×
×
×
策定予定なし
策定予定なし
設置予定なし
港区
×
×
×
×
×
×
策定予定なし
策定予定なし
設置予定なし
新宿区
○
×
×
×
×
×
未定
未定
未定
文京区
×
×
要綱
要綱
要綱
×
未定
未定
未定
台東区
○
×
×
要綱
要綱
×
未定
未定
未定
墨田区
○
×
×
×
×
×
策定予定なし
未定
設置予定なし
江東区
×
×
×
×
×
×
策定予定なし
未定
未定
品川区
○
×
×
○
要綱
×
○
未定
未定
目黒区
×
×
×
×
×
×
未定
未定
未定
大田区
○
×
×
×
×
×
未定
H27年度中策定
○
世田谷区
△
×
×
要綱
×
×
H28年度策定
未定
未定
渋谷区
○
×
×
×
×
×
未定
未定
未定
中野区
×
×
×
×
×
×
未定
H28年度策定
H28年度設置
杉並区
×
×
×
×
×
×
未定
H28年度策定
○
豊島区
○
○
×
×
要綱
○
「建物等の適正な
維持管理を推進す
る条例」の判断基
準に基づき判断
未定
未定
北区
×
×
×
×
要綱
×
未定
未定
未定
荒川区
×
×
×
×
要綱
×
策定予定なし
H28年度策定
設置予定なし
板橋区
×
×
×
×
×
×
H28年度策定
H27年度中策定
○
練馬区
×
×
×
×
×
×
H28年度策定
H28年度策定
設置予定なし
設置予定なし(既
足立区
○
×
×
×
○
×
未定
未定
存の審議会を活用
予定)
葛飾区
×
×
×
×
×
×
策定予定なし
H28年度策定
○
江戸川区
×
×
×
×
×
×
策定予定なし
設置予定なし(区
H27年度中策定 独自の対策検討会
を設置)
43
1 政令市、中核市、特別区の空き家管理条例制定状況 2 空き家の利活用・除却事例 (1) 空き家バンク(金沢市)
2
空き家の利活用・除却事例
空き家対策には、p.22 で御紹介したように、利活用と除却という大きく2つの方向性
があります。また、p.33~34 の「横浜市空家等対策計画素案における施策一覧」で示し
たように、横浜市では空き家対策を、住まいの状態に応じて、「空家化の予防」、「流通・
活用促進」等のプロセスに分けて整理しています。
ここでは、横浜市の今後の施策の参考となるような、各都市や企業の特色ある空き家
の利活用・除却事例等を、それぞれのプロセスごとに御紹介します。
空家化の予防、流通・活用促進
(1)空き家バンク(金沢市)【利活用】
金沢市では、まちなか区域における空地、空家、空住戸(中古共同住宅)の流通促進
を図るための情報提供サイトとして、
「金沢まちなか住宅再生バンク」を、町家(昭和 25
年以前に建てられた歴史的建築物)の流通促進を図るための情報提供サイトとして、
「金
澤町家情報バンク」設けています。
※「まちなか区域」とは、中心市街地を基本に、藩政期から市街地を形成していた地区をいいます。
◆バンクの仕組み
金沢まちなか住宅再生バンク
・空家情報の提供は、インターネット等により行う。空家バンク登録物件の閲覧は自由(会員登録必
要なし)
・物件の問合せには、各物件を担当する宅建業者が対応
・契約・交渉は、直接型(当事者双方直接行う)と間接型(宅地建物取引業者の仲介)がある。申込
み時に空家の提供者が選択
・登録申込物件の現地調査は、金沢市住宅政策課が実施
【出典】金沢まちなか住宅再生バンク 金沢まちなか住宅再生バンクの仕組み
http://kanazawa-sumai.net/saisei/shikumi.html
金澤町家情報バンク
44
第4部 各都市等の空き家対策
○金沢らしい町家に住んでみたい方や活用してみたいと考えている方に、売買や賃貸に関する物件情報
をインターネットによって広く提供するサイト
・金沢の美しいまちなみを形成する町家の利活用を促進し、町家等の保全を図ることを目的としている
・登録申込物件の現地調査は、石川県建築士会が実施
・昭和 25 年以前建築が対象であることから、建築士会により、物件が入居者を募集できる程度の状態
か、修繕が必要か等を検証し、図面作成を行う
【出典】金澤町家情報バンク バンクの仕組み
http://www.kanazawa-sumai.net/machiya/shikumi.html
◆バンク掲載対象物件
金澤町家
情報バンク
金沢まちなか住宅再生バンク
対象区域
対象物件
①空地
②空家
③空住戸
(中古共同住宅)
④町家
まちなか区域
まちなか区域
まちなか区域
市内全域
・昭和 56 年6月
1日以降建築
昭和 26 年以降建 ・耐震性を有する 昭和 25 年以前建
築
もの
築
・住戸面積 50 ㎡
以上
売買・賃貸
売買・賃貸
売買・賃貸
500 ㎡未満
対象行為
売買・賃貸
※売買物件は各種奨励金、補助金の対象
【出典】金沢住まいのススメ 平成 27 年度版
http://www4.city.kanazawa.lg.jp/29101/jyuutaku/index.html
◆バンクの利用実績(平成 27 年3月末日現在)
<金沢まちなか住宅再生バンク>
登録数(件)
成約数(件)
成約率
(小数点以下は四捨五入)
賃貸
売買
計
賃貸
売買
計
賃貸
空地
0
75
75
0
66
66
0%
空家
10
70
80
9
65
74
90%
空住戸
1
103
104
1
93
94 100%
合計
11
248
259
10
224
234
91%
※平成 22 年7月に開設(空住戸については平成 23 年6月に開設)
※登録数及び成約数ともに通算
売買
88%
93%
90%
90%
計
88%
93%
90%
90%
<金澤町家情報バンク>
登録数(件)
賃貸
売買
計
※平成 17 年度に開設
町家
49
110
159
※登録数及び成約数ともに通算
成約率
成約数(件)
賃貸
46
売買
90
(小数点以下は四捨五入)
計
136
賃貸
94%
売買
82%
【出典】金沢まちなか住宅再生バンク・金澤町家情報バンク利用実績(金沢市提供資料)
45
計
86%
2 空き家の利活用・除却事例 (1) 空き家バンク (2) リバースモーゲージローンの活用
(2)リバースモーゲージローンの空き家対策への活用(土浦市・常陽銀行)【利活用】
常陽銀行は、土浦市との間で締結した中心市街地活性化に関する連携協定に基づき、
平成 26 年 10 月1日に、「土浦市まちなか定住促進ローン」3商品の1つとして、「空き
家活用プラン」の取扱いを開始しました。
この商品は、常陽銀行の「リバースモーゲージローン『住活スタイル』」を活用した商
品であり、金融機関と市町村が連携した定住促進・空き家対策において、リバースモー
ゲージローンを活用した全国初の取組です。ここでは、
「空き家活用プラン」の概要を御
紹介します。
◆空き家活用プランについて
土浦市中心市街地エリアに住宅を保有する方を対象に、転居後に空き家となった住宅
を活用してローンを組み、老後生活資金等に利用できる商品です。
土浦市中心市街地エリアに住宅を保有する方が転居等する場合、その住宅を売却ある
いは賃貸せずに放置してしまうと空き家となってしまいますが、この商品を利用するこ
とにより、空き家を賃貸物件として有効に活用することができるだけでなく、新たな返
済負担が発生することなく、生活資金等の調達が可能となります。
概要
利用者の特典
・土浦市中心市街地エリアからエリア外等へ転 <常陽銀行が提供する特典>
居する方に対する制度
・空き家を活用したリバースモーゲージによ
り、老後資金の捻出等が可能となる
リバースモーゲージローン金利優遇
(店頭金利▲1.0%)
<土浦市が提供する特典>
入居者への家賃補助(月額2万円×3年間)
※詳細は次ページ(「土浦市まちなか賃貸
住宅家賃補助」について)で説明します。
◆常陽リバースモーゲージローン「住活スタイル」の仕組み
<商品概要>
項目
内容
借主資格
JTIの制度が利用可能な方で、契約時年齢が 20 歳以上
融資金額
5,000 万円以内
適用利率
変動金利(常陽銀行短期プライムレートに連動する変動金利)
その他条件
耐震基準値1以上(満たしていない場合には耐震改修が必要)
ローン申し込み時に耐震診断を行う
【出典】国土交通省 中古住宅市場活性化ラウンドテーブル 第3回 民間委員発表資料3(株)常陽銀行
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr2_000028.html
46
第4部 各都市等の空き家対策
※「土浦市まちなか賃貸住宅家賃補助」について
土浦市では中心市街地活性化基本計画に基づいた質の高いコンパクトなまちづくりを推
進するため、中心市街地の定住促進を図る新たな支援制度として、
「まちなか賃貸住宅家賃
補助」という制度を創設し、居住人口増加による活力とにぎわいある中心市街地の再生を
目指しています。
「空き家活用プラン」の利用により賃貸に出された空き家を、この制度により借りやす
くすることで、空き家の流通促進を図ります。
まちなか賃貸住宅家賃補助
①補助内容:
中心市街地エリア内の民間賃貸住宅に住み替える世帯のうち、新婚世帯または子育て
中の世帯(※)に対して家賃の一部を補助し、中心市街地への定住促進を図ります。
②補助額:1か月の家賃の 1/2 以内(限度額:2万円)
③補助年数:最大3年
④主な補助要件等:
・平成 26 年 10 月1日以降に賃貸借契約を結んでいること
・土浦市外から中心市街地エリア内への住み替え等
※新婚世帯…1年以内に入籍している
子育て世帯…18 歳未満の子供と同居し扶養している
【出典】土浦市都市計画課まちづくり推進室 まちなか定住促進事業(概要)
http://www.city.tsuchiura.lg.jp/page/page006310.html
47
2 空き家の利活用・除却事例 (2) リバースモーゲージローンの活用 (3) 空き家を活用した地域交流拠点づくり
(3)空き家を活用した地域交流拠点づくり(東京都世田谷区)【利活用】
世田谷区には 52,600 戸の「空き家」が存在しています(平成 25 年)。この空き家を有
用な「資源」
「ストック」として捉え、活用する試みとして、区は平成 25 年度から、
「空
き家等地域貢献活用モデル事業」を始めました。
この事業では、空き家等(空き家・空室・空き部屋)で、所有者又は地域活動団体が
主体となって行う地域貢献活用企画を募集します。そして、その活用事例をモデルとし
て選定し、今後の世田谷区での、空き家等の地域貢献活用の普及・促進を目指します。
申請は所有者又は地域活動団体で、モデル候補として選ばれると、最大 200 万円の助
成を受けられます。助成金は、初期整備費用として、改修工事費、備品購入等に使うこ
とができます。
<これまでに選ばれたモデルケース(抜粋)>
自宅の空き部屋を地域の交流スペースに
シェア奥沢(奥沢2丁目)
昭和初期に建てられた住宅の一部を改装して誕生しました。コワーキ
ングスペース、シェアキッチン、工房、音楽会など、様々な形で、地域
の人たちに活用されています。これらの活用を通して、地域の交流も生
まれています。利用制限の多い公共施設にはない使い勝手の良さや、オ
シャレな雰囲気を活かし、地域コミュニティのハブとして広がりつつあ
ります。(http://share-okusawa.jp)
アパートの空室をデイサービス&カフェの場に
タガヤセ大蔵/ANDITO+大蔵プロジェクト推進チーム(大蔵5丁目)
木造アパートの1階全てを、認知症カフェを備えたデイサービス施設
に改修しました。施設利用者をはじめ、ボランティアや近所の方なども
集える場所になっています。近くの畑で土に触れ、みんなで料理を
作ったり、食べたり、おしゃべりするなど、多世代交流ができる寄合所
に生まれ変わりました。
(お問合せ先●デイサービス博水の郷 TEL.03-5797-5650)
マンションの空室をグリーフケアの場に
サポコハウス/グリーフサポートせたがや(太子堂5丁目)
マンションの空室を活用し、グリーフ(大切な人やものを喪失したと
きの心身の反応)を抱える人が定期的に集える場を提供しています。安
心・安全な場所で自分に起きたできごとと向き合うことができるような
プログラムを行っています。また、サポートプログラムを担うファシリ
テーターを養成する講座や、グリーフに関する学習会等も開催していま
す。
(https://www.facebook.com/griefsupportsetagaya)
【出典】一般財団法人世田谷トラストまちづくり 空き家等地域貢献活用相談窓口
http://www.setagayatm.or.jp/trust/support/akiya/mado.html
(※一般財団法人世田谷トラストまちづくりは、空き家等の地域貢献活用を目的とした相談窓口業務を
担っている団体です。
)
48
第4部 各都市等の空き家対策
インタビュー 「空き家等地域貢献活用モデル事業」実施に当たって(世田谷区役所住宅
課、一般財団法人世田谷トラストまちづくり)
「空き家等地域貢献活用モデル事業」実施に当たっての、法規制や費用面、施設運営等
についての状況を、世田谷区役所住宅課と、一般財団法人世田谷トラストまちづくりの御
担当者から伺うことができました。
Q:空き家活用に当たり、法規制の面で課題になるのはどんなことですか?
A:世田谷区は住居系用途地域指定が全用途地域面積の9割以上を占めているため、住宅
以外に活用しにくい空き家が多いです。また、福祉施設として活用するためには、防災
面(避難経路の確保等)をはじめ規制が多く、活用に至るまでのハードルが高いです。
Q:空き家の所有者との調整で特に課題だと感じていることは何ですか?
A:過去に空き家等地域相談窓口に相談のあった物件の中には、用途地域や耐震改修の面
等で建築基準法上の問題がクリアできず、活用対象にならない物件も多くありました。
そのため現在では、建築士事務所協会の協力を得て、空き家の所有者を対象とした出
張相談会を開催し、当該物件の活用における建築基準法上の課題の確認等を行っていま
す。
空き家活用を円滑に進めるためには、このように、当該物件の活用に向けてクリアし
なければいけない課題を、専門家と丁寧に協議しながら解決していく仕組み作りが必要
なのではないかと感じています。
また、本事業では物件の確認済証(※)があることを活用物件の条件としていますが、
検査済証(※)があることも求めるべきなのではないかという考えもあります。
※確認済証:建築物の工事に着手する前にその計画が建築基準法に適合するかどうかを審査し(建築確
認申請)
、内容が確認された場合に発行されるもの。したがって、その建築物の計画内容を
確認したものであり、実際の工事がされた内容について判断したものではない。
※検査済証:工事途中の中間検査や工事完了時の完了検査においてその工事が建築基準法に適合してい
るかどうかを検査し、合格した場合に発行されるもの。
Q:所有者と活用者(地域活動団体)のマッチングができなかった事例について教えてく
ださい。
A:耐震工事に必要な資金が足りず辞退した事例がありました。空き家状態にある物件の
多くが、昭和 56 年以前に建てられており、現在の耐震基準に合致していないことから、
活用にあたり耐震補強を施す必要があります。世田谷区耐震改修促進計画での耐震化補
助は、人が居住する住宅が対象であり、空き家は対象となっていません。そのためここ
は課題だと感じています。
Q:所有者と活用者のマッチングにおいて重要なことは何でしょうか?
A:不動産会社を介した契約と異なり、所有者と活用者が何度も協議を重ねて信頼関係を
築いていくことが重要で、これがうまくいかないとマッチングに失敗してしまいます。
49
2 空き家の利活用・除却事例 (3) 空き家を活用した地域交流拠点づくり
Q:公共施設に比べて、空き家を市民活動拠点として活用する利点はありますか?
A:所有者の同意さえあれば遅い時間まで利用できることは利点だと思います。公共施設
とはまた違った空間の雰囲気があるのも良さですね。
Q:施設の近隣住民とのトラブル等はありましたか?
A:閑静な住宅街にある空き家に急に人が集まり始めたことで、近隣住民から「どうした
のか」と心配されてしまった事例がありました。広報にも力を入れなければと感じます。
Q:モデル事業の選定において重要な点は何ですか?
A:施設の運営費の補助は区では行っていないため、活用者が事業を継続するには、施設
の運営費を自力で捻出する必要があります。活用者がその能力のある団体かを選定時に
よく吟味する必要性を感じています。
Q:この事業をここまで進めてくることができた要因は何だと思いますか?
A:この事業の開始前にも、既に区には、所有者が自宅の居室の一部を地域に開放する「地
域共生のいえ」という制度があり、現在でも継続しています。このようなベースがあっ
たから、この事業も行うことができたのではないかと思います。
Q:今後も事業を継続する予定ですか?(全部で何軒くらいの空き家の活用を考えていま
すか?)
A:事業期間は平成 25 年度から 27 年度までです。費用が掛かることに加え、関係者間の
調整に苦労することも多く、年2~3軒の活用で精一杯なのが実情です。
Q:今後、全国的にどのような分野、方法での空き家活用を期待していますか?
A:地域活動拠点も含めた、福祉的な施設への活用が増えることを期待します。また、今
後は維持・管理費が掛かることや地域間の人口の偏り等を理由に公共施設が減少すると
考えられますが、その代替として空き家を活用した施設が増えたらと思います。
―お忙しい中、御協力ありがとうございました。―
(インタビューは、平成27年11月に行いました。)
≪インタビュー後の所感≫
空き家の活用においては、耐震基準等を満たすための改修費用や、所有者や活用者等様々
な関係者との調整が必要です。世田谷区では、区長のリーダーシップのもと、活用に積極
的に取り組んでいます。
横浜市でも空家等対策計画素案の中で、地域活動拠点、社会福祉施設等への活用マッチ
ングに取り組むとしており、関係区局の連携した取組が求められます。
50
第4部 各都市等の空き家対策
管理不全な空家の防止・解消
(4)相鉄の空き家・空き地あんしんサービス(相鉄不動産販売株式会社)【その他】
相鉄グループの相鉄不動産販売株式会社(本社・横浜市西区)では、相鉄の「空き家・
空き地あんしんサービス」を行っています。
これは、様々な理由により居住していない一戸建てやマンションを、顧客に代わって
管理するもので「相続で不動産を取得したが使い道が決まっていない」、「転勤で自宅を
空けることとなった」、「長期療養のため家を空けてしまう」等、空き家管理が難しいと
いった顧客ニーズに応えるためのサービスです。
専任スタッフが、定期的に建物外部の確認や、建物内の通気・換気、通水、清掃、郵
便物の確認を行い、状況を毎月報告するため、建物の劣化防止や防犯効果も期待できま
す。サービス概要は、以下のとおりです。
◆相鉄の「空き家・空き地あんしんサービス」概要
〈基本メニュー〉
横浜市(西区・保土ケ谷区・旭区・泉区・瀬谷区)・大和市・海老名市・座間市・
対象エリア
綾瀬市
□建物外部(①建物外部確認 ②雑草確認 ③庭木確認 ④郵便物確認)
サービス内容
□建物内部(①通気・換気 ②通水・水漏れ確認 ③雨漏り・カビ確認 ④床簡易清掃)
一戸建て(建物外部) 一戸建て(建物内外部)
マンション
空き地
プラン
料金(月額)
毎月1回
毎月2回
毎月1回
毎月2回
毎月1回
毎月2回
毎月1回
5,000 円
8,000 円
9,000 円
15,000 円
7,000 円
12,000 円
3,000 円
※エリアによっては受けていただけない場合もあります。
〈オプションメニュー〉
庭木剪定
害虫駆除
雑草取り
建物解体
消臭剤
不要物の
ハウス
薬剤散布 除湿剤設置
撤去処理
クリーニング
耐震診断
改修工事
郵便物の転送
白蟻駆除
防犯設備の設置
リフォーム工事
賃貸相談/賃料
売却相談/価格
査定(無料)
査定(無料)
【出典】相鉄グループ 相鉄の「空き家あんしんサービス」を開始<相鉄不動産販売(株)>
http://www.sotetsu.co.jp/news_release/2014.html
51
2 空き家の利活用・除却事例 (4) 相鉄の空き家・空き地あんしんサービス (5) 特措法に基づく行政代執行の実施
(5)特措法に基づく行政代執行の実施(横須賀市)【除却】
横須賀市には、斜面地に家屋が密集し、階段が多く、車の利用が困難な地域が多数あ
ります。少子高齢化も進んでおり、空き家問題が深刻化しています。
このような中で市は、市内(東浦賀)に所在する建物が、特措法に基づく特定空家等
(p.16 参照)に該当すると判断し、当該建物を公費により除却しました。
ここでは、その概要を御説明します。
◆行政代執行までの経緯
平成 24 年 10 月~
①住民からの苦情を受け、当該建物(木造亜鉛メッキ鋼板葺平屋建、約
60 ㎡)の所有者・管理者の捜索を行ったが、確認できず
②建築基準法に基づき公告及び略式代執行を検討したが、同法第9条第
11 項(※1)の「過失がなくてその措置を命ぜられるべき者を確知す
ることができず」には該当しないと判断し、対応できず
平成 27 年5月 26 日 ①特措法が施行され、空家等の所有者等を把握するために固定資産税情
報を取得できるようになり、確認したところ、改めて建物の所有者が
確認出来ない事が明確となる
②建物をこのまま放置することが著しく公益に反することから、市民生
活の安心安全のため、市で対応することとした
平成 27 年9月1日
特措法第 14 条第 10 項(※2)の規定に基づき、平成 27 年 10 月 22 日
までに建物を除却すること、及び、その日までに除却されない場合は、
市長等が除却することを、所有者等に対して公告した
平成 27 年 10 月 22 日 期限までに除却されず
平成 27 年 10 月 26 日 市が略式代執行により除却を行った
~11 月 24 日
(※1、※2については次ページ参照)
◆除却前後の写真
<除却前>
<除却後>
※別の角度から撮影
52
第4部 各都市等の空き家対策
関係法令(抄)
※1、※2
≪建築基準法≫
第九条(違反建築物に対する措置)
11
第1項の規定により必要な措置を命じようとする場合において、過失がなくてその措置を命ぜ
られるべき者を確知することができず、かつ、その違反を放置することが著しく公益に反すると認
められるときは、特定行政庁は、その者の負担において、その措置を自ら行い、又はその命じた者
若しくは委任した者に行わせることができる。この場合においては、相当の期限を定めて、その措
置を行うべき旨及びその期限までにその措置を行わないときは、特定行政庁又はその命じた者若し
くは委任した者がその措置を行うべき旨をあらかじめ公告しなければならない。
≪空家等対策の推進に関する特別措置法≫
第十四条(特定空家等に対する措置)
10
第3項の規定により必要な措置を命じようとする場合において、過失がなくてその措置を命ぜ
られるべき者を確知することができないとき(過失がなくて第1項の助言若しくは指導又は第2項
の勧告が行われるべき者を確知することができないため第3項に定める手続により命令を行うこ
とができないときを含む。)は、市町村長は、その者の負担において、その措置を自ら行い、又は
その命じた者若しくは委任した者に行わせることができる。この場合においては、相当の期限を定
めて、その措置を行うべき旨及びその期限までにその措置を行わないときは、市町村長又はその命
じた者若しくは委任した者がその措置を行うべき旨をあらかじめ公告しなければならない。
参考:空家等対策の推進に関する特別措置法に基づき、建築物の保安上必要な措置をとることを公告しました
(2015 年 9 月 1 日)
http://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/4840/nagekomi/roukyuu002.html
老朽危険家屋を空家等対策の推進に関する特別措置法により除却します(市長記者会見)
(2015 年 10 月 21 日)
http://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/4840/nagekomi/roukyuu003.html
横須賀市 空家等対策の推進に関する特別措置法に基づき、横須賀市にて老朽危険家屋を除却しました
(通知)(2015 年 11 月 25 日)
http://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/4840/nagekomi/kaitai_kanryou02.html
53
2 空き家の利活用・除却事例 (5) 特措法に基づく行政代執行の実施 (6) 土地の寄附等による除却推進
空家に係る跡地の活用
(6)土地の寄附等による除却推進(長崎市)【除却】
長崎市の「老朽危険空き家対策事業」は、
「長年にわたって使用されず、適正に管理さ
れていない老朽危険空き家のうち、所有者からその建物及び土地が市に寄附されたもの
を除却することで、住環境整備等の推進に資することを目的とする」事業です。
この事業の概要について御紹介します。
※この事業における「老朽危険空き家」とは、
「市長が周囲に対して危険性があると判定した
木造建築物又は軽量鉄骨造建築物の空き家」をいいます。
◆老朽危険空き家対策事業の対象となる建物及び土地の条件
1.対象区域内にあるもの(この事業では市が定めた「計画区域」を対象区域としています)
2.所有者から土地と建物を市へ寄附または無償譲渡すること
3.解体後の土地の日常の維持管理を、地元の方に行ってもらえること
【出典】長崎市 老朽危険空き家対策事業
http://www.city.nagasaki.lg.jp/sumai/660000/668100/p023429.html
◆除却実績
年度
申込件数
事業費(執行額)
(千円)
うち、計画区域外
不採択
(※)
除却件数
18
16,867
32
9
17
6
19
33,479
77
24
46
7
20
21,843
50
0
42
8
21
21,297
49
10
32
7
22
15,435
66
13
50
3
23
17,259
29
5
20
4
24
17,987
48
2
42
4
25
11,382
53
1
50
2
26
13,104
28
0
25
3
合計
168,653
432
64
324
44
※事業期間は平成 18 年度から 27 年度の 10 年間(5年間延長)
※主な不採択の理由(多い順)
・家屋の老朽化があまり進んでいない、危険性が低い。
・立地条件(通路が確保できない、跡地活用に不適、崖の安全性に問題有り)。
・土地・建物の権利者等から寄附について承諾が得られない(相続人の一部からの承諾が
得られても全員からは得られない等)
。
・土地・建物に抵当権等が設定され寄附ができない。
・居住者がいる(退去する予定だったが、何らかの理由で居住を継続した場合等)。
・その他(長屋で切断できない、密集地でない、解体済み、取り下げ等)
【出典】老朽危険空き家対策事業について(長崎市提供資料)
54
第4部 各都市等の空き家対策
◆除却前後比較写真(平成 23 年度
平戸小屋町の事例)
<除却前>
<除却後>
整備面積:227.00 ㎡
跡地利用:ポケット広場
特
徴:長屋を解体し、地域の憩いの場として利用
※平成 26 年度までの除却累計件数 44 件すべてについて、除却後の跡地の整備(コン
クリート舗装等)が完了しています。整備された跡地は、地域のコミュニティ広場
や、駐輪場等に活用されています。
【出典】老朽危険空き家対策事業について(長崎市提供資料)
55
[参考資料]
インターネット掲載資料
・平成 25 年住宅・土地統計調査 (総務省)
http://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2013/tyousake.htm#1
・平成 26 年度空家実態調査 (国土交通省)
http://www.mlit.go.jp/report/press/house02_hh_000088.html
・まち・ひと・しごと創生総合戦略(2015 改訂版) (まち・ひと・しごと創生本部)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/info/
・空家等対策の推進に関する特別措置法 (国土交通省)
http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000035.html
・空き家住宅情報(一般社団法人すまいづくりまちづくりセンター連合会)
http://www.sumikae-nichiikikyoju.net/akiya/
※ホームページ内の「空き家の有効活用等に関する情報提供」には、空き家の現状と課題、
空き家に関する国の主な支援制度、特措法関連情報等がまとめて掲載されています。
書 籍
・空き家急増の真実 放置・倒壊・限界マンション化を防げ
(著:米山秀隆
日本経済新聞出版社
H24.6)【市会図書室:365-Y84】
・空き家問題 -1000 万戸の衝撃
(著:牧野知弘
・市政
祥伝社新書
H26.7)【市会図書室:365-Ma】
7月号
※空き家バン クの成 功要因や、世田谷区の 空き家を活用した地域 交流拠点づくりについ て
の記事が掲載されています。
(発行:全国市長会
・自治力の躍動
H26.7)【市会図書室:雑誌書架】
自治体政策法務が拓く自治・分権
(著:北山喜宣
公職研
H27.5)【市会図書室:318-Ki】
・解決!空き家問題
(著:中川寛子
ちくま新書
H27.11)【市会図書室:配架予定】
56
あとがき
平成20年から平成25年までの5年間に、全国で空き家は63万戸増加しました。こ
れは、年に12.6万戸ずつ空き家が増加した計算になります。少子高齢化が進み、人
口が減少していく我が国において、総住宅数は増加し続けており、今後ますます空
き家の増加が見込まれています。
その中、全国の自治体では、空き家条例を制定する等、国に先んじて様々な空き
家対策が取られてきました。そしてついに国においても、平成26年11月に「空家等
対策の推進に関する特別措置法」(特措法)が公布され、平成27年5月には危険な
「特定空家等」の対策に向けたガイドラインが作成される等、国や自治体の空き家
対策の方針が具体化されつつあります。
一言で「空き家対策」と言っても、その方法は様々ですが、今回の市会ジャーナ
ルでは、空き家対策を、「利活用に関する取組」「除却に関する取組」の2つに分
け、他都市や企業の取組を多く御紹介しました。
空き家の利活用においては、建築基準法等の法規制があることや、行政代執行に
よる空き家の除却において除却費用が回収できないこと等、実際に施策を進めてい
く上での課題が山積しています。
横浜市では、特措法に基づく「協議会」が平成27年8月に設置され、その中で空
家等対策計画の作成が進められてきました。そして同年12月から平成28年1月にか
けて、計画の素案に対する市民意見募集が行われました。今後その結果を踏まえ、
計画が策定されます。
横浜市の状況を見ても、地域によって空き家問題の傾向が異なっており、地域の
特性に応じた対策が求められています。
今後の取組に向けて、本稿が少しでも参考になれば幸いです。
(S.S.)
57
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